説明

ナフタレン系の化学薬品からフタル酸ジメチルを生産する方法

【課題】98%の純度を持つフタル酸ジメチルを生産する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ナフタレン系化学薬品から約99%純度のフタル酸ジメチルを生産する、改善された、環境にやさしい方法に帰着し、前記方法は、無水フタル酸とメタノールを2:3〜3:2の範囲の比率で混合すること、該混合物に触媒(単数または複数)を添加する(ここで、無水フタル酸と触媒の比率は、3:1〜15:1の範囲である)、工程(b)で得られたものに促進剤を添加し(ここで、促進剤は、無水フタル酸の1.5〜2.0重量%の範囲にある)、得られた混合物をベンゼンの存在において60〜100℃の範囲の温度で6〜12時間の継続時間中還流して(ここで、ベンゼン無水フタル酸の比率は1:5〜2:1の範囲にある)留出物を得、残留分を約10%苛性ソーダで中和し、中和した残液をベンゼンで抽出し、10mm水銀の下で140〜150℃の範囲の温度で蒸留してフタル酸ジメチルを得ること、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタル酸ジメチルを処理する方法に関する。特に、本発明は、ナフタレン系化学薬品、特にコールタールの副産物である無水フタル酸からフタル酸ジメチルを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フタル酸ジメチルは、蚊やハエのような吸血昆虫に対する、効果的で安全な忌避剤であることが知られている。それは、可塑剤として、合成ポリエステル類の染色のキャリアーとして、フロス浮選剤として、およびヘアスプレー中の成分として、広範囲な用途が見いだされている。
【0003】
通常、フタル酸ジメチルは、炭化水素の直接的酸化によって得られる。ケミカル・アブストラクト(CA)43巻(1949年)、5767aを参照することができるが、そこでは、フタル酸無水物とクロロスルホン酸が還流されている。しかし、非常に低い収率が該プロセスの欠点であった。インダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリ(Ind. Engg. Chem.)40巻、96頁(1948年))を参照することができるが、そこではアルミニウム、マンガンおよび鉛の酸化物が触媒として使用されている。低い収率が、該プロセスの主な欠点であった。
【0004】
フタル酸ジメチルを生産することに関する先行技術の探索は、文献調査および特許データベースに基づいて行ったが、関連参考文献は出てこなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、上述のような欠点が除かれている、98%の純度を持つフタル酸ジメチルを生産する方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、ナフタレン系化学薬品、特にコールタール副産物である無水フタル酸からフタル酸ジメチルを生産する方法を提供することである。
【0007】
現在の発明のさらなる他の目的は、環境にやさしい、フタル酸ジメチルを生産する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、経済的である、フタル酸ジメチルを生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フタル酸ジメチルを生産する方法に関する。特に、本発明は、ナフタレン系化学薬品、特に(コールタールの副産物である)無水フタル酸から、フタル酸ジメチルを生産する方法に関する。
【0010】
本発明は、ナフタレン系化学薬品から約99%純度のフタル酸ジメチルを生産する、改善されたかつ環境にやさしい方法に関し、前記方法は、下記の工程を含む;
a)無水フタル酸とメタノールを2:3〜3:2の範囲の比率で混合する、
b)混合物に触媒(単数または複数)を添加する(ここで無水フタル酸と触媒の比率は、3:1〜15:1の範囲である)、
d)工程(b)で得られたものに促進剤を添加する(ここで該促進剤は無水フタル酸の1.5〜2.0重量%の範囲である)、
e)工程(d)で得られた混合物を、60〜100℃の範囲の温度で、ベンゼンの存在下6〜12時間の時間経過の間、還流して(ここでベンゼン無水フタル酸の比率は、1:5〜2:1の範囲にある)留出物を得る、
f)該留出物を水層とベンゼン層に分離する、
g)水層を取り除いた後にベンゼン層をリサイクルする、
h)蒸留によって該層から未反応のメタノールおよび残留分を回収する、
i)残留分を約10%の苛性ソーダで中和する、
j)中和された残留分をベンゼンで抽出する、
k)真空下で抽出物を蒸留してベンゼンを得る、および、
l)10mm水銀下で140〜150℃の範囲の温度で工程(k)の蒸留を続けてフタル酸ジメチルを得る、
m)任意に、活性炭で脱色することによってフタル酸ジメチルをさらに精製する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のさらにもう一つの目的、無水フタル酸はコールタール副産物である。
【0012】
本発明のなおもう一つの目的、無水フタル酸と触媒の比率は、約6:1である。
【0013】
本発明のさらにもう一つの目的、該触媒は、硫酸および塩酸から成る群から選択される。
【0014】
本発明のさらに別の目的、促進剤の比率は約1:1である。
【0015】
本発明のさらにもう一つの目的、該促進剤は硫酸ジメチルである。
【0016】
本発明は、ナフタレン系化学薬品、特に(コールタール副産物である)無水フタル酸、からフタル酸ジメチルを生産する方法を提供する。無水フタル酸を、硫酸、塩酸またはそれらの混合物のような触媒、および硫酸ジメチルのような促進剤の存在において、メタノールで処理し、ベンゼンの存在下で還流する。フタル酸ジメチルを得るための処理工程。フタル酸ジメチルは、蚊のような吸血昆虫に対する効果的で安全な忌避剤であると知られている。それは、可塑剤として、合成ポリエステル類の染色のキャリアーとして、フロス浮選試剤として、およびヘアスプレー中の成分として、広範囲な用途を持っている。
【0017】
本発明は、無水フタル酸をメタノールで処理し、硫酸、塩酸またはそれらの混合物のような触媒、および硫酸ジメチルのような促進剤を添加して、ナフタレン系化学薬品、特にコールタール副産物である無水フタル酸からフタル酸ジメチルを生産する方法を提供する。得られた混合物を、ベンゼンの存在において、摂氏60〜100度の範囲の温度で6〜12時間の範囲の時間還流すること。留出物を2層に分離すること。水層を除去してベンゼン層を反応器に戻すこと。蒸留によって未反応のメタノールを回収すること。残留分を苛性ソーダで中和し、続いて、ベンゼンで抽出する。真空下で抽出物を蒸留してベンゼンを得ること、そして10mm水銀の下で摂氏145〜146度の温度範囲で蒸留プロセスを続けてフタル酸ジメチルを得ること。
【0018】
したがって、本発明は、フタル酸ジメチルを生産する方法を提供する。それは、無水フタル酸をメタノールで処理すること、硫酸、塩酸またはそれらの混合物のような触媒および硫酸ジメチルのような促進剤を添加すること;得られた混合物を、摂氏60〜100度の範囲の温度で、6〜12時間の範囲の時間、ベンゼンの存在下で還流すること;留出物を2層に分離すること;水層を取り除くこと、およびベンゼン層をリサイクルして、未反応のメタノールを蒸留により回収すること;残留分を苛性ソーダで中和し、ついでベンゼンによる抽出をすること;真空下で抽出物を蒸留してベンゼンを得ること;10mm水銀の下で摂氏145〜146度の範囲の温度で蒸留プロセスを続けてフタル酸ジメチルを得ることから成る。
【0019】
本発明の実施態様においては、無水フタル酸はコールタール副産物である。
【0020】
本発明のもう一つの実施態様においては、無水フタル酸と触媒の比率は、3:1〜15:1の範囲にある。
【0021】
本発明のさらにもう一つの実施態様においては、無水フタル酸と硫酸、塩酸または硫酸および塩酸の等量の混合物との比率は6:1の比率である。
【0022】
本発明のさらに別の実施態様においては、促進剤、硫酸ジメチルは、無水フタル酸の1.5〜2.0重量%の範囲にある。
【0023】
本発明のさらにさらにもう一つの実施態様においては、製品を活性炭で脱色することによってさらに精製することができる。
【0024】
本発明の仕込みでは、無水フタル酸、触媒および促進剤が、ベンゼンの存在において6〜12時間以内の時間加熱される。ベンゼンを添加する目的は、反応の間に形成された水をベンゼン水共沸混合物として除去することである。反応の完了後、未反応のメタノールおよびベンゼンは、蒸留によって回収される。(製品および変換されていない無水フタル酸を含む)残留分を10%苛性ソーダで中和し、続いてベンゼンで抽出する。前記抽出物を真空下で蒸留して、ベンゼンを得、ついで、98.5%純度の製品を摂氏145〜146度の温度範囲で得る。該製品は、必要に応じて、IS6627(1972年)に従って、活性炭で脱色することによって、さらに精製されうる。純度は、ガスクロマトグラフィーおよび赤外分光法で確認することができる。
【0025】
本発明の新規性は、ナフタレン系化学薬品、特にコールタール副産物である無水フタル酸から、強力昆虫駆除剤および可塑剤として有用なフタル酸ジメチルを生産することにある。本発明の新規性は、高収量のフタル酸ジメチルを得るために、硫酸、塩酸またはそれらの混合物のような触媒および硫酸ジメチルのような促進剤の存在において、無水フタル酸をメタノールで処理し、ベンゼンの存在において還流し、ついで抽出するという発明的工程によって達成された。
【実施例】
【0026】
以下の実施例は、本発明の例証として挙げられるが、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。
【0027】
実施例1
14.8gの無水フタル酸、重量で24gのメタノール、重量で1gの硫酸および重量で3.5gの塩酸ならびに重量で0.25gの硫酸ジメチルを、ガラス製の、反応温度を測定する装置、還流冷却器および反応容器に反応試剤を添加する装置を付けた、三つ口フラスコに取った。得られた混合物を、重量で4.4gのベンゼンの存在において摂氏65度で7時間加熱した。ベンゼンを添加する目的は、反応の間に精製した水をベンゼン水共沸混合物として取り出すことであった。反応の完了後、未反応のメタノールおよびベンゼンを蒸留によって回収した。製品および変換していない無水フタル酸を含む残留分を、10%苛性ソーダで中和し、ついで、ベンゼンで抽出した。前記抽出物は、ベンゼンを得るために真空下で蒸留し、ついで98.5%純度の製品13.9グラムを摂氏145〜146度の温度範囲で得た。製品の純度は、ガスクロマトグラフィーおよび赤外分光法によって確認した。
【0028】
実施例2
14.8グラムの無水フタル酸、重量で24gのメタノールおよび重量で5.6gの硫酸ならびに重量で0.25gの硫酸ジメチルをガラス製の、反応温度を測定する装置、還流冷却器および反応容器に反応試剤を添加する装置を付けた、三つ口フラスコに取った。得られた混合物を、重量で18.0gのベンゼンの存在において摂氏65度で7時間加熱した。ベンゼンを添加する目的は、反応の間に精製した水をベンゼン水共沸混合物として取り出すことであった。反応の完了後、未反応のメタノールおよびベンゼンを蒸留によって回収した。製品および変換していない無水フタル酸を含む残留分を、10%苛性ソーダで中和し、ついでベンゼンで抽出した。前記抽出物は、ベンゼンを得るために真空下で蒸留し、ついで98.5%純度の製品12.4グラムを摂氏145〜146度の温度範囲で得た。製品の純度は、ガスクロマトグラフィーおよび赤外分光法によって確認した。
【0029】
実施例3
83gの無水フタル酸、重量で75gのメタノールおよび重量で6.7gの硫酸ならびに重量で1.6gの硫酸ジメチルをガラス製の、反応温度を測定する装置、還流冷却器および反応容器に反応試剤を添加する装置を付けた、三つ口フラスコに取った。得られた混合物を、重量で18.0gのベンゼンの存在において摂氏90度で7時間加熱した。ベンゼンを添加する目的は、反応の間に精製した水をベンゼン水共沸混合物として取り出すことであった。反応の完了後、未反応のメタノールおよびベンゼンを蒸留によって回収した。製品および変換していない無水フタル酸を含む残留分を、10%苛性ソーダで中和し、ついで、ベンゼンで抽出した。前記抽出物は、ベンゼンを得るために真空下で蒸留し、ついで98.5%純度の製品91gを摂氏145〜146度の温度範囲で得た。製品の純度は、ガスクロマトグラフィーおよび赤外分光法によって確認した。
【0030】
本発明のさらに別の実施態様において、当発明の各工程は、望ましい結果を得るために緊要である。さらに、工程の順序は、高純度のフタル酸ジメチルを得るために同じように緊要である。本申請者は、工程の順序および添加の方法におけるいかなる変更も、反応の結果への悪影響に至ることがあることを認めた。発明者は、多くの実験と試みの後に本発明に到達したのである。
【0031】
本発明の主な長所は、以下の通りである、
1.ナフタレン系化学薬品、特にコールタール副産物である無水フタル酸からフタル酸ジメチルを生産すること。
2.98%レベルの高純度の製品が得られること。
3.大部分の原料の原価が低いので、経済的な方法。
4.プロセスに環境汚染が含まれていないこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水フタル酸から約99%純度のフタル酸ジメチルを生産する改善された方法であって、前記方法が、
a)無水フタル酸とメタノールを2:3〜3:2の範囲の比率で混合する、
b)該混合物に触媒(単数または複数)を添加する(ここで、無水フタル酸と触媒の比率は、3:1〜15:1の範囲である)、
c)工程(b)で得られたものに促進剤である硫酸ジメチルを添加する(ここで、促進剤は、無水フタル酸の1.5〜2.0重量%の範囲にある)、
d)工程(c)で得られた混合物を、ベンゼンの存在において60〜100℃の範囲の温度で6〜12時間の範囲の持続時間還流して(ここで、ベンゼンと無水フタル酸の比率は、1:5〜2:1の範囲にある)、留出物を得る、
e)留出物を水層とベンゼン層に分離する、
f)水層を除去した後、ベンゼン層をリサイクルする、
g)該層から蒸留によって未反応のメタノールおよび残留分を回収する、
h)約10%の苛性ソーダで残留分を中和する、
i)中和された残留分をベンゼンで抽出する、
j)真空下で抽出物を蒸留してベンゼンを得る、および、
k)10mm水銀の下で140〜150℃の範囲の温度で工程(j)の蒸留を続けてフタル酸ジメチルを得る、
l)任意に活性炭で脱色することによってフタル酸ジメチルを精製する、
という工程を含む方法。
【請求項2】
無水フタル酸がコールタールの副産物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無水フタル酸と触媒の比率が約6:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒が硫酸および塩酸から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が1種以上の触媒またはその混合物であること、およびそれが1種以上の触媒の混合物であるとき、触媒間の比率が約1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519179(P2006−519179A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500329(P2006−500329)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000613
【国際公開番号】WO2004/078699
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】