説明

ニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートおよびその製造方法ならびにそれを用いたPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液

【課題】溶液気化方式で原料を供給するCVD法でペロブスカイト構造強誘電体であるPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するために好適な新規Nb化合物およびその製造方法ならびにCVD法によりPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するための前記Nb化合物を用いた原料溶液を提供する。
【解決手段】ニオブペンタアルコキシド1molとジイソブチリルメタン1molを不活性炭化水素溶媒中で加熱還流後、溶媒と未反応原料を留去し、次いで、蒸留することにより、新規化合物ニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートNb(OR)4(dibm)(ここで、Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基を表す。)を製造し、この新規Nb化合物を、原料供給を溶液気化方式で行うCVD法によりPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するための原料溶液に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学気相成長法によりPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するためのニオブ化合物であるニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートおよびその製造方法ならびにPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト構造のPb(Zr,Ti)O3において、比較的多い割合のTiをNbで置換したPb(Zr,Ti,Nb)O3膜、例えば、Pb(Zr0.2Ti0.8Nb0.2)O3膜は、強誘電特性に優れており、リーク電流が非常に低いことから、次世代の強誘電性ランダムアクセスメモリー(FeRAM)として期待されている(特許文献1参照)。
【0003】
現在、前記Pb(Zr,Ti,Nb)O3膜は、ゾル−ゲル溶液のスピンコート法により、優れた特性を示すものが得られているが、より集積度の高いFeRAM用には、薄膜による段差被覆性に優れている化学気相成長法(以下、CVD法と表す。)により形成することができることが望ましい。そして、このCVD法においては、量産性に優れる溶液気化方式により、原料が供給されることが望ましい。
しかしながら、CVD法においては、まだ十分な量のNbを結晶中に取り込むことができず、優れた特性を示す膜は得られていない。
【0004】
そこで、本発明者らは、CVD法により十分な量のNbを結晶中に取り込む1つの手段として、原料となるNb化合物の検討を行った。
表1に従来から公知であるC,H,OおよびNbのみからなるCVD法用のNb有機化合物を示す。
【0005】
【表1】

【0006】
量産性に優れる溶液気化方式に用いられるNb原料化合物としては、以下の3つの要求を満たすものであることが好ましい。
(1)テトラヒドロフラン(以下、THFと表す。)、トルエン、酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の溶媒に対する溶解度が高いこと。
(2)同時に用いられるPb(dpm)2,Pb(dibm)2,Zr(dibm)4,Zr(OiPr)(dpm)3,Ti(OiPr)2(dpm)2,Ti(OiPr)2(dibm)2等のPb,Zr,Tiの原料化合物と、溶液状態や気化した状態で混合した際、アルコキシル基やβ−ジケトナート基の交換反応が起きないこと。
(3)前記Pb,Zr,Tiの原料化合物の溶液と混合後、1つの気化器で気化させるため、Pb,Zr,Tiの原料化合物と気化特性が似ていること。
【特許文献1】特開2005−209722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表1に示したNb化合物について、上記3つの要求に照らしてみると、Nb(dpm)4は、第(1)項のTHF以外の溶媒に対する溶解度が小さく、使用可能な溶媒が限定されるという欠点を有していた。
【0008】
ところで、原料溶液の供給系は、Pb,Zr,Ti,Nbの元素毎に設けられ、気化器直前で混合し、1つの気化器で気化させるのが一般的であるが、経済性、流量制御等の観点から、系はできるだけコンパクトであることが望ましく、前記4元素を1つの溶液とすることができることが最も望ましい。
【0009】
しかしながら、Pb化合物は、他の元素化合物と溶液中で共存すると、液中のパーティクルが増大し、ポットライフが短くなる傾向があることが知られている。
このため、Nb化合物は、Pb化合物が含まれない溶液、すなわち、Zr溶液、Ti溶液またはZrとTiとの共存溶液とすることができることが望ましい。
【0010】
このような観点から見ると、表1に示したNb化合物のうち、Nb(OEt)5,Nb(OiPr)5,Nb(OEt)4(dpm),Nb(OiPr)4(dpm)は、Pb(dibm)2,Zr(dibm)4,Ti(OiPr)2(dibm)2等のdibm系化合物と共存する場合、有機基の交換反応が起き、組み合わせによって、Zr(dibm)3(dpm),Ti(OEt)(OiPr)(dibm)(dpm),Nb(OEt)3(OiPr)(dibm)等のより複雑な化合物との混合物が形成されるものであった。
すなわち、カクテル溶液とした場合、上記要求の第(2)項が満たされず、溶液の安定性や気化の再現性が十分に得られるものではなかった。
【0011】
したがって、量産性に優れる溶液気化方式に好適に用いることができ、dibm系化合物と共存可能なNb原料化合物が求められていた。
【0012】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、溶液気化方式で原料を供給するCVD法で、ペロブスカイト構造強誘電体であるPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するために好適な新規Nb化合物およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
また、前記Nb化合物を用いて、CVD法によりPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するための原料溶液を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、化学式(I)で表される新規なニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートが提供される。
Nb(OR)4(C9152) ……(I)
ここで、Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基を表し、C9152はジイソブチリルメタネートであり、以下、dibmと表す。
【0014】
前記ニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートは、化学式(I)において、RがC25(以下、Etと表す。)、CH(CH32(以下、iPrと表す。)またはn−C49(以下、nBuと表す。)のいずれかであることが好ましい。すなわち、Nb(OEt)4(dibm),Nb(OiPr)4(dibm)またはNb(OnBu)4(dibm)のいずれかであることが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、ニオブペンタアルコキシド1molとジイソブチリルメタン1molを不活性炭化水素溶媒中で加熱還流後、溶媒と未反応原料を留去し、次いで、蒸留する工程を備えていることを特徴とする上記ニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートの製造方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、原料供給を溶液気化方式で行う化学気相成長法によりPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するための原料溶液であって、前記ニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートが用いられているものであることを特徴とするPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液が提供される。
【0017】
前記Pb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液は、Pb(dibm)2,Pb(C111922(ここで、C11192はジピバロイルメタネートであり、以下、dpmと表す。),Zr(dibm)4,Zr(OiPr)(dpm)3,Ti(OiPr)2(dibm)2,Ti(OiPr)2(dpm)2,Nb(OiPr)4(dibm),Nb(OEt)4(dibm)の群の中から選ばれたいずれかの単一金属元素化合物の溶液が組み合わせて用いられているものであることが好ましい。
【0018】
さらに、前記Pb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液は、Zr(dibm)4とNb(OEt)4(dibm)とのカクテル溶液、Zr(dibm)4とNb(OiPr)4(dibm)とのカクテル溶液、Zr(dibm)4とNb(OnBu)4(dibm)とのカクテル溶液、Ti(OiPr)2(dibm)2とNb(OiPr)4(dibm)とのカクテル溶液、Zr(dibm)4とTi(OiPr)2(dibm)2とNb(OiPr)4(dibm)とのカクテル溶液の群の中から選ばれたいずれかのカクテル溶液が用いられているものであることが好ましい。
ここで、カクテル溶液とは、2種以上の金属元素が溶解している溶液のことを言う。
【0019】
また、前記溶液の溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンのうちのいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る新規化合物であるNb(OEt)4(dibm),Nb(OiPr)4(dibm)は、Pb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用のZr,Tiの原料化合物と、溶液状態や気化した状態で混合した場合であっても、アルコキシル基やβ−ジケトナト基の交換反応を起こさない組み合わせを可能とするものである。
したがって、本発明によれば、Pb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液を安定的に供給することができ、量産性に優れる溶液気化方式のCVDによって、ペロブスカイト構造強誘電体であるPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明に係るNb(OR)4(dibm)は、新規化合物である。
ここで、Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基である。具体的には、RはCH3,C25,n−C37,i−C37,n−C49,i−C49,sec−C49,t−C49である。
【0022】
前記Nb(OR)4(dibm)のうち、好ましくは、市販されているNb(OEt)5,Nb(OiPr)5またはNb(OnBu)5を原料として製造される、Nb(OEt)4(dibm),Nb(OiPr)4(dibm)またはNb(OnBu)4(dibm)である。
Nb(OEt)5は、Nb(OnBu)5より蒸気圧が高い液体であるため、精留が容易であり、最も高純度にでき、Nb(OEt)4(dibm)が最も高純度で得られる。
【0023】
前記Nb(OR)4(dibm)の合成時に使用される不活性炭化水素溶媒としては、ヘキサン、オクタン、トルエン、シクロヘキサンが好ましい。
Nb(OEt)4(dibm),Nb(OnBu)4(dibm)は、室温で液体であり、Nb(OiPr)4(dibm)は、固体であるが、いずれも、溶液気化方式のCVD法に用いられる一般的な溶媒によく溶ける。
【0024】
溶液気化方式のCVD法に用いられる溶媒としては、THF、トルエン、酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が好ましい。
【0025】
溶液気化方式のCVD法において、Pb(dibm)2,Pb(dpm)2,Zr(dibm)4,Zr(OiPr)(dpm)3,Ti(OiPr)2(dibm)2,Ti(OiPr)2(dpm)2,Nb(OEt)4(dibm),Nb(OiPr)4(dibm),Nb(OnBu)4(dibm)の群の中から任意に選ばれた単一金属元素化合物の溶液を、それぞれ別々のシリンダに充填し、気化器直前または気化器内で混合した場合においても、気化させるまでの時間は非常に短いため、互いの有機基が交換したり、変質したりすることは、実質的にない。このため、CVDや膜性能等に応じて、任意の組み合わせで用いることができる。
【0026】
2種以上の異なる金属元素の化合物を混ぜたカクテル溶液を原料とする場合は、安定した蒸発や膜状態を達成するために、基の交換反応が起こらないことが求められる。すなわち、カクテル溶液にすることができるということは、基の交換反応が起こらず、ポットライフが長期であるということを意味する。
【0027】
上述した基の交換反応の起こりやすさは、金属とアルコキシル基とβ−ジケトナト基の性質の違いにより決まる。
例えば、Zr(dibm)4の場合は、Nb(OEt)4(dibm),Nb(OiPr)4(dibm)またはNb(OnBu)4(dibm)とカクテル溶液にすることができる。また、Ti(OiPr)2(dibm)2の場合は、Nb(OiPr)4(dibm)とカクテル溶液にすることができる。
【0028】
溶液気化方式のCVD法による膜形成用原料溶液は、定量供給して気化器直前で混合し、減圧下、150〜250℃で、1つの気化器で全量気化させ、0.1〜10TorrのCVD室に送入される。そして、400〜800℃に加熱されたSi基板上に、Pb(Zr,Ti,Nb)O3膜を熱堆積させる。
膜形成方法としては、熱CVDの他に、プラズマCVD等、通常使用される方法を用いてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]Nb(OEt)4(dibm)の製造
温度計、撹拌子、リフラックスコンデンサを備えた500mL三口フラスコを真空アルゴン置換後、脱水脱酸素したトルエン200mLとNb(OEt)550g(0.157mol)を仕込み、次いで、ジイソブチリルメタンdibmH24.6(0.157mol)を仕込んだ。
4時間還流し、生成したエタノールをトルエンとともに留去し、さらに、1Torr、80℃で溶媒を留去した。
次いで、0.03Torrで蒸留し、初留分3.0gを除去した後、留出温度100〜106℃で、主留分として淡褐色液体58.0g(0.135mol、収率86%)を得た。
【0030】
上記において得られた主留物質について、下記分析により、その同定および物性測定を行った。
(1)組成分析
湿式分解し、生成した液のICP発光分光分析の結果、Nb:22.0%(理論値21.69%)、C:47.6%(理論値47.67%)、H:8.3%(理論値8.24%)であった。
【0031】
(2)不純物分析
ICP発光分光分析の結果、Al<1,Ca<1,Fe<1,Mg<1,Ti<1,Na<1,K<1,Ni<1,Cu<1,Cr<1(単位:ppm)であり、高純度であった。
また、Cl分析の結果、Cl<3ppmであった。
【0032】
(3)EI−MS
測定条件 装置:JMS AX505W,イオン化法:EI,イオン源温度:230℃,イオン化エネルギー:70eV
測定結果を図1に示す。
主なm/Zと強度(%)とそのイオン種を以下に列挙する。
383(100) Nb(OEt)3(dibm)+;338(66) Nb(OEt)2(dibm)+;309(25) NbO(OEt)(dibm)+;273(99) Nb(OEt)4+
なお、分子イオンはなかった。
【0033】
(4)1H−NMR
測定条件 装置:JNM−ECA400(400MHz)、溶媒:C66、方法:1D
測定結果を図2に示す。δH(ppm)と(帰属)を以下に列挙する。
1.09 d(12H,2CH(C32);1.15+1.36 t(12H,4OCH23);2.28 h(2H,2C(CH32);4.18+4.69 q(8H,4OC2CH3);5.33 s(1H,C).
【0034】
(5)蒸気圧
気体飽和法測定から、0.1Torr/110℃であった。
【0035】
(6)性状と密度
室温で液体であり、液体の密度は1.1g/cm3であった。
【0036】
(7)TG−DTA
測定条件 試料重量:7.04mg、雰囲気:Ar 1気圧、昇温速度:10.0deg/min
測定結果を図3に示す。
図3から、140℃付近から徐々に蒸発減量し、200℃付近で50%減量し、その後、220℃から熱分解変質が生じていることが分かる。350℃付近で、93.7%の減量であった。
なお、比較のために、Nb(OEt)4(dpm)のTG−DTA測定結果を図7に示す。
図7においては、350℃付近で88.5%減量しており、実施例1に係る主留物質の方が、熱変質が少い状態で蒸発したことが認められる。
【0037】
以上の同定分析の結果から、得られた主留物質は、Nb(OEt)4(dibm)であると同定した。
【0038】
[実施例2]Nb(OiPr)4(dibm)の製造
実施例1において、Nb(OEt)5をNb(OiPr)561.0g(0.157mol)に替え、それ以外は、実施例1と同様に反応させた。溶媒留去後、0.03Torrで昇華し、加熱温度100〜120℃の昇華物として、淡黄色固体64.6g(0.133mol,収率85%)を得た。
【0039】
上記において得られた昇華物について、実施例1と同様に、下記分析により、その同定および物性測定を行った。
(1)組成分析
Nb:22.0%(理論値21.69%)、C:51.0%(理論値52.06%)、H8.8%(理論値8.95%).
【0040】
(2)不純物分析(単位ppm)
Al<1,Ca<1,Fe<1,Mg<1,Ti<1,Na<1,K<1,Ni<1,Cu<1,Cr<1(単位:ppm)であり、高純度であった。
また、Cl<3ppmであった。
【0041】
(3)EI−MS
測定結果を図4に示す。
425(100) Nb(OiPr)3(dibm)+;366(76) Nb(OiPr)2(dibm)+;329(94) Nb(OiPr)4+;323(46) NbO(OiPr)(dibm)+,281(48) NbO(OiPr)((CH32CHCOCHC(H)O)+
なお、分子イオンはなかった。
【0042】
(4)1H−NMR
測定結果を図5に示す。
1.12 d(12H,2CH(C32);1.21+1.43 d(24H,4OCH(C32);2.29 h(2H, 2C(CH32);4.49+5.06 h(4H,2OC(CH32);5.32 s(1H,C).
【0043】
(5)蒸気圧
0.1Torr/120℃
【0044】
(6)性状および融点
室温で固体であり、DTA測定結果から、融点は100℃であった。
【0045】
(7)TG−DTA
測定条件 重量:7.40mg、雰囲気:Ar 1気圧、昇温速度:10.0deg/min
測定結果を図6に示す。
図6から、140℃付近から徐々に蒸発減量し、200℃付近で50%減量し、その後、220℃から熱分解変質が生じていることが分かる。400℃付近で、96.6%の減量であった。
【0046】
以上の同定分析の結果から、得られた昇華物は、Nb(OiPr)4(dibm)であると同定した。
【0047】
[実施例3〜6、比較例1〜4]カクテル溶液の安定性
溶媒として、トルエンを用い、Zr,Ti,Nbのうちの2種または3種の化合物を含むカクテル溶液を調製し、その安定性を評価した。
各カクテル溶液は、Zr,Ti,Nbが下記の濃度となるように調製した。
(Zr+Nb)カクテル溶液:Zr0.10mol/L,Nb0.10mol/L
(Ti+Nb)カクテル溶液:Ti0.16mol/L,Nb0.04mol/L
(Zr+Ti+Nb)カクテル溶液:Zr0.03mol/L,Ti0.12mol/L,Nb0.03mol/L
【0048】
安定性の評価は、各カクテル溶液を110℃で5時間加熱後、溶媒を減圧留去し、残渣物について、TG−DTA測定を行い、同一比率で作製した原体混合物のTG−DTA(ブランク)測定結果と比較し、変質の有無を調べることにより判定した。
これらの結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示したように、実施例3〜6に係るNb(OR)4(dibm)は、Zr(dibm)4やTi(OiPr)2(dibm)2と安定なカクテル溶液を形成することができることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1における主留物質のEI−MSによる測定結果を示した図である。
【図2】実施例1における主留物質の1H−NMRによる測定結果を示した図である。
【図3】実施例1における主留物質の1気圧でのTG−DTAによる測定結果を示した図である。
【図4】実施例2における昇華物のEI−MSによる測定結果を示した図である。
【図5】実施例2における昇華物の1H−NMRによる測定結果を示した図である。
【図6】実施例2における昇華物の1気圧でのTG−DTAによる測定結果を示した図である。
【図7】Nb(OEt)4(dpm)の1気圧でのTG−DTAによる測定結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)
Nb(OR)4(C9152) ……(I)
(ここで、Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基を表し、C9152はジイソブチリルメタネートであり、以下、dibmと表す。)で表されるニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネート。
【請求項2】
前記化学式(I)において、RがC25(以下、Etと表す。),CH(CH32(以下、iPrと表す。)またはn−C49(以下、nBuと表す。)のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネート。
【請求項3】
請求項1記載のニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートを製造する方法であって、ニオブペンタアルコキシド1molとジイソブチリルメタン1molを不活性炭化水素溶媒中で加熱還流後、溶媒と未反応原料を留去し、次いで、蒸留する工程を備えていることを特徴とするニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートの製造方法。
【請求項4】
原料供給を溶液気化方式で行う化学気相成長法によりPb(Zr,Ti,Nb)O3膜を形成するための原料溶液であって、請求項1または請求項2記載のニオブテトラアルコキシジイソブチリルメタネートが用いられているものであることを特徴とするPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液。
【請求項5】
Pb(dibm)2,Pb(C111922(ここで、C11192はジピバロイルメタネートであり、以下、dpmと表す。),Zr(dibm)4,Zr(OiPr)(dpm)3,Ti(OiPr)2(dibm)2,Ti(OiPr)2(dpm)2,Nb(OiPr)4(dibm),Nb(OEt)4(dibm)の群の中から選ばれたいずれかの単一金属元素化合物の溶液が組み合わせて用いられているものであることを特徴とする請求項4記載のPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液。
【請求項6】
Zr(dibm)4とNb(OEt)4(dibm)とのカクテル溶液、Zr(dibm)4とNb(OiPr)4(dibm)とのカクテル溶液、Zr(dibm)4とNb(OnBu)4(dibm)とのカクテル溶液、Ti(OiPr)2(dibm)2とNb(OiPr)4(dibm)とのカクテル溶液、Zr(dibm)4とTi(OiPr)2(dibm)2とNb(OiPr)4(dibm)とのカクテル溶液の群の中から選ばれたいずれかのカクテル溶液が用いられているものであることを特徴とする請求項5記載のPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液。
【請求項7】
前記溶液の溶媒が、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンのうちのいずれかであることを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれかに記載のPb(Zr,Ti,Nb)O3膜形成用原料溶液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−99735(P2007−99735A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294909(P2005−294909)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000143411)株式会社高純度化学研究所 (18)
【Fターム(参考)】