説明

ニップベアリングを用いたベルトコンベアのニップベアリング締結機構

【課題】ニップベアリングを用いたベルトコンベアにおいて、駆動ローラとニップベアリングの間の隙間を適切な大きさに自動調整可能とする。
【解決手段】ニップベアリング15、16により無端ベルト11を駆動ローラ14に押し当て、駆動力を無端ベルト11に与える。ニップベアリング15、16をベアリング保持部17に回転自在に取り付ける。ベアリング保持部17を回転端部17Aにおいて回転自在にコンベア本体18に取り付け、これと反対側の取付端部17Bを、締結機構20を用いて、コンベア本体18に締結する。締結機構20は、コンベア本体18に連結されたフック21と、取付端部17Bに連結されたアイ22の係合により連結する。また、締結機構20はスプリング23を備え、ニップベアリング15、16と駆動ローラ14との間の隙間がスプリング23の伸縮作用により調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニップベアリングでベルトを駆動ローラに押し当て、ベルトを駆動するベルトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
ニップベアリングを用いたベルトコンベアでは、ニップベアリングによりベルトを駆動ローラに押し当て、駆動ローラを回転させることによりベルトを駆動している(特許文献1)。このようなベルトコンベアでは、ベルトを簡易に着脱できるように、ニップベアリングを駆動ベアリングから離間できるように構成される。すなわち、ベルトを着脱する際には、ニップベアリングが駆動ベアリングから離間され、ベルト装着作業が終了すると、ニップベアリングがベルトを挟んで駆動ベアリングに押し当てられて固定される。
【0003】
ニップベアリングの位置の固定は、ニップベアリングを回転自在に保持するベアリング保持部を、コンベア本体に固定することにより行われる。例えばベアリング保持部の一端はコンベア本体に回動自在に保持され、ニップベアリングを挟んだ他端には、コンベア本体にベアリング保持部を固定するフック機構が設けられる。すなわち、ベルトを着脱する際には、フック機構の係合がはずされ、ベアリング保持部が回動されてニップベアリングは駆動ローラから離間される。
【0004】
一方、ベルト装着後は、ベアリング保持部が逆方向に回動され、ニップベアリングはベルトを挟んで駆動ローラに押し当てられる。その後、ベアリング保持部の位置は、他端に設けられたフック機構を用いてコンベア本体に固定される。また、ニップベアリングの駆動ローラに対する位置は、このフック機構に設けられたアジャストスクリュを用いて微調整され、ベルトに与えられる押圧力が調整される。
【特許文献1】特開2002−338022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルトの適切な駆動を維持するには、駆動ローラとベアリングの隙間(押圧力)を適切な大きさに維持する必要があるが、ベルトの厚さは、摩耗により経年変化するため、適切な隙間の大きさは時間が経過するとともに変化する。しかし、従来のフック機構を用いた方式では、アジャストスクリュによる隙間の微調整が終了すると、隙間の大きさが固定されるため、このような経時変化に対応することができない。
【0006】
また、ベルトコンベアには無端ベルトが用いられるが、ベルトの両端を繋ぎ合わせた無端ベルトの継手部は、他の部分よりも厚みがあるため、他の部分に対する適正な隙間の大きさは、継手部に対しては一般に狭すぎる。更に、駆動ローラは製造誤差により僅かに偏心しているため、ニップベアリングと駆動ローラの間の隙間の大きさは駆動ローラが回転するにしたがって変動する。
【0007】
しかし従来のフック機構では、ニップベアリングと駆動ローラの間の隙間は、1つの大きさに固定されるため、ベルト継手部における厚みの違いやローラの偏心の問題に対応することができない。したがって、フック機構を用いた従来のベルトコンベアでは、ベルト駆動中にニップ圧が過剰になる状態が周期的に起こり、これによりベルトの摩耗や破損が早期に発生する。また、過剰なニップ圧は、駆動機構の不具合を誘発する。
【0008】
本発明は、ニップベアリングを用いたベルトコンベアにおいて、駆動ローラとニップベアリングの間の隙間を適切な大きさに自動調整可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の締結機構は、ニップベアリングによりベルトを駆動ローラに押し当てるベルトコンベアにおいて、ニップベアリングを駆動ローラに押し当てた状態を固定維持するための締結機構であって、ニップベアリングを保持するベアリング保持部と、ベアリング保持部に連結される第1の係合部と、第1の係合部に着脱自在に係合され、コンベア本体に連結される第2の係合部とを備え、ニップベアリングがベルトを介して駆動ローラに押し当てられた状態が、第1の係合部と第2の係合部とが係合されることにより維持され、ニップベアリングによるベルトの駆動ローラへの押圧力が第1または第2の係合部に設けられた付勢手段により調整されたことを特徴としている。
【0010】
ベアリング保持部の一端はコンベア本体に回動自在に保持され、ベアリング保持部材の他端に第1の係合部が連結される。第1または第2の係合部は、例えばフックを用いた構造である。また、付勢手段は例えば弾性部材からなり、この場合、弾性部材は例えばスプリングである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、ニップベアリングを用いたベルトコンベアにおいて、駆動ローラとニップベアリングの間の隙間を適切な大きさに自動調整可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるニップベアリングを用いたベルトコンベアの全体構造を示す模式図である。
【0013】
本実施形態のベルトコンベア10は、無端ベルト11と、無端ベルト11が掛け回される2つのアイドルローラ12、13および駆動ローラ14と、駆動ローラ14に無端ベルト11を押し当てる一対のニップベアリング15、16とを備える。ニップベアリング15、16は、ベアリング保持部17にそれぞれ回転自在に保持され、ベアリング保持部17の一端(回転端部)17Aは、コンベア本体18に回転自在に保持される。
【0014】
ベルトコンベア10に無端ベルト11が装着された状態では、ベアリング保持部17は略水平に保たれ、無端ベルト11はニップベアリング15、16と駆動ローラ14の間に挟まれ、ニップベアリング15、16により駆動ローラ14に押し当てられる。すなわち、図1に示されるように、ニップベアリング15、16は略水平に並んだ状態とされ、駆動ローラ14に向けて押し付けられる。
【0015】
一方、ニップベアリング15、16を挟んで回転端部17Aとは反対側にあるベアリング保持部17の他端(取付端部)17Bには、本実施形態の締結機構20が設けられる。すなわち、ベルトコンベア10に無端ベルト11が装着された状態では、ニップベアリング15、16がそれぞれ駆動ローラ14に当接された状態を維持するように、ベアリング保持部17が、締結機構20によりコンベア本体18に締結される。
【0016】
図2に、本実施形態の締結機構20の拡大斜視図を示す。本実施形態の締結機構20には、フック機構が用いられる。フック機構20は、例えばコンベア本体18のフック取付部18Aに連結されたフック21と、取付端部17Bに連結されたアイ22とを備える。
【0017】
フック21は、付勢手段としての弾性部材、例えばスプリング23の一端に連結された固定板24に取り付けられ、スプリング23の他端は、コンベア本体18のフック取付部18Aに連結される。一方、アイ22はロッド22Aを備え、ロッド22Aの先端部は、ロッド24Aに直交し、レバー25に設けられた軸に回転自在に連結される。
【0018】
レバー25のフック21側の端部(基端部)25Aは、取付端部17Bに回転自在に取り付けられる。すなわち、ロッド22Aは、レバー25の長手方向中間部に回転自在に連結されており、レバー25の先端部(基端部と反対側の端部)が基端部25Aを中心にフック21側へ回転されると、ロッド22Aおよびアイ22は、スプリング23の方向へ移動され、アイ22をフック21から取り外すことができる。逆に、レバー25をフック21の側へ回転させ、アイ22をフック21に係合させた後、レバー25を反対向きに回転させて図2の状態とすると、フック21はレバー25の方向へと引っ張られ、アイ22はフック21に確りと係合され、ベアリング保持部17の位置は、締結機構20により所定の位置に保持される。
【0019】
本実施形態の締結機構では、係合機構(フック21、アイ22)に弾性部材(スプリング23)が連結されているため、ベアリング保持部17がコンベア本体18に弾性部材を介して固定される。これにより駆動ローラ14の偏心や、無端ベルト11の厚みが変化しても、弾性部材の伸縮により駆動ローラ14とニップベアリング15、16の間の隙間の大きさが自動的に調整されるため、無端ベルト11に過剰な押圧力が掛かることがなく、無端ベルト11の早期の摩滅や、駆動ローラ14やニップベアリング15、16の回転機構における故障の発生を低減することができる。なお、弾性部材としては、コイルスプリング(引張式もしくは圧縮式)の他にも板バネやゴムなども用いることができる。なお、引張式とは本実施形態のようにスプリングの引張力によりニップベアリング15、16を駆動ローラ14に押し当てる形式であり、逆に圧縮式とはスプリングの圧縮力によりニップベアリング15、16を駆動ローラ14に押し当てる形式のことである。
【0020】
なお、図2には示されなかったが、締結機構20において、取付端部17Bとフック取付部18Aとの間には、締結機構20における固定長さを調整するための調整機構が設けられる。調整機構は、例えばロッド22Aの先端部にネジを設け、これをレバー25に設けられた軸と係合するベアリング部に螺着する構成としてもよい。また、アジャストスクリュをスプリング23とフック取付部18Aとの間、あるいはスプリング23と固定板24との間に設けてもよいし、固定板24に対するフック21の位置、あるいはレバー25の取付端部17Aに対する位置を調整可能とする構成としてもよい。
【実施例】
【0021】
図3は、本実施形態の締結機構20の固定長さを短くしたときにおけるベルトのスリップトルクの変化を3つの異なるバネ定数を用いた実施例1〜3について示したグラフである。一方、比較例1は、弾性部材が設けられていない従来のフック式の締結機構において固定長さを短くしたときのスリップトルクの変化を示す。なお、実施例1、2、3の順でバネ定数が大きくなる。
【0022】
グラフの横軸は、締結機構に設けられた調整機構により短くされた調整長さの大きさを示し、縦軸はこのときのスリップトルクの大きさを示す。すなわち、調整長さが大きくすることは、ニップベアリングと駆動ローラとの間の隙間を狭める方向に作用する。また、スリップトルクは、無端ベルトに掛かる押圧力に対応する。
【0023】
図3のグラフに示されるように、弾性部材が設けられていない従来のフック式締結機構では、調整長さが大きくなるにしたがって(隙間が狭くなるにしたがって)、略これに比例した分、急激にスリップトルク(ベルト押圧力)が大きくなった。一方、実施例1〜3では、バネが弾性変形する間、スリップトルクの増大は極めて緩やかであった。
【0024】
以上のことから、本実施形態によれば、部品精度のバラツキにより、ニップベアリングと駆動ローラの間の隙間が変化しても略一定の押圧力をベルトに与えることができ、ベルトや回転機構に大きな負担を掛けることなく、安定した駆動力をベルトに与えられる。
【0025】
なお、本実施形態では、2つのニップベアリングを用いた構成を例に説明を行なったが、単独、あるいは3以上のニップベアリングを用いる場合にも、本実施形態を適用できる。また、弾性部材はベアリング保持部側に設けることも可能である。
【0026】
また、本実施形態では付勢手段として弾性部材(スプリング)を用いたが、付勢手段として、例えばウェイトを用いることもできる。すなわち取付端部17Bにワイヤの一端を取り付けるとともにワイヤの他端に重りを取り付け、滑車を介して重りの自重により取付端部17Bを上方に向けて付勢する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態であるニップベアリングを用いたベルトコンベア全体の模式的である。
【図2】図1に示された締結機構の拡大図である。
【図3】実施例1〜3と比較例における調整長さとスリップトルクとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
10 ベルトコンベア
11 無端ベルト
20 締結機構
23 スプリング(弾性部材)
21 フック
22 アイ
25 レバー
17 ベアリング保持部
17B 取付端部(ベアリング保持部の端部)
18 コンベア本体
18A フック取付部(コンベア本体の一部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップベアリングによりベルトを駆動ローラに押し当てるベルトコンベアにおいて、前記ニップベアリングを前記駆動ローラに押し当てた状態を固定維持するための締結機構であって、
前記ニップベアリングを保持するベアリング保持部と、
前記ベアリング保持部に連結される第1の係合部と、
前記第1の係合部に着脱自在に係合され、コンベア本体に連結される第2の係合部とを備え、
前記ニップベアリングが前記ベルトを介して前記駆動ローラに押し当てられた状態が、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが係合されることにより維持され、前記ニップベアリングによる前記ベルトの前記駆動ローラへの押圧力が前記第1または第2の係合部に設けられた付勢手段により調整される
ことを特徴とする締結機構。
【請求項2】
前記ベアリング保持部の一端が前記コンベア本体に回動自在に保持され、前記ベアリング保持部材の他端に前記第1の係合部が連結されることを特徴とする請求項1に記載の締結機構。
【請求項3】
前記第1または第2の係合部が、フックを用いた構造であることを特徴とする請求項1に記載の締結機構。
【請求項4】
前記付勢手段が弾性部材からなることを特徴とする請求項1に記載の締結機構。
【請求項5】
前記弾性部材がスプリングであることを特徴とする請求項1に記載の締結機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−297164(P2007−297164A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125781(P2006−125781)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)