説明

ニトリルゴム

本発明は、優れた加硫速度に寄与し、結果として加硫製品に有利な性質を与える特定のイオン指数および特定のマグネシウム含量を特徴とする、特殊なニトリルゴムを重合および再加工させる改良された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリルゴム、それを製造するための方法、このニトリルゴムをベースとした加硫可能な混合物、さらにはこれらの混合物から加硫物を製造するための方法、およびそのようにして得られる加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的においては、ニトリルゴム(簡略的に「NBR」と呼ぶこともある)とは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、および場合によっては、1種または複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマーまたはターポリマーであるゴムである。
【0003】
そのようなニトリルゴムおよびそのようなニトリルゴムを製造するための方法は公知であって、たとえば、(非特許文献1)、および(非特許文献2)を参照されたい。この公刊物は、そのようなゴムの加硫速度および性能プロファイル、特に弾性率の値が影響を受けるかどうか、および受けるのであればどの程度の影響を受けるかについては、何の示唆も与えていない。
【0004】
NBRは乳化重合で製造され、最初はNBRラテックスとして得られる。コアグレーションによってこのラテックスからNBR固形物を単離する。コアグレーションのためには、塩および酸が使用される。金属塩によるラテックスのコアグレーションにおいては、たとえば塩化ナトリウムの形態の1価の金属イオンの場合には、たとえば、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたは硫酸アルミニウムの形態の多価の金属イオンの場合よりも、顕著に大量の電解質が必要となることが知られている((非特許文献3))。多価の金属イオンを使用すると、「製品の中に乳化剤が少なくとも幾分かは含まれることになる」ということも公知である((非特許文献4))。(非特許文献5)によれば、「使用された電解質を極めて注意深く再び洗い出さねばならないだけではなく、最終製品もまたそのプロセスバッチの触媒および乳化剤をまったく含まないようにしなければならない。電解質がほんの少量でも残存すると、加圧成形および射出成形部品に濁りや曇りが発生し、電気的性質が損なわれ、最終製品の水分吸収率が高くなる」(引用)。(非特許文献6)は、迅速に加硫され、加硫の後では高い弾性率を示すニトリルゴムを得るためには、ラテックスにどのような後処理をするべきかについては、何の示唆も与えていない。
【0005】
(特許文献1)には、エマルション中でブタジエンとアクリロニトリルとをラジカル共重合させるための方法が開示されているが、その方法は、モノマーおよび分子量調節剤たとえば、tert−ドデシルメルカプタンのための、特殊な優先的にコンピューターを援用した計量プログラムによって調節され、さらに、得られたラテックスを酸性媒体の中で後処理して固形のゴムが得られる。その方法の顕著な利点は、前記乳化剤として使用された樹脂石鹸および/または脂肪酸石鹸が、コアグレーションにおいて酸を使用した結果としてゴムの中に残る、すなわち、それらが、他の方法の場合のように洗い出される訳ではないとされている。そのNBRが良好な性質を有しているという利点に加えて、その方法の経済性における改良と、洗い出された乳化剤による廃水汚染を避けることができるというのが、ここで特に強調されている。そこで得られる10〜30重量%のアクリロニトリルを含むブタジエン−アクリロニトリルコポリマーは、良好な弾性と低温性能を有し、さらに耐膨潤性および優れた加工性も併せ持っていると記述されている。それによってニトリルゴムの加硫速度およびその加硫されたNBRの性能プロファイルに影響を与えることが可能な手段については、この特許の教示では明らかでない。
【0006】
(特許文献2)は、マグネシウム塩によるラテックスのコアグレーションにおいてアミンを使用する、たとえばジエチレントリアミンと塩化マグネシウムとを組み合わせる手段を用いることで、初期の加硫速度が低下し、従ってニトリルゴムのスコーチ抵抗性が改良されることが開示されている。この従来技術においては、この課題に対するさらなる情報は見いだせない。
【0007】
(特許文献3)には、メチルセルロースと、水溶性のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたは亜鉛の塩とによって、ゴムをそれらの水性分散体から沈殿させることができるということが開示されている。水溶性の塩として塩化ナトリウムを使用するのが好ましいとされている。その記載によれば、この方法の利点は、たとえば乳化剤、触媒残渣などのような余分な成分を実質上まったく含まないコアグラムが得られることであるが、その理由は、それらの余分な物質はコアグラムを分離する際に水と共に除去され、それでも何か残っていたとしても、さらなる水によって完全に洗い出されるからである。この方法で製造されたゴムの加硫挙動についての情報は与えられていない。(特許文献4)においては、0.1〜10重量%(ゴム基準)の水溶性C〜Cアルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロースを、メチルセルロースに代えての補助剤としての0.02〜10重量%(ゴム基準)の水溶性のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたは亜鉛の塩と組み合わせて使用して、ゴムラテックスの電解質コアグレーションを実施している。ここでもまた、水溶性の塩として塩化ナトリウムを使用するのが好ましいとされている。そのコアグラムを機械的に分離し、場合によっては水を用いて洗浄し、残った水分を除去する。ここでもまた、(特許文献3)におけると同様に、コアグラムを分離させたときに、余分な物質は水と共に実質的に完全に除去され、それでも何か残っていたとしても、さらなる水を用いた洗浄で完全に洗い出されると記述されている。
【0008】
(特許文献5)においては、0.02〜0.25重量%の水溶性カルシウム塩を使用すれば、ゴムの水性分散体からゴムの沈殿および分離を、より少量の(ヒドロキシ)アルキルセルロースにより実施することが可能であるとされている。さらなる利点としては、この方法では、乳化剤、触媒残渣などのような余分な成分が実質的に完全に存在しない、非常に高純度のコアグラムが得られると言われている。それらの余分な物質は、コアグラムを分離するときに水と共に除去され、それでも何か残っていたとしても、水により洗い出すことができる。その単離されたゴムの性質がコアグレーションに使用されたカルシウム塩による悪影響を受けることはないとも書かれている。むしろ、加硫性能が損なわれることなく完全に満足のいくゴムが得られると言われている。これは意外なことであると書かれているが、その理由は、カルシウムまたはアルミニウムのイオンのような多価の金属イオンによって分散体からポリマーを沈殿させると、多くの場合ゴムの性質が損なわれることが観察されるからである。最後の記述については、(非特許文献7)が証拠として挙げられている。それとは対照的に、(特許文献5)のゴムは、たとえば初期加硫および/または全加硫における遅延や悪化は示さない。
【0009】
引用文献の(特許文献3)、(特許文献4)および(特許文献5)のいずれにおいても、迅速な加硫および優れた加硫物物性を得るために、どのような手段をとらねばならないかについての開示はされていない。
【0010】
上述の特許類の場合と同様に、(特許文献6)の目的もまた、ラテックスをコアグレーションさせるのに必要な電解質の量の大幅な削減を達成することである。(特許文献6)の教示に従えば、この目的は、ラテックスの電解質コアグレーションにおいて、無機コアグレートに加えて補助剤として、植物由来のタンパク質様物質またはデンプンのような多糖類のいずれか、および必要に応じて水溶性ポリアミン化合物を使用することによって達成される。無機コアグレートとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩が好ましい。特定の添加剤によって、ラテックスの定量的なコアグレーションのために使用する塩の量の削減を達成することが可能となる。(特許文献6)は、そのニトリルゴムの製造および/または後処理の結果として、迅速な加硫をどの程度達成することができるかについては、何の情報も与えていない。
【0011】
(特許文献7)においては、塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムのような無機塩によるニトリルゴムラテックスのコアグレーションにおいては、そのニトリルゴムの中に極めて高い含量のナトリウム、カリウム、およびカルシウムならびにさらには乳化剤が残るということを、記述し、実験データを用いて証明している。しかしながら、これは望ましいことではなく、(特許文献7)の教示によれば、極めて高純度のニトリルゴムを得る目的には、ニトリルゴムのラテックスのコアグレーションにおいて、無機塩に代えて水溶性のカチオン性ポリマーを使用する。ここで使用されるポリマーは、たとえばエピクロロヒドリンおよびジメチルアミンをベースとするものである。これらの補助剤は、製品中に残存する塩の量を顕著に削減させる目的で使用されている。それらから得られる加硫物は、水中保存における低い膨潤率と向上した電気抵抗性を示す。その特許の文面において、言及されている性能の改良は、単純かつ定性的に、その製品の中に残存しているカチオン含量が最小限になっているためであるとされている。観察された現象に対するさらに詳しい説明はなされていない。さらに、(特許文献7)では、そのニトリルゴムの製造および後処理によって、加硫挙動および弾性率の大きさを調節できるか、あるいはどのようにして調節するかについての情報は与えられていない。
【0012】
(特許文献8)の目的は、高純度のニトリルゴムを提供することである。特に、それらのニトリルゴムの残存乳化剤含量は極めて低い。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウム含量のような形態の特定のカチオン含量も極めて低い。そのニトリルゴムは、乳化剤としての脂肪酸および/または樹脂酸の塩の存在下に乳化重合を実施し、次いで、酸を用いて、場合によっては沈殿剤を添加することによりラテックスのコアグレーションを実施することによって製造する。酸としては、所望のpH価に設定することを可能とするすべての鉱酸および有機酸を使用することができる。さらなる沈殿剤としては、たとえば無機酸のアルカリ金属塩が使用される。本明細書において形成される脂肪酸および樹脂酸は、次いで、アルカリ金属水酸化物水溶液によって洗い出され、そのポリマーは最終的に、20%未満の残存湿分含量になるまで剪断にかけられる。(特許文献8)は、迅速な加硫と加硫後の高い弾性率を示すニトリルゴムを製造することに関しては何の情報も与えない。
【0013】
(特許文献9)、(特許文献10)、および(特許文献11)にはそれぞれ、不飽和ニトリルおよび共役ジエンをベースとするニトリルゴムの記載がある。そのニトリルゴムはすべて、10〜60重量%の不飽和ニトリルを含み、15〜150の範囲、または(特許文献9)によれば15〜65の範囲のムーニー粘度を有しており、いずれもが、100モルのモノマー単位あたり少なくとも0.03モルのC12〜C16−アルキルチオ基を含んでいるが、このアルキルチオ基は、少なくとも3個の第三級炭素原子と、それら第三級炭素原子の少なくとも1つに直接結合された1個の硫黄原子とを有している。
【0014】
それらのニトリルゴムは、それぞれの場合において、「連鎖移動剤」として機能し、ポリマー鎖の中に末端基として組み込まれる分子量調節剤として、相当する構造を有するC12〜C16−アルキルチオールの存在下に製造されている。
【0015】
(特許文献11)のニトリルゴムの場合においては、そのコポリマー中の不飽和ニトリルの組成分布の幅「ΔAN」(AN=アクリロニトリル)が3〜20の範囲に入ると記載されている。それらを製造する方法は、重合の開始時にはモノマーの全量の30〜80重量%だけを使用し、残りの量のモノマーは、20〜70重量%の重合転化率のところでのみ供給するという点で(特許文献9)とは異なっている。
【0016】
(特許文献10)のニトリルゴムの場合においては、それらが、低分子量で数平均分子量Mが35000未満のフラクションを3〜20重量%含んでいると記載されている。それらを製造する方法は、重合の前には10〜95重量%だけのアルキルチオールをモノマー混合物の中に混合し、残りの量のアルキルチオールは、重合転化率が20〜70重量%に達してからにのみ供給するという点で(特許文献9)とは異なっている。
【0017】
ラテックスのコアグレーションに関しては、3件の特許出願の(特許文献9)、(特許文献10)、および(特許文献11)のいずれもが、いかなるコアグラントでも使用可能であるとの開示をしている。無機コアグラントとしては、塩化カルシウムおよび塩化アルミニウムの記載があり、使用されている。(特許文献10)および(特許文献11)においては、好ましい実施態様は、実質的にハロゲンを含まず、ノニオン性表面活性助剤ならびにハロゲンを含まない金属塩たとえば硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウムおよび硫酸ナトリウムの存在下にラテックスのコアグレーションを実施することにより得られるニトリルゴムである。硫酸アルミニウムまたは硫酸マグネシウムを使用するコアグレーションが好ましいと記載されている。そうして得られる実質的にハロゲンを含まないニトリルゴムは、3ppm以下のハロゲン含量である。
【0018】
(特許文献11)の比較例6および(特許文献10)の比較例7には、NaClとCaClとの混合物を使用してラテックスのコアグレーションを実施しているが、そこではCaClを大量に使用し、NaCl対CaClの重量比が1:0.75である。スコーチ時間と100%伸び時の応力に関しては、それぞれの表12または13に示される他の実施例とは顕著な差は認められない。
【0019】
(特許文献9)、(特許文献11)、および(特許文献10)によれば、ニトリルゴムを製造するための分子量調節剤としては、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオールおよび2,2,4,6,6,8,8−ヘプタメチルノナン−4−チオールの化合物の形態のアルキルチオールを使用することが不可欠である。そこでは、調節剤として従来公知のtert−ドデシルメルカプタンを使用すると、劣った性質のニトリルゴムが得られると、明瞭に指摘されている。
【化1】

【0020】
(特許文献9)、(特許文献11)、および(特許文献10)において製造されたニトリルゴムの場合、それらが有利な性能プロファイル、ゴム混合物の良好な加工性を有し、加工の際に起こりうる型の汚れを少なくすると記載されている。得られる加硫物が、耐低温性と耐油性の良好な組合せを有し、良好な機械的性質を有しているとの記載がある。ニトリルゴムの製造において75%を超える、好ましくは80%を超える高い重合転化率であるために、高い生産性を達成することが可能となり、特に射出成形用のNBRグレードの場合には、硫黄またはペルオキシドを使用した加硫における加硫速度が高いということも記載されている。それらのニトリルゴムが短い初期加硫時間と高い架橋密度を有することについても指摘されている。(特許文献9)、(特許文献11)、および(特許文献10)に従って製造されたニトリルゴムが迅速な加硫をすることの証拠として、初期加硫時間(「スコーチ時間」(「T」として測定)と呼ばれる)が提示されているが、これは単なる初期加硫速度の目安でしかない。総合的な加硫速度についても、それにどのように影響を与えることができるかについても、何も書かれていない。架橋密度は、最大トルク値(Vmaxとして測定)の引用によってのみ説明されている。
【0021】
実務上では、スコーチ時間が短いということは必ずしも望ましいことではないが、その理由は、そのような早い初期加硫が原因で、相当するゴム混合物に対して信頼性のある加工をすることができないからである。特に射出成形においては、初期加硫が早いのは、満足のいく結果を与えない。加工の経済性の面では、サイクル時間が短いことが極めて重要である。短いサイクル時間を達成するためには、全加硫速度と初期加硫速度との差が重要である。これは「t90−t10」として測定されるが、ここでt90は、最終的な加硫の90%が起きる時間であり、t10は、最終的な加硫の10%が起きる時間である。しかしながら、(特許文献9)、(特許文献11)、および(特許文献10)において使用された、調節剤の2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオールおよび2,2,4,6,6,8,8−ヘプタメチルノナン−4−チオールを使用することが、迅速な加硫特性を設定したり、高い弾性率を可能とする設定にしたりするために必須という訳ではない。
【0022】
この点に関しては、(特許文献9)には、特に、高い加硫速度を設定するための多くの方法がすでに提案されており、たとえば、乳化剤および沈殿剤を最小限の量で使用すると、その結果としてNBR中には最小限の量の乳化剤および沈殿剤しか残らないということが記載されている。しかしながら、(特許文献9)によれば、それらの手段も満足のいくものではない(p.2、22〜28行)。
【0023】
まとめると、広汎な文献が存在するにもかかわらず、ニトリルゴムの他の重要な性質、特に加硫物物性に悪影響を与えることなく、ニトリルゴムの総合的な加硫速度、特に全加硫速度と初期加硫速度との差(t90−t10)の調節を可能とするような手段は、本発明の時点までには公知となっていないということが言えるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】旧東独国特許第154 702号明細書
【特許文献2】特公昭48−27902号公報(特願昭44−32322号)
【特許文献3】独国特許出願公開第23 32 096A号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第24 25 441A号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第27 51 786A号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第30 43 688A号明細書
【特許文献7】米国特許第4,920,176A号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1 369 436A号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 692 496A号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 779 301A号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第0 779 300A号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】W.Hofmann、Rubber Chem.Technol.、36(1963)1
【非特許文献2】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(VCH Verlagsgesellschaft、Weinheim、1993)、pp.255〜261
【非特許文献3】Kolloid−Z.、154、154(1957)
【非特許文献4】Houben−Weyl(1961)、Methoden der Org.Chemie,Makromolekulare Stoffe 1、p.484
【非特許文献5】Houben−Weyl(1961)、Methoden der Org.Chemie、Makromolekulare Stoffe 1、p.479
【非特許文献6】Houben−Weyl
【非特許文献7】Houben−Weyl(1961)、Methoden der Org.Chemie、Makromolekulare Stoffe 1、pp.484/485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明の目的は、迅速な初期加硫とその後の加工における全加硫を可能とし、良好な性能プロファイルを有する加硫物へと導くことを可能とするニトリルゴムを与える方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0027】
意外なことには、特定の分子量調節剤を使用して乳化重合を実施すると同時に、コアグラントとして少なくとも1種のマグネシウム塩を使用する特定の方法でラテックスのコアグレーションを実施することで、そのニトリルゴムが、それら多様なプロセス手段の結果として特定のカチオンの含量を有するようにすれば、優れた加硫速度と傑出した加硫物物性を有するニトリルゴムが得られるということが見出された。
【0028】
したがって、本発明は、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエンおよび場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーを乳化重合させることによりニトリルゴムを製造するための方法であって、最初に重合で得られたニトリルゴムを含むラテックスをコアグレーションにかけ、そうして得られたコアグレート化ニトリルゴムを次いで洗浄する方法において、
(i)乳化重合を、12〜16個の炭素原子および少なくとも3個の第三級炭素原子を含む少なくとも1種のアルキルチオール(硫黄がそれら第三級炭素原子の1つに結合されている)の存在下に実施し、そして
(ii)コアグレーションの前に、乳化重合において得られたラテックスのpHを少なくとも6に設定し、マグネシウム塩の添加の前にラテックスの温度を45℃未満の値に設定する
ことを特徴とする方法を提供する。
【0029】
本発明はさらに、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエンおよび場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含み、0〜60ppm×g/molの範囲の一般式(I)
【数1】

[式中、c(Ca2+)、c(Mg2+)、c(Na)、およびc(K)は、ニトリルゴム中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、およびカリウムイオンの濃度(単位、ppm)を示し、マグネシウムイオンの濃度、c(Mg2+)は、50〜250ppmの範囲である]
によるイオン指数(「II」)を有するニトリルゴムを提供する。
【0030】
これら本発明のニトリルゴムは、全加硫時間と初期加硫時間の差(t90−t10)で特徴付けられる高い加硫速度と、さらには良好な加硫物物性(特に高弾性率)を有している。
【0031】
そのようなニトリルゴムは、従来技術からは今日まで知られていないものである。
【0032】
欧州特許出願公開第1 369 436A号明細書の実施例において、記述されたニトリルゴムにおけるカチオン含量が与えられているが、Mg含量については<1ppmの値であると報告されている。これらの数字に基づくと、上述の式(I)によるイオン指数は、実施例1および実施例2のいずれにおいても、簡略化のために式(I)においてMg含量を1ppmとして計算することができる。この方法で計算したイオン指数は、本発明のニトリルゴムの場合に観察される値からはほど遠いものであって、欧州特許出願公開第1 369 436A号明細書の実施例1ではそのイオン指数が−12.4ppm×mol/gであり、実施例2のそれは−7.8ppm×mol/gである。それと同時に、欧州特許出願公開第1 369 436A号明細書では、カチオン混合物が総合的な加硫速度に影響を及ぼすと信ずる根拠が与えられていないが、特にその理由は、欧州特許出願公開第1 369 436A号明細書では、所望の高い初期および全加硫速度と共に良好な性能プロファイルも有するニトリルゴムを得るために必要なカチオン混合物についての情報が何も与えられていないからである。
【0033】
米国特許第4,920,176A号明細書の実施例においては、ニトリルゴムのラテックスが各種の沈殿剤を用いて後処理されている。実施例A〜Dは、コアグラントとしてNaClまたはCaClを用いて得られるが、その結果は、マグネシウム含量が極端に低い。米国特許第4,920,176A号明細書の実施例E〜Iは、本発明によるものよりははるかに高いイオン指数を有するか、あるいはそうでなければ、本発明に従って本明細書で準拠している範囲よりは顕著に高いかまたは低いマグネシウム含量を有しているか、のいずれかである。
【0034】
欧州特許出願公開第0 692 496A号明細書、欧州特許出願公開第0 779 300A号明細書、および欧州特許出願公開第0 779 301A号明細書の実施例では、ラテックスのコアグレーションのためにマグネシウム塩を使用したものは1つもない。しかしながら、コアグレーションにおいてマグネシウム塩を使用しない限り、50〜250ppmの範囲のマグネシウム含量を得ることはできない。
【0035】
カチオン含量の測定:
本発明におけるイオン指数(II)を求めるためにカチオン含量を測定する目的では、次の方法が有効であり、使用される:0.5gのニトリルゴムを、白金るつぼ中550℃で乾式灰化させることにより加熱分解させ、次いでその灰分を塩酸の中に溶解させる。脱イオン水を用いて加熱分解物の溶液を適切に希釈してから、ICP−OES(誘導結合プラズマ−発光分析)により、その酸マトリックスに合わせた較正溶液に対して、以下の波長で金属含量を測定する:
カルシウム:317.933nm、
カリウム:766.491nm、
マグネシウム:285.213nm、
ナトリウム:589.592nm
加熱分解物溶液中の元素の濃度および使用した装置の感度に応じて、そのサンプル溶液の濃度を、使用されるそれぞれの波長のための検量線の直線領域にマッチさせた(B.Welz、「Atomic Absorption Spectrometry」、2nd Ed.、Verlag Chemie、Weinheim 1985)。
【0036】
式(I)によるイオン指数において、金属含量は対応する金属の原子量で除算する。この理由から、IIの単位は「ppm×mol/g」である。
【0037】
イオン指数は、好ましくは10〜55ppm×mol/gの範囲、特に好ましくは10〜50ppm×mol/gの範囲である。
【0038】
ニトリルゴム:
本発明のニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、および場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を有する。
【0039】
共役ジエンはいかなる性質を有するものであってもよい。(C〜C)−共役ジエンを使用するのが好ましい。特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン、またはそれらの混合物である。特に、1,3−ブタジエンまたはイソプレンまたはそれらの混合物を使用する。極めて特に好ましいのは1,3−ブタジエンである。
【0040】
α,β−不飽和ニトリルとしては、各種公知のα,β−不飽和ニトリルを使用することができるが、(C〜C)−α,β−不飽和ニトリルたとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−クロロアクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはそれらの混合物が好ましい。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
【0041】
したがって、特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリルと1,3−ブタジエンとのコポリマーである。
【0042】
共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルとは別に、1種または複数のさらなる共重合性モノマーたとえば、α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドを、追加的に使用することができる。そのようなニトリルゴムは慣習的に、カルボキシル化ニトリルゴム、または簡略的に「XNBR」とも呼ばれる。
【0043】
α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸としては、たとえば、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびイタコン酸を使用することができる。好ましいのは、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸である。
【0044】
α,β−不飽和カルボン酸のエステルとしては、たとえば、アルキルエステル、アルコキシアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、またはそれらの混合物が使用される。
【0045】
特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。特に、アクリル酸n−ブチルが使用される。
【0046】
特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。特に、アクリル酸メトキシエチルが使用される。
【0047】
特に好ましいα,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルである。
【0048】
使用可能なα,β−不飽和カルボン酸のさらなるエステルは、たとえば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートである。
【0049】
さらに可能なモノマーは、ビニル芳香族化合物たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、およびビニルピリジンである。
【0050】
本発明のニトリルゴム中における共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。共役ジエンまたは共役ジエンを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常は20〜95重量%の範囲、好ましくは40〜90重量%の範囲、特に好ましくは60〜85重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルまたはα,β−不飽和ニトリルを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。いずれの場合においても、モノマーの比率を合計したものが100重量%となる。
【0051】
そのさらなるモノマーは、全ポリマーを基準にして、0〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在させることができる。この場合、単一もしくは複数の共役ジエンおよび/または単一もしくは複数のα,β−不飽和ニトリルの相当する比率を、これらのさらなるモノマーの比率で置き換え、全部のモノマーの比率を合計すると依然として100重量%となるようにする。
【0052】
さらなるモノマーとして(メタ)アクリル酸のエステルを使用する場合には、それらは通常1〜25重量%の量で存在させる。
【0053】
さらなるモノマーとしてα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸を使用する場合には、それらは通常10重量%未満の量で存在させる。
【0054】
本発明のニトリルゴムの窒素含量は、DIN 53 625に従って、Kjeldahl法によって測定する。極性のコモノマーが含まれているために、そのニトリルゴムは通常メチルエチルケトンの中に、20℃で≧85重量%程度まで溶解可能である。
【0055】
そのニトリルゴムは、10〜150、好ましくは20〜100ムーニー単位のムーニー粘度(ML(1+4、100℃))を有している。ムーニー粘度(ML(1+4、100℃))は、DIN 53 523/3またはASTM D 1646に従って、剪断円板粘度計により100℃で測定される。
【0056】
そのニトリルゴムのガラス転移温度は、−70℃〜+10℃の範囲、好ましくは−60℃〜0℃の範囲である。
【0057】
アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含む本発明によるニトリルゴムが好ましい。アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、1種または複数のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドの繰り返し単位、特にα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルの繰り返し単位、極めて特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルまたは(メタ)アクリル酸ラウリルの繰り返し単位を有するニトリルゴムが好ましい。
【0058】
ニトリルゴムを製造するための方法:
それらのニトリルゴムを、本発明の方法における乳化重合によって製造する。
【0059】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤の水溶性塩または電荷を有さない乳化剤を使用することができる。アニオン性乳化剤を使用するのが好ましい。
【0060】
アニオン性乳化剤としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸(laevopimaric acid)を含む樹脂酸混合物の二量化、不均化、水素化および変性によって得られる変性樹脂酸を使用することができる。特に好ましい変性樹脂酸は、不均化樹脂酸である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、6th Edition、Volume 31、pp.345〜355)。
【0061】
アニオン性乳化剤として脂肪酸を使用することもまた可能である。それらには、1分子あたり6〜22個の炭素原子を含む。それらは完全に飽和であってもよいし、分子の中に1個または複数の二重結合を有していてもよい。脂肪酸の例としては、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。それらのカルボン酸は通常、由来がはっきりしている油脂をベースとするものであって、たとえばヒマシ油、綿実油、ラッカセイ油、アマニ油、ヤシ油、パーム核油、オリーブ油、ナタネ油、ダイズ油、魚油、および牛脂などである(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、6th Edition、Volume 13、pp.75〜108)。好ましいカルボン酸は、ヤシ油脂肪酸から、および牛脂から誘導され、部分的または全面的に水素化されたものである。
【0062】
変性樹脂酸または脂肪酸をベースとするそのようなカルボン酸は、水溶性のリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムの塩として使用される。ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0063】
さらなるアニオン性乳化剤としては、有機基に結合されたスルホン酸塩、硫酸塩およびリン酸塩が挙げられる。可能な有機基としては、脂肪族基、芳香族基、アルキル化芳香族化合物、縮合芳香族化合物およびメチレン架橋芳香族化合物が挙げられるが、そのメチレン架橋および縮合芳香族化合物はさらにアルキル化されていてもよい。そのアルキル鎖の長さは、6〜25個の炭素原子である。芳香族化合物に結合されたアルキル鎖の長さは、3〜12個の炭素原子である。
【0064】
それらの硫酸塩、スルホン酸塩およびリン酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩として使用される。ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム塩が好ましい。
【0065】
そのようなスルホン酸塩、硫酸塩およびリン酸塩の例としては、ラウリル硫酸Na、アルキルスルホン酸Na、アルキルアリールスルホン酸Na、メチレン架橋アリールスルホン酸のNa塩、アルキル化ナフタレンスルホン酸のNa塩、およびメチレン架橋ナフタレンスルホン酸のNa塩などが挙げられるが、それらはさらにオリゴマー化されていてもよく、そのオリゴマー化度は2〜10の範囲である。アルキル化ナフタレンスルホン酸およびメチレン架橋(場合によってはさらにアルキル化)ナフタレンスルホン酸は通常、異性体の混合物として存在するが、それには、分子中に2個以上のスルホン酸基(2〜3個のスルホン酸基)を含んでいてもよい。特に好ましいのは、ラウリル硫酸Na、12〜18個の炭素原子を有するアルキルスルホン酸Na混合物、アルキルアリールスルホン酸Na、ジイソブチレンナフタレンスルホン酸Na、メチレン架橋ポリナフタレンスルホン酸塩混合物、およびメチレン架橋アリールスルホン酸塩混合物である。
【0066】
電荷を有さない乳化剤は、酸性度が十分に高い水素を有する化合物の上への、エチレンオキシドの付加反応生成物およびプロピレンオキシドの付加反応生成物から誘導される。そのような化合物としては、たとえば、フェノール、アルキル化フェノールおよびアルキル化アミンが挙げられる。エポキシドの平均重合度は2〜20の範囲である。電荷を有さない乳化剤の例は、8、10および12個のエチレンオキシド単位を有するエトキシル化ノニルフェノールである。電荷を有さない乳化剤は通常、単独で使用されることはなく、アニオン性乳化剤と組み合わせて使用される。
【0067】
好ましいのは、不均化アビエチン酸および部分水素化タロウ脂肪酸ならびにそれらの混合物のNaおよびK塩、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ならびにアルキル化およびメチレン架橋ナフタレンスルホン酸である。
【0068】
乳化剤は、モノマー混合物100重量部あたり、0.2〜15重量部、好ましくは0.5〜12.5重量部、特に好ましくは1.0〜10重量部の量で使用される。
【0069】
上述の乳化剤を使用して乳化重合を実施する。重合させた後で、なんらかの原因により、早すぎる自己コアグレーションを起こす傾向を有するラテックスが得られたような場合には、ラテックスの後安定化のために上述の乳化剤を使用することもできる。このことは、特に、スチームを用いた処理により未反応のモノマーを除去する前や、ラテックスの貯蔵の前に必要となることがある。
【0070】
生成するニトリルゴムの分子量を調節するためには、12〜16個の炭素原子および少なくとも3個の第三級炭素原子を有し、その硫黄がそれらの第三級炭素原子の1つに結合されている、少なくとも1種のアルキルチオールを使用する。それらのメルカプタンは、個別のものであっても混合物であってもよい。適切なメルカプタンは、たとえば、オリゴマー化プロペン、特に四量体プロペンの上、またはオリゴマー化イソブテン、特に三量体イソブテン(文献においては、多くの場合第三級ドデシルメルカプタン(「t−DDM」)と呼ばれている)の上に硫化水素を付加させた化合物である。
【0071】
そのようなアルキルチオールまたはアルキルチオールの(異性体)混合物は、市場で入手することも可能であるし、あるいは文献に詳細に記載されている方法を用いて当業熟練者が合成することもできる(参照、たとえば、特開平07−316126号公報、特開平07−316127号公報および特開平07−316128号公報、さらには英国特許第823,823号明細書および英国特許第823,824号明細書)。
【0072】
上述の定義にあてはまるアルキルチオールの好適な例は、2,2,4,6,6,8,8−ペンタメチルヘプタン−4−チオールである。
【0073】
さらに、特に好ましいのは、以下のものを含むC12−メルカプタンの新規な混合物であるが、
−2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール、
−2,4,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−2−チオール、
−2,3,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−2−チオール、および
−2,3,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−3−チオール、
この混合物は、その調製方法と共に、Lanxess Deutschland GmbHにより同日に出願された特許出願書類に記載されている。この特定の新規な混合物は、好ましくは、0℃〜−60℃の範囲の温度で、連続プロセス中で、硫化水素をトリイソブテンと反応させることにより得られるが、ここで、
(a)反応前に硫化水素を乾燥にかけ、
(b)使用するトリイソブテンの水含量は70ppm以下とし、
(c)三フッ化ホウ素を触媒として、使用するトリイソブテンを基準にして、1.5重量%以下の量で使用し、
(d)三フッ化ホウ素と錯体を形成するような化合物を存在させずに、反応を実施し、そして
(e)反応後に、その反応混合物をアルカリ水溶液と接触させて、触媒を除去する。
【0074】
分子量調節剤は、モノマー混合物100重量部あたり、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部の量で使用する。個々の調節剤を使用することも、あるいは各種の調節剤の混合物を使用することも可能である。
【0075】
個々の分子量調節剤または分子量調節剤の混合物は、重合の開始時に導入するか、そうでなければ、何回かに分けて重合の途中に添加するかのいずれかであるが、その調節混合物の全部または個々の成分を何回かに分けて重合の途中に添加するのが好ましい。
【0076】
その機能の故に、ニトリルゴム中に末端基の形態である程度分子量調節剤が存在している、すなわち、ニトリルゴムがある程度の量のアルキルチオール末端基を含んでいる。上述の新規な混合物であるC12−メルカプタンを使用する場合、それらの末端基は、調節剤混合物の中に存在するチオールに相当するチオール末端基、すなわち、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオおよび/または2,4,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−2−チオおよび/または2,3,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−2−チオおよび/または2,3,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−3−チオ末端基である。
【0077】
乳化重合の開始は典型的には、分解してフリーラジカルとなる、重合開始剤を使用して実施する。したがって、重合開始剤としては、−O−O−単位(ペルオキソ化合物)または−N=N−単位(アゾ化合物)を含む化合物が挙げられる。
【0078】
ペルオキソ化合物としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩、ペルオキソ二リン酸塩、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、過酸無水物、および2個の有機基を有するペルオキシドが挙げられる。ペルオキソ二硫酸およびペルオキソ二リン酸の好適な塩は、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩である。好適なヒドロペルオキシドは、たとえば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびp−メンタンヒドロペルオキシドである。好適な2個の有機基を有するペルオキシドは、ジベンゾイルペルオキシド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルアセテートなどである。好適なアゾ化合物は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、およびアゾビスシクロヘキサンニトリルである。
【0079】
過酸化水素、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、ペルオキソ二硫酸塩およびペルオキソジスリン酸塩は、還元剤と組み合わせても使用される。好適な還元剤は、スルフェン酸塩、スルフィン酸塩、スルホキシル酸塩、ジチオネート、亜硫酸塩、メタビス亜硫酸塩、二亜硫酸塩、糖、尿素、チオ尿素、キサントゲン酸塩、チオキサントゲン酸塩、ヒドラジニウム塩、アミンおよびアミン誘導体たとえば、アニリン、ジメチルアニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンである。酸化剤と還元剤とからなる重合開始剤系はレドックス系と呼ばれる。レドックス系を採用する場合には、遷移金属たとえば鉄、コバルトまたはニッケルの塩を、適切な錯化剤たとえば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムまたは二リン酸四カリウムと組み合わせて使用されることも多い。
【0080】
好適なレドックス系としては以下のものが挙げられる:1)ペルオキソ二硫酸カリウムとトリエタノールアミンとの組合せ、2)ペルオキソ二リン酸アンモニウムとメタビス亜硫酸ナトリウム(Na)との組合せ、3)p−メタンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムと、Fe(II)硫酸塩(FeSO7HO)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムとの組合せ、4)クメンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムと、Fe(II)硫酸塩(FeSO7HO)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウムおよび二リン酸四カリウムとの組合せ。
【0081】
酸化剤の量は、モノマー100重量部あたり、0.001〜1重量部である。還元剤のモル量は、使用した酸化剤のモル量を基準にして、50%〜500%の範囲である。
【0082】
錯化剤のモル量は、使用した遷移金属の量を基準にし、通常それと等モルである。
【0083】
重合を実施するためには、重合開始剤系の全部または個々の成分を、重合の開始時か、または重合の途中で導入する。
【0084】
重合の途中に何回かに分けて、活性剤系の全部または個々の成分を添加するのが好ましい。連続的に添加することによって、反応速度を調節することが可能となる。
【0085】
重合時間は、5時間〜15時間の範囲であるが、モノマー混合物のアクリロニトリル含量と重合温度とに実質的に依存する。
【0086】
重合温度は、0〜30℃の範囲、好ましくは5〜25℃の範囲である。
【0087】
転化率が50〜90%の範囲、好ましくは70〜85%の範囲に達したら、重合を停止させる。
【0088】
この目的のためには、その反応混合物に重合停止剤を添加する。適切な重合停止剤としては、たとえば、ジメチルジチオカルバミン酸塩、亜硝酸Na、ジメチルジチオカルバミン酸塩、亜硝酸Na、ヒドラジンおよびヒドロキシルアミンの混合物、さらにはそれらからの塩、たとえば、硫酸ヒドラジニウムおよび硫酸ヒドロキシルアンモニウム、ジエチルヒドロキシルアミン、ジイソプロピルヒドロキシルアミン、ヒドロキノンの水溶性塩、亜ジチオン酸ナトリウム、フェニル−α−ナフチルアミン、ならびに芳香族フェノールたとえばtert−ブチルカテコール、またはフェノチアジンが挙げられる。
【0089】
乳化重合において使用する水の量は、モノマー混合物100重量部あたり、100〜900重量部の範囲、好ましくは120〜500重量部の範囲、特に好ましくは150〜400重量部の範囲の水である。
【0090】
重合の際の粘度を低下させるため、pHを調節するため、およびpH緩衝剤として、塩を、乳化重合における水相の中に添加することができる。典型的な塩は、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムの形態の1価の金属の塩である。好ましいのは、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ならびに塩化カリウムである。それらの電解質の量は、モノマー混合物100重量部あたり、0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部の範囲である。
【0091】
重合はバッチ式で実施することもできるし、あるいは、撹拌容器のカスケード中で連続的に実施することもできる。
【0092】
重合の行程を均質にするためには、重合開始剤系のほんの一部だけを重合開始のために使用し、重合の途中でその残りを供給する。通常は、重合開始剤の全量の10〜80重量%、好ましくは30〜50重量%を使用して重合を開始させる。重合が開始した後に、重合開始剤系の個々の構成成分を導入することも可能である。
【0093】
化学的に均質な製品を製造したいのならば、組成が、共沸ブタジエン/アクリロニトリル比から外れたときには、さらなるアクリロニトリルまたはブタジエンを導入する。10〜34重量%のアクリロニトリル含量のNBRグレードの場合や、40〜50重量%のアクリロニトリルを含むグレードの場合には、さらなる導入を実施するのが好ましい(W.Hofmann、Rubber Chem.Technol.、36(1963)1)。そのさらなる導入は、たとえば旧東独国特許第154 702号明細書に示されているように、コンピュータープログラムに基づくコンピューター制御で実施するのが好ましい。
【0094】
未反応モノマーおよび揮発性成分を除去するために、反応停止させたラテックスを水蒸気蒸留にかける。この場合、70℃〜150℃の範囲の温度を採用し、温度<100℃で圧力を下げる。
【0095】
揮発性成分の除去の前に、乳化剤によってラテックスを後安定化させることができる。この目的のためには、上述の乳化剤を、ニトリルゴム100重量部あたり、0.1〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の量で使用するのが有利である。
【0096】
ラテックスのコアグレーション:
ラテックスのコアグレーションより前またはその途中で、そのラテックスに、1種または複数の老化防止剤を添加することができる。この目的のためには、フェノール系、アミンおよびその他の老化防止剤が適している。
【0097】
好適なフェノール系老化防止剤としては、アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノールたとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、および立体障害チオビスフェノールなどが挙げられる。
【0098】
ゴムの変色が重要ではない場合には、アミン老化防止剤、たとえば、ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするものも使用される。フェニレンジアミンの例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス−1,4−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0099】
その他の老化防止剤としては、ホスファイトたとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)などが挙げられる。一般的には、フェノール系老化防止剤と組み合わせた形で、ホスファイトが使用される。ペルオキシド加硫するNBRグレードでは特に、TMQ、MBIおよびMMBIが使用される。
【0100】
コアグレーションには、少なくとも6、好ましくは>6のpHを有するラテックスが使用される。必要に応じて、塩基、好ましくはアンモニアまたは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを添加することによってこのpHを設定する。
【0101】
少なくとも1種のマグネシウム塩を使用して、ラテックスのコアグレーションを実施する。塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および/または硝酸マグネシウムを使用するのが適切である。塩化マグネシウムを使用するのが好ましい。
【0102】
コアグレーションのために少なくとも1種のマグネシウム塩、好ましくは塩化マグネシウムの形態で使用することに加えて、1種または複数のその他の2価の金属の1種または複数のその他の塩を、コアグレーションに使用したすべての塩の合計量を基準にして、5重量%までの量で使用することも可能である。
【0103】
さらに、コアグレーションに使用したすべての塩の合計量を基準にして、X重量%までの1価の金属塩を使用することも可能であるが、ここでX重量%とは、50重量%から、1種または複数のその他の2価の金属(存在するならば)の1種または複数のその他の塩の重量%を減算したものである。
【0104】
コアグレーションにおいて2価の金属の他の塩が存在しないならば、たとえば、使用した塩の合計量を基準にして、50重量%までの、カリウム塩好ましくは塩化カリウム、および/またはナトリウム塩好ましくは塩化ナトリウムを使用することができる。カルシウム塩の形態の不純物、または積極的に添加したカルシウム塩、好ましくは塩化カルシウムが、使用したすべての塩の合計量を基準にして、5重量%を超えないようにするべきであるが、そのようなカルシウム塩が存在している場合には、1価の金属の塩の重量パーセントを相応に低下させる。
【0105】
ラテックスのコアグレーションは、ニトリルゴムを基準にして、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の少なくとも1種のマグネシウム塩を使用して実施する。ニトリルゴムをコアグレート化させるのにちょうど必要な量のマグネシウム塩を使用するのが好ましく、その必要量はコアグレート化するそのラテックスの一部分で予め求めておく。
【0106】
マグネシウム塩溶液、好ましくは塩化マグネシウム溶液の濃度は、通常0.1〜35重量%、好ましくは0.5〜30重量%である。
【0107】
少なくとも1種のマグネシウム塩、好ましくは塩化マグネシウムの水溶液は、脱イオン水、または脱イオン化されていなくそのためにカルシウムイオンを含む水を用いて調製する。カルシウムイオンを含む水を使用する場合には、a)マグネシウム塩中のすべての不純物、およびb)使用した水からのカルシウムの量が、使用したすべての塩の合計量を基準にして、5重量%、好ましくは1重量%を超えないように注意しなければならない。
【0108】
ラテックスのコアグレーションより前に、塩基を添加することによってそのラテックスのpHを少なくとも6、好ましくは>6に設定する。pHの設定には、たとえば、アンモニア、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムを使用することができる。
【0109】
ラテックスのコアグレーションは、ラテックスに塩溶液を添加するか、別の方法として、容器の中にラテックスを入れて、塩溶液を添加するかの方法で実施することができる。ラテックスのコアグレーションは連続法でも、バッチ法でも実施される。ノズルを利用して実施する連続法のコアグレーションが好ましい。
【0110】
本発明の方法においては、マグネシウム塩を添加する前に、ラテックスの温度を45℃未満の値に設定しておくことが重要である。こうすることによってのみ、ラテックスに塩を添加したときに、極めて微細に分散されたコアグラムが形成される。塩を添加した後で、その混合物を、所望により、100℃までの温度、好ましくは50〜90℃の範囲の温度に加熱することもできる。この昇温加熱の過程で、>5mmの直径を有し、濾過除去可能な比較的大きな粒子が生成する。
【0111】
電解質としての上述の1種または複数の塩に加えて、コアグレーションにおいて沈殿助剤を使用することもできる。可能な沈殿助剤は、たとえば水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーは、ノニオン性、アニオン性、またはカチオン性である。
【0112】
ノニオン性ポリマー沈殿助剤の例としては、変性セルロースたとえば、ヒドロキシアルキルセルロースまたはメチルセルロース、および酸性水素を有する化合物の上のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドアダクトなどが挙げられる。酸性水素を有する化合物の例としては、脂肪酸、糖たとえばソルビトール、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、フェノール、アルキル化フェノール、(アルキル)フェノール−ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。それらの化合物の上へのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの付加反応生成物は、ランダム構造であっても、ブロック構造であってもよい。それらの反応生成物の内でも、温度が上昇すると溶解度が低下するようなものが好ましい。特性曇り温度は、0〜100℃の範囲、特には20〜70℃の範囲である。
【0113】
アニオン性ポリマー沈殿助剤の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好ましいのは、ポリアクリル酸のNa塩である。
【0114】
カチオン性ポリマー沈殿助剤は通常、ポリアミン、または(メタ)アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマーをベースとするものである。好ましいのは、ポリメタクリルアミドおよびポリアミン、特にエピクロロヒドリンおよびジメチルアミンをベースとするものである。
【0115】
ポリマー沈殿助剤の量は、ニトリルゴム100重量部あたり、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部である。
【0116】
その他の沈殿助剤を使用することも考えられる。しかしながら、ここで注意しておきたいのは、追加の沈殿助剤なしでも、特にC〜C−アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、植物由来のタンパク質様物質または多糖類たとえばデンプンまたは水溶性ポリアミン化合物が存在していなくても、本発明の方法を、所望の成功をもって実施することが容易に可能であるということである。
【0117】
コアグレーションのために使用するラテックスが、1%〜40%の範囲、好ましくは5%〜35%の範囲、特に好ましくは15〜30重量%の範囲、の固形分濃度を有しているのが有利である。
【0118】
コアグレート化ニトリルゴムの洗浄:
コアグレーションの後では、ニトリルゴムは通常、団粒(crumb)の形態で存在している。したがって、コアグレート化させたNBRの洗浄を、団粒洗浄と呼ぶこともある。このコアグレート化団粒を洗浄するためには、脱イオン水(DW)または脱イオン化していない水(BW)のいずれを使用することも可能である。少なくとも1種のマグネシウム塩を使用するラテックスのコアグレーションにおいて、カルシウム塩が先に示した許容量(使用した全塩の5重量%まで)で存在していないならば、コアグレート化NBRの洗浄において、脱イオン化されていないためにカルシウムイオンを含んでいる水を使用するのが有用であるということが見出された。
【0119】
洗浄は、15〜90℃の範囲で実施するが、45〜70℃の範囲の温度が好ましい。
【0120】
洗浄水の量は、ニトリルゴム100重量部あたり、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
【0121】
ゴムの団粒は、多段の洗浄にかけ、個々の洗浄段階の間ではゴム団粒を部分的に脱水するのが好ましい。個々の洗浄段階の間の団粒の残存湿分含量は、5〜50重量%の範囲、好ましくは7〜25重量%の範囲である。洗浄段の段数は通常で1〜7段、好ましくは1〜3段である。洗浄は、バッチ方式でも連続方式でも実施される。多段の連続プロセスが好ましく、向流洗浄として水を節約するのが好ましい。
【0122】
脱水および乾燥:
洗浄が完了した後に、典型的には、ニトリルゴムの団粒を脱水する。これは通常、2段で実施される。その第一段では、ゴムの団粒を予備的な機械的脱水にかける。その第二段では、残りの水を蒸発させる。予備脱水と乾燥はいずれも、連続的に実施するのが好ましい。予備的な機械的脱水に好適な装置は、ストレーナースクリューであって、その中で水がストレーナースリットまたはスクリューを通過して側方に絞りだされるが、ここでは、製品の流れに対して向流に機械的脱水が実施される(Weldingの原理)。
【0123】
ニトリルゴムの中に残存するカチオンの含量は、所望により、予備的な機械的脱水の程度によって影響を与えることができる。これは不十分な洗浄が採用された場合には特に有利となりうる。洗浄が効果的であれば、洗浄の直後に適切なカチオン含量が得られる。予備的な機械的脱水の後の水含量は、5〜25重量%の範囲である。製品中に残存する混合カチオンを調節するためには、予備的な機械的脱水の後の水含量が5〜15重量%、特に5〜10重量%であるのが有用であることが見出された。
【0124】
予備的脱水にかけたニトリルゴムの乾燥は、流動床乾燥機またはプレート乾燥機の中で実施する。乾燥の際の温度は、80〜150℃の範囲である。温度プログラムに従って、乾燥プロセスの最後に向けて温度を下げながら乾燥をするのが好ましい。
【0125】
意外なことには、特定のカチオンの含量、したがって指示された範囲のイオン指数を有し、また特定のマグネシウム含量も有する本発明のニトリルゴムは、所望の高い加硫速度(初期加硫時間−全加硫時間の差)を有し、得られる加硫物は極めて良好な弾性率を有する。
【0126】
したがって本発明は、本発明による少なくとも1種のニトリルゴム、少なくとも1種の架橋剤、および場合によってはさらなる添加物を含む加硫可能な混合物を製造するための、本発明のニトリルゴムの使用もまた提供する。
【0127】
これらの加硫可能な混合物は、本発明による少なくとも1種のニトリルゴム、少なくとも1種の架橋剤、および場合によってはさらなる添加物を混合することにより製造される。
【0128】
架橋剤としては、たとえば、以下のものを使用することができる:ペルオキシド系架橋剤たとえば、ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシ−3−イン。
【0129】
これらのペルオキシド系架橋剤だけではなく、それによって架橋収率が向上するようなさらなる添加剤もまた使用するのが有利となりうる。このタイプの好適な添加剤としてはたとえば以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、Znジアクリレート、Znジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0130】
単一または複数の架橋剤の全量は、ニトリルゴムを基準にして、通常1〜20phrの範囲、好ましくは1.5〜15phrの範囲、特に好ましくは2〜10phrの範囲である。
【0131】
架橋剤として、元素として可溶性または不溶性の形態の硫黄、または硫黄供与体を使用することもまた可能である。
【0132】
可能性がある硫黄供与体としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノ−ジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
【0133】
本発明のニトリルゴムの硫黄加硫においてもまた、それによって架橋収率を向上させることが可能なさらなる添加剤を使用することが可能である。しかしながら、架橋は、原理的には、硫黄または硫黄供与体単独で使用して実施することもできる。
【0134】
逆に、上述の添加剤の存在だけで、すなわち元素硫黄または硫黄供与体を添加することなく、本発明のニトリルゴムの架橋を実施することも可能である。
【0135】
それによって架橋収率を向上させることが可能な適切な添加剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸塩、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
【0136】
ジチオカルバミン酸塩としては、たとえば以下のものが使用できる:ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、およびジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛。
【0137】
チウラムとしては、たとえば以下のものが使用できる:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、およびテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)。
【0138】
チアゾールとしては、たとえば以下のものが使用できる:2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンズチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、および銅−2−メルカプトベンゾチアゾール。
【0139】
スルホンアミド誘導体としては、たとえば以下のものが使用できる:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2−モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−tert−ブチルスルフェンアミド、およびオキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシ−エチレンスルフェンアミド。
【0140】
キサントゲン酸塩としては、たとえば以下のものが使用できる:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛、およびジブチルキサントゲン酸亜鉛。
【0141】
グアニジン誘導体としては、たとえば以下のものが使用できる:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、およびo−トリルビグアニド(OTBG)。
【0142】
ジチオリン酸塩としては、たとえば以下のものが使用できる:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキル基の鎖長:C〜C16)、ジアルキルジチオリン酸銅(アルキル基の鎖長:C〜C16)、およびジチオホスホリルポリスルフィド。
【0143】
カプロラクタムとしては、たとえば、ジチオ−ビス−カプロラクタムが使用できる。
【0144】
チオ尿素誘導体としては、たとえば以下のものが使用できる:N,N’−ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、およびエチレンチオ尿素(ETU)。
【0145】
好適な添加剤としてはさらに以下のものが挙げられる:ジアミンジイソシアン酸亜鉛、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、および環状ジスルファン。
【0146】
上述の添加剤および架橋剤はいずれも、個別に使用することも、混合物の中で使用することもできる。ニトリルゴムを架橋するためには、以下の物質を使用するのが好ましい:硫黄、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジチオビスカプロラクタム。
【0147】
架橋剤および上述の添加剤はそれぞれ、約0.05〜10phr、好ましくは0.1〜8phr、特には0.5〜5phrの量で使用することができる(単回添加、それぞれの場合において活性物質基準)。
【0148】
本発明における硫黄架橋においては、架橋剤および上述の添加剤に加えて、さらなる無機または有機物質を採用することも有用となりうる。そのようなさらなる物質の例としては以下のものが挙げられる:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、飽和もしくは不飽和の有機脂肪酸およびそれらの亜鉛塩、多価アルコール、アミノアルコールたとえばトリエタノールアミン、さらにはたとえばジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミンおよびポリエーテルアミンのようなアミン。
【0149】
さらに、初期加硫禁止剤を使用することも可能である。そのようなものとしては、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)およびジフェニルニトロソアミンが挙げられる。好ましいのは、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)である。
【0150】
架橋剤または架橋剤の添加とは別に、本発明のニトリルゴムには、慣用されるさらなるゴム添加剤を混合することも可能である。
【0151】
そのようなものとしては、たとえば当業者には十分公知の典型的な物質たとえば、充填剤、充填剤活性化剤、耐オゾン保護剤、老化防止剤、抗酸化剤、加工助剤、エクステンダー油、可塑剤、補強用材料および離型剤などが挙げられる。
【0152】
充填剤としては、たとえば以下のものを使用することができる:カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は粉体の形状にあるのが好ましい)またはケイ酸塩。
【0153】
可能な充填剤活性化剤は、特に以下のような有機シランである:ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、または(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。さらなる充填剤活性化剤としては、たとえば、トリエタノールアミンおよび74〜10 000g/molの分子量を有するエチレングリコールのような表面活性物質が挙げられる。充填剤活性化剤の量は通常、ニトリルゴム100phrを基準にして、0〜10phrである。
【0154】
老化防止剤としては、本発明の出願書類の中でラテックスのコアグレーションに関連して記載してきたようなものを、加硫可能な混合物に添加することができる。それらは、ニトリルゴム100phrを基準にして、通常約0〜5phr、好ましくは0.5〜3phrの量で使用される。
【0155】
可能な離型剤としては、たとえば飽和および部分不飽和脂肪酸および油酸(oil acid)およびそれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド)などが挙げられるが、それらは、型の表面に適用することが可能な製品、たとえば低分子量シリコーン化合物をベースとする製品、フルオロポリマーをベースとする製品、およびフェノール樹脂をベースとする製品などとの混合物の成分として採用するのが好ましい。
【0156】
混合物の成分として使用する場合、離型剤は、ニトリルゴム100phrを基準にして、約0〜10phr、好ましくは0.5〜5phrの量で使用する。
【0157】
脂肪族および芳香族ポリアミド(Nylon(登録商標)、Aramid(登録商標))、ポリエステルおよび天然繊維製品からなるコード、織布、繊維による強化と同様に、米国特許第4,826,721A号明細書の教示に従って、ガラスでできた補強担体(繊維)による強化もまた可能である。
【0158】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種のニトリルゴムをベースとする成形物を製造するための方法も提供するが、それの特徴は、成形プロセス、好ましくは射出成形プロセス中で上述の加硫可能な混合物を加硫させることである。
【0159】
したがって、本発明は、上述の加硫プロセスによって得ることが可能な特定の成形部品も同様に提供する。
【0160】
このプロセスによって、各種の成形物、たとえば、シール、キャップ、ホース、またはダイヤフラムを製造することが可能となる。特定のイオン指数(ion index)を有する本発明のニトリルゴムは、Oリングシール、フラットシール、波板シールリング、シールスリーブ、シールキャップ、ごみよけキャップ、プラグシール、断熱ホース(PVC添加あり、またはなし)、油冷却器ホース、空気取入れホース、サーボ制御ホースまたはポンプダイヤフラムを製造するのには特に適している。
【0161】
本発明のニトリルゴムをベースとする成形部品を直接調製することに代えて、本発明のニトリルゴムの調製に続けて、(i)複分解プロセス、または(ii)複分解プロセスおよびそれに続く水素化、または(iii)水素化のみ、を実施することも可能である。この複分解プロセスおよび水素化反応はいずれも、当業者には十分公知のものであって、文献に記載がある。
【0162】
複分解反応は、たとえば国際公開第02/100941A号パンフレット、さらには国際公開第02/100905A号パンフレットからも公知である。
【0163】
その水素化は、均一系または不均一系の水素化触媒を用いて実施することができる。その水素化をインサイチュで、すなわち、任意反応の複分解を前に実施したのと同じ反応容器の中で、分解させたニトリルゴムを単離する必要なく、実施することもまた可能である。その水素化触媒は、反応容器の中に単に添加する。
【0164】
使用する触媒は通常、ロジウム、ルテニウムまたはチタンをベースとするものであるが、白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルトまたは銅の金属としてか、または好ましくは金属化合物の形態で使用することもまた可能である(たとえば、米国特許第3,700,637A号明細書、独国特許出願公開第25 39 132A号明細書、欧州特許出願公開第0 134 023A号明細書、独国特許出願公開第35 41 689A号明細書、独国特許出願公開第35 40 918A号明細書、欧州特許出願公開第0 298 386A号明細書、独国特許出願公開第35 29 252A号明細書、独国特許出願公開第34 33 392A号明細書、米国特許第4,464,515A号明細書、および米国特許第4,503,196A号明細書を参照)。
【0165】
均一相における水素化に好適な触媒および溶媒を以下に記載するが、独国特許出願公開第25 39 132A号明細書および欧州特許出願公開第0 471 250A号明細書からも公知である。
【0166】
選択的水素化は、たとえば、ロジウムまたはルテニウムを含有する触媒の存在下で達成することができる。たとえば次の一般式の触媒を使用することが可能である。
(RB)MX
ここでMはルテニウムまたはロジウムであり、基Rは、同一であったも異なっていてもよいが、それぞれ、C〜C−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、C〜C15−アリール基、またはC〜C15−アラルキル基である。Bは、リン、ヒ素、硫黄またはスルホキシド基S=Oであり、Xは水素またはアニオン、好ましくはハロゲン、特に好ましくは塩素または臭素であり、lは2、3または4であり、mは2または3であり、そしてnは1、2または3、好ましくは1または3である。好適な触媒は、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)、および塩化トリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)、さらにはテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウム水素化物、式((CP)RhH、およびそれに対応するトリフェニルホスフィンが全面的または部分的にトリシクロヘキシルホスフィンによって置換された化合物である。その触媒の使用量は少量とすることができる。ポリマーの重量を基準にして、0.01〜1重量%の範囲、好ましくは0.03〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲の量とするのが適している。
【0167】
通常、その触媒は、式RB(ここで、R、mおよびBは先にその触媒に関連して与えた意味合いを有する)の配位子である助触媒と共に使用するのが好適である。好ましくは、mが3であり、Bがリンであり、基Rは同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリール−モノアルキル、ジアリール−モノシクロアルキル、ジアルキル−モノアリール、ジアルキル−モノシクロアルキル、ジシクロアルキル−モノアリール、またはジシクロアルキル−モノアリール基を有する助触媒である。
【0168】
助触媒の例は、たとえば、米国特許第4,631,315A号明細書に見出される。好適な助触媒は、トリフェニルホスフィンである。助触媒は、水素化するニトリルゴムの重量を基準にして、0.3〜5重量%の範囲、好ましくは0.5〜4重量%の範囲で使用するのが好ましい。さらに、ロジウム含有触媒の助触媒に対する重量比は、好ましくは(1:3)〜(1:55)の範囲、より好ましくは(1:5)〜(1:45)の範囲である。水素化するニトリルゴムの100重量部を基準にして、0.1〜33重量部の助触媒、好ましくは0.5〜20重量部、極めて特に好ましくは1〜5重量部、特に水素化するニトリルゴムの100重量部を基準にして2重量部を超え5重量部未満の助触媒を使用するのが適切である。
【0169】
この水素化の実務的な遂行は、米国特許第6,683,136A号明細書からも当業者には十分に公知である。通常、溶媒たとえばトルエンまたはモノクロロベンゼン中で、水素化するニトリルゴムを、水素を用いて、100〜150℃の範囲の温度、50〜150バールの範囲の圧力で2〜10時間処理することにより実施される。
【0170】
本発明の目的においては、水素化とは、出発ニトリルゴムの中に存在している二重結合を、少なくとも50%、好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%反応させることである。
【0171】
不均一系触媒を使用する場合には、それらは通常、パラジウムをベースとする担持触媒であって、それらはたとえば、炭素、シリカ、炭酸カルシウム、または硫酸バリウムの上に担持されている。
【0172】
本発明のニトリルゴムの場合と同様に、本発明のニトリルゴムを複分解反応および/または水素化反応させた後に得られる任意に水素化されたニトリルゴムは、加硫可能な混合物の中に組み入れて、成形物および成形部品を製造するために使用してよい。そのように任意に水素化されたニトリルゴムは、1〜50、好ましくは1〜40ムーニー単位のムーニー−粘度(ML(1+4、100℃))を有している。
【実施例】
【0173】
一般:
I:イオン指数についてのカチオン含量の測定
カチオン含量を測定するためには、0.5gのニトリルゴムを、白金るつぼ中550℃で乾式灰化により加熱分解させ、次いでその灰分を塩酸中で蒸留させた。脱イオン水を用いて加熱分解物の溶液を適切に希釈してから、ICP−OES(誘導結合プラズマ−発光分析)により、その酸マトリックスに合わせた較正溶液に対して、以下の波長で金属含量を測定する:
カルシウム:317.933nm、
マグネシウム:285.213nm、
カリウム:766.491nm、
ナトリウム:589.592nm
加熱分解物溶液中の元素の濃度および使用した装置の感度に応じて、そのサンプル溶液の濃度を、それぞれの場合において使用される波長のための検量線の直線領域にマッチさせた(B.Welz、「Atomic Absorption Spectrometry」、2nd Ed.、Verlag Chemie、Weinheim、1985)。
【0174】
II:初期加硫挙動および加硫速度
初期加硫挙動(ムーニースコーチ)は、DIN 53 523に従って、剪断円板粘度計により120℃で測定される。その測定には小ローター(S)を使用する。「MS5(120℃)」は、ムーニー値がその最小値から5ムーニー単位上昇するまでの時間(分)である。
【0175】
加硫速度は、160℃で、DIN 53 529、パート3に従って、Monsanto製のレオメーター(MDR2000E)により、t90−t10の差として測定するが、ここでt10およびt90はそれぞれ、最終的な加硫度の10%および90%が達成される時間である。
【0176】
混合物の加硫挙動は、DIN 53 529に従ってレオメーター中160℃で測定した。この方法により、特性加硫時間のt10およびt90を測定した。
【0177】
III:機械的性質
ゴムの機械的性質(たとえば、各種の伸びのときの応力、極限引張強さおよび破断時伸び)は、加硫物について、DIN 53 504に従って測定する。
【0178】
A:乳化重合によるNBRの製造
以下の表1に示した配合を基準にして、2つのNBRラテックスAおよびBを製造した。すべての出発物質の量は、モノマー混合物100重量部あたりの重量部として示している。重合は、温度17℃で13.5時間かけて実施し、重合転化率が80%に達した。
【0179】
【表1】

【0180】
上の表1中のニトリルゴムAおよびBについての1つの列の中に2つの数値が記入されているならば、このことは、それぞれの出発物質の全量を一度に導入するのではなく、その代わりに、その最初の部分を重合の開始時に重合容器に入れておき、第二の部分を後ほど導入するということを意味している。このさらなる導入を実施したときの転化率については、以下において示す。
【0181】
撹拌機を備えた2mのオートクレーブの中で、バッチ方式でNBRラテックスを製造した。バッチあたり、350kgのモノマー混合物および全量で770kgの水を使用した。乳化剤のErkantol(登録商標)BXG(12.85kg)、Baykanol(登録商標)PQ(3.85kg)およびヤシ油脂肪酸のカリウム塩(2.56kg)ならびに84gの水酸化カリウムを609kgの水と共にオートクレーブに入れ、窒素気流によりフラッシュさせた。窒素によるフラッシュが完了した後、不安定化させたモノマー(255.5kgのブタジエンおよび94.5kgのアクリロニトリル)ならびに調節剤t−DDMの一部(0.84kg)をその反応器の中に導入した。次いで反応器を閉じた。残りの量の水(161kg)を使用して、トリス(α−ヒドロキシエチル)アミン、ペルオキソ二硫酸カリウムの水溶液、および重合停止剤溶液を調製した。17℃で、1.365kgのペルオキソ二硫酸カリウム(表1で示した0.39重量部に相当)および1.925kgのトリス(α−ヒドロキシ−エチル)アミン(表1で示した0.55重量部に相当)の水溶液を添加することによって重合を開始させ、その重合混合物を全重合時間にわたってその温度で保持した。重合の進行状況は、転化率を重量分析することによって追跡した。重合転化率が15%になったところで、さらに0.84kgの調節剤t−DDM(表1で示した0.24重量部に相当)および0.665kgのペルオキソ二硫酸カリウム(表1で示した0.19重量部に相当)を導入した。転化率が80%に到達したときに(13.5時間)、亜ジチオン酸水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム(ラテックスAの場合)または、亜ジチオン酸ナトリウム/N,N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)および水酸化カリウム(ラテックスBの場合)の水溶液を添加して、重合を停止させた。水蒸気蒸留によって、未反応モノマーおよびその他の揮発性成分を除去した。
【0182】
2種のラテックスの特性データを次の表2にまとめた。
【0183】
【表2】

【0184】
NBRラテックスのコアグレーションの前に、それらを、50%強度のVulkanox(登録商標)KB分散体(NBR固形分を基準にして1.25重量%のVulkanox(登録商標)KB)と混合した。そのVulkanox(登録商標)KB分散体は、Ultraturraxにより95〜98℃で調製したものであって、以下のものを含んでいた:
360gの脱イオン水(DW)
40gのアルキルフェノールポリグリコールエーテル(Emulgator NP10、Lanxess Deutschland GmbH製)
400gのVulkanox(登録商標)KB(Lanxess Deutschland GmbH製)
【0185】
B:ラテックスの後処理
沈殿のために使用する塩溶液の濃度および塩の量は、それぞれの場合において、結晶水を除外して計算した。ラテックスのコアグレーションに使用した塩、塩溶液の濃度、使用した塩の量(NBR基準)、コアグレーション温度、洗浄の際の温度、および洗浄時間を、以下の表に列記した。
【0186】
それぞれの場合において、予備実験に基づいて塩の量を選択して、ラテックスのコアグレーションにおいて生成するゴム団粒が5mmよりも大きい粒径を有していて、それに続く団粒の洗浄の際に洗浄水の水流によって運び出されることがないようにした。
【0187】
それぞれの場合において、25kgのラテックスを後処理して、固形物を製造した。ラテックスのコアグレーションは、容量100Lを有する撹拌可能な開放容器の中で、バッチ方式で実施した。この場合、ラテックスをコアグレーション容器に入れてから、それらが20℃を超える温度であったら、加熱して表3および4の第6列に示した温度とし、次いで撹拌しながらこの温度で塩の水溶液を添加し、次いでその反応混合物を表3および4の第7列に示した温度にまで加熱した。
【0188】
団粒を洗浄するためには、100リットルのコアグレーション容器に入口と出口とを設けた。洗浄を実施する前にその容器の内側に2本のレールを組み込み、網(目開き、2mm)によって出口がふさげるようにし、それによって洗浄の間にコアグレート化団粒が水と共に排出されないようにした。洗浄は、200L/時間一定で水が通過するようにして実施した。洗浄には、脱イオン水(DW)と通常の水道水(BW)の両方を使用した。
【0189】
実験の大部分においては、ラテックスのコアグレーションの際に生成するラテックスの漿液は、洗浄が始まるまで、そのコアグレーション容器から除去しなかった、すなわち、ラテックスの漿液は、希釈洗浄することにより除去した。団粒の洗浄において採用した境界条件(水のタイプ、洗浄温度、洗浄時間など)は、以下の表に列記した。
【0190】
ニトリルゴムのラテックスAおよびBの後処理で、それぞれの場合において採用された条件を表3、4、および5にまとめた。
【0191】
表3、4、および5の第4列において、塩溶液の濃度の後に「DW」または「BW」とあるのは、その塩溶液を調製するために使用した水のタイプを示している。
【0192】
【表3】

【0193】
【表4】

【0194】
【表5】

【0195】
洗浄が完了してから、篩によってゴム団粒を取り出し、Weldingスクリュー中で予備的脱水を行って、残存湿分含量を5〜15重量%とした。
【0196】
予備的脱水にかけたゴムの試料の最終的な乾燥は、バッチ方式で真空乾燥器中70℃で実施し、残存湿分含量<1.5重量%とした。
【0197】
カチオン含量の測定をするために、そのゴム試料の一部分をDIN 53 568に従って灰化させ、DIN 51401に従った原子吸光分光光度法によってカチオンを定量した。
【0198】
表3、4および5からの、本発明によるニトリルゴムおよび本発明によるものではないもののカチオン含量およびイオン指数を、表7、8および9に示す。
【0199】
【表6】

【0200】
【表7】

【0201】
【表8】

【0202】
表3、4および5に記載のニトリルゴムを、1.5Lの機械式実験室用ミキサー中で表10に示すようにして加工したが、その混合物の個々の構成成分は、表に示したオーダーで混合した。混合物のすべての構成成分は、ニトリルゴム100重量部あたりの重量部として記載した。
【0203】
【表9】

【0204】
混合物の加硫挙動は、DIN 53 529に従って、Monsanto MDR2000Eレオメーターにより、160℃で測定した。特性加硫時間のt10およびt90は、この方法で測定した。
【0205】
DIN 53 529、パート3によれば次のとおりである:
10:10%の転化率に到達した時間
90:90%の転化率に到達した時間。
【0206】
さらなる測定に必要な加硫試験片は、プレス中120バールの油圧下160℃で30分かけて加硫することにより作製した。300%伸び時応力(σ300)、引張強さ(σmax)、および破断時伸び(ε)は、DIN 53504に従った引張試験により測定した。
【0207】
【表10】

【0208】
【表11】

【0209】
【表12】

【0210】
表11、12および13において、ムーニースコーチ、加硫速度(t90−t10)、および加硫物物性、特に300%伸び時応力(σ300)は、ニトリルゴムのカチオンの濃度と相対比に実質的に依存することが判る。ニトリルゴムの性質は、イオン指数およびマグネシウム含量によって決まってくる。塩化マグネシウムによってコアグレート化された本発明によるNBRラテックスは、本発明によるものではないニトリルゴムよりも、より低いムーニースコーチ、より短い加硫時間、およびより高い300%伸び時応力を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエンおよび場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含み、0〜60ppm×mol/gの範囲の一般式(I)
【数1】

[式中、c(Ca2+)、c(Mg2+)、c(Na)、およびc(K)は、ニトリルゴム中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、およびカリウムイオンの濃度(単位、ppm)を示し、マグネシウムイオンの濃度、c(Mg2+)は、50〜250ppmの範囲である]
によるイオン指数(「II」)を有するニトリルゴム。
【請求項2】
10〜55ppm×mol/gの範囲、好ましくは10〜50ppm×mol/gの範囲のイオン指数を有する、請求項1に記載のニトリルゴム。
【請求項3】
アクリロニトリル、1,3−ブタジエンおよび場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載のニトリルゴム。
【請求項4】
1種または複数のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルもしくはアミドの繰り返し単位、好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル、特に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、もしくは(メタ)アクリル酸ラウリルの繰り返し単位を有する、請求項3に記載のニトリルゴム。
【請求項5】
10〜150ムーニー単位、好ましくは20〜100ムーニー単位のムーニー粘度(ML(1+4、100℃))を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のニトリルゴム。
【請求項6】
−70℃〜+10℃の範囲、好ましくは−60℃〜0℃の範囲のガラス転移温度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のニトリルゴム。
【請求項7】
少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、および場合によっては1種または複数のさらなる共重合性モノマーを乳化重合させることによりニトリルゴムを製造するための方法であって、最初に前記重合で得られ前記ニトリルゴムを含むラテックスをコアグレーションにかけ、得られた前記コアグレート化ニトリルゴムを次いで洗浄する方法において、
(i)前記乳化重合を、12〜16個の炭素原子および少なくとも3個の第三級炭素原子を含む少なくとも1種のアルキルチオール(硫黄がそれら第三級炭素原子の1つに結合されている)の存在下に実施し、そして
(ii)コアグレーションの前に、前記乳化重合において得られたラテックスのpHを少なくとも6に設定し、前記マグネシウム塩の添加の前に前記ラテックスの温度を45℃未満の値に設定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記乳化重合を、バッチ方式か、または撹拌容器のカスケード中で連続方式で実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1種または複数の老化防止剤を、コアグレーションの前または途中に、前記ニトリルゴムを含むラテックスに添加する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラテックスのコアグレーションのために、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムおよび/または硝酸マグネシウムを使用する、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ラテックスのコアグレーションにおいて、少なくとも1種のマグネシウム塩、好ましくは塩化マグネシウムだけではなく、前記コアグレーションに使用したすべての塩の合計量を基準にして、5重量%までの1種または複数のその他の2価の金属の1種または複数のその他の塩をさらに使用する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ラテックスのコアグレーションにおいて、少なくとも1種のマグネシウム塩だけではなく、コアグレーションに使用したすべての塩の合計量を基準にして、X重量%までの1価の金属の塩をさらに使用するが、前記X重量%が、50重量%から、1種または複数のその他の2価の金属(存在するならば)の1種または複数のその他の塩の重量%を減算することによって得られる、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ラテックスのコアグレーションのために、ニトリルゴムを基準にして、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の少なくとも1種のマグネシウム塩を使用する、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ラテックスのコアグレーションのために、前記ニトリルゴムを完全にコアグレートさせるのにちょうど必要な量のマグネシウム塩を使用する、請求項7〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種のマグネシウム塩の溶液、好ましくは塩化マグネシウム溶液の濃度が、0.1〜35重量%、好ましくは0.5〜30重量%である、請求項7〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コアグレーションのために使用するラテックスが、1%〜40%の範囲、好ましくは5%〜35%の範囲、特に好ましくは15〜30重量%の範囲の固形分濃度を有する、請求項7〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種のマグネシウム塩を前記溶液に添加した後、前記ラテックスを、100℃までの温度、好ましくは50〜90℃の範囲の温度に加熱する、請求項7〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
脱イオン水(「DW」)または脱イオン化しなかった水(「BW」)を、前記コアグレート化ニトリルゴムの洗浄のために使用するが、好ましくは、少なくとも1種のマグネシウム塩を使用する前記ラテックスのコアグレーション中で、使用される全ての塩の最大5重量%までの可能な量でカルシウム塩が存在していない場合には、脱イオン化されていない水を使用する、請求項7〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コアグレート化ニトリルゴムの洗浄を、15〜90℃の範囲の温度、好ましくは45〜70℃の範囲の温度で実施する、請求項7〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記得られたニトリルゴムを次いで、(i)複分解反応、(ii)複分解反応およびそれに続く水素化反応、または(iii)水素化反応のみ、のいずれかにかける、請求項7〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において得ることが可能な、場合によっては水素化されたニトリルゴム。
【請求項22】
加硫可能な混合物を製造するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載のニトリルゴムの使用。
【請求項23】
請求項1〜6のいずれか一項に記載、または請求項21に記載の少なくとも1種のニトリルゴム、少なくとも1種の架橋剤、および場合によってはさらなる添加物を含む、加硫可能な混合物。
【請求項24】
請求項1〜6のいずれか一項に記載、または請求項21に記載の少なくとも1種のニトリルゴム、少なくとも1種の架橋剤、および場合によってはさらなる添加物を混合することによる、請求項21に記載の加硫可能な混合物を製造するための方法。
【請求項25】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のニトリルゴムをベースとする成形物を製造するための方法であって、請求項23に記載の加硫可能な混合物を、成形プロセス中、好ましくは射出成形プロセスを使用して加硫させる、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法により得られる成形物。
【請求項27】
シール、キャップ、ホース、またはダイヤフラム、特にOリングシール、フラットシール、波板シールリング、シールスリーブ、シールキャップ、ごみよけキャップ、プラグシール、断熱ホース(PVC添加あり、またはなし)、油冷却器ホース、空気取入れホース、サーボ制御ホース、またはポンプダイヤフラムであることを特徴とする、請求項26に記載の成形物。

【公表番号】特表2010−528140(P2010−528140A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508814(P2010−508814)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056098
【国際公開番号】WO2008/142039
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】