説明

ニトロオキシド存在下の制御されたラジカル重合で得られるブロック共重合体を含む耐衝撃性に優れた材料の製造方法および使用

【課題】ニトロオキシドの存在下での制御されたラジカル重合によるブロック共重合体の生産と、その脆い重合体マトリックスの強化での使用。
【解決手段】少なくとも3つのブロックを有するブロック共重合体のラジカル合成。一つのブロックのガラス遷移温度は0℃以下、熱可塑性の端部ブロックのガラス遷移温は0℃以上であり、従って、耐衝撃性を強化すべきマトリックスとの相容性に優れている。 (i)コポリマー合成および使用が簡単になり、(ii)は脆いマトリックス中にコポリマー分子を細かく分散でき、それによって材料が透明かつ耐衝撃強度が高くなるという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性に優れた材料に関するものである。
本発明は特に、透明で且つ耐衝撃性に優れた材料、特にブロック共重合体を用いた耐衝撃性に優れた材料に関するものである。
本発明は安定したニトロキシドの存在下での制御されたラジカル重合によってブロック共重合体を製造する方法と、得られたブロック共重合体を脆い熱可塑性高分子マトリックスで用いこの高分子マトの衝撃強度を強化する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
耐衝撃性熱可塑性樹脂は一般に衝撃強化剤を溶融添加することで得られ、実際には「ハード」ポリマーまたは熱可塑性樹脂の粒子と一緒にエラストマーのラテックスを凝集し、脱水し、乾燥していわゆるアロイにする。それを押出成形、射出成形または圧縮成形で物品に成形する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、耐衝撃性に優れ、しかも、透明である新しいポリマー材料と、耐衝撃ポリマーの新しい製造方法とを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の対象は透明な耐衝撃性ポリマー材料で、この耐衝撃性ポリマー材料の0〜95重量%は脆いマトリックス(I)から成り、この脆いマトリックス(I)中に一般式:
B−(A)n
で表されるブロック共重合体(II)が分散している。脆いマトリックスの量は10〜85重量%であるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明のポリマー材料は他の耐衝撃強化剤、例えばデモラストレングス(Durastrength、登録商標)またはメタブレンド(Metablend、登録商標)等をさらに含むことができる。
一般に、脆いマトリックス(I)のガラス遷移温度(Tg.)は0℃以上である。この脆いマトリックスの50重量%以上はポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアミド、ポリエポキシド、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルおよびこれらのコポリマーからなる群の中から選択される少なくとも一種のポリマーから成る。
【0006】
脆いマトリックスはポリメタクリレートであるのが好ましい。
本発明のブロック共重合体は下記一般式に対応する:
B−(A)n
nは2以上の自然数であり、好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜8である。
【0007】
Bはラジカル重合で重合可能なモノマー単位のシーケンスを有するブロックポリマーであり、その全体のガラス遷移温度(Tg)が0℃以下である。ブロックBの平均モル質量は5000グラム/モル以上、好ましくは20000 g/モル以上、さらに好ましく50000 g/モル以上である。
【0008】
Aもラジカル重合で重合可能なモノマー単位のシーケンスを有するブロックポリマーである。その全体のガラス遷移温度(Tg)が0℃以上である。各ブロックAの平均モル質量は10000 g/モル〜106グラム/モル、好ましくは10000 g/モル〜200000 g/モル、さらに好ましくは20000〜100000 g/モル〜である。
ブロックAとBの相対長さはn*Mn(A)/(n*Mn(A)+Mn(B))が0.5〜0.95、好ましくは0.6〜0.8となり且つMn(B)がブロックBの平均鎖長以上となるように選択される。Mnはポリマーの数平均分子量を表す。
【0009】
本発明ではブロック共重合体(II)の多分散性指数は1.5〜3、好ましくは1.8〜2.7、さらに好ましくは2.0〜2.5である。他方、ブロックBの多分散性指数は2以下である。
一般に、Aはコポリマー(II)の全重量の50%〜95%、好ましくは60%〜95%である。
【0010】
特に、Bはガラス遷移温度が0℃以下のポリアクリレートであり、好ましくはアクリル酸ブチル単位から成る。Aは強化されるマトリックスと相溶性のあるポリマーである。例えば、ポリメチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)またはポリ(塩化ビニル)(PVC)を強化する場合には、AとしてPMMAを選択する。ポリエステル、例えばポリ(ブチレンテレフタレート)またはポリ(エチレンテレフタレート)またはエポキシを強化する場合には、Aはメタクリル酸グリシジルまたはメタアクリル酸単位を有するポリメタクリレートから選択するのが好ましく、ポリスチレンを強化する場合にはAはPSを選択するのが好ましい。
【0011】
本発明の他の対象は、本発明の耐衝撃性を有する透明な材料の製造方法にある。本発明方法は安定なニトロキシドを用いた「制御されたラジカル重合」方法をベースにしたもので、一般的な合成方法は以下の工程からなる:最初の工程ではニトロキシドの存在下の重合で可撓性のあるエラストマー特性を有するブロックBを製造し、次の工程では上記で得られたブロックBを重合開始剤として用いて固い熱可塑性特性を有するAをブランチさせる。
安定なニトロキシドが制御されたラジカル重合によってブロック共重合体を形成させるということは下記文献で公知である:
【0012】
【特許文献1】国際特許第WO 9624620号公報
【特許文献2】国際特許第WO 2000071501-A1号公報(20001130)
【特許文献3】欧州特許第EP 1142913号公報(20011010)
【0013】
上記特許に記載の特定のニトロオキシド群を用いることによって従来のラジカル経路では制御が困難な単位とされていたアクリレートをブロック共重合体に取り入れることができる。メタクリル酸エステルの場合には当業者に周知の一定の限界があり、例えばニトロオキシドとの移動反応(式1)は重合の制御において早期ロス(premature loss)が起こる:
【0014】
【化9】

【0015】
しかし、ニトロオキシドで制御された第1のブロックから出発することによってメタクリル酸エステルのラジカル重合を再開始させることができ、ラジカル重合のリビング特性は制限され、ブロック共重合体になる。
【0016】
リビング特性が制限されることはブロック共重合体の多分散性が1.5〜2.5の間に広がることで示される。本発明者はこれがブロック共重合体のモルホロジーへの影響であることを見い出した。すなわち、単分散したブロック共重合体は極めて正確なブロック共重合体の組成物で見られたモルホロジーからの過渡期である(下記文献参照)。
【非特許文献1】G. Holden et al. in "Thermoplastic elastomers", 2nd edition, Carl Hanser Verlag, Munich, Vienna, New York, 1996
【0017】
従って、熱可塑性ブロックの比率の増加した場合にはモルホロジーは連続相が熱可塑性になるトポロジの方へ変化する。この状況に達しない限り、ブロック共重合体は熱可塑性ブロックと相溶性のあるマトリックスと均一に混合できない。そのため混合物は不透明になり、機械特性が極めて悪い。
【0018】
ニトロキシドの存在下の2段階合成でのブロックコポリマーの重合方法(塊重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合)は簡単に実行できるので、熱可塑性マトリックスと相溶可能なコポリマーとなる組成または合成方法を見つけることが重要であった。
本発明者は熱可塑性相が50%〜95%、好ましくは熱可塑性相が60%〜85%の組成の場合に、ニトロキシド存在下での制御されラジカル重合によって得られるコポリマーのモルホロジが脆い熱可塑性マトリックス中にコポリマーが良く混合して相溶するということを見い出した。
【0019】
さらに、下記特許の発明者は銅塩の存在下での制御されたラジカル重合によって得られる多分散性指数の小さい(P1<1.5)ブロック共重合体を請求している:
【特許文献4】特開JP2000198825 A号公報(20000718)
【0020】
本発明者は、上記特許とは逆に、ニトロキシド存在下での制御されたラジカル重合では熱可塑性ブロックの重合がマトリックスの重合と同時に起こるということ、そして、ブロック共重合体を予め分離する必要はないということを見い出した。すなわち、他の鎖が従来の開始剤または熱的開始反応によって開始されたときに、それと同時にニトロオキシドによって官能化された第1のブロックからの熱可塑性鎖を開始させることができる。
【0021】
これには以下の2つの効果がある:
1. 耐衝撃性を強化すべき熱可塑性マトリックスがコポリマーの熱可塑性ブロックと同じ組成を有する場合には、強化された材料が直接得られる。
2. 別のマトリックスを強化しなければならない場合には、粘性が過度に高いため押出し成形時に劣化してしまうブロック共重合体にホモポリマーを加えることでブロック共重合体を流動化させることができる。
【0022】
従って、本発明の他の対象は熱可塑性マトリックスと相溶性のあるブロック共重合体の製造方法と、得られたブロック共重合体を使用して耐衝撃性樹脂を製造する方法にある。
本発明方法は、ニトロオキシド(III)の存在下でコポリマーを合成する方法である:
【0023】
【化10】

【0024】
(ここで、
R'およびRは必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R'とRが互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R'およびRはtert-ブチル基であり、
Lはモル質量が16グラム/モル以上である一価の基であり、特に、RLはホスホラス基、特に下記一般式のホスホネートであり:
【0025】
【化11】

【0026】
(ここで、
R''およびR'''は必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R''およびR'''はエチル基である)
【0027】
特に、一般式:B−(A)nのブロック共重合体のBはニトロオキシド(III)の存在下にラジカル重合可能なモノマー単位のシーケンスから成るポリマーブロックを表し、その全体のTgは0℃以下である。このブロックBの平均モル質量は3000グラム/モル〜106グラム/モル、好ましくは5000グラム/モル〜200000 グラム/モル、さらに好ましくは5000〜100000 g/モルである。
【0028】
Aはニトロオキシド(III)の存在下にラジカル重合可能なモノマー単位のシーケンスから成るポリマーブロックを表し、その全体のTgは0℃以上である。各ブロックAの平均値モル質量は10000 g/モル〜106グラム/モル、好ましくは10000 g/モル〜200000 g/モル、さらに好ましくは20000〜100000 g/モルである。
nは2以上の自然数、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜8である。
ブロックAとBの相対的長さはn*Mn(A)/(n*Mn(A)+Mn(B))が0.5〜0.95、好ましくは0.6〜0.8となり且つMn(B)がブロックBの平均鎖長に等しいか、それ以上となるように選択される。得られたブロック共重合体の多分散性指数は1.5〜3、好ましくは1.8〜2.7、さらに好ましくは1.9〜2.5である。
【0029】
本発明方法は下記の1〜3の工程からなる点に特徴がある:
1.先ず最初に、各モノマーに下記一般式のアルコキシアミン(IV)を混合し、通常の重合方法に従って第1のブロックBを作る:
【0030】
【化12】

【0031】
(ここで、
Zはスチリルまたはアクリロイル(acryloyl)基型の末端官能基を有する多価ラジカルであり、他のラジカルは上記と同じ意味を有する)
ニトロオキシド(III)の混合物への添加量はアルコキシアミン基のモル数に対して0〜20モル%にする(一つのアルコキシアミンはn個のアルコキシアミン官能基を有する)。
上記の重合は60〜250℃、好ましくは90〜160℃の温度で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バールの圧力下で行う。
重合は制御下に行い、変換率が99%になる前に重合を停止するのが好ましい。変換率の90%の前であるのが好ましい。得られたブロックBを残留モノマーと一緒に使用するか、蒸留または水洗してモノマーを除去し、Bと相溶性のない溶媒またはモノマーと相溶性のある溶媒で乾燥する。
【0032】
2.次に、モノマー混合物に上記で得られた第1のブロックBを希釈してブロックAを形成する。その際に、通常のラジカル重合の開始剤(ルペロックス(Luperox、登録商標)またはアゾ化合物、例えばAZDN(登録商標))の0〜100モル当量を混合物に加える。この割合は要求される粘性/耐衝撃性バランスに応じて選択する。
重合は60〜250℃、好ましくは90〜160℃の温度で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バールの圧力で行う。
モノマーの変換率10〜100%にする。得られたポリマーを残ったモノマーから250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で真空蒸発して分離する。
【0033】
3.最後に、下記のいずれかを行う:
1) 得られた生成物を公知手段で、耐衝撃性の強化が要求される脆いマトリックス、例えばPMMA、PET、ポリエステル、PBT、ポリスチレン、PVDF、ポリアミド、ポリカーボネートまたはPVCと押出し混合する。必要な場合には他の添加剤、特に耐衝撃添加剤、例えばデモラストレングス(Durastrength、登録商標)またはメタブレンド(Metablend、登録商標)をさらに混合する。
2) 得られた材料をモノマー混合物中に希釈し、全体を重合させる。モノマーの例としてはスチレン、MMA、エポキシド、ジオールと二酸との混合物またはポリアミドの先駆体(ラクタム、その混合物、ジアミン、二酸)が挙げられる。
3) 材料を混合しないで耐衝撃性樹脂として使用することもできる。
【0034】
当業者は必要なブロックに応じてモノマーを選択することができる。そうしたモノマーの中では下記一般式のアクリルモノマーまたはその混合物が挙げられる:
【0035】
【化13】

【0036】
(ここで、R1は水素原子または1〜40の炭素原子を有する直鎖、環状または分岐したアルキル基を表し、ハロゲン原子、ヒドロキシル(-OH)、アルコキシ、シアノ、アミノまたはエポキシ基で置換されていてもよい)
他に選択可能なモノマー群としては下記一般式で表されるメタクリルモノマーがある:
【0037】

【0038】
(ここで、R2はR1として同じ意味を有する)
他に可能なモノマーとしてはアクリロニトリル、スチレン誘導体、ジエンがあり、より一般的にはラジカル重合可能なビニル基を有する任意のモノマーが挙げられる。
【0039】
本発明材料は各種の分野、例えば自動車産業または建設産業で使用でき、耐衝撃性のある成形物品、特に、プレート、シートにすることができ、特に、熱成形で浴槽、シンク、シャワートレー、洗面台、シャワールーム等に成形されるプレート、シートにすることができる。
本発明材料で作られた物品は、機械特性、特に曲げ特性(高モジュラス)、従って一定のスチフネスを維持したまま、優れた衝撃強度を示す。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に制限されるものではない。
実施例および参照例で使用される安定したフリーラジカルSG1は下記の式に対応する:
【0041】

【0042】
実施例で使用したアルコキシアミンDIAMSおよびTRIAMSは以下の式に対応する:
【0043】

【0044】
1.第1シリーズ
コポリマーB−(A)n、(n=2または3)によるPMMAマトリックスの耐衝撃性の強化
1.1 コポリマーの製造
以下、一般的な合成方法と特徴付け方法とを説明する。
【0045】
合成は9リットル容の鋼の反応器中で2段階で行った。初期媒体は真空/窒素サイクルで系統的に脱気した後に反応器に導入し、反応温度に予熱した。
例えば、DIAMSおよびTRIAMSで表されるアルコキシアミン1または2の存在下でのアクリル酸ブチルの重合は、温度T=115℃且つアルコキシアミン官能基に対して7モル%過剰なフリーなSG1の存在下で最適化され、制御下に行った。また、得られたPBuA−SG1高分子開始剤のリビング性を維持するために、変換率は50%に制限し、残留モノマーはストリッピング操作(真空下、70℃で2時間)で除去した。
【0046】
第2段階では、上記で得られた二官能性または三官能性の高分子開始剤を用いて加圧下、120℃でMMAの重合を再開させて、トリブロック共重合体および星型ブロック共重合体を製造した。ニトロオキシドと成長鎖との間の分離変異(dismutation)反応のためにMMAの変換が制限される点に注意することが重要である。
第2段の合成から温度を85〜120℃にして操作し、この限界の20〜45%に戻すことができた。
【0047】
[表1]は安定なフリーラジカル(SG1)で官能化されたベロックBを合成するための操作条件をまとめたものである。
[表2]はブロックBがポリ(ブチルアクリレート)で、ブロックAがポリ(メチルメタクリレート)である4つのブロック共重合体を製造する際の操作条件をまとめたものである。
【0048】
1.2 マトリックスの強化
PMMAと耐衝撃用コポリマーとから成る混合物を溶融押出し成形で製造した。
【0049】
1.3 特徴付け
モル質量および多分散性指数はサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)で求めた。全体の較正はポリスチレンの標準品を用いて行い、PBuA−SG1高分子開始剤の場合にはPBuAのMark-Houwinkの係数、コポリマーの場合にはPMMAを用いて較正した。
PBuAとPMMAのコポリマーの組成はプロトンNMRで決定した。
[表3]はブロックBに関して得られた結果を示し、
[表4]はコポリマーに関して得られた結果を示す。
機械的特性は周知の引張り−伸びテストで評価した。
[図1]はその結果を示す。
【0050】
II. 第2シリーズ
PMMA/アクリル酸ブチルとスチレンをベースにした高分子開始剤混合物(シロップ)のいわゆる「キャストシート」法または連続法での重合による耐衝撃性が強化されたメチルメタクリレートのインシチュー(in situe)製造
II.1 キャスト・シート法
第1段
7.2kgのアクリル酸ブチル、800gのスチレンおよび51gのTRIAMSおよび1.5gのフリーなSG1を含む混合物を69%まで重合してアクリル酸ブチル/スチレン(83/17)コポリマーを製造した。
揮発成分を蒸発させた後、8kgのメチルメタクリレートに溶解させてコポリマーを回収した。得られた高分子開始剤の特性は以下の通り:
スチレン:17重量%、
Mn=70000g/モル、
Mw=142000g/モル
【0051】
第2段
使用したメチルメタクリレートシロップの配合組成は以下の通り:
第1段で得られた高分子開始剤の濃度: 混合物の全重量の2%、5%、7.5%、10%または20%
Luperox 331M-80M: 550 ppm
無水マレイン酸混合物の全重量: 0.2%
綵och-テルピネン: 21 ppm
【0052】
シートを乾燥器に入れて90℃で約16時間加熱した後、125℃で2時間、後重合した。
PMMAマトリックスにブロック共重合体を入れて作ったキャストシートの形をしたポリマーは現在市販されている最も耐衝撃性が高いポリマーに比べて、耐衝撃性が大幅に強化される([表5]参照)。
本発明では、ニトロオキシドの化学的機構から、ブロック共重合体はマトリックスの重合中にインシチュー(in situ)で導入されるということがわかる。
【0053】
II.2 連続重合法
この実施例ではカスケード状に配置した2つの反応器から成る設備を使用した。第1反応器は-40℃に維持し、第2反応器へ供給される重合シロップを収容するのに使用する。第2反応器はいわゆる重合反応器である。
重合温度は160℃以上にした。モノマーシロップは8kg/時の供給量で重合反応器へ供給した。固形物比率が60%に減った時に重合媒体を連続的にポンプで抜き出し、230℃の温度のベント式押出機へ送った。重合媒体は水浴で冷却した後、顆粒にした。
【0054】
使用したモノマーシロップは下記の配合組成(重量比)を有している:
ポリアクリル酸ブチル:上記コポリマー:フロピル(Flopil)9である: 15%
アクリル酸エチル: 0.6%
ジ−tert-ドデシルジスルフィド: 100 ppm
ドデシルメルカプタン: 0.34%
ルペロックス(Luperox)531: 180 ppm
最高重合温度は178℃であった。
【0055】
得られた顆粒の最終組成は下記の通り:
PMMA: 82.5%
アクリレート(ブチルおよびエチル): 17.3%
残留MMA: 0.2%
Mn=30000 g/モル(PMMA基準)
Mw=85000 g/モル(PMMA基準)
【0056】
標準的なPMMA、耐衝撃性PMMAおよび本発明に従って製造した材料からISO規格604に従って製造した円柱形テスト試験片の圧縮テストでの降伏応力に対する歪の測定結果から下記の値を誘くことができる:
標準PMMA(MC31): 130MPa
耐衝撃性PMMA(市販品:M17T): 98MPa
本発明で強化されたPMMA: 96MPa
上記の結果の比較から、本発明生成物は標準的な耐衝撃グレートのPMMAに匹敵する可撓性(ductile)を有していることが証明された。
添付書類
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】は実施例で作った材料の引張り−伸びテスト結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス遷移温度が0℃以上である脆いマトリックス(I)中に多分散性指数が1.5〜3である下記一般式:
B−(A)n
(ここで、nは2〜20の数であり、Bは多分散性指数が2以下で、ガラス遷移温度が0℃以下である可撓性のあるポリマーブロックであり、Aは上記マトリックスと同じ特性を有するか、相溶性があり、ガラス遷移温度が0℃以上である固いポリマーブロックである)のブロック共重合体(II)が分散されている透明な耐衝撃性ポリマー材料。
【請求項2】
ブロック共重合体の多分散性指数が1.8〜2.7、好ましくは2〜2.5である請求項1に記載の材料。
【請求項3】
脆いマトリックスの比率が0〜95重量%である請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
脆いマトリックスの比率が10〜85%重量%である請求項3に記載の材料。
【請求項5】
脆いマトリックスの50重量%以上がポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアミド、ポリエポキシド、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルおよびこれらのコポリマーからなる群の中から選択される少なくとも一種からなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
Aがブロック共重合体(II)の全重量の50〜95重量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
Aがブロック共重合体(II)の全重量の60〜90重量%である請求項6に記載の材料。
【請求項8】
Bが、ガラス遷移温度が0℃以下のポリアクリレートである請求項1〜7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
Aが、ガラス遷移温度が0℃以上のポリメタクリレートである請求項1〜8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
ブロックBの平均質量が5000グラム/モル以上、好ましくは50000グラム/モル以上である請求項1〜9のいずれか一項に記載の材料。
【請求項11】
下記の1、2の工程からなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の材料の製造方法:
1.先ず最初に、下記一般式のアルコキシアミンと各モノマーと混合し、通常の重合方法に従って第1のブロックBを作る:
【化1】

(ここで、
R'およびRは必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、R'とRが互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R'およびRはtert-ブチル基であり、
Lはモル質量が16グラム/モル以上である一価の基であり、特に、RLはホスホラス基、特に下記一般式のホスホネートであり:
【化2】

(ここで、
R''およびR'''は必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R''およびR'''はエチル基である)
Zはスチリルまたはアクリロイル(acryloyl)基型の末端官能基を有する多価ラジカルであり、他のラジカルは上記と同じ意味を有する)
上記の重合は60〜250℃度、好ましくは90〜160℃の温で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バレルの圧力で行い、
2.次に、ブロックAを形成するためのモノマー混合物に上記で得られた第1のブロックBを希釈し、その際に、通常のラジカル重合の開始剤(ルペロックス(Luperox、登録商標)またはアゾ化合物、例えばAZDN(登録商標))の0〜100モル当量を混合物に加え、この割合は要求される粘性/耐衝撃性バランスに応じて選択し, 重合は60〜250℃、好ましくは90〜160℃の温度で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バールの圧力で行い、
モノマーの変換率10〜100%で得られたポリマーを残ったモノマーから250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で真空蒸発で分離する。
【請求項12】
下記の1〜3の工程からなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の材料の製造方法:
1.先ず最初に、通常の重合方法に従って、下記一般式のアルコキシアミンと各モノマーと混合して第1のブロックBを作る:
【化3】

(ここで、
R'およびRは必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R'およびRはtert-ブチル基であり、
Lはモル質量が16グラム/モル以上である一価の基であり、特に、RLはホスホラス基、特に下記一般式のホスホネートであり:
【化4】

(ここで、
R''およびR'''は必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R''およびR'''はエチル基である)
Zはスチリルまたはアクリロイル(acryloyl)基型の末端官能基を有する多価ラジカルであり、他のラジカルは上記と同じ意味を有する)
上記の重合は60〜250℃度、好ましくは90〜160℃の温で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バレルの圧力で行い、
2.次に、ブロックAを形成するためのモノマー混合物に上記で得られた第1のブロックBを希釈し、その際に、通常のラジカル重合の開始剤(ルペロックス(Luperox、登録商標)またはアゾ化合物、例えばAZDN(登録商標))の0〜100モル当量を混合物に加え、この割合は要求される粘性/耐衝撃性バランスに応じて選択し、
重合は60〜250℃、好ましくは90〜160℃の温度で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バールの圧力で行い、
モノマーの変換率10〜100%で得られたポリマーを残ったモノマーから250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で真空蒸発で分離し、
3.最後に、上記2で得られた生成物を公知手段で、耐衝撃性の強化が要求される脆いマトリックス、例えばPMMA、PET、ポリエステル、PBT、ポリスチレン、PVDF、ポリアミド、ポリカーボネートまたはPVCと混合し、必要な場合には他の添加剤、特に耐衝撃添加剤、例えばデモラストレングス(Durastrength、登録商標)またはメタブレンド(Metablend、登録商標)をさらに混合する。
【請求項13】
下記の1〜3の工程からなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の材料の製造方法:
1.先ず最初に、通常の重合方法に従って、下記一般式のアルコキシアミンと各モノマーと混合して第1のブロックBを作る:
【化5】

(ここで、
R'およびRは必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R'およびRはtert-ブチル基であり、
Lはモル質量が16グラム/モル以上である一価の基であり、特に、RLはホスホラス基、特に下記一般式のホスホネートであり:
【化6】

(ここで、
R''およびR'''は必要に応じてヒドロキシル、アルコキシまたはアミノ基で置換されていてもよい1〜40の炭素原子を有するアルキル基の中から選択され、互いに同一でも異なっていてもよく、また、互いに接合してリングを形成していてもよく、特に、R''およびR'''はエチル基である)
Zはスチリルまたはアクリロイル(acryloyl)基型の末端官能基を有する多価ラジカルであり、他のラジカルは上記と同じ意味を有する)
上記の重合は60〜250℃度、好ましくは90〜160℃の温で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バレルの圧力で行い、
2.次に、ブロックAを形成するためのモノマー混合物に上記で得られた第1のブロックBを希釈し、その際に、通常のラジカル重合の開始剤(ルペロックス(Luperox、登録商標)またはアゾ化合物、例えばAZDN(登録商標))の0〜100モル当量を混合物に加え、この割合は要求される粘性/耐衝撃性バランスに応じて選択し,
重合は60〜250℃、好ましくは90〜160℃の温度で、0.100〜80バール、好ましくは0.5〜10バールの圧力で行い、
モノマーの変換率10〜100%で得られたポリマーを残ったモノマーから250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で真空蒸発で分離し、
3.最後に、上記2で得られた生成物を、スチレン、MMA、エポキシド、ジオールと二酸との混合物またはポリアミドの先駆体(ラクタム、その混合物、ジアミン、二酸)の中から選択されるモノマーの混合物中に希釈し、全体を上記2と同様に重合させる。
【請求項14】
アルコキシアミンとして下記の式に対応する化合物を使用する請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法:
【化7】

【請求項15】
アルコキシアミンとして下記の式に対応する化合物を使用する請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法:
【化8】


【図1】
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【公開番号】特開2008−274290(P2008−274290A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147948(P2008−147948)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【分割の表示】特願2003−562170(P2003−562170)の分割
【原出願日】平成15年1月21日(2003.1.21)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】