説明

ニンニク卵黄の製造方法

【課題】 ニンニク卵黄の製造に際し、加熱工程で発生するニンニク臭気を作業環境に排出させることなく、同時に製造途中の原材料が外気に晒されることがなく、ニンニク卵黄の炭化(焦げ)の発生も抑えることのできるニンニク卵黄の製造方法を提供する。
【解決手段】 皮を剥いた生ニンニクを仕込んだ気密性を有する撹拌混合槽1内を減圧するとともに、高温の水蒸気を導入してニンニクを加温しながら撹拌粉砕したのち、卵黄を前記撹拌混合槽1に仕込んで加温状態を維持しながら撹拌粉砕されたニンニクとさらに撹拌混合し、得られたニンニクと卵黄の混合物に適量の水を加えて水性スラリー状態とし、得た水性スラリーを直接又は間接的に配管を用いて噴霧乾燥機7に移送し、乾燥粉末化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、健康食品として広く利用されているニンニク卵黄の製造方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
古くから健康食品として知られているニンニク(本明細書においてはすべて「ニンニク」と表示する)と卵黄の混合物は、近年工業的にも製造され、ニンニク卵黄として、粉末、顆粒あるいはカプセル化したものが販売されている。
【0003】
このニンニク卵黄については、その製造方法に関しても種々の提案がなされている。
例えば、特許第3091837号(特許文献1)においては、従来家庭内で小規模に作っていたものを、商品として工業的規模で量産する手段が提案されている。
【0004】
すなわち、ニンニクと卵黄を単に物理的に混練するのではなく、ニンニクと卵黄とを充分に化学反応させて複合化したとする製造方法である。
量産するに際しては、可及的に臭いを減少させて作業者の嫌悪感を緩和した方法であって、加熱手段によりニンニク/卵黄を焼き過ぎず、ニンニクや卵黄の効能成分であるアリシンとレシチン消失させない方法であるとしている。
【0005】
具体的には、
1)原料ニンニクを予め蒸しておく工程
2)前記原料ニンニクを加温、攪拌してニンニクペーストを調製する工程
3)加温されたままの前記ニンニクペーストと卵黄とを、混練した後の温度が40℃を下回らないように、ニンニク/卵黄ゲル状複合物を形成するまで混練する工程
4)前記ニンニク/卵黄ゲル状複合物を熱処理する工程であって、このニンニク/卵黄ゲル状複合物を厚さ4〜6mmの板状にして自然乾燥した後、遠赤外線を照射してニンニク/卵黄複合物にすることからなる工程、および
5)前記熱処理をしたニンニク/卵黄複合物を粉末化する工程であって、硬質アルミナのローラを用いて得たニンニク/卵黄複合物を微粉砕することから成る工程
を含むことを特徴とするニンニク/卵黄複合加工食品の製造方法である。
【0006】
この特許文献1に記載のニンニク/卵黄複合加工食品の製造方法は、蒸し工程、ペースト調製工程、混練工程、熱処理工程および微粉砕工程を必須とするものである。
そのため、各工程を順次遂行するためには、蒸し器、ステンレス容器、鉄製鍋などの容器や、混練機、プレス機、遠赤外線照射装置、硬質アルミナローラなどの多くの機器を必要とするものである。
【0007】
特許第3527703号(特許文献2)においては、従来の煮練機で行っていた一工程を、破砕工程、混合工程、低臭化工程、乾燥工程の四工程に分離独立させ、その各工程に適した加工機械を配置することで、連続生産体系を可能にし、かつ、加工途中の素材を冷蔵、冷凍することにより中間素材の貯蔵が可能で、しかも、経験や熟練した技術を必要とすることなく、品質の一定化した商品価値の高い製品を多量生産することができる、ニンニク卵黄の製造方法が提案されている。
【0008】
具体的には、
1)剥皮洗浄したニンニクを蒸煮する蒸煮工程
2)高速カッターミキサを用い、蒸煮処理したニンニクと卵黄を攪拌すると共にこれを混合する破砕混合工程
3)混合処理したニンニクと卵黄の混合物を減圧下において、ミキシングする低臭化工程
4)低臭化処理したニンニクと卵黄の混合物を、一対の加熱ドラムを互いに逆方向に回転させるように形成したドラム乾燥機を用い、加熱ドラム間にニンニクと卵黄の混合物を供給することにより、加熱ドラムの熱で上記混合物を乾燥させると共にシート状に成形する乾燥工程
5)乾燥処理したニンニクと卵黄のシート状混合物を粉砕する粉砕工程
からなるものである。
【0009】
このニンニク卵黄の製造方法も、蒸煮工程、粉砕混合工程、低臭化工程、乾燥工程および粉砕工程を必須とし、それぞれの工程において、蒸し器、高速カッターミキサ、真空ニーダー、ドラム乾燥機、高速粉砕機(粉砕ふるい機)という種々の機器を必要とするものである。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3091837号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3527703号(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1,2に開示された従来のニンニク卵黄混合物粉末の製造方法は、いずれも主たる工程がそれぞれ個々独立したもので、それぞれの工程に適したそれぞれ異なる機器が用いられている。
【0012】
しかも、各工程が独立し、かつバッチ形式を主体とするものであって、処理用原材料の投入、処理済み品の取り出しが機器ごとに行われるので、製造に時間を要するとともに、各機器を個別に設置する必要があるため、作業場として広いスペースが求められ、製造コストを大幅に下げることが難しいという課題がある。
【0013】
特許文献1においては、ニンニクが本来有する独特の臭気を、あらかじめ蒸すことによって、後の諸工程におけるニンニクから発散される臭気を激減させるという効果を奏するものである。
【0014】
しかしながら、蒸されたニンニクを次工程に送る際、蒸されたニンニクから発生する独特の臭気が作業場に充満し、作業者に嫌悪感を与えるため、前記臭気を外部に放出するための排気設備の設置が求められるが、ほぼ完全にニンニクの臭気を排気するには大型の排気設備と、かつ外部への影響を避けるための附帯設備も必要となる。
【0015】
この点、特許文献2に記載のニンニク卵黄の製造方法では、混合処理されたニンニクと卵黄の混合を、真空ニーダーを利用し行うと同時に、内部に発生した臭気を真空ポンプを通じて排気するという低臭化工程を採用している。
しかるに、この低臭化工程は、蒸し工程などで発生した独特の臭気を低減させるものではなく、特許文献1と同様の課題が存在するものである。
【0016】
また、特許文献2は、前記低臭気化工程において、温度70〜80℃の温度でニンニクと卵黄との混合物の水分調整を行うとしている。
この水分調整の方法については、特許文献2では具体的に開示されていないが、内部のニンニクと卵黄との混合物との状態を把握し、水が必要な場合には水を別途添加し、水が多ければ加温時間を長くして調整するものと推測されるが、いずれの場合であっても、水分調整に際しては真空ニーダーの蓋を開閉することが避けられない。
【0017】
また、粒状もしくは顆粒状として得られた最終製品としてのニンニク卵黄は、直接健康食品として、あるいは他の健康食品の原料として用いられるものであるから、衛生管理を厳格に行うことが重要である。
【0018】
そのため、製造工程中の作業環境において、原材料の汚染を防止することが必須であるにも拘わらず、特許文献1や特許文献2に記載のニンニク卵黄の製造方法では、各工程における製品は、工程が進むたびに必然的に外気と接触することを余儀なくされる。
したがって、汚染の危険性が常に存在するとともに、その都度ニンニクの臭気が室内に発散されるので、健康食品の製造方法としては、解決すべき課題を含んでいる。
【0019】
さらにまた、特許文献1,2においても指摘しているように、ニンニク卵黄の製造に際し、ニンニク卵黄の炭化(焦げ)の発生は、ニンニク卵黄の品質の低下を招くため、引用文献2においては、ニンニクに混合させる卵黄の量を多くすることで解決しているが、原材料費の高騰に繋がるため、好ましい手段ではない。
加えて、各特許文献においても、乾燥に際しては、遠赤外線照射装置、硬質アルミナロールあるいは加熱ロールという手段を採用しているが、これらの手段において、炭化(焦げ)の発生を防止するためには、かなり厳しい生産管理が求められ、価格を押し上げる一因となっている。
【0020】
この発明はかかる現状に鑑み、ニンニク卵黄の製造方法において、加熱工程において発生するニンニク臭気を作業環境に排出させることなく、同時に製造途中の原材料を外気に曝すことを基本的になくすとともに、ニンニク卵黄の炭化(焦げ)の発生も抑えることのできるニンニク卵黄の製造方法を提供せんとすることを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
皮を剥いた生の原料ニンニクを仕込んだ気密性を有する撹拌混合槽内を減圧し、高温の水蒸気を導入してニンニクを加温しながら撹拌粉砕したのち、
卵黄を前記撹拌混合槽に仕込んで加温状態を維持しながら撹拌粉砕されたニンニクと撹拌混合し、
得られたニンニクと卵黄の混合物に水を加えて水性スラリー状態とし、
得た水性スラリーを直接又は間接的に配管を用いて噴霧乾燥機に移送し、乾燥粉末化すること
を特徴とするニンニク卵黄の製造方法である。
【0022】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のニンニク卵黄の製造方法において、
前記ニンニクの加温粉砕および卵黄との撹拌混合は、
前記撹拌混合槽内からニンニクの臭気、水蒸気およびニンニクに起因する水分を、撹拌混合槽内を減圧して外部に排出しながら行うもので、前記卵黄の仕込みは、前記減圧のために生じた卵黄供給槽との圧力差を利用して行うこと
を特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のニンニク卵黄の製造方法において、
前記粉砕されたニンニクと卵黄の混合は、
ニンニク繊維の粉末化を兼ね、前記撹拌混合槽に付設した配管中のインラインミキサーを併用して行われること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載のニンニク卵黄の製造方法において、
前記撹拌混合槽は、
バッチ運転であって、前記噴霧乾燥機が連続運転であることの差異による、撹拌混合槽又は噴霧乾燥機の稼働の不連続化を、撹拌混合槽から噴霧乾燥機への水性スラリーの移送の中間に保温撹拌槽を設けて回避し、製造効率を上昇させること
を特徴とするものである。
【0025】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載のニンニク卵黄の製造方法において、
前記ニンニクの撹拌粉砕、ニンニクと卵黄の混合および水性スラリーの移送は、
いずれも温度80℃〜95℃の範囲に加温された状態で行われること
を特徴とするものである。

【発明の効果】
【0026】
この発明のニンニク卵黄の製造方法は、ニンニクの加温撹拌粉砕、粉砕ニンニクと卵黄の加温混合、さらには発生した臭気の除去等を、すべて一台の撹拌混合槽内において行うことができる。
そのため、作業スペースを有効に利用することが可能なもので、バッチ処理による工程毎のニンニク臭の発生がなく、ニンニク卵黄の製造過程を自動化することが可能で、製造時間の短縮化と製品コストの引下げを可能としたものである。
【0027】
特に、生のニンニクは加熱すると独特の臭気が発生するが、この発明においては、一旦撹拌混合槽内に投入されたニンニクは、卵黄と均一に撹拌混合され水性スラリーとされ、噴霧乾燥機に移送されまでは、撹拌混合槽は蓋を解放されることがない。
前記撹拌混合槽内で発生したニンニク臭は、撹拌混合槽の減圧下のもと、水蒸気およびニンニクに起因する水分とともに外部に排出することによって行なうことができるので、作業環境を汚染することなく、作業者に臭気による悪影響を及ぼさない。
【0028】
また、ニンニク卵黄の乾燥粉末化は、ニンニクと卵黄の混合物を水性スラリー化し、得た水性スラリーの乾燥を噴霧乾燥機で行うというもので、撹拌混合槽から噴霧乾燥機への移送も配管を用いてできるため、撹拌混合槽への生の原料ニンニクの投入後は、撹拌混合槽内のニンニク等は、粉末化されるまで外気に晒されることがないので、食品の製造工程における衛生環境維持を極めて容易にするものである。
【0029】
特に、この発明においては、ニンニクと卵黄との混合に際し、温度95℃程度の常圧の水蒸気での熱処理で行われるため、ニンニク卵黄の炭化(焦付き)が発生し難く、あらかじめ所定の水を撹拌混合槽内に供給して前記混合物をスラリー化させるので、可及的にニンニク卵黄の炭化を防止することができる。
【0030】
さらに、製造途中においてニンニクから発生する臭気は、撹拌混合槽に付設される減圧機構を構成する真空ポンプを通じて、空気や水蒸気やニンニクに起因する水分とともに配管によって外部に排出できるので、外部に排出した空気や水分を処理装置によって容易に処理することができる。
一方、噴霧乾燥機内で発生した臭気も、乾燥粉末化に使用された熱風とともに、配管により排出されるため、上記と同様に処理装置に送られ処理することができるため、作業環境を汚染することなく、作業者に臭気による悪影響を及ぼすことがない。
【0031】
さらにまた、得られるニンニク卵黄は、撹拌混合槽への生の原料ニンニクの投入後は、得られた水性スラリーを噴霧乾燥機に送り、最終製品化されるまで外気に晒さられる危険性がないので、衛生的で、かつニンニクが有する本来の有効成分を多く保持した製品を得ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明のニンニク卵黄の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明のニンニク卵黄の製造方法は、粉末化する前の工程、具体的にはニンニクの加熱撹拌による粉砕工程、卵黄との混合工程および水性スラリー化工程を、気密性を有する一つの撹拌混合槽内で行い、かつ加熱過程で発生するニンニク臭を一切作業環境に放出することなく行うことを最大の特徴とするものである。
なお、水性スラリーとされたニンニク卵黄の乾燥粉末化は、前記撹拌混合槽と直接もしくは間接的に配管により接続された噴霧乾燥機で行われる。
【0034】
以下、この発明のニンニク卵黄の製造に使用される製造装置を、図1に基づいて具体的に説明する。
【0035】
図1において、1はニンニクの加温粉砕および粉砕されたニンニクと卵黄の混合処理を行なうペーストミキサーなどからなる気密性の撹拌混合槽であって、内部には、ニンニクを撹拌混合し、細片化するための撹拌翼2が具備されている。
この撹拌混合槽1は、ニンニクの加熱と撹拌および粉砕する工程と、粉砕されたニンニクと卵黄とを混合処理する工程を行うもので、内部を減圧するための真空ポンプ(図示せず)と、加温のための水蒸気を導入する配管(図示せず)が付帯されている。
【0036】
前記撹拌混合槽1は、製造しようとするニンニク卵黄の量に応じた容量のものを使用すればよい。
前記撹拌翼2は、ニンニクの加温粉砕、ニンニクと卵黄の加温下での混合処理に適した形状・構造のものが選択採用される。
【0037】
この撹拌混合槽1の上部には、ニンニクを投入するための蓋3が開閉自在に設けられているとともに、その近傍には、卵黄を収納保管するための卵黄供給槽4が配置され、配管5によって前記撹拌混合槽1に連通されている。
【0038】
なお、前記撹拌混合槽1には、図示しないが、撹拌混合させたニンニクと卵黄の混合物をスラリー化させるための水を供給するための配管(図示せず)が付設されている。
【0039】
この発明においては、ニンニクを加熱しながら撹拌混合する際、真空ポンプを利用して前記撹拌混合槽1内を一旦減圧したのち、高温の蒸気を撹拌混合槽1内に供給するものである。
【0040】
この撹拌混合槽1内部の温度は、加熱された水蒸気がニンニクとの接触によって低下するとともに、水蒸気の供給によって撹拌混合槽1内の減圧度も落ちるので、撹拌混合槽1内の温度を一定に保持するためには、内部温度があらかじめ設定された一定温度以下になると、付設のセンサーが自動的に作動して真空ポンプを駆動させて、内部を減圧させたのち、新たな高温の蒸気を供給し温度保持が行なわれる。
【0041】
前記温度保持に際しては、撹拌混合槽1内が常に減圧されるため、減圧の都度、加熱用の水蒸気およびニンニクに起因する水分とともに外部に排除することが可能であるが、撹拌混合槽1内に発生するニンニク臭は、少なくとも加熱撹拌されたニンニクに卵黄を混合する直前に、真空ポンプを作動させ、内部に発生したニンニクの臭気を水分と一緒に外部に排出することによって、卵黄へのニンニク臭の付着を最小限に抑えることができる。
【0042】
その際、前記撹拌混合槽1への卵黄の供給前は撹拌混合槽1内が減圧状態となるので、前記配管5に付設するバルブ(図示せず)を自動的に開かせると、卵黄供給槽4との間に生じる差圧を利用して、卵黄供給槽4から卵黄を撹拌混合槽1内に自動的に供給することができる。
【0043】
かかる撹拌混合槽1は、ニンニクの加熱撹拌と粉砕工程、卵黄との混合工程、混合物の低臭化および適量の水を加えてスラリー化するスラリー化工程が終了すると、水性スラリー状態のニンニクと卵黄の混合物(以下、水性スラリーともいう)を、下部に設けた配管6(図面の点線で示される配管)を介して噴霧乾燥機7に供給し、噴霧乾燥機7において、熱風により水性スラリーを乾燥させ、粉末状もしくは顆粒状のニンニク卵黄を生成させるものである。
【0044】
かかる製造過程において、前記撹拌混合槽1におけるニンニクと卵黄の撹拌混合は、撹拌混合槽1内での混合だけでは必ずしもニンニク繊維を十分に切断し細粉化できない場合もあるので、前記撹拌混合槽1の近傍にインラインミキサー8を配置し、配管6と配管9を利用して撹拌混合槽1と連通させ、このインラインミキサー8内においてニンニク繊維の細粉化と卵黄とのさらなる混合を行うことが好ましい。
【0045】
この発明における撹拌混合槽1による処理はバッチ処理を前提とし、噴霧乾燥機7による処理は連続処理を前提としている。
そのため、撹拌混合槽1と噴霧乾燥機7を配管9により直接接続して稼働させる場合、バッチ処理と連続処理の乖離によって、撹拌混合槽1と噴霧乾燥機7の運転を断続的に行うことが強いられる。
したがって、運転の効率を向上させるために、バッファーとして、撹拌混合槽から噴霧乾燥機へのニンニク卵黄混合物の水性スラリーの移送の中間に水性スラリーを一時的に貯留する保温撹拌槽11を設けるのが好ましい。
【0046】
この保温撹拌槽11は、一時的に水性スラリーを貯留するものである。
その際、貯留時に水性スラリーが冷却するのを防止するために、ジャケットと撹拌翼を有し、撹拌しながら所定の温度に上昇させた状態で前記噴霧乾燥機7に供給することが好ましい。
【0047】
前記保温撹拌槽11の配置は、撹拌混合槽1のバッチ運転と、噴霧乾燥機7の連続運転による撹拌混合槽1又は噴霧乾燥機7の稼働の不連続化を回避させ、撹拌混合槽1と噴霧乾燥機7の水性スラリーの温度低下を防止し、製造効率を上昇させることができる。
【0048】
前記保温撹拌槽11で温度上昇させた水性スラリーは、配管12を介して湯煎槽13に供給し、湯煎で噴霧乾燥に適した温度に加温し、加温した水性スラリーを、ホッパー14を介して前記噴霧乾燥機7に供給することが好ましい。

【実施例】
【0049】
以下、前記した撹拌混合槽を利用したニンニク卵黄の実施例を具体的に説明する。
【0050】
洗浄し、皮を剥いた生の原料ニンニク80kgを内容積2,000リットルの撹拌混合槽内に仕込み、蓋を閉じて密閉した。
撹拌翼(回転数18rpm/分)を回転させながら、真空ポンプを用いて撹拌混合槽内を減圧した。
約3分後に撹拌混合槽内の圧力が10kpaに達した時点で、温度98℃の水蒸気の送入を開始し、約15分かけてニンニクの表面温度を85℃まで上昇させ、その温度を30分間維持した。
撹拌混合槽の内部温度の維持は、自動操作による真空ポンプによる減圧と水蒸気の送入により行った。
【0051】
温度85℃で30分間の撹拌で、蒸煮され、柔らかくなったニンニクに卵黄を混合するため、加熱により発生した臭気および水蒸気に起因する水分等を、真空ポンプを利用し、撹拌混合槽内を約70〜80kpaまで減圧して除去した。
この真空ポンプの作動によって、撹拌混合槽が減圧され、撹拌混合槽内のニンニク臭気と水分等を除去する際、卵黄を収納する卵黄供給槽と撹拌混合槽の圧力差が生じるので、この圧力差を利用し、卵黄供給槽から卵黄8kgを撹拌混合槽に仕込んだ。
【0052】
投入された卵黄とニンニクの加温下での粉砕混合を十分に行ない、かつ均一に混合した混合物とするために、撹拌翼2の回転数を45rpm/分に上げ30分撹拌した。
同時に、卵黄とニンニクの撹拌混合に際し、撹拌混合槽の近傍に設けたインラインミキサー(回転数90rpm/分)を約20分程度駆動させ、撹拌混合槽からニンニクと卵黄の混合物を供給し、インラインミキサーにおいてニンニクの繊維をより粉末化させた。
その間、卵黄とニンニクの温度は85℃に維持された。
【0053】
前記処理によって、撹拌混合槽内の卵黄とニンニクは均一に混合粉砕されたので、水22リットルを撹拌混合槽内に添加した。
その結果、固形分濃度約80%の卵黄とニンニクの混合物の水性スラリーが得られた。
水の添加により低下した温度は、水蒸気の添加により回復させた。同時にこの水蒸気の添加による加温で、卵黄に存在する雑菌を完全死滅化が達成される。
【0054】
得られた温度85℃の卵黄とニンニクの混合物の水性スラリーは、配管を用いて噴霧乾燥機7に移送される前に、湯煎槽13により温度95℃に加温した。
【0055】
噴霧乾燥機による乾燥は格別な手段を必要としないので、入口温度150℃、出口温度90℃、ディスク回転数17,000rpm/分に設定して行った。
【0056】
得られた粉末は、自動篩分器などで整粒され、自動包装機で袋詰めされ、金属探知検査、微生物検査を経て製品とされた。
製品収量は33kg(収率は37.5%)で、その外観は白黄色粉末であった。
品質については(財)日本食品分析センターに測定を依頼し、以下の表1に示される結果が得られた(日本食品分析センター第11059858002−01〜02)。
なお、得られた粉末中に含まれるアリインおよびG−SACの含有量を調べた処、アリインは平均18.08mg/g、G−SACは平均5.05mg/gであった。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、健康食品としてのニンニク卵黄を、衛生的にかつ作業環境を良好に維持した状態で、効率よく、品質の優れた状態で製造することを可能とするもので、ニンニク卵黄を製造し、あるいは利用販売する業界において、幅広く利用されるものである。

【符号の説明】
【0059】
1 撹拌混合槽
2 撹拌翼
3 蓋
4 卵黄供給槽
5 配管
6 配管
7 噴霧乾燥機
8 インラインミキサー
9 配管
10 分岐管
11 保温撹拌槽
12 配管
13 湯煎槽
14 ホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮を剥いた生の原料ニンニクを仕込んだ気密性を有する撹拌混合槽内を減圧し、高温の水蒸気を導入してニンニクを加温しながら撹拌粉砕したのち、
卵黄を前記撹拌混合槽に仕込み、加温状態を維持しながら撹拌粉砕されたニンニクと撹拌混合し、
得られたニンニクと卵黄の混合物に、水を加えて水性スラリー状態とし、
得た水性スラリーを直接又は間接的に配管を用いて噴霧乾燥機に移送し、乾燥粉末化すること
を特徴とするニンニク卵黄の製造方法。
【請求項2】
前記ニンニクの加温粉砕および卵黄との撹拌混合は、
前記撹拌混合槽内からニンニクの臭気、水蒸気およびニンニクに起因する水分を、撹拌混合槽内を減圧して外部に排出しながら行うもので、前記卵黄の仕込みは、前記減圧のために生じた卵黄供給槽との圧力差を利用して行うこと
を特徴とする請求項1に記載のニンニク卵黄の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕されたニンニクと卵黄の混合は、
ニンニク繊維の粉末化を兼ね、前記撹拌混合槽に付設した配管中のインラインミキサーを併用して行われること
を特徴とする請求項1又は2に記載のニンニク卵黄の製造方法。
【請求項4】
前記撹拌混合槽は、
バッチ運転であって、前記噴霧乾燥機が連続運転であることの差異による、撹拌混合槽又は噴霧乾燥機の稼働の不連続化を、撹拌混合槽から噴霧乾燥機への水性スラリーの移送の中間に保温撹拌槽を設けて回避し、製造効率を上昇させること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニンニク卵黄の製造方法。
【請求項5】
前記ニンニクの撹拌粉砕、ニンニクと卵黄の混合および水性スラリーの移送は、
いずれも温度80℃〜95℃の範囲に加温された状態で行われること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニンニク卵黄の製造方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−21997(P2013−21997A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162277(P2011−162277)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【特許番号】特許第4846879号(P4846879)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(511180293)株式会社 未来館 (1)
【Fターム(参考)】