説明

ニンニク用包装体

【課題】密封保存した場合でも、長期にわたりカビの発生を防止することが可能なニンニク用包装体を提供する。
【解決手段】基材21の少なくとも片面に、ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物からなる樹脂層23を有する積層体20からなり、樹脂層23が包装体の内面に位置し、かつ、防カビ性を有するニンニク用包装体である。合成樹脂としては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィンおよびアイオノマーのうちのいずれか一種または2種以上の組み合わせを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニク用包装体(以下、単に「包装体」とも称する)に関し、詳しくは、ニンニクを密封して保存することが可能なニンニク用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品用に用いられる包装体としては、紙容器の内面にポリエチレンやワックス等の樹脂層が積層されたものが用いられている。このような紙を基材とする包装体は、通常、1回限りの使用で廃棄されるので、ゴミの量を増やすことに加え、ほとんど分解されないので環境への負荷が大きく、投棄された樹脂類により景観が損なわれ、生物系の生活環境が破壊されるなどの問題を引き起こすものである。
【0003】
かかる問題を解消できる紙積層体として、本発明者らは先に、生物資源を利用したバイオマス材料、中でも、植物由来の樹脂であるバイオマス樹脂を用いた紙積層体を提案している(特許文献1参照)。バイオマス樹脂は、使用後に焼却されれば炭酸ガスを経て植物に、また、コンポスト処理などを経た場合も植物に循環し、この植物から再びバイオマス樹脂に循環することで、循環型社会へ向かうための一助となりうる材料である。また、バイオマス樹脂は、炭酸ガスの排出を抑制でき、地球温暖化防止や農業の活性化などにも効果的な材料であり、石油資源を使用しないので省資源の観点からも有用である。さらに、バイオマス樹脂の一種であるポリ乳酸(PLA)は、防カビ性を有することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−188812号公報(特許請求の範囲等)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「防菌防黴」vol.29,No.3,pp.153−159,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、食品の中でも特にニンニクは、密封容器中に封入するとカビを生じやすく、従来の包装体では、長期の保存は困難であった。したがって、カビの発生なしでニンニクを保存することが可能な包装体の実現が望まれていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解決して、密封保存した場合でも、長期にわたりカビの発生を防止することが可能なニンニク用包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、ポリ乳酸(PLA)系樹脂の防カビ性に着目し、かかるPLA系樹脂を用いた積層体を用いることで、密封保存した場合でも長期にわたりカビの発生を防止することができ、かつ、環境性にも優れた包装体が実現できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のニンニク用包装体は、基材の少なくとも片面に、ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物からなる樹脂層を有する積層体からなり、該樹脂層が包装体の内面に位置し、かつ、防カビ性を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記合成樹脂が、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィンおよびアイオノマーのうちのいずれか一種または2種以上の組み合わせからなることが好ましい。また、前記ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との配合割合は、好適には、質量基準で10〜90:90〜10とする。さらに、前記樹脂層は、前記基材上に、押出ラミネーション法で積層されてなるものとすることが好ましい。
【0011】
さらにまた、本発明においては、前記基材が、クラフトパルプと、サイズ剤としてのロジンおよび/またはアルキルケテンダイマーとを含み、配合割合が質量基準でクラフトパルプ:サイズ剤=100:0.15〜1.5である紙基材からなることが好ましく、ポリ乳酸系樹脂からなることも好ましい。さらにまた、本発明の包装体は、紙絞りトレー、紙カップまたは熱圧着によりシールされたパウチの形状を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、密封保存した場合でも、長期にわたりニンニクにカビが発生することを防止できるニンニク用包装体を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のニンニク用包装体の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る積層体の一例を示す模式的断面図である。
【図3】図1中のA−A’断面を示す断面図である。
【図4】図1中のB−B’断面を示す断面図である。
【図5】本発明のニンニク用包装体の他の例を示す断面図および平面図である。
【図6】本発明のニンニク用包装体のさらに他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明のニンニク用包装体のさらに他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のニンニク用包装体の一例の紙カップを示す斜視図を示す。図示する紙カップ10は、略円筒状の胴部11と、胴部11の下端に接合される底部13とからなり、胴部11の上端部にはカール15が形成されている。また、図2は、本発明のニンニク用包装体に用いる積層体の一構成例を示す模式的断面図である。
【0015】
本発明のニンニク用包装体は、図2に示すような、基材21の片面または両面に、ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物からなる樹脂層23を有する積層体20からなり、樹脂層23が包装体の内面に位置し、かつ、防カビ性を有することを特徴とするものである。かかる構成としたことで、内部にニンニクを封入して保存した際に、長期にわたりニンニクにカビが発生することを防止する効果が得られる。また、本発明の包装体においては、炭酸ガスの排出を抑制できるので、地球温暖化の防止や農業の活性化などにも効果的であり、石油資源の使用量を少なくすることができるので、省資源化にも寄与できる。さらに、樹脂層23をポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物からなるものとしたことで、樹脂層23の成膜加工適性を向上できる。加えて、紙カップや紙絞りトレーなどの紙容器の製造については従来設備で実施できるので、結果として、低コストで容易に大量製造することが可能な包装体とすることが可能である。
【0016】
本発明において樹脂層23に用いるポリ乳酸系樹脂としては、モノマーの質量に換算して、乳酸成分を50質量%以上含むものであればよく、例えば、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体、乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸との共重合体、および、これらのうちいずれか2種以上の組み合わせの混合物などが例示できる。乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸若しくはそれらの混合物、または、乳酸の環状2量体であるラクタイドなどがある。具体的には例えば、三井化学(株)製のポリ乳酸樹脂「レイシア」(商品名)が挙げられ、その銘柄としては、例えば、H−100,H−400,H−440,H−360,H−280,100J,H−100E,M−151S Q04,M151S Q52などがある。
【0017】
また、ポリ乳酸系樹脂とともに樹脂層23を構成する合成樹脂としては、特に限定されないが、ヒートシール性のあるポリオレフィン系樹脂またはその変性体が好適である。かかるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、オレフィンと他のモノマーとの共重合体であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、カルボン酸をグラフト重合した酸変性ポリオレフィン、アイオノマーを挙げることができ、中でも、混練性が良く成膜加工適性が良好である点から、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィンおよびアイオノマーのうちのいずれか一種または2種以上の組み合わせが好適である。
【0018】
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)があり、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和カルボン酸単位含有量としては、2〜25質量%、特には5〜20質量%が好ましい。
【0019】
エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)などが挙げられる。
【0020】
酸変性ポリオレフィンとしては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0021】
アイオノマーとしては、側鎖イオン基が存在するもの、両末端のカルボン酸基が金属イオンで中和したもの、主鎖の陽イオンに陰イオンが結合したものなどがあるが、特に限定されるものではない。例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、プロピレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、ブチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−ビニルスルホン酸共重合体アイオノマーなどが挙げられ、これらのうちの1種のみ、または、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。アイオノマー中の不飽和カルボン酸単位含有量としては、2〜25質量%、特には5〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは、エチレン−メタアクリル酸共重合体アイオノマーである。
【0022】
また、樹脂層23を構成するポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物には、所望に応じ、着色剤、顔料、体質顔料、充填剤、滑剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤などの添加剤を加えてもよい。
【0023】
樹脂層23におけるポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との配合割合は、質量基準で10〜90:90〜10程度とすることができ、好ましくは50〜75:50〜25とする。ポリ乳酸系樹脂の配合量がこの範囲未満では、防カビ性が不十分となるおそれがあり、また、環境性の点でも効果が少ない。一方、ポリ乳酸系樹脂の配合量がこの範囲を超えると、積層体に加工する際の加工適性が悪く、均一な膜が得られず、また、紙への接着力も低下する。
【0024】
樹脂層23の、JIS K−7210に準拠して190℃、2160g荷重の条件において測定したメルトフローレート(MFR)は、通常0.5〜20g/10分程度であり、好ましくは1〜15g/10分、より好ましくは4〜6g/10分である。樹脂層23のMFRがこの範囲未満では、基材上への積層加工時における加工適性が悪く、Tダイスから出た樹脂の流れが悪く、膜切れもしやすい。一方、樹脂層23のMFRがこの範囲を超えると、Tダイスから出た樹脂の流れが速すぎて乱れたり、厚薄ムラが大きくなり、均一な膜が得られない。
【0025】
ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂とを配合し混練して樹脂組成物とする方法としては、特に限定されないが、例えば、1軸または多軸の押出し機や、ミキサーなどの公知の方法を用いることができ、特に、溶融混練の手法を用いることが好ましい。
【0026】
基材21としては、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、紙基材の他、PLA系樹脂からなるフィルムも好適に用いることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、オレフィン等の二軸延伸フィルムなどを用いてもよい。紙基材としては、例えば、晒または未晒の紙、板紙、加工紙などが挙げられ、具体的には、伸縮性があり、紙カップ製造適性のよいカップ原紙などが例示できる。また、紙基材は、各種の添加剤などを含有していてもよい。紙基材としては、坪量約80〜600g/mのもの、特には、坪量約100〜450g/mのものを使用することが好ましい。
【0027】
紙基材としては、クラフトパルプと、サイズ剤としてのロジンおよび/またはアルキルケテンダイマーとを含むことが、包装体に強度を与え、高サイズ度であることから好ましく、内容物などが滲み込みにくいので、耐水性の紙カップや紙絞りトレーなどが製造できる点でも好ましい。その配合割合は、質量基準でクラフトパルプ:サイズ剤=100:0.15〜1.5とすることが好ましい。サイズ剤の配合量が少なすぎると、サイズ度が不足して内容物などが滲み込みやすく、サイズ剤の配合量が多すぎると、サイズ度が高過ぎてポリ乳酸系樹脂を含む樹脂層との接着性が低下する。
【0028】
上記樹脂層23は、基材21上に、押出ラミネーション法を用いて積層することが好ましい。すなわち、上記ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物を、押出ラミネーション法で樹脂層とし、基材上に積層する。押出ラミネーション法は、いわゆる、当業者がエクストルージョンコーティング(EC)と呼ぶ方法である。まず、押出機で、押出樹脂を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させて、カーテン状に押し出す。溶融樹脂を基材上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、押出樹脂層の形成と、基材への接着および積層とが同時に行われ、また、ロールツーロールの巻取状で加工ができるので、極めて生産効率が良い方法である。ポリ乳酸系樹脂は溶融時の張力が低く、押出ラミネーション法ではTダイスから出た樹脂のネックインが大きく、特に両端部が厚くなって巻取りにくくなり、さらに樹脂層の厚薄ムラが大きく、また膜切れもしやすいので、薄膜の樹脂層は成膜し難くかったが、本発明においては、合成樹脂との混練物としたことで、幅方向の厚薄ムラが少なく、既存の従来設備で、ロールツーロールの巻取状で加工することができ、極めて生産効率がよく容易に、大量生産ができるものとなった。
【0029】
EC方式を用いて、押出機で上記混練物からなる樹脂組成物を加熱して溶融させ、Tダイスからカーテン状に押し出す際の溶融樹脂の温度は、180〜300℃、好ましくは210〜280℃、より好ましくは230〜270℃である。溶融樹脂の温度がこの範囲未満では、接着不良や加工不良が生ずるおそれがある。一方、溶融樹脂の温度がこの範囲を超えると、樹脂の分解温度に近づくので、Tダイスから出た樹脂の流れが乱れたり、着色したりしてしまう。
【0030】
成膜と積層体が同時にできるEC方式では、高速加工で低コスト化できるメリットがあり、基材上に、通常80m/分以上、好ましくは100m/分以上、より好ましくは120m/分以上の高速で、樹脂層を押出ラミネーション法により積層することができる。また、1回のEC法での樹脂層23の成膜厚さとしては、通常5〜200μm、好ましくは20〜100μmとすることができる。樹脂層23の成膜厚さがこの範囲未満では、EC加工時にTダイスから流下した樹脂の樹脂温度が低下しやすく、また、熱容量が少なく基材との接着性が悪くなる。一方、樹脂層23の成膜厚さがこの範囲を超えると、基材との接着性は良くなるが、Tダイスから出た樹脂の溶融粘度が高いためか、膜切れしやすく、EC加工性が著しく低下する。厚さが必要な場合には、複数回のEC加工を繰り返せばよい。
【0031】
なお、本発明においては、樹脂層と基材とを強固に接着させるために、アンカーコート剤(AC剤)と呼ばれる接着促進剤などを塗布してもよく、また、アンカーコート剤の代わりに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンガス処理などの易接着処理を施してもよい。アンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネートなどの有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、ポリウレタン系アンカーコート剤などがある。アンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング法で塗布して、乾燥すればよい。アンカーコート剤の厚さは、通常0.01〜10.0μm、好ましくは0.1〜5.0μmとすることができる。
【0032】
また、本発明においては、紙基材に、ポリエチレンイミン(PEI)やPLAを含有させてもよい。含有させる方法としては、紙基材に抄き込んだり、塗布するなどすればよく、好ましくはPEIを含有させる。紙基材に塗布する方法としては、水、アルコールおよび/または有機溶媒などを用いて溶液として、紙基材への含浸、スタンプコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどにより塗布して、乾燥させればよい。含有させる部位としては、包装体とする際に熱接着する部分が好ましいが、もちろん全面に含有させてもよい。このようにすることで、ポリ乳酸系樹脂を含む樹脂層面と紙基材面との異質材料間のシールであっても接着性が向上するので、より低い条件でも充分な接着性が得られるものとすることができる。PEIの塗布量としては、通常0.001g/m〜5g/m、好ましくは0.01g/m〜1g/mである。PEIの塗布量がこの範囲未満では、接着性向上の効果が低く、一方、PEIの塗布量がこの範囲を超えても、それ以上の効果は得られない。
【0033】
本発明の包装体は、紙絞りトレーや紙カップ、熱圧着によりシールされたパウチ等の形状とすることができる。
【0034】
本発明の包装体を図1に示すような紙カップ形状にて製造する際の製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。すなわち、まず、(1)胴部11を形成する胴部材41を準備するとともに、(2)底部13を形成する底部材43を準備し、(3)胴部材41を円錐台形に打ち抜いて胴部ブランクとし、(4)底部材43を円形に打ち抜いて底材ブランクとする。次いで、(5)胴部ブランクを、樹脂層23が内側となるように筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合せて胴貼部分31とし(図3参照)、この胴貼部分31に加熱処理を行い押圧することで、筒状の胴部11を形成する。次いで、(6)筒状の胴部11の底端部へ、底板ブランクの外周を筒状に起立成形させて起立成形部33とした底部材を挿入し、底部材と、底部材が挿入された胴部の底端部との接合する部分に熱風などを吹き付けて、当該部分に存在する樹脂層23を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状の胴部11の先端部を内方に折り曲げて起立形成部33に被せ、上記筒状の胴部11の先端部と底部13の起立成形部33との胴貼部分31に内径側からローレット掛けすることにより、胴部11と底部13とを密接着させて接合部をシールする(図4参照)。次いで、(7)胴部11の上端部を外側にカールしてカール15を形成する。シール方式としては、通常、ホットエアー方式が用いられるが、その他一般的に用いられる方法、例えば、超音波方式や加熱バーによる加熱加圧方式を使用してもよく、特に制限はない。
【0035】
図5に、本発明の包装体の他の例の紙絞りトレーを示す斜視図を示す。図示する紙絞りトレー110は、公知の方法で絞り成形されてなり、上部が開口し、底面111と、底面111から側壁面113を経て開口部周縁に外向きのフランジ部115とを備え、角部117は罫線で折り畳まれてフランジ部へ立ち上がり、トレー状ないし皿状を呈している。紙絞りトレーの外形は、図示例では長方形であるが、三角形などの多角形または円形、楕円形など任意であってよく、深さやフランジ形状も任意に決定することができる。図示はしないが、本発明の包装体を紙絞りトレーの形状とする場合には、紙絞りトレー110の上部を覆う蓋材を、フランジ部115にヒートシールして密封することができる。
【0036】
本発明の包装体を、熱圧着によりシールされたパウチ形状とする場合においても、その具体的な外形形状や寸法等については、所望に応じ適宜決定することができ、特に制限されるものではない。図6に、本発明の包装体のさらに他の例の平パウチを示す概略図を示す。図示する平パウチ130は三方にシール部131を有しており、開口部133から内部にニンニクを充填した後、開口部133をヒートシールすることで密封することができる。
【0037】
また、本発明の包装体は、その他、公知のいかなる形状の紙容器の形状としてもよい。例えば、図7に示すようなゲーベルトップタイプ121やブリックタイプ123などの箱型紙容器の他、円筒状または角筒状の紙容器とすることもできる。
【0038】
本発明の包装体を形成する積層体の層間および/または層表面には、必要に応じて、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウムなどの無機化合物層、金属蒸着層、金属箔などのガスバリア層、耐熱性および/または機械的強度に優れた2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや2軸延伸ポリアミド(ON)フィルム等のプラスチックフィルム層などの保護層を任意に積層してもよい。また、各層の積層の際には、接着力やその他の機能を向上させるための、接着層、プライマ層、コロナ処理などの易接着のための層および/または処理を施してもよい。ガスバリヤ層、保護層、プライマ層などを用いた積層方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、2液硬化型ポリウレタン系接着剤などを用いたドライラミネート法、アンカーコート剤を介した押出しコート法やサンドイッチラミネート法などが例示できる。
【0039】
本発明の包装体を紙容器とする際に、胴部などの接合部において、特に、紙容器の内側に紙の端面が露出する場合には、スカイブ・ヘミングやヘミング、テープ貼りなどの公知の端面処理方法を用いて、紙の端面の露出を防止することで、耐水性や密封性を向上させることもできる。また、紙容器の天部、底部および/または胴部の外側接合部に紙の端面が露出していてもよく、もちろん、必要に応じて適宜、スカイブ・ヘミングやヘミング等の処理方法を用いて、紙の端面を隠し、耐水性や密封性を向上させてもよい。例えば、図3に示す胴部材41(胴部ブランク)においては、片側端部にスカイブ・ヘミング加工を施して、胴貼部分31における接着性を向上し、耐水性や密封性を高めている。さらに、紙容器には、内容物であるニンニクの取出口として、蓋材や、プルタブ形式の開封機構などを、容器の形状に応じて適宜設けることができる。さらにまた、紙容器にレーザー光照射や機械的手段による開封用のハーフカット線またはハーフカットのミシン目線などを設けて、取り出し口を形成してもよい。
【0040】
本発明の包装体は、ニンニクを封入して使用するものであり、封入するニンニクとしては、生のものまたは乾燥したもののいずれであってもよく、いずれの場合も、本発明による防カビ効果が得られるものである。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1>
紙基材として秤量255g/mのカップ原紙を用いて、その片面にインラインでコロナ処理を実施しながら、以下の樹脂層組成物を用いて、押出ラミネーション法で240℃にて厚さ30μmの樹脂層を形成して、紙基材255μm/樹脂層30μmからなる積層体(胴部材および底部材)を得た。樹脂層組成物としては、PLA(レイシアH−100,三井化学(株)製)70質量部にアイオノマー樹脂(ハイミラン1652,三井デュポンポリケミカル(株)製)30質量部を加えて、加熱混練したものを用いた。
【0042】
上記の胴部材を円錐台形に打ち抜きブランク板とし、このブランク板を、樹脂層が内側となるよう筒状に巻いて、その側端部を部分的に重ね合わせて、その胴貼部分を、工具鉄製の所定温度の加熱バーで2回加圧して、筒状の胴部を形成した。
【0043】
この筒状の胴部の底端部に、底板ブランクの外周を筒状に起立成型させた底板を挿入し、底部と、底部が挿入された胴部の底端部とが接合する部分に所定温度の熱風を吹き付けて、当該部分に存在する樹脂層を加熱溶融し、次いで、カール用型により筒状の胴部の先端部を内方に折り曲げて起立成型部に被せ、上記筒状の胴部の先端部と底部の起立成型部との胴貼部分に内径側からローレット掛けすることにより、胴部と底部とを密接着させて接合部をシールした。次いで、胴部の上端部を外側にカールさせてカールを形成し、容量500mlの実施例1の紙カップを得た。
【0044】
<実施例2>
実施例1で作製した積層体を用いて、樹脂層を内側にして上下の金型で加圧する公知の紙絞り成形法により、短辺100mm×長辺150mm×深さ35mm×フランジ幅7mmの紙絞りトレーを成形して、実施例2の紙絞りトレーを得た。
【0045】
<実施例3>
厚み25μmの二軸延伸PLA基材(パルグリーンLC,東セロ(株)製)のコロナ処理面に、実施例1で使用した樹脂層組成物を用いて、押出ラミネーション法で240℃にて厚さ30μmの樹脂層を形成して、PLA25μm/樹脂層30μmからなる積層体を得た。次に、樹脂層を内面にしてインパルスシーラーで加熱圧着し、縦170mm×横130mm、シール幅10mmの3方平パウチを作製した。
【0046】
<比較例1>
樹脂層組成物としてLDPEのみを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の紙カップを得た。
【0047】
<評価方法>
各実施例および比較例で作製した紙カップ、紙絞りトレーまたは3方平パウチに、市販の生ニンニク1個を充填して、シールした。紙カップと紙絞りトレーに関しては、同じ積層体を用いて蓋材とした。その後、常温で3週間保管し、ニンニクへのカビの発生状況を確認した。
【0048】
<評価結果>
実施例の包装体ではすべてについてカビの発生がなかったが、比較例ではカビが発生してしまった。
【符号の説明】
【0049】
10 紙カップ
11 胴部
13 底部
15 カール
20 積層体
21 紙基材
23 樹脂層
31 胴貼部分
33 起立成形部
41 胴部材
43 底部材
110 紙絞りトレー
111 底部
113 側壁部
115 フランジ部
117 角部
121 ゲーベルトップタイプ
123 ブリックタイプ
130 平パウチ
131 シール部
133 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に、ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との混練物からなる樹脂層を有する積層体からなり、該樹脂層が包装体の内面に位置し、かつ、防カビ性を有することを特徴とするニンニク用包装体。
【請求項2】
前記合成樹脂が、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、酸変性ポリオレフィンおよびアイオノマーのうちのいずれか一種または2種以上の組み合わせからなる請求項1記載のニンニク用包装体。
【請求項3】
前記ポリ乳酸系樹脂と合成樹脂との配合割合が質量基準で10〜90:90〜10である請求項1または2記載のニンニク用包装体。
【請求項4】
前記樹脂層が、前記基材上に、押出ラミネーション法で積層されてなる請求項1〜3のうちいずれか一項記載のニンニク用包装体。
【請求項5】
前記基材が、クラフトパルプと、サイズ剤としてのロジンおよび/またはアルキルケテンダイマーとを含み、配合割合が質量基準でクラフトパルプ:サイズ剤=100:0.15〜1.5である紙基材からなる請求項1〜4のうちいずれか一項記載のニンニク用包装体。
【請求項6】
前記基材がポリ乳酸系樹脂からなる請求項1〜4のうちいずれか一項記載のニンニク用包装体。
【請求項7】
紙絞りトレー、紙カップまたは熱圧着によりシールされたパウチの形状を有する請求項1〜6のうちいずれか一項記載のニンニク用包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−12038(P2012−12038A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148048(P2010−148048)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】