説明

ニードル・ボードを装てんするための挿入補助装置

【課題】早くて信頼性の高いニードル・ボードへの一群の針の挿入を可能にする。
【解決手段】挿入装置20が設けられ、当該挿入装置は、いくらかの位置的偏差がある場合でも、操作者が、多重締め付けチャック40に把持された、いくつかの針41、44を、ニードル・ボード10の合致するボア11に同時に挿入することを容易にする。挿入装置20は、ボア11の距離で配列され、それぞれ針41、44の先端45を収容することができ、そして合致するボア11に当該先端をガイドすることができる、多くの平行溝51を備えたガイド部材32を有する。その際、当該溝が針41、44をわずかに曲げることによって、起こりうる位置的偏差を修正することで、溝51はボア11に対して個々の針41、44を整列配置するのを補助する。挿入装置20は、自動装てん機1に取り付けられ、ニードル・ボード10に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルト機およびストラクチャ(structuring)機のニードル・ボード(針盤)を装てんするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルト機は、より密度の高い繊維の不織布を形成するためのもので、当該布は、ランダムに配置された繊維、例えば、フェルト(キャリヤ部材を伴って、あるいはそれなしで)、そして、任意には、後処理される織布またはニットからなる。このために、フェルト機は多数のフェルト針が設けられた基本的に平らな支持体を備える。この支持体はニードル・ボード(針盤)とも呼ばれる。フェルト針は、適当な開口またはボアに取り付けられ、針の保持部分は、前記開口またはボアに圧入される。また、ここで使用される用語「フェルト針」には、後処理のため、例えば、ニットまたは織布を粗くする(roughening)かまたは穿孔する(perforating)ために使用される針が含まれる。
【0003】
ニードル・ボードの針の挿入は、当該針の取り外しと同様に、全てあるいは部分的に手作業でしばしば実行される厄介な作業である。針が摩耗した場合、または、ニードル・ボードの針が別の理由のため取り替えが必要となる場合、古い針はニードル・ボードから取り外さなければならず、そして、新規な針がニードル・ボードに挿入されなければならない。従って、従来から、少なくとも部分的にこの操作を自動化する試みがなされてきた。
【0004】
欧州特許出願第07002360号明細書(特許文献1)には、多数のフェルト針をニードル・ボードのボアの列に同時に挿入することが記載され、当該針は、応力の下に、多重(複数の)締め付けチャックによって、所定の距離で互いに平行して設置されている。このために、充填装置が設けられており、当該充填装置は、針が多重締め付けチャックによって、一群となって把握され、ニードル・ボードに同時にセットできるように、ニードル・ボードの一目盛に対応する適当な距離で、供給部(supply)からフェルト針を、2つの平行に配列されたスクリューコンベヤを用いて、個々に供給する。
【0005】
記載された装置は装てん操作の相当な簡略化を可能にするものの、改良の必要性は示唆されている。例えば、多重締め付けチャックに設置される針は、望ましい平行整列からやや逸脱しているかもしれない。その理由は、針が多重締め付けチャックによって、正確な平行整列で把持されなかったこと、あるいは、針がわずかに曲がっているということであろう。この結果、個々の針先の位置に関する偏差が、嵌め込まれた針によって、定められる平面の中で、同様に当該平面に垂直に、生じうる。
【0006】
ニードル・ボードのボアが非常に近接しているがゆえに、微小な位置決め誤差ですらその関連するボアへの針の挿入を妨げる。たとえ1つの針が誤って整列配置されていても、多重締め付けチャックに設置される針のグループ全体が一体に挿入できなくなる。このエラーを処理するために、例えば、手作業で損なわれた針を整列配置するか、またはそれらをニードル・ボードに挿入するために、手動介入が必要である。この種の複雑な後処理は装てん操作を遅延させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1953287号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、速くて信頼性の高いニードル・ボードへの一群の針の挿入を可能にすることである。この目的は、請求項1の挿入装置により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ストラクチャ機またはフェルト機のニードル・ボードのいくつかの針の挿入のための挿入補助装置または挿入装置が提供される。針は、多重締め付けチャックに把持され、好ましくは一列に互いに隣接して配列される。好ましくは、当該針を完全に装てんするために、針の距離は、ニードル・ボードに付随するボア、一列に配列されている当該ボアの、目または距離に対応する。しかしながら、より大きな針距離を選択することも可能で、それは結果としてボアのいくつかが空いたまま残ることとなる。概して、ニードル・ボードのボアは、圧入されたあと確実に針を保持するため、小さめの直径を有する。従って、嵌め込んだ針の先端の、前述の位置的偏差に関する許容量はごく小さい。
【0010】
本発明の挿入装置は、多重締め付けチャックに把持される針のうちのそれぞれ1つの収容のため、いくつかの凹所を備える。凹所は、多数のボアの内の合致するボアに、いくつかの針のうちの1つをそれぞれガイドするために設けられるガイド・チャネルである。好ましくは、切り欠きは、溝またはチャネルで、細長い形を有し、針のように互いに関して平行に配列されている。好ましくは、凹所は、互いに少し離れて第一の方向に等距離であるように配列され、当該距離は、合致する針ボアの、ボアの一目に対応する。好ましくは、距離は、同時に、多重締め付けチャックの隣接する針の距離に対応する。しかしながら、互いに異なる目に対しても可能であり、この場合、しかしながら、針の挿入のため、そのガイドおよび対応するボアに対して、少なくとも各針は対応する凹所に合致する。挿入装置は、また、他のニードル・ボードの目に対応した距離で、追加の凹所を有することもでき、挿入装置は異なる目を表示するニードル・ボードにも使用できる。
【0011】
針の収容のための切り欠きは、好ましくは挿入装置の表面に形成されて、好ましくはその表面を縁まで伸びる溝である。縁は、鋭角にテーパーがついているプリズム形のガイド部材の縁であってよい。角度は、例えば、ほぼ45度であってよい。
【0012】
このような開放式の溝のため、挿入装置のかどは、ニードル・ボードに着座できる。挿入の間、多重締め付けチャックにおいて、把持された針のうちの1つの先端は、初めに溝に受けられ、続いてボアへ、溝に沿って、ガイドされうる。使用中、挿入装置は、好ましくは、ニードル・ボードに対応するボアが溝の延長であるように配列され、針は当該ボードに挿入されることとなる。これは、関連するボアに、それぞれの溝にガイドされたすべての針を確実に同時に移送することを可能にする。溝は、挿入装置表面の平面の中で、側方への動きに対して水平方向の針を安定させる。
【0013】
好ましくは、多重締め付けチャックをガイドするために1つの手を使用する操作者は、挿入の間、それぞれの溝の底部に向けて、わずかな圧力で針を偏向(bias)するので、すべての針先が、起こりうる整列誤差にもかかわらず、それぞれの溝の底部に対して確実に、わずかな曲率をもって、当接する。その際、溝端が合致するボアに位置するように、そして針先が溝の終わりまでガイドされるときに、ボアに針先が確実に挿入されるような配置に、好ましくは挿入装置が配列され固定される。挿入装置は、操作者により保持される必要はないので、その者は、多重締め付けチャックをガイドするため、そしてニードル・ボードを保持するかまたは動かすために、手を使うことができる。
【0014】
溝は、様々に構成できる。好ましくは、それらは、所望の目に対応する距離で、互いに平行等距離に伸びる。好ましくは、すべての溝は、同じように構成されるが、異なる態様も可能である。溝は、挿入装置のガイド部材の表面に凹所として、例えば、切削方法によって、続けて加工できる。ガイド部材は、例えば、金属またはプラスチック材料から成る。ガイド部材は、溝を含めて、例えば、鋳造によって、一体で作成できる。
【0015】
さらにまた、溝は、例えば、ガイド部材の平面上に平行ストリップの列を続けて付加することによっても形成できる。ストリップは、例えば、プレートのような他の部材から切り抜かれてもよい。プレートから単一の、好ましくは櫛形の構造を、切削かまたは型抜きして、それを例えば表面に接着することも可能であろう。その際、本発明のガイド部材は、多くの平行溝を持つ2つの部材、すなわち、プリズム形の本体および櫛形部材、のみで製作できる。
【0016】
溝は、異なる構成を有してもよい。好ましい実施態様によれば、溝の幅は、ガイド部材の溝の終わる端まで、その長さに沿って減少する。このようにして、ごく小さい不整列がある場合であっても、多重締め付けチャックが挿入装置に接近するにつれて、初めに針が溝に受けられ、そして続いて針先が溝の側面の壁によって、溝端の縁の方向にガイドされ所望の位置に強制され、そして当該位置がニードル・ボードのボアに整列している。さらにまた、溝の深さは、また、端の方へそれらの長さに沿って変化することができて、好ましくはより小さくなることができる。好ましい実施態様では、溝の幅および深さは、不整列な針の挿入および確実な収容のために、始めに大きい溝横断面から減少し、基本的にニードル・ボードのボアを収容する小さな溝横断面の端のへ向かうにつれ溝は狭くなる。
【0017】
溝は、異なる断面形を有してもよい。好ましくは、正三角形またはVの横断面が使用され、当該横断面は中央のかどでガイド溝チャネルを形成する。溝の狭くなった側面のため、上から針に加えられた圧力は、針を最初は溝センターに、そして後にニードル・ボードのボアに集中させる。台形の横断面を使用することも可能である。好ましくは、関連するボアに対し針を確実に整列させるために、平面中央部の幅は、溝の端の方に向かって減少する。
【0018】
しかしながら、充分なセンタリング(心出し)効果が得られれば、実質的により広い溝によっても針をボアに確実に整列させることができる。例えば、外れ位置にある針先端を確実に収容するために、比較的かなり広い幅および深さのV溝を使用できる。中央チャネルのため、その幅にかかわらず、溝は、最適センタリング効果を示すので、この場合も、ボアへの針の確実な挿入が可能である。平らな中心区間が、好ましくはボアの直径より大きくないかさらには明らかに小さい、小さな幅だけを有する場合、同じ効果が台形の溝によっても得られる。一定の横断面、または少なくとも一定の深さを有する溝は、製造がより容易であると判定される。しかしながら、半円形であるか尖頭アーチ形であるか、あるいは別の溝横断面は、センタリングまたは針をガイドするために使用されうる。
【0019】
本発明の挿入装置は、好ましくは自動装てん機のニードル・ボード受口に接続して使用される。挿入装置は、ニードル・ボード受口に固定されて、ニードル・ボードの長さ方向に伸びるレッジ(横桟)を備える。その際、レッジは、好ましくは、装填すべきニードル・ボードのボアの列に、すなわち、当該ニードル・ボードの長手方向延長部に、平行に伸びる。ニードル・ボードに対するレッジの適切な装置のため、切り取り部の各々は、ボアと合致し、そして同時に、それらのそれぞれに合致したボアへの複数の平行配列された針の挿入を容易にする。
【0020】
レッジは、ニードル・ボードの特定タイプに合致する、交換可能な挿入またはガイド部材を備えることができ、そして、当該ボードのボア距離および/またはボア径に適応する。他の挿入装置が、他のニードルボード・タイプのために準備保持される。この結果、ニードル・ボードのさまざまな幾何学的構成に対し、挿入装置の汎用的な使用が可能である。
【0021】
さらにまた、挿入装置は、ニードル・ボードの横方向に伸びるホルダー・アームを備えてもよい。レッジは、ホルダー・アームに保持され、当該レッジは、その長さ方向に、ホルダー・アームの横方向に基本的に伸びている。ホルダー・アームは、全てのニードル・ボード受口を横方向に架橋するように構成でき、そして、自動装てん機のハウジング上のニードル・ボード受口の反対の側面に、据え付けあるいは固定される。好ましくは、ホルダー・アームは、自動装てん機のハウジングに設置されて、その当該ホルダー・アームは、長さ方向に摺動することができ、それぞれ所望の位置に固定できる。あるいは、当該ホルダー・アームは、ハウジングに、例えば、ニードル・ボード受口の中央に、恒久的に連結されてもよく、その場合は、ホルダー・アームの縦運動に代えて、ニードル・ボードは、装てんのために所望の位置に移動されなければならない。
【0022】
ホルダー・アームへのレッジの取付けは、当該ホルダー・アームが異なる方向へ調整できるようになされる。好ましくは、ホルダーに対してレッジを動かすために、2、3の手動の手順により操作者によって解除でき、そして、所望の新しい位置にレッジをしっかりと保持するために、所定の位置にそれを固定するための接続が設けられている。好ましくは、ねじ要素が、手動で作動可能な回転ハンドルについて使用される。レッジのすばやい解除および固定を可能にし、そして解除状態では簡易な調整を可能にし、固定位置では確実に安定する、別の締め付け装置を使用することも可能である。ニードル・ボードの横方向において、そして、ニードル・ボード平面と直角をなす高さにおいて、調整できる用意があることが好ましい。
【0023】
本発明の更なる詳細は、図面を参照して、以下の好ましい例示的実施形態の記載とともに請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】フェルト機のニードル・ボードから針を取り除く、あるいは針を装てんするための、本発明の挿入装置を備えた自動装てん機の概略斜視図。
【図2】図1の自動装てん機に適したニードル・ボードの概略図。
【図3】図1の挿入装置の拡大した斜視図。
【図4】図1のような発明に係る、多重締め付けチャックに据えられたニードル・ボードに、いくつかの針が挿入されている時の、挿入装置の使用を示す斜視図。
【図5】図3の発明の、いくつかの針が挿入されるときの、挿入装置のレッジの一端を拡大した図。
【図6】案内溝の異なる幾何学的構成を有するレッジの他の実施例の、図5と同様の図。
【図7】案内溝の他の幾何学的構成を有するレッジの他の実施例の、図5と同様の図。
【図8】案内溝のさらにもう一つの幾何学的構成を有するレッジの他の実施例の、図5と同様の図。
【図9】挿入装置の他の例示的実施形態の拡大した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、フェルト機のためのニードル・ボードを装てんするための自動装てん機1を示す。図1に示されないニードル・ボードは、装てんされた後にフェルト機に使用される。
【0026】
図2に概略的に図示されるニードル・ボード10は、多数の長手方向に延びる列12に設けられた、多数の開口またはボア11を有するが、ごく少数が角の領域に示されている。一目、すなわち列12の中の隣接するボア11の間の距離は、すべての列で等しい。また、列同士は、わずかにより大きな距離で互いに等距離に配置される。ボア11は、基本的にニードル・ボード10の全表面を覆って分布する。ボアは、基本的にニードル・ボード平面に直角に伸び、一方では、針はいかなる損傷のリスクもないようにボアに圧入され、他方では、圧入されたときに当該針は確実に保持される様に寸法取りされている。図2の長手方向列のボアの配置は、例としてのみ観察されるべきものであり、この配置は必要に応じて異なって選択されうる。ボア12の列は、例えば図8に示すように、溝60に配置されてもよい。ニードル・ボード10は細い長方形のプレートであり、例えば1.7mx0.4mの大きさを有する。
【0027】
より良い説明図のために、それぞれの装置の配列は、ニードル・ボード平面に関する座標系を用いて、図に示される。その際、図1の観察者の方向から見たときに、x方向はニードル・ボードの長さ方向に右に伸び、そしてy方向または横方向は表面の後部の方へ伸び、そしてz方向は、ニードル・ボード平面に関して直角で正面の上部の方へ伸びる。
【0028】
図1の自動装てん機1には、ニードル・ボード受口2に隣接して、長さ方向またはx方向にさし込まれたニードル・ボード10を移動可能にする、ニードル・ボード・ガイド3が備えられている。ニードル・ボード・ガイド3のボード受口に面している側に、当該ニードル・ボードに始めにゆるく差し込まれた針をニードル・ボードに押圧するプレス装置4を含む、橋のようなキャリア5がある。プレス装置4は、ニードル・ボード受口2の全幅を横断して、横方向またはY方向に動かすことができる。
【0029】
ニードル・ボード・ガイド3は、自動装てん機1に強固に取り付けられている。当該ガイドは、前記ボードが長さ方向の左手に十分遠く移動された場合、それがニードル・ボードを乗せられるような長さを有し、右端に位置するその端は、針を圧入するためのプレス装置4の下に位置を定められる。あるいは、それが回動可能であるか嵌めこみ式の方法で自動装てん機1にスライドして入れられるように、ニードル・ボード・ガイド3は設計できる。
【0030】
さらにまた、自動装てん機1は、図3および図4において、拡大されて示された、以下に記載される挿入装置20を備える。挿入装置20には、ニードル・ボード受口2の横方向に橋のように延び、そして、自動装置装てん機1の機械フレームに固定的に配置されるホルダー・アーム21が備えられている。あるいは、ホルダー21は、自動装てん機の機械フレームに可動に支持されることができ(図示されてない)、そして、そのような場合、例えば周知のガイドのような担持手段を備える。レッジ30は、ホルダー・アーム21に配置され、当該レッジは長さ方向に直角で、そして、ボア12の列に対して並列に延びている。レッジ30は、(特に示されてない)締め付け装置43を用いて、所定の位置に保持されることができ、操作者によって、ホルダー・アーム21上のレバー24で解除され、係止されることができる。
【0031】
この装置で、操作者は単に手動でレッジ30を解除し移動させ、同じく手動で、いかなる所望の位置にも固定できる。ホルダー・アーム21に対して、レッジ30は、yおよびx方向において、移動可能なように配置される。ホルダー・アーム21の長手方向の凹所23は、y方向におけるガイド(案内)として作用する。レッジ30は、x方向と平行して整列配置され続ける。x方向のレッジ30の調整は、線形ガイド部材の他に調節スピンドル61を備える調節手段を介して行われる。この結果、レッジ30を2、3ミリメートルの範囲で、好ましくはx方向に+/−10mmで、調整可能である。
【0032】
動作の間、ニードル・ボード10は、図2に示すように、ニードル・ボード受口2またはニードル・ボード・ガイド3に、右または左から横に挿入される。装てんのため、操作者は、ボア11の距離で、いくつかの針41を互いに平行に把持するために、図4に拡大されて示される、多重締め付けチャック40を使用し、そして、始めにそれらをニードル・ボード・ボアの列12にゆるく差し込む。そうする時、操作者は、以下図に関連してより詳細に記載されている方法で挿入装置20を利用する。
【0033】
ニードル・ボード10の所望の領域へ針を挿入するために、当該ニードル・ボードは、長さ方向に移動され、そして/または挿入装置20は、前述したように調整されるので、その針20は、挿入装置20を用いて、ニードル・ボードの所望の位置に挿入される。続いて、初めにゆるく差し込まれた針41は、プレス装置4を用いて、ニードル・ボード10のボア11にしっかりと押圧される。これを遂行するために、操作者は、ニードル・ボードを長さ方向に、プレス装置4を横方向に、移動および/または調整するので、それぞれ処理されるべきニードル・ボードの領域がプレス装置4の下に位置し、そしてすべての針がニードル・ボードの対応するボアに、しっかりと、順々に押圧される。
【0034】
レッジ30には、x方向に伸びる、基本的に平行六面体の構成を有するキャリヤ部材32を有する。さらにまた、レッジ30は、キャリヤ部材32と平行に伸びていて、当該キャリヤ部材に連結されたガイド部32を備える。ガイド部32はキャリヤ部材31に隣接して、着脱可能に連結される。ガイド部32は、ネジ33を用いてキャリヤ部材31に保持されて、解除されることにより取り外され、交換されることができる。ガイド部32は、当該キャリヤ部材上を、キャリヤ部材31に対してz方向に調節可能であるように配置される。そのために、ガイド部32は、線形ガイド部材と調節スピンドル62を備えた調節手段を有する。これは、キャリヤ部材31に対して、2、3ミリメートルの範囲、特に+/−5mmの範囲でガイド部32の調整を可能にする。この結果、装てんされることになっているニードル・ボード10からのガイド部32の距離は、可変に決定できる。ガイド部32がキャリヤ部材31から取り外せることの結果として、異なるタイプのニードル・ボードが使用されるときに、それぞれのニードル・ボードに適したガイド部32を利用することが可能である。ガイド部32、それは以下に記載する、の設計は、例えば、ボアの直径およびボアの距離の観点から、特に、ニードル・ボード・ボア22の設計に適するものである。
【0035】
図4は、自動装てん機1の前に立って、ニードル・ボードに注目する操作者の視点から見た、挿入装置20のレッジ30を拡大して示す。ハンドル42を有する、手動でガイドされた、ほんの少数の針41だけが設置された、多重締め付けチャック40が示される。図4はほんの少数の針41だけを示しているが、締め付けチャック40は実質的により多くの針を、例えば、締め付けチャックの全ての幅のほぼ全体に設置できる針の列を含むことができる。レッジ30は、多重締め付けチャック40の幅よりわずかに大きい長さに沿って伸びるので、完全に装填した締め付けチャック40のすべての針を時に挿入することができる。
【0036】
針41は、見えていない締め付けチャックによって、基本的に互いに平行で、軸のオフセットなしで、隣り合うように固定される。針41の距離は、ニードル・ボード10の目に対応し、当該距離はニードル・ボードのボア12の列の中でボアの距離によって、事前特定されている。図4は、個々にではなく列12によってのみ、ボアを示す。締め付けチャック40には、同時に多くの針を解除するかまたは保持するための、操作者が締め付け具(ジョー)を開閉できる、図示されていない作動装置が具備されている。締め付けチャック40は、操作者が、締め付けチャックを開いて、ハンドルの積極的な操作によって針を解除するまで針を保持する、嵌め込まれた、図示されていない、ばね部材を有する。締め付けチャック40を用いることで、針は、(図示されない)充填装置から取り出すことができ、例えば、欧州特許出願第07002360号明細書に記載されているように、当該装置は所望の並列配置で、針供給部から多くの針を操作者へ提供する。
【0037】
それらを把持するため、針41が多重締め付けチャック40に設置されたあと、操作者は、締め付けチャックを用いて、ニードル・ボード10の列12のいくつかのボア11に、同時に針を挿入する。その時、彼は、以下記載されている方法で、図示された挿入装置20のガイド部32により補助される。
【0038】
図5は、拡大した斜視図により本発明の一実施例のレッジ30の端を示す。キャリヤ部材31に設けられたガイド部32は、台形プリズムの形状をもつ。多くの平行溝51が、当該プリズムの下方への傾斜した上側表面34上に等間隔となるように配置され、当該溝は列12のボア11と同じ距離である。溝51は、正三角形の形の横断面を有し、従って、深く狭くなる対称形のV形溝を形成する。溝51の底部上のかど52の方向は、上側表面34と平行に伸び、結果として溝51がその全ての長さに沿って一定の横断面を有する。隣接する溝は、かど53で互いに隣接するが、あるいは、溝51の間に上側表面34にある縁部区間54と似た中間区間を設けることも可能である。
【0039】
ガイド部32には、突端にテーパーがつけられたその端に、ジグザクのかど55を有する櫛状構造が形成される。ガイド部32は溝51を含んで一体で、例えば鋳造により製造できる。あるいは、溝は、例えば切削方法によって、後で付加してもよい。ガイド部32が突端にテーパーがついたその端上にジグザクのかど55を有する場合、第1のレッジ30が少なくともy方向の針直径によって、キャリヤ部材31およびガイド区分32とともに動かされる取り扱いが必要であり、それで、ニードル・ボード10に完全には押圧されていない針41を有するニードル・ボード10は、x方向に移動できる。そのために、レッジ30は、レバー24および凹所23と異なる追加された調整機構(図示せず)を備えることができる。スプリング力に打ち勝つことで、レッジ30の調整ができ、当該スプリング力はニードル・ボード10が移動したあと、再びレッジを開始位置に戻す。
【0040】
本発明の挿入装置は、多重締め付けチャックに設置された複数の針41の同時挿入を可能にする。当該挿入装置は、2、3の不整列な針、あるいは、たった1つの不整列な針ですら、すべてのはめこんだ針を対応するボアへ同時に挿入する妨げになり、手作業による手間のかかる挿入作業を必要とする、そのような事態を防ぐ。
【0041】
図5は、締め付けチャック40に設置された複数の針を示し、最も左にある針44は正しく整列配置されていないが、残りの2本の針41は所望の仕方で並列に配置されている。ボア11に針41、44を直接挿入しようとすると、最も左の針11は所定のボアをはずすかもしれず、そうなると同時挿入の操作は失敗する。問題の針44は、最初に取り除かれていななければならず、そして手作業で再挿入されるはずのものである。
【0042】
対照的に、本発明の挿入装置32は、嵌め込んだ針41、44すべての同時挿入を可能にする。このために、挿入装置のレッジ30は、溝51により形成されるガイド・チャネルが、ニードル・ボード10のそれぞれ1つのボア11の中央に向かって延びるように配置されて、所定の位置に保持される。操作者は、多重締め付けチャック40を、すべての針41、44が、それらの先端45を関連の溝51に伸びるように上からガイドする。その時、圧力を加えることによって、各々の針先は、溝51の底のかど52に位置できる。その時、不整列に配置された針44は、針を、わずかに曲げられて、中立点に向かわせるセンタリング力を、溝の傾斜した側面の表面56のうちの1つ上で、受ける。このようにして、締め付けチャック40は、すべての針先45がそれぞれの溝51上にあるようになり、そして次の動作で溝の内部に沿って滑り込み、そしてボア11に同時に到達するように、ガイドできる。
【0043】
ここで、締め付けチャック40を用いて、操作者は、垂直位置に針41、44を持ってくることができ、それらをいくらかの距離でボア11に差し込み、そして締め付けチャック40を開くことによって、針41、44を解除し、したがってそれらをニードル・ボード10に残す様にできる。針44のx方向の位置的エラーに加えて、z方向の偏差を修正することも可能である。針に上から加える圧力を有する、多重締め付けチャックをガイドすることによって、すべての針先を、それぞれの溝51の底部上のかど52に沿って共通にガイドし、したがって、ボア11に同時に挿入することが、この場合可能である。
【0044】
図6乃至図9は、図5と似た、挿入装置20のガイド部材32の別の実施例の図を示し、従って、共通事項に関しては図5の記載が参照される。
【0045】
図6に図示した実施例は、また、正三角形の横断面を有する溝51を示し、それによって各溝の横断面は、突端にテーパーが付けられたガイド部材32のレッジ55の方向に向けて減少する。残る最小の溝横断面は、ボア11のうちのそれぞれ1つを納めることを目的とする。この結果、突端にテーパーがつくガイド部材32のかど55に設けられた構造が、主にまっすぐな構成のところに、形成される。この結果、取り扱われる際、損傷を受けるかもしれない、あるいは損傷を引き起こすかもしれない櫛構造は、回避される。その長さに沿って変化する横断面を有する溝51は、切削により製作でき、当該溝は上側表面34と平行して伸びてはいない。むしろ、溝が縁55の方へ進むにつれて、溝51の底部上のかど52は上側表面34に接近する。
【0046】
針の挿入は、図5に記載されている仕方で行われる。その際、針の許される位置的偏差は、溝51の幅の、そのより広い領域によって、引き続き定められ、溝51の幅は、かど52に直角で測られる。そして、例えば、2つのかど53の距離となる。ボア11の方向に針先をガイドするためには、一旦針が溝51に受け入れられ、多重締め付けチャックを用いて溝に保持され(任意には、バイアスされる)れば、より狭いより下側溝区間でも十分である。
【0047】
図7は、本発明の挿入装置20のガイド部材32の他の実施例を示す。溝51はまた、上側表面34に設けられ、当該溝は深さにおいてではなく幅においてのみテーパーがつく横断面を有する。溝は、傾斜する側面の表面56を有し、上側表面に対して平行である底部59を有し、したがって、当該溝は、台形の横断面を有する。この実施形態例では、プレート部材57が、プリズム形の本体58に適用されるように、溝51が設けられている。これは、接着剤による接合によって完成させられるが、他の方法によってもできる。前述したように、針は、締め付けチャックに設置されたすべての針の先端が、それぞれの溝51のより広い上側区間の溝の底部59と接触するようにされて、挿入される。ボア11へのガイド操作の間、テーパーがついている溝51は側面の表面56による任意に要求される針先のセンタリングに効果を有する。
【0048】
図8は、他の例示的実施形態を示し、ここで溝51は、深さと共に、幅がボアの方へ狭くなる長方形の横断面を有する。溝51が広くて十分に深い場合、センタリング効果を持つ傾斜した溝面は省略でき、すべての針先は溝51の上側より広い領域に収容される。この場合、望ましい方向から逸脱するが、狭くなる垂直な側面の表面56によって、または、溝底部59への当接圧力の力によって、針先がボア11の方へ接近する間に、針の任意的に必要とされるセンタリングが達成される。あるいは、図8に示される配置は、溝の深さが一定でも行うことができる。
【0049】
図8に示されるニードル・ボードの実施例では、各列12のボア11は溝60の凹部に設けられている。ガイド部材32とボア11の間にある距離にもかかわらず、針がニードル・ボードに直角に締め付けチャックで保持され、任意には、溝51の端で、わずかにバイアスされて保持されれば、挿入は容易に可能である。
【0050】
図9は、本発明の挿入装置のガイド部材32の他の実施例を示す。先に述べた幾何学的構造の形状および構成に対応し、そこから変形した溝51は、同様に上側表面34に設けられている。先に述べたガイド部材と対照的に、図9の挿入装置のガイド部材32は、表面63に対してある角度に配置された狭い端面63によって、区切られている。好ましくは、狭い端面63は、挿入装置が使用中のときにそれが垂直にニードル・ボード10まで伸びるように配置される。この結果、ボア11の列12に当たるガイド部材32は、終わりに平らな端64を有する。溝51、特にそのかど52は、好ましくは端面として構成される狭い表面63で終端する。凹所51および、任意には、そのかど52は、端面63で、ニードル・ボード10から距離をもって終端する。
【0051】
使用中は、図9のガイド部材32からなる挿入装置20は、針41の先端45がそれと合うボア11を見つけられるように、ボアの列12から距離『a』で適用される必要がある。これは、突端の方へテーパーがついた端64を有する挿入装置に示されるように、挿入された針44が挿入装置の凹所とぶつかることなく、ニードル・ボード10をx方向に動かせる効果がある。図9に示されるように、距離『b』がキャリヤ部材32の狭い端面63とボアに挿入される針44との間に存在し、当該距離『b』は距離『a』よりボア11の直径の半分だけ小さい。距離bのため、挿入装置の位置を変化させずに、挿入装置20でボア12の完全な列を装てんすることが可能である。装てん操作の間、挿入装置20のガイド部材32は、その長さのため、針の列の針41の一部のみをガイドすることができる。これらの針41が挿入されたあと、ニードル・ボード10は追加の針を挿入するためx方向に移動される。ボア12の列が針で完全に装填されるまで、この操作は繰り返される。その後、挿入装置20はオフセットされ、そして、ボアの次の列12には、何回かの挿入動作により、針41が供給される。
【0052】
前記挿入装置20は、いくらかの位置的偏差がある場合にさえ、操作者が、多重締め付けチャック40で固定された、いくつかの針41、44を、ニードル・ボード10の付帯するボア11に、同時に挿入することを容易にする。挿入装置20は、ボア11の距離に配列され、それぞれ、針41、44の先端45を収容でき、そして、合致するボア11に当該先端をガイドすることができる、多くの平行溝51を有するガイド部材32を有する。その際、当該溝が針41、44をわずかに曲げることにより潜在的な位置的偏差を修正するという点で、溝51はボア11に対し個々の針41、44を整列配置するのを補助する。挿入装置20は、自動装てん機1に取り付けられ調整されて、当該自動装てん機に収容されるニードル・ボード10に固定されうる。
【符号の説明】
【0053】
1 自動装てん機
2 ニードル・ボード受口
3 ニードル・ボード・ガイド
4 プレス装置
5 キャリヤ
7 ハウジング
10 ニードル・ボード
11 ボア(穴)
12 列
20 挿入装置
21 ホルダー・アーム
23 凹部
24 レバー
30 レッジ
31 キャリヤ部材
32 ガイド部
33 ネジ
34 表面
40 多重締め付けチャック
41 針
42 ハンドル
43 締め付け装置
44 針
45 先端
51 溝
52 かど
53 かど
54 かど区間
55 縁
56 側面の表面
57 プレート部材
58 本体
59 底部
60 溝
61 調節スピンドル
62 調節スピンドル
63 端面
64 端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの針(41、44)の挿入のための挿入装置(20)であって、
当該針は、多重締め付けチャック(40)に把持され、当該針(41、44)を収容するため、ニードル・ボード(10)にはいくつかのボア(11)が設けられ、
当該挿入装置(20)は、少なくとも1つの針(41、44)の収容のための少なくとも一の凹所(51)を有し、
当該凹所(51)は当該いくつかのボア(11)の合致するボアに当該少なくとも一つの針(41、44)をガイドするのに適するように配列される
挿入装置(20)。
【請求項2】
付帯する前記ニードル・ボード(10)の前記ボア(11)の分割に対応した距離で、長さ方向(x)に互いから等距離で配列された、少なくとも3つの凹所(51)が設けられた
請求項1に記載の挿入装置(20)。
【請求項3】
少なくとも一の凹所が溝(51)として設けられ、当該溝は、前記挿入装置(20)の表面(34)に設けられてかど(55)まで伸び、いくつかの当該溝(51)が好ましくは互いに平行に伸びる
請求項1または2に記載の挿入装置(20)。
【請求項4】
端面(63)を備えたガイド部材(32)を有する
請求項1に記載の挿入装置(20)。
【請求項5】
前記かど(55)の方へ進行するにつれて、少なくとも1つの前記溝(51)の幅は減少する
請求項3に記載の挿入装置(20)。
【請求項6】
前記かど(55)の方へ進行するにつれて、少なくとも1つの前記溝(51)の深さは減少する
請求項3に記載の挿入装置(20)。
【請求項7】
前記溝(51)の横断面は、前記挿入装置(20)の表面(34)から始まり、それが深くなるにつれて、狭くなる
請求項3に記載の挿入装置(20)。
【請求項8】
前記溝(51)の前記横断面は、台形であるか、三角である
請求項7に記載の挿入装置(20)。
【請求項9】
前記自動装てん機(1)のニードル・ボード受口(2)に固定され、長さ方向(x)に伸びるレッジ(30)を備えた
請求項1から8のいずれか1項に記載の挿入装置(20)。
【請求項10】
前記レッジ(30)には、x方向の調整を可能にする調節手段が備えられた
請求項9に記載の挿入装置(20)。
【請求項11】
前記ニードル・ボード(10)に適合して、前記ニードル・ボードのボア(11)に合う凹所(51)を有する着脱可能なガイド部材(32)を有する
請求項9に記載の挿入装置(20)。
【請求項12】
前記ガイド部材(32)は前記レッジ(30)に付帯し、高さ調節可能であるように、この前記レッジ(30)に対して保持される
請求項10に記載の挿入装置(20)。
【請求項13】
レッジ(30)が保持され、長さ方向(x)に関して直角で横方向(y)に伸びるホルダー・アーム(21)を備えた
請求項9または10に記載の挿入装置(20)。
【請求項14】
前記レッジ(30)は、ホルダー・アーム(21)に対して横方向(y)に調整でき、締め付け装置(43)によって、その位置に固定できる
請求項12に記載の挿入装置(20)。
【請求項15】
前記ホルダー・アーム(21)は、前記自動装てん機(1)に対して長さ方向(x)において調整でき、その位置に固定できる
請求項12または13に記載の挿入装置(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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