説明

ネジキャップ付き容器

【課題】 本発明は、容器内に発生したガス等の気体の通過は許すが、内容物の通過を許さないリーク機能部分を設けることにより、内部の高圧化による容器の破損や内容物の飛散事故の発生を防止すると共に、非使用時の容器の速やかな閉鎖状態を得て、容器の安全な使用状態を得ることを目的とする。
【解決手段】 ネジキャップ付き容器において、容器本体1の口筒部4とキャップ体7のネジ筒10との間にリーク通路部14を形成し、このリーク通路部14の一部に螺旋通路部15を設けることにより、リーク通路部14からの内容物の漏出を無くすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に発生した高圧を自然にリークして、内部を常圧状態に維持する、リーク機能付きのネジキャップ付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リーク機能付き容器として、例えば特開2003−246341公報がある。この従来技術に示された技術は、容器本体と蓋とから構成され、蓋が、容器内のガスを容器外部へ放出するガス抜き手段を有し、このガス抜き手段は、面部のガス抜き孔を含む領域から容器の内方に向って突出する、面部と一体に成形された凸部を有し、この凸部が、容器の内圧が所定圧力未満の圧力で閉じ、容器の内圧が所定以上の圧力となると弾性変形によってガス抜き孔と容器内部を連通させるガス抜き溝を形成する切込みを有するものとなっており、弁作用を利用したガス抜き孔(リーク通路)の開閉により、容器内のガス抜きを達成しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−246341公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術は、容器内に高圧が発生すると、この高圧を確実にリークさせることになり、高圧のリーク達成後には、容器を密閉することができるのであるが、可動部分である逆止弁機能部分を有するので構造が複雑になること、またガス抜き孔には、容器に収納した内容物に対する通過阻止能力が全くないので、ガス抜き孔に侵入した内容物は、そのまま容器外に排出されて周囲を汚すこと、と云う問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、逆止弁機能部分を有することなく、容器内に発生したガス等の気体を速やかに通過させるが、内容物の通過には長時間を要するリーク機能部分を設けることを技術的課題とし、もって高圧化による容器の破損や内容物の飛散による汚れ発生を防止することにより、容器の安全な使用状態を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するための、本発明の主たる構成は、
有底筒状の胴筒部の上端に口筒部を立設した容器本体と、この容器本体の口筒部に螺合組付きするネジ筒を有する有頂筒状のキャップ体とから構成されるネジキャップ付き容器であること、
キャップ体に設けられたリング体の外周面下端部を、容器本体の胴筒部の内周面上端部に密摺接させてシール機能部を構成すること、
容器本体とキャップ体との間に形成した内部気体のリーク通路部の一部として螺旋通路部を形成すること、
この螺旋通路部を、キャップ体に設けた垂下筒片と、この垂下筒片に上半部分を外嵌させたリング体との間に形成すること、
にある。
【0007】
容器本体にキャップ体を螺着させた状態では、胴筒部上端部にリング体下端部が密嵌入してシール機能部が形成されて、容器は閉鎖状態となり、内容物はこの閉鎖状態の容器内に収容される。また、この状態で容器内に発生したガス等の気体は、リーク通路部を通って常に排出されるので、容器内に高圧が発生することを確実に防止する。
【0008】
容器本体とキャップ体は、口筒部とネジ筒を螺合させて閉鎖状態に組付くのであるが、螺合組付きする口筒部とネジ筒の間の螺合結合部分は、気密性を発揮することなく、気体の通過を許すリーク通路部の一部を構成することになる。
【0009】
リーク通路部の一部として形成された螺旋通路部は、螺旋形成によりその通路長が必然的に長くなるので、侵入した内容物の通過に対して大きな遅延作用を及ぼすことになり、また曲がった通路形状となるので、侵入した内容物はスムーズな移動が阻害されて、この螺旋通路部内に留まり易くなる。なお、ここで云う「遅延作用」とは、螺旋通路部を通過するのに要する時間を長くする作用を意味している。
【0010】
この螺旋通路部は、嵌合組付けされるキャップ体の垂下筒片とリング体の間に形成されるので、その形成が容易である。
【0011】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、螺旋通路部の螺旋のピッチを小さくすることにより螺旋通路部の通路長を長くし、螺旋通路部の通路面積を、この螺旋通路部に侵入した内容物が、気体の通過を妨げることなく通路内に位置する値の範囲内で、できる限り小さい値に設定した、ものである。
【0012】
螺旋通路部の通路長を長くし、螺旋通路部の通路面積を、この螺旋通路部に侵入した内容物が、気体の通過を妨げることなく通路内に位置する値の範囲内で、できる限り小さい値に設定したものにあっては、螺旋通路部内に侵入した内容物の通過に対して大きな遅延作用を及ぼすことができると共に、内容物の移動に対して大きな抵抗力を作用させるので、この内容物を螺旋通路部内に留める作用が大きくなる。なお、螺旋通路部内に内容物が留まっても、この内容物が気体の通過、すなわちリーク動作に支障を与えることはない。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、胴筒部の上端に拡径する折曲段部を介して口筒部を立設して、口筒部とリング体との間に、リーク通路部の一部が位置する空所を形成した、ものである。
【0014】
口筒部とリング体との間に、リーク通路部の一部が位置する空所を形成したものにあっては、例え内容物が螺旋通路部を通過しても、この螺旋通路部を通過した内容物は、空所の底部、すなわち折曲段部上に落下して、容器本体の口筒部とキャップ体との間に形成されるリーク通路部部分に侵入しないので、容器本体外に漏出することがない。
【0015】
なお、この空所に位置した内容物は、キャップ体を容器本体から螺脱させて容器を開放させた際に、空所から胴筒部内周面を伝わって胴筒部内に戻る。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、リーク通路部により高くなった内圧を確実に逃がして消滅させることができ、この高圧発生防止動作は、常に機能しているものであるので、例えガスの発生し続けている場合でも、容器内の高圧発生を確実に阻止することができ、これにより高圧化による容器の破損や内容物の飛散を防止して、容器の安全使用を確保することができる。
【0017】
リーク通路部の螺旋通路部は、気体の通過し易さを確保した状態で、通過しようとする内容物に対してきわめて大きな遅延作用を及ぼすので、内容物が螺旋通路部内に留まっている内に容器内に発生した高圧を消滅させることができ、これによって内容物が気体と一緒にリーク通路部を通過して容器外に漏出して、周囲を汚すと云う好ましくない事態の発生が殆どなく、容器の安全使用を維持できると共に、衛生的に好ましい状態での使用を得ることができる。
【0018】
内容物に対して大きい遅延作用を及ぼす螺旋通路部は、垂下筒片とリング体との組合せ部分に形成されるので、所望する構造に構成するのが容易であり、これにより簡単にかつ適正に実施することが可能となる。
【0019】
螺旋通路部の通路長を長くすると共に、螺旋通路部の通路面積を、この螺旋通路部に侵入した内容物が、気体の通過を妨げることなく通路内に位置する値の範囲内で、できる限り小さい値に設定したものにあっては、侵入した内容物の移動に対してより大きな遅延作用を及ぼすことができると共に、例え内容物が螺旋通路部に残留状態で留まっても、この内容物が気体の通過、すなわちリーク動作に支障を与えることはないので、リーク機能を維持して容器の安全性を確保することができる。
【0020】
口筒部とリング体との間に、リーク通路部の一部が位置する空所を形成したものにあっては、例え内容物が螺旋通路部を通過しても、容器本体外に漏出することがなく、きわめて高い内容物漏出防止作用を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態例を示す、半縦断した全体正面図である。
【図2】本発明の図1に示した実施形態例の要部を示す、要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明によるネジキャップ付き容器の一実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
本発明によるネジキャップ付き容器は、容器本体1とキャップ体7とから構成され、容器本体1は、内容物(図示省略)を収容する有底筒状の胴筒部2と、この胴筒部2に上端に立設された口筒部4とを有し、またキャップ体7は、ドーム状の有頂筒形状をした頂壁8と、この頂壁8の下端から垂下設されたネジ筒10とを有しており、容器本体1およびキャップ体7共に合成樹脂により成形されている。
【0024】
容器本体1の胴筒部2の内周面上端部は平滑に形成されており、また口筒部4は、胴筒部2の上端に拡径した折曲段部3を介して連設されていて、その外周面上半部分には螺条5が刻設されており、この口筒部4の上端面には、この上端面を放射方向に横切る浅い横溝部19(図2参照)が形成されている。なお、口筒部4の外周面下端部に周設された補強リング6は、広口構造となっている口筒部4を剛的に補強するものであるが、容器本体1を広口容器として2軸延伸ブロー成形する場合には、プリフォームを支持するネックリングとして機能する。
【0025】
キャップ体7の頂壁8下端には、外鍔壁9を介して口筒部4に螺合するネジ筒10が垂下設されているが、このネジ筒10を周端に垂下設した外鍔壁9の下面には、内側から順に垂下筒片12とインナーリング11(図2参照)が垂下設されており、高さの低いインナーリング11に円筒状のリング体13(図2参照)が嵌入組付けされている。
【0026】
リング体13は、容器の閉鎖状態で胴筒部2の内周面上端部に密嵌入する外周面下端部を平滑にして、胴筒部2上端部との間でシール機能部20を構成し、垂下筒片12に外嵌した外周面上半部分には、細かくピッチの小さい螺条を刻設して、垂下筒片12との間にリーク通路部14の主要部分を構成する螺旋通路部15を形成している。
【0027】
容器本体1とキャップ体7の間に形成されるリーク通路部14(以下、図2参照)は、螺旋通路部15と、リング体13の上端に形成された欠溝部16と、リング体13を嵌め込み固定したインナーリング11の内周面に縦溝状に刻設された縦溝部17と、インナーリング11と口筒部4の間に形成された隙間18と、口筒部4の上端面に形成された横溝部19と、口筒部4とネジ筒10の螺合部分とから構成されており、容器内の高圧状態の気体kは、螺旋通路部15から、欠溝部16、縦溝部17、隙間18、横溝部19そして口筒部4とネジ筒10の螺合部分を通って容器外にリークされる。
【0028】
このリーク通路部14の縦溝部17の下流側開口部は、折曲段部3を底部として口筒部4とリング体13との間に形成される空所sに開放されているので、内容物が螺旋通路部15から欠溝部16と縦溝部17を通過してきても、縦溝部17から出たところで自重により空所sの底部、すなわち折曲段部3の上に落下してしまい、隙間18に侵入しないので、容器外への漏出は発生しない。
【0029】
この空所sの底部に位置した内容物は、容器本体1からキャップ体7を螺脱させて容器を開放した際に、自重により胴筒部2を伝わって胴部筒2内に流下して戻る。
【0030】
また、螺旋通路部15は、長い通路長により侵入した内容物の移動距離を長くできるので、通過しようとする内容物に対してきわめて効果的に遅延作用を及ぼすことになる。これにより螺旋通路部15に内容物が留まっている間に気体kのリーク動作を完了させることができ、また通路面積およびピッチが小さく、その流路面積は、螺旋通路部15に侵入した内容物が、気体の通過を妨げることなく通路内に位置できる範囲内で、できる限り小さく設定されているので、この螺旋通路部15内に内容物が侵入して残留した状態での気体kのリーク動作は、残留している内容物に殆ど阻害されることなく行われる。
【0031】
例えば、内容物である二剤を一緒に入れて容器を振る等して攪拌混合して使用する毛染め剤の場合には、攪拌混合された内容物の一部が高圧気体kと共に螺旋通路部15内に侵入することになるが、侵入した内容物が螺旋通路部15を通過するのに長時間を要することになるのに対して、攪拌混合により発生した高圧気体kは、この螺旋通路部15を通って短時間に内にリークされるため、内容物の漏出を生じることなく、高圧気体kをリークさせることができる。
【0032】
なお、上記説明にあっては、リング体13に螺旋条を刻設して螺旋通路部15を形成したが、垂下筒片12側に螺旋条を刻設して螺旋通路部15を形成しても良く、またシール機能部20は、胴筒部2の内周面上端部とリング体13の外周面下端部の両方を平滑面に構成した例を示したが、一方側(望ましくはリング体13側)に突出高さの小さいシール条を周設して構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のネジキャップ付き容器は上記説明したように、閉鎖状態で内部に発生した高圧を何時でもリークさせて安全性を確保できるものであり、これにより内容物を収納することにより継続的に内圧が高くなる収納容器として幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0034】
1 ;容器本体
2 ;胴筒部
3 ;折曲段部
4 ;口筒部
5 ;螺条
6 ;補強リング
7 ;キャップ体
8 ;頂壁
9 ;外鍔壁
10;ネジ筒
11;インナーリング
12;垂下筒片
13;リング体
14;リーク通路部
15;螺旋通路部
16;欠溝部
17;縦溝部
18;隙間
19;横溝部
20;シール機能部
s ;空所
k ;気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の胴筒部の上端に口筒部を立設した容器本体と、該容器本体の口筒部に螺合組付きするネジ筒を有する有頂筒状のキャップ体とから構成されたネジキャップ付き容器であって、前記キャップ体に設けられたリング体の外周面下端部を、前記胴筒部の内周面上端部に密摺接させてシール機能部を構成し、前記容器本体とキャップ体との間に形成した内部気体のリーク通路部の一部として螺旋通路部を形成し、該螺旋通路部を、前記キャップ体に設けた垂下筒片と、該垂下筒片に上半部分を外嵌させたリング体との間に形成して成るネジキャップ付き容器。
【請求項2】
螺旋通路部の螺旋のピッチを小さくすることにより前記螺旋通路部の通路長を長くし、螺旋通路部の通路面積を、該螺旋通路部に侵入した内容物が、気体の通過を妨げることなく通路内に位置する値の範囲内で、できる限り小さい値に設定した請求項1に記載のネジキャップ付き容器。
【請求項3】
胴筒部の上端に拡径する折曲段部を介して口筒部を立設して、前記口筒部とリング体との間に、リーク通路部の一部が位置する空所を形成した請求項1または2に記載のネジキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178425(P2011−178425A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43443(P2010−43443)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】