説明

ネジ式クランプ

【課題】ネジ式クランプに用いられる締付ボルト構造体において、ボルト本体に対するパッドの取り付け/取り外し作業を容易にする。
【解決手段】締付ボルト構造体20は、先端側座ぐり部25と雌ネジ部26と奥方座ぐり部27とからなる先端穴28を備えたボルト本体21と、雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部31と溝部32と膨径部33とからなる係合端部29を備えたパッド22とから構成される。雄ネジ部が雌ネジ部と螺合される第1の相対的軸方向位置においてパッドはボルト本体に対して着脱可能であり、パッドがさらに奥方に挿入された第2の相対的軸方向位置においてパッドはボルト本体に対して相対回転自在である。第2の相対的軸方向位置において先端穴の奥方座ぐり部を締付ボルト構造体の外部と連通させる空気抜き孔35が、ボルト本体に対するパッドの取り付け/取り外し作業を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネジ式クランプに関し、特にその締付ボルト構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
対向する一対の脚部を有するクランプ本体と、該一対の脚部の一方に設けられる受け手段と、他方の脚部に貫通形成される雌ネジ穴に螺合される締付ボルト構造体とからなり、締付ボルト構造体を受け手段に対して近接移動させることにより被吊揚物を受け手段との間に締付固定する形式のネジ式クランプは公知であり、各種工事現場などにおいて多用されているが、締付ボルト構造体自体の先端に係合歯を形成したものにあっては、締付時のボルト回転に伴う回転力が被吊揚物に作用してしまったり、係合歯が被吊揚物の被係合面に深く食い込んで傷を付け、更には係合歯が摩耗したときに締付ボルト構造体の全体を交換しなければならずコスト高となるなどの不利欠点があった。
【0003】
この不利欠点を解消するべく、本出願人が特許文献1で提案した締付ボルト構造体20は、図1に示すように、クランプ本体の一方の脚部に貫通形成される雌ネジ穴と螺合する雄ネジ23をその外周面に有するボルト本体21と、このボルト本体21の先端に相対回転可能かつ着脱可能に取り付けられるパッド22とから構成される。そして、ボルト本体21またはパッド22のいずれか一方(図1ではボルト本体21)の相対端部には、雌ネジ部26と、該雌ネジ部26の奥方に隣接して形成され該雌ネジ部26の雌ネジ谷径よりも大きな内径を持つ奥方座ぐり部27と、雌ネジ部26の開口端側に隣接して形成され該雌ネジ部26の雌ネジ谷径よりも大きな内径を持つ開口端側座ぐり部25とを有する先端穴28が形成されるとともに、ボルト本体21またはパッド22の他方(図1ではパッド22)の相対端部には、雌ネジ部26に螺合可能な雄ネジ部31と、該雄ネジ部31の基端側に隣接して雌ネジ部の雌ネジ山よりも小さな外径を持つ溝部32と、該溝部32のさらに基端側に隣接して開口端側座ぐり部25の内径と略同一またはわずかに小さい外径を有する段部33とを有する係合端部29が形成されている。
【0004】
この締付ボルト構造体20によれば、雌ネジ部26と雄ネジ部31とが螺合される第1の相対的軸方向位置(図2)においてパッド22はボルト本体21に対して着脱可能であり、雄ネジ部31が奥方座ぐり部27内に遊嵌されるとともに雌ネジ部26が溝部内に遊嵌される第2の相対的軸方向位置(図3)においてパッド22はボルト本体21に対して相対回転自在である。したがって、パッド22がボルト本体21に対して相対回転自在に装着された第2の相対的軸方向位置において締付ボルト構造体20を使用すれば、パッド22を被吊揚物の被係合面に圧接しながら締付ボルト構造体20を回転させて締め付けても、その回転力はパッド22に吸収されて被吊揚物には作用しないので、被吊揚物を回転させることなく安定した姿勢で吊り揚げることができる。また、パッド22が摩耗したときには、雌ネジ部26と雄ネジ部31とが螺合する第1の軸方向位置においてパッド22の取り外しおよび新たなパッドの取り付けを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3651493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1に開示される締付ボルト構造体はきわめて有利性の大きいものであるが、実際の取扱において若干の問題を有していた。すなわち、パッド22をボルト本体21の先端穴28に挿入する際には、先端穴28の全面にグリスを封入した後、雄ネジ部31を雌ネジ部25に螺合させて第1の相対的軸方向位置(図2)とし、この状態でパッド22を回転していくことで最終的に第2の相対的軸方向位置(図3)を得てパッド22をボルト本体21に対して相対回転自在とするのであるが、第1の相対的軸方向位置が得られてから第2の相対的軸方向位置に向けてパッドを奥方に向けて進行させていくときに、先端穴28の奥方座ぐり部27に溜まった空気とグリスの抜け道がないため、螺合したパッド22が逆戻りしようとするダンパー状態が起こる。これによってパッド22の装着作業が困難となり、時間を要するものとなっていた。
【0007】
先端穴28に封入するグリス量を少なくすれば上記の問題は多少は緩和することができるが、奥方座ぐり部27の密閉空間内に溜まった空気が徐々に圧縮されていくことによる空気ダンパー作用は避けることができず、パッド22の装着を容易にするための根本的な解決手段にはなり得ない。また、グリス量が少ないと、第2の相対的軸方向位置(図3)においてパッド22がボルト本体21に対して自由に回転することに支障を来す(いわゆるグリス切れ)恐れがあり、これらの接触箇所に錆が生じやすくなって、パッド22やボルト本体21の寿命が短くなる。
【0008】
また、摩耗したパッド22を交換する際にも、第2の相対的軸方向位置(図3)から第1の相対的軸方向位置(図2)を経てパッド22を引き抜こうとするときに、奥方座ぐり部27内に減圧ないし真空状態が形成されることになるため、パッド22を引き抜く作業も容易ではなかった。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、特許文献1に提案した締付ボルト構造体をさらに改良して、ボルト本体に対するパッドの取り付け/取り外し作業を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、対向する一対の脚部を有するクランプ本体と、該一対の脚部の一方に設けられる受け手段と、他方の脚部に進退可能に設けられる締付ボルト構造体とからなり、締付ボルト構造体を受け手段に対して近接移動させることにより被吊揚物を受け手段との間に締付固定する形式のネジ式クランプにおいて、前記締付ボルト構造体が、ボルト本体と、ボルト本体の先端に相対回転可能かつ着脱可能に取り付けられる先端係合歯を有するパッドとから構成され、ボルト本体またはパッドのいずれか一方の相対端部には、雌ネジ部と、雌ネジ部の奥方に隣接する奥方座ぐり部と、雌ネジ部の開口端側に隣接する開口端側座ぐり部とを有する先端穴が形成されるとともに、ボルト本体またはパッドの他方の相対端部には、前記先端穴の雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部と、雄ネジ部の先端側に隣接する溝部と、該溝部のさらに先端側に隣接する膨径部とを有する係合端部が形成され、前記係合端部の雄ネジ部が前記先端穴の雌ネジ部と螺合される第1の相対的軸方向位置においてパッドはボルト本体に対して着脱可能であり、前記係合端部が第1の相対的軸方向位置からさらに前記先端穴の奥方に挿入されて前記係合端部の雄ネジ部、溝部および膨径部が前記先端穴の奥方座ぐり部、雌ネジ部および先端側座ぐり部にそれぞれ収容される第2の相対的軸方向位置において前記パッドは前記ボルト本体に対して相対回転自在であり、さらに、前記第2の相対的軸方向位置において前記先端穴の奥方座ぐり部を締付ボルト構造体の外部と連通させる空気抜き孔が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載のネジ式クランプにおいて、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から、前記先端穴が形成される前記ボルト本体または前記パッドの径方向に延長してその外周面で開口するように形成されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明は、請求項1記載のネジ式クランプにおいて、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から、前記先端穴が形成される前記ボルト本体または前記パッドの中心軸方向に延長してその後端面で開口するように形成されたものであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る本発明は、請求項1記載のネジ式クランプにおいて、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から、前記係合端部が形成される前記ボルト本体または前記パッドの中心軸方向に貫通するように形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る本発明は、請求項1記載のネジ式クランプにおいて、前記先端穴が前記ボルト本体に形成されると共に前記係合端部が前記パッドに形成されており、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から該ボルト本体の径方向に延長してその外周面で開口するように形成されたものであることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る本発明は、請求項1記載のネジ式クランプにおいて、前記先端穴が前記ボルト本体に形成されると共に前記係合端部が前記パッドに形成されており、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から該ボルト本体の中心軸方向に延長してその後端面で開口するように形成されたものであることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る本発明は、請求項1記載のネジ式クランプにおいて、前記先端穴が前記ボルト本体に形成されると共に前記係合端部が前記パッドに形成されており、前記空気抜き孔が、該パッドの中心軸方向に貫通するように形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特許文献1記載の構成を有する締付ボルト構造体において、第2の相対的軸方向位置において先端穴の奥方座ぐり部を締付ボルト構造体の外部と連通させる空気抜き孔が形成されているので、パッドをボルト本体の先端穴に挿入していくときに奥方座ぐり部に溜まる空気が該空気抜き孔から締付ボルト構造体の外部にスムーズに排出されるので、パッドの装着作業が容易である。摩耗したパッドを交換するために取り外す際も、該空気抜き穴を介して締付ボルト構造体の外部から空気が奥方座ぐり部に入り込むので、奥方座繰り部に減圧ないし真空状態が形成されることがなく、取り外し作業も容易である。
【0018】
さらには、この空気抜き孔を利用してグリスを補給することができ、この空気抜き孔に針金などを挿入すれば奥方座ぐり部におけるグリス封入状態(グリス量)も容易に確認することができるので、メンテナンスとしてグリスアップを行う際にも好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】特許文献1記載のネジ式クランプにおける締付ボルト構造体をパッドがボルト本体から取り外された状態で示す片側断面図である。
【図2】この締付ボルト構造体においてパッドの雄ネジ部がボルト本体の先端穴の雌ネジ部に螺合した第1の相対的軸方向位置関係にあるときの片側断面図である。
【図3】この締付ボルト構造体においてパッドがボルト本体に対して回転自在に装着された第2の相対的軸方向位置関係にあるときの片側断面図である。
【図4】この締付ボルト構造体を改良した締付ボルト構造体を組み込んだ本発明実施例によるネジ式クランプの正面図である。
【図5】このネジ式クランプの下面図である。
【図6】このネジ式クランプの側面図である。
【図7】このネジ式クランプに組み込まれた締付ボルト構造体をパッドがボルト本体から取り外された状態で示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施例によるネジ式クランプにおける締付ボルト構造体のボルト本体を示す正面図(a)および右側面図(b)である。
【図9】本発明のさらに他の実施例によるネジ式クランプにおける締付ボルト構造体のパッドを示す正面図(a)および右側面図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下添付図面に基づいて本発明の幾つかの実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって定義される発明の範囲内において種々の変形や変更が許容されることは言うまでもない。
【実施例1】
【0021】
図4ないし図7には本発明の一実施形態によるネジ式クランプが示されている。このネジ式クランプ10の全体構成は従来公知であり、背景技術として既述したように、クランプ本体11が有する一対の対向する脚部11a、11bの一方(11b)には受金としての旋回顎12が回転自在および揺動自在に支持されると共に、他方の脚部(11a)に締付ボルト構造体20のボルト本体21が進退自在に設けられている。かかる構成のネジ式クランプ10において、一対の脚部11a、11b間の開口部13に被吊揚物(図示せず)の端部を挿入し、ボルト本体21の後端部に取り付けられるハンドル14を回転操作して締付ボルト構造体20を締付方向(図4において左方向)に移動させることにより、被吊揚物が旋回顎12と締付ボルト構造体20先端のパッド22との間に挟持固定される。
【0022】
本発明の特徴は、ネジ式クランプ10における締付ボルト構造体20に存するものであるので、他の構成要素についての説明を省略し、以下、締付ボルト構造体20について、さらに図7をも参照して詳述する。なお、締付ボルト構造体20の構成要素については、背景技術として既述した図1ないし図3に示すものと同一または対応する要素には同一の符号が付されている。
【0023】
締付ボルト構造体20は、ボルト本体21と、該ボルト本体の先端に相対回転自在かつ着脱可能に取り付けられるパッド22とから構成される。ボルト本体21はたとえば特殊合金鋼などから略円柱状に形成され、その外周面には雄ネジ23が形成されている。また、ボルト本体21の後端部にはハンドル14を取り付けるためのハンドル装着穴24が貫通形成される。
【0024】
この実施形態では、クランプ本体11の一方の脚部11aに貫通形成される装着孔15にプレッシャナット16がバネ17付勢されつつ回転止めピン36により軸方向に摺動可能且つ回転不能に装着されており、このプレッシャナット16をボルト本体21が裸通するように設けられる。プレッシャナット16の先端部18はクランプ開口部13内に突出しているが、被吊揚物を旋回顎12とパッド22との間に挟持した状態で締付ボルト構造体20を締め付けていくと、バネ17の付勢力に抗してプレッシャナット16は徐々に(図4において右方に)後退していく。先端部18には締付確認リング19が環設されており、この締付確認リング19が見えなくなるまでプレッシャナット16が後退したときに、規定の締付力が働いたことを確認することができる。このようなプレッシャナット16および締付確認リング19の構成および作用については、本出願人による特開平10−037919号公報などに詳しく記述されているので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0025】
ボルト本体21の先端部には、先端に向けて開口する断面円形の座ぐり部25と、その奥方に隣接する雌ネジ部26と、さらにその奥方に隣接する断面円形の座ぐり部27とを有する先端穴28が形成される。この実施形態において、先端側座ぐり部25の内径R1は雌ネジ部26の谷径R2より大きく設定され、奥方座ぐり部27の内径R3は雌ネジ部26の谷径R2と略同一またはそれよりもわずかに大きく設定されている。また、奥方座ぐり部27からボルト本体21の径方向に延長する空気抜き孔35が形成され、ボルト本体21の外周面21aで開口している。
【0026】
パッド22はたとえば特殊合金鋼などから形成され、ボルト本体21の先端穴28に挿入嵌合される係合端部29と、係合端部29よりも大径である先端部30とから一体的に構成される。パッド22の先端部30の先端面にローレット状などの係合歯34が形成される。
【0027】
パッド22の係合端部29は、ボルト本体21に対向する基端部に設けられる雄ネジ部31と、その先端側に隣接する溝部32と、さらにその先端側に隣接する膨径部33とを有する。雄ネジ部31はボルト本体21の先端穴28の雌ネジ部26と螺合可能である。したがって、その山径R4は先端穴28の雌ネジ部26の谷径R2と略同一である。また、溝部32の外径R5はボルト本体21の先端穴28の雌ネジ部26の山径と同一またはそれよりもわずかに小さく設定され、段部33の外径R6はボルト本体21の先端穴28の先端側座ぐり部25の内径R1と略同一またはそれよりもわずかに小さく設定される。さらに、これらボルト本体21の先端穴28の各部およびパッド22の係合端部29の各部について軸方向長さを適宜に設定することにより、ボルト本体21とパッド22とが後述する第2の相対的軸方向位置関係にあるとき、パッド22の係合端部29の雄ネジ部31、溝部32および膨径部33は、ボルト本体21の先端穴28の奥方座ぐり部27、雌ネジ部26および先端側座ぐり部25にそれぞれ収容される。
【0028】
パッド22をボルト本体21に装着する作業は、パッド22の係合端部29をボルト本体21の先端穴28に挿入することによって行う。ボルト本体先端穴28の先端側座ぐり部25の内径R1はパッド係合端部29の雄ネジ部31の山径R4より大きいため、パッド22の係合端部29をボルト本体21の先端穴28に挿入させることが容易であり、且つ、該内径R1はパッド係合端部29の段部33の外径R6と略同一またはそれよりもわずかに小さいので、自動的に位置決め(センター合わせ)が行われる。
【0029】
このようにして案内/位置決めされつつパッド係合端部29がボルト本体先端穴28に挿入されることにより、雄ネジ部31と雌ネジ部26とが螺合する第1の相対的軸方向位置関係が得られる(図2参照)。この位置関係においてパッド22をねじ込むことにより、パッド係合端部29はボルト本体先端穴28のさらに奥方に挿入され、ついには、その雄ネジ部31がボルト本体先端穴28の雌ネジ部26の領域を離れ、最奥に位置する座ぐり部27に収容される第2の相対的軸方向位置関係が得られる(図3参照)。この位置関係においては、前述したような各部の径寸法および軸方向長さ寸法の関係によって、パッド係合端部29の雄ネジ部31、溝部32および段部33がそれぞれボルト本体21の先端穴28の座ぐり部27、雌ネジ部26および座ぐり部25に回転可能に収容されており、したがって、パッド22はボルト本体21に対して回転可能である。
【0030】
このパッド装着の際、雄ネジ部31と雌ネジ部26とが螺合する第1の相対的軸方向位置からさらに第2の相対的軸方向位置に向けて奥方に挿入させていくときに、あらかじめ先端穴28に封入させておいたグリスや空気が奥方座ぐり部27に溜まって徐々に圧縮されることになるが、奥方座繰り部27をボルト本体21の外部と連通させる空気抜き穴35が形成されているので、奥方座ぐり部27に溜まるグリスや空気が該空気抜き孔35を介してボルト本体21の外部にスムーズに排出され、パッド装着作業に支障を来さない。
【0031】
上記のようにしてパッド22がボルト本体21に対して第2の相対的軸方向位置関係に装着された締付ボルト構造体20を得た後、クランプ本体11の脚部11aの外側から挿入して、ボルト本体外周面の雄ネジ23をプレッシャナット16螺合させ、この状態でハンドル15を操作してボルト本体21を回転することにより、締付ボルト構造体20がクランプ本体10の脚部11aに取り付けられる。もちろん、ボルト本体21単独の状態で脚部11aに装着した後に、クランプ開口部13側から上記のようにしてパッド22を装着して締付ボルト構造体20としても良い。
【0032】
パッド22先端の係合歯34が摩耗した場合などでパッド22を交換する必要が生じたときは、パッド22の係合端部29の雄ネジ部31、溝部32および膨径部33がボルト本体21の先端穴28の奥方座ぐり部27、雌ネジ部26および先端側座ぐり部25にそれぞれ収容された状態にある第2の相対的軸方向位置から、パッド22をボルト本体21から引き出す方向に移動させる。これにより、パッド22の係合端部29の雄ネジ部31がボルト本体21の先端穴28の雌ネジ部26に螺合した第1の相対的軸方向位置が得られるので、パッド22を取り外す方向に回してボルト本体21から離脱させれば良い。このときに奥方座ぐり部27内が減圧されるが、空気抜き孔35を介して外部から空気が自動的に導入されるので、パッド22を引き抜く作業にも支障を来さない。すなわち、空気抜き孔35は、パッド引き抜き作業の際には空気注入孔として働く。摩耗したパッド22を取り外した後に新たなパッド22を装着する作業は前述したと同様にして行うことができるので、説明を割愛する。
【0033】
さらには、この空気抜き孔35を利用してグリスを補給することができる。空気抜き孔35に針金などを挿入すれば奥方座ぐり部27におけるグリス封入状態(グリス量)を容易に確認できるので、グリス量が不足する場合には空気抜き孔35からグリスを奥方座ぐり部27に補給してグリスアップを行うことができ、メンテナンスの際にも空気抜き孔35を有効に利用することができる。
【実施例2】
【0034】
この実施例は締付ボルト構造体20についての別形態を示すものであり、より具体的には空気抜き孔についての別形態を示すものである。すなわち、この実施例における空気抜き孔35aは、ボルト本体21の先端穴28の奥方座ぐり部27から中心軸方向後方に延長して、ボルト本体21の後端面21bで開口するものとして形成されている。このように形成された空気抜き孔35aも、実施例1における空気抜き孔35と同様に、パッド装着時には奥方座ぐり部27内の空気(およびグリス)を外部に排出してパッド22の挿入を容易にすると共に、パッド取り外しの際には奥方座ぐり部27に空気を自動注入してパッド22の引き抜きを容易にする作用を果たし、併せてメンテナンスの際にグリス量を測定して不足時にはグリスを補給するために有効利用することができる。
【実施例3】
【0035】
この実施例は締付ボルト構造体20についての別形態を示すものであり、より具体的には空気抜き孔についてのさらに別の形態を示すものである。すなわち、この実施例における空気抜き孔35bは、パッド32を中心軸方向に貫通するものとして形成されている。このように形成された空気抜き孔35bも、実施例1および実施例2における空気抜き孔35,35aと同様に、パッド装着時にはボルト本体21の先端穴28の奥方座ぐり部27内の空気(およびグリス)を外部に排出してパッド22の挿入を容易にすると共に、パッド取り外しの際には奥方座ぐり部27に空気を自動注入してパッド22の引き抜きを容易にする作用を果たし、併せてメンテナンスの際にグリス量を測定して不足時にはグリスを補給するために有効利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 ネジ式クランプ
11 クランプ本体
11a,11b 脚部
12 回転顎(受金)
13 開口部
14 ハンドル
15 装着孔
16 プレッシャナット
17 バネ
18 プレッシャナット先端部
19 締付確認リング
20 締付ボルト構造体
21 ボルト本体
21a 外周面
21b 後端面
22 パッド
23 雄ネジ
24 ハンドル装着穴
25 先端側座ぐり部
26 雌ネジ部
27 奥方座ぐり部
28 先端穴
29 係合端部
30 先端部
31 雄ネジ部
32 溝部
33 膨径部
34 係合歯
35,35a,35b 空気抜き孔
36 回転止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の脚部を有するクランプ本体と、該一対の脚部の一方に設けられる受け手段と、他方の脚部に進退可能に設けられる締付ボルト構造体とからなり、締付ボルト構造体を受け手段に対して近接移動させることにより被吊揚物を受け手段との間に締付固定する形式のネジ式クランプにおいて、前記締付ボルト構造体が、ボルト本体と、ボルト本体の先端に相対回転可能かつ着脱可能に取り付けられる先端係合歯を有するパッドとから構成され、ボルト本体またはパッドのいずれか一方の相対端部には、雌ネジ部と、雌ネジ部の奥方に隣接する奥方座ぐり部と、雌ネジ部の開口端側に隣接する開口端側座ぐり部とを有する先端穴が形成されるとともに、ボルト本体またはパッドの他方の相対端部には、前記先端穴の雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部と、雄ネジ部の先端側に隣接する溝部と、該溝部のさらに先端側に隣接する膨径部とを有する係合端部が形成され、前記係合端部の雄ネジ部が前記先端穴の雌ネジ部と螺合される第1の相対的軸方向位置においてパッドはボルト本体に対して着脱可能であり、前記係合端部が第1の相対的軸方向位置からさらに前記先端穴の奥方に挿入されて前記係合端部の雄ネジ部、溝部および膨径部が前記先端穴の奥方座ぐり部、雌ネジ部および先端側座ぐり部にそれぞれ収容される第2の相対的軸方向位置において前記パッドは前記ボルト本体に対して相対回転自在であり、さらに、前記第2の相対的軸方向位置において前記先端穴の奥方座ぐり部を締付ボルト構造体の外部と連通させる空気抜き孔が形成されてなることを特徴とするネジ式クランプ。
【請求項2】
前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から、前記先端穴が形成される前記ボルト本体または前記パッドの径方向に延長してその外周面で開口するように形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載のネジ式クランプ。
【請求項3】
前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から、前記先端穴が形成される前記ボルト本体または前記パッドの中心軸方向に延長してその後端面で開口するように形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載のネジ式クランプ。
【請求項4】
前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から、前記係合端部が形成される前記ボルト本体または前記パッドの中心軸方向に貫通するように形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載のネジ式クランプ。
【請求項5】
前記先端穴が前記ボルト本体に形成されると共に前記係合端部が前記パッドに形成されており、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から該ボルト本体の径方向に延長してその外周面で開口するように形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載のネジ式クランプ。
【請求項6】
前記先端穴が前記ボルト本体に形成されると共に前記係合端部が前記パッドに形成されており、前記空気抜き孔が、前記奥方座ぐり部から該ボルト本体の中心軸方向に延長してその後端面で開口するように形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載のネジ式クランプ。
【請求項7】
前記先端穴が前記ボルト本体に形成されると共に前記係合端部が前記パッドに形成されており、前記空気抜き孔が、該パッドの中心軸方向に貫通するように形成されたものであることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−226553(P2011−226553A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96677(P2010−96677)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(390030328)イーグルクランプ株式会社 (36)
【Fターム(参考)】