説明

ネジ落下防止構造

【課題】装置本体にユニットを締結する際にネジが斜めに螺合せず、また、締結されていない状態においてネジが容易にユニットから落下しないネジ落下防止構造を提供すること。
【解決手段】装置本体の本体フレーム86に対し着脱可能なユニットを本体フレーム86に締結するためのネジ82の前記ユニットからの落下防止構造において、一部がU字形のループ状に折り曲げられて(94B)、その中にネジ82を軸心回りに回転自在に保持するワイヤー94と、ワイヤー94を前記ユニットの構成部材であるメインフレーム72に固定する固定部材であるネジ78とを備え、ネジ82による締結がなされていない状態において、ネジ82が、ワイヤー94を介して、ネジ78により弾性的に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ落下防止構造に関し、特に、装置本体に対し着脱可能なユニットを当該本体に固定するネジの、当該ユニットからの落下防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンターなどの電子写真方式で画像を形成する画像形成装置においては、メンテナンスの容易性等を考慮し、記録シートへトナー像を熱定着させる定着装置をユニット化し、装置本体に対し着脱可能に構成している。
当該定着ユニットは、例えば、ユニット側のフレーム(以下、「ユニットフレーム」と言う。)と本体側のフレーム(以下、「本体フレーム」と言う。)とをネジで締結することによって、装置本体に固定される。本体フレームにおけるユニット取付面にはネジ孔が形成されており、ユニットフレームにはネジの外径(ネジの呼び)よりも大きな貫通孔(以下、「挿通孔」と言う。)が開設されている。挿通孔に挿入したネジを前記ネジ孔に螺合させ、当該ネジを締め付けることにより、ネジ頭部と前記取付面との間でユニットフレームが挟持されて、定着ユニットが装置本体に固定される。
【0003】
定着ユニットを装置本体から取り外す際には、先ず、前記ネジを緩めて本体フレームから当該ネジを離脱させる。このとき、ネジが挿通孔から抜け落ちないように、指先などで保持する必要がある。しかしながら、上記のような締結箇所は狭小であることが多いため、確実にネジを保持することが困難な場合がある。また、定着ユニットを取り外す直前まで、装置を稼動していた場合には、定着ユニット全体が高温になっているため、ネジも高温になっており、指先では保持できない事態もある。
【0004】
そこで、従来、ネジの落下を防止するために、脱落防止ワッシャーが用いられている。当該脱落防止ワッシャーは、円環状をした板材に、その孔から放射状にスリットが開設されたものである。スリット間は舌片状を成し、当該舌片の各々は、前記孔の径方向と直交する方向に可撓性を有している。また、孔径は、ネジの外径(ネジの呼び)よりも若干小さめに設定されている。
【0005】
上記の形状をした脱落防止ワッシャーは、前記挿通孔に挿通されたネジの軸部に嵌め込まれる。軸部に嵌め込まれた脱落防止ワッシャーの舌片の各々は前記孔が拡径するように撓み、その復元力で当該ねじを挟持する。脱落防止ワッシャーをネジに装着して、一度、当該ネジによってユニットフレームと本体フレームとを締結すると、本体フレームからユニットフレームを取り外した後も、ネジはその頭部と脱落防止ワッシャーとでユニットフレームを挟持する形で当該ユニットフレームに固定されるため、ネジのユニットフレーム(挿通孔)からの落下が防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−133900号公報
【特許文献2】特開2007−224994号公報
【特許文献3】特開2005−308153号公報
【特許文献4】特開平11−143257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記脱落防止ワッシャーでは、定着ユニットを装置本体に取り付ける際、ネジの軸心がネジ孔の軸心と少しずれていた場合、ネジ先端がネジ孔の周縁に当接し、脱落防止ワッシャーによる支持位置を中心として傾いた状態でネジ締めすることがある。この場合、ネジはネジ孔に斜に侵入し、ネジ孔のネジ山を潰してしまい、再度の取り外し、取り付けが困難になってしまうおそれがある。また、装置本体から取り外されている定着ユニットの、前記ユニットフレームにおいて前記挿通孔のネジが突出している近傍を、何か他の物にぶつけた場合、当該ネジが脱落防止ワッシャーから勢い良く押し出されて、ユニットフレーム(定着ユニット)から脱落してしまうおそれがある。
【0008】
なお、上記した問題は、画像形成装置のみならず、装置本体に対し着脱可能なユニットを前記装置本体にネジで締結する装置一般に生じるものである。
本発明は、上記した課題に鑑み、上記従来の脱落防止ワッシャーの有する上述した問題点を可能な限り解消したネジ落下防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るネジ落下防止構造は、装置本体に対し着脱可能なユニットを前記本体に締結するためのネジの前記ユニットからの落下防止構造であって、一部がループ状に折り曲げられて、その中に前記ネジを軸心回りに回転自在に保持するワイヤーと、前記ワイヤーを前記ユニットに固定する固定部材と、を備え、前記ネジによる締結がなされていない状態において、当該ネジが、前記ワイヤーを介して、前記固定部材により弾性的に支持されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記ループ状の部分は、前記ネジ頭部および当該頭部とネジ先端部と間にある凸部が通過しないような形状に前記ワイヤーが折り曲げられて成り、当該ループ状部分が前記頭部と前記凸部との間の軸部に嵌め込まれていることを特徴とする。
この場合に、前記ネジは、ネジ部の外径よりも小さな内径を有する座金が頭部とネジ部との間に組み込まれた座金組み込みネジであって、前記凸部は、前記座金であることを特徴とする。
【0011】
あるいは、前記ネジは頭部とネジ部との間の軸部分にネジが形成されていない円柱部を有し、前記凸部は、ネジ山部であって、前記ループ状部分が、前記円柱部に嵌め込まれていることを特徴とする。
さらに、前記ワイヤーは、前記ループ状を成した部分の一端部側から延出され、前記軸心と交差する方向と平行な方向に突出するように折り曲げられてなる突出部を有し、当該突出部をその突出方向と反対側に押し込むことより、前記頭部が通過できる程度に前記ループ状部分が拡開されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、前記ワイヤーは、その両端が前記固定部材による固定位置に位置するように折り曲げられており、前記固定部材は、前記両端が露出しないように当該ワイヤーの両端部を前記ユニットに固定することを特徴とする。
さらに、前記ユニットは、画像形成装置においてトナー像を記録シートに定着ローラーによって熱定着させる定着ユニットであって、当該定着ユニットは、加圧ローラーを支持する板金部材であって、当該加圧ローラーを前記定着ローラーに対し押圧状態と離間状態とに変位させる可動フレームを有し、当該定着ユニットは、板金からなる主フレームが前記ネジによって前記画像形成装置本体に締結されて当該装置本体に取り付けられ、前記固定部材により前記ワイヤーが前記可動フレームに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成からなる本発明に係るネジ落下防止構造によれば、ユニットを装置本体に装着する際、ネジが装置本体のネジ孔から少しズレていたとしても、当該ネジは、ワイヤーを介して固定部材により弾性的に支持されているため、当該ネジは、前記ネジ孔の軸心に向かって平行に移動することが可能なため、当該ネジが斜めになったまま、ネジ締めがなされてしまう事態を可能な限り防止できる。
【0014】
また、ネジの先端をその軸心方向に何か他の物にぶつけたとしても、当該ネジは前記ワイヤーの弾性によって、その軸心方向に後退(変位)するだけであり、ユニットから落下することはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】タンデム型フルカラープリンターの概略構成を示す図である。
【図2】上記プリンターにおける定着ユニットの一部を示す図である。
【図3】上記定着ユニットの上記プリンター本体への取付部の一例を示す図である。
【図4】上記定着ユニットをプリンター本体に締結するためのネジを示す図である。
【図5】上記定着ユニットの上記プリンター本体への取付部の一例を示す図である。
【図6】上記定着ユニットの上記プリンター本体への取付部の一例を示す図である。
【図7】上記定着ユニットの上記プリンター本体への取付部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るネジ落下防止構造を、プリンターにおける定着ユニットのプリンター本体への固定に用いるネジに適用した例に基づいて説明する。
<プリンターの全体構成>
図1に、タンデム型フルカラープリンター2(以下、単に「プリンター2」と言う。)の概略構成を示す図である。
【0017】
プリンター2は、周知の電子写真方式により画像を形成するものであって、転写ベルト4と、転写ベルト4を張架する駆動ローラー6、従動ローラー8、バックアップローラー10,12、転写ベルト4に対向して転写ベルト4の走行方向に沿って所定間隔で配置されたY、M、C、Kの各色の作像ユニット14Y,14M,14C,14Kと、記録シートを給送する給紙装置16と、定着ユニット18とが、筐体20に収納された構成を有している。
【0018】
各作像ユニット14Y,…,14Kは、像担持体である感光体ドラム22Y,22M,22C,22Kと当該感光体ドラム表面を露光走査するためのLEDアレイ24Y,24M,24C,24Kの外に、公知の帯電チャージャ、現像器、クリーナ(いずれも符号不記入)、および1次転写ローラー26Y,26M,26C,26Kなどからなる。
給紙装置16は、記録シートを収納する給紙カセット28と、この記録シートを給紙カセット28から繰り出すためのピックアップローラー30、後述する2次転写ローラー32に送り出すタイミングをとるためのレジストローラー34などからなる。
【0019】
各感光体ドラム22Y,…,22Kは、LEDアレイ24Y,…,24Kによる露光を受ける前にクリーナで表面の残存トナーが除去された後、帯電チャージャにより一様に帯電されており、このように一様に帯電した状態で上記レーザ光による露光を受けると、感光体ドラム22Y,…,22Kの表面に静電潜像が形成される。
各静電潜像は、それぞれ各色の現像器により現像され、これにより感光体ドラム22Y,…,22K表面にY,M,C,Kのトナー像が形成され、各転写位置において転写ベルト4の裏面側に配設された1次転写ローラー26Y,…,26Kの静電的作用により、転写ベルト4の表面上に順次転写されていく。
【0020】
この際、各色の作像動作は、そのトナー像が、走行する転写ベルト4の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにすべく、上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。
一方、給紙装置16では、上記した転写ベルト4への作像タイミングに合わせて、給紙カセット28から記録シートが給紙され、2次転写ローラー32と駆動ローラー6とが対向する位置(以下、「2次転写位置」と言う。)へと搬送される。
【0021】
当該2次転写位置において、2次転写ローラー32の静電的作用により、転写ベルト4上のトナー像が記録シートへ再転写(2次転写)される。
トナー像が転写された記録シートは、さらに、定着ユニット18にまで搬送される。記録シートは、定着ユニット18において高熱下で加圧され、その表面のトナー粒子がシート表面に融着して定着された後、排紙ローラー36によって排紙トレイ38上に排出される。
【0022】
定着ユニット18は、プリンター2本体に対して着脱可能に構成されている。筐体20の右上部分には、開閉可能な扉20Aが設けられており、扉20Aが開放された状態で、定着ユニット18は、矢印Aの向きに進退されてプリンター2本体に着脱される。
<定着ユニット>
図2(a)に定着ユニット18の主要な構成部分を、図2(b)に定着ユニット18の有するフレーム構造の一部をそれぞれ示す。なお、図2(a)、(b)は、定着ユニット18をプリンター2の背面から視た図である。
【0023】
定着ユニット18は、IH(電磁誘導加熱)方式の定着ユニットであって、図2(a)に示すように、定着ローラー42、加圧ローラー44、均熱ローラー46、ブラシローラー48を有している。
定着ローラー42は、中空の芯金50に弾性層52と電磁誘導発熱層54とがこの順に積層された構成を有している。
【0024】
定着ローラー42の外周には、IHコイル56が設けられている。IHコイル56によって作られる変動磁場の中に置かれた電磁誘導発熱層54に生じる渦電流のジュール発熱によって、電磁誘導発熱層54が直接的に加熱される。
加圧ローラー44は、中空の芯金外周に弾性層と離型層(いずれも、不図示)とがこの順に積層されてなるものである。
【0025】
均熱ローラー46は、加圧ローラー44に対し、押圧状態で設けられており、加圧ローラー44の表面温度をその軸方向に均熱化する。
ブラシローラー48は、芯金の表面に植毛(いずれも不図示)がなされてなるものであり、均熱ローラー46表面を摺擦して当該表面を清掃する。
加圧ローラー44、均熱ローラー46、およびブラシローラー48の3個のローラーは、板金からなる可動フレーム58に回転自在に支持されている。可動フレーム58は、前記3個のローラーを支持する第1フレーム60と、当該3個のローラーを回転駆動するための動力伝達機構の一部を成す歯車等のシャフトを回転自在に支持する第2フレーム62とを有する。第2フレーム62は、図2(b)に示すように、鉤状に屈曲されていて、一方の屈曲端部が第1フレーム60に固定されている。なお、図2(b)において、符号46A,48Aで指し示すのは、それぞれ、均熱ローラー46とブラシローラー48(図2(b)においていずれも不図示)の端部に接続された回転シャフトである。また、図2(b)において、加圧ローラー44の図示は省略している。
【0026】
第1フレーム60は、固定フレーム64(図2(b))に軸支されたシャフト66に回動自在に取り付けられている。これにより、可動フレーム58全体がシャフト66まわりに揺動可能になっている。
第1フレーム60には、引張りばね68の一方のフック部68Aが取り付けられている。引張りばね68のもう一方のフック部68Bは、不図示のフレームに固定されたピン70に取り付けられている。
【0027】
第1フレーム60は、引張りばね68の復元力により、シャフト66を中心に矢印Bの向きに回動し、第1フレーム60に取り付けられている加圧ローラー44が定着ローラー42に押圧され、両ローラー44,42の接触部分でニップ部が形成される。当該ニップ部を通過することにより、記録シート上のトナー像が当該記録シートに定着される。
一方、画像形成がなされないとき(定着ユニット18により定着がなされないとき)は、カムなどを用いた公知の離間機構(不図示)により、第1フレーム60が矢印Bとは反対の向きに回動され、これにより、加圧ローラー44は、定着ローラー42から離間される。
【0028】
固定フレーム64は、定着ユニット18における主要なフレーム72(以下、「メインフレーム72」と言う。)に固定されている。固定フレーム64は、その下部に、水平方向に延びる舌片部64Aを有しており、舌片部64Aが後述する取付部材74を介してメインフレーム72に固定されている。
当該固定の態様について、図3(a)、図3(b)を参照しながら、さらに説明する。
【0029】
図3(a)は、取付部材74が設けられたメインフレーム72の端部部分の斜視図であり、図3(b)は、図3(a)において矢印Cの方向から当該端部部分を視た正面図である。
メインフレーム72は、横断面が「コ」字状をした細長い金属製のアングル材からなる。なお、メインフレーム72は、図3(a)の矢印Cの方向(正面)から視て、定着ユニット18の左右方向の略全長に渡っており、また、以下に記す窓76を除いて、全体的に左右に略対称な形状をしている。
【0030】
メインフレーム72の端部部分には、窓76が開設されており、窓76に舌片部64Aが挿通されている。窓76の右側略半分部分は、上下に対向するストレートの内周面の間隔が、後述するピン90が上下方向にガタつくことなく滑らかに挿入できような長さに設定されている。窓76において、上記の間隔を有する部分を位置決め部76Aと言うこととする。また、メインフレーム72には、L字状をした金属製のアングル材からなる取付部材74がネジ78によって固定されている。そして、取付部材74のメインフレーム72から立ち上がった部分と舌片部64Aとがネジ80によって締結されて、固定フレーム64(図2(b))がメインフレーム72に固定されている。
【0031】
定着ユニット18は、メインフレーム72がプリンター2本体にネジ82によって締結されて、プリンター2本体に取り付けられる。
ネジ82について、図4(a)を参照しながら説明する。ネジ82は、ネジ部82Aの外径よりも小さな内径を有する座金84(本例では、平座金)、がネジ頭部82Bとネジ部82Aとの間の軸部分に組み込まれた座金組込みネジである。
【0032】
図3に戻り、プリンター2の本体側には、定着ユニット18固定用のフレーム86(以下、「本体フレーム86」と言う。)が設けられている。本体フレーム86の定着ユニット18取付面86Aには、ネジ孔88が形成されている。また、取付面86Aには、円柱状をした位置決め用のピン90(以下、「位置決めピン90」と言う。)が突設されている。
【0033】
一方、定着ユニット2のメインフレーム72には、ネジ82の外径(ネジの呼び)よりも大きく、頭部82B(図4(a))の外径よりも小さな貫通孔(以下、「挿通孔」と言う。図3には現れていない。)が開設されている。
そして、前記挿通孔に挿入したネジ82をネジ孔88に螺合させ、ネジ82を締め付けることにより、ネジ頭部82Bと取付面86Aとの間でメインフレーム72が挟持されて、定着ユニット2がプリンター2の装置本体に固定される。この際、位置決めピン90を窓76の位置決め部76Aに合わせて挿入することにより、メインフレーム72、ひいては定着ユニット18のプリンター2本体への上下方向における位置決めがなされる。なお、図3(a)の矢印Cの方向(正面)から視て、メインフレーム72の図3(a)には現れていない左側端部部分も、上記した右側端部部分(図3(a)に示す部分)と同様にして、本体フレーム(メインフレーム72の左側端部部分に対応する位置にも図3(a)に示す本体フレーム86と同様の構成の本体フレームが設けられている。)に締結される。
【0034】
また、メインフレーム72の左側端部部分には、上下左右方向の位置決め用の円孔(不図示)が開設されており、プリンター2の装置本体に設けられた位置決めピン(不図示)を前記円孔に挿入することにより、メインフレーム72、ひいては定着ユニット18のプリンター2本体への上下左右方向における位置決めがなされるようになっている。
定着ユニット18をプリンター2本体から取り外す際には、先ず、ネジ82を緩めて本体フレーム86からネジ82を離脱させる。このとき、ネジ82が前記挿通孔から抜け落ちないように、ネジ82の落下防止構造が設けられている。
<ネジ落下防止構造>
本実施の形態に係るネジ落下防止構造について、4つの例に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1に係るネジ落下防止構造92について、図3を参照しながら説明する。
【0035】
ネジ落下防止構造92は、ワイヤー94を有する。ワイヤー94の一端部部分(以下、「固定端部94A」と言う。)は、固定部材であるネジ78の頭部と取付部材74との間で挟持される形で、メインフレーム72に固定されている。ワイヤー94は、ステンレス線などの金属線からなり、弾性(可撓性)を有する。
ワイヤー94の固定端部94Aと反対側の端部部分は、「U」字形のループ状に折り曲げられて成る、ネジ82の保持部94Bが形成されている。
【0036】
図3(b)において、D・D線に沿って切断した断面図であって、座金組込みネジ82およびワイヤー94のみを表した図である図4(a)を参照しながら、さらに、保持部94Bについて説明する。
「U」字形のループ状に折り曲げられたワイヤー94部分の内側の幅Eが、ネジ頭部82Bが通過しないような大きさになっている。ネジ頭部82Bとネジ先端部82Cとの間にある凸部である座金84の外径は、言うまでもなく、ネジ頭部82Bの外径よりも大きいので、座金84は上記のような曲げ加工により形成された保持部94Bを通過することはない。
【0037】
上記のように構成された保持部94Bによれば、ワイヤー94の折り曲げにより形成された部分にネジ82の軸部分がはめ込まれているので、ネジ82をその軸心回りに回転自在に保持することができる。
図3に戻り、また、ネジ78で固定された固定端部94Aから保持部94に至るワイヤー94部分でネジ82が弾性的に支持されることとなる。このため、例えば、ネジ82による定着ユニット18(メインフレーム72)のプリンター2本体(本体フレーム86)への締結がなされていない状態(定着ユニット18がプリンター2本体から取り外されたた状態)で、ネジ82の先端が何か他の物にその軸心方向に勢い良く衝突したとしても、ネジ82は、ワイヤー94の弾性によって、その軸心方向に変位するだけで、定着ユニット18(メインフレーム72)から落下することはない。
【0038】
また、定着ユニット18(メインフレーム72)をプリンター2本体(本体フレーム86)に取り付けようとする際、ネジ82の軸心がネジ孔88の軸心と少しずれていたとしても、ネジ82は、その軸心と交差する方向に、ネジ軸部と前記挿通孔との間の間隙の範囲で、ネジ82の軸心がネジ孔88の軸心と平行のまま変位することができるため、ネジ82がネジ孔88に対して斜めになったまま進入(螺合する)といった事態を可能な限り防止することができる。上記変位は、固定端部94Aから保持部94Bに至るワイヤー94部分の弾性(可撓性)および保持部94Bの内周とネジ82の軸部との間隙によって可能となっている。
【0039】
さらに、メインフレーム72の一方端部部分に位置決め部76Aを、他方端部部分に上述した位置決め部(円孔)を設けているため、位置決め間隔を広く確保できる関係上、定着ユニット18をプリンター2本体に対して、精度良く固定することができる。
なお、上記の例では、座金84を、保持部94Bのネジ先端部82C側への抜け止めに用いたが、これに限らず、例えば以下のようにしても構わない。
【0040】
すなわち、図4(b)に示すように、上記抜け止めとして、ネジ頭部82Bとネジ先端部82Cとの間にある凸部である、ネジ部82のネジ山部を用いることとする。そして、保持部94Bは、ネジ頭部82Bとネジ部82との間の軸部分であってネジが形成されていない円柱部82Dに嵌めこむこととする。
なお、保持部のネジ82の軸心方向への抜け止め構造は、以下に説明する実施例2〜4における保持部でも同様である。
(実施例2)
実施例2に係るネジ落下防止構造96について、図5を参照しながら説明する。
【0041】
なお、ネジ落下防止構造96は、ワイヤー98の曲げ加工による形状(折り曲げ形状)が異なる以外は、実施例1と同様の構成である。よって、図5において、図3に示すのと同じ構成部分には同じ符号を付して、必要に応じて言及するに止める。
ワイヤー98の一端部(固定端部98A)は、ネジ78によって、メインフレーム72に固定されている。
【0042】
ワイヤー98は、その一部が「U」字形のループ状に折り曲げられて成る保持部98Bを有する。保持部98Bは、言うまでも無く、ネジ82をその軸心回りに回転自在に保持する部分である。
ワイヤー98は、さらに、保持部98B(前記ループ状部の一端側)から延伸され、ネジ82の軸心と交差(立体交差)する方向に突出するように曲げ加工されてなる突出部98Cを有する。
【0043】
突出部98Cを前記交差方向(矢印Fの向き)に押し込むことにより、図5(b)に示すように、ネジ頭部82Bが通過できる程度に、保持部98B(ループ状部分)が拡開される。これにより、ネジ82の保持部98B(ワイヤー98)への取り付け作業性が向上する。なお、この逆に、ネジ82の保持部98B(ワイヤー98)からの取り外し作業の作業性も向上する。
(実施例3)
実施例3に係るネジ落下防止構造100について、図6を参照しながら説明する。
【0044】
なお、ネジ落下防止構造100は、ワイヤー102の曲げ加工による形状(折り曲げ形状)が異なる以外は、実施例1、2と同様の構成である。よって、図6において、図3、図5に示すのと同じ構成部分には同じ符号を付して、必要に応じて言及するに止める。
ネジ落下防止構造100では、ワイヤー102は、その両端がネジ78による固定位置に位置するように曲げ加工がなされており、ネジ78はその頭部で、ワイヤー102の両端が露出しないようにワイヤー102の両端部をメインフレーム72に固定している。よって、実施例3では、ワイヤー102の両端部が固定端部102Aになる。このようにすることで、定着ユニット18のプリンター2本体への装着作業時や、定着ユニット18のプリンター2本体からの脱着作業時などにおいて、ワイヤー102の端部で指を引っかく等の事態を防止することができる。
【0045】
なお、ワイヤー102が、ネジ82を保持するための保持部102Bと保持部102Bを拡開させるための突出部102Cを有するのは、実施例2の場合と同様である。
(実施例4)
実施例4に係るネジ落下防止構造104について、図7を参照しながら説明する。
図7は、図2(b)から本実施例の説明に必要な部分を抜き出した図である。
【0046】
なお、ネジ落下防止構造104は、ワイヤー106の曲げ加工による形状(折り曲げ形状)が異なる以外は、実施例1〜3と同様の構成である。よって、図7において、実施例1〜3と同じ構成部分には同じ符号を付して、必要に応じて言及するに止める。
実施例1〜3では、ワイヤーをメインフレーム72に固定したが(固定端部94A,98A,102A)、実施例4では、可動フレーム58の第2フレーム62に固定している(固定端部106A)。このようにしたのは、以下の理由による。
【0047】
すなわち、可動フレーム58には、上述したように加圧ローラー44が回転自在に軸支されている。この軸支部分の軸受けとして樹脂製のすべり軸受け等を使用した場合、加圧ローラー44の軸と当該軸受けとの間で生じる摩擦帯電により、加圧ローラー44に電荷がたまり易くなり、これが原因で、定着前のトナーの飛び散りなどによって、画像ノイズが生じるおそれがある。可動フレーム58は、文字通り固定されていないため、当該可動フレームを介して他の部材に前記電荷が逃げにくい。
【0048】
そこで、実施例4では、ワイヤー106の一端部部分を可動フレーム58に固定することにより、ワイヤー106を介して、メインフレーム72ひいては本体フレーム86に電荷を逃がす(可動フレーム58を本体に接地する)こととしているのである。
なお、ワイヤー106が、ネジ82を保持するための保持部106Bと保持部106Bを拡開させるための突出部106Cを有するのは、実施例2,3の場合と同様である。また、実施例4においても、ワイヤー106を突出部106Cからネジ108まで延伸し、当該延伸端部もネジ108で可動フレーム58(第2フレーム62)に固定することとしても構わない。
【0049】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることもできる。
(1)上記実施の形態では、プリンターを例に説明したが、本発明に係るネジ落下防止構造は、プリンターに限らず他の画像形成装置、例えば複写機やファクシミリ、あるいはこれらの機能を有する複合機などにおける定着ユニットの装置本体への締結箇所に適用できる。
【0050】
また、画像形成装置に限らず、装置本体に対して着脱可能なユニットをネジで固定する場合にも適用可能である。
(2)上記実施の形態では、ネジ82を軸心回りに回転自在に保持する保持部を、ワイヤーをU字形のループ状に折り曲げることによって形成したが、ネジ82を保持するためのループ形状は、U字形に限らない。例えば、三角形状、四角形状、多角形状、楕円形状、円形状でも構わない。
(3)上記実施の形態では、定着ユニット(メインフレーム)を装置本体(本体フレーム)に締結するネジとして、十字穴つき子ネジを用いたがこれに限らず他の種類のネジを用いても構わない。
(4)上記実施の形態では、ワイヤーの固定部材として締結部材であるネジ(ネジ78)を用いたが、当該固定部材はこれに限らず、他の締結部材、例えば、リベットを用いても構わない。あるいは、メインフレームの一部に凸部を設け、当該凸部にワイヤーの一端部部分を巻き掛けることにより固定しても構わない。この場合は、固定部材はメインフレームに一体化した前記凸部である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るネジ落下防止構造は、例えば、プリンター、複写機などの画像形成装置において、画像形成装置本体に対し着脱可能に構成された定着ユニットを前記装置本体に固定するためのネジの前記定着ユニットからの落下防止構造として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
72 メインフレーム
78,82 ネジ
94,98,102,106 ワイヤー
94B,98B,102B,106B 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対し着脱可能なユニットを前記本体に締結するためのネジの前記ユニットからの落下防止構造であって、
一部がループ状に折り曲げられて、その中に前記ネジを軸心回りに回転自在に保持するワイヤーと、
前記ワイヤーを前記ユニットに固定する固定部材と、
を備え、
前記ネジによる締結がなされていない状態において、当該ネジが、前記ワイヤーを介して、前記固定部材により弾性的に支持されていることを特徴とするネジ落下防止構造。
【請求項2】
前記ループ状の部分は、前記ネジ頭部および当該頭部とネジ先端部と間にある凸部が通過しないような形状に前記ワイヤーが折り曲げられて成り、当該ループ状部分が前記頭部と前記凸部との間の軸部に嵌め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のネジ落下防止構造。
【請求項3】
前記ネジは、ネジ部の外径よりも小さな内径を有する座金が頭部とネジ部との間に組み込まれた座金組み込みネジであって、
前記凸部は、前記座金であることを特徴とする請求項2に記載のネジ落下防止構造。
【請求項4】
前記ネジは頭部とネジ部との間の軸部分にネジが形成されていない円柱部を有し、
前記凸部は、ネジ山部であって、
前記ループ状部分が、前記円柱部に嵌め込まれていることを特徴とする請求項2に記載のネジ落下防止構造。
【請求項5】
前記ワイヤーは、前記ループ状を成した部分の一端部側から延出され、前記軸心と交差する方向と平行な方向に突出するように折り曲げられてなる突出部を有し、当該突出部をその突出方向と反対側に押し込むことより、前記頭部が通過できる程度に前記ループ状部分が拡開されるように構成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のネジ落下防止構造。
【請求項6】
前記ワイヤーは、その両端が前記固定部材による固定位置に位置するように折り曲げられており、前記固定部材は、前記両端が露出しないように当該ワイヤーの両端部を前記ユニットに固定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のネジ落下防止構造。
【請求項7】
前記ユニットは、画像形成装置においてトナー像を記録シートに定着ローラーによって熱定着させる定着ユニットであって、
当該定着ユニットは、加圧ローラーを支持する板金部材であって、当該加圧ローラーを前記定着ローラーに対し押圧状態と離間状態とに変位させる可動フレームを有し、
当該定着ユニットは、板金からなる主フレームが前記ネジによって前記画像形成装置本体に締結されて当該装置本体に取り付けられ、
前記固定部材により前記ワイヤーが前記可動フレームに固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のネジ落下防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92234(P2013−92234A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235940(P2011−235940)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】