説明

ネットワークシステム

【課題】 ゲートウェイ装置の負荷を低減可能なネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 ネットワークシステム1は、グローバルバス30とローカルバス40とを接続するメインゲートウェイECU10及びサブゲートウェイECU20を備えている。メインゲートウェイECU10は、グローバルバス30から受信したフレームをローカルバス40に送信する。サブゲートウェイECU20は、グローバルバス30から受信したフレームを保存する受信バッファ21及び送信バッファ22と、ローカルバス40を監視する監視部23と、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームが、監視部23によりローカルバス40上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを受信バッファ21及び送信バッファ22から削除する制御部24と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のゲートウェイ装置を備えるネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークシステムとして、例えば特許文献1に記載されているように、パケット網とTDM網との間で多重構成される複数のゲートウェイ装置を含む冗長化ゲートウェイシステムが知られている。この冗長化ゲートウェイシステムは、複数のゲートウェイ装置の各々に同一の内容のパケットをパケット網から供給すると共に、複数のゲートウェイ装置のうちの何れか一つを選択し、選択された一のゲートウェイ装置から得られるTDM信号のみをTDM網に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の冗長化ゲートウェイシステムでは、選択された一のゲートウェイ装置以外のゲートウェイ装置に、TDM網に送信されない不要なパケットが蓄積されることとなる。このため、この冗長化ゲートウェイシステムでは、各ゲートウェイ装置に対する負荷が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、ゲートウェイ装置の負荷を低減可能なネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のネットワークシステムは、第1のネットワークと第2のネットワークとを接続する稼動系ゲートウェイ装置及び待機系ゲートウェイ装置を備えるネットワークシステムであって、稼動系ゲートウェイ装置は、第1のネットワークから受信したフレームを第2のネットワークに送信し、待機系ゲートウェイ装置は、第1のネットワークから受信したフレームを保存する保存手段と、第2のネットワークを監視する監視手段と、稼動系ゲートウェイ装置から送信されたフレームが、監視手段により第2のネットワーク上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを保存手段から削除する制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明のネットワークシステムにおいては、稼動系ゲートウェイ装置と待機系ゲートウェイ装置とに同一のフレームが第1のネットワークから供給される。このとき、稼動系ゲートウェイ装置はこのフレームを第2のネットワークに送信し、待機系ゲートウェイ装置は、稼動系ゲートウェイ装置から送信されたフレームが、第2のネットワーク上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを自身の保存手段から削除する。このため、第2のネットワークに送信されない不要なフレームが、各ゲートウェイ装置に蓄積されることが防止される。その結果、ゲートウェイ装置の負荷が低減される。
【0008】
本発明のネットワークシステムにおいては、制御手段は、稼動系ゲートウェイ装置から送信されたフレームが、監視手段により第2のネットワーク上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを保存手段から削除すると共に、待機系ゲートウェイ装置のゲートウェイ機能を停止することが好ましい。この場合、待機系ゲートウェイ装置は、稼動系ゲートウェイ装置から送信されたフレームが検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを削除すると共にゲートウェイ機能を停止する。このため、待機系ゲートウェイ装置の負荷が一層低減される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲートウェイ装置の負荷を低減可能なネットワークシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わるネットワークシステムの一実施形態を示す図である。
【図2】図1に示されたサブゲートウェイECUの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示されたサブゲートウェイECUの動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示されたネットワークシステムの動作の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係わるネットワークシステムの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1に示されるように、ネットワークシステム1は、メインゲートウェイECU(Electronic Control Unit:稼動系ゲートウェイ装置)10とサブゲートウェイECU(待機系ゲートウェイ装置)20とを備えている。このネットワークシステム1は、車両に搭載されている。
【0013】
メインゲートウェイECU10及びサブゲートウェイECU20は、CAN(Controller Area Network)によるネットワーク(第1のネットワーク)のバス(グローバルバス)30と、FlexRayによるネットワーク(第2のネットワーク)のバス(ローカルバス)40とを接続するゲートウェイ装置である。
【0014】
グローバルバス30及びローカルバス40の各々には、複数のECU50が接続されている。これらのECU50は、各バス及びメインゲートウェイECU10或いはサブゲートウェイECU20を介して、互いに情報(フレーム)の送受信を行うことができる。
【0015】
なお、グローバルバス30に接続されるECU50としては、例えば、エンジンECUやブレーキECU等が挙げられ、ローカルバス40に接続されるECU50としては、例えば、車車間制御のためのECU等が挙げられる。
【0016】
これらのメインゲートウェイECU10、サブゲートウェイECU20、及び各ECU50は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイス等を備える電子制御ユニットである。
【0017】
以下では、グローバルバス30に接続されたECU50からローカルバス40に接続されたECU50へフレームを送信する場合について説明する。
【0018】
メインゲートウェイECU10及びサブゲートウェイECU20は、グローバルバス30から同一のフレームを受信して、各々の受信バッファに保存する。そして、メインゲートウェイECU10は、受信したフレームを送信バッファからローカルバス40へ送信する(即ちフレームを中継する)。
【0019】
サブゲートウェイECU20は、機能的には、図2に示されるように、受信バッファ(保存手段)21、送信バッファ(保存手段)22、監視部(監視手段)23及び制御部(制御手段)24を有している。受信バッファ21は、上述したように、グローバルバス30から送信されたフレームを保存する。送信バッファ22は、ローカルバス40に送信するためのフレームを保存する。
【0020】
監視部23は、ローカルバス40を監視する。より具体的には、監視部23は、ローカルバス40上で通信されているフレームを監視する。そして、ローカルバス40は、監視の結果を示す情報を制御部24へ送信する。
【0021】
制御部24は、監視部23からの情報に基づいて、受信バッファ21或いは送信バッファ22に保存されているフレームを削除したり、サブゲートウェイECU20のゲートウェイのための機能を停止したりする。
【0022】
より具体的には、制御部24は、メインゲートウェイECU10からローカルバス40へ送信されたフレームが、監視部23によりローカルバス40上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを受信バッファ21或いは送信バッファ22から削除すると共に、サブゲートウェイECU20のゲートウェイ機能を停止する。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して、サブゲートウェイECU20の動作について説明する。まず、受信バッファ21は、グローバルバス30から送信されるフレームを受信して保存する(ステップS1)。
【0024】
このとき、受信バッファ21には、メインゲートウェイECU10の受信バッファに送信されるフレームと同一のフレームが送信される。以下では、図4に示されるように、このフレームをフレームAとする。受信バッファ21に保存されたフレームAは、ローカルバス40への送信の必要が生じたときに、所定の処理が施されて送信バッファ22に転送される。
【0025】
続いて、監視部23は、図4(a)に示されるように、ローカルバス40の監視を行う(ステップS2)。より具体的には、監視部23は、ローカルバス40で通信されているフレームを監視して、監視の結果を示す情報を制御部24へ送信する。
【0026】
続いて、制御部24は、監視部23から送信される情報に基づいて、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームAがローカルバス40で検出されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0027】
ステップS3の判定の結果、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームAがローカルバス40で検出された場合、図4(a)に示されるように、制御部24は、検出されたフレームAと同一のフレーム(即ちフレームA)を受信バッファ21或いは送信バッファ22から削除する(ステップS4)。
【0028】
続いて、制御部24は、サブゲートウェイECU20のゲートウェイ機能を停止する(ステップS5)。これにより、CPUリソースをより効率的に使用可能となる。
【0029】
続いて、制御部24は、図4(a)に示されるように、ゲートウェイ機能よりも優先度が低いアプリケーション(非重要アプリ)を起動する(ステップS6)。ゲートウェイ機能よりも優先度が低いアプリケーションとしては、例えばRAMチェック等の故障診断のためのアプリケーションが挙げられる。
【0030】
一方、ステップS3の判定の結果、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームAがローカルバス40で検出されなかった場合、制御部24は、所定時間が経過したか否かの判定を行う(ステップS7)。
【0031】
ステップS7の判定の結果、所定の時間が経過していない場合、サブゲートウェイECU20処理はステップS3に移行する。
【0032】
一方、ステップS7の判定の結果、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームAがローカルバス40で検出されない状態で所定時間が経過した場合、図4(b)に示されるように、制御部24は、ゲートウェイ機能よりも優先度の低いアプリケーションを停止する(ステップS8)。
【0033】
そして、制御部24は、図4(b)に示されるように、フレームAを送信バッファ22からローカルバス40へ送信する(ステップS9)。これにより、メインゲートウェイECU10によるグローバルバス30からローカルバス40へのフレームAの中継が途絶えた場合においても、サブゲートウェイECU20によってグローバルバス30からローカルバス40へのフレームAの中継が行われる。
【0034】
以上説明したように、ネットワークシステム1では、メインゲートウェイECU10とサブゲートウェイECU20とに同一のフレームが送信される。そして、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームがローカルバス40上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームがサブゲートウェイECU20からから削除される。
【0035】
つまり、メインゲートウェイECU10によるフレームの中継が正常に行われている場合には、メインゲートウェイECU10が中継するフレームと同一のフレームが、サブゲートウェイECU20から削除される。
【0036】
このため、ローカルバス40に送信されない不要なフレームが、サブゲートウェイECU20に蓄積されることが防止されるので、サブゲートウェイECU20の負荷が低減される。
【0037】
また、ネットワークシステム1によれば、メインゲートウェイECU10から送信されたフレームがローカルバス40上で検出された場合、即ち、メインゲートウェイECU10よるフレームの中継が正常に行われている場合、サブゲートウェイECU20のゲートウェイ機能が停止される。
【0038】
このため、サブゲートウェイECU20に対する負荷が一層低減されるので、例えば、ゲートウェイ機能よりも優先度の低いアプリケーションを、サブゲートウェイECU20が実行することができる。
【0039】
さらには、メインゲートウェイECU10とサブゲートウェイECU20との間で通信を行う必要がないので、メインゲートウェイECU10とサブゲートウェイECU20との間で送受信されるフレーム数を減らすことができる。
【0040】
なお、上記の実施形態においては、第1のネットワークとしてCANによるものを例示し、第2のネットワークとしてFlexRayによるものを例示したが、第1及び第2のネットワークはこれに限定されるものではない。
【0041】
例えば、第1のネットワークは、EtherNet(登録商標)によるものであってもよいし、Most(Media Oriented Systems Transport)によるものであってもよい。また、第2のネットワークは、LIN(Local Interconnect Network)によるものであってもよい。
【0042】
また、上記の実施形態においては、グローバルバス30に接続されたECU50からローカルバス40に接続されたECU50へフレームを送信する場合について説明したが、ローカルバス40に接続されたECU50からグローバルバス30に接続されたECU50へフレームを送信する場合についても、ネットワークシステム1を適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1…ネットワークシステム、10…メインゲートウェイECU(稼動系ゲートウェイ装置)、20…サブゲートウェイECU(待機系ゲートウェイ装置)、21…受信バッファ(保存手段)、22…送信バッファ(保存手段)、23…監視部(監視手段)、24…制御部(制御手段)、30…グローバルバス(第1のネットワーク)、40…ローカルバス(第2のネットワーク)。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワークと第2のネットワークとを接続する稼動系ゲートウェイ装置及び待機系ゲートウェイ装置を備えるネットワークシステムであって、
前記稼動系ゲートウェイ装置は、前記第1のネットワークから受信したフレームを前記第2のネットワークに送信し、
前記待機系ゲートウェイ装置は、
前記第1のネットワークから受信したフレームを保存する保存手段と、
前記第2のネットワークを監視する監視手段と、
前記稼動系ゲートウェイ装置から送信されたフレームが、前記監視手段により前記第2のネットワーク上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを前記保存手段から削除する制御手段とを有することを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記稼動系ゲートウェイ装置から送信されたフレームが、前記監視手段により前記第2のネットワーク上で検出された場合に、該検出されたフレームと同一のフレームを前記保存手段から削除すると共に、前記待機系ゲートウェイ装置のゲートウェイ機能を停止することを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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