説明

ネットワーク接続装置およびネットワーク接続方法

【課題】残存時間が最長なIPアドレスにリダイレクトする。
【解決手段】ネットワークカード10は、ネットワーク60に接続された装置と通信するネットワーク通信部12と、ネットワーク60に接続された複数のルーターが送信するパケットに含まれる情報に基づいて複数のIPアドレスを生成し、生成した複数のIPアドレスをネットワーク60で設定するアドレッシング処理部14と、ネットワーク60に接続されたクライアント装置50から複数のIPアドレスの1つである第1のIPアドレス宛に送信された読取指令信号を受信した場合、複数のIPアドレスの中で残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定するアドレス判定部22と、第1のIPアドレスと第2のIPアドレスが異なる場合、クライアント装置50に対して第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求するリダイレクト要求部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク接続装置およびネットワーク接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広く普及しているインターネットではルーティテングプロトコルとしてIP(Internet Protocol)が用いられている。現状において、一般的に使用されているIPは、IPv4(Internet Protocol version4)であり、発信元/宛先として32ビットからなるアドレス(IPアドレス)が用いられている。
インターネット通信においては、32ビットIPアドレスを各発信元/宛先にユニークに割り当てるグローバルIPアドレスを採用し、IPアドレスに応じて、個々の発信元/宛先を判別している。しかしながら、インターネットの世界は急速に広がりを見せており、IPv4の限られたアドレス空間、すなわちグローバルアドレスの枯渇が問題となってきている。これを解決するために、次世代IPアドレスとして、IPアドレス空間を32ビットから128ビットに拡張し、新しいアドレス空間を持つIPv6(Internet Protocol version6)が提案され、実用化されている。
【0003】
このようなIPアドレスは、下記特許文献1に示すように、使用可能な有効期限が終了した場合、ネットワーク上のルーター等で機能が中断されるため、再度接続処理を行ってIPアドレスを取得する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、長時間に渡り接続状態を維持したい場合であっても、IPアドレスの有効期限が終了すると切断されるため、再度接続処理が煩雑で手間と時間を要した。本発明は、残存時間が最長なIPアドレスにリダイレクトすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかるネットワーク接続装置は、情報処理装置に接続することで、前記情報処理装置に従属して作動し、前記情報処理装置とネットワークとを通信可能に接続するネットワーク接続装置であって、前記ネットワークに接続された装置と通信するネットワーク通信部と、前記ネットワークに接続された複数のIPアドレス割当装置が送信するパケットに含まれる情報に基づいて複数のIPアドレスを生成し、生成した複数の前記IPアドレスを前記ネットワークで使用可能に設定するアドレス設定部と、前記ネットワークに接続されたクライアント装置から前記複数のIPアドレスの1つである第1のIPアドレス宛に送信された信号を前記ネットワーク通信部が受信した場合、前記パケットに含まれ、前記複数のIPアドレスの中で使用可能な残り時間を示す残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定するアドレス判定部と、前記第1のIPアドレスと前記第2のIPアドレスが異なる場合、前記クライアント装置に対して前記第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求するリダイレクト要求部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、ネットワーク接続装置は、複数のIPアドレス割当装置毎に生成されたIPアドレスの中から1つである第1のIPアドレス宛に送信された信号をクライアント装置から受信した場合、複数のIPアドレスの中で、使用可能な残り時間を示す残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定し、第1のIPアドレスと第2のIPアドレスが異なる場合、クライアント装置に対して第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求する。従って、必要に応じて残存時間が最長のIPアドレスを選択することで、ネットワークの再接続処理を行う頻度を軽減できる。
【0009】
[適用例2]
本適用例にかかるネットワーク接続方法は、情報処理装置に接続することで、前記情報処理装置に従属して作動し、前記情報処理装置とネットワークとを通信可能に接続するネットワーク接続方法であって、前記ネットワークに接続された複数のIPアドレス割当装置が送信するパケットに含まれる情報に基づいて複数のIPアドレスを生成し、生成した複数の前記IPアドレスを前記ネットワークで使用可能に設定するアドレス設定工程と、前記ネットワークに接続されたクライアント装置から前記複数のIPアドレスの1つである第1のIPアドレス宛に送信された信号を受信する受信工程と、前記信号を受信した場合、前記パケットに含まれ、前記複数のIPアドレスの中で使用可能な残り時間を示す残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定するアドレス判定工程と、前記第1のIPアドレスと前記第2のIPアドレスが異なる場合、前記クライアント装置に対して前記第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求するリダイレクト要求工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
このような方法によれば、ネットワーク接続装置は、複数のIPアドレス割当装置毎に生成されたIPアドレスの中から1つである第1のIPアドレス宛に送信された信号をクライアント装置から受信した場合、複数のIPアドレスの中で、使用可能な残り時間を示す残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定し、第1のIPアドレスと第2のIPアドレスが異なる場合、クライアント装置に対して第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求する。従って、必要に応じて残存時間が最長のIPアドレスを選択することで、ネットワークの再接続処理を行う頻度を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るネットワークカードの構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るネットワークカードの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ネットワーク接続装置について図面を参照して説明する。
【0013】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態として、情報処理装置であるスキャナー装置30と、ネットワーク60と、を通信可能に接続するネットワーク接続装置であるネットワークカード10の構成を示すブロック図である。
ネットワークカード10は、スキャナー装置30に装着することで、ネットワーク60におけるノードとして、スキャナー装置30とネットワーク60とが通信可能に接続される。
このネットワーク60には、DHCP(Dynanic Host Configuration Protocol)機能を有するルーターA(40)およびルーターB(45)が接続されている。また、ルーターA(40)およびルーターB(45)は、共にインターネット65に接続されている。更に、インターネット65には、DNS(Domain Name System)サーバー55およびクライアント装置50が接続されている。従って、ネットワークカード10は、ネットワーク60とインターネット65を介して、DNSサーバー55やクライアント装置50と通信可能に接続されている。
【0014】
ネットワークカード10は、ネットワーク通信部12、アドレッシング処理部14、リダイレクト部20および機器通信部16を備える。また、リダイレクト部20は、アドレス判定部22およびリダイレクト要求部24を備える。
【0015】
このネットワークカード10は、ハードウェアとして、何れも図示は略した、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリーおよびMAC(Media Access Control)コントローラー等を備える。
ネットワーク通信部12は、OSI(Open System Interconnection)参照モデルのような階層化されたプロトコルに基づき、ネットワーク60を介してクライアント装置50との間で情報を送受信する。このネットワーク通信部12は、通信プロトコルであるIPv6に対応できるように構成されているが、これには限定されない。
【0016】
アドレッシング処理部14は、アドレス設定部であり、ルーターA(40)およびルーターB(45)と通信し、IPv6のプロトコルに基づくIPv6アドレス(第1のIPアドレス,第2のIPアドレス)をそれぞれ取得する。詳細には、アドレッシング処理部14は、ルーターA(40)およびルーターB(45)が送信するルーター広告(Router Advertisement:RA)パケットをそれぞれ受信し、受信したRAパケットのプレフィックスと、自身のリンクローカルアドレスの下位64bitとを組み合わせてIPv6アドレスを生成する。尚、自身のリンクローカルアドレスは、MACアドレス等からネットワーク60内で一意となるように自動的に生成される。生成されたIPv6アドレスは、それぞれアドレス判定部22から必要に応じて参照される。
【0017】
また、アドレッシング処理部14は、ルーターA(40)およびルーターB(45)に対してホスト名を要求し、ルーターA(40)およびルーターB(45)から送られたホスト名と、生成したIPv6アドレスをそれぞれDNSサーバー55に登録する。この結果、クライアント装置50は名前解決が可能になり、ネットワークカード10との通信が可能になる。尚、IPアドレスとホスト名の情報をDNSサーバー55に登録する詳細な手順は、例えば、特開2004−228736号公報に開示されている。また、本実施形態では、クライアント装置50との通信は、HTTP(HyperText Transfer Protocol)のようにリダイレクト可能な転送プロトコルを想定する。
リダイレクト部20は、クライアント装置50から第1のIPアドレス宛に送信された信号、例えば、読取指令信号をネットワーク通信部12が受信したことを受けてサービスを開始する。即ち、ネットワークカード10が使用可能なIPアドレスの中で、使用可能な残り時間を示す残存時間(有効期限)が第1のIPアドレスよりも長いIPアドレスが存在する場合、そのIPアドレスへのリダイレクトをクライアント装置50に要求する。尚、本実施形態では、有効期限が最も長いIPアドレスを指示してリダイレクトを要求するが、これには限定されず、有効期限が最も短いIPアドレスを指示してリダイレクトを要求する様態も想定できる。
【0018】
アドレス判定部22は、IPv6アドレスの有効期限の情報を取得し、クライアント装置50が使用している第1のIPアドレスは、他に使用可能なアドレス(第2のIPアドレス)よりも使用可能時間が長いか、否かを判定する。
本実施形態では、アドレス判定部22は、それぞれのIPv6アドレスに応じたRAパケットに含まれる有効期限に関するパラメーター(例えば、Router Lifetime)を取得し、取得したパラメーターに基づいてIPv6アドレスの有効期限を取得する。尚、取得したIPv6アドレスの有効期限は、ネットワークカード10内部で定期的に更新する。この場合、ルーターA(40)およびルーターB(45)からの通知に応じて更新しても良い。尚、アドレス判定部22により、第2のIPアドレスが最も長い使用可能時間を有すると判定された場合、第2のIPアドレスの情報はリダイレクト要求部24に送られる。他方で、第1のIPアドレスが最も長い使用可能時間を有する場合、アドレス判定部22はリダイレクト要求部24に情報を送らない。
リダイレクト要求部24は、アドレス判定部22から第2のIPアドレスの情報が送られた場合、クライアント装置50に対して、第2のIPアドレスでアクセスするように、クライアント装置50に対してリダイレクト要求を送信する。
【0019】
機器通信部16は、スキャナー装置30との間で通信を行うと共に、ネットワーク通信部12との間で通信を行う。尚、本実施形態では、USB(Universal Serial Bus)を介した通信を想定するが、これに限定されない。
スキャナー装置30は、何れも図示は略した、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光源、光学系、光電変換素子、走査駆動系、原稿用紙自動給紙装置(ADF)および液晶パネル等をハードウェアとして備える。尚、本実施形態では、スキャナー装置30は、単一機能の装置を想定するが、これに限定されるものではなく、プリンターやコピー機能を具備した複合機の様態でも良い。
図2は、ネットワークカード10の処理の流れを示すフローチャートである。ネットワークカード10は、起動後、ルーターA(40)およびルーターB(45)から送られるRAメッセージに基づいて、それぞれのIPv6アドレスを割り当てる(ステップS100)<アドレス設定工程>。
【0020】
次に、ネットワークカード10は、DNSサーバー55にホスト名とIPv6アドレスを登録する(ステップS102)。続いて、ネットワークカード10は、リダイレクト部20によるリダリレクトサービスを起動する(ステップS105)。
次に、ネットワークカード10は、クライアント装置50から読取指令信号を受信したか、否かを判定する(ステップS110)<受信工程>。尚、読取指令信号は、クライアント装置50が第1アドレスを取得し、取得した第1アドレスを使用して送信される。
ここで、ネットワークカード10が、クライアント装置50からの読取指令信号を受信できない場合(ステップS110でNo)、ステップS140に進む。
【0021】
他方で、ネットワークカード10がクライアント装置50からの読取指令信号を受信できた場合(ステップS110でYes)、ネットワークカード10は、外部機器との通信に使用している第1アドレスを取得する(ステップS115)。
続いて、ネットワークカード10は、外部機器との通信に最も長時間に渡り使用可能な第2アドレスを取得する(ステップS120)。
次に、ネットワークカード10は、第1アドレスと第2アドレスが一致するか、否かを判定する(ステップS125)<アドレス判定工程>。ここで、第1アドレスと第2アドレスが一致する場合(ステップS125でYes)、現在使用しているアドレスが最も使用可能時間が長いので、ステップS140に進む。
【0022】
他方で、第1アドレスと第2アドレスが一致しない場合(ステップS125でNo)、第2アドレスを使用できるか、否かを判定する(ステップS130)。
ここで、第2アドレスを使用できる場合(ステップS130でYes)、ネットワークカード10は、第2アドレスでリダイレクトさせるべく、クライアント装置50に要求し(ステップS135)<リダイレクト要求工程>、ステップS140に進む。尚、リダイレクト要求を受信したクライアント装置50は、指定された第2アドレスで接続を行った後、再度読取指令信号を送信する。
【0023】
他方で、第2アドレスを使用できない場合(ステップS130でNo)、ステップS140に進む。
ステップS140では、ネットワークカード10は、処理を終了するか、否かを判定し(ステップS140)、終了しない場合(ステップS140でNo)、ステップS110に戻る。他方で、終了する場合(ステップS140でYes)、リダイレクトサービスを終了し(ステップS145)、一連の処理を終了する。
【0024】
以上述べた実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)スキャナー装置30とクライアント装置50は、使用可能時間が最も長いアドレスで接続されるため、途中で通信が切断されることによる再接続処理を行う煩わしさが低減し、長時間に渡って通信を維持できる。
【0025】
以上、本発明を図示した実施形態に基づいて説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、以下に述べるような変形例も想定できる。
(1)本実施形態では、スキャナー装置30には1枚のネットワークカード10を装着したが、複数のネットワークカード10を装着し、有線接続と無線接続のように異なるネットワークでそれぞれのルーターと接続した様態でも良い。
(2)情報処理装置はスキャナー装置30には限定されず、プリンターやプロジェクターのような画像出力装置でも良い。
(3)クライアント装置50に対してアドレスを指定してリダイレクトを要求する前に、指定したアドレスはクライアント装置50との通信に使用可能か、否かを確認しても良い。
また、以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0026】
10…ネットワークカード、12…ネットワーク通信部、14…アドレッシング処理部、16…機器通信部、20…リダイレクト部、22…アドレス判定部、24…リダイレクト要求部、30…スキャナー装置、40…ルーターA、45…ルーターB、50…クライアント装置、55…DNSサーバー、60…ネットワーク、65…インターネット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置に接続することで、前記情報処理装置に従属して作動し、前記情報処理装置とネットワークとを通信可能に接続するネットワーク接続装置であって、
前記ネットワークに接続された装置と通信するネットワーク通信部と、
前記ネットワークに接続された複数のIPアドレス割当装置が送信するパケットに含まれる情報に基づいて複数のIPアドレスを生成し、生成した複数の前記IPアドレスを前記ネットワークで使用可能に設定するアドレス設定部と、
前記ネットワークに接続されたクライアント装置から前記複数のIPアドレスの1つである第1のIPアドレス宛に送信された信号を前記ネットワーク通信部が受信した場合、前記パケットに含まれ、前記複数のIPアドレスの中で使用可能な残り時間を示す残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定するアドレス判定部と、
前記第1のIPアドレスと前記第2のIPアドレスが異なる場合、前記クライアント装置に対して前記第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求するリダイレクト要求部と、を備えることを特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項2】
情報処理装置に接続することで、前記情報処理装置に従属して作動し、前記情報処理装置とネットワークとを通信可能に接続するネットワーク接続方法であって、
前記ネットワークに接続された複数のIPアドレス割当装置が送信するパケットに含まれる情報に基づいて複数のIPアドレスを生成し、生成した複数の前記IPアドレスを前記ネットワークで使用可能に設定するアドレス設定工程と、
前記ネットワークに接続されたクライアント装置から前記複数のIPアドレスの1つである第1のIPアドレス宛に送信された信号を受信する受信工程と、
前記信号を受信した場合、前記パケットに含まれ、前記複数のIPアドレスの中で使用可能な残り時間を示す残存時間が最長な第2のIPアドレスを判定するアドレス判定工程と、
前記第1のIPアドレスと前記第2のIPアドレスが異なる場合、前記クライアント装置に対して前記第2のIPアドレスへのリダイレクトを要求するリダイレクト要求工程と、を有することを特徴とするネットワーク接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−199582(P2011−199582A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63903(P2010−63903)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】