説明

ネットワーク通信装置

【課題】無駄な電力消費を抑制しつつ利用者による給電の制御を可能として利便性の向上を図る。
【解決手段】本実施形態のネットワーク通信装置では、利用者の操作(通信ケーブルの抜き差し)によって通信ポート6からの給電を開始させることができる。したがって、管理者による制御若しくはスケジュール制御によって通信ポート6からの給電が停止されているときに受電機器を使用したい場合、あるいはスケジュール制御のトラブルによって受電機器への給電が開始されない場合においても、利用者側で当該通信ポート6からの給電を再開させることができる。その結果、無駄な電力消費を抑制しつつ利用者による給電の制御を可能として利便性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングハブなどのネットワーク通信装置に関し、特に通信ケーブルを介した給電機能を有するネットワーク通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、100BASE-TXや1000BASE-TなどのLANで使用するツイストペアケーブル(通信ケーブル)を利用して、受電側の通信機器(以下、受電機器と呼ぶ。)に給電する機能を有したネットワーク通信装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。なお、受電機器としては、無線LANのアクセスポイントやネットワークカメラ、IP電話機などがある。
【0003】
特許文献1に記載されている給電機能付きのネットワーク通信装置(スイッチングハブ)は、商用交流電源から所定の直流電力を生成し、通信ポートに接続された通信ケーブル(ツイストペアケーブル)を介して直流電力を供給(給電)している。ただし、このような給電機能(PoE<Power over Ethernet(登録商標)>)については、IEEE802.3afやIEEE802.3atとして規格化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−281628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、受電機器並びにネットワーク通信装置を含むシステム全体で消費電力の低減を図るため、ネットワークの管理者がネットワーク通信装置の電力供給を停止してしまうと、受電機器を利用する利用者が電力供給を再開させることができなかった。ネットワーク通信装置の電力供給を再開させるには、利用者が管理者に依頼してネットワーク通信装置の電力供給を再開させて貰うという手順を踏まなければならない。
【0006】
また、ネットワーク通信装置の電力供給をスケジュール制御した場合においても、利用者がネットワーク通信装置の電力供給を制御することができず、スケジュール制御によって電力が供給されている期間以外で受電機器を利用することができなかった。さらに、受電機器が故障した場合、管理者が停止させない限りはネットワーク通信装置の電力供給が継続されるため、無駄な電力が消費されてしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、無駄な電力消費を抑制しつつ利用者による給電の制御を可能として利便性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のネットワーク通信装置は、1乃至複数の通信ポートと、当該通信ポートより受電機器に給電する給電手段と、当該給電手段を制御する制御手段とを備え、当該制御手段は、前記通信ポートへの前記受電機器の接続の有無を検出し、接続有りを検出している状態から接続無しを検出したときに給電許可状態となり、当該給電許可状態において接続有りを検出した場合に前記給電手段から給電を開始させることを特徴とする。
【0009】
このネットワーク通信装置において、前記制御手段は、前記人体検知手段が人体を検知しなくなってから所定時間後に前記給電許可状態でなくなることが好ましい。
【0010】
このネットワーク通信装置において、前記制御手段は、前記人体検知手段が人体を検知しなくなると前記給電手段に給電を停止させることが好ましい。
【0011】
このネットワーク通信装置において、前記制御手段は、前記受電機器が停止状態であることを検知すると前記給電手段に給電を停止させるか、あるいは給電停止後に再度給電を再開させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のネットワーク通信装置は、無駄な電力消費を抑制しつつ利用者による給電の制御を可能として利便性の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、従来技術で説明したLAN用のネットワーク通信装置であるスイッチングハブに本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態のスイッチングハブは、100BASE-TXのイーサネット(登録商標)や1000BASE-Tのギガビット・イーサネット(登録商標)に対応したIPネットワークに接続されるものである。このスイッチングハブは、図1に示すように制御部1、第1記憶部2、第2記憶部3、符号化/復号化部4、波形整形部5、通信ポート6、表示部7、操作入力受付部8、給電部9、給電制御部10などを備えている。
【0016】
制御部1はCPUからなり、書換不可の不揮発性半導体メモリ(ROM)からなる第1記憶部2に記憶されているプログラムを実行することで種々の処理を行う。第2記憶部3は書換可能な不揮発性半導体メモリ(例えば、EEPROMやフラッシュメモリなど)からなり、制御部1が行う種々の処理に必要なデータ等を記憶している。
【0017】
符号化/復号化部4は、制御部1が生成する伝送フレーム(MACフレーム)を符号化するとともに受信したMACフレームを復号化する。波形整形部5は、符号化されたMACフレームのビット列を電気信号(通信信号)に変換するとともに受信した電気信号(通信信号)を波形整形してビット列を再生する。通信ポート6はRJ45のモジュラジャックからなり、エンハンスト・カテゴリ5やカテゴリ6などのツイストペアケーブルからなる通信ケーブルの先端に付設されているRJ45のモジュラプラグが挿抜自在に接続される。
【0018】
表示部7は、発光ダイオードなどの表示素子(図示せず)と、表示素子を発光させる発光回路(図示せず)とを有する。操作入力受付部8は複数の押釦スイッチを有し、押釦スイッチの押操作による操作入力を受け付けて制御部1に渡すものである。ただし、操作入力受付部8の代わりに、汎用のシリアル通信(例えば、RS232C)を行うためのシリアル通信インタフェース(I/F)部とシリアル通信用の通信ポートを備えても良い。
【0019】
給電手段に相当する給電部9は、例えば商用交流電源から直流電力を生成するスイッチング電源回路からなり、生成した直流電力を通信ポート6から通信ケーブルを介して給電する。給電制御部10は、給電部9から複数の通信ポート6への給電路(図示せず)を個別に開閉する複数のリレーや、これら複数のリレーを駆動するリレー駆動回路などを具備している。
【0020】
ところで、通信ポート6には受電機能を有さない通信機器(以下、非受電機器と呼ぶ。)が接続される場合があり、非受電機器に給電されると電力が無駄に消費されるだけでなく、当該非受電機器の動作に支障を来す虞がある。そのため、本実施形態においては、各通信ポート6毎に給電の可否が設定できるようになっている。つまり、制御部1は、操作入力受付部8で受け付ける操作入力に応じて、受電機器が接続される通信ポート6を給電可に設定し、非受電機器が接続される通信ポート6を給電不可に設定する。さらに、制御部1では、給電可に設定した通信ポート6について、受電機器の接続の有無並びに当該受電機器の電力クラスを検出している。電力クラスとは、受電機器が必要とする電力の大小によって区分けされるものである。なお、制御部1は、受電機器に内蔵された検出用抵抗(25キロオームの固定抵抗)を利用して受電機器の接続の有無及び電力クラスを検出している。ただし、制御部1で実行される接続検出及び電力クラス検出の各処理(プロセス)については、IEEE802.3afやIEEE802.3atの規格に規定されているので詳細な説明を省略する。
【0021】
ところで、従来の給電機器は、上述したように通信ポートからの給電を可とする状態(給電可能モード)と、通信ポートからの給電を不可とする状態(給電停止モード)との2種類の制御状態(制御モード)しか有していなかった。これに対して本実施形態における制御部1は、給電可能モードと給電停止モードに加えて給電待機モードを有している。
【0022】
制御部1は、給電待機モードに設定された通信ポート6に対して接続検出プロセス及び電力クラス検出プロセスを常時実行し、それぞれの検出結果に応じて給電可能フラグを「0」と「1」に切り換えている。そして、通信ポート6の給電可能フラグが「0」の場合、制御部1は、例え当該通信ポート6に接続有りと検出しても当該通信ポート6への給電を禁止する。一方、通信ポート6の給電可能フラグが「1」の場合(給電許可状態の場合)、制御部1は、当該通信ポート6に接続有りと検出し且つ電力クラスを検出すれば、給電制御部10に当該通信ポート6への給電を開始させる。
【0023】
次に、図2のフローチャートを参照しながら本実施形態の動作を説明する。まず、任意の通信ポート6から給電されている状況において、管理者による制御若しくはスケジュール制御によって当該通信ポート6が給電待機モードに切り換えられたとする(図2のステップS1)。制御部1は、給電待機モードに切り換えた通信ポート6に対応する給電可能フラグを「0」に設定し(ステップS2)、給電制御部10を制御して当該通信ポート6からの給電を停止させる(ステップS3)。
【0024】
ここで、利用者が給電停止された通信ポート6に接続されている受電機器を動作させたい場合、当該受電機器の通信ポートから通信ケーブルを抜いた後に再度接続すればよい。制御部1は常時接続検出プロセスを実行しており(ステップS4)、利用者によって通信ケーブルが抜かれた場合、接続無しを検出して当該通信ポート6の電力クラスを「7」に設定する(ステップS5)。ここで、規格では0〜4までの電力クラスが規定されており、7という電力クラスは規格上は存在しない。ただし、制御部1は接続無しを検出する以前に設定されていた電力クラスの値(0〜4の何れか)をメモリに保持している。
【0025】
続いて、制御部1は当該通信ポート6に対して電力クラス検出プロセスを実行し、検出される電力クラスと、メモリに保持している電力クラス(接続無しを検出する以前の電力クラス)とを比較する(ステップS6)。このとき、通信ポート6に受電機器が接続されていなければ、先ほど設定された電力クラス「7」と、メモリに保持している電力クラス(0〜4の何れか)とが一致しないので、制御部1は当該通信ポート6に対応する給電可能フラグを「1」に設定する(ステップS7)。
【0026】
そして、利用者によって当該通信ポート6に受電機器が再接続されると、制御部1は、接続検出プロセスにより受電機器の接続有りを検出し(ステップS8)、さらに電力クラス検出プロセスによって当該受電機器の電力クラスを検出する(ステップS9)。このとき、利用者が通信ケーブルを挿抜することにより、通信ポート6に対応する給電可能フラグが「1」に設定されて給電許可状態となっている。そのため、制御部1は電力クラス検出プロセスで電力クラスが検出されれば(ステップS9)、給電制御部10を制御して当該通信ポート6からの給電を開始させる(ステップS10)。
【0027】
上述のように本実施形態のネットワーク通信装置(スイッチングハブ)では、利用者の操作(通信ケーブルの抜き差し)によって通信ポート6からの給電を開始させることができる。したがって、管理者による制御若しくはスケジュール制御によって通信ポート6からの給電が停止されているときに受電機器を使用したい場合、あるいはスケジュール制御のトラブルによって受電機器への給電が開始されない場合においても、利用者側で当該通信ポート6からの給電を再開させることができる。その結果、無駄な電力消費を抑制しつつ利用者による給電の制御を可能として利便性の向上を図ることができる。
【0028】
ここで、本実施形態のスイッチングハブに人体検知センサを搭載し、給電待機モードにおいて人体検知センサが人体を検知したときに、制御部1が通信ポート6の給電可能フラグを「1」に設定するようにしても構わない。この場合、人体検知センサで人体が検知された後に、制御部1が接続検出プロセス及び電力クラス検出プロセスを実行することで受電機器への給電を自動的に再開させることができる。なお、人体検知センサで人体が検知されなくなってから所定時間後(例えば、10分後)、制御部1は給電可能フラグを「0」に戻す。
【0029】
ところで、受電機器が何らかの原因で機能を停止した場合、当該受電機器への給電を継続していると無駄に電力が消費されてしまう虞がある。そこで、制御部1が通信ポート6を通じて受電機器が正常に動作しているか否かを定期的に監視し、正常に動作していない(機能を停止している)と判断した場合に当該受電機器への給電を停止することが好ましい。ただし、受電機器が機能停止した原因がプログラムの暴走等であった場合、電源リセットによる再起動によって受電機器が正常に動作(機能)する可能性がある。したがって、受電機器が機能を停止していると判断した場合、制御部1が通信ポート6からの給電を一旦停止した後に再度開始することで当該受電機器を再起動させるようにしても構わない。なお、制御部1が給電停止と再起動のどちらを実行するかについては、操作入力受付部8で受け付ける操作入力に基づいて決定される。
【符号の説明】
【0030】
1 制御部(制御手段)
6 通信ポート
9 給電部(給電手段)
10 給電制御部(給電手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1乃至複数の通信ポートと、当該通信ポートより受電機器に給電する給電手段と、当該給電手段を制御する制御手段とを備え、当該制御手段は、前記通信ポートへの前記受電機器の接続の有無を検出し、接続有りを検出している状態から接続無しを検出したときに給電許可状態となり、当該給電許可状態において接続有りを検出した場合に前記給電手段から給電を開始させることを特徴とするネットワーク通信装置。
【請求項2】
人体を検知する人体検知手段を備え、前記制御手段は、前記給電許可状態でないときに前記人体検知手段が人体を検知した場合にも前記給電許可状態となることを特徴とする請求項1記載のネットワーク通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記人体検知手段が人体を検知しなくなってから所定時間後に前記給電許可状態でなくなることを特徴とする請求項2記載のネットワーク通信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記受電機器が停止状態であることを検知すると前記給電手段に給電を停止させるか、あるいは給電停止後に再度給電を再開させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のネットワーク通信装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−199776(P2012−199776A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62612(P2011−62612)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(302049862)パナソニックESネットワークス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】