説明

ネビボロールの調製法

本発明は、ネビボロール調製のための製法に関し、より詳細にはネビボロールの調製における重要な中間体である次式(I)で表される6−フルオロクロマンエポキシド類の改良された合成法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネビボロール調製法に関し、より詳細にはネビボロールの調製における重要な中間体である次式:
【0002】
【化1】

【0003】
で表される6−フルオロクロマンエポキシドの改良された合成法に関する。
【背景技術】
【0004】
ネビボロール(以後NBVと称する)は式(IA):
【0005】
【化2】

【0006】
で表される[2S[2R*[R[R*]]]]α,α’−[イミノ−ビス(メチレン)]ビス[6−フルオロ−クロマン−2−メタノール](以後d−NBVと称する)と、式(IB):
【0007】
【化3】

【0008】
で表されるその[2R[2S*[S[S*]]]]エナンチオマー(以後l−NBVと称する)の等量混合物である。
【0009】
ネビボロールは、β−アドレナリン遮断特性を特徴とし、本態性高血圧の治療に有用である。ネビボロールは塩基性であり、適切な酸で処理することによりその付加塩に変換される。ネビボロールの塩酸付加塩は市販されている。
【0010】
4個の不斉炭素原子により16種の立体異性体の混合物(非対称置換の場合)又は10種の立体異性体の混合物(対称置換の場合)が生じるため、α,α’−[イミノ−ビス(メチレン)]ビス[クロマン−2−メタノール]という分子構造体の合成は当業者にとって難しいことが当技術分野で知られている。ネビボロール構造は対称性を有することから明らかなように、計10種の立体異性体が生成され得る。
【0011】
ネビボロール調製法数例が文献に報告されている。
【0012】
特許文献1は、次の合成スキームに従う、クロマンエポキシド誘導体のジアステレオ異性体混合物の合成を含むNBVの調製法を開示している。
【0013】
【化4】

【0014】
6−フルオロクロマンカルボン酸エチルエステルは対応する酸のエステル化により誘導され、ジヒドロビス−(2−メトキシエトキシ)アルミン酸ナトリウムにより一級アルコールに還元される。この生成物は塩化オキサリル、続いてトリエチルアミンと−60℃で反応し、対応するラセミアルデヒドを生じる。ラセミアルデヒドは次いで(R,S)、(S,R)、(R,R)及び(S,S)立体異性体の混合物としてのエポキシドに変換される。
【0015】
該エポキシド誘導体はこの製法における重要な中間体である。
【0016】
特許文献2は主に前記特許文献に報告される合成製法と同様の製法を開示し、特にNBVの単一光学異性体(R,S,S,S)及び(S,R,R,R)の調製に関する。
【0017】
この場合、6−フルオロクロマンカルボン酸は、(+)−デヒドロアビエチルアミンで処理することにより個々の単一エナンチオマーに分割される。これら個々のエナンチオマーは、それぞれ対応するエポキシドに変換され、2種のジアステレオ異性体の混合物を生じる。次の合成スキームは、例えばS酸誘導体の変換を示す。
【0018】
【化5】

【0019】
しかしながら、前述の合成法は両者共に、製法の工業的な適用に関する幾つかの問題点を抱える。
【0020】
特に、クロマン酸又はそのエステル誘導体のエポキシド核への変換は、対応する6−フルオロクロマンアルデヒドの生成を伴う。
【0021】
このアルデヒドは通常、製造プラントにおいて特別な装置を必要とする条件下で、非常に低い温度(−60℃)で生成する。
【0022】
この中間体は、化学的に不安定であるという重大な問題があることが当業界において知られている。更にこの不安定に起因して合成レベルにおいて望ましくない分解副生成物を生じさせることがわかっている。
【0023】
国際特許出願の特許文献3によれば、蒸留によって得られるこのアルデヒド生成物は、分解する問題があるため、室温で一晩放置した後は合成製法に使用できない。
【0024】
更にこのラセミアルデヒドは油状であり、取り扱いが難しく非常に重合しやすい。
【0025】
また、前記製法を用いて得たクロマンエポキシドの6−フルオロクロマンカルボン酸基質に基づく収率は非常に低い。
【0026】
l−NBV、d−NBVの立体選択的調製方法及び他の幾つかの代替的全合成方法が文献に記載されている。例えば、特許文献4、特許文献5及び特許文献6を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】欧州特許第145067号
【特許文献2】欧州特許第334429号
【特許文献3】WO2004/041805号
【特許文献4】WO2004/041805号
【特許文献5】WO2006/016376号
【特許文献6】WO2006/025070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、NBV調製における6−フルオロクロマンエポキシド化合物の重要な役割は公知であり、ラセミ又はその単一立体異性体である式(I)で表される中間体の調製の代替法であって、高収率且つ製造工業適用の観点からより好ましい条件下で該中間体を調製することができる代替法の研究が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者らは驚くべきことに、従来技術に記載された製法の問題点を克服する、ネビボロール調製の重要な中間体である6−フルオロ−クロマンエポキシドの改良された合成法を見出した。
【0030】
従って、本発明の第一の目的は、次式:
【0031】
【化6】

【0032】
で表される化合物を調製法であって、
a.次式:
【0033】
【化7】

【0034】
(式中、Rは(C1〜C6)−アルキル基、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)で表される化合物の、次式:
【0035】
【化8】

【0036】
(式中、Xはハロゲンである)で表される化合物への変換と;
b.式(II)で表される化合物の還元による次式:
【0037】
【化9】

【0038】
で表される化合物を得ることと;
c.式(III)で表される前記化合物と塩基との反応により式(I)で表されるエポキシド化合物を得ることと、を含む製法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
式(II)で表される化合物を還元して式(III)で表される化合物を得る段階(段階b)は、公知の技法に従って行う。
【0040】
一般にケトン基の還元は、例えば水素化ホウ素ナトリウムや、水素化アルミニウムリチウム又はその誘導体(例えばジメシチル水素化ホウ素ビス−ジメトキシメタンリチウム等)等の還元剤を用いて、アルコール系若しくはエーテル系溶媒中で行われる。ボランやホウ酸塩等の還元剤がクロロケトンの還元に有用である。
【0041】
ケトン基の還元はアルコール等の溶媒中やそれらの水との混液中等での接触水素化によって行うこともできる。接触水素化は接触移動水素化(CTH:catalyzed transfer hydrogenations)条件下(即ち、その場でギ酸アンモニウムやギ酸、シクロヘキサジエン等の適切な基質から水素を発生させることによる)により行うこともできる。この変換のために好ましい均一触媒はロジウム、ルテニウム、イリジウム及びパラジウムの各錯体である。
【0042】
反応は好ましくは、式(II)で表される化合物を、水と混合されていてもよいアルコール溶媒の存在下で、水素化ホウ素ナトリウムと反応させることにより行う。好ましい溶媒はエタノールである。
【0043】
式(I)で表される化合物を得るための、式(III)で表される化合物の反応(段階c)は、公知の技法に従って塩基の存在下で行われる。
【0044】
エポキシド核の生成に適切な塩基は、例えばアルカリ水酸化物、アルカリアルコキシドやアミンであり、好ましくはアルカリ水酸化物又はアルカリアルコキシドである。エポキシド核の生成に適切な溶媒は、例えばアルコール、エーテル又はそれらの水性混液である。
【0045】
エポキシ化は好ましくは、混合物であってもよいアルコール溶媒若しくはエーテルの存在下で、式(III)で表される化合物をアルカリアルコキシド又はアルカリ水酸化物と反応させて行う。
【0046】
本発明の好適な実施形態にいては、反応はイソプロパノール/THF混液の存在下でカリウムt−ブトキシド等の塩基を用いて行われる。
【0047】
或いは、反応はイソプロパノール存在下で水酸化ナトリウム等の塩基を用いて行われる。
【0048】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記方法のうちの一方法に従ったクロロケトンのクロロヒドリンへの還元と、還元混合物への適切な塩基の添加によるワンポットエポキシ化が行われる。
【0049】
本発明において、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を意味する。
【0050】
Xは好ましくは塩素原子である。
【0051】
本発明において、Rは(C1〜C6)−アルキル基又は置換されていてもよいフェニルであることが好ましい。
【0052】
カルボン酸又はその誘導体(特にエステル)を対応するα−ハロケトンに変換するための当該技術分野で知られている手順の幾つかをクロマン核に用いることにより、式(II)で表される化合物2−ハロ−クロマン−エタノンが調製される。
【0053】
式(IV)で表される化合物類はNBV調製における公知の中間体であり、その調製は当該技術分野において詳述されている(例えば前記引用の特許文献1を参照)。
【0054】
式(IV)で表される化合物の式(II)で表される化合物への変換(段階a)は、当業者に知られた手順に従って、例えばジアゾ化合物経由、カルベノイド中間体経由、クライゼン縮合経由又はスルホキソニウムイリド経由で行うことができる。
【0055】
一般に、前記変換は式(IV)で表される化合物をスルホキソニウムイリド例えばジメチルスルホキソニウムメチリドと反応させ、対応するケトスルホキソニウムイリドを生成することにより行われ、ケトスルホキソニウムイリドはその場で発生させてもよい無水ハロゲン化水素酸と反応させることにより、式(II)で表されるα−ハロケトンに変換される。
【0056】
前記スルホキソニウムイリドは好ましくは、対応するスルホキソニウム塩を、例えばテトラヒドロフランやトルエン、DMF等の有機溶媒存在下で、例えば水素化ナトリウムやカリウムt−ブトキシド、カリウムt−アミレート等の適切な塩基と反応させることにより調製される。
【0057】
好ましくは、式(IV)で表される化合物は、ジメチルスルホキソニウムメチリド(THF存在下でヨウ化トリメチルスルホキソニウムとカリウムt−ブトキシドからその場で調製される)と反応させて次式:
【0058】
【化10】

【0059】
で表される対応するケトスルホキソニウムイリドを得、これを式(II)(式中、Xは、THF存在下で塩化リチウムをメタンスルホン酸と反応させることによりその場で発生させた無水塩酸との反応により導入された塩素原子である)で表される化合物に変換する。
【0060】
多くの場合、エステルをα−ハロケトンに変換する方法はエステル基に関してα位の不斉中心を有する基質に対して立体保存的である。
【0061】
従って、本発明に係る製法をクロマン酸核や分割エステル等のエナンチオ純粋な基質に適用すると、2種のジアステレオ異性体の混合物を含むラセミ体においてエポキシド誘導体がどのように生成されるかは、当業者には明らかであろう。
【0062】
【化11】

【0063】
知られているように、前記部分的に分割されたエポキシド誘導体は、NBV調製において重要な中間体である。
【0064】
本発明の更なる他の目的は、次式:
【0065】
【化12】

【0066】
(式中、Xはハロゲンである)で表される化合物の調製のための製法であって、次式:
【0067】
【化13】

【0068】
(式中、Rは(C1〜C6)−アルキル基、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)で表される化合物をジメチルスルホキソニウムメチリドと反応させて、次式:
【0069】
【化14】

【0070】
で表される対応するケトスルホキソニウムイリドを得、次いでこれをその場で発生させてもよい無水ハロゲン化水素酸と反応させることにより、式(II)で表される化合物に変換することを含む製法を提供することである。
【0071】
本発明の更に他の目的はネビボロール合成のための製法に係り、次式:
【0072】
【化15】

【0073】
で表される化合物の調製が、
a.次式:
【0074】
【化16】

【0075】
(式中、Rは(C1〜C6)−アルキル基、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)で表される化合物の、次式:
【0076】
【化17】

【0077】
(式中、Xはハロゲンである)
で表される化合物への変換と;
b.式(II)で表される化合物を還元することにより次式:
【0078】
【化18】

【0079】
で表される化合物を得ることと;
c.式(III)で表される該化合物を塩基と反応させることにより式(I)で表されるエポキシド化合物を得ることと、を含むという事実に特徴づけられる製法を提供することである。
【0080】
本発明に係る製法は市場で容易に入手できる基質を使用するため、カルボニルジイミダゾールや、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)等の高価な還元剤の使用は避けられる。
【0081】
しかし、本発明の製法に関連する最も重要な発明の特徴は、疑いなく、クロマンアルデヒド生成への経路を迂回する機会を得ることである。実際に、当技術分野で開示されている製法における最大の問題点の一つは、該アルデヒド中間体の複雑な調製と取扱いにあることが知られている。
【0082】
従って、本発明に係る方法が、クロマンエポキシド類の調製における効率的で経済的な代替合成法をどの様に構成するかは明らかである。更に、使用される原料の入手容易性と共にステップ数の減った合成段階と高い収率は、製造コストと効率の点に顕著な利点を与える。
【0083】
本発明の更に他の目的は、式(V)で表される、ネビボロール調製において有用な中間体としてのジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリドを提供することである。
【0084】
本発明に係る製法の実用的な実施形態は、スルホキソニウムイリドを経由する、式(IV)で表される6−フルオロクロマンカルボン酸の式(II)で表されるα−ハロケトンへの変換と、前記式(II)で表されるα−ハロケトンの式(III)で表されるハロヒドリンへの還元及び塩基存在下式(I)で表されるエポキシド誘導体への環化とを含む。
【0085】
本発明に係る製法の実用的で好適な実施形態は、式(IV)で表される6−フルオロクロマンカルボン酸塩をジメチルスルホキソニウムメチリド(その場で調製されていてもよい)と反応させることにより、式(II)で表される対応するα−ハロケトンに変換して、式(V)で表される対応するケトスルホキソニウムイリドを得、これを次にまたその場で生成してもよい無水塩酸と反応させることと;式(II)で表される該α−クロロケトンのアルコール溶媒存在下における水素化ホウ素ナトリウムとの反応による、式(III)で表されるクロロヒドリンへの還元及び混合物であってもよいアルコール溶媒若しくはエーテルの存在下でのアルカリアルコキシド又はアルカリ水酸化物と反応させることにより式(I)で表されるエポキシド誘導体へ環化することと、を含む。
【0086】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0087】
6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸メチルの合成
6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸(10.0 g、51.0mmol、96.8A%)を窒素下20℃でMeOH(50mL)に溶解した。溶液に攪拌下、H2SO4(0.51g、5.0mmol、96.0%)を添加し、混合液を15分間かけて60℃に加熱した。60℃で3時間攪拌した後、反応液を15分間かけて25℃に冷却し、真空下で半量(25mL)に濃縮した。残渣に5%NaHCO3水溶液(50mL)、続いて酢酸エチル(100mL)を加えた。層を分離し、有機相をNa2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸メチルを黄白色の油状物で得た(9.41g、収率87.9%、96.8A%)。
【0088】
δH(400 MHz; CDCl3) 6.89-6.79 (2H, m, Ar), 6.77-6.76-6.72 (1H, m, Ar), 4.73-4.69 (1H, m), 3.79 (3H, s), 2.87-2.69 (2H, m), 2.31-2.12 (2H, m).
【実施例2】
【0089】
ジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリドの合成
ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(3.30g、15.0mmol)とTHF(10mL)の懸濁液に、1.0Mカリウムtert−ブトキシドTHF溶液(15mL、15.0mmol)を25℃窒素下10分間で可視光を遮断して加えた。懸濁液を70℃で2時間加熱した後、反応液を20℃に冷却した。反応容器に6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸メチル(1.05g、4.14mmol、82.9A%)のTHF(2mL)溶液を、インジェクションポンプを用いて30分間かけて加えた。添加終了時にシリンジを更にTHF(1mL)で洗浄した。20℃で3時間攪拌した後、脱塩水(demi water)(10mL)を反応液に加え、更に16時間攪拌しつつ維持した。その後反応液を脱塩水(10mL)で希釈し、25〜30℃減圧下で揮発性物質を除去した。残渣に脱塩水(10mL)と酢酸エチル(20mL)とを加え、層を分離した。水層を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した後、有機層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、未精製のサルファイリドを黄白色の固体で得た(1.10g、収率96%、97.9A%)。
【0090】
δH (400 MHz; CDC13) 6.83-6.79 (2H, m, Ar), 6.77-6.72 (1H, m, Ar), 4.92 (1H, bs), 4.45-4.39 (1H, m), 3.48 (6H, bs), 2.85-2.68 (2H, m), 2.29-2.21 (1H, m), 2.10-1.99 (1H, m); m/z (EI) 270.072598 (M+. C13H15FO3S requires 270.07252).
bs = broad singlet.
【実施例3】
【0091】
6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸4−ニトロフェニルの合成
50mLの丸底フラスコに、窒素雰囲気下室温で6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸(10.0g、51.0mmol)、塩化オキサリル(9.71g、76.5mmol)及びジクロロメタン(24.9g)を投入した。混合液を室温で17時間攪拌し、30℃の真空中で濃縮した。残渣をトルエン(75mL)に溶解し、室温で攪拌した。反応液に4−ニトロフェノール(7.05g、51.02mmol)、続いてピリジン(5mL)を5分間かけて加えた。スラリーを80℃に加熱し、同温で3時間攪拌し、その後25℃に冷却した。濾過により固体を分離し、濾液を2M水酸化ナトリウム水(65g)、飽和重曹溶液(2×51g)及び脱塩水(53g)で洗浄した。有機相を分離し、真空中で濃縮し、共沸蒸留により乾燥し、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸4−ニトロフェニルをガラス様の油状物で得た(7.71g、収率40.5%、85.0A%)。
【0092】
δH (400 MHz; CDCl3) 8.31-8.26 (2H, m, Ar), 7.33-7.28 (2H, m, Ar), 6.94-6.76 (3H, m, Ar), 5.02-4.98 (1H, m), 2.98-2.81 (2H, m), 2.49-2.31 (2H, m); m/z (EI) 317.0698 (M+. C16H12NO5F requires 317.069954).
【実施例4】
【0093】
ジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリドの合成
100mLの反応容器に、カリウムt−ブトキシド(2.12g、18.91mmol)、ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(4.16g、18.91mmol)及びTHF(30mL)を25℃窒素雰囲気下で投入した。アルミ箔を用いてスラリーを遮光し、70℃に加熱し、同温で2時間に亘り攪拌した。混合液を20℃に冷却した。別個に調製した6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸4−ニトロフェニル(2.0g、6.03mmol)のTHF(3mL)溶液を、1時間かけてシリンジポンプで反応液に添加した。スラリーを更に18時間攪拌した後、脱塩水(14mL)で急冷した。混合液に酢酸エチル(40mL)を加え、更に脱塩水(15mL)で希釈した。スラリーを濾過し、懸濁している固体と濾液層とを分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(51g)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、粗ジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリドをガラス様の油状物で得た(0.81g、収率48%)。
【0094】
δH (400 MHz; CDCl3) 6.83-6.79 (2H, m, Ar), 6.77-6.72 (1H, m, Ar), 4.92 (1H, bs), 4.45-4.39 (1H, m), 3.48 (6H, bs), 2.85-2.68 (2H, m), 2.29-2.21 (1H, m), 2.10-1.99 (1H, m); m/z (EI) 270.072598 (M+. C13H15FO3S requires 270.07252).
【実施例5】
【0095】
ジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリドの合成
100mLの反応容器にカリウムt−ブトキシド(2.12g、18.91mmol)、塩化トリメチルスルホキソニウム(2.43g、18.91mmol)及びTHF(30mL)を25℃窒素雰囲気下で投入した。アルミ箔を用いてスラリーを遮光し、70℃に加熱し、同温で2時間攪拌した。混合液を20℃に冷却した。別個に調製した6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−カルボン酸4−ニトロフェニル(2.0g、6.03mmol)のTHF(3mL)溶液を反応液に1時間かけて添加した。スラリーを更に18時間攪拌し、脱塩水(14mL)で急冷した。酢酸エチル(25mL)を加え、層を分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し(各回それぞれ29g、30g、7g)、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、粗ジメチルスルホキソニウム−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−1−オキソエチリドをガラス様の油状物で得た(0.89g、収率52%)。
【0096】
δH (400 MHz; CDCl3) 6.83-6.79 (2H, m, Ar), 6.77-6.72 (1H, m, Ar), 4.92 (1H, bs), 4.45-4.39 (1H, m), 3.48 (6H, bs), 2.85-2.68 (2H, m), 2.29-2.21 (1H, m), 2.10-1.99 (1H, m); m/z (EI) 270.072598 (M+. C13H15FO3S requires 270.07252).
【実施例6】
【0097】
2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノンの合成
ジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリド(0.90g、3.26mmol、97.9A%)のTHF(12mL)溶液を機械攪拌しつつ窒素下0℃に冷却し、そこに塩化リチウム(0.179g、4.22mmol)を添加した。その後メタンスルホン酸(0.267mL、4.03mmol)を0℃10分間で滴下した。反応液を10分間かけて20℃に加熱し、その後30分間で70℃に加熱した。反応液を70℃2時間で攪拌しつつ維持し、その後20℃に冷却した。16時間後、飽和NaHCO3水溶液(10mL)を加え、層を分離した。有機相をトルエン(20mL)で希釈し、減圧下濃縮し、乾燥残渣(0.78g)を得た。残渣を再度トルエンに溶解し、飽和NaHCO3溶液(20mL)で洗浄した。有機相を更に脱塩水(20mL)と食塩水(20mL)で洗浄し、その後真空下で乾燥し、未精製の2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノンを褐色の油状物で得た(0.66g、収率78%、88.4A%)。
【0098】
δH(400 MHz; CDCl3) 6.86-6.83 (2H, m, Ar), 6.80-6.75 (1H, m, Ar), 4.69-4.65 (1H, m), 4.63 (1H, d, J 16.8), 4.47 (1H, d, J 16.8), 2.91-2.72 (2H, m), 2.34-2.26 (1H, m), 2.13-2.03 (1H, m); m/z (EI) 228.035339 (M+. C11HI0CIFO2 requires 228.03551).
【実施例7】
【0099】
2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノールの合成
2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノン(0.33g、1.28mmol、88.4A%)のエタノール(2.5mL)溶液を攪拌しつつ窒素下0℃に冷却した。溶液にNaBH4(60.1mg、1.59mmol)を添加し、反応液を2時間攪拌した。GCで出発材料の消失を確認した後、混合液を脱塩水(7mL)とジクロロメタン(7mL)とで希釈し、層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、未精製の2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノールをジアステレオ異性体54:46の混合物で得た(0.30g、収率70%、67.9A%)。
【0100】
δH (400 MHz; CDCl3) 6.83-6.70 (6H, m, Ar), 4.21-4.16 (1H, m), 4.02-3.96 (1H, m), 3.94-3.88 (3H, m), 3.86-3.77 (2H, m), 3.74-3.68 (1H, m), 2.97-2.74 (4H, m), 2.30- 2.21 (2H, b, -OH), 2.29-2.22 (1H, m), 2.02-1.96 (2H, m), 1.89-1.78 (1H, m); m/z (EI) 230.050989 (M+. C11H12ClFO2 requires 230.05067).
【実施例8】
【0101】
6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−(オキシラン−2−イル)−2H−クロメンの合成
2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノール(200mg、0.59 mmol、67.9A%)をi−PrOH(5mL)とTHF(1mL)に窒素下で溶解し、反応液を16℃に冷却した。t−BuOK(102mg、0.87mmol)を添加し、混合液を3時間攪拌した。酢酸でpHを7に調整し、混合液を減圧下で乾燥した。残渣をMTBE(12mL)で希釈し、飽和NaHCO3溶液(3×1.5mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−(オキシラン−2−イル)−2H−クロメンをジアステレオ異性体54:46の混合物で得た(148mg、収率100%、77.3A%)。
【0102】
Diast. RR,SS: δH (400 MHz; CDCl3) 6.81-6.72 (3H, m), 3.88-3.82 (1H, m), 3.21-3.17 (1H, m), 2.89-2.76 (4H, m), 2.1-2.00 (1H, m), 1.97-1.87 (1H, m); Diast. SR,SR: δH(400 MHz; CDCl3) 6.84-6.73 (3H, m), 3.87-3.81 (1H, m), 3.15-3.10 (1H, m), 2.91- 2.78 (4H, m), 2.18-2.10 (1H, m), 1.96-1.84 (1H, m).
【実施例9】
【0103】
6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−(オキシラン−2−イル)−2H−クロメンの合成
2−クロロ−1−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)エタノール(2.5g、9.20mmol、84.9A%)をi−PrOH(25mL)に窒素下で溶解し、反応液を0℃に冷却した。溶液に2M NaOH水溶液(12.5mL)を5分間かけて添加し、反応液を1.5時間攪拌した。その後反応液をトルエン(50mL)で希釈し、酢酸(0.92g)でpHを調整した。混合液に更にトルエン(50mL)と脱塩水(10mL)とを加え、抽出した後、相を分離した。有機相を集め、脱塩水(50mL)で洗浄した。続いてトルエン相を共沸蒸留により脱水し、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2−(オキシラン−2−イル)−2H−クロメンをジアステレオ異性体52:48の混合物で得た(2.0g、収率96%、86.1A%)。
【0104】
Diast. RR,SS: δH (400 MHz; CDCl3) 6.81-6.72 (3H, m), 3.88-3.82 (1H, m), 3.21-3.17 (1H, m), 2.89-2.76 (4H, m), 2.1-2.00 (1H, m), 1.97-1.87 (1H, m); Diast. SR,SR: δH (400 MHz; CDCl3) 6.84-6.73 (3H, m), 3.87-3.81 (1H, m), 3.15-3.10 (1H, m), 2.91- 2.78 (4H, m), 2.18-2.10 (1H, m), 1.96-1.84 (1H, m).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】

で表される化合物の調製法であって、
a.次式:
【化2】

(式中、Rは(C1〜C6)−アルキル基、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)で表される化合物の、次式:
【化3】

(式中、Xはハロゲンである)で表される化合物への変換と;
b.式(II)で表される化合物の還元による次式:
【化4】

で表される化合物を得ることと;
c.式(III)で表される該化合物と塩基との反応により式(I)で表されるエポキシド化合物を得ることと、を含む調製法。
【請求項2】
還元は、式(II)で表される化合物を、水と混合されていてもよいアルコール溶媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウムと反応させることにより行う、請求項1に記載の製法。
【請求項3】
エポキシ化は、式(III)で表される化合物を、混合物であってもよいアルコール溶媒又はエーテルの存在下で、アルカリアルコキシド又はアルカリ水酸化物と反応させることにより行う、請求項1に記載の製法。
【請求項4】
前記変換は、式(IV)で表される化合物をジメチルスルホキソニウムメチリドと反応させ次式:
【化5】

で表される対応するケトスルホキソニウムイリドを得、このイリドはその場で発生させてもよい無水ハロゲン化水素酸と反応させることにより、式(II)で表される化合物に変換される、請求項1に記載の製法。
【請求項5】
前記ジメチルスルホキソニウムメチリドは、対応するスルホキソニウムハライドを有機溶媒の存在下で塩基と反応させることによりその場で調製する、請求項4に記載の製法。
【請求項6】
前記無水ハロゲン化水素酸は、THFの存在下で塩化リチウムをメタンスルホン酸と反応させることによりその場で発生させた無水塩酸である、請求項4に記載の製法。
【請求項7】
次式:
【化6】

(式中、Xはハロゲンである)で表される化合物の調製のための製法であって、次式:
【化7】

(式中、Rは(C1〜C6)−アルキル基、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)で表される化合物をジメチルスルホキソニウムメチリドと反応させて、次式:
【化8】

で表される対応するケトスルホキソニウムイリドを得、このイリドをその場で発生させてもよい無水ハロゲン化水素酸と反応させることにより、式(II)で表される化合物に変換することを含む製法。
【請求項8】
ネビボロール合成のための製法であって、次式:
【化9】

で表される化合物の調製が、
a.次式:
【化10】

(式中、Rは(C1〜C6)−アルキル基、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいヘテロアリールである)で表される化合物の、次式:
【化11】

(式中、Xはハロゲンである)で表される化合物への変換と;
b.式(II)で表される化合物を還元することにより次式:
【化12】

で表される化合物を得ることと;
c.式(III)で表される該化合物を塩基と反応させることにより式(I)で表されるエポキシド化合物を得ることと、を含む製法。
【請求項9】
Xは塩素原子である、請求項1〜8の何れか一項に記載の製法。
【請求項10】
ジメチルスルホキソニウム−2−(6−フルオロ−3,4−ジヒドロ−2H−クロメン−2−イル)−2−オキソエチリドである化合物。

【公表番号】特表2010−505779(P2010−505779A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530793(P2009−530793)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008549
【国際公開番号】WO2008/040528
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(307041023)
【氏名又は名称原語表記】ZaCh System S.p.A.
【Fターム(参考)】