説明

ネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパント

【課題】安価な化合物を含むキラルドーパントを用いて少量で液晶分子のねじれコンフォメーションの不斉増幅を生じさせ、大きなねじれ力を誘起しうるキラルドーパントを提供する。
【解決手段】特定の一般式(1)で表される化合物を含むネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパント、ならびにこれを配合してなる液晶組成物。本発明のキラルドーパントによれば、液晶として4’−ヘキシルオキシ−4−シアノビフェニルを含む測定系において、好適にはねじれ力60/μm以上が達成され得る。キラルドーパントの配合量は液晶とキラルドーパントの合計量に対し、0.001〜30モル%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパントおよび液晶組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光の波長程度をらせん周期を持つコレステリックフィルムは、その光反射特性を利用して、偏光板、光位相差板、反射防止膜等の光学部材、染料、顔料等に代わる構造色材、光導波路もしくはレーザ発振のためのホトニクスクリスタル材、等の幅広い分野で利用されようとしている。これらの素材の調製で最も重要な課題は、導入すべきキラルドーパントの種類、構造が限られ、その不斉によるキラリティ効果もそれほど大きくなく、多量のキラルドーパントの導入が必要であり、かつ非常に高価であるために、フィルムの価格を高くしてしまうことである。さらに、多量のキラルドーパントの使用はホスト液晶分子の性質を損なうという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のようなキラルドーパントの難点を克服し、安価な化合物を含むキラルドーパントを用いて少量で液晶分子のねじれコンフォメーションの不斉増幅を生じさせ、大きなねじれ力を誘起しうるキラルドーパントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するために以下の発明を提供する。
【0005】
(1)一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(ここで、Arは置換されていてもよい芳香族基、R、RはCが不斉炭素を形成するための置換基、R
【0008】
【化2】

【0009】
、ならびにRはX−B−A−、を示す。Aは置換されていてもよい芳香族基、Bは平面共役基であり、Xは置換されていてもよい芳香族基を含む残基である。)
で表される化合物を含むネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパント;
(2)液晶として4’−ヘキシルオキシ−4−シアノビフェニルを含む測定系において、1/pc(p=ピッチ(μm)、c=ドーパントのモル分率)で示されるねじれ力が60/μm以上である上記(1)記載のキラルドーパント;
(3)Arがナフチル基、RおよびRが互いに相異なるアルキル基もしくは水素原子である上記(1)もしくは(2)記載のキラルドーパント;
(4)Xが不斉炭素を含む上記(1)〜(3)のいずれか記載のキラルドーパント;
(5)ネマチックもしくはコレステリック液晶に上記(1)〜(4)のいずれか記載のキラルドーパントを配合してなる液晶組成物;
(6)ネマチックもしくはコレステリック液晶がキラルドーパントと非反応性である上記(5)記載の液晶組成物;
(7)ネマチックもしくはコレステリック液晶がビフェニル系化合物である上記(5)もしくは(6)記載の液晶組成物;
(8)ネマチックもしくはコレステリック液晶が室温で液晶性を示す上記(5)〜(7)のいずれか記載の液晶組成物;
(9)キラルドーパントの配合量がネマチックもしくはコレステリック液晶とキラルドーパントの合計量に対し、0.001〜30モル%である上記(5)〜(8)のいずれかに記載の液晶組成物;
(10)4−オクチルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル;
(11)4−オクチル−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル;
(12)4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボン酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル;
(13)4−ドデシルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル;
(14)ビフェニル−4−カルボン酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル;
(15)4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル;
(16)テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル;
(17)ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル;
(18)安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル、ならびに
(19)4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸 4−オクチルオキシ−フェニルエステル、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価な化合物を含むキラルドーパントを用いて少量で液晶分子のねじれコンフォメーションの不斉増幅を生じさせ、大きなねじれ力を誘起しうるキラルドーパントを提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のキラルドーパントは、一般式(1)
【0012】
【化3】

【0013】
で表される化合物を含むネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパントであり、Arは置換されていてもよい芳香族基、R、RはCが不斉炭素を形成するための置換基、R
【0014】
【化4】

【0015】
、ならびにRはX−B−A−、を示す。ここで、Aは置換されていてもよい芳香族基、Bは平面共役基であり、Xは置換されていてもよい芳香族基を含む残基である。
【0016】
Ar,AおよびXにおける置換されていてもよい芳香族基は、フェニル基等のベンゼン環、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、等の縮合環、および複素芳香環の残基、ならびにこれらの置換体を含む。すなわち芳香族基としては、たとえば
【0017】
【化5】

【0018】
等が挙げられる。
【0019】
、RはCが不斉炭素を形成するための置換基であれば特に制限されないが、RおよびRは互いに相異なるアルキル基もしくは水素原子であるのが好適であり、アルキル基としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル基等が挙げられる。さらにRおよびRは互いに相異なるかぎり、たとえばF,Cl,Br、CF,CCl等のハロゲン含有基、等も好適に使用されうる。
【0020】
Bにおける平面共役基としては、
【0021】
【化6】

【0022】
等が好適である。
【0023】
また、Xにおける芳香族基を含む残基としては、その芳香族基のBとの結合部位に対してパラ位がさらに芳香族を含む残基に結合されているものも好適に使用されうる。たとえばAr〜Bの部位を含む2量体構造を有していてもよい。
【0024】
本発明のキラルドーパントにおける好適な例は、たとえばArがナフチル基、RおよびRが互いに相異なるアルキル基もしくは水素原子である。
【0025】
本発明のキラルドーパントは、液晶として4’−ヘキシルオキシ−4−シアノビフェニルを含む測定系において、1/pc(p=ピッチ(μm)、c=ドーパントのモル分率)で示されるねじれ力(キラル化合物のらせん誘起力の大きさを示す)が60/μm以上であるのが好適であり、さらに好ましくは80/μm以上、もっと好ましくは100/μm以上である。
【0026】
本発明の好適なキラルドーパントを例示すると、次のとおりである。
【0027】
R−(+)−4−オクチルオキシ−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【0028】
R−(+)−4−オクチル−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【0029】
R−(+)−4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボン酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【0030】
R−(+)−4−ドデシルオキシ−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【0031】
R−(+)−ビフェニル−4−カルボン酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【0032】
R−(+)−4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【0033】
R−(+)−テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル。
【0034】
R−(+)−ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル。
【0035】
本発明の好適なキラルドーパントは上記の例に限定されず、さらに異性体であるS−(−)−体も含みうる。
【0036】
このような本発明のキラルドーパントは、ネマチックもしくはコレステリック液晶に配合され液晶組成物を形成しうる。その系全体はコレステリック液晶相を示す。ネマチックもしくはコレステリック液晶は特に制限されないが、ネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパントと非反応性であるのが好適であり、さらに実用上の観点から室温で液晶性を示すものが好適である。具体的には、4’−アルコキシ−4−シアノビフェニル、4’−アルキル−4−シアノビフェニル等のビフェニル化合物、4−(トランス−4’−アルキルシクロヘキシル)ベンゾニトリル等のフェニルシクロヘキサン化合物、トランス−トランス−4−アルキルビシクロヘキシル−4−カルボニトリル等のビシクロへキサン化合物、等が好適に使用される。
【0037】
本発明のキラルドーパントの配合量は、ネマチックもしくはコレステリック液晶とキラルドーパントの合計量に対し、0.001〜30モル%、好ましくは0.01〜15モル%である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例中、コレステリック液晶の偏光顕微鏡によるらせんピッチ観察は次の方法による。
実施例1
(1)表1に示す化合物1〜16の合成
化合物1:R−(+)−(1−ナフタレン−1−イル−エチル)−(4−オクチルオキシ −ベンジリデン)−アミン
化合物2:R−(+)−4−オクチルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1− イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物3:安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] 4 −[[4−[1−オクチルオキシ]フェノキシ]カルボニル]フェニルエステル
化合物4:R−(+)−4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸 4−オクチルオキシ−フェニルエステル
化合物5:R−(+)−4−オクチル−安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エ チルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物6:R−(+)−4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボン酸4−[(1 −ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物7:R−(+)−(4−エトキシ−ベンジリデン)−(1−ナフタレン−1−イル −エチル)−アミン
化合物8:R−(+)−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ) −メチル]−フェニルエステル
化合物9:R−(+)−4−ブトキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル− エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物10:R−(+)−4−ヘキシルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1 −イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物11:R−(+)−4−ドデシルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1 −イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物12:R−(+)−ビフェニル−4−カルボン酸4−[(1−ナフタレン−1−イ ル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル
化合物13:R−(+)−(1−ナフタレン−1−イル−エチル) −{4−[(1−ナフ タレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−ベンジリデン}−アミン
化合物14:R−(+)−4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]− フェニルエステル
化合物15:R−(+)−テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エ チルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル
化合物16:R−(+)−ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス−{4−[(1−ナ フタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル
【0040】
【表1】

【0041】
(a)化合物1および7の合成
4−オクチルオキシベンズアルデヒドもしくは4−エトキシベンズアルデヒド22.0mmolおよびR-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミン20.0mmolを、クロロホルム100mLおよびエタノール50mLの混合溶媒中に均一に溶解し、60℃で5時間、還流した。室温に冷却した後、エタノール80mLを添加したところ、固体が析出した。析出した固体をエタノールから再結晶化し、40〜78%の収率で白色もしくは淡黄色の結晶の目的化合物を得た。
【0042】
(b)化合物2、5、6、8〜12の合成
対応する安息香酸10.0mmolおよび4−ヒドロキシベンズアルデヒド10.0mmolをクロロホルム80mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDCI)(東京化成製)11.0mmolおよび触媒量のN,N’−ジメチルアミノピリジンを添加した。室温で一晩、攪拌した後、エタノールを添加したところ、橙色もしくは暗黄色の固体が析出した。析出した固体をエタノールから再結晶し、55〜80%の収率で中間体であるエステル化合物を得た。
【0043】
(a)と同様の方法で、このエステル化合物11.0mmolおよびR−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン10.0mmolより、40〜65%の収率で目的化合物を得た。
【0044】
(c)化合物4の合成
(b)と同様の方法で、4−オクチルオキシ安息香酸20.0mmolおよび4−ホルミルベンズアルデヒド20mmolから目的化合物を得た。エステル化合物の収率は74%、エステル化合物からの収率は60%であった。
【0045】
(d)化合物3の合成
3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)40mmolを氷冷条件下でジオキサン50mLおよびメタノール50mLの混合溶液に溶解し、この溶液に4−ヒドロキシ安息香酸メチル30.0mmolおよび触媒量のショウノウスルホン酸(CSA)を溶解した。3時間攪拌した後に、反応溶液を氷水に注ぎ、塩酸で中和した。析出した固体をカラムクロマトグラフィ(溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製したところ、透明な油状化合物が収率80%で得られた。得られた油状化合物を1,4−ジオキサン60mLおよびメタノール30mLの混合溶液に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(64mmol/60mL)を添加した。一晩攪拌した後、塩酸で中和したところ、白色の粗結晶が得られた。ヘキサン、酢酸エチルで再結晶したところ中間体の安息香酸が収率30%で得られた。(b)と同様の方法で、この安息香酸20.0mmolおよび4−ヒドロキシベンズアルデヒドから目的化合物を得た。エステル化合物の収率は60%、エステル化合物からの収率は71%であった。
【0046】
(e)化合物13〜16の合成
上記の(a)もしくは(b)と同様な方法により化合物13〜16を得た。
【0047】
化合物13:(a)法、ただしアルデヒド1当量に対してアミン2当量を用いた。
【0048】
化合物14:(b)法を用いた。
【0049】
化合物15および16:(b)法、ただしカルボン酸1当量に対して4−ヒドロキシアルデヒド2当量を用い、アルデヒド1当量に対してアミン2当量を用いた。
【0050】
(2)融点およびH−NMRスペクトル
上記のように合成された化合物1〜16について、融点およびH−NMRスペクトル(溶媒:CDCl)の測定結果は次のとおりであった。
化合物1(融点 89℃)
化合物2(融点 80℃)
δ1.76(d,3)、δ4.04−4.06(t,2)、δ5.36−5.38(q,1)、δ6.96−6.98、7.49−8.24(m,13)、δ8.43(s,1)
化合物3(融点 154℃)
δ1.79(d,3)、δ3.97(t,2)、δ5.4−5.5(m,1)、δ6.92−7.13、7.37−8.30(m,18)、δ8.51(s,1)
化合物4(融点 120℃)
δ3.96(t,2)、δ5.41(q,1)、δ6.92−7.13、7.50−8.24(m,15)、δ8.50(s,1)
化合物5(融点 79℃)
δ1.74−1.76(d,3)、δ5.36−5.38(q,1)、δ7.26−8.12(m,12)、δ8.43(s,1)
化合物6(融点 144℃)
δ1.75(d,3)、δ4.02(t,2)、δ5.38−5.39(q,1)、δ7.00−8.25(m,19)、δ8.45(s,1)
化合物7(融点 72℃)
δ1.72(d,3)、δ4.04−4.07(q,2)、δ5.30−5.32(q,1)、δ6.90−6.92、7.47−7.80(m,11)、δ8.35(s,1)
化合物8(融点 126℃)
δ1.74−1.76(d,3)、δ5.37−5.38(q,1)、δ7.26−8.22(m,19)、δ8.44(s,1)
化合物9(融点 127℃)
δ1.74(d,3)、δ4.03−4.06(t,2)、δ5.36−5.38(q,1)、δ6.96−8.24(m,14)(δ7.26除く)、δ8.41(s,1)
化合物10(融点 128℃)
δ1.74(d,3)、δ4.04(t,2)、δ5.36(q,1)、δ6.96−6.98、7.49−8.14(m,15)、δ8.43(s,1)
化合物11(融点 134℃)
δ1.74(d,3)、δ4.03−4.04(t,2)、δ5.37−5.38(q,1)、δ6.96−6.98、7.49−8.15(m,15)、δ8.44(s,1)
化合物12(融点 130℃)
δ1.76(d,3)、δ5.37−5.39(q,1)、δ7.49−8.28(m,20)、δ8.44(s,1)
化合物13(融点 179℃)
δ1.74−1.77(d,6)、δ5.37−5.40(q,2)、δ7.49−7.87(m,18)、δ8.44(s,2)
化合物14(融点 169℃)
δ1.74−1.79(m,6)、δ5.39−5.44(m,2)、δ7.28−7.96(m,22)、δ8.45(s,1)、δ8.51(s,1)
化合物15(融点 172℃)
δ1.77(d,6)、δ5.37−5.42(q,2)、δ7.30−8.34(m,28)、δ8.45(s,2)
化合物16(融点 199℃)
δ1.75−1.77(d,6)、δ5.34−5.40(q,2)、δ7.30−8.33(m,30)、δ8.45(s,2)
【0051】
(3)試料調製およびねじれ力測定
表1に示したキラルドーパントと6−OCB(4’−ヘキシルオキシ−4−シアノビフェニル)ホスト液晶との混合物の調製方法を示す。たとえば化合物1を10mol%含有する混合物は次のようにして調製した。化合物1の10.0g/Lクロロホルム溶液0.68mLを、6−OCBホスト液晶0.100gと混合し、クロロホルムを蒸発させた。この粗混合物を微粉末に粉砕した。他の混合物も同様に調製した。
【0052】
試料の光学顕微鏡特性はホットステージ(Mettler EP 90 HT)を備えた顕微鏡(Olympus BX50)を用いて測定した。DSC示差熱分析データはPerkin-Elmer DSC7示差熱量測定装置を用いて測定した。キラルネマチック相からの選択的な反射バンドはJASCO J-720WI 円二色スペクトロメータにより900〜400nmの幅広い範囲で測定した。光学的らせんピッチnPが式(2)
λ=nP (2)
(ここで、n、Pおよびλはそれぞれ平均屈折率1.5(代表的液晶化合物の平均値)、らせんピッチおよび反射バンドの最大波長である。)
で計算される。
【0053】
試料は等方性液体温度から結晶化温度までの冷却および加熱過程で10分間毎に測定した。表1に測定したねじれ力を示す。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、安価な化合物を含むキラルドーパントを用いて少量で液晶分子のねじれコンフォメーションの不斉増幅を生じさせ、大きなねじれ力を誘起しうるキラルドーパントを提供しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(ここで、Arは置換されていてもよい芳香族基、R、RはCが不斉炭素を形成するための置換基、R
【化2】

、ならびにRはX−B−A−、を示す。Aは置換されていてもよい芳香族基、Bは平面共役基であり、Xは置換されていてもよい芳香族基を含む残基である。)
で表される化合物を含むネマチックもしくはコレステリック液晶用キラルドーパント。
【請求項2】
液晶として4’−ヘキシルオキシ−4−シアノビフェニルを含む測定系において、1/pc(p=ピッチ(μm)、c=ドーパントのモル分率)で示されるねじれ力が60/μm以上である請求項1記載のキラルドーパント。
【請求項3】
Arがナフチル基、RおよびRが互いに相異なるアルキル基もしくは水素原子である請求項1もしくは2記載のキラルドーパント。
【請求項4】
Xが不斉炭素を含む請求項1〜3のいずれか記載のキラルドーパント。
【請求項5】
ネマチックもしくはコレステリック液晶に請求項1〜4のいずれか記載のキラルドーパントを配合してなる液晶組成物。
【請求項6】
ネマチックもしくはコレステリック液晶がキラルドーパントと非反応性である請求項
5記載の液晶組成物。
【請求項7】
ネマチックもしくはコレステリック液晶がビフェニル系化合物である請求項5もしくは6記載の液晶組成物。
【請求項8】
ネマチックもしくはコレステリック液晶が室温で液晶性を示す請求項5〜7のいずれか記載の液晶組成物。
【請求項9】
キラルドーパントの配合量がネマチックもしくはコレステリック液晶とキラルドーパントの合計量に対し、0.001〜30モル%である請求項5〜8のいずれかに記載の液晶組成物。
【請求項10】
4−オクチルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項11】
4−オクチル−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項12】
4’−オクチルオキシ−ビフェニル−4−カルボン酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項13】
4−ドデシルオキシ−安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項14】
ビフェニル−4−カルボン酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項15】
4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項16】
テレフタル酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル。
【請求項17】
ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス−{4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニル}エステル。
【請求項18】
安息香酸 4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル]−フェニルエステル。
【請求項19】
4−[(1−ナフタレン−1−イル−エチルイミノ)−メチル] −安息香酸 4−オクチルオキシ−フェニルエステル。

【公開番号】特開2008−106201(P2008−106201A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292813(P2006−292813)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】