説明

ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子

【課題】 誘電率異方性が負であり、その絶対値が大きく、屈折率異方性の小さな液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供する。
【解決手段】 一般式(I)で表される化合物を10から60%含有し、一般式(II)で表される化合物を10から70%含有する液晶組成物。
【化18】


本発明の液晶化合物の組み合わせによって、屈折率異方性をほぼ維持したまま、粘度の低い誘電率異方性が負の液晶組成物が得られた。この組成物を用いることにより、高温域まで高い電圧保持率を維持できる信頼性に優れた液晶表示素子が提供され、このディスプレイはVA方式やECB方式、IPS方式等の液晶ディスプレイとして非常に実用的であり、特にセルギャップを薄くすることなく高速応答化に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な誘電率異方性Δεが負のネマチック液晶組成物、及びこれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、家庭用各種電気機器、測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また駆動方式としても従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、単純マトリックス方式、最近ではTFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)等により駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式が主流となっている。
【0003】
これらの表示方式において、IPS型、ECB型、VA型、あるいはCSH型等は現在汎用のTN型やSTN型と異なり、誘電率異方性(Δε)が負の液晶材料を用いるという特徴を有する。これらの中で特にAM駆動によるVA型表示は、高速で広視野角の要求される表示素子、例えばテレビ等への応用において、現在最も期待されているものである。
【0004】
VA型等の表示方式に用いられる液晶材料には、低電圧駆動、高速応答、広い動作温度範囲が要求される。すなわち、誘電率異方性が負で絶対値が大きく、低粘度であり、高いネマチック相−等方性液体相転移温度(Tni)が要求されている。また、屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積であるΔn×dの設定から、液晶材料の屈折率異方性をセルギャップに合わせて適当な範囲に調節する必要がある。液晶表示素子をテレビ等へ応用する場合においては高速応答性が重視されるため、粘度の低い液晶材料が要求される。
【0005】
誘電率異方性が負の液晶材料として、以下のような2,3-ジフルオロフェニレン骨格を有する液晶化合物(特許文献1参照)が開示されている。
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R及びR'は炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
しかし、これらの化合物を用いた誘電率異方性が負の液晶組成物は、液晶テレビ等の高速応答が要求される液晶組成物においては十分に低い粘性を実現するに至っていない。
【0008】
一方、本願発明の一般式(I)で表される化合物はすでに開示されている(特許文献2及び特許文献3参照)が、これらの化合物と他にどのような化合物を用いることで液晶組成物の粘性を低減できるかについての具体的な開示は無い。
【0009】
従って、誘電率異方性が負の液晶組成物で粘度の低い液晶組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−104869号
【特許文献2】特開昭60−199840号
【特許文献3】特開2000−96055号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、誘電率異方性が負であり、屈折率異方性をほぼ維持したまま粘度の低い液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
第一成分として、一般式(I)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1は炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO及び/又はSに置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はF又はClに置換されてもよく、R2は炭素数1から10のアルキル基、アルコキシル基、炭素数2から10のアルケニル基又は炭素数3から10のアルケニルオキシ基を表し、
mは0、1又は2を表す。)
で表される化合物を1種又は2種以上含有しその含有率が5から60質量%であり、
第二成分として、一般式(II)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R3及びR4はそれぞれ独立的に一般式(I)におけるR2と同じ意味を表し、
B1及びB2はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は酸素原子又は硫黄原子に置換されてもよい)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されてもよい)
(c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はCN又はハロゲンで置換されていてもよく、
Y1及びY2はそれぞれ独立的に
-CH2CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-又は単結合を表し、
Y2及びB2が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
pは0、1又は2を表す。)
で表される化合物を1種又は2種以上含有しその含有率が10から70質量%であり、
25℃における誘電率異方性Δεが-2.0〜-5.0の範囲であり、
25℃における屈折率異方性Δnが0.06〜0.16の範囲であり、
20℃における粘度ηが15〜40mPa・Sの範囲であり、
ネマチック相−等方性液体相転移温度Tniが70℃〜120℃の範囲であるネマチック液晶組成物を提供し、さらに、当該液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液晶化合物の組み合わせによって、屈折率異方性をほぼ維持したまま、粘度の低い誘電率異方性が負の液晶組成物が得られた。この組成物を用いることにより、高温域まで高い電圧保持率を維持できる信頼性に優れた液晶表示素子が提供され、このディスプレイはVA方式やECB方式、IPS方式等の液晶ディスプレイとして非常に実用的であり、特にセルギャップを薄くすることなく高速応答化に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明における液晶組成物において、第一成分として一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種から20種が好ましく、1種から15種がより好ましく、1種から10種がさらに好ましく、1種から8種が特に好ましい。
【0019】
一般式(I)で表される化合物の含有率は、5から40質量%の範囲であることがより好ましく、10から30質量%の範囲であることがさらに好ましい。これらの化合物は、絶対値の大きな負の誘電率異方性を有するが、含有量が多いと粘度を上昇させす傾向がある、又はスメクチック−ネマチック相転移温度を上昇させてしまうことがあるため、低い粘度を重視する場合はあるいは低いスメクチック−ネマチック相転移温度を重視する場合はこれらの含有率が少ないことが好ましく、絶対値の大きな負の誘電率異方性を重視する場合はこれらの含有率が多いことが好ましい。
【0020】
一般式(I)において、R1は炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシル基によって置換された炭素数1から7のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシル基によって置換された炭素数2から7のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素数1から10のアルキル基を表すことがさらに好ましく、R2は炭素数1から10のアルキル基、アルコキシル基、炭素数2から10のアルケニル基又は炭素数3から10のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表すことがより好ましく、炭素数1から10のアルコキシル基を表すことがさらに好ましく、mは0又は1を表すことが好ましい。
【0021】
さらに詳述すると、一般式(I)は、具体的な構造として以下の一般式(I-A)及び一般式(I-B)で表される化合物が好ましい。
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R27、R28、R29及びR30は、炭素数1から10のアルキル基を表す。)
第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種から12種が好ましく、1種から8種がより好ましく、1種から6種がさらに好ましい。
【0024】
一般式(II)の含有率は10から70質量%が好ましい。これらの化合物は、誘電率異方性の絶対値を大きくする効果はほとんどないものの粘度を低くする効果があり、低い粘度を重視する場合はこれらの含有率が多いことが好ましく、誘電率異方性の絶対値を大きくすることを重視する場合はこれらの含有率が少ないことが好ましい。
【0025】
一般式(II)において、R3及びR4はそれぞれ独立的に、炭素数1から10のアルキル基、炭素数2から10のアルケニル基、炭素数1から10のアルコキシル基又は炭素数3から10のアルケニルオキシ基を表すことが好ましいが、R3は炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基を表し、R4は炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシル基又は炭素数2から10のアルケニル基を表すことがより好ましく、
具体的にはR3は-CH3、-CH2CH3、-(CH2)2CH3、-(CH2)3CH3、-(CH2)4CH3、-(CH2)5CH3、-(CH2)6CH3、-(CH2)7CH3、-CH=CH2、-CH=CHCH3(E体)、-(CH2)2CH=CH2、-(CH2)2CH=CHCH3(E体)、-(CH2)4CH=CH2、-(CH2)4CH=CHCH3(E体)又は-(CH2)6CH=CH2を表し、
R4は、-CH3、-CH2CH3、-(CH2)2CH3、-(CH2)3CH3、-(CH2)4CH3、-(CH2)5CH3、-(CH2)6CH3、-(CH2)7CH3、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3、-O(CH2)5CH3、-O(CH2)6CH3、-O(CH2)7CH3、-CH=CH2、-CH=CHCH3(E体)、-(CH2)2CH=CH2、-(CH2)2CH=CHCH3(E体)、-(CH2)4CH=CH2、-(CH2)4CH=CHCH3(E体)又は-(CH2)6CH=CH2を表すことがさらに好ましい。
【0026】
B1及びB2はそれぞれ独立的に、トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基が酸素原子に置換されているものを含む)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されているものを含む)、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基もしくはこれらの水素原子がフッ素原子で置換された置換基を表すことが好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、フッ素置換された1,4-フェニレン基又は1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基がより好ましい。
【0027】
Y1及びY2はそれぞれ独立的に、-CH2CH2-、-CH=CH-(E体)、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-(E体)、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-又は単結合を表すことが好ましいが、-CH2CH2-、-CH=CH-(E体)、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-(E体)、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-又は単結合がより好ましく、-CH2CH2-、-CH=CH-(E体)又は単結合がさらに好ましい。
【0028】
さらに詳述すると、一般式(II)は、具体的な構造として以下の一般式(II-A)から一般式(II-G)からなる群で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、R13、R15、R17、R19、R21、R23及びR25は-CH3、-CH2CH3、-(CH2)2CH3、-(CH2)3CH3、-(CH2)4CH3、-(CH2)5CH3、-(CH2)6CH3、-(CH2)7CH3、-CH=CH2、-CH=CHCH3(E体)、-(CH2)2CH=CH2、-(CH2)2CH=CHCH3(E体)、-(CH2)4CH=CH2、-(CH2)4CH=CHCH3(E体)又は-(CH2)6CH=CH2を表し、R14、R16、R18、R20、R22、R24及びR26は-CH3、-CH2CH3、-(CH2)2CH3、-(CH2)3CH3、-(CH2)4CH3、-(CH2)5CH3、-(CH2)6CH3、-(CH2)7CH3、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3、-O(CH2)5CH3、-O(CH2)6CH3、-O(CH2)7CH3、-CH=CH2、-CH=CHCH3(E体)、-(CH2)2CH=CH2、-(CH2)2CH=CHCH3(E体)、-(CH2)4CH=CH2、-(CH2)4CH=CHCH3(E体)又は-(CH2)6CH=CH2を表す。)
一般式(III)で表される化合物を1種から2種以上を含有する場合は、1種から20種が好ましく、1種から16種がより好ましく、1種から12種がさらに好ましい。これらの化合物は粘度を上昇させてしまうものの誘電率異方性の絶対値を大きくする効果があり、誘電率異方性の絶対値が大きいことを重視する場合はこれらの化合物の含有率が多いことが好ましく、低い粘度を重視する場合はこれらの化合物の含有率を少なくすることが好ましい。
【0031】
一般式(III)において、R5は炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシル基によって置換された炭素数1から7のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシル基によって置換された炭素数2から7のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素数1から10のアルキル基を表すことがさらに好ましい。
一般式(III)において、R6は炭素数1から10のアルキル基、アルコキシル基、炭素数2から10のアルケニル基又は炭素数3から10のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表すことがより好ましく、炭素数1から10のアルコキシル基を表すことがさらに好ましい。
【0032】
B3、B4及びB5はそれぞれ独立的に、トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基がOに置換されているものを含む)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基はNに置換されているものを含む)、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基もしくはこれらの水素原子がフッ素原子で置換された置換基を表すことが好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、フッ素置換された1,4-フェニレン基又は1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基がより好ましい。
【0033】
Y3、Y4及びY5はそれぞれ独立的に、-CH2CH2-、-CH=CH-(E体)、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-(E体)、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-又は単結合を表すことが好ましいが、-CH2CH2-、-CH=CH-(E体)、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-(E体)、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-又は単結合がより好ましく、-CH2CH2-、-CH=CH-(E体)又は単結合がさらに好ましい。
【0034】
さらに詳述すると、一般式(III)は、具体的な構造として以下の一般式で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、R7、R8、R9及びR10は、炭素数1から10のアルキル基を表す。)
本発明のネマチック液晶組成物は、一般式(I)から選ばれる1種又は2種以上の化合物を5から60質量%含有し、一般式(II-A)から一般式(II-G)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を10〜70質量%含有することが好ましい。
【0037】
一般式(I-A)及び一般式(I-B)からなる化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を5から60質量%含有し、一般式(II-A)から一般式(II-G)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を10〜70質量%含有することがより好ましい。
【0038】
本発明において、ネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)は75℃以上であることがより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。25℃における誘電率異方性(Δε)が-2.5以下であることがより好ましく、-3.5以下であることがさらに好ましい。25℃における屈折率異方性(Δn)は、薄いセルギャップに対応する場合は0.10以上であることがより好ましく、0.12以上であることがさらに好ましい。厚いセルギャップに対応する場合は0.095以下がより好ましく、0.085以下がさらに好ましい。
【0039】
上記ネマチック液晶組成物は、液晶表示素子に有用であり、特にアクティブマトリクス駆動用液晶表示素子に有用であり、VAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子に用いることができる。
【0040】
本発明のネマテチック液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0042】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0043】
TNI :ネマチック―等方相転移温度(℃)
Δn :25℃における複屈折率
Δε :25℃における誘電率異方性
η :粘度(mPa・s) (25℃)
(実施例1)
【0044】
【化7】

【0045】
実施例1の特性は、Tni:86.9℃、Δn:0.083、Δε:-2.6、η:27.3mPa・Sであった。
また、比較例として一般式(I)を含まない比較例1を調製した。
(比較例1)
【0046】
【化8】

【0047】
比較例1の特性は、Tni:87.0℃、Δn:0.083、Δε:-2.7、η:29.3mPa・Sであった。
実施例1の方が、比較例1よりも低い粘度を有することがわかる。
(実施例2)
【0048】
【化9】

【0049】
実施例2の特性は、Tni:82.0℃、Δn:0.082、Δε:-2.5、η:22.0であった。
(実施例3)
【0050】
【化10】

【0051】
実施例3の特性は、Tni:82.0℃、Δn:0.122、Δε:-3.0、η:27.8mPa・Sであった。
また、比較例として一般式(I)を含まない比較例2を調製した。
(比較例2)
【0052】
【化11】

【0053】
比較例2の特性は、Tni:82.5℃、Δn:0.122、Δε:-3.1、η:30.2mPa・Sであった。
実施例3の方が、比較例2よりも低い粘度を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として、一般式(I)
【化1】

(式中、R1は炭素数1から10のアルキル基又は炭素数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個以上のCH2基はO及び/又はSに置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はF又はClに置換されてもよく、R2は炭素数1から10のアルキル基、アルコキシル基、炭素数2から10のアルケニル基又は炭素数3から10のアルケニルオキシ基を表し、
mは0、1又は2を表す。)
で表される化合物を1種又は2種以上含有しその含有率が10から60質量%であり、
第二成分として、一般式(II)
【化2】

(式中、R3及びR4はそれぞれ独立的に炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、
B1及びB2はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH2基は酸素原子又は硫黄原子に置換されてもよい)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されてもよい)
(c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、
Y1及びY2はそれぞれ独立的に
-CH2CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-又は単結合を表し、
Y2及びB2が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
pは0、1又は2を表す。)
で表される化合物を1種又は2種以上含有しその含有率が10から70質量%であり、更に、一般式(III-A)及び一般式(III-B)
【化3】

(式中、R7、R8、R9及びR10は一般式(I)におけるR1と同じ意味を表す。)
からなる化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有し、
25℃における誘電率異方性Δεが-2.0〜-5.0の範囲であり、
25℃における屈折率異方性Δnが0.06〜0.16の範囲であり、
ネマチック相−等方性液体相転移温度Tniが70℃〜120℃の範囲であるネマチック液晶組成物。
【請求項2】
一般式(III)
【化4】

(式中、R5は一般式(I)におけるR1と同じ意味を表し、R6は一般式(I)におけるR2と同じ意味を表し、
B3、B4及びB5それぞれ独立的に一般式(II)におけるB1と同じ意味を表し、
Y3、Y4及びY5はそれぞれ独立的に一般式(II)におけるY1と同じ意味を表すが、rが0の場合、Y4は-CH=CH-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-又は単結合を表し、
Y3、Y5、B4及びB5が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
q及びrはそれぞれ独立的に0、1又は2であるが、q及びrの和は2以下である。ただし、一般式(III-A)及び(III-B)で表される化合物を除く。)
で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1記載のネマチック液晶組成物。
【請求項3】
一般式(II-A)から一般式(II-G)
【化5】

(式中、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は一般式(I)におけるR2と同じ意味を表す。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1又は2記載のネマチック液晶組成物。
【請求項4】
一般式(I-A)及び一般式(I-B)
【化6】

(式中、R27、R28、R29及びR30は一般式(I)におけるR1と同じ意味を表す。)
で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1から3のいずれか1項に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項5】
一般式(I-A)及び一般式(I-B)からなる化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を10%〜60%含有し、一般式(II-A)〜(II-G)からなる化合物群から選ばれる1種又は2種以上化合物を10%〜70%含有することを特徴とする、請求項4に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載のネマチック液晶組成物を用いた、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載のネマチック液晶組成物を用いた、VAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−144732(P2012−144732A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46603(P2012−46603)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2004−135557(P2004−135557)の分割
【原出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】