説明

ネマチック液晶組成物及びバイステイブルネマチック液晶表示素子

本発明のネマチック液晶組成物は、化合物群Aから選ばれる1又は2以上の化合物を20質量%以上含有し、化合物群Bから選ばれる1又は2以上の化合物を5〜50質量%含有するネマチック液晶組成物であり、前記ネマチック液晶組成物に使用される前記化合物の相対的な比率が、前記組成物に関して下記の物理的特性、すなわち・液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移温度(TN−I)が50℃以上であり、・液晶組成物がネマチック相を示す温度範囲(ΔT)が50℃以上であり、・20℃における誘電異方性が8×10−11F/m以上であり、・20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が140nmであって少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚のバイステイブルネマチック液晶表示素子用基板の間に支持されたときのアンカリング破壊電圧Uλ/4が25V以下であることを、同時に得るように決定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイステイブルネマチック液晶表示素子に好適に適用可能なネマチック液晶組成物及びこれを用いたバイステイブルネマチック液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子(LCD)は、薄く、軽く、低消費電力であるため、様々な用途に応用されている。このLCDは、液晶組成物を少なくとも一方の基板が透明である2枚の基板の間に挟み込んだ構造を有し、2枚の基板はそれぞれの内側の面(互いに対向する面)に、液晶組成物に電界を印加し得るよう電極層と、液晶を配向させるための配向処理がなされた配向膜が施されている。この配向処理は、液晶組成物を配向膜に並べると同時に束縛する働き(アンカリング力)を持つ。
液晶組成物にフレデリック(Freedericksz)転移電圧以上の電界を印加すると、液晶組成物の配向方向が変化し、液晶組成物の持つ複屈折性により光学的変化が生じ、さらに偏光板を用いることにより表示素子として機能する。
【0003】
上記のごときLCD(「“クラシック”LCD」と称する。)は、以下の特性を持つ。
(1)外部電場を印加し、情報表示をさせた後、電場を切ると表示も消える。
(2)配向膜は液晶分子を配向膜に対して水平に配向させる働きを持ち、かつ液晶分子に対し非常に強いアンカリング力を有する。そのため、電場を印加している状態でも配向膜近傍の液晶分子は電場方向には並ばず、ほぼ配向膜に対して水平方向を維持する。
(3)電場が切られた場合、電場印加前の状態に戻る。
【0004】
これら“クラシック”LCD用の液晶組成物では、温度範囲、粘性、弾性定数、複屈折率、誘電異方性、しきい値特性等の特性を最適化し、LCDの特性を高めるため様々な検討がなされてきた。上記特性を最適化するには、単一化合物では達成されず、複数の化合物を組み合わせることが必要となる(非特許文献1)。
【0005】
さらにこの“クラシック”LCDでは、配向膜の液晶分子に対するアンカリング力に関しては厳密な設計は必要なく、強いアンカリング力が必要、言い換えれば、ある強さ以上が必要(おおよそL<15nm、なおLについては後述する。)とされている。この強いアンカリング力が得られる配向膜については既に研究がなされており、現在では数種類の配向膜材料が使用されている(非特許文献2)。
【0006】
近年、バイステイブル(双安定)ネマチックディスプレイと呼ばれる新しいネマチック液晶表示素子が研究されている。このディスプレイでは、液晶分子は2つの安定な配向状態を持ち、2つの配向状態を切り替える時にのみ電圧印加が必要で、表示を維持するため電圧を印加し続ける必要はない。この表示原理では、消費電力は表示の切り替え回数に比例することとなり、切り替え周期が長くなればなるほど消費電力は0に近づいていくこととなる。そのため、低消費電力が要求されるようなモバイル系ディスプレイに非常に有用である。
【0007】
基板上の配向膜の作用によって安定化されるバイステイブルディスプレイが2つ提案されている。一つは、配向膜上で2つの配向状態を持つもの(双安定(バイステイブル))、もう一つは、配向膜上で1つの配向状態を持つもの(単安定(モノステイブル))である。これらのディスプレイでは、少なくとも一つの配向膜上の液晶分子のアンカリングを破壊することにより、2つの安定状態間をスイッチングする。電圧を印加することにより、配向膜上の液晶分子は界面トルクが0、エネルギーが最大になる方向へ向く。電圧を切ると配向膜上の液晶分子は安定な配向状態へ戻り、バルクの液晶は一つ又はもう一つの安定状態へ移行する。
【0008】
ZBDディスプレイズによって開発されたディスプレイは(非特許文献3)、2つの安定状態を持つ配向膜を使用している。配向膜上の液晶分子は、基板に対しほぼ水平な配向状態とほぼ垂直な配向状態の2つの安定状態を持つ。Orsay Solid State Physics Laboratoryでは、2つの異なるチルト角によるバイステイブルな配向状態をもつバイステイブルネマチックディスプレイが提案されている。一つはフレクソエレクトリック効果を用いる手法で(特許文献1)、もう一つは電子キラル効果を用いる手法である(特許文献2)。
【0009】
この2つのバイステイブルネマチックディスプレイはモノステイブルな配向膜、及びアンカリングの破壊によるスイッチングを使用し、BiNem(登録商標)ディスプレイとしてフランス国のネモプティック社により(特許文献3〜5)、またSBiNDディスプレイとしてイタリア国のLICET社により(特許文献6〜8)、更なる改良がなされている。
【0010】
ネモプティック社によるバイステイブルネマチックディスプレイのスイッチング方式を図1に示す。このディスプレイは、2つの状態を用いている。一つの状態は、均一な、もしくはわずかに捩れた状態(T)で、この状態では液晶分子は互いにほぼ水平(0±20°)となる。もう一つの状態は、180(±20)°捩れた状態(T180)である。
この2つの状態がエネルギー的に等しくなるよう、液晶組成物の自然ピッチPはセル厚の4倍となるよう調製されている。電圧無印加時は、上記2状態がエネルギー的に最小値となり、安定な配向状態を維持する。高電圧を印加すると、少なくとも一方の基板上(詳しくは配向膜上)でアンカリング破壊が起こり、液晶分子はほぼホメオトロピック配向(H)となる。この配向状態(H)は遷移状態にあり、2つの安定状態(T、T180)のうちいずれか一方へスイッチングできる。電圧をゆっくり切ると弾性カップリング効果によりT状態へ、電圧をすばやく切ると流体力学的カップリングによりT180状態へと変化させることができる。
【0011】
アンカリングの破壊によりスイッチングされるバイステイブルディスプレイには特殊な特性を持つ液晶材料、配向膜が求められる。
【0012】
1)少なくとも一方の配向膜のアンカリングは、ネマチック液晶化合物の電気的、電気化学的特性に見合った印加電圧によってアンカリングが破壊する程度に弱い必要がある。
2)配向膜のアンカリングは液晶材料がアンカリングによって安定な状態になるよう、あまり弱すぎてもいけない。テクスチャーを維持するため、アンカリングによるトルクは、安定状態におけるバルク液晶による配向膜上の液晶の弾性的なトルクより大きい必要がある。
【0013】
3)液晶材料の電気化学的安定性は、通常の“クラシックLCD”より高い必要がある。実際の“クラシックLCD”では、バルクの液晶しか動いていない。その電圧はフレデリックス転移電圧の2〜3倍に近く、ミニマムの電圧はネマチックの弾性定数により決まる。アンカリングの破壊により動作させる場合、テクスチャーの安定条件を考慮すると、フレデリックス転移電圧の約10倍が必要となる。
【0014】
4)ディスプレイの光学応答は、液晶材料の粘性、及び弾性定数により決定される。流体力学的カップリングにより、安定状態が決定される場合、粘性・弾性定数は駆動における基礎定数となる。
5)“クラシックLCD”より薄いセル厚を用いるため、良好なコントラストを得るためには、高い屈折率異方性(0.14〜0.20)が必要である。一方、一枚の偏光板を用いる反射型モードの場合は、光学距離(セル厚に相当する数値)が2倍となるため、Δn・dを一定にするためには、Δnが0.06〜0.14程度と小さい液晶組成物が必要となる。上述のような液晶材料、配向膜を用いた、アンカリングの破壊を用いるバイステイブルディスプレイでは、アンカリング破壊電圧はセル厚に比例する、すなわち、小さいセル厚では低い電圧となる。
【0015】
6)ネマチック液晶の温度範囲は動作温度範囲より広い必要がある。実際、ネマチック液晶の全温度範囲で、前述の特性がすべて満たされるわけではない。ネマチック温度範囲(ΔT)はTN−I(ネマチック−アイソトロピック転移温度)とTX−N(ネマチックからより高次の液晶相への転移温度、又は結晶層、ガラス状態への転移温度)間のことである。技術的に許容できる温度範囲(室温を中心に50〜80℃の温度範囲)で前述の特性が得られるには、ネマチック温度範囲(ΔT)は動作温度範囲より広い必要がある。
【0016】
アンカリング力の設計は非常に高度であり、また正確性を有する。このアンカリング力は、界面と液晶化合物との間の相互作用の異方性によって引き起こされる。アンカリングは、液晶分子が隣接する界面によって誘起される方向性及びその強さにより特徴付けられる。この方向は容易軸と呼ばれ、容易軸の方向nは、方位角(φ)及び極角(θ)で表される(図2参照)。ネマチック液晶の平均的な配向方向は、この容易軸に沿う。外部からの影響がない場合、界面からの相互作用エネルギーを最小にするため液晶分子は容易軸に並行に配向する。この相互作用エネルギー(アンカリングエネルギー)は一次近似を用いて数式(1)で表される(非特許文献4)。
【0017】
【数1】

【0018】
数式(1)中、φは界面上のネマチック液晶の方位角(azimuthal angle)を表し、θは界面上のネマチック液晶の極角(zenithal angle)を表し、Wは方位角アンカリングエネルギーを表し、Wは極角アンカリングエネルギーを表す。
【0019】
方位角アンカリングエネルギーWはネマチック液晶の性質より、配向等の処理による配向膜に励起された異方性に依存する。もし、ツイストテクスチャーを維持するために十分な方位角アンカリングが必要であったとしても、本明細書ではこの問題には言及しない。
アンカリングの破壊による駆動されるバイステイブルディスプレイおいては、極角アンカリング破壊が重要であり、我々はこの現象について注目する。
極角アンカリングエネルギーWは配向膜の化学的性質、及びネマチック液晶材料に強く依存する。大部分の固体の配向膜では、極角アンカリングエネルギーは方位角アンカリングエネルギーより1〜2ケタ高い。液晶組成物のダイレクターの向きが容易軸からずれると、界面エネルギーは0ではなくなり、弾性定数に由来したエネルギーも持つようになる。この界面エネルギーは、バルク液晶の弾性エネルギーとアンカリングエネルギーとの比である外挿長と関連付けられる。極角アンカリングの外挿長Lは、L=K33/Wで表される。ここでK33は曲げ弾性定数である。L<15nmの場合は「強い極角アンカリング」、L>25nmの場合は「弱い極角アンカリング」と考えられる。
【0020】
液晶分子の配向方向は外部の電界や磁界によって変えることができる。例えば、基板表面に対して垂直な電界を印加すると、セル内部の液晶分子は正の誘電異方性を持つ場合、電界方向に沿って配向し(すなわちθ=0)、電界がない場合は基板表面にほぼ平行に配向する(すなわちθ=約90°)。基板表面上の液晶分子ダイレクターの極角方向の角度θは、電界の関数として与えられ、連続的に変化している。電界が臨界電界強度Eを超えるとθは0となり、基板表面上の液晶分子のダイレクターは、アンカリングトルクや電気的トルクに無関係となる。この状態を極角アンカリング破壊(極角アンカリングブレイク)された状態と呼ぶ。臨界電界強度Eは数式(2)で表される。
【0021】
【数2】

【0022】
数式(2)中、Wは極角アンカリングエネルギー、K33は曲げ弾性定数、Δεは誘電異方性(ただし、真空の誘電率εに対する相対比)を表す。
【0023】
この臨界電界強度Eは、極角アンカリング破壊を利用するデバイスを駆動させるのに必要な電界である。よって、大きなΔε、大きな曲げ弾性定数と、小さな極角アンカリングエネルギーが、このデバイスをコントロールするために必要となる。
【0024】
実際、極角アンカリング破壊を用いるディスプレイで重要なのは、極角アンカリング破壊を起こす電圧Uである。すなわち、臨界電界とセル厚の積である。通常、バイステイブルネマチックディスプレイのセルの複屈折の大きさは、光の通過帯域の中心波長の半波長分に等しく調整される。極角アンカリングを定義する場合は、しきい値ブレイク電圧Uλ/4を用いる。これは光学的厚さがλ/4のセルにおけるブレイク電圧Uの値である。Uλ/4は数式(3)で表される。
【0025】
【数3】

【0026】
数式(3)中、λは光の通過帯域の中心波長、Wは極角アンカリングエネルギー、Lは極角アンカリングの外挿長、Δnは波長λにおける屈折率異方性、K33は曲げ弾性定数、Δεは誘電異方性を表す。発明者らは、動作温度範囲におけるUλ/4が現在通常使用されているドライバで供給可能な電圧であれば、この極角アンカリングは弱い部類に入ると考えており、経験的にはUλ/4が25V以下であれば低アンカリングであると言える。
【0027】
極角アンカリングエネルギーは、配向膜の材質、表面処理方法、使用する液晶組成物、及び温度に依存する。
配向膜の性質は、極角アンカリングエネルギーに大きく影響する。“クラシック”LCDに用いられているポリイミド配向膜は、ほとんどのネマチック液晶材料に対して強い極角アンカリングエネルギーを示す。例えば市販のポリイミド配向膜(SE140、日産化学社製)は、ペンチルシアノビフェニル(5CB)に対しL=7nmであり、極角アンカリングは強い。
【0028】
一方、特許文献9、特許文献11にはネモプティック社により、5CBやその他ネマチック液晶材料に対して極角アンカリングの弱い共重合体皮膜の開発が報告されている(5CBに対しては20℃においてL>25nm)。両特許とも、通常のラビング処理により、中程度から強程度の方位角アンカリングが得られ、TとT180のテクスチャーが安定的に得られている。
【0029】
特許文献10には、極角アンカリングが小さい液晶組成物の例が開示されている。これによると、特定の液晶化合物の組み合わせによってUλ/2の低い液晶組成物が得られていること、さらに、ネマチック相の温度範囲の広い組み合わせについても記述されている。実際、バイステイブルディスプレイにおいて最適化されたアンカリング特性は配向膜と液晶材料に依存する。しかし、極角アンカリング破壊を用いるバイステイブルネマチックディスプレイでは、ネマチック相の温度範囲とディスプレイの動作温度範囲は比例関係にない。すなわち、室温で動作電圧が低くても、その温度依存性が大きければ、実質的に動作温度範囲は狭くなってしまう。実際、幅広い温度範囲において動作可能なバイステイブルネマチックディスプレイは現在得られていないのが実情である。そのため、幅広い動作温度範囲で駆動可能な液晶組成物の組み合わせを見出すことが必要であった。
【0030】
また、特に1枚の偏光板を用いる反射型バイステイブルネマチックディスプレイの場合は、前に述べた通り、0.06〜0.14程度の小さなΔnが必要となる。上述の特許文献10で用いられている液晶組成物のΔnは0.14以上であり、反射型バイステイブルネマチックディスプレイには適さない。0.06〜0.14程度の小さなΔnを有し、バイステイブルネマチックディスプレイにおいて低電圧駆動が可能な液晶組成物はこれまでなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】ハンドブック オブ リキッドクリスタル(Handbook of Liquid Crystals)、1988年、Wiley−VCH Weinheim
【非特許文献2】リキッドクリスタル―アプリケーション アンド ユース(Liquid Crystals ― Applications and Uses)、1990年、World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd Singapore
【非特許文献3】G.P.Bryan−Brownら、ネイチャー(Nature)、第399巻、第338ページ、1999年
【非特許文献4】A.Rapini及びM.Papoular、J.Phys.(Fr)、C4、第30巻、第54−56頁、1969年
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2663770号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2657699号明細書
【特許文献3】仏国特許出願公開第2740893号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2740894号明細書
【特許文献5】米国特許第6327017号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0773468号明細書
【特許文献7】米国特許第5995173号明細書
【特許文献8】特開平9−274205号公報
【特許文献9】欧州特許出願公開第1259854号明細書
【特許文献10】特開2005−133057号公報
【特許文献11】米国特許第7067180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バイステイブルネマチック液晶表示素子に使用したときに幅広い動作温度範囲を有するネマチック液晶組成物、一枚偏光板モードの反射型バイステイブルネマチック液晶表示素子において低電圧駆動が可能なネマチック液晶組成物、及びこれらを用いたバイステイブルネマチック液晶表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、上記課題を解決するために種々の液晶化合物の組み合わせを検討した結果、以下の知見を見出したものである。すなわち、一般式(A1)から(A5)
【0035】
【化1】

【0036】
(式(A1)から(A5)中、Rは炭素原子数2から7のアルキル基又はアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、Zは、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Zは、−CHCH−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Zは、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、又は単結合を表し、Z及びZはそれぞれ独立して、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Xはシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はジフルオロメトキシ基(−OCHF)を表し、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基を表し、環Tは1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、mは0又は1を表し、p及びqは0又は1を表し、ただしp+qは0又は1である。)で表される化合物群Aから選ばれる1又は2以上の化合物を20質量%以上含有し、
【0037】
一般式(B1)から(B10)
【0038】
【化2】

【0039】
(式(B1)から(B10)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1から7のアルキル基又は炭素原子数2から7のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
は、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、
は、−CHCH−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、
は、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、又は単結合を表し、
及びZ10はそれぞれ独立して、−CHCH−、−COO−、−OCO−、又は単結合を表し、
からY14はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、
環T及びTはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表す。)で表される化合物群Bから選ばれる1又は2以上の化合物を5〜50質量%含有するネマチック液晶組成物であり、
【0040】
前記ネマチック液晶組成物に使用される前記化合物の相対的な比率が、前記組成物に関して下記の物理的特性、すなわち、
・液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移温度(TN−I)が50℃以上であり、
・液晶組成物がネマチック相を示す温度範囲(ΔT)が50℃以上であり、
・20℃における誘電異方性が8×10−11F/m以上であり、
・20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が140nmであって少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚のバイステイブルネマチック液晶表示素子用基板の間に支持されたときのアンカリング破壊電圧Uλ/4が25V以下であることを、同時に得るように決定されていることを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【発明の効果】
【0041】
本発明の液晶組成物は、少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚の基板上に支持されたバイステイブルネマチック液晶表示素子用途に用いること、動作温度範囲の広いバイステイブルネマチック液晶表示素子を得ることができる。
また、一方の基板が弱い極角アンカリング力を有し、もう片方の基板に反射層を有する2枚の基板の間に液晶組成物が支持され、偏光板を1枚使用する反射型のバイステイブルネマチック液晶表示素子において、低駆動電圧が可能な液晶組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】アンカリング破壊によるバイステイブルネマチック液晶表示素子の動作を模式的に示す図である。
【図2】アンカリングの方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本発明の一例について説明する。
本発明の液晶組成物中、上記化合物群Aに属する一般式(A1)から(A5)の化合物は、末端に極性基を有する化合物であり、アンカリング破壊を引き起こすために重要な化合物である。またΔnの小さな液晶化合物でもあり、低Δnの液晶組成物を得るのに有用な化合物でもある。一般式(A1)から(A5)で表される化合物は少なくとも一つ含有することが必須であるが、2つ以上含有することが、低駆動電圧化、動作温度範囲拡大に対してより効果的である。
【0044】
一般式(A1)から(A5)で表される化合物について特に好ましい場合を、以下に例示する。
としては、シアノ基、フッ素原子、又はトリフルオロメトキシ基が好ましい。
としては、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、又は単結合が好ましい。
としては、−CHCH−、−CH=CH−、又は単結合が好ましい。
としては、−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、又は単結合が好ましい。
及びZとしては、単結合が好ましい。
、Y、Y及びYはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
環Tとしては、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
【0045】
としては、炭素原子数2から6のアルキル基又はアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)が好ましく、炭素原子数2から5のアルキル基又はアルケニル基がより好ましい。
【0046】
また、一般式(A1)から(A5)のそれぞれについて、より好ましい場合を、以下に例示する。
一般式(A1)においては、Xがシアノ基であり、Zが単結合であり、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
一般式(A2)においては、Xがシアノ基、トリフルオロメトキシ基(−OCF)又はフッ素原子であり、Zが−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合であり、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
一般式(A3)においては、Xがシアノ基又はフッ素原子であり、Zが−CHCH−、−CH=CH−、又は単結合であり、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
一般式(A4)においては、Xがシアノ基又はフッ素原子であり、Zが単結合であり、Zが−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、又は単結合であり、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
一般式(A5)においては、pが0であり、Xがシアノ基又はフッ素原子であり、Z及びZがそれぞれ単結合を表し、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。
【0047】
また、一般式(A1)において、Xがシアノ基であり、Zが単結合であり、Y及びYがそれぞれフッ素原子である化合物は、低Δnであり、かつ低駆動電圧、動作温度範囲の拡大に対して特に好ましいため、本発明の液晶組成物は、当該化合物を5質量%以上含有することが好ましい。
【0048】
より具体的には、以下の化合物が好ましい。
【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
(式(C−1)から(C−96)中、Rは炭素原子数2から6のアルキル基又はアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表す。これらのアルキル基又はアルケニル基は、直鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。
【0056】
上記具体式(C−1)から(C−96)の中でも、(C−3)、(C−38)、(C−39)、(C−41)、(C−42)で表される化合物が低Δnであり、かつ低駆動電圧、動作温度範囲の拡大に対して特に好ましい化合物である。とりわけ(C−3)で表される化合物がより好ましく、この化合物を5質量%以上含有することが更により好ましい。
【0057】
本発明の液晶組成物は、一般式(A1)から(A5)で表される化合物群Aから選ばれる1又は2以上の化合物を20質量%以上含有することが必要である。
また、液晶組成物が、一般式(A1)から(A5)で表される化合物群Aから選ばれる1又は2以上の化合物を25質量%以上含有することが好ましい。
一般式(A1)から(A5)で表される化合物群Aのうち、誘電異方性が3.5×10×10−10F/m以上である化合物の含有量が25質量%以下であることが好ましい。
【0058】
なお、これらの例示において、化合物群A又はそのうちの各一般式に該当する化合物を2つ以上配合する場合、上記の数値は、当該2つ以上の化合物の含有率の合計を意味する。また、一般式(A1)から(A5)で表される化合物を2つ以上含有する場合、各々の化合物のR、X、Y、Y、Y、Y、ZからZ、T、m、p及びqは、それぞれ、互いに同じでも異なっていても良い。
【0059】
本発明の液晶組成物中、上記化合物群Bに属する一般式(B1)から(B10)の化合物は、末端に極性基を持たない化合物である。
【0060】
一般式(B1)から(B10)で表される化合物について特に好ましい場合を、以下に例示する。
及びRとしては、炭素原子数1から6のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)が好ましく、炭素原子数1から6のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基がより好ましい。
【0061】
としては、−COO−、−OCO−、−CHCH−、又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−、又は単結合がより好ましい。
としては、−COO−、−OCO−、−CHCH−、又は単結合が好ましい。
としては、−COO−、−OCO−、−C≡C−、又は単結合が好ましい。
及びZ10としては、−COO−、−OCO−、−CHCH−、又は単結合が好ましい。
環T及びTとしては、1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
からY14としては、水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0062】
より具体的には、以下の化合物が好ましい。
【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
(式(II−1)から(II−26)中、R及びRは炭素原子数1から6のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子で置換されていても良い。)を表し、Y31からY35は、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。)
【0066】
本発明の液晶組成物は、一般式(B1)から(B10)で表される化合物群Bから選ばれる1又は2以上の化合物を5〜50質量%含有することが必要である。
また、液晶組成物が、一般式(B1)から(B10)で表される化合物群Bから選ばれる1又は2以上の化合物を5〜40質量%含有することがより好ましい。
【0067】
なお、これらの例示において、化合物群B又はそのうちの各一般式に該当する化合物を2つ以上配合する場合、上記の数値は、当該2つ以上の化合物の含有率の合計を意味する。また、一般式(B1)から(B10)で表される化合物を2つ以上含有する場合、各々の化合物のR、R、YからY14、ZからZ10、T及びTは、それぞれ、互いに同じでも異なっていても良い。
【0068】
これらの液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移温度(TN−I)は、50℃以上であることが必要である。液晶組成物は、TN−Iが60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更により好ましい。
また、液晶表示素子が幅広い駆動温度範囲を実現するためには、液晶組成物がネマチック相を示す温度範囲(ΔT)自身も幅広いことが必須である。このため、上限温度TN−I(ネマチック−アイソトロピック転移温度)と下限温度TX−N(ネマチック相から、より高次の液晶相又はガラス状態又は結晶状態に転移する転移温度)との差で定義される温度範囲ΔTが、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更により好ましい。
また、液晶組成物がネマチック相を示す下限温度TX−Nは、0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下が更により好ましい。
【0069】
誘電異方性(εΔε)は大きいほど駆動電圧は低くなるため、液晶組成物の20℃における誘電異方性は、8×10−11F/m以上であることが必要であるが、極端に大きすぎると信頼性に問題が発生してしまう。そのため、誘電異方性(20℃での値)としては、8×10−11〜6×10−10F/mが好ましく、1.3×10−10〜4.5×10−10F/mがより好ましく、1.7×10−10〜3.5×10−10F/mが更により好ましい。さらに、εΔεとして、1.3×10−10〜3.0×10−10F/m(Δεとしては15〜35)がより好ましい。なお、εは真空の誘電率である。
【0070】
屈折率異方性(Δn)は、コントラストを得るために重要なパラメーターであり、1枚偏光板を用いる反射型バイステイブルネマチック液晶表示素子に用いる場合は、20℃において0.06〜0.14が好ましく、0.06〜0.13がより好ましく、0.07〜0.13が更により好ましい。また、20℃におけるΔnが0.06〜0.13であると同時に、εΔεが1.3×10−10〜3.0×10−10F/mであることが、より好ましい。
【0071】
また、20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が140nmであって少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚のバイステイブルネマチック液晶表示素子用基板の間に支持されたときのアンカリング破壊電圧Uλ/4(数式3で表されるもの)が25V以下であることが必要である。この温度20℃、Δn・d=140nmにおけるUλ/4は、20V以下がより好ましい。
【0072】
本発明の液晶組成物は、
a)少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚の基板の間に液晶組成物が挟み込まれ、該2枚の基板間の液晶組成物へ電界を印加し得るように、前記基板が互いに対向する内側の表面上に電極を備えており、少なくとも一方の基板及び電極が光学的に透明であり、
b)液晶組成物を配向し、電界の不在下で安定又は準安定な少なくとも2つの択一的な異なるテクスチャーを形成し得る処理が施され、前記テクスチャーのうち、一方が捩れていないが、又は−90°から+90°の範囲で捩れており、他方のテクスチャーは、180°に近い角度で捩れを有し、
c)20℃における積d・Δn(ただしdは液晶組成物層の厚さ、Δnは液晶組成物の屈折率異方性を表す。)が、λ/4(ただしλは表示素子の有効スペクトル帯の中心波長を表す。)に近づくように設計され、
d)2枚の基板のうち、少なくとも一方の基板でアンカリングを破壊することにより、上記の異なるテクスチャー間を切り替えることができ、電界が除かれた後もいずれかのテクスチャーに保持することができる、バイステイブルネマチック液晶表示素子(例えばネモプティック社のBiNem(登録商標)ディスプレイ、図1参照)に有用である。
【0073】
図1に示す構造の液晶表示素子において、基板1としては、酸化スズインジウム(ITO)等の透明導電体からなる電極層2を有したガラス基板が挙げられる。2つの基板1,1の配向膜3,4によるアンカリングは、両方ともモノステイブルであることが好ましい。また、少なくとも1つの配向膜は、弱い極角アンカリング力を有する。ここで極角アンカリングの外挿長をLとするとき、L<15nmの場合は「強い極角アンカリング力」を有し、L>25nmの場合は「弱い極角アンカリング力」を有すると考えられる。
【0074】
強い極角アンカリング力を有する配向膜3としては、ポリイミド、ポリアミド、SiO蒸着膜等の通常に使用される配向膜材料が挙げられる。弱い極角アンカリング力を有する配向膜4としては、例えば特許文献9に記載されているように、ポリ塩化ビニル(ホモポリマー)又は塩化ビニル共重合体(コポリマー)からなるものが好適である。塩化ビニル共重合体に用いられる塩化ビニル以外のモノマーとしては、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリル酸エステル等が例示される。
本発明では、液晶表示素子の基板間に支持される液晶組成物として、上述した本発明の液晶組成物を用いているので、動作温度範囲の広いバイステイブルネマチック液晶表示素子を得ることができる。
【0075】
弱い極角アンカリング力を有する配向膜4は、20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が140nmである厚さdを有するセルにおいてアンカリング破壊電圧Uλ/4が25V以下となることとして定義される弱い極角アンカリング力を有することが好ましい。これにより、液晶組成物が弱い極角アンカリング力によって少なくとも2つの異なる安定状態をとることができ、電極層2に適当な電気信号が印加されたときに少なくとも2つの異なる安定状態の間のスイッチングを達成することができる。このスイッチングは、アンカリング破壊型であることが好ましい。
【0076】
また、少なくとも2つの異なる安定状態として、図1に示すように、液晶組成物中の分子が互いに少なくとも略平行に配列されて均一又はわずかにねじれた第1の安定テクスチャー(T)と、2枚の基板間で180°又はそれに近い角度でねじれたテクスチャーをとる第2の安定テクスチャー(T180)とを有することが好ましい。これにより、電極層2に適当な電気信号が印加されたときに、TとT180との間のスイッチングを達成することができる。このスイッチングは、少なくとも1つの基板における極角アンカリングの破壊によって達成されることが好ましい。
【0077】
更に、本発明の液晶組成物は、
e)一方の基板が弱い極角アンカリング力を有し、もう一方の基板に反射層を有する2枚の基板の間に液晶組成物が挟み込まれ、該2枚の基板間の液晶組成物へ電界を印加し得るように、前記基板が互いに対向する内側の表面上に電極を備えており、少なくとも弱い極角アンカリング力を有する側の一方の基板及び電極が光学的に透明であり、
f)液晶組成物を配向し、電界の不在下で安定又は準安定な少なくとも2つの択一的な異なるテクスチャーを形成し得る処理が施され、前記テクスチャーのうち、一方が捩れていないが、又は−90°から+90°の範囲で捩れており、他方のテクスチャーは、180°に近い角度で捩れを有し、
g)20℃における積d・Δn(ただしdは液晶組成物層の厚さ、Δnは液晶組成物の屈折率異方性を表す。)が、λ/4(ただしλは表示素子の有効スペクトル帯の中心波長を表す。)に近づくように設計され、
h)2枚の基板のうち、少なくとも一方の基板でアンカリングを破壊することにより、上記の異なるテクスチャー間を切り替えることができ、電界が除かれた後もいずれかのテクスチャーに保持することができる、1枚偏光板を用いる反射型バイステイブルネマチック液晶表示素子に有用である。
【0078】
1枚偏光板を用いる反射型バイステイブルネマチック液晶表示素子においては、図1に示す構造の液晶表示素子において、弱アンカリング配向膜4を有する基板1として透明な基板が用いられ、もう一方の基板には、反射層が設けられる。そして、偏光板(図示略)が1枚設置される。
【0079】
本発明では、1枚偏光板を用いる反射型バイステイブルネマチック液晶表示素子の基板間に支持される液晶組成物として、上述した本発明の液晶組成物を用いているので、動作温度範囲の広く、駆動電圧の低いバイステイブルネマチック液晶表示素子を得ることができる。
本発明のバイステイブルネマチック液晶表示素子において、セルは、20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が120〜200nmであることが好ましく、140〜200nmであることがより好ましい。20℃におけるΔnは使用する液晶組成物によって決まるので、スペーサーによって基板間のギャップを調整することにより、所望のΔn・dを得ることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。また、ネマチック相温度範囲とは特に指定のない限り、固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度から、ネマチック相−等方性液体相転移温度までの温度範囲(温度差)を意味する。
【0081】
N−I:ネマチック相−等方性液体相転移温度
X−N:固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度
Δε:20℃における誘電異方性
Δn:20℃における屈折率異方性
【0082】
(実施例1)
液晶組成物を支持する基板として2枚のITO付ガラス基板を用意し、一方のITO付ガラス基板には、高チルトの強い極角アンカリング力を得るため、SiO(厚さ107nm)を蒸着し、もう一方には、弱い極角アンカリング力を得るため、式(G)
【0083】
【化11】

【0084】
で表されるポリマー(塩化ビニル−イソブチルビニルエーテル共重合体)を下記手法にて厚さ20nmで被覆した。
【0085】
工程1:N−メチル−ピロリドン/ブトキシエタノールの50/50混合物に上記ポリマーを溶解した0.75%溶液を、スピンコーティングにより付着させる。
工程2:150℃、1.5時間の条件でアニーリングする。
工程3:100ワットの水銀灯を用いて、2時間紫外線照射(λ=254nm)する。
工程4:150℃、30分の条件でアニーリングする。
工程5:織物ベルベットを被覆したローラーによりブラッシング処理(ラビング)して、方位角アンカリングを誘起させる。
【0086】
上記2枚の基板を1.5μmのスペーサーを介して張り合わせ、BiNem(登録商標)型セルを組み、以下に示す液晶組成物(H)中に、25℃における自然ピッチが6μmとなるようカイラル剤S−811(Merck社)を添加した後、セル内に注入した。
【0087】
【化12】

【0088】
動作温度を測定するため複数の測定温度を設定し、各温度にて前記セルにパルス幅5msの電圧を1V刻みに最大30Vまで印加し、アンカリング破壊電圧を測定することによって駆動電圧を測定し、動作温度範囲を評価した。
【0089】
液晶組成物(H)の物性値は、TN−I=80.5℃、TX−N=−30℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=110.5℃であった。また、誘電異方性εΔε=2.35×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.123であった。したがってこのセルのΔn・dは184.5nmである。
【0090】
この液晶組成物(H)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は0〜66℃であり、動作温度幅は66℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは18.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、13.7Vである。Δn・dを140nmとしたときのUλ/4は、次の数式(4)によって換算した。
【0091】
【数4】

【0092】
(実施例2)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(I)に変えて、同様の評価を行った。
【0093】
【化13】

【0094】
液晶組成物(I)の物性値は、TN−I=78.0℃、TX−N=−28℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=106.0℃であった。また、誘電異方性εΔε=1.93×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.1048であった。したがってこのセルのΔn・dは157.2nmである。
【0095】
この液晶組成物(I)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は0〜65℃であり、動作温度幅は65℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは18.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、16.0Vである。
【0096】
(実施例3)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(J)に変えて、同様の評価を行った。
【0097】
【化14】

【0098】
液晶組成物(J)の物性値は、TN−I=73.6℃、TX−N=−25℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=98.6℃であった。また、誘電異方性εΔε=3.39×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.1269であった。したがってこのセルのΔn・dは190.35nmである。
【0099】
この液晶組成物(J)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は−10〜60℃であり、動作温度幅は70℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは12.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、8.8Vである。
【0100】
(実施例4)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(K)に変えて、同様の評価を行った。
【0101】
【化15】

【0102】
液晶組成物(K)の物性値は、TN−I=76.0℃、TX−N=−34℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=110.0℃であった。また、誘電異方性εΔε=1.87×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.1334であった。したがってこのセルのΔn・dは200.1nmである。
【0103】
この液晶組成物(K)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は−5〜70℃であり、動作温度幅は75℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは13.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、9.1Vである。
【0104】
(実施例5)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(L)に変えて、同様の評価を行った。
【0105】
【化16】

【0106】
液晶組成物(L)の物性値は、TN−I=82.2℃、TX−N=−15℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=97.2℃であった。また、誘電異方性εΔε=1.68×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.108であった。したがってこのセルのΔn・dは162nmである。
【0107】
この液晶組成物(L)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は0〜70℃であり、動作温度幅は70℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは16.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、13.8Vである。
【0108】
(実施例6)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(M)に変えて、同様の評価を行った。
【0109】
【化17】

【0110】
液晶組成物(M)の物性値は、TN−I=74.0℃、TX−N=−40℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=114.0℃であった。また、誘電異方性εΔε=1.94×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.1077であった。したがってこのセルのΔn・dは161.55nmである。
【0111】
この液晶組成物(M)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は−3〜68℃であり、動作温度幅は71℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは14.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、12.1Vである。
【0112】
(実施例7)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(N)に変えて、同様の評価を行った。
【0113】
【化18】

【0114】
液晶組成物(N)の物性値は、TN−I=75.3℃、TX−N=−30℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=103.5℃であった。また、誘電異方性εΔε=1.98×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.109であった。したがってこのセルのΔn・dは163.5nmである。
【0115】
この液晶組成物(N)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は0〜65℃であり、動作温度幅は65℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは18.5Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、15.8Vである。
【0116】
(比較例1)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(P)に変えて、同様の評価を行った。
【0117】
【化19】

【0118】
この液晶組成物(P)の物性値は、TN−I=61.3℃、TX−N=−25℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=86.3℃であった。また、誘電異方性εΔε=2.28×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.157であった。したがってこのセルのΔn・dは235.5nmである。
【0119】
この液晶組成物(P)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は−0〜50℃であり、動作温度幅は50℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは14.1Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、8.4Vである。
【0120】
(比較例2)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(Q)に変えて、同様の評価を行った。
【0121】
【化20】

【0122】
この液晶組成物(Q)の物性値は、TN−I=61.0℃、TX−N=−20℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=81.0℃であった。また、誘電異方性εΔε=2.57×10−10F/m、屈折率異方性Δn=0.156であった。したがってこのセルのΔn・dは234nmである。
【0123】
この液晶組成物(Q)のBiNem(登録商標)型セルにおける動作温度範囲は5〜50℃であり、動作温度幅は45℃であった。また、20℃におけるしきい値電圧Uは14.2Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、8.5Vである。
【0124】
(比較例3)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(R)に変えて、同様の評価を行った。
【0125】
【化21】

【0126】
この液晶組成物(R)の物性値は、TN−I=88.4℃、TX−N=−44℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=132.4℃であった。また、誘電異方性εΔε=8.50×10−11F/m、屈折率異方性Δn=0.107であった。したがってこのセルのΔn・dは160.5nmである。
【0127】
この液晶組成物(R)のBiNem(登録商標)型セルでの20℃におけるしきい値電圧Uは72.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、62.8Vである。
【0128】
(比較例4)
実施例1における液晶組成物(H)を、以下に示す液晶組成物(S)に変えて、同様の評価を行った。
【0129】
【化22】

【0130】
この液晶組成物(S)の物性値は、TN−I=91.6℃、TX−N=−44℃で、ネマチック液晶相温度範囲ΔT=135.6℃であった。また、誘電異方性εΔε=9.21×10−11F/m、屈折率異方性Δn=0.120であった。したがってこのセルのΔn・dは180nmである。
【0131】
この液晶組成物(S)のBiNem(登録商標)型セルでの20℃におけるしきい値電圧Uは44.0Vであった。このしきい値電圧Uを、Δn・dを140nmとしたときのUλ/4に換算すると、34.2Vである。
【0132】
以上の実施例及び比較例で調製した液晶組成物について物性値を評価した結果及びこれらの液晶組成物を用いて液晶表示素子を作製して特性を評価した結果を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
実施例と比較例とを比較すると、実施例の方がBiNem(登録商標)型セルによる動作温度範囲が広いことが分かる。すなわち、本発明の液晶材料の組み合わせによって、バイステイブルネマチック液晶表示素子における動作温度範囲が広い液晶組成物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の液晶組成物は、少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚の基板上に支持されたバイステイブルネマチック液晶表示素子用途に好適に利用することができ、動作温度範囲の広いバイステイブルネマチック液晶表示素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0136】
1…ガラス基板、2…ITO電極層、3…強アンカリング配向膜、4…弱アンカリング配向膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A1)から(A5)
【化1】

(式(A1)から(A5)中、Rは炭素原子数2から7のアルキル基又はアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、Zは、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Zは、−CHCH−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Zは、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、又は単結合を表し、Z及びZはそれぞれ独立して、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Xはシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、又はジフルオロメトキシ基(−OCHF)を表し、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基を表し、環Tは1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、mは0又は1を表し、p及びqは0又は1を表し、ただしp+qは0又は1である。)で表される化合物群Aから選ばれる1又は2以上の化合物を20質量%以上含有し、
一般式(B1)から(B10)
【化2】

(式(B1)から(B10)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1から7のアルキル基又は炭素原子数2から7のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、Zは、−CHCH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Zは、−CHCH−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Zは、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、又は単結合を表し、Z及びZ10はそれぞれ独立して、−CHCH−、−COO−、−OCO−、又は単結合を表し、YからY14はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、フッ素原子、又は塩素原子を表し、環T及びTはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基(これらの基のうち1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表す。)で表される化合物群Bから選ばれる1又は2以上の化合物を5〜50質量%含有するネマチック液晶組成物であり、
前記ネマチック液晶組成物に使用される前記化合物の相対的な比率が、前記組成物に関して下記の物理的特性、すなわち、
・液晶組成物のネマチック−アイソトロピック転移温度(TN−I)が50℃以上であり、
・液晶組成物がネマチック相を示す温度範囲(ΔT)が50℃以上であり、
・20℃における誘電異方性が8×10−11F/m以上であり、
・20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が140nmであって少なくとも一方の基板が弱い極角アンカリング力を有する2枚のバイステイブルネマチック液晶表示素子用基板の間に支持されたときのアンカリング破壊電圧Uλ/4が25V以下であることを、
同時に得るように決定されていることを特徴とするネマチック液晶組成物。
【請求項2】
前記20℃における誘電異方性が1.3×10−10〜3.0×10−10F/mである請求項1に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項3】
前記化合物群Aから選ばれる2以上の化合物を含有する請求項1に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項4】
一般式(A1)において、Xがシアノ基を表し、Zが単結合を表し、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
一般式(A2)において、Xがシアノ基、トリフルオロメトキシ基又はフッ素原子を表し、Zが−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
一般式(A3)において、Xがシアノ基又はフッ素原子を表し、Zが−CHCH−、−CH=CH−、又は単結合を表し、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
一般式(A4)において、Xがシアノ基又はフッ素原子を表し、Zが単結合を表し、Zが−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、又は単結合を表し、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
一般式(A5)において、pが0であり、Xがシアノ基又はフッ素原子を表し、Z及びZがそれぞれ単結合を表し、Y及びYがそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表す請求項1に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項5】
一般式(A1)で表される化合物を5質量%以上含有し、一般式(A1)において、Xがシアノ基であり、Zが単結合であり、Y及びYがそれぞれフッ素原子である請求項1に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項6】
20℃における屈折率異方性Δnが0.06〜0.13である請求項1に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項7】
20℃における屈折率異方性Δnが0.06〜0.13であり、前記20℃における誘電異方性が1.3×10−10〜3.0×10−10F/mである請求項1に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項8】
20℃における屈折率異方性Δnが0.06〜0.13であり、1枚偏光板モードに使用される請求項1から4のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のネマチック液晶組成物がセルを形成する2枚の基板の間に支持され、これら基板の内側の面に配向膜及び電極構造を備えており、
前記少なくとも一方の基板の配向膜は、20℃における屈折率異方性Δnと厚さdとの積(Δn・d)が140nmである厚さdを有するセルにおいてアンカリング破壊電圧Uλ/4が25V以下となることとして定義される弱い極角アンカリング力を有し、前記弱い極角アンカリング力によって前記液晶組成物が少なくとも2つの異なる安定状態をとることができ、
前記電極構造に適当な電気信号が印加されたときに少なくとも2つの異なる安定状態の間のスイッチングが達成されるバイステイブルネマチック液晶表示素子。
【請求項10】
前記バイステイブルネマチック液晶表示素子がアンカリング破壊型である請求項9に記載のバイステイブルネマチック液晶表示素子。
【請求項11】
前記少なくとも2つの異なる安定状態として、液晶組成物中の分子が互いに少なくとも±20°の範囲で略平行に配列されて均一又はわずかにねじれた第1の安定テクスチャーと、前記2枚の基板間で180±20°でねじれたテクスチャーをとる第2の安定テクスチャーとを有し、
前記電極構造に適当な電気信号が印加されたときに前記第1の安定テクスチャーと第2の安定テクスチャーとの間のスイッチングが達成される請求項9に記載のバイステイブルネマチック液晶表示素子。
【請求項12】
前記2つの安定テクスチャー間のスイッチングは、少なくとも1つの基板の極角アンカリングの破壊によって達成される請求項11に記載のバイステイブルネマチック液晶表示素子。
【請求項13】
前記2つの基板の配向膜によるアンカリングは、両方ともモノステイブルである請求項9に記載のバイステイブルネマチック液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527381(P2010−527381A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539557(P2009−539557)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/JP2008/059500
【国際公開番号】WO2008/143340
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(500225778)
【Fターム(参考)】