説明

ネームプレートの作製方法

【課題】
簡略化した工程で原稿どおりの鮮明なネームプレートを得ることができ、またコストを下げると共に少量多品種生産を可能にするネームプレートの作製方法を提供する。
【解決手段】
本発明のネームプレートの作製方法は、
A)基材フィルム上に、熱膨張性粒子と粘着剤とからなる熱膨張性粘着層、セパレータをこの順に有してなる粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットする工程、
B)ハーフカットした基材フィルム及び熱膨張性粘着層をセパレータから剥離して、金属板のエッチングしたくない部分に貼着する工程、
C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着されていない部分の金属板をエッチングする工程、
D)100℃以上の環境に、5分間以上放置することにより、粘着フィルムを金属板から自然剥離する工程、
を順に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板をエッチングすることによってネームプレートを作製する場合のネームプレート作製方法に関し、特に簡略化した工程で原稿どおりの鮮明なネームプレートを得ることができるネームプレート作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板をエッチングによってネームプレートを作製する場合、主にシルク印刷による方法と、カッティングシートを用いる方法があった。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−172466号公報(請求項1、段落番号0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シルク印刷の場合、版を作成するためのコストがかかり、またエッチング後にインクを剥がす工程も必要になり、少量生産ではコストと手間がかかる問題があった。
【0005】
一方、カッティングシートを用いる場合、エッチング後のカッティングシートの剥離性を考慮し、カッティングシートの粘着層を微粘着とすると、エッチング液が粘着層を侵食することにより原稿どおりの鮮明なものが作製しにくく、品質の点から歩留まりの低下を引き起こしている。その結果、コスト高になるという問題がある。また、粘着層がエッチング液により侵食されないよう考慮して、粘着層を強粘着とすると、エッチング後、カッティングシートを剥離する際に糊残りを引き起こし、その後洗浄の工程などが生じ、工程の簡略化メリットがなくなってしまうという問題がある。
【0006】
さらに、一般に提供されているカッティングシートの素材は塩化ビニル系樹脂のものが多く、カッティングシート自体の耐熱性が低く、エッチング、洗浄後にさらに耐熱性を有する別の保護フィルムに貼り替える必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、工程を簡略化しつつ、原稿どおりの鮮明なネームプレートを得ることができ、コストを下げると共に少量多品種生産を可能にするネームプレートの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のネームプレートの作製方法は、A)基材フィルム上に、熱膨張性粒子と粘着剤とからなる熱膨張性粘着層、セパレータをこの順に有してなる粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットする工程、B)ハーフカットした基材フィルム及び熱膨張性粘着層をセパレータから剥離して、金属板のエッチングしたくない部分に貼着する工程、C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着されていない部分の金属板をエッチングする工程、D)100℃以上の環境に、5分間以上放置することにより、粘着フィルムを金属板から自然剥離する工程、を順に行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のネームプレートの作製方法は、基材フィルムは、熱収縮性フィルム、接着層、非熱収縮性フィルムをこの順に有するものであり、前記非熱収縮性フィルム上に熱膨張性粘着層を有する粘着フィルムを用いたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のネームプレートの作製方法は、接着層は、厚みが0.5μm〜10μm、15℃における貯蔵弾性率(G’)が1.00×105以上、100℃における貯蔵弾性率(G’)が1.00×103以上であり、かつtanδ極大温度が5℃以上であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のネームプレートの作製方法は、基材フィルムと熱膨張性粘着層との間に粘着層を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のネームプレートの作製方法によれば、工程を簡略化しつつ、原稿どおりの鮮明なネームプレートを得ることができ、コストを下げると共に少量多品種生産を可能にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のネームプレートの作製方法は、A)基材フィルム上に、熱膨張性粒子と粘着剤とからなる熱膨張性粘着層、セパレータをこの順に有してなる粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットする工程、B)ハーフカットした基材フィルム及び熱膨張性粘着層をセパレータから剥離して、金属板のエッチングしたくない部分に貼着する工程、C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着されていない部分の金属板をエッチングする工程、D)100℃以上の環境に、5分間以上放置することにより、粘着フィルムを金属板から剥離する工程、を順に行う。
【0014】
このような本発明のネームプレートの作製方法は、熱膨張性粒子と粘着剤とからなる熱膨張性粘着層を金属板に貼り合せ、エッチング液に浸して、粘着フィルムの貼着されていない部分の金属板をエッチングした後、加熱により熱膨張性粒子が発泡することにより熱膨張性粘着層の粘着力が弱まるため、粘着フィルムを金属板から簡単に剥離することができる。すなわち、加熱前は金属板にしっかりと貼着されているためエッチング液に侵食されにくく原稿どおりにエッチングすることができ、加熱後は粘着力が低下することにより金属板に糊残りすることがなく簡単に剥離することができるため、作業性に優れている。
【0015】
また、基材フィルムを熱収縮性フィルム、接着層、非熱収縮性フィルムをこの順に有し、前記非熱収縮性フィルム上に熱膨張性粘着層を有する粘着フィルムを用いた場合には、エッチング後、加熱により熱膨張性粒子が発泡するとともに基材フィルムが収縮し粘着層ごと金属板から自然剥離する方向となっていくため、より作業性に優れている。
【0016】
このような工程とすることにより、熱を加える(100℃以上の環境に、5分間以上放置する)だけで粘着フィルムが簡単に剥離できるので作業が容易であるし、エッチング後、洗浄、ペイント、乾燥工程などを経る場合には、粘着フィルムは乾燥工程にて簡単に剥離できるため作業を簡便化することができる。
【0017】
以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0018】
まず、本発明で用いられる金属板としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅、真鍮などがあげられる。これらの金属板をエッチングするエッチング液の種類は、前記金属板の種類に応じて適宜選択すればよく、通常は酸性溶液が用いられ、塩化第二鉄液、塩化第二銅液が用いられる。
【0019】
次に、基材フィルムについて説明する。基材フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリノルボルネン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、トリアセチルセルロース、アクリルなどのプラスチックフィルムがあげられる。このようなプラスチックフィルムとしては、熱収縮性であっても非熱収縮性であってもよく、単層であってもこれらを積層したものであってもよい。
【0020】
このような基材フィルムの厚みは、特に限定されないが、薄すぎると取り扱い性が悪く、厚すぎると経済性が悪く、また加工適正が低下するという観点から、基材フィルムのトータルの厚みで10μm〜350μm、さらには、15μm〜200μmとするのが好ましい。また、プラスチックフィルムの表面は、隣接する層との密着性を高めたり、粘着フィルムの貼着の有無を識別するため、公知の表面処理、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、サンドブラスト処理、クロム酸処理、アルカリ処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下引き易接着層、着色層の形成等のコーティング処理が施されていてもよい。
【0021】
また、このような基材フィルムとしては、熱収縮性フィルム、接着層、非熱収縮性フィルムをこの順に有するものを用いることが好ましい。そして、このような基材フィルムを用いる場合には、非熱収縮性フィルム側に後述する熱膨張性粘着層を有する構成の粘着フィルムとすることが好ましい。基材フィルムをこのような構成とすることにより、粘着フィルムを剥離する際に、熱を加えただけで金属板から自然剥離しやすくすることができる。
【0022】
熱収縮性フィルムは、基材フィルムにおいて、熱が加わった際に収縮することにより後述する非熱収縮性フィルムを引っ張り、金属板から粘着層ごとめくり上げるために用いられる。このような熱収縮性フィルムは、少なくとも1軸方向に収縮性を有するフィルムであればよい。熱収縮性フィルムは、1軸方向のみに収縮性を有していてもよいし、1軸方向に主たる収縮性を有し、該方向とは異なる方向(例えば、該方向に対して直交する方向)に副次的な収縮性を有していてもよい。熱収縮性フィルムは単層であってもよく、2層以上からなる複層であってもよい。
【0023】
熱収縮性フィルムの主収縮方向の熱収縮率は、120℃において、10〜90%である。熱収縮性フィルム層を構成する熱収縮性フィルムの主収縮方向以外の方向の熱収縮率は、好ましくは10%より小さく、さらに好ましくは5%以下である。熱収縮性フィルムの熱収縮性は、例えば押出機により押し出されたフィルムに延伸処理を施すことにより付与することができる。
【0024】
このような熱収縮性フィルムとしては、上述したプラスチックフィルムのうち、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等から選択される1種又は2種以上の樹脂からなる1軸延伸フィルムがあげられる。なかでも、後述する接着層の接着層塗工液の塗工作業性等に優れる点で、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂(環状ポリオレフィン系樹脂を含む)、ポリウレタン系樹脂からなる1軸延伸フィルムが好ましい。
【0025】
熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定されず、後述する非熱収縮性フィルムとのバランスから適宜選択すればよいが、5μm〜300μmとするのが好ましく、さらには10μm〜100μmとするのが好ましい。熱収縮性フィルムの厚みが厚すぎると、経済性が悪くネームプレートの精度が落ち、また、厚みが薄すぎると、加熱後自然剥離することができなくなる傾向にある。
【0026】
また、熱収縮性フィルムの表面は、隣接する層との密着性を高めたり、粘着フィルムの貼着の有無を識別するため、上述した公知の表面処理、及びコーティング処理が施されていてもよい。
【0027】
次に、接着層は、基材フィルムにおいて、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムとを接着させるために設けられる。このような接着層は、加熱し熱収縮性フィルムが収縮する際に凝集破壊を起こさず熱収縮性フィルムに非熱収縮性フィルムを追従させることができるものでなければならない。
【0028】
このような接着剤としては、例えばアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系等の接着剤があげられる。そして、このような接着剤は15℃における貯蔵弾性率(G’)が1.00×105以上、さらには2.00×105以上であることが好ましく、100℃における貯蔵弾性率(G’)が1.00×103以上、さらには1.00×104以上であることが好ましく、かつtanδ極大温度が5℃以上、さらには10℃以上であることが好ましい。このように、接着剤を上記のような範囲とすることにより、熱を加えるだけでより簡単に金属板から自然剥離させることができる。
【0029】
また、接着層の厚みは、接着剤の種類によって異なってくるが、0.5μm〜10μm、好ましくは2μm〜10μmとすることが好ましい。接着層の厚みを0.5μm以上とすることにより、熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムとをより接着させることができ、10μm以下とすることにより、加熱時により良好に金属版から自然剥離しやすくすることができる。接着層の厚みを厚くしすぎると、加熱時に熱収縮性フィルムが収縮した際に、接着層及び非熱収縮性フィルムが熱収縮性フィルムに追従できず、金属板から熱膨張性粘着層ごとめくり上げにくくなっていく傾向があり、また、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットする際の加工適正も悪くなっていく傾向がある。
【0030】
次に、非熱収縮性フィルムは、基材フィルムにおいて、加熱により熱収縮性フィルムが収縮する際に、熱膨張性粘着層が基材フィルムとの界面から剥離せずに、基材フィルムとともに金属板から剥離できるようにするために用いられる。基材フィルムのみが極端に収縮してしまうと、熱膨張性粘着層が基材フィルムの収縮に追従しにくくなるため、熱膨張性粘着層と基材フィルムとの間で層間剥離を起こしやすくなる。よって、熱収縮性フィルムと熱膨張性粘着層とが直接積層されているよりも、熱収縮性フィルムと熱膨張性粘着層との間に非熱収縮性フィルムが設けられている方が、基材フィルムを熱膨張性粘着層ごとめくり上げやすくすることができる。このような非熱収縮性フィルムの熱収縮率は、120℃において10%未満である。
【0031】
このような非熱収縮性フィルムとしては、上述したプラスチックフィルムと同じものがあげられる。非熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定されないが、薄すぎると取り扱い性が悪く、厚すぎると加熱時に熱収縮性フィルムが収縮した際に熱収縮性フィルムに追従できず金属板から熱膨張性粘着層ごとめくり上げにくくなるという観点から、2μm〜200μm、さらには、5μm〜100μmとするのが好ましい。また、非熱収縮性フィルムの表面は、隣接する層との密着性を高めたり、粘着フィルムの貼着の有無を識別するため、上述した熱収縮性フィルムと同様の表面処理が施されていてもよい。
【0032】
本発明で用いる熱収縮性フィルムと非熱収縮性フィルムとの違いは、その熱収縮率が異なる点にある。たとえば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを製造する際に、その製造条件等を適宜設定することにより、熱収縮率の異なる二種のポリエチレンテレフタレートフィルムを製造することが可能である。
【0033】
次に熱膨張性粘着層について説明する。熱膨張性粘着層は、粘着性を付与するための粘着剤、及び熱膨張性を付与するための熱膨張性粒子(マイクロカプセル)を含んでいる。このため熱膨張性粘着層は、熱が加わった際に熱膨張粒子が発泡及び/又は膨張することにより電子部品に接着する面積が少なくなり、基材フィルムとともに熱膨張性粘着層ごとめくり上げられやすくすることができる。
【0034】
粘着剤は、加熱時に熱膨張性粒子の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しないようなものが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
粘着剤は、粘着性成分(ベースポリマー)のほかに、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
次に、熱膨張性粒子としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微粒子であればよい。前記殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。なお、熱膨張性微小球には、例えば、マイクロスフェア[商品名、松本油脂製薬社製]などの市販品もある。
【0037】
加熱処理により熱膨張性粘着層の接着力を効率よく低下させるため、体積膨張率が5倍以上、なかでも7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有する熱膨張性微小球が好ましい。
【0038】
熱膨張性粒子の配合量は、熱膨張性粘着層の膨張倍率や接着力の低下性などに応じて適宜設定しうるが、通常は熱膨張性粘着層を形成する粘着剤100重量部に対して、例えば1〜150重量部、好ましくは10〜130重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。
【0039】
熱膨張性粒子の大きさは、熱膨張性粘着層の厚みによって異なってくるので一概にいえないが、初期(熱を加える前の状態)の粘着性を得るという観点及び加熱後、金属板から良好な剥離性を得るという観点から、平均粒子径が下限として3μm以上、さらには6μm以上が好ましく、上限として20μm以下、さらには15μm以下とすることが好ましい。また、熱膨張性粒子の平均粒子径は、熱膨張性粘着層の厚みの30〜90%、さらには40〜80%であることが好ましい。
【0040】
熱膨張性粘着層の厚みは、特に限定されないが、抜き加工適正及びエッチング液の浸透を防止するという観点から、5μm〜100μm、好ましくは7μm〜50μm、さらに好ましくは10μm〜40μmである。また、熱膨張性粘着層の厚みが薄すぎると、添加する熱膨張性粒子も過度に小さいものとなり、熱膨張性粘着層の加熱後の変形度が小さく、粘着力(タック性)が低下しにくくなる傾向がある。
【0041】
また、本発明で用いられる粘着フィルムは、取り扱い性を向上させるため、熱膨張性粘着層の表面にセパレータを設けることが好ましい。このようなセパレータとしては、特に限定されないが、例えばポリエチレンラミネート紙や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体等のプラスチックフィルムや、前記プラスチックフィルムの一方の面に離型処理を施したものなどがあげられる。
【0042】
セパレータの厚みは、特に限定されないが、一般には、10μm〜250μm、好ましくは20μm〜125μmのものが使用される。
【0043】
また、本発明で用いられる粘着フィルムは、上述した基材フィルムと熱膨張性粘着層との間に粘着層を有するものであっても良い。粘着層を有することにより基材フィルム(非熱収縮性フィルム)と熱膨張性粘着層との接着性をより向上させることができる。
【0044】
このような粘着層に用いる粘着剤としては、特に限定されず上述した熱膨張性粘着層と同様の粘着剤を用いることができる。
【0045】
粘着層の厚みとしては、特に限定されないが、抜き加工適正及びエッチング液の浸透を防止するという観点から、下限として1μm以上、好ましくは3μm以上であり、上限として20μm以下、好ましくは10μm以下である。
【0046】
以上のような本発明で用いられる粘着フィルムを製造する方法としては、例えば、上述した熱膨張性粒子、粘着剤及び必要に応じて希釈溶媒や添加剤を混合して熱膨張性粘着層塗布液とし、従来公知のコーティング方法、例えば、バーコーター、ダイコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレー、スクリーン印刷などによって上述した非熱収縮性基材上に塗布した後、必要に応じて乾燥させ上述したセパレータと貼り合せる。
【0047】
次に、上記の非熱収縮性フィルムのもう一方の面に、上述した接着剤及び必要に応じて希釈溶媒や添加剤を混合して接着層塗布液とし、上記と同様の従来公知のコーティング方法によって塗布した後、必要に応じて乾燥させ、上述した熱収縮性フィルムと貼り合せて必要に応じてエイジング(例えば23℃、7日間)することにより、本発明で用いられる粘着フィルムを得ることができる。
【0048】
また、例えば、上述した非熱収縮性フィルムの一方の面に、上記と同様にして接着層を形成し、得られた接着層の表面と上述した熱収縮性フィルムと貼り合せて基材フィルムを作製する。
【0049】
次に、上述したセパレータ上に上記と同様にして熱膨張性粘着層を形成し、次いで、上述した粘着剤及び必要に応じて希釈溶媒や添加剤を混合して粘着層塗布液を作製して、当該熱膨張性粘着層の上に塗布、乾燥させ、熱膨張性粘着層の上に粘着層を形成する。得られた粘着層の表面と上記で作製した基材フィルムの非熱収縮性フィルムと貼り合せ、上記と同様にしてエイジングすることにより、本発明で用いられる粘着フィルムを得ることができる。
【0050】
なお、以上の説明では、本発明で用いられる粘着フィルムの製造方法の一例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばセパレータ上に熱膨張性粘着層、(粘着層、)非熱収縮性フィルム、接着層を順に形成し、熱収縮性フィルムと貼り合せることにより作製してもよい。また、例えばまず基材フィルムを作製し、次いで基材フィルムの非熱収縮性フィルム上に(粘着層)、熱膨張性粘着層を順に形成しセパレータと貼り合せて作製してもよい。
【0051】
また、基材フィルムが非熱収縮性フィルム又は熱収縮性フィルムの単独の構成とした場合には、例えば、上述したセパレータ上に熱膨張性粘着層、(粘着層)を順に形成し、非熱収縮性フィルム又は熱収縮性フィルムと貼り合せることにより作製することができる。また、基材フィルムが非熱収縮性フィルムの単独の構成とした場合には、非熱収縮性フィルムの一方の面に、(粘着層)、熱膨張性粘着層を順に形成しセパレータと貼り合せることにより作製してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実験例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実験例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0053】
[実験例1]
(1)粘着フィルム
基材フィルム(120℃における熱収縮率10%未満、厚み100μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム、コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方の熱膨張性粘着層塗布液をダイコーター法により塗布、乾燥させて、厚み40μmの熱膨張性粘着層を形成し、セパレータ(厚み38μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム、MRF:三菱化学ポリエステルフィルム社)の離型処理面と貼り合せ、40℃の環境で、3日間キュアリングすることにより、実験例1の粘着フィルムを得た。
【0054】
<実験例1の熱膨張性粘着層塗布液の処方>
・熱膨張性粒子(平均粒子径10〜20μm) 30部
(体積膨張率約20倍)
(F50D:松本油脂製薬社)
・アクリル系粘着剤(固形分37%) 100部
(オリバインBPS5296:東洋インキ製造社)
・架橋剤(ポリイソシアネート、固形分37.5%) 1部
(オリバインBXX4773:東洋インキ製造社)
・酢酸エチル 108部
【0055】
(2)ネームプレートの作製
A)上記(1)の粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットした。次に、B)ハーフカットした基材フィルム及び熱膨張性粘着層をセパレータから剥離して金属板のエッチングしたくない部分に貼り合せた。次に、C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着していない部分の金属板をエッチングした。その後、水道水で洗浄し、粘着フィルムの貼着していない部分の金属板をペイントした。次に、D)100℃で5分間乾燥させた後、粘着フィルムを金属板から剥離し、ネームプレートを作製した。
【0056】
[実験例2]
(1)粘着フィルム
実験例1と同様の基材フィルムの一方の面に、下記処方の粘着層塗布液をダイコーター法により塗布、乾燥させて、厚み30μmの粘着層を形成した。次に、実験例1と同様の
セパレータの離型処理面に、実験例1の熱膨張性粘着層塗布液をダイコーター法により塗布、乾燥させて、厚み40μmの熱膨張性粘着層を形成し、上記の基材フィルム上にある粘着層と貼り合せ、40℃の環境で、3日間キュアリングすることにより、実験例2の粘着フィルムを得た。
【0057】
<実験例2の粘着層塗布液の処方>
・アクリル系粘着剤(固形分37%) 100部
(オリバインBPS5296:東洋インキ製造社)
・架橋剤(ポリイソシアネート、固形分37.5%) 0.5部
(オリバインBXX4773:東洋インキ製造社)
・酢酸エチル 108部
【0058】
(2)ネームプレートの作製
A)上記(1)の粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットした。次に、B)ハーフカットした基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをセパレータから剥離して金属板のエッチングしたくない部分に貼り合せた。次に、C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着していない部分の金属板をエッチングした。その後、水道水で洗浄し、粘着フィルムの貼着していない部分の金属板をペイントした。次に、D)100℃で5分間乾燥させた後、粘着フィルムを金属板から剥離し、ネームプレートを作製した。
【0059】
[実験例3]
(1)粘着フィルム
(1)−1基材フィルムの作製
非熱収縮性フィルム(120℃における熱収縮率10%未満、厚み50μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム、コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方の接着層塗布液をバーコーター法により塗布、乾燥させて、厚み5μmの接着層を形成し、熱収縮性フィルム(120℃における熱収縮率70%以上、厚み30μm、ポリエチレンテレフタレートフィルム、スペースクリーンS7053:東洋紡績社)と貼り合せて基材フィルムを作製した。
【0060】
なお、接着剤は、15℃における貯蔵弾性率(G’)は1.29×106、100℃における貯蔵弾性率(G’)が5.71×105、tanδ極大温度は34℃であった。
【0061】
<実験例3の接着層塗布液の処方>
・ポリウレタン系接着剤(固形分50%) 100部
(タケラックA971:三井化学社)
・架橋剤(ポリイソシアネート化合物、固形分60%)9.7部
(タケネートD110N:三井化学社)
・トルエン 57部
・メチルエチルケトン 57部
【0062】
(1)−2粘着フィルムの作製
セパレータA(実験例1と同じもの)の離型処理面に、実験例2の粘着層塗布液をダイコーター法により塗布、乾燥させて、厚み30μmの粘着層を形成し、上記(1)で作製した基材フィルムの非熱収縮性フィルム面と貼り合せた。その後、セパレータAを剥離した。
【0063】
次に、セパレータB(セパレータAと同じもの)の離型処理面に、実験例2の熱膨張性粘着層塗布液をダイコーター法により塗布、乾燥させて、厚み40μmの熱膨張性粘着層を形成し、上記の基材フィルム上にある粘着層と貼り合せ、40℃の環境で、3日間キュアリングすることにより、実験例3の粘着フィルムを得た。
【0064】
(2)ネームプレートの作製
A)上記(1)で作製した実験例3の粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットした。次に、B)ハーフカットした基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをセパレータから剥離して金属板に貼り合せた。次に、C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着していない部分の金属板をエッチングした。その後、水道水で洗浄し、粘着フィルムの貼着していない部分の金属板をペイントした。次に、D)100℃で5分間乾燥させることにより、粘着フィルムは金属板から自然剥離され、ネームプレートを作製した。
【0065】
本発明のネームプレートの作製方法によれば、シルク印刷と異なり、版を作成する必要がないため、コストがかからず、またエッチング後にインクを剥がす工程も必要もないため、コストも手間もかからないものとなった。
【0066】
また、本発明によれば、熱膨張性粒子と粘着剤とからなる熱膨張性粘着層を有する粘着フィルムを用いているため、加熱前は金属板にしっかりと貼着されてエッチング液に侵食されにくく原稿どおりにエッチングすることができ、加熱後は熱膨張性粒子が膨張することにより粘着力が低下し、金属板に糊残りせずに簡単に剥離することができた。
【0067】
また、実験例3で用いた粘着フィルムは、基材フィルムとして、熱収縮性フィルム、接着層、非熱収縮性フィルムをこの順に有し、非熱収縮性フィルム上に粘着層及び熱膨張性粘着層を有するものを用いたため、加熱後、基材フィルムは金属板に糊残りすることなく、自然剥離し、作業が容易であった。このように実験例3のネームプレートの作製方法によれば、エッチング工程後、100℃の環境に、5分間放置したのみで自然剥離するため、作業を簡便化することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)基材フィルム上に、熱膨張性粒子と粘着剤とからなる熱膨張性粘着層、セパレータをこの順に有してなる粘着フィルムを、基材フィルム側から熱膨張性粘着層までをハーフカットする工程、
B)ハーフカットした基材フィルム及び熱膨張性粘着層をセパレータから剥離して、金属板のエッチングしたくない部分に貼着する工程、
C)エッチング液に浸して粘着フィルムの貼着されていない部分の金属板をエッチングする工程、
D)100℃以上の環境に、5分間以上放置することにより、粘着フィルムを金属板から剥離する工程、
を順に行うことを特徴とするネームプレートの作製方法。
【請求項2】
前記基材フィルムは、熱収縮性フィルム、接着層、非熱収縮性フィルムをこの順に有するものであり、前記非熱収縮性フィルム上に熱膨張性粘着層を有する粘着フィルムを用いたことを特徴とする請求項1または2記載のネームプレートの作製方法。
【請求項3】
前記接着層は、厚みが0.5μm〜10μm、15℃における貯蔵弾性率(G’)が1.00×105以上、100℃における貯蔵弾性率(G’)が1.00×103以上であり、かつtanδ極大温度が5℃以上であることを特徴とする請求項2記載のネームプレートの作製方法。
【請求項4】
前記基材フィルムと前記熱膨張性粘着層との間に粘着層を有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のネームプレートの作製方法。

【公開番号】特開2011−208179(P2011−208179A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74463(P2010−74463)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】