説明

ノイズフィルタ伝送線路

【課題】情報や電力を伝送するために使用される伝送線路であって,ノイズフィルタ機能を具備した低損失,省スペースで安価なノイズフィルタ伝送線路を提供する。
【解決手段】高周波ノイズ削減のために、撚り線導体1の外周部に表皮効果促進させる素線配置、即ち単線または撚り線導体の外周に,例えばメッキ,素線およびテープなどにより,抵抗率および透磁率のより大きな導体2を施した中心導体A3の外周に絶縁被覆4を施した絶縁心線A5を少なくとも1本を内包した伝送線路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、例えば,インバータなどの連続パルスにより電力を制御する装置の入出力配線に適用可能な伝送線路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
省エネ対策として,例えばモータや蛍光灯,高圧ランプなどの照明器具において,インバータに代表される連続パルスにより電力を制御する装置の利用が増えてきている。インバータのスイッチング動作に伴いノイズが発生し外部機器が誤動作するなど悪影響を与えている。従来,このノイズ対策として,リアクトルとコンデンサからなるノイズフィルタ回路をインバータとモータとを接続する伝送線路に縦続接続する方法が知られている。さらには,導体の外周に,より抵抗率の大きい導体を施し高周波ノイズを熱に換える方法もある(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許公開2008−159409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,従来のノイズフィルタ回路は,例えば,インバータ駆動モータシステムにおいては,インバータとモータとを接続する伝送線路に縦続接続するためシステムの電流容量が大きくなると,電力損失および発熱が増加するため,大電力対応の高価な大型部品が使用され,大きな設置スペースを必要となる。本発明は,高周波ノイズを熱に換える方法を改善し,より表皮効果を促進する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高周波電流の表皮効果を利用して高周波ノイズを減衰させ濾波する。高周波電流は導体の表層を流れ,その深さdは一般的に次式で与えられる。

ρ:導体の抵抗率
ω:電流の角周波数
μ:導体の透磁率
従来,より抵抗率の大きい導体を外周に使用することで高周波ノイズを消費するが,式(1)から抵抗率を増加すると表皮の深さは厚くなることが分かる。従って,さらに透磁率のより大きな導体を外周に施すことで表皮の深さを薄くでき,より高周波ノイズの消費を増加することが可能となる。
本発明は,単線導体または複数の導体素線を撚り合わせた撚り線導体の外周に、例えばメッキや素線,金属テープ,絶縁素線との組合せにより,前記撚り線導体より抵抗率および透磁率が大きくなるように,導体を配置した中心導体に絶縁被覆した心線を伝送線路に使用する,またはノイズのパスとなるように配置する。さらには,機器間を接続する伝送線路において,フィルタリングが伝送線路全体で一様となるように,伝送線路が一様な構造となることをも特徴とする。
本発明により,本来必要としない周波数成分のノイズに対して,より抵抗率および透磁率の大きな導体により,負荷で必要とする周波数成分よりも高いインピーダンス値および抵抗値となることから,伝送線路へのノイズの流入を抑制し,さらには消費することで減衰させることが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
本発明により,伝送線路のみでノイズをフィルタリングすることが可能となることから,低損失,省スペースおよび経済性に優れたノイズ対策が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ノイズフィルタ伝送線路実施例1
【図2】ノイズフィルタ伝送線路実施例2
【図3】ノイズフィルタ伝送線路実施例3
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
第1の実施の形態例を図1に示す。
銅の撚り線導体1の外周に,銅よりもより低効率および透磁率の大きなニッケル線2を撚り合わせて圧縮して中心導体A3とし,その中心導体の外周に絶縁被覆4を施した絶縁心線A5を複数本撚り合わせ,その上にシース6を施したケーブル
【実施例2】
【0009】
第2の実施の形態例を図2に示す。
銅の撚り線導体1の外周に絶縁被覆4を施した絶縁心線B10を3本,ケーブル断面方向からみて,それぞれの絶縁心線を,ほぼ三角形の3つの頂点上に独立させて配置し,さらに,銅の単線7の外周に鉄テープ8を巻きつけた心線9からなる3本の電流パス線をそれぞれ,ほぼ三角形の3つの頂点に独立させて配置し,かつ,絶縁心線の頂点と電流パス線の頂点がほぼ45度のズレ角度となるように撚り合わせ,その外周にシース6を施したケーブル
【実施例3】
【0010】
第3の実施の形態例を図3に示す。
銅の撚り線導体1の外周に,銅素線と絶縁素線11を交互に撚り合わせて中心導体B12とし,その中心導体の外周に絶縁被覆4を施した絶縁心線C13を複数本撚り合わせ,その上にシース6を施したケーブル
【符号の説明】
【0011】
1 撚り線導体
2 ニッケル線
3 中心導体A
4 絶縁被覆
5 絶縁心線A
6 シース
7 単線
8 鉄テープ
9 心線
10 絶縁心線B
11 絶縁素線
12 中心導体B
13 絶縁心線C


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報や電力を伝送するために使用される伝送線路であって,インバータなどのスイッチング動作に伴って発生するノイズをフィルタリングするように,単線または撚り線導体の外周に、より抵抗率および透磁率の大きな導体を外層に施した導体を中心導体とし、その上に絶縁被覆を施された少なくとも1本の心線を内包したことを特徴とする伝送線路。
【請求項2】
本来の情報や電力を伝送する主線路に沿わすように,さらにはアース線またはグランド線よりも主線路の近傍となるように,前記中心導体を使用した心線を配置したことを特徴とする請求項1に記載の伝送線路。
【請求項3】
情報や電力を伝送するために使用される伝送線路であって,伝送線路を構成する心線の一部または全てをコイル状に巻くように,さらには磁性体へ密巻きするように,コイルを形成し,前記コイル部に金属シールドを施すことを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。
【請求項4】
前記中心導体として,単線または撚り線導体の外周に導体を構成する,より抵抗率および透磁率の大きな導体をメッキにより形成することを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。
【請求項5】
前記中心導体として,単線または撚り線導体の外周に導体を構成する,より抵抗率および透磁率の大きな導体を素線により形成することを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。
【請求項6】
前記中心導体として,単線または撚り線導体の外周に導体を構成する,より抵抗率および透磁率の大きな導体を素線により形成し,さらには圧縮したことを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。
【請求項7】
前記中心導体として,単線または撚り線導体の外周に導体を構成する,より抵抗率および透磁率の大きな導体を金属テープにより形成することを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。
【請求項8】
前記中心導体として,高周波電流電路長を長くするように,外層に施す導体を絶縁体と導体の組合せとすることを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。
【請求項9】
単線または撚り線導体の外周に導体として,ニッケルを用いたことを請求項3乃至請求項7の内の一つの請求項に記載した中心導体。
【請求項10】
単線または撚り線導体の外周に導体として,鉄を用いたことを請求項3乃至請求項7の内の一つの請求項に記載した中心導体。
【請求項11】
伝送線路を断面方向からみたとき,伝送線路のどの位置をとっても,伝送線路を構成する心線の相対位置関係が一様となることを特徴とする請求項1に記載した伝送線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−30318(P2013−30318A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164387(P2011−164387)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390002598)沖電線株式会社 (45)
【Fターム(参考)】