説明

ノイズ低減ヘッドセット

【課題】ヘッドセットのユーザによって知覚されるノイズを低減する。
【解決手段】ヘッドセットは、環状のクッション(15)に隣接する前方開口を備えたイヤカップ(11)を有している。この環状クッションは、イヤカップの内部に面した複数の開口(16A)を有するように形成されており、イヤカップの体積をクッションの体積に音響的に結合する。ドライバ(12)がイヤカップの内部にあり、マイクロフォン(17)がドライバに隣接している。能動ノイズ低減回路が、ドライバとマイクロフォンとを相互に結合している。ワイヤ・メッシュ抵抗性カバー(13)及び/又はマイクロフォンに隣接するエア・マスで構成される音響的な負荷が、イヤカップの体積における共鳴の影響を減少させるように構成され配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、ヘッドセット・ノイズの低減に関し、更に詳しくは、ヘッドセットのユーザによって知覚されるノイズを能動的及び/又は受動的に低減する新規な装置及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、米国特許第5,305,387号、第5,208,868号、第5,181,252号、第4,989,271号、第4,922,542号、第4,644,581号及び第4,455,675号が参照される。更に、ボーズ社(Bose Corporation)から市販されている又は過去において市販されていたボーズ・アクティブ・ノイズ低減ヘッドセットも参照される。このヘッドセットは、本出願において援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5305387号明細書
【特許文献2】米国特許第5208868号明細書
【特許文献3】米国特許第5181252号明細書
【特許文献4】米国特許第4989271号明細書
【特許文献5】米国特許第4922542号明細書
【特許文献6】米国特許第4644581号明細書
【特許文献7】米国特許第4455675号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の重要な目的は、ヘッドセットのためのノイズ低減を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、ユーザの耳から後方に向かって離れた位置において閉じておりユーザの耳の前方に隣接した位置において開いているイヤカップが設けられる。イヤカップの内部にはドライバがある。このイヤカップは、前方開口の中に位置するクッションを有する。このクッションは、ユーザの耳を受け入れる耳開口と、耳開口を包囲する環状の隆起部(リッジ)であって、複数の開口を有しており、隣接する開口は典型的には耳開口の円周に沿って測定された開口の幅の程度相互に離間している環状リッジとを有するように形成されている。それぞれの開口は、耳開口の円周とほぼ垂直であり、環状リッジの半径方向の幅よりも僅かに小さい半径方向の幅を有している。能動ノイズ低減のため、設けられているマイクロフォンは、ドライバに隣接しており、能動ノイズの低減とこのマイクロフォン及びドライバの周囲に音響的な負荷とを与える電子回路によってドライバに結合されている。音響的な負荷は、抵抗性のメッシュ・スクリーン及び/又は管の中の空気で構成される。
【0006】
これ以外の特徴、目的及び効果は、以下の詳細な説明を添付の図面を参照して読むことによって明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1A及び図1Bから構成される。図1Aは、本発明の実施例であるヘッドセット・イヤカップ・アセンブリの斜視図である。ただし、図1Aでは、図1Bに示されている本発明によるクッションは取り外されている。
【図2】本発明によるイヤカップ・アセンブリの断面図である。
【図3】イヤカップ・アセンブリ内部の絵画的な斜視図であるが、マイクロフォンと抵抗性カバー・プレートとは取り外されている。
【図4】イヤカップの外部を示す斜視図である。
【図5】本発明を具体化するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を、特に図1A及び図1Bを参照すると、本発明によるイヤカップ・アセンブリの斜視図が示されている。ただし、図1Bに示されている多孔性のクッションは取り外されている。イヤカップ11は、ユーザの耳から離れた側である後部12において閉じている。また、イヤカップ11は、ドライバ12と、極めて近接して設けられており、典型的には、マイクロフォンを露出する開口13Aを有するように形成され音響的負荷を備えた抵抗性メッシュ・スクリーン13によって被覆されているマイクロフォンと、を支持している。電子回路が、マイクロフォンとドライバ12とを相互に結合し、能動(アクティブ)ノイズ削減(低減)を提供し、ケーブル14を介してドライバ13によって変換(transduction)されるように装着しているユーザのためにオーディオ信号を所望のサウンド信号に交換し、更に、マイクロフォンによってノイズ低減オーディオ信号に交換する。
【0009】
次に図1Bを参照すると、クッション15が、装着しているユーザの耳に隣接した露出された前方開口をカバーしている。クッション15は、装着しているユーザの耳を受け入れる耳開口15Aと、16Aなどの複数の開口を有するように形成された耳開口15Aを包囲する環状の隆起部(リッジ)16と、を有するように形成されている。この複数の開口を通じて、組立てが終了したときには、ドライバ12に接して留まっているフォーム(foam)の環状リングを見ることができる。
【0010】
図2を参照すると、組み立てられたイヤカップ全体の断面図が示されている。ドライバ12は、イヤカップ11の中に置かれており、ドライバ・プレート12Aが、イヤカップ11のリップ11Aからリッジ11Bに向かって後方に伸長している。そして、マイクロフォン17が、ドライバ12に極めて近接し、ワイヤ・メッシュ抵抗性カバー13によって被覆されている。クッション15は、イヤカップ11の前方開口を覆い、フォーム15Bを含む。
【0011】
図3を参照すると、イヤカップ11内部の絵画的な斜視図が示されている。ただし、クッション15、マイクロフォン17及びワイヤ・メッシュ抵抗性カバー13は取り外され、構造的な詳細がある程度図解されている。イヤカップ11は、ドライバ12によって変換されるオーディオ信号を受信し、外部の電子回路とドライバ及びマイクロフォンとを相互に結合するケーブルを受け取るためのケーブル・エントリ11Cを有するように形成されている。ドライバ・プレート12Aは、ワイヤ・メッシュ抵抗性カバー13を支持する抵抗性カバー・ホルダ21A及び21Bを有している。マイクロフォン・ホルダ22は、イヤカップ11の後方壁部から伸長して、マイクロフォン17を支持し、音響的負荷を構成する空気を包囲する。ドライバ・プレート設置ボス12B及び12Cは、ドライバ12をイヤカップ11に付着させる手段を与える。ドライバ12は、イヤカップ11を、前方開口に隣接する典型的には約50ccの前方体積と、イヤカップ11の閉じた端部によって包囲される典型的には約15ccの後方体積とに分割する。
【0012】
図4を参照すると、イヤカップ11の後方図が示されており、マス・ポート11Cと、ワイヤ・メッシュによって覆われている抵抗性ポート11Dとを示している。
【0013】
次に、特に図5を参照すると、本発明を組み入れたシステムの論理構成を図解しているブロック図が示されている。これは、上で引用した米国特許第4,644,581号の図1に実質的に対応している。信号合成器30は、イヤフォンによって入力端子24において再生されることが望まれる信号と、マイクロフォンの前置増幅器35によって提供されるフィードバック信号とを代数的に合成する。信号合成器30は、合成された信号を圧縮器31に与え、圧縮器31は、ハイ・レベル信号のレベルを制限する。圧縮器31の出力は、補償器31Aに与えられる。補償器31Aは、オープン・ループ・ゲインがナイキスト安定定理(Nyquist stability criteria)を満足することを保証する補償回路を含み、それによって、このシステムは、ループが閉じられても発振することがなくなる。示されているシステムは、左右の耳ごとに同じものが作成される。
【0014】
パワー増幅器32は、補償器31Aからの信号を増幅してイヤフォン・ドライバ17を付勢し、前方空洞において音響信号を提供する。この音響信号は、音響入力端子25として表されている領域から前方空洞に入る外部ノイズ信号と合成され、前方空洞において、円36として表されている合成された音響圧力信号を生じさせ、この合成された音響圧力信号は、マイクロフォン11に与えられ変換される。マイクロフォンの増幅器35は、変換された信号を増幅し、それを信号合成器30に与える。
【0015】
以上で本発明の実施例に関する構造的な配置を説明した。次に、動作原理を説明する。能動ノイズを低減する耳周囲型(circumaural)のヘッドフォンにおける問題は、イヤカップの共鳴が、ユーザの頭部のファンクション(相関関係にある)となる粗い音響応答を生じさせ、電子的な補償を困難にしている。
【0016】
音響応答を平滑化するアプローチの1つとして、典型的には吸収性の高いフォームなどの減衰材料をイヤカップの壁部の周囲に配置することがある。このアプローチでは、典型的には、十分な減衰を提供するためにかなりの厚さのフォームが必要となるし、また、厚いフォームを受け入れるための比較的大きな体積がイヤカップに要求される。更に、吸収性の高いフォームの減衰は、フォームの物理的な大きさと大気状態との変動性の関数(sensitive function)であり、一貫しない音響的な応答を生じさせる。
【0017】
イヤカップにおける共鳴は、ある周波数で発振を起こさせることによって、不安定さを生じさせ、その発振は、典型的には能動ノイズ低減のためのフィードバックの量を制限してしまう。マイクロフォンとドライバとにワイヤ・メッシュ抵抗性カバー13及び/又は包囲される空気によって音響的な負荷を与えることにより、共鳴は著しく低減される。従って、比較的体積の小さなイヤカップにおいて、フィードバック・ループのゲインが増加することが可能となり、能動ノイズの低減が著しく向上する。クッション15の環状リッジ16に開口を形成してフォーム材料15Bを露出させることによって、イヤカップの有効体積(effective volume)が著しく増加してその体積を包囲し、追加的な減衰を提供して耳におけるオーディオ応答の平滑化を助け、クッション15によって占有される頭部から離れたヘッドセットによって安定性を制御し、それによって、受動減衰を増加させる。
【0018】
本発明は、多数の効果を有する。カップのサイズは比較的小さいが、16Aなどの開口を通じてアクセスされるクッション15によって与えられる追加的な有効体積のためにかなりの有効体積が存在する。イヤカップ11内部における共鳴の影響は、ワイヤ・メッシュ抵抗性カバー13及び/又は包囲された空気によって著しく減少し、よって、能動ノイズ低減システムのループ・ゲインの著しい増加が可能となる。
【0019】
この技術分野の当業者には明らかであろうが、本発明の技術思想から離れることなく、この出願で開示されている特定の装置及び技術を様々に用いたり、修正したり、変更したりすることができる。結果的に、本発明は、この出願において開示され特許請求の範囲によってのみ制限される装置及び技術の中に存在しそれらが有しているところの個々の新規な特徴と複数の特徴の新規な組合せとをすべて包含するように解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0020】
11 イヤカップ、11A リップ、11B リッジ、11C ケーブル・エントリ,マス・ポート、11D 抵抗性ポート、12 ドライバ、12A ドライバ・プレート、12B,12C ドライバ・プレート設置ボス、13 ワイヤ・メッシュ抵抗性カバー,抵抗性メッシュ・スクリーン、13A 開口、14 ケーブル、15 クッション、15A 耳開口、15B フォーム,フォーム材料、16 環状リッジ、17 イヤフォン・ドライバ、17 マイクロフォン、21A,21B 抵抗性カバー・ホルダ、22 マイクロフォン・ホルダ、24 入力端子、25 音響入力端子、30 信号合成器、31 圧縮器、31A 補償器、32 パワー増幅器、35 前置増幅器,増幅器、36 円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドセットであって、ユーザの耳に隣接するように適応された前方開口を有するイヤカップと、前記イヤカップ内部のドライバと、前記前方開口の周囲に設けられたクッションであって、ユーザの耳を受け入れるように構成され配置された耳開口と共に形成され、このクッションの体積を前記イヤカップの体積に音響的に加算して受動的な減衰を強化するように構成され配置された前記開口の周囲に設けられた複数の開口と共に形成された、クッションと、を備えたヘッドセット。
【請求項2】
前記イヤカップの内部にあり、前記ドライバに隣接するマイクロフォンと、前記マイクロフォンと前記ドライバとを相互に結合し、能動的なノイズ低減を行うように構成され配置された能動ノイズ低減回路と、を更に備えており、それによって、前記複数の開口を備えた前記クッションは、追加的な減衰を与えることにより、ユーザの耳におけるオーディオ応答の平滑化を助け、頭部から離れた前記ヘッドセットによって安定性を制御するように構成され配置されている、請求項1記載のヘッドセット。
【請求項3】
前記マイクロフォンに対して極めて近接しており、前記イヤカップにおける共鳴の効果を低減するように構成され配置された音響的負荷を更に備えている、請求項2記載のヘッドセット。
【請求項4】
前記音響的負荷はワイヤ・メッシュ抵抗性カバーから構成される、請求項3記載のヘッドセット。
【請求項5】
前記ワイヤ・メッシュ抵抗性カバーは、前記マイクロフォンの近傍に開口を備えているように形成されている、請求項4記載のヘッドセット。
【請求項6】
前記ワイヤ・メッシュ抵抗性カバーは、前記マイクロフォンを実質的に包囲するように前記ドライバと共に共働する、請求項4記載のヘッドセット。
【請求項7】
能動ノイズ低減ヘッドセットであって、イヤカップと、前記イヤカップの内部のドライバと、前記イヤカップ内部にあり前記ドライバに隣接しているマイクロフォンと、前記マイクロフォンと前記ドライバとを相互に結合する能動ノイズ低減回路と、前記マイクロフォンに隣接しており、前記イヤカップ内部の共鳴の影響を低減するように構成され配置された音響的負荷と、を備えた能動ノイズ低減ヘッドセット。
【請求項8】
前記音響的負荷はワイヤ・メッシュ抵抗性カバーから構成される、請求項7記載の能動ノイズ低減ヘッドセット。
【請求項9】
前記音響的負荷はエア・マスから構成される、請求項7記載の能動ノイズ低減ヘッドセット。
【請求項10】
前記音響的負荷はエア・マスから構成される、請求項8記載の能動ノイズ低減ヘッドセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−125065(P2011−125065A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28867(P2011−28867)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2000−214735(P2000−214735)の分割
【原出願日】平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願人】(591009509)ボーズ・コーポレーション (121)
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
【Fターム(参考)】