ノイズ抑制装置
【課題】 フェライトコアによるノイズ対策と、容量結合効果によるノイズ対策と、を良好に実施することができるノイズ抑制装置を提供する。
【解決手段】 ノイズ抑制装置1は、導電性を有する板金の筐体11に取り付けられるものであって、断面略矩形の筒状のフェライトコア13と、ケース部材15と、ケーブル17と、からなる。フェライトコア13は、ケース部材15によって、フェライトコア13の面13aにおいて筐体11と接触するように筐体11に固定される。ケーブル17は、フェライトコア13における面13aを備える壁面と対向する壁面13bと、ケース部材15の天面15aと、に沿うように巻きつけられて、フェライトコア13に3ターンしている。
【解決手段】 ノイズ抑制装置1は、導電性を有する板金の筐体11に取り付けられるものであって、断面略矩形の筒状のフェライトコア13と、ケース部材15と、ケーブル17と、からなる。フェライトコア13は、ケース部材15によって、フェライトコア13の面13aにおいて筐体11と接触するように筐体11に固定される。ケーブル17は、フェライトコア13における面13aを備える壁面と対向する壁面13bと、ケース部材15の天面15aと、に沿うように巻きつけられて、フェライトコア13に3ターンしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のケーブルにおける電磁障害ノイズを低減するノイズ抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のノイズ対策として、ケーブルを筒状のフェライトコア内に挿通させたり、ケーブルと金属筐体などの導電体とを接近させて容量結合(カップリング)を生じさせて高周波ノイズを低減させたりすることが行われている。容量結合は、ケーブルを導電体に接近させること以外に、ケーブルが挿通されたフェライトコアを導電体と接近させることでも実現される。そのため、ケーブルをフェライトコアに挿通し、そのフェライトコアを接地する技術も提案されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−109535号公報
【特許文献2】特開2002−171612号公報
【特許文献3】特開2003−17885号公報
【特許文献4】特開平10−126085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェライトコアのノイズ低減効果を高めるために、ケーブルをフェライトコアに巻きつけて複数ターンさせて用いることがある。
特許文献1に記載されたLC複合部材は、リード線(ケーブル)がフェライトコアに予め設けられた貫通孔に配されたものであるため、フェライトコアの外側を経由してリード線を複数ターンさせるものではない。仮に上記LC複合部材において、リード線をフェライトコアの外側を経由して複数ターンさせた場合、フェライトコアの外周が接地端子に接続された導体に覆われているため、導体とリード線とが接近することで容量結合を生じてしまい、フェライトコアのノイズ低減効果が損なわれてしまう場合がある。
【0005】
特許文献2に記載されたノイズ対策部品は、ケーブルが筐体を貫通する場所に取り付けられるものであるため、ケーブルを巻き線として複数ターンさせて使用することができない。また、ノイズ対策の向上が必要となったときなどに追加的に取り付けることが困難である。
【0006】
特許文献3に記載されたノイズ防止具は、シールドケーブルのノイズ対策を前提としており、ケーブルを複数ターンさせることでフェライトコアによるノイズ対策性能を上げることが困難である。
【0007】
特許文献4に記載された電磁ノイズ抑制装置は、シールドケーブル1本のグランドをとることが前提の構造であるため、複数ターンさせて使用することができない。
このように、従来のノイズ対策部品は、巻き線として複数ターンさせることでフェライトコアによるノイズ対策性能を上げつつ、同時に容量結合効果により高周波ノイズ対策をとることができなかった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フェライトコアによるノイズ対策と、容量結合効果によるノイズ対策と、を良好に実施することができるノイズ抑制装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、筒状のフェライトコアと、フレームグランドに導通される導電面を有する取付体に、前記フェライトコアの外周面における一部の領域と前記導電面とが重なるように前記フェライトコアを取り付ける取付手段と、前記フェライトコアに少なくとも2ターン以上巻きつけて挿通されるケーブルと、を備え、前記ケーブルが、前記フェライトコアの外周面における前記一部の領域以外の領域に沿って巻きつけられていることを特徴とするノイズ抑制装置である。
【0010】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、ケーブルを複数ターンさせることによってフェライトコアのノイズ低減性能を高めることができ、またフェライトコアの外周面における一部の領域を導電面と接近させて容量結合させることで高周波帯域のノイズも良好に低減することができる。
【0011】
さらに、ケーブルがフェライトコアにおける導電面と重なる領域以外の領域に沿って巻きつけられていることから、ケーブルが導電面と容量結合してしまうことを抑制できる。仮にケーブルと導電面とが接近して容量結合してしまうとフェライトコアによるノイズ低減効果が低下してしまうが、本発明ノイズ抑制装置では容量結合が抑制されるためフェライトコアの磁気損失によるノイズ低減効果が損なわれない。
【0012】
さらに、特許文献1に示されたLC複合部材は、フェライトコアに設けられた貫通孔に挿通されているリード線(ケーブル)間にはフェライトコアが介在しているため、フェライトコアがない場合(空気層が介在する場合)に比べ誘電率が高くなっており、リード線間で容量結合が生じてしまう虞があるが、本発明のノイズ抑制装置では並行するケーブルの間にはフェライトコアが存在しないため、上記の問題が発生しない。
【0013】
なお、上記ノイズ抑制装置を取り付ける取付体としては板金筐体やプリント基板などが考えられる。プリント基板を取付体とする場合、プリント基板に形成されたグランドパターンが導電面となる。また、筐体やプリント基板の表面に配されたシート状の導電体であって、フレームグランドに導通されるものの表面を導電面としてもよい。導電面とフェライトコアは直接接触している必要はないが、なるべく接近させることが好ましい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノイズ抑制装置において、前記取付手段が、前記フェライトコアが前記取付体に取り付けられた状態において、前記フェライトコアを前記導電面方向に押圧する押圧部材を備えることを特徴とする。
【0015】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、フェライトコアの外周面における上記一部の領域と取付体の導電面とを良好に接近させることができる。
なお、フェライトコアと導電面とはなるべく接近している方が容量結合を生じやすいため好ましいが、請求項3に記載のノイズ抑制装置のように、前記フェライトコアが、前記一部領域の表面において、柔軟性および導電性を有するシート状部材を備えており、当該シート状部材を介して前記導電面と接触するように構成されていてもよい。
【0016】
このように構成されたノイズ抑制装置においては、シート状部材と導電面とが導通することでシート状部材におけるフェライトコア側が導電面に相当するものとなる。そのためフェライトコアと導電面との間に隙間が発生することを抑制できる結果、フェライトコアと導電面との容量結合を生じやすくなり、ノイズ低減効果を向上できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置において、前記取付体は板金筐体であって、前記ノイズ抑制装置は、前記ケーブルにおける前記フェライトコアから外れた部分を、前記取付体側に押圧して近接させる近接手段を備えることを特徴とする。
【0018】
ケーブルにおけるフェライトコアに挿入された部分、および巻きつけられている部分がフレームグランドに接続する導電面と容量結合するとフェライトコアによるノイズ低減効果が損なわれてしまうが、フェライトコアから外れた部分は導電面と容量結合することでノイズ除去が可能となる。
【0019】
よって、上述した請求項4に記載のノイズ抑制装置では、フェライトコアから外れたケーブルが板金筐体と密着するため、ケーブルと板金筐体との容量結合によるノイズ除去を行うことができる。
【0020】
なお、ケーブルにおけるフェライトコアから外れた部分とは、ターンしている部分を除いて、フェライトコアに挿入される前の部分(フェライトコアに挿入されて抜けた部分)である。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置において、前記フェライトコアが、筒状体を軸方向に2分割してなる2つのフェライトコア片からなるものであって、前記取付手段が、前記2つのフェライトコア片を1つずつ保持する2つの保持部を有しており、前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合しないように前記2つの保持部が離間した開形態と、前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合して筒状となるように前記2つの保持部が近接した閉形態と、に変形可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、フェライトコアが2分割された状態においてフェライトコアにケーブルを巻き付けることができる。よって、ケーブルの取り付けや取り外し、ターン数の変更などを容易に行うことができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置において、前記フェライトコアが、筒状における軸と直交する方向の断面が矩形の筒状であることを特徴とする。
【0024】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、フェライトコアの外周面における導電面と重なる上記一部の領域が導電面と良好に密接するため、容量結合が生じやすくなる。また、フェライトコアにおける上記一部の領域を有する壁面と対向する壁面に沿ってケーブルを巻きつけることで、ケーブルと導電面との距離を充分に広げることができ、ケーブルが導電面と容量結合してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ノイズ抑制装置を示す平面図(A)およびA−A断面図(B)
【図2】ノイズ抑制装置からケーブルを外した状態の平面図(A)およびA−A断面図(B)
【図3】ノイズ抑制装置の変形例を示す断面図
【図4】ノイズ抑制装置の変形例を示す断面図
【図5】ノイズ抑制装置の変形例を示す断面図
【図6】ノイズ抑制装置の変形例を示す拡大断面図
【図7】ノイズ抑制装置の変形例を示す平面図(A)およびB−B断面図(B)
【図8】ノイズ抑制装置の性能評価の試験装置を示す図
【図9】性能評価試験の試験結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示にすぎず、本発明が、下記の事例以外にも様々な形態で実施できるのはもちろんである。
【0027】
[実施例]
(1)全体構成
本実施例のノイズ抑制装置1を図1(A),(B)に示す。ノイズ抑制装置1は、導電性を有する板金の筐体11に取り付けられるものであって、フェライトコア13と、ケース部材15と、ケーブル17と、からなる。
【0028】
フェライトコア13は、断面略矩形の筒状であって、内部(貫通孔19)をケーブル17が挿通可能に構成されている。また、フェライトコア13は、ケース部材15によって、フェライトコア13の外周面における一部の領域(面13a)において筐体11と接触するように筐体11に固定される。
【0029】
ケース部材15は樹脂製の部材であって、矩形の天面15aと、天面15aのうちの相対する端面から同一方向に延び出す一対の矩形の側面15bと、一対の側面15bそれぞれの延び出した先端から、側面15bと交差する方向に、かつ互いに逆方向に延びる一対の底面15cと、を有する。
【0030】
これら天面15a,側面15bによって、フェライトコア13の面13aをのぞく外周面を覆うことができる。また、フェライトコア13の軸方向の側面は開放されている。
底面15cには、筐体11に設けられた2箇所の雌ネジ21に対応する位置に貫通孔23が設けられており、貫通孔23を通してネジ25を雌ネジ21に螺合させることでケース部材15が筐体11に固定され、それによりフェライトコア13が筐体11に固定される。
【0031】
ケーブル17を外した状態を図2(A),(B)に示す。ケース部材15の天面15aにはコの字型に切られた貫通孔によって周囲と区切られるように形成されたバネ片27が形成されている。このバネ片27は、ケース部材15におけるバネ片27の周囲の部分よりもケース部材15の内側方向に突出するように肉厚に形成されている。図2(B)のように取り付けた状態において、バネ片27の突出端と筐体11との間の距離(バネ片27と底面15との距離)はフェライトコア13の厚さよりも短くなるように構成されており、その結果、フェライトコア13はバネ片27によって筐体11側に押圧される。
【0032】
また、ケース部材15は、側面15bから内側に突出する突起29が設けられており、フェライトコア13に形成された溝31と係合する。これによりフェライトコア13とケース部材15とが係合するため、ケース部材15を筐体11に取り付ける前に、フェライトコア13がケース部材15から脱落してしまうことが抑制される。なお、側面15bを互いに離す方向に変形させることで突起29と溝31の係合が解除され、フェライトコア13を着脱することができる。
【0033】
ケーブル17は周囲が被覆された一般的な電線である。図1(A),(B)に示すように、本実施例ではフェライトコア13における面13aを備える壁面と対向する壁面13bと、ケース部材15の天面15aと、に沿うように巻きつけられて、フェライトコア13に3ターンしている。なお、2ターン以上であればターン数は特に限定されない。
【0034】
なお、筐体11が本発明における取付体に相当し、筐体11表面が導電面に相当し、ケース部材15が取付手段に相当し、バネ片27が押圧部材に相当する。
(2)発明の効果
このように構成されたノイズ抑制装置1であれば、ケーブル17がフェライトコア13の壁面13bに沿って巻きつけられていることから、ケーブル17と筐体11との距離が大きくなり、ケーブル17と筐体11とが容量結合してしまうことがない。従って、ケーブル17を複数ターンさせることによってフェライトコア13のノイズ低減性能を高めることができ、またフェライトコア13を筐体11と接触させて容量結合させることで高周波帯域のノイズも良好に低減することができる。
【0035】
なお、ケーブル17と筐体11との容量結合を抑制するためには、フェライトコア13の面13a以外の領域に沿って巻きつけられていればよく、例えばケーブル17が壁面13bと直交する壁面に沿って巻きつけられていてもよい。
【0036】
また、フェライトコア13はバネ片27によって筐体11側(導電面方向)に押圧されているため、フェライトコア13の面13aと筐体11とを良好に接近させることができる。
【0037】
また、フェライトコア13は軸と直交する方向の断面が矩形であるため、面13aは平面状になっている。そのため、筐体11と広い範囲で密接し、容量結合を生じ易くなる。
[変形例]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上記実施例においては、バネ片27によりフェライトコア13が筐体11に押圧される構成を例示したが、図3に示すケース部材37のように、天面37aの内側にバネ片27に代えてスポンジ等の弾性体39を配置し、弾性体39を圧縮した反力によりフェライトコア13を押圧するように構成してもよい。さらに、弾性体39の表面に粘着テープや粘着材を配することで、フェライトコア13とケース部材37とを接合するように構成してもよい。
【0039】
なお、図3は図2(B)と同様にケーブル17を外した状態を示すノイズ抑制装置の断面図である。後述する図4〜図6においても同様の断面図を記載する。
また、上記実施例においては、フェライトコア13と筐体11とは直接接触する構成を例示したが、シート状の導電体を介して接触してもよい。例えば図4に示すように、導電性シート41をフェライトコア13の面13aに配し、導電性シート41を介してフェライトコア13と筐体11とが導通するように構成してもよい。
【0040】
このように構成されたノイズ抑制装置においては、導電性シート41と筐体とが導通することで導電性シート41がフレームグランドと接続する導電面として機能する。そして、導電性シート41はフェライトコア13に取り付けられているためそれらの間に隙間が発生することを抑制できる結果、フェライトコア13と導電性シート41との容量結合を生じやすくなり、ノイズ低減効果を向上できる。
【0041】
なお導電性シート41としては、導電性のスポンジや、スポンジ外周に導電箔を巻きつけたシートなどを用いることができる。スポンジのように柔軟性を有する材料を用いると、その材料がフェライトコア13や筐体11の表面形状に追従して変形するため、フェライトコア13や筐体11と良好に接触させることができる。
【0042】
また、上記導電性シート41に代えて、導電性を有さないシートの外周に導電性を有するシートを巻きつけたものを用いてもよい。または、フェライトと同等以上の誘電率を有するシートを用いてもよい。
【0043】
また、上記実施例においては、筒状のフェライトコア13として、1つの部材からなるものを例示したが、図5に示すように、軸方向に2分割してなるフェライトコア43a,43bを用いてもよい。
【0044】
図5において、フェライトコア43a,43bはケース部材45に保持される。ケース部材45は、実施例1のケース部材15の側面15bに相当する部分(側面45b)が上下に分かれており、天面45a側がフェライトコア43aを保持する上側部47,底面45c側がフェライトコア43bを保持する下側部49となる。
【0045】
上側部47および下側部49は、それぞれ突起29が設けられており、フェライトコア43a,43bに設けられた溝31と係合する。
上側部47と下側部49とは、側面45bの一方において可撓性を有する連結部51で連結しており、側面45bの他方においては上側部47に係止片53が設けられ、下側部49に被係止片55が設けられている。これら係止片53と被係止片55とが係止されている状態においては、フェライトコア43a,43bは接合して筒状となる。
【0046】
一方、係止片53と被係止片55とが係止を解除し、上側部47と下側部49とを離間させるように変形させると、それによってフェライトコア43a,43bも接合せずに離れた状態となる。この状態においては、フェライトコアへのケーブルの取り付けや取り外し、ターン数の変更などを容易に行うことができる。
【0047】
なお、フェライトコア43a,43bが本発明におけるフェライトコア片に相当し、上側部47と下側部49が保持部に相当し、係止片53と被係止片55とが係止されている状態が本発明における閉形態に相当し、その係止がされておらず上側部47と下側部49とを離間させた状態が本発明における開形態に相当する。
【0048】
また、上記実施例においては、ケース部材15と筐体11との固定はネジ25にて実現する構成を例示したが、それ以外の方法で固定する構成であってもよい。例えば図6に示すように、ケース部材の底面15cに貫通孔に代えてスナップ57を設け、スナップ57を筐体11に設けられた貫通孔59に通して係合させることで固定する構成とすることが考えられる。
【0049】
また、図7(A),(B)に示すように、ケーブル65におけるフェライトコア13から外れた部分を筐体11側に押圧して近接させるバネ板63(本発明における近接手段)が設けられたケース部材61を用いてもよい。
【0050】
バネ板63は、図7(A)の視点ではケース部材61の天面61aからフェライトコア13の軸方向に沿うように伸び出しており、また図7(B)の視点では底面方向に向かって伸び出している。そして、ケーブル65はこのバネ板63によって筐体11側に押圧される。これによりケーブル65は筐体11と密着するため、ケーブル65と筐体11との容量結合によるノイズ除去を行うことができる。
【0051】
[性能評価試験]
試験装置を図8に示す。本試験装置は、基板75上に配置された筒状のフェライトコア71の貫通孔71aを通ってケーブル(信号線)73が3ターンするように構成されている。基板75はフェライトコア71が配置された面と反対側の面がグランドプレーン79となっており、フェライトコア71は銅テープ77によってグランドプレーン79と接続している。ケーブル73の両端は測定器に接続されている。
【0052】
試験は、フェライトコア71に対する銅テープ77の取付方法を変えた3つのサンプルにおいて、それぞれノイズの周波数を変化させてフェライトによる挿入損失を測定した。
取付方法は次の3つとした。
(a)銅テープ77によるフェライトコアのグランド接続なし(フェライトコアのみ)
(b)フェライトコア71の外周面全体に銅テープ77を貼り、グランドプレーンと接続させる
(c)フェライトコア71の底面のみに銅テープ77を貼り、グランドプレーンと接続させる(本発明の構成に相当)
測定器は、アジレントテクノロジー製ネットワークアナライザー HP−8720Dを用いた。
【0053】
試験結果を図9に示す。上記(c)については、広い周波数帯域において良好なノイズの損失効果が得られた。一方、(a)のようにグランド接続がない場合、即ちフェライトコア71によるノイズ低減効果のみである場合、低い周波数帯域では良好なノイズ低減効果があるが、高い周波数帯域ではその効果が小さくなる。
【0054】
また(b)の場合は逆に、高い周波数帯域では良好なノイズ低減効果があるが、低い周波数帯域ではその効果が小さくなる。これは、ケーブル73がフェライトコア71に巻きつけられる際に外周に銅テープ77と接近する結果、ケーブル73と銅テープ77との間に容量結合が生じ、フェライトコア71による効果が失われてしまったためであると考えられる。
【0055】
このことから、本発明のノイズ対策装置では、広い周波数帯域において良好なノイズ低減効果を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0056】
1…ノイズ抑制装置、11…筐体、13…フェライトコア、13a…面、13b…壁面、15…ケース部材、15a…天面、15b…側面、15c…底面、17…ケーブル、19…貫通孔、21…雌ネジ、23…貫通孔、25…ネジ、27…バネ片、29…突起、31…溝、37…ケース部材、39…弾性体、41…導電性シート、43a…フェライトコア、43b…フェライトコア、45…ケース部材、45b…側面、45c…底面、47…上側部、49…下側部、51…連結部、53…係止片、55…被係止片、57…スナップ、59…貫通孔、61…ケース部材、61a…天面、63…バネ板、65…ケーブル、71…フェライトコア、71a…貫通孔、73…ケーブル、75…基板、77…銅テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のケーブルにおける電磁障害ノイズを低減するノイズ抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器のノイズ対策として、ケーブルを筒状のフェライトコア内に挿通させたり、ケーブルと金属筐体などの導電体とを接近させて容量結合(カップリング)を生じさせて高周波ノイズを低減させたりすることが行われている。容量結合は、ケーブルを導電体に接近させること以外に、ケーブルが挿通されたフェライトコアを導電体と接近させることでも実現される。そのため、ケーブルをフェライトコアに挿通し、そのフェライトコアを接地する技術も提案されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−109535号公報
【特許文献2】特開2002−171612号公報
【特許文献3】特開2003−17885号公報
【特許文献4】特開平10−126085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェライトコアのノイズ低減効果を高めるために、ケーブルをフェライトコアに巻きつけて複数ターンさせて用いることがある。
特許文献1に記載されたLC複合部材は、リード線(ケーブル)がフェライトコアに予め設けられた貫通孔に配されたものであるため、フェライトコアの外側を経由してリード線を複数ターンさせるものではない。仮に上記LC複合部材において、リード線をフェライトコアの外側を経由して複数ターンさせた場合、フェライトコアの外周が接地端子に接続された導体に覆われているため、導体とリード線とが接近することで容量結合を生じてしまい、フェライトコアのノイズ低減効果が損なわれてしまう場合がある。
【0005】
特許文献2に記載されたノイズ対策部品は、ケーブルが筐体を貫通する場所に取り付けられるものであるため、ケーブルを巻き線として複数ターンさせて使用することができない。また、ノイズ対策の向上が必要となったときなどに追加的に取り付けることが困難である。
【0006】
特許文献3に記載されたノイズ防止具は、シールドケーブルのノイズ対策を前提としており、ケーブルを複数ターンさせることでフェライトコアによるノイズ対策性能を上げることが困難である。
【0007】
特許文献4に記載された電磁ノイズ抑制装置は、シールドケーブル1本のグランドをとることが前提の構造であるため、複数ターンさせて使用することができない。
このように、従来のノイズ対策部品は、巻き線として複数ターンさせることでフェライトコアによるノイズ対策性能を上げつつ、同時に容量結合効果により高周波ノイズ対策をとることができなかった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フェライトコアによるノイズ対策と、容量結合効果によるノイズ対策と、を良好に実施することができるノイズ抑制装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、筒状のフェライトコアと、フレームグランドに導通される導電面を有する取付体に、前記フェライトコアの外周面における一部の領域と前記導電面とが重なるように前記フェライトコアを取り付ける取付手段と、前記フェライトコアに少なくとも2ターン以上巻きつけて挿通されるケーブルと、を備え、前記ケーブルが、前記フェライトコアの外周面における前記一部の領域以外の領域に沿って巻きつけられていることを特徴とするノイズ抑制装置である。
【0010】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、ケーブルを複数ターンさせることによってフェライトコアのノイズ低減性能を高めることができ、またフェライトコアの外周面における一部の領域を導電面と接近させて容量結合させることで高周波帯域のノイズも良好に低減することができる。
【0011】
さらに、ケーブルがフェライトコアにおける導電面と重なる領域以外の領域に沿って巻きつけられていることから、ケーブルが導電面と容量結合してしまうことを抑制できる。仮にケーブルと導電面とが接近して容量結合してしまうとフェライトコアによるノイズ低減効果が低下してしまうが、本発明ノイズ抑制装置では容量結合が抑制されるためフェライトコアの磁気損失によるノイズ低減効果が損なわれない。
【0012】
さらに、特許文献1に示されたLC複合部材は、フェライトコアに設けられた貫通孔に挿通されているリード線(ケーブル)間にはフェライトコアが介在しているため、フェライトコアがない場合(空気層が介在する場合)に比べ誘電率が高くなっており、リード線間で容量結合が生じてしまう虞があるが、本発明のノイズ抑制装置では並行するケーブルの間にはフェライトコアが存在しないため、上記の問題が発生しない。
【0013】
なお、上記ノイズ抑制装置を取り付ける取付体としては板金筐体やプリント基板などが考えられる。プリント基板を取付体とする場合、プリント基板に形成されたグランドパターンが導電面となる。また、筐体やプリント基板の表面に配されたシート状の導電体であって、フレームグランドに導通されるものの表面を導電面としてもよい。導電面とフェライトコアは直接接触している必要はないが、なるべく接近させることが好ましい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノイズ抑制装置において、前記取付手段が、前記フェライトコアが前記取付体に取り付けられた状態において、前記フェライトコアを前記導電面方向に押圧する押圧部材を備えることを特徴とする。
【0015】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、フェライトコアの外周面における上記一部の領域と取付体の導電面とを良好に接近させることができる。
なお、フェライトコアと導電面とはなるべく接近している方が容量結合を生じやすいため好ましいが、請求項3に記載のノイズ抑制装置のように、前記フェライトコアが、前記一部領域の表面において、柔軟性および導電性を有するシート状部材を備えており、当該シート状部材を介して前記導電面と接触するように構成されていてもよい。
【0016】
このように構成されたノイズ抑制装置においては、シート状部材と導電面とが導通することでシート状部材におけるフェライトコア側が導電面に相当するものとなる。そのためフェライトコアと導電面との間に隙間が発生することを抑制できる結果、フェライトコアと導電面との容量結合を生じやすくなり、ノイズ低減効果を向上できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置において、前記取付体は板金筐体であって、前記ノイズ抑制装置は、前記ケーブルにおける前記フェライトコアから外れた部分を、前記取付体側に押圧して近接させる近接手段を備えることを特徴とする。
【0018】
ケーブルにおけるフェライトコアに挿入された部分、および巻きつけられている部分がフレームグランドに接続する導電面と容量結合するとフェライトコアによるノイズ低減効果が損なわれてしまうが、フェライトコアから外れた部分は導電面と容量結合することでノイズ除去が可能となる。
【0019】
よって、上述した請求項4に記載のノイズ抑制装置では、フェライトコアから外れたケーブルが板金筐体と密着するため、ケーブルと板金筐体との容量結合によるノイズ除去を行うことができる。
【0020】
なお、ケーブルにおけるフェライトコアから外れた部分とは、ターンしている部分を除いて、フェライトコアに挿入される前の部分(フェライトコアに挿入されて抜けた部分)である。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置において、前記フェライトコアが、筒状体を軸方向に2分割してなる2つのフェライトコア片からなるものであって、前記取付手段が、前記2つのフェライトコア片を1つずつ保持する2つの保持部を有しており、前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合しないように前記2つの保持部が離間した開形態と、前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合して筒状となるように前記2つの保持部が近接した閉形態と、に変形可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、フェライトコアが2分割された状態においてフェライトコアにケーブルを巻き付けることができる。よって、ケーブルの取り付けや取り外し、ターン数の変更などを容易に行うことができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置において、前記フェライトコアが、筒状における軸と直交する方向の断面が矩形の筒状であることを特徴とする。
【0024】
このように構成されたノイズ抑制装置であれば、フェライトコアの外周面における導電面と重なる上記一部の領域が導電面と良好に密接するため、容量結合が生じやすくなる。また、フェライトコアにおける上記一部の領域を有する壁面と対向する壁面に沿ってケーブルを巻きつけることで、ケーブルと導電面との距離を充分に広げることができ、ケーブルが導電面と容量結合してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ノイズ抑制装置を示す平面図(A)およびA−A断面図(B)
【図2】ノイズ抑制装置からケーブルを外した状態の平面図(A)およびA−A断面図(B)
【図3】ノイズ抑制装置の変形例を示す断面図
【図4】ノイズ抑制装置の変形例を示す断面図
【図5】ノイズ抑制装置の変形例を示す断面図
【図6】ノイズ抑制装置の変形例を示す拡大断面図
【図7】ノイズ抑制装置の変形例を示す平面図(A)およびB−B断面図(B)
【図8】ノイズ抑制装置の性能評価の試験装置を示す図
【図9】性能評価試験の試験結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示にすぎず、本発明が、下記の事例以外にも様々な形態で実施できるのはもちろんである。
【0027】
[実施例]
(1)全体構成
本実施例のノイズ抑制装置1を図1(A),(B)に示す。ノイズ抑制装置1は、導電性を有する板金の筐体11に取り付けられるものであって、フェライトコア13と、ケース部材15と、ケーブル17と、からなる。
【0028】
フェライトコア13は、断面略矩形の筒状であって、内部(貫通孔19)をケーブル17が挿通可能に構成されている。また、フェライトコア13は、ケース部材15によって、フェライトコア13の外周面における一部の領域(面13a)において筐体11と接触するように筐体11に固定される。
【0029】
ケース部材15は樹脂製の部材であって、矩形の天面15aと、天面15aのうちの相対する端面から同一方向に延び出す一対の矩形の側面15bと、一対の側面15bそれぞれの延び出した先端から、側面15bと交差する方向に、かつ互いに逆方向に延びる一対の底面15cと、を有する。
【0030】
これら天面15a,側面15bによって、フェライトコア13の面13aをのぞく外周面を覆うことができる。また、フェライトコア13の軸方向の側面は開放されている。
底面15cには、筐体11に設けられた2箇所の雌ネジ21に対応する位置に貫通孔23が設けられており、貫通孔23を通してネジ25を雌ネジ21に螺合させることでケース部材15が筐体11に固定され、それによりフェライトコア13が筐体11に固定される。
【0031】
ケーブル17を外した状態を図2(A),(B)に示す。ケース部材15の天面15aにはコの字型に切られた貫通孔によって周囲と区切られるように形成されたバネ片27が形成されている。このバネ片27は、ケース部材15におけるバネ片27の周囲の部分よりもケース部材15の内側方向に突出するように肉厚に形成されている。図2(B)のように取り付けた状態において、バネ片27の突出端と筐体11との間の距離(バネ片27と底面15との距離)はフェライトコア13の厚さよりも短くなるように構成されており、その結果、フェライトコア13はバネ片27によって筐体11側に押圧される。
【0032】
また、ケース部材15は、側面15bから内側に突出する突起29が設けられており、フェライトコア13に形成された溝31と係合する。これによりフェライトコア13とケース部材15とが係合するため、ケース部材15を筐体11に取り付ける前に、フェライトコア13がケース部材15から脱落してしまうことが抑制される。なお、側面15bを互いに離す方向に変形させることで突起29と溝31の係合が解除され、フェライトコア13を着脱することができる。
【0033】
ケーブル17は周囲が被覆された一般的な電線である。図1(A),(B)に示すように、本実施例ではフェライトコア13における面13aを備える壁面と対向する壁面13bと、ケース部材15の天面15aと、に沿うように巻きつけられて、フェライトコア13に3ターンしている。なお、2ターン以上であればターン数は特に限定されない。
【0034】
なお、筐体11が本発明における取付体に相当し、筐体11表面が導電面に相当し、ケース部材15が取付手段に相当し、バネ片27が押圧部材に相当する。
(2)発明の効果
このように構成されたノイズ抑制装置1であれば、ケーブル17がフェライトコア13の壁面13bに沿って巻きつけられていることから、ケーブル17と筐体11との距離が大きくなり、ケーブル17と筐体11とが容量結合してしまうことがない。従って、ケーブル17を複数ターンさせることによってフェライトコア13のノイズ低減性能を高めることができ、またフェライトコア13を筐体11と接触させて容量結合させることで高周波帯域のノイズも良好に低減することができる。
【0035】
なお、ケーブル17と筐体11との容量結合を抑制するためには、フェライトコア13の面13a以外の領域に沿って巻きつけられていればよく、例えばケーブル17が壁面13bと直交する壁面に沿って巻きつけられていてもよい。
【0036】
また、フェライトコア13はバネ片27によって筐体11側(導電面方向)に押圧されているため、フェライトコア13の面13aと筐体11とを良好に接近させることができる。
【0037】
また、フェライトコア13は軸と直交する方向の断面が矩形であるため、面13aは平面状になっている。そのため、筐体11と広い範囲で密接し、容量結合を生じ易くなる。
[変形例]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上記実施例においては、バネ片27によりフェライトコア13が筐体11に押圧される構成を例示したが、図3に示すケース部材37のように、天面37aの内側にバネ片27に代えてスポンジ等の弾性体39を配置し、弾性体39を圧縮した反力によりフェライトコア13を押圧するように構成してもよい。さらに、弾性体39の表面に粘着テープや粘着材を配することで、フェライトコア13とケース部材37とを接合するように構成してもよい。
【0039】
なお、図3は図2(B)と同様にケーブル17を外した状態を示すノイズ抑制装置の断面図である。後述する図4〜図6においても同様の断面図を記載する。
また、上記実施例においては、フェライトコア13と筐体11とは直接接触する構成を例示したが、シート状の導電体を介して接触してもよい。例えば図4に示すように、導電性シート41をフェライトコア13の面13aに配し、導電性シート41を介してフェライトコア13と筐体11とが導通するように構成してもよい。
【0040】
このように構成されたノイズ抑制装置においては、導電性シート41と筐体とが導通することで導電性シート41がフレームグランドと接続する導電面として機能する。そして、導電性シート41はフェライトコア13に取り付けられているためそれらの間に隙間が発生することを抑制できる結果、フェライトコア13と導電性シート41との容量結合を生じやすくなり、ノイズ低減効果を向上できる。
【0041】
なお導電性シート41としては、導電性のスポンジや、スポンジ外周に導電箔を巻きつけたシートなどを用いることができる。スポンジのように柔軟性を有する材料を用いると、その材料がフェライトコア13や筐体11の表面形状に追従して変形するため、フェライトコア13や筐体11と良好に接触させることができる。
【0042】
また、上記導電性シート41に代えて、導電性を有さないシートの外周に導電性を有するシートを巻きつけたものを用いてもよい。または、フェライトと同等以上の誘電率を有するシートを用いてもよい。
【0043】
また、上記実施例においては、筒状のフェライトコア13として、1つの部材からなるものを例示したが、図5に示すように、軸方向に2分割してなるフェライトコア43a,43bを用いてもよい。
【0044】
図5において、フェライトコア43a,43bはケース部材45に保持される。ケース部材45は、実施例1のケース部材15の側面15bに相当する部分(側面45b)が上下に分かれており、天面45a側がフェライトコア43aを保持する上側部47,底面45c側がフェライトコア43bを保持する下側部49となる。
【0045】
上側部47および下側部49は、それぞれ突起29が設けられており、フェライトコア43a,43bに設けられた溝31と係合する。
上側部47と下側部49とは、側面45bの一方において可撓性を有する連結部51で連結しており、側面45bの他方においては上側部47に係止片53が設けられ、下側部49に被係止片55が設けられている。これら係止片53と被係止片55とが係止されている状態においては、フェライトコア43a,43bは接合して筒状となる。
【0046】
一方、係止片53と被係止片55とが係止を解除し、上側部47と下側部49とを離間させるように変形させると、それによってフェライトコア43a,43bも接合せずに離れた状態となる。この状態においては、フェライトコアへのケーブルの取り付けや取り外し、ターン数の変更などを容易に行うことができる。
【0047】
なお、フェライトコア43a,43bが本発明におけるフェライトコア片に相当し、上側部47と下側部49が保持部に相当し、係止片53と被係止片55とが係止されている状態が本発明における閉形態に相当し、その係止がされておらず上側部47と下側部49とを離間させた状態が本発明における開形態に相当する。
【0048】
また、上記実施例においては、ケース部材15と筐体11との固定はネジ25にて実現する構成を例示したが、それ以外の方法で固定する構成であってもよい。例えば図6に示すように、ケース部材の底面15cに貫通孔に代えてスナップ57を設け、スナップ57を筐体11に設けられた貫通孔59に通して係合させることで固定する構成とすることが考えられる。
【0049】
また、図7(A),(B)に示すように、ケーブル65におけるフェライトコア13から外れた部分を筐体11側に押圧して近接させるバネ板63(本発明における近接手段)が設けられたケース部材61を用いてもよい。
【0050】
バネ板63は、図7(A)の視点ではケース部材61の天面61aからフェライトコア13の軸方向に沿うように伸び出しており、また図7(B)の視点では底面方向に向かって伸び出している。そして、ケーブル65はこのバネ板63によって筐体11側に押圧される。これによりケーブル65は筐体11と密着するため、ケーブル65と筐体11との容量結合によるノイズ除去を行うことができる。
【0051】
[性能評価試験]
試験装置を図8に示す。本試験装置は、基板75上に配置された筒状のフェライトコア71の貫通孔71aを通ってケーブル(信号線)73が3ターンするように構成されている。基板75はフェライトコア71が配置された面と反対側の面がグランドプレーン79となっており、フェライトコア71は銅テープ77によってグランドプレーン79と接続している。ケーブル73の両端は測定器に接続されている。
【0052】
試験は、フェライトコア71に対する銅テープ77の取付方法を変えた3つのサンプルにおいて、それぞれノイズの周波数を変化させてフェライトによる挿入損失を測定した。
取付方法は次の3つとした。
(a)銅テープ77によるフェライトコアのグランド接続なし(フェライトコアのみ)
(b)フェライトコア71の外周面全体に銅テープ77を貼り、グランドプレーンと接続させる
(c)フェライトコア71の底面のみに銅テープ77を貼り、グランドプレーンと接続させる(本発明の構成に相当)
測定器は、アジレントテクノロジー製ネットワークアナライザー HP−8720Dを用いた。
【0053】
試験結果を図9に示す。上記(c)については、広い周波数帯域において良好なノイズの損失効果が得られた。一方、(a)のようにグランド接続がない場合、即ちフェライトコア71によるノイズ低減効果のみである場合、低い周波数帯域では良好なノイズ低減効果があるが、高い周波数帯域ではその効果が小さくなる。
【0054】
また(b)の場合は逆に、高い周波数帯域では良好なノイズ低減効果があるが、低い周波数帯域ではその効果が小さくなる。これは、ケーブル73がフェライトコア71に巻きつけられる際に外周に銅テープ77と接近する結果、ケーブル73と銅テープ77との間に容量結合が生じ、フェライトコア71による効果が失われてしまったためであると考えられる。
【0055】
このことから、本発明のノイズ対策装置では、広い周波数帯域において良好なノイズ低減効果を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0056】
1…ノイズ抑制装置、11…筐体、13…フェライトコア、13a…面、13b…壁面、15…ケース部材、15a…天面、15b…側面、15c…底面、17…ケーブル、19…貫通孔、21…雌ネジ、23…貫通孔、25…ネジ、27…バネ片、29…突起、31…溝、37…ケース部材、39…弾性体、41…導電性シート、43a…フェライトコア、43b…フェライトコア、45…ケース部材、45b…側面、45c…底面、47…上側部、49…下側部、51…連結部、53…係止片、55…被係止片、57…スナップ、59…貫通孔、61…ケース部材、61a…天面、63…バネ板、65…ケーブル、71…フェライトコア、71a…貫通孔、73…ケーブル、75…基板、77…銅テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフェライトコアと、
フレームグランドに導通される導電面を有する取付体に、前記フェライトコアの外周面における一部の領域と前記導電面とが重なるように前記フェライトコアを取り付ける取付手段と、
前記フェライトコアに少なくとも2ターン以上巻きつけて挿通されるケーブルと、を備え、
前記ケーブルは、前記フェライトコアの外周面における前記一部の領域以外の領域に沿って巻きつけられている
ことを特徴とするノイズ抑制装置。
【請求項2】
前記取付手段は、前記フェライトコアが前記取付体に取り付けられた状態において、前記フェライトコアを前記導電面方向に押圧する押圧部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズ抑制装置。
【請求項3】
前記フェライトコアは、前記一部の領域の表面において、柔軟性および導電性を有するシート状部材を備えており、当該シート状部材を介して前記導電面と接触する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノイズ抑制装置。
【請求項4】
前記取付体は板金筐体であって、
前記ノイズ抑制装置は、前記ケーブルにおける前記フェライトコアから外れた部分を、前記取付体側に押圧して近接させる近接手段を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置。
【請求項5】
前記フェライトコアは、筒状体を軸方向に2分割してなる2つのフェライトコア片からなるものであって、
前記取付手段は、
前記2つのフェライトコア片を1つずつ保持する2つの保持部を有しており、
前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合しないように前記2つの保持部が離間した開形態と、前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合して筒状となるように前記2つの保持部が近接した閉形態と、に変形可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置。
【請求項6】
前記フェライトコアは、筒状における軸と直交する方向の断面が矩形の筒状である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置。
【請求項1】
筒状のフェライトコアと、
フレームグランドに導通される導電面を有する取付体に、前記フェライトコアの外周面における一部の領域と前記導電面とが重なるように前記フェライトコアを取り付ける取付手段と、
前記フェライトコアに少なくとも2ターン以上巻きつけて挿通されるケーブルと、を備え、
前記ケーブルは、前記フェライトコアの外周面における前記一部の領域以外の領域に沿って巻きつけられている
ことを特徴とするノイズ抑制装置。
【請求項2】
前記取付手段は、前記フェライトコアが前記取付体に取り付けられた状態において、前記フェライトコアを前記導電面方向に押圧する押圧部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズ抑制装置。
【請求項3】
前記フェライトコアは、前記一部の領域の表面において、柔軟性および導電性を有するシート状部材を備えており、当該シート状部材を介して前記導電面と接触する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のノイズ抑制装置。
【請求項4】
前記取付体は板金筐体であって、
前記ノイズ抑制装置は、前記ケーブルにおける前記フェライトコアから外れた部分を、前記取付体側に押圧して近接させる近接手段を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置。
【請求項5】
前記フェライトコアは、筒状体を軸方向に2分割してなる2つのフェライトコア片からなるものであって、
前記取付手段は、
前記2つのフェライトコア片を1つずつ保持する2つの保持部を有しており、
前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合しないように前記2つの保持部が離間した開形態と、前記2つの保持部に保持された前記2つのフェライトコア片が接合して筒状となるように前記2つの保持部が近接した閉形態と、に変形可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置。
【請求項6】
前記フェライトコアは、筒状における軸と直交する方向の断面が矩形の筒状である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のノイズ抑制装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−104595(P2012−104595A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250943(P2010−250943)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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