説明

ノギス

【課題】 主尺目盛および副尺目盛の重ね合わせを利用する目盛読取方法を用いたノギスにおいて、両尺目盛読取の際の視差を除去する課題を解決する。
【解決手段】 本発明は、主尺目盛と副尺目盛の重ね合わせによる前記各目盛の一方の目盛間隙の中心位置にある他方の目盛を検出読取るようにしたバーニヤ式ノギスであって、その目盛読取の視差を除去する構成のノギスを提供することを目的とする。この目的はバーニヤ式ノギスの主尺目盛面に対して副尺目盛面が接触摺動するように透明な材質からなる副尺目盛板を取り付けたスライダーを備えたノギスによって達成される。更にこの目的はバーニヤ式ノギスの主尺目盛に対して副尺目盛が直交するように副尺目盛を設けたスライダーと、前記の主尺目盛と副尺目盛の重ね合せを目視できるように前記のスライダーに取り付けたビームスプリッターを備えたノギスによって達成される。本発明により目盛読取の視差が除去され、高精度で、迅速且つ確実な読み取りができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ノギスにはバーニヤ式とディジタル式があり、本発明は前者のバーニヤ式ノギスの読取精度を高めたノギスに関わる。従来のバーニヤ式ノギスは、主尺目盛と副尺目盛を対向させ、その一致位置を読取る方式である。これに対し本発明のノギスは、目盛幅と目盛間隙幅をほぼ等しくして、主尺目盛と副尺目盛の重ね合わせにより生じるモアレ縞を利用したノギスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の製造プロセスにおいて、リソグラフィーによって基板上に形成される合成パターンの重ね合わせずれ量を検出する方法として、基板上に形成した主尺パターンと副尺パターンの重ね合わせによって形成されるモアレ縞の粗密から、重ね合わせずれ量を検出する方法が知られている(特許文献1)。本発明は、この周知の方法をノギスに適用するための構成に関わる。
【0003】
このモアレ縞を利用する方法においては、主尺目盛と副尺目盛の一致位置が、主尺目盛間隙の中心位置にある副尺目盛の位置となる。また、その目盛はモアレ縞の最も密な部分に位置する。更に、副尺目盛間隙の中心位置にある主尺目盛を検出読取ることで、最小読取値が通常の場合に比べて半減出来ることが知られている(特許文献1)。
【0004】
副尺を用いた目盛読取方法においては、nを2以上の整数として、(n−1)主尺単位の長さをn等分した副尺を用いることにより、最小読取値が主尺単位の1/nの読取系が実現できる。nの値をそのままにして最小読取値が半減出来れば、短い副尺で高い精度の読取が可能となる。また、主尺目盛と副尺目盛の一致位置を検出する際の識別感度を高めることにより、誤読の確率を下げ確実な読取が可能となる。識別感度が高ければ読取作業時の照明が十分得られなくても確実な読取が可能である。そして、使用目的にもよるが、明視距離以上の離れた位置からでも確実な読取が可能となる。更に、主尺目盛と副尺目盛の一致位置検出の際に、一致位置の絞り込みが出来れば、読取の迅速化が可能となる。
【特許文献1】特許出願公開番号 特開平7−120221
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の特徴をもつ副尺を用いた目盛読取方法を、ノギスに適用する際の課題を解決する。高い読取精度をもつノギスを実現するためには、製品に高い加工精度と、高い安定性が要求される。更に、上記読取法を適用する場合、主尺および副尺目盛を重ね合わせる際に生じる視差が直接精度に影響を与えるため、それを取除くことが重要な課題となる。ここでは主尺目盛面と副尺目盛面を接触させてスライダーを摺動させる方式と、ビームスプリッターを用い光学的に重ね合わせる方式とから成るノギスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図1および図2は本発明に適用する目盛読取法の原理説明図である。主尺および副尺共にその目盛幅と目盛間隙幅がほぼ等しくとってあり、目盛は黒線で示されている。図中上側に主尺が、下側に副尺がそれぞれ水平に示され、中央部でその一部が互いに重なるように配置されている。主尺目盛と副尺目盛が重なり、幅の異なる黒線による平均的な濃淡による縞模様、或いはモアレ縞が生じる様子が示されている。
【0007】
主尺の間隙には左から0、1、3、・・・、20と20まで番号が付されているが、これは主尺の最初の部分を示している。また、副尺の21個の目盛にはやはり左から0、2、4、・・・40と偶数の番号が40まで付されている。ここで、主尺単位(主尺目盛幅と主尺目盛間隙幅を加えた長さ)の19単位が、副尺単位(副尺目盛幅と副尺目盛間隙幅を加えた長さ)の20単位に相当している。つまり最少読取値が主尺単位の20分の1となる副尺の例を示している。これを図の上で確かめてみると次のようになる。即ち、主尺間隙0の右端から主尺間隙19の右端までの距離が、副尺目盛0の左端から副尺目盛40の左端までの距離に等しくなっている。
【0008】
ここで注意したいのは、主尺については主尺目盛ではなく主尺間隙に番号が付されていることである。これは主尺間隙が従来の方法における主尺目盛の役割をしていることを意味している。従って主尺目盛と副尺目盛の一致位置とは、副尺目盛の中心線と主尺間隙の中心線が一致する位置で、それは副尺目盛が相隣り合う主尺目盛の間に挟まれその中心に位置することである。つまり挟まれた副尺目盛の両側には等しい幅の隙間が出来ている。これは2つの目盛の中心に目的の目盛を合わせる目盛の挟み込み法の条件と同じで、目盛の中心位置の判定が高い感度で行える。また、両側に等しい幅の隙間が出来る副尺目盛は、この副尺目盛に限られる。更に、この一致位置を示す副尺目盛がモアレ縞濃部の中央に位置していて、その一致位置の絞込みが容易となる。従って迅速且つ確実に一致位置を読取ることが出来る。
【0009】
この状況は図1に示される。図中、副尺目盛20が2つの主尺目盛に挟まれている。図1は、副尺目盛0が主尺目盛間隙0と1の間の目盛と一致しているように、副尺がその0位置(主尺の間隙0と副尺の目盛0が一致した位置)から主尺単位の半分右に移動した状態を示すものである。その移動距離は副尺目盛の最大値40と一致目盛の20を用いて40分の20として求めることが出来る。
【0010】
次に上記とは逆に、主尺目盛と副尺目盛間隙が一致する場合を考える。図2には主尺間隙10と11の間の主尺目盛が、副尺目盛20と21に挟まれた状態が示されている。これは図1の状態から更に副尺を主尺単位の40分の1右に移動させることにより実現される。図1の矢印1は主尺単位の半分1/2を、図2の矢印2は副尺単位の半分1/2−1/40をそれぞれ示し、その差1/40が図1の状態から図2の状態への移動距離となる。副尺の0位置からの移動距離は副尺目盛20と22の間の値21(図示されず)を用いて40分の21として求めることが出来る。図1の場合と同様に挟まれた目盛の両側に等しい幅の隙間が出来ること、その位置がモアレ縞濃部の中央に位置することから、上述の場合と同様に迅速且つ確実に一致位置を読取ることが出来る。このように、最小読取値が20分の1の副尺を用いて、最小読取値40分の1が実現出来る。
【0011】
次に本発明の効果が現われるために、主尺および副尺の目盛幅と目盛間隙幅が満たさなければならない条件を求める。図3は主尺単位を矩形波で表わした説明図である。高さのある部分が目盛を、高さの無い部分が間隙を表わす。水平方向の矢印3は主尺目盛幅を、4は主尺目盛間隙幅を表わす。前者の値をaとすると、後者の値は1−aで、その合計は主尺単位の1で矢印5で示される。図4は最小読取値が1/nである副尺について、副尺単位を図3と同様に矩形波で表わした説明図である。副尺目盛幅(矢印6で示す)が主尺と同じaと仮定すると、副尺間隙幅(矢印7で示す)は(1−a)−1/nとなり、副尺単位(矢印8で示す)はそれらの合計1−1/nとなる。
【0012】
挟まれた目盛の両端に間隙が出来る条件は、副尺目盛間隙の方が主尺目盛間隙より小さくなるため、主尺目盛が相隣り合う2個の副尺目盛に挟まれる場合を考えればよい。つまり、主尺目盛の幅aが、副尺間隙幅(1−a)−1/nより小さくなければならない。この条件からaの上限を与える式a<1/2−1/2nが得られる。またこの両側間隙の和を副尺間隙幅のb%以下に押えるという条件から、aの下限を与える式(1−1/n)(100−b)/(200−b)<aが得られる。上記の説明では主尺目盛幅と副尺目盛幅が等しいと仮定したが、等しくない一般の場合にも同様の結果が得られることは明らかである。
【0013】
次に、上に述べた主尺目盛と副尺目盛の重ね合わせによる目盛読取方法の原理を、ノギスに適用する際の構成法を考える。主尺および副尺目盛を重ね合わす方法には、第1の方法として、主尺目盛または副尺目盛のいずれかを透明な目盛板の上に刻み、目盛面同士を重ねて透明な目盛板側から目視する方法がある。この場合、目盛板を互いに摺動させる必要性から目盛板の間に間隙が必要となる。しかし、この間隙は両目盛の間に視差を生じさせ読取誤差の原因となるため、視差なく摺動できる機構が必要となる。第2の方法として、半透明鏡などのビームスプリッターを用いて光学的に両目盛を重ね合わせる方法がある。この方法ではコントラストの低下を招くが視差は問題とならない。
【0014】
まず第1の重ね合わせ方法について考える。図5は本発明の一実施例を示すノギスのスライダー部の平面図である。スライダー窓10の中に取りつけられた透明材質の副尺目盛板11を通して主尺と副尺を重ねて目視する構造となっている。
【0015】
図6は図5のA−A’矢視方向の断面で示す側面図である。副尺目盛板11は、弱い力でもしなう程に薄く作り、左端14をスライダーに固定する。長方形のゴム製枠12により副尺目盛板を押し下げ、主尺目盛板13に接触させる。副尺目盛板の上面には副尺目盛板を保護するための透明板15を設ける。
【0016】
次に、第2の重ね合わせ法について考える。半透明鏡、或いは2枚の直角プリズムを45度の面で重ね合わせた正方プリズムなどのビームスプリッターを用いて、主尺と副尺目盛を光学的に視差無く重ね合わすことが出来る。
【0017】
図7は本発明の一実施例を一部断面で示すノギスのスライダー部の斜視図である。スライダー9上の副尺目盛11を主尺目盛面13に垂直な面に刻み、両目盛面に挟まれた領域に、正方プリズムビームスプリッター16を、両尺目盛面との間に間隙をあけ、直角を2分する面がビームスプリッターの45度面17と一致するように、固定枠18によりスライダーに固定する。正方プリズムビームスプリッターの上面から覗くことにより、主尺目盛と副尺目盛が重なって目視できる。
【0018】
以上詳述したように、副尺を用いる目盛読取方法において、主尺および副尺の目盛幅と目盛間隙幅をほぼ等しくとり、両尺を重ね合わせることで一致位置を読取ることが出来る。主尺目盛と副尺目盛の一致位置は、副尺目盛が相隣り合う主尺目盛の中心に挟まれる位置となる。また、一致位置として主尺目盛が相隣り合う副尺目盛の中心に挟まれる位置を加えることにより、従来方法に比べ最小読取値を半減出来る。
【0019】
この際、挟まれた目盛の両側に等しい幅の間隙が出来るなど、一致位置読取の際の認識感度が高くなる。更に、この一致位置は主尺と副尺の重ね合わせにより生じるモアレ縞の濃い部分の中央に位置するため、一致位置の絞込みが容易に行える。以上のような理由により、この方式を適用したノギスにおいては、迅速且つ確実な目盛読取が高精度で可能となる。
【発明の効果】
【0020】
主尺と副尺目盛の重ね合わせによる目盛読取方法をノギスに適用することで、目盛の読取を迅速且つ確実に行うと同時に、最小読取値を従来方法に比べて半減した高精度ノギスが実現出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
スライダー上の副尺目盛面が主尺目盛面と直角となるような構成とし、直角を2分する面がスプリッターの45度面と一致するように正方プリズムを配置し、主尺目盛と副尺目盛を重ねて目視できるようにしたノギス。
【実施例】
【0022】
主尺単位を1mmとし、49mmを50等分した副尺を用いる目盛読取方法において、主尺および副尺目盛幅が0.48mm、主尺目盛間隙幅0.52mm、副尺目盛間隙幅0.5mm、とすることにより、最小読取値100分の1のノギスが実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に適用する目盛読取法の原理説明図
【図2】本発明に適用する目盛読取法の原理説明図
【図3】本発明に適用する主尺目盛単位を矩形波で示す説明図
【図4】本発明に適用する副尺目盛単位を矩形波で示す説明図
【図5】本発明の一実施例を示すノギスのスライダー部の平面図
【図6】図5のA−A’矢視方向の断面で示す側面図
【図7】本発明の一実施例を一部断面で示すノギスのスライダー部の斜視図
【符号の説明】
【0024】
1 主尺単位の半分の幅:1/2
2 副尺単位の半分の幅:1/2−1/40
3 主尺目盛幅:a
4 主尺目盛間隙幅:1−a
5 主尺目盛単位:1
6 副尺目盛幅:a
7 副尺目盛間隙幅:(1−a)−1/n
8 副尺目盛単位:1−1/n
9 スライダー
10 スライダー窓
11 副尺目盛板
12 ゴム製枠
13 主尺目盛板
14 副尺目盛板の固定端
15 副尺目盛板の保護用透明板
16 正方プリズムビームスプリッター
17 ビームスプリッター45度面
18 ビームスプリッター固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーニヤ式ノギスの主尺目盛面に対して副尺目盛面が接触摺動するように透明な材質からなる副尺目盛板を取り付けたスライダーを備え、前記の各目盛の一方の目盛間隙の中心位置にある他方の目盛を検出読取るようにしたことを特徴とするノギス。
【請求項2】
バーニヤ式ノギスの主尺目盛に対して副尺目盛が直交するように副尺目盛を設けたスライダーと、前記の主尺目盛と副尺目盛の重ね合せを目視できるように前記のスライダーに取り付けたビームスプリッターを備え、前記の各目盛の一方の目盛間隙の中心位置にある他方の目盛を検出読取るようにしたことを特徴とするノギス。
【請求項3】
前記の主尺目盛と副尺目盛の目盛幅と目盛間隙幅をほぼ等しくしたことを特徴とする請求項1および2のノギス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−93564(P2007−93564A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307755(P2005−307755)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(303017266)
【Fターム(参考)】