説明

ノズルおよび気液噴霧装置

【課題】簡単な構造で液体を微粒化することができるとともにメンテナンスも容易に可能なノズルおよびこれを備えた気液噴霧装置を提供する。
【解決手段】気液噴霧装置1は、空気を圧縮して送り出す圧縮装置としてのコンプレッサ10と、液体を供給する供給装置としての給水装置20と、コンプレッサ10により圧縮された空気および給水装置20より供給された液体をそれぞれ取り込んで噴霧状にして吐き出すノズル30とを備え、ノズル30は、圧縮空気を取り込む取込口33を上流側に備えた中空円筒の外筒31と、外筒31内に挿入され、上流側から液体を取り込む中空円筒の内筒32と、外筒31内における内筒32の軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、内筒32は、液体が外筒31内に吐出する吐出孔37と、先端に設けられ、下流に向かって拡径する中実のテーパ部38と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などの液体と圧縮された空気を取り込んで噴霧状にして吐き出すノズルおよび気液噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、降温のための気液噴霧装置が集客施設の入口などで用いられている。これは、霧状に噴霧された水の蒸発潜熱によって周囲の空気が冷却される作用を応用したものである。水の蒸発潜熱を利用する気液噴霧装置は、上記のような集客施設以外にも、ゴム焼却時に発生するガスを冷却するために焼却炉内に設けられたり、水の蒸発潜熱による冷却効果と水蒸気による窒息効果で火災を消火するための消火装置として室内に設けられたりしている。気液噴霧装置から噴霧される水の粒径が小さければ小さいほど水の蒸散が早まり、それだけ冷却効果も高まることから、気液噴霧装置に取り付けられるノズルには、水の粒径を小さくするための工夫がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の二流体ノズルは、図4に示す通りであり、以下のようにして液体を微粒化させ噴射する。まず、中心軸線に沿って液体流路101を設け、外周に管状の外側気体流路102を設け、液体流路101の途中に液体分岐流路103を介設し、液体分岐流路103の再合流位置に旋回手段104を配置して液体を一次微粒化させる。次に、液体分岐流路103で囲まれた中央部位に中央気体流入部105を形成し、中央気体流入部105に外側気体流路102より気体を導入して、旋回して環状膜となった液体の中央に気体を衝突混合で導入して、二次微粒化させながら第1混合を行う。さらに、再合流されて気液混合流路106となる流路周面に、外側気体流路102を連通する気体流入孔107を設けて、気液混合流路106の混合流体に対して外周面より気体を衝突混合で流入して三次微粒化しながら第2混合を行わせて、噴射口108より気液混合ミストとして噴射させている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−159889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の二流体ノズルは、上記構成により液体を3回に渡って微粒化させ、気液混合ミストとして噴射させるとしているが、図4に示すように内部構造が非常に複雑であり、製造が困難であるとともに詰まり除去などのメンテナンスも行いにくい。
そこで本発明は、簡単な構造で液体を微粒化することができ、メンテナンスも容易に可能なノズルおよびこれを備えた気液噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、気液噴霧装置の先端に取り付けられるノズルであって、圧縮空気を取り込む取込口を上流側に備えた中空円筒の外筒と、外筒内に挿入され、上流側から液体を取り込む中空円筒の内筒と、外筒内における内筒の軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、内筒は、液体が外筒内に吐出する吐出孔と、先端に設けられ、下流に向かって拡径する中実のテーパ部と、を有することを特徴とする。
【0007】
外筒の取込口から圧縮空気を取り込むと、取り込まれた圧縮空気は内筒と外筒との間に形成される隙間を旋回しながら下流側に向かって流れていく。そして、この圧縮空気の流れによって、内筒の上流側から取り込まれた液体は、圧縮空気に引きずられるようにして内筒の吐出孔から外筒内へ流れ出し、ひきちぎられながら圧縮空気と衝突することで微粒化され、ミスト状の混合流体となってノズルの先端部側へと流れていく。
【0008】
ここで、圧縮空気と衝突させることで微粒化された液体は、混合流体の流速が落ちると再び結合して粒径が大きくなってしまうが、本発明では、内筒の先端に、下流に向かって拡径する中実のテーパ部を設けたことにより、ノズルの先端部では、外筒と内筒との間に、先端に向かって徐々に狭くなる流路が形成されているので、微粒化された液体と圧縮空気の混合流体は、速度を落とすことなく先端へ向かって流れていき、ミスト状態を保ったまま先端から噴出される。
【0009】
また、本発明では、上述したテーパ部を設けたことにより、調整部により内筒の外筒内における軸方向の位置を調整することで、ノズル先端部における外筒と内筒との隙間の大きさを調整することができる。これにより、ノズル先端部から噴出させる混合流体の噴出量を容易に調整することもでき、また、液体に含まれる不純物等によって外筒と内筒のテーパ部との隙間に詰まりが発生した場合でも、調整部を操作するだけで容易に詰まりを解消することができる。
【0010】
また、前記調整部は、外筒に設けられた雄ねじ部と、内筒に設けられた雌ねじ部とにより構成されるとよい。
上記構成により、簡易な構造で外筒内における内筒の軸方向の位置を容易に微調整することができる。
【0011】
また、本発明の気液噴霧装置は、空気を圧縮して送り出す圧縮装置と、液体を供給する供給装置と、圧縮装置により圧縮された空気および供給装置より供給された液体をそれぞれ取り込んで噴霧状にして吐き出すノズルとを備える気液噴霧装置であって、ノズルは、圧縮空気を取り込む取込口を上流側に備えた中空円筒の外筒と、外筒内に挿入され、上流側から液体を取り込む中空円筒の内筒と、外筒内における内筒の軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、内筒は、液体が外筒内に吐出する吐出孔と、先端に設けられ、下流に向かって拡径する中実のテーパ部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気液噴霧装置の先端に取り付けられるノズルを、圧縮空気を取り込む取込口を上流側に備えた中空円筒の外筒と、外筒内に挿入され、上流側から液体を取り込む中空円筒の内筒と、外筒内における内筒の軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、内筒は、液体が外筒内に吐出する吐出孔と、先端に設けられ、下流に向かって拡径する中実のテーパ部と、を有する構成としたことにより、簡単な構造で液体を微粒化することができ、また、圧縮空気と液体の混合流体の噴出量の調整やメンテナンスも容易に可能なノズルとすることができる。また、簡単な構造であるので、製造が容易なノズルとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態における気液噴霧装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施の形態における気液噴霧装置の概略図である。図2は、本実施の形態における気液噴霧装置のノズルの縦断面図である。図3は、ノズルの分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態における気液噴霧装置1は、空気を圧縮して送り出す圧縮装置としてのコンプレッサ10と、水を供給する給水装置20と、コンプレッサ10により圧縮された空気および給水装置20より供給された水をそれぞれ取り込んで噴霧状にして吐き出すノズル30とを備える。
【0015】
コンプレッサ10は、従来公知のものを用いることができる。コンプレッサ10とノズル30とは、送風管12を介して連結されており、送風管12の途中には、空気の流量を調整する調整弁11が設けられている。コンプレッサ10によって、空気は圧縮された状態でノズル30へと送られる。
【0016】
給水装置20はタンクなどに貯留された水をポンプなどによりノズル30へと供給するものであり、給水装置20とノズル30とは、給水管23を介して連結されている。給水管23の途中には、水の流量を示す流量計21と、水の流量を調整する調整弁22が設けられている。給水装置20によって、水はノズル30に給水される。なお、気液噴霧装置1を設置する所に水道水を供給する水道管があれば、水道管の蛇口に直接給水管23を差し込む構成としてもよい。
【0017】
ノズル30は、図2に示すように、中空円筒の外筒31と、この外筒31内に挿入される中空円筒の内筒32により構成されている。本実施の形態では、外筒31は、長さ15.7mm、直径27.2mm、厚さ3mmに形成され、内筒32は、長さ215mm、直径13.8mm、厚さ2mmに形成されている。
【0018】
図2および図3に示すように、外筒31の上流側には、圧縮空気を取り込む取込口33が設けられている。取込口33は、外筒31の上端から約38mm下方に形成されている。取込口33の上端部には約12mmに渡って雄ねじ33aが形成されており、送風管12と螺合可能となっている。また、外筒31の上端部には約25mmに渡って雄ねじ部34が形成されている。
【0019】
内筒32の上端部には約12mmに渡って雄ねじ32aが形成されており、給水管23と螺合可能となっている。図2および図3に示すように、内筒32には、内筒32の上端から50mm下方の上部外側面から連設されたフランジ部35が設けられており、フランジ部35の内側面には、外筒31に形成された雄ねじ部34と螺合する雌ねじ部36が形成されている。本実施の形態では、雄ねじ部34と雌ねじ部36とが、外筒31内における内筒32の軸方向の位置を調整する調整部として機能する。
【0020】
図2および図3に示すように、内筒32の下部外周面には、上端から取り込まれた水を外筒31内に吐出するための直径5mmの吐出孔37が等間隔に4カ所設けられている。また、内筒32の先端には、下流に向かって拡径する長さ25mmの中実のテーパ部38が設けられている。テーパ部の先端の直径は20mmであり、外周面は約13.5°の傾斜角で傾斜している。
【0021】
次に、本実施の形態における気液噴霧装置1の使用態様について説明する。
【0022】
まず、気液噴霧装置1を動かす前に、ノズル30の微調整を行う。内筒32を外筒31内に挿入し、雄ねじ部34と雌ねじ部36とを螺合させることで、内筒32の軸方向の位置を調整する。これにより、外筒31の先端とテーパ部38とで形成される隙間dの大きさを所望とする量に調整し、ノズル先端から噴出させる気液噴霧量を調整する。なお、外筒31の先端面とテーパ部38の先端面とが一致する場合が最も隙間dが狭く、以下、テーパ部38を外筒31から突出させていくことで徐々に隙間dを広くすることができる。
【0023】
ノズル30の微調整を行ったら、コンプレッサ10を作動させ、圧縮空気を、風量を調整弁11で調整しながら外筒31の取込口33へと送る。また同時に、給水装置20を作動させ、水を、流量を流量計21で見て調整弁22で調整しながら内筒32へと送る。
【0024】
取込口33から取り込まれた圧縮空気は、内筒32と外筒31との間に形成される隙間を旋回しながら下流側に向かって流れていく。この圧縮空気の流れによって、内筒32に取り込まれた水は、圧縮空気に引きずられるようにして吐出孔37から外筒31内へ流れ出すとともに細かくひきちぎられていく。そして、外筒31内へ流れ出した水は圧縮空気と衝突することで微粒化され、ミスト状の混合流体となってノズルの先端部側へと流れていく。
【0025】
図2に示すように、ノズルの先端部ではテーパ部38によって、外筒31と内筒32との間に、先端に向かって徐々に狭くなる流路が形成されているので、微粒化された水と圧縮空気の混合流体は、速度を落とすことなく先端へ向かって流れ、ノズル先端の隙間dから噴出する。
【0026】
本実施の形態では、上述したように、内筒32の先端にテーパ部38を設けたことにより、微粒化された水と圧縮空気との混合流体の速度を落とすことなくノズル先端から噴出させることができるので、流速の低下による水の再結合を防ぐことができ、ミスト状態を保ったままノズル先端の隙間dから噴出させることができる。
【0027】
また、水に含まれる不純物等によって隙間dに詰まりが発生した場合は、雄ねじ部34と雌ねじ部36の螺合状態を調整して、テーパ部38を外筒31から突出させていくことで隙間dを大きくし、詰まりを解消することができる。また、外筒31と内筒32とは雄ねじ部34と雌ねじ部36とで螺合させているだけであるので、螺合を解除すれば、外筒31から内筒32を取り出すことができ、吐出孔37や管内の洗浄なども容易に行うことができる。
【0028】
以上のように、本実施の形態におけるノズル30は、簡単な構造で水を微粒化することができるとともに、噴霧量の調整やメンテナンスも容易に行うことができる。なお、本実施の形態では、取込口33は外筒31の軸中心に向かって直交するように設けられているが、これに限らず、外筒31の接線方向に向かって傾斜した状態で設けたり、外筒31の軸に対して傾斜した状態で設けたりしてもよい。また、吐出孔37の数や形状も上記実施の形態に限るものではなく、5つ以上設けたり楕円形状にしたりしてもよい。さらに、テーパ部38の傾斜角度も上記本実施の形態に限るものではなく、所望の噴霧量が得られるように任意に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、水などの液体と圧縮された空気を取り込んで噴霧状にして吐き出すノズルおよび気液噴霧装置として用いることができる。特に、本発明は、簡単な構造で液体を微粒化することができるとともにメンテナンスも容易に可能なノズルおよびこれを備えた気液噴霧装置として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態における気液噴霧装置の概略図である。
【図2】本実施の形態における気液噴霧装置のノズルの縦断面図である。
【図3】ノズルの分解斜視図である。
【図4】従来のノズルの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 気液噴霧装置
10 コンプレッサ
11 調整弁
12 送風管
20 給水装置
21 流量計
22 調整弁
23 給水管
30 ノズル
31 外筒
32 内筒
32a 雄ねじ
33 取込口
33a 雄ねじ
34 雄ねじ部
35 フランジ部
36 雌ねじ部
37 吐出孔
38 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液噴霧装置の先端に取り付けられるノズルであって、
圧縮空気を取り込む取込口を上流側に備えた中空円筒の外筒と、
前記外筒内に挿入され、上流側から液体を取り込む中空円筒の内筒と、
前記外筒内における前記内筒の軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、
前記内筒は、前記液体が前記外筒内に吐出する吐出孔と、先端に設けられ、下流に向かって拡径する中実のテーパ部と、を有することを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記調整部は、前記外筒に設けられた雄ねじ部と、前記内筒に設けられた雌ねじ部とにより構成されることを特徴とする請求項1記載のノズル。
【請求項3】
空気を圧縮して送り出す圧縮装置と、液体を供給する供給装置と、前記圧縮装置により圧縮された空気および前記供給装置より供給された液体をそれぞれ取り込んで噴霧状にして吐き出すノズルとを備える気液噴霧装置であって、
前記ノズルは、前記圧縮空気を取り込む取込口を上流側に備えた中空円筒の外筒と、前記外筒内に挿入され、上流側から液体を取り込む中空円筒の内筒と、前記外筒内における前記内筒の軸方向の位置を調整する調整部と、を備え、
前記内筒は、前記液体が前記外筒内に吐出する吐出孔と、先端に設けられ、下流に向かって拡径する中実のテーパ部と、
を有することを特徴とする気液噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−161834(P2008−161834A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356328(P2006−356328)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(506254156)
【Fターム(参考)】