説明

ノズル付きキャップ

【課題】密封部材を一体に設けることができるとともに、使用に際しての取り外しの容易な、新規なノズル付きキャップを提供する。
【解決手段】ノズル付きキャップ1は、キャップ本体3と密封部材5とを備える。キャップ本体3は、容器Cの口部C1に装着される装着基部11、及び該装着基部11から立ち上がり内側に容器C内に収容された内溶液の注出通路Pを形成するノズル13を一体に有する。密封部材5は、ノズル13の先端の開口部を密封する密封部19、及び該密封部19を取り除くための把持部23を一体に有する。ノズル付きキャップ1は、キャップ本体3及び密封部材5をインサート成形又は二材成形により剥離可能に一体化してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の口部に装着されてノズルの開口部を通じて内溶液が注出されるキャップに関し、とくには、その未使用状態を視認可能とするとともに、使用に際して容易に取り外すことのできる密封部材を備えたノズル付きキャップを提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
内溶液を収納する容器、とくに、詰め替え用の内溶液を収納する詰め替え容器には、内溶液の注出を可能とするノズルが設けられており、このようなノズルは従来、特許文献1に開示されるように、ノズルの先端に、プラスチックや金属箔からなる薄いフィルム(シート)を熱溶着により固着して、容器内部を密封するとともにバージン性を付与するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−71152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズルの開口部にフィルムを固着して未使用状態を維持する場合、フィルムの固着は、ノズルの成形とは別工程で行う必要があり、その生産性について改善の余地があった。
【0005】
また、フィルムをノズルの開口部に固着する場合には、使用に際してフィルムを剥がさなければならないところ、フィルムの固着性が高いと剥がし難いため、改善の余地があった。上記特許文献1では、これに鑑み、詰め替えが行われるリフィル容器の口部に破断刃をもつ中栓を嵌着して、詰め替え時に詰め替え容器の口部をリフィル容器の口部に差し込むことにより、フィルムを破断するよう構成しているが、部品点数が増加しコスト高である。
【0006】
それゆえ、この発明は、密封部材を一体に設けることができるとともに、使用に際しての取り外しの容易な、新規なノズル付きキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、この発明のノズル付きキャップは、容器の口部に装着される装着基部、及び該装着基部から立ち上がり内側に容器内に収容された内溶液の注出通路を形成するノズルを一体に有するキャップ本体と、前記ノズルの先端の開口部を密封する密封部、及び前記密封部を取り除くための把持部を一体に有する密封部材と、を備え、前記キャップ本体及び前記密封部材をインサート成形又は二材成形により剥離可能に一体化してなるものである。
【0008】
かかるノズル付きキャップにあっては、密封部材及びキャップ本体を一体成形したことから、キャップ本体の成形と同時に密封部材をノズルに接着(擬似接着)することができて生産性を向上させることができる。さらに、容器の口部にキャップ本体の装着基部を介して装着するだけで容器内部を密封することができるので、容器に対する密封部材の適用が簡単である。しかも、キャップ本体と密封部材とは剥離可能に一体化され、すなわち密封部材はキャップ本体に擬似的に接着されているに過ぎないから、把持部を摘んで引き上げるだけで密封部材をキャップ本体から引き剥がすことができ、キャップの開封を容易に行うことができる。よって、従来のように、リフィル容器にフィルムを破断するための部材を別途設ける必要もなく、安価である。
【0009】
したがって、この発明によれば、密封部材を一体に設けることができるとともに、使用に際しての取り外しの容易な、新規なノズル付きキャップを提供することができる。
【0010】
なお、この発明のノズル付きキャップにあっては、前記密封部材の材質を自由に選択できるが、例えば熱可塑性エラストマーで形成した場合、密封部材の弾性特性により、より容易にキャップの開封を行うことができる。
【0011】
また、この発明のノズル付きキャップにあっては、前記ノズルに、先端から下方に向けて延びる切欠きを形成とともに、前記密封部により前記切欠きをも密封してなることが好ましく、これによれば、上記切欠きを内容物の注出の際の空気置換口として機能させることができ、とくに、この発明のノズル付きキャップを詰め替え容器に適用し、該ノズル付きキャップを再充填されるリフィル容器(被詰め替え容器)の口部に差し込んで注出を行うような場合においても内容物の注出を円滑に行うことができる。
【0012】
加えて、この発明のノズル付きキャップにあっては、前記密封部材の一部として、前記密封部の下端に、前記ノズルの外表面に沿って延びるとともに前記把持部を前記ノズルに対して離間して保持する延出部を一体に連設してなることが好ましく、これによれば、接触面積の増大によるキャップ本体及び密封部材相互間のより良好な保持力を実現できるとともに、ノズルと把持部との間に指を入り込ませる空間を形成して把持部をより摘み易くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、密封部材を一体に設けることができるとともに、使用に際しての取り外しの容易な、新規なノズル付きキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明にしたがう一実施形態のノズル付きキャップを容器に適用した状態で示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のノズル付きキャップにつき、把持部を摘んで密封部材をキャップ本体から引き剥がす様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図中の符号1は、ノズル付きキャップを示し、符号Cは、該ノズル付きキャップが装着される容器を示し、符号C1は、容器の口部を示す。また、この発明においては、ノズル付きキャップを適用する容器の種類にとくに限定はないが、詰め替え容器に有利に適用することができる。
【0016】
図1に示すように、ノズル付きキャップ1は、容器Cの口部C1に装着されるキャップ本体3と、キャップ本体3に配置され、容器C内部を密閉状態に保持する密封部材5とを備える。
【0017】
さらに、図2に詳細に示すように、キャップ本体3は、中央に容器Cの口部C1の開口に対応した開口部を形成し下面が容器Cの口部C1の突端に当接する天壁7、及び該天壁7の外周縁から垂下し容器Cの口部C1と係合する周壁9からなる装着基部11と、装着基部11の天壁7から立ち上がり内側に容器C内に収容された内容液の注出通路Pを形成する筒状のノズル13とを一体に有する。この例では、装着基部11は容器Cの口部C1に螺着しているが、アンダーカットのような係合リブを口部C1の外周及び周壁9の内周の双方に設けて嵌合、保持するようにしてもよい(図示省略)。なお、図2中、符号15は、天壁7の内周縁から垂下し容器Cの口部C1の内周面と嵌合する嵌合筒である。
【0018】
ノズル13の先端は、竹やりの先端部ように傾斜して形成されており、これにより鋭角側を、内容物を注出する際に傾ける側である注出側S1とすることができる。ノズル13の注出側S1に対向する側S2には、ノズル13の先端(上端縁)から下方(ノズル13先端から装着基部11に向かう方向)に向けて延びるスリット状の切欠き17(図3参照)が形成されている。
【0019】
一方、密封部材5は、ノズル13の先端の開口部及び切欠き17内に入り込むとともに外縁部にてノズル13に被さってこれらの開口部及び切欠き17を密封する密封部19と、密封部19の下端に段差hを介して連設された延出部21と、延出部21の末端から上方に向けて延びて密封部材5をノズル13から取り外す際に使用者が指で摘むことができる把持部23と、を一体に有してなる。密封部19は、ノズル13の先端の開口部及び切欠き17の形状に適合する形状である。図示例では、ノズル13の開口部の形状では円形であるが、ノズル13の開口部は矩形や三角形等とすることができ、これに合わせて密封部19の形状も適宜変更することができる。把持部23の外面には、滑り止めのための複数の凸部23aが形成されている。また、延出部21は、ノズル13の側壁の、ノズル13の切欠き17と装着基部11との間の部分及び天壁7の上面に沿って(密着して)延びるとともに把持部23をノズル13から離間して保持しており、これにより、接触面積の増大によるキャップ本体3及び密封部材5相互間のより良好な保持力を実現できるとともに、ノズル13と把持部23との間に指を入り込ませる空間を形成して把持部23をより摘み易くすることができる。
【0020】
そして、キャップ本体3と密封部材5とはインサート成形又は二材成形により互いに異なる樹脂を用いて剥離可能に一体化されている。インサート成形の場合には、密封部材5に対してキャップ本体3をインサート材とすることができるが、密封部材5をインサート材としてもよい。また、二材成形の場合には、キャップ本体3を一次側、密封部材5を二次側とすることができるが、これらは逆にしてもよい。また、キャップ本体3と密封部材5とを剥離可能に一体化するには、例えば、キャップ本体3と密封部材5を相溶性の低いあるいは非相溶性の樹脂で形成することで実現できるがこれに限定されない。キャップ本体3の材料としては、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン等の硬質樹脂を挙げることができ、密封部材5の材料としては、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを挙げることができるが、これらに限定されない。とくに、密封部材5は、キャップ本体3よりも軟質の樹脂で構成することでその引き剥がしが容易となる。なお、ここでは、キャップ本体3をポリプロピレンで形成し、密封部材5をポリエステル系エラストマーで形成している。
【0021】
このようになるノズル付きキャップ1にあっては、密封部材5及びキャップ本体3を一体成形したことから、キャップ本体3の成形と同時に密封部材5をノズル13に接着(擬似接着)することができて生産性を向上させることができる。さらに、容器Cの口部C1にキャップ本体3の装着基部11を介して装着するだけで容器C内部を密封することができるので、容器Cに対する密封部材5の適用が簡単である。しかも、キャップ本体3と密封部材5とは剥離可能に一体化され、すなわち密封部材5はキャップ本体3に擬似的に接着されているに過ぎないから、図3に示すように、把持部23を摘んで引き上げるだけで密封部材5をキャップ本体3から引き剥がすことができ、キャップ1の開封を容易に行うことができる。よって、従来のように、リフィル容器にフィルムを破断するための部材を別途設ける必要もなく、安価である。
【0022】
また、この実施形態のノズル付きキャップによれば、密封部材5を熱可塑性エラストマーで形成していることから、密封部材5の弾性特性により、より容易にキャップの開封を行うことができる。
【0023】
さらに、この実施形態のノズル付きキャップ1によれば、ノズル13に、先端から下方に向けて延びる切欠き17を形成したことから、該切欠き17を内容物の注出の際の空気置換口として機能させることができ、とくに、このノズル付きキャップ1を詰め替え容器に適用し、該ノズル付きキャップ1を再充填されるリフィル容器(被詰め替え容器)の口部に当接させてあるいは差し込んで注出を行うような場合においても内容物の注出を円滑に行うことができる。なお、切欠き17は、ノズル13の先端から下方に向けて設けてあればよいので、把持部23の位置に関係なく、どの位置に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
かくしてこの発明によれば、密封部材を一体に設けることができるとともに、使用に際しての取り外しの容易な、新規なノズル付きキャップを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ノズル付きキャップ
3 キャップ本体
5 密封部材
11 装着基部
13 ノズル
19 密封部
21 延出部
23 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着される装着基部、及び該装着基部から立ち上がり内側に容器内に収容された内溶液の注出通路を形成するノズルを一体に有するキャップ本体と、
前記ノズルの先端の開口部を密封する密封部、及び該密封部を取り除くための把持部を一体に有する密封部材と、を備え、
前記キャップ本体及び前記密封部材をインサート成形又は二材成形により剥離可能に一体化してなることを特徴とするノズル付きキャップ。
【請求項2】
前記密封部材を熱可塑性エラストマーで形成してなる、請求項1に記載のノズル付きキャップ。
【請求項3】
前記ノズルに、先端から下方に向けて延びる切欠きを形成とともに、前記密封部により前記切欠きをも密封してなる、請求項1又は2に記載のノズル付きキャップ。
【請求項4】
前記密封部材の一部として、前記密封部の下端に、前記ノズルの外表面に沿って延びるとともに前記把持部を前記ノズルに対して離間して保持する延出部を一体に連設してなる、請求項1〜3の何れか一項に記載のノズル付きキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158338(P2012−158338A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17167(P2011−17167)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】