説明

ノズル付き押出容器

【課題】底壁を押して内容物を圧送し、押し込み解除で外気導入する押出容器の予期せぬ噴出や垂れの防止。
【解決手段】底壁の押し込みで内容物を貫通路Rを通して排出し、押し込み解除により外気が吸入されるノズル付き押出容器に、ノズル5の装着筒7の内側に、貫通路の開口部Aを有する弁座8と、誘導筒9に弾性弁10を設け、弾性弁10は、誘導筒の下端部に差し込まれる環状の凹部12が形成された環状基部11を有し、環状基部の内周側端縁13aが弁座に着座して充填空間と誘導筒の内側Sとの間を仕切ると共に、内容物の圧送により弁座から離間し空間を誘導筒の内側Sに通じさせる吐出弁13となし、環状基部の外周側端縁14aが弁座7bに着座して装着筒と誘導筒との間に形成された環状隙間Sを仕切ると共に、空間に生じた負圧により弁座7bから離間して環状隙間Sを空間Sに通じさせる吸入弁14とし、誘導筒に貫通孔Aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の底壁の押し込みにより、ノズルの貫通路から内容物を注出するノズル付き押出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体の底壁を押し込むことにより、ノズルの貫通路を通して内容物を外界に注出するものとしては、例えば、滴下式注出容器と呼ばれるものがある(例えば、「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平04−43500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした容器は、ノズルの先端を下に向ける等すると、ノズルから内容物が垂れ易いという問題があった。また、こうした容器は、底壁の押し込みにより内容物を取り出す構造のため、容器本体内の圧力が上昇すると、内容物が飛び出す(噴出する)ことがある。
【0005】
本発明の目的とするところは、底壁を押し込むことで充填空間を加圧して内容物を外界に圧送する一方、押し込みの解除によって外気を導入することで、再び底壁の押し込みにより、内容物を圧送が可能となるノズル付き押出容器にあって、予期せぬ内容物の噴出や垂れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
胴体部分を形成する周壁と当該周壁の下端に繋がる底壁とを有して周壁と底壁によって形成された充填空間に内容物が充填される容器本体と、周壁の開口端に固定保持される装着筒を有し、底壁の押し込みによって圧送された内容物が貫通路を通して外界に排出される一方、押し込みの解除によって外気が貫通路を通して吸入されるノズルとを備えたノズル付き押出容器であって、
ノズルの装着筒の内側に、ノズルの貫通路から上流側に突出して貫通路に通じる開口部を有する弁座と、当該弁座を取り囲んで弁座に形成された開口部に充填空間からの内容物を誘導する誘導筒とを設けると共に、当該誘導筒に弾性弁を設け、
当該弾性弁は、誘導筒の下端部に差し込まれる環状の凹部が形成された環状の基部を有し、当該環状の基部の内周側端縁が当該弁座に全周に亘って着座して充填空間と誘導筒の内側との間を仕切ると共に、内容物の圧送により貫通路側に弾性変形することで弁座から離間して充填空間を誘導筒の内側に通じさせる吐出弁としてなる一方、
当該環状の基部の外周側端縁がノズルの装着筒に設けた弁座に全周に亘って着座して当該装着筒と誘導筒との間に形成された環状の隙間と充填空間との間を仕切ると共に、当該充填空間に生じた負圧により充填空間側に弾性変形することでノズルの装着筒に設けた弁座から離間して前記環状の隙間を充填空間に通じさせる外気吸入弁としてなり、
ノズルの誘導筒には、貫通路を前記環状の隙間に通じさせる貫通孔を形成する。
【0007】
また、本発明によれば、環状の基部から一体に垂下する筒体部の下端に、周壁とノズルの装着筒との間で挟持される外向きのフランジを設け、当該フランジに、吸入弁を通して送られた空気を充填空間に導入するための貫通孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器を倒立させても、内容物を積極的に加圧しない限り、吐出弁によりノズルの貫通路が遮断されているため、内容物の噴出や垂れを生じることがない。このため、本発明によれば、予期せぬ内容物の噴出や垂れを生じないノズル付き押出容器を提供することができる。
【0009】
また、本発明は、吐出弁と外気吸入弁とが一体に構成されているため、部品点数の削減を図りつつ、簡易な構造を実現することができる。
【0010】
更に、本発明は、上述のとおり、充填空間の内容物を貫通路まで圧送する経路と、貫通路から導入した外気を充填空間に導入するまでの経路とを分けたため、吐出弁の先端に空気が巻き込まれることがないから、安定した吐出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う、ノズル付き押出容器の一形態を一部断面で示す側面図である。
【図2】図1の弾性弁及びその周辺を示す拡大図である。
【図3】本発明に従う、他の形態の弾性弁及びその周辺を一部断面で示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に従う、ノズル付き押出容器の各形態を詳細に説明する。
【0013】
図中、符号1は、容器本体である。容器本体1は、胴体部分を形成する周壁2と、この周壁2の下端に繋がる底壁3とを有する。これにより、容器本体1は、周壁2と底壁3によって内容物が充填される充填空間S0を形成する。底壁3は、外部からの押し込みにより変形し、その押し込みを解除することにより復元する弾性材料からなる。また、底壁3は、周壁2に対してリング部材4によって抜け止め保持されている。
【0014】
符号5は、貫通路Rを有するノズルである。ノズル5は、その下端を拡径させてなる肩部6から装着筒7が一体に垂下する。装着筒7は、肩部6に繋がる外筒7aに、フランジ7bを介して嵌合筒7cが一体に繋がる。ノズル5は、嵌合筒7cを介して周壁2の開口端に、スプライン嵌合C1及びアンダーカット嵌合C2によって固定保持される。
【0015】
これにより、ノズル5は、底壁3が押し込まれることによって充填空間S0から圧送された内容物を、貫通路Rを通して外界に排出する一方、底壁3の押し込みが解除されることによって貫通路Rを通して外気を導入する。
【0016】
肩部6と装着筒7との内側に形成された空間には、貫通路Rから内容物の流路上流側に突出する弁座8が設けられている。弁座8の側面f1には、貫通路Rに通じる開口部A1が形成されている。また、装着筒7の内側には、装着筒7との間に、弁座8を取り囲んで開口部A1に充填空間S0からの内容物を誘導する誘導筒9が肩部6から一体に延在する。誘導筒9の下端には、周方向に間隔を空けて複数の切り欠き状の開口部A2が形成されている。
【0017】
なお、開口部A2は、後述のとおり、貫通路Rから吸入した外気を環状隙間S2に通す貫通孔として機能する。このため、開口部(以下、「貫通孔」)A2は、本形態のような、切り欠き状のものに限定されることなく、例えば、その名称のとおり、貫通孔とすることも可能である。
【0018】
符号10は、変形及び復元の可能な、例えば、ゴムやエラストマ等の弾性材料からなる弾性弁である。弾性弁10は、図2に示すように、環状の基部(以下、「環状基部」)11を有する。この環状基部11には、誘導筒9の下端部に差し込まれる環状の凹部12が形成されている。これにより、弾性弁10は、誘導筒9の下端部に嵌合保持されている。
【0019】
また、環状基部11の内周側部分13は、弁座8の開口部A1に向かって縮径し、その内周側端縁13aが弁座8の側面(以下、「座面」)f1に全周に亘って着座して充填空間S0と、開口部A1を含む誘導筒9の内側空間S1との間を仕切っている。これにより、内周側部分13は、充填空間S0からの内容物が圧送されない限り、実線に示すように、弁座8に着座して内容物の流出を阻止するが、充填空間S0から内容物が圧送されると、破線に示すように、下流側(図面上向きの側)に弾性変形することで、弁座8から離間して、開口部A1を含む誘導筒9の内側空間S1を介して充填空間S0を貫通路Rに通じさせる。即ち、内周側部分13は、吐出弁として機能する。
【0020】
なお、本発明に従えば、内周側部分13を縮径させるに際し、弁座8に向かって直線状に、或いは、曲線状に縮径させることが可能であるが、本形態では、内周側部分13は、弁座8に向かって縮径するに際し、一定の間隔おきに段差13sが生じるように段階的に縮径させている。
【0021】
他方、環状基部11の外周側部分14は、装着筒7に向かって拡径し、その外周側端縁14aがフランジ(弁座)7bの裏面(以下、「座面」)に全周に亘って着座して装着筒7と誘導筒9との間に形成された環状の隙間(以下、「環状隙間」)S2と充填空間S0とを仕切っている。これにより、外周側部分14は、充填空間S0に負圧が生じない限り、実線で示すように、フランジ7bに着座して外気の流入を阻止するが、充填空間S0に負圧が生じると、破線に示すように、上流側(図面下向きの側)に弾性変形することで、フランジ7bから離間して、環状隙間S2を介して貫通路Rを充填空間S0に通じさせる。即ち、外周側部分14は、外気吸入弁として機能する。
【0022】
本形態によれば、容器本体1の底壁3を押し込むと、内容物を充填した充填空間S0の圧力が増大することにより、吐出弁13が開放される。即ち、内容物は、底壁3を押し込むと、吐出弁13からノズル5の貫通路Rを通して外界に圧送される。他方、外気吸入弁14は、充填空間S0に負圧が生じていないため、開放されることがない。このため、外気は、底壁3の押し込みによっては貫通路Rを通して充填空間S0に導入されることがない。
【0023】
これに対し、底壁3の押し込みを解除すると、底壁3の復帰により充填空間S0に負圧が生じることにより、外気吸入弁14が開放される。即ち、外気は、底壁3の押し込みが解除されると、貫通路Rから外気吸入弁14を通して充填空間S0に吸入される。他方、吐出弁13は、充填空間S0が加圧されていないため、初期位置(図2の実線)に復元し、開放されることがない。このため、内容物は、底壁3の押し込みの解除によっては貫通路Rを通して外界に圧送されることがない。
【0024】
従って、本形態によれば、容器を倒立させても、内容物を積極的に加圧しない限り、吐出弁13によりノズル5の貫通路Rが遮断されているため、内容物の噴出や垂れを生じることがない。このため、本形態によれば、予期せぬ内容物の噴出や垂れを生じないノズル付き押出容器を提供することができる。
【0025】
また、本形態は、吐出弁13と外気吸入弁14とが一体に構成されているため、部品点数の削減を図りつつ、簡易な構造を実現することができる。
【0026】
更に、本形態は、上述のとおり、充填空間S0の内容物を貫通路Rまで圧送する経路と、貫通路Rから導入した外気を充填空間S0に導入するまでの経路とを分けたため、吐出弁13の先端13aに空気が巻き込まれることがないから、安定した吐出が可能となる。
【0027】
加えて、本形態では、環状基部11から一体に垂下する筒体部15の下端に、周壁2と装着筒7との間で挟持される外向きのフランジ16を設け、当該フランジ16に、吸入弁14を通して送られた空気を充填空間S0に導入するための貫通孔A3を形成している。かかる構成によれば、外気の導入を図りつつ、弾性弁10を強固に固定することができる。これにより、安定した内容物の取り出しと外気の取入れが可能になる。
【0028】
図3は、本発明に従う、ノズル付き押出容器の他の形態の要部拡大側面図である。本発明に従えば、弾性弁10は、同形態のように、筒体部15及びフランジ16を省略することも可能である。なお、本形態において、図1及び2と同一の部分は同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0029】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、本発明に従えば、種々の変更を加えることができる。例えば、本形態では、ノズル5には、バージンキャップ30が設けられている。バージンキャップ30は、肩部6に固定される本体31と、この本体31に対して破断によって分離可能なオーバーキャップ32とで構成されているが、キャップはこれに限定されるものではなく、様々なタイプのキャップを採用することができる。また、ノズル5を容器本体に装着する手段も、スプライン嵌合C1とアンダーカット嵌合C2との組み合わせによるものだけでなく、凹凸や凸同士の嵌合等の様々な手段を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、底壁の押し込みによって圧送された内容物が貫通路を通して外界に排出される一方、押し込みの解除によって外気が貫通路を通して吸入されるノズル付き押出容器であれば、化粧用容器、医療用容器等の、様々な容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 容器本体
2 周壁
3 底壁
4 リング部材
5 ノズル
6 肩部
7 装着筒
8 弁座
9 誘導筒
10 弾性弁
11 環状基部
12 環状凹部
13 内周側部分(吐出弁)
13a 内周側端縁
14 外周側部分(外気吸入弁)
14a 外周側端縁
15 筒体部
16 フランジ
0 充填空間
1 内側空間
2 環状隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部分を形成する周壁と当該周壁の下端に繋がる底壁とを有して周壁と底壁によって形成された充填空間に内容物が充填される容器本体と、周壁の開口端に固定保持される装着筒を有し、底壁の押し込みによって圧送された内容物が貫通路を通して外界に排出される一方、押し込みの解除によって外気が貫通路を通して吸入されるノズルとを備えたノズル付き押出容器であって、
ノズルの装着筒の内側に、ノズルの貫通路から上流側に突出して貫通路に通じる開口部を有する弁座と、当該弁座を取り囲んで弁座に形成された開口部に充填空間からの内容物を誘導する誘導筒とを設けると共に、当該誘導筒に弾性弁を設け、
当該弾性弁は、誘導筒の下端部に差し込まれる環状の凹部が形成された環状の基部を有し、当該環状の基部の内周側端縁が当該弁座に全周に亘って着座して充填空間と誘導筒の内側との間を仕切ると共に、内容物の圧送により貫通路側に弾性変形することで弁座から離間して充填空間を誘導筒の内側に通じさせる吐出弁としてなる一方、
当該環状の基部の外周側端縁がノズルの装着筒に設けた弁座に全周に亘って着座して当該装着筒と誘導筒との間に形成された環状の隙間と充填空間との間を仕切ると共に、当該充填空間に生じた負圧により充填空間側に弾性変形することでノズルの装着筒に設けた弁座から離間して前記環状の隙間を充填空間に通じさせる外気吸入弁としてなり、
ノズルの誘導筒に、貫通路を環状の隙間に通じさせる貫通孔を形成したことを特徴とするノズル付き押出容器。
【請求項2】
請求項1において、環状の基部から一体に垂下する筒体部の下端に、周壁とノズルの装着筒との間で挟持される外向きのフランジを設け、当該フランジに、吸入弁を通して送られた空気を充填空間に導入するための貫通孔を形成したことを特徴とするノズル付き押出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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