説明

ノズル検査装置及びノズル検査方法

【課題】自動的にノズル検査を行う機能をオンオフ設定可能にした場合に適した構成を提供する
【解決手段】ノズルからの液体の吐出を検査するためのノズル検査を行う検査回路と、ノズル検査に必要な電圧を検査回路に供給するとともに、検査回路が所定タイミングでノズル検査を行う自動検査機能をオンオフ設定できるコントローラとを備える。自動検査機能のオンオフ設定に関わらず、検査回路にはノズル検査に必要な電圧が供給されている。コントローラは、自動検査機能がオンに設定されている場合には、所定タイミングになったときに、検査回路に供給された電圧を用いて検査回路にノズル検査を行わせ、自動検査機能がオフに設定されている場合には、検査回路にノズル検査を行わせる前に検査回路の異常検査を行い、検査回路に異常があれば検査回路への電圧の供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル検査装置及びノズル検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置として、帯電させたインクを検出用の電極に向けて吐出させ、この電極に生じる電気的な変化に基づいて、ノズルからの液体の吐出の検査(ノズル検査)を行う装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2007−152888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ノズルの目詰まりは液体の乾燥が原因の一つと考えられるので、所定のタイミングで装置が自動的にノズル検査を行うことが望ましい。但し、ノズル検査時に液体を消費するため、若しくは、自動的にノズル検査を行うと印刷時間が遅くなるため、自動的にノズル検査を行うことを望まないユーザも存在する。
本発明は、自動的にノズル検査を行う機能(自動ノズル検査機能)をオンオフ設定可能にするとともに、その場合に適した構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するための主たる発明は、ノズルからの液体の吐出を検査するためのノズル検査を行う検査回路と、前記ノズル検査に必要な電圧を前記検査回路に供給するとともに、前記検査回路が所定タイミングで前記ノズル検査を行う自動検査機能をオンオフ設定できるコントローラとを備え、前記自動検査機能のオンオフ設定に関わらず、前記検査回路には前記ノズル検査に必要な電圧が供給されており、前記コントローラは、前記自動検査機能がオンに設定されている場合には、前記所定タイミングになったときに、前記検査回路に供給された前記電圧を用いて前記検査回路に前記ノズル検査を行わせ、前記自動検査機能がオフに設定されている場合には、前記検査回路に前記ノズル検査を行わせる前に前記検査回路の異常検査を行い、前記検査回路に異常があれば前記検査回路への前記電圧の供給を停止することを特徴とするノズル検査装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0006】
ノズルからの液体の吐出を検査するためのノズル検査を行う検査回路と、前記ノズル検査に必要な電圧を前記検査回路に供給するとともに、前記検査回路が所定タイミングで前記ノズル検査を行う自動検査機能をオンオフ設定できるコントローラとを備え、前記自動検査機能のオンオフ設定に関わらず、前記検査回路には前記ノズル検査に必要な電圧が供給されており、前記コントローラは、前記自動検査機能がオンに設定されている場合には、前記所定タイミングになったときに、前記検査回路に供給された前記電圧を用いて前記検査回路に前記ノズル検査を行わせ、前記自動検査機能がオフに設定されている場合には、前記検査回路に前記ノズル検査を行わせる前に前記検査回路の異常検査を行い、前記検査回路に異常があれば前記検査回路への前記電圧の供給を停止することを特徴とするノズル検査装置が明らかとなる。このようなノズル検査装置によれば、自動検査機能がオフに設定された場合であっても、検査回路の異常検査が行われるため、装置の故障を未然に防ぐことができる。
【0007】
前記検査回路は、前記ノズルから吐出される前記液体を第1電位にする第1電極と、前記ノズルに対向する位置に設けられ、前記第1電位とは異なる第2電位の第2電極とを備え、前記ノズルから前記液体が吐出されるときの前記第1電極及び前記第2電極のうちの少なくとも一方の電極の電位変化を検出することによって、前記ノズル検査を行うことが望ましい。これにより、媒体にテストパターンを印刷させずに、ノズル検査を行うことができる。
【0008】
前記異常検査の際に、前記コントローラは、前記第1電極及び前記第2電極のうちの高電位の方の電極の電位を検出し、この電位が所定電位よりも低ければ、前記検査回路に異常があると判定することが望ましい。これにより、検査回路に短絡が生じていた場合に、異常を検出できる。
【0009】
前記異常検査の際に、前記コントローラは、前記ノズル検査の対象となるノズル数よりも少ない所定数のノズルから順に前記液体を吐出させ、そのときの前記電位変化に基づいて前記検査回路の異常を検査することが望ましい。これにより、短時間で異常検査を行うことができる。
【0010】
あるノズルからの前記液体の吐出を検査した後、全てのノズルからの液体の吐出を行わない期間が設けられ、その期間の前記電位変化が所定の閾値を超えれば、前記あるノズルからの前記液体の吐出を再検査することが望ましい。これにより、不良ノズルの誤検出を防ぐことができる。
【0011】
前記コントローラは、前記検査回路に所定のパラメータを初期設定し、前記初期設定が正常に行われたことを示す信号が前記検査回路から無ければ、前記検査回路に異常があると判定することが望ましい。これにより、初期設定時と異常検査を兼ねることができる。
【0012】
また、ノズルからの液体の吐出を検査するための検査回路を用いたノズル検査方法であって、前記検査回路が前記ノズルからの前記液体の吐出を所定タイミングで検査する自動検査機能をオンオフ設定すること、前記自動検査機能のオンオフ設定に関わらず、前記検査回路に必要な電圧を前記検査回路に供給すること、前記自動検査機能がオンに設定されている場合には、前記所定タイミングになったときに、前記検査回路に供給された前記電圧を用いて前記検査回路が前記ノズルからの前記液体の吐出を検査すること、及び前記自動検査機能がオフに設定されている場合には、前記ノズルからの前記液体の吐出を前記検査回路が検査する前に前記検査回路の異常検査を行い、前記検査回路に異常があれば前記検査回路への前記電圧の供給を停止することを有するノズル検査方法も明らかになる。このようなノズル検査方法によれば、自動検査機能がオフに設定された場合であっても、検査回路の異常検査が行われるため、装置の故障を未然に防ぐことができる。
【0013】
===第1実施形態===
<構成の概要>
図1は、印刷システムの構成を占めすブロック図である。この印刷システムは、プリンタ1と、コンピュータPCとを備えている。プリンタ1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。後述する通り、本実施形態のプリンタ1には、ノズル検査装置が組み込まれている。コンピュータPCは、プリンタ1と通信可能に接続されており、プリンタ1の動作を制御する印刷制御装置である。
【0014】
コンピュータPCには、プリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、印刷対象となる原稿データを印刷データに変換する機能と、印刷データをプリンタ1に送信することによって、印刷データに従ってプリンタ1に印刷を実行させる機能とを有するプログラムである。また、プリンタドライバは、プリンタ1の各種設定を行う機能を有するプログラムでもある。
【0015】
図2は、ノズル検査の設定画面の説明図である。プリンタドライバは、コンピュータPCに、このような設定画面をディスプレイに表示させることができる。ユーザは、この設定画面上でノズル検査の各種設定を行うことができる。この設定画面上では、「自動ノズル検査機能」のON/OFFを設定することができる。自動ノズル検査機能がONに設定されると、予め定められた所定タイミングでプリンタ1がノズル検査を自動的に行うように、プリンタドライバはプリンタ1を設定する。但し、ノズル検査の際にインクが吐出されるため(後述)、若しくは、印刷時にノズル検査が行われると印刷時間が遅くなるため、ユーザは、この自動ノズル検査機能をOFFに設定できる。この場合、プリンタドライバは、自動ノズル検査機能を行わないように、プリンタ1を設定する。また、この設定画面上で「今すぐノズル検査を行う」と表示されたボタンが押されると、プリンタドライバは、プリンタ1に直ちにノズル検査を実行させる。
【0016】
図1に戻り、プリンタ1の構成について説明する。プリンタ1は、操作パネル11と、搬送機構12と、キャリッジ機構13と、駆動信号生成回路14と、ヘッドユニット15と、検出器群16と、クリーニング機構17と、コントローラ18とを有する。
【0017】
操作パネル11は、不図示の表示部とボタンとを有し、プリンタ1の操作を行うためのものである。ユーザは、プリンタドライバ上でノズル検査の設定を行う代わりに、この操作パネル11上で前述のノズル検査の設定を行うこともできる。
【0018】
搬送機構12は、用紙を搬送方向に搬送するための機構である。搬送機構12は、コントローラ18からの指令に従って、用紙の搬送を制御する。
【0019】
キャリッジ機構13は、ヘッドHDを移動方向(搬送方向と交差する方向)に移動させるための機構であり、ヘッドHDが設けられたキャリッジを有する。キャリッジ機構13は、コントローラ18からの指令に従って、キャリッジの移動を制御する。
【0020】
駆動信号生成回路14は、駆動信号COMを生成するための回路である。駆動信号COMとは、ヘッドHDからインクを吐出するためにピエゾ素子に印加するための信号である。駆動信号生成回路14は、コントローラ18からの指令に従って駆動信号COMを生成し、駆動信号COMをヘッドユニット15へ出力する。
【0021】
ヘッドユニット15は、ヘッドHDと、ヘッドHDを制御するためのヘッド制御部HCとを有する。ヘッドHDにはノズルプレート21が設けられており、このノズルプレートには、インク色ごとにノズル列が設けられている。
【0022】
図3は、ノズルプレートの説明図である。図に示すように、ノズルプレート21には、6色分(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ)のノズル列が設けられている。各ノズル列には180個のノズルが搬送方向に1/180インチ間隔で並んでいる。各ノズル列の180個のそれぞれのノズルのことを、搬送方向下流側から順番にノズル♯1〜ノズル♯180と呼ぶことにする。
【0023】
ヘッド制御部HCは、コントローラ18からの指令に従って、ヘッドHDのピエゾ素子への駆動信号COMの印加を制御することによって、各ノズルからのインクの吐出を制御する。
【0024】
検出器群16には、各種のセンサが含まれている。例えば、搬送機構12による用紙の搬送量を検出するためのロータリーエンコーダや、キャリッジ機構13のキャリッジの移動量(ヘッドHDの移動量)を検出するためのリニアエンコーダなどが検出器群に含まれる。検出器群16は、検出結果をコントローラ18へ出力する。
【0025】
本実施形態の検出器群16には、ノズル検査回路16aが含まれている。ノズル検査回路16aは、正常にインクを吐出できないノズル(不良ノズル)を検出するためのノズル検査(ドット抜け検査とも呼ばれる)を行う回路である。不良ノズルには、ノズルの目詰まりのためにインクを吐出できないノズルや、正常な量のインクを吐出できないノズルなどが含まれる。ノズル検査回路16aについては、後で詳述する。
【0026】
クリーニング機構17は、ヘッドのクリーニングを行うためのものである。コントローラ18は、ノズル検査回路16aの検出結果から不良ノズルを検出した場合に、クリーニング機構17にヘッドHDのクリーニングを行わせる。クリーニング方法としては、ワイピングクリーニング、ポンピングクリーニング等がある。ワイピングクリーニングは、ワイパーによってヘッドHDのノズル面をワイピングする処理である。ポンピングクリーニングは、ヘッドHDのノズル面側の空間を負圧にし、ノズルからインクを吸引する処理である。
【0027】
図4Aは、ポンピングクリーニングに用いられるキャップの説明図である。図4Bは、キャップを上から見た図である。キャップ17aは、ヘッドHDとの対向面が開放された箱状体である。キャリッジ13aがホームポジションに到達する直前に、ヘッドHDとキャップ17aとが対向する。その位置からキャリッジ13aが更にホームポジション側へ移動すると、キャップ17aが上昇する。そして、キャリッジ13aがホームポジションに位置すると、キャップ17aの側壁上部(キャップ17aの開口縁)がヘッドHDのノズルプレート21と密着して、キャップ17aがヘッドHDをキャップする。ポンピングクリーニングの際には、キャップ17aがヘッドHDをキャップした状態で、キャップ17aとノズルプレート21との空間をポンプで負圧にし、ノズルからインクを吸引する。
【0028】
キャップ17aの内部には吸収体17bが設けられている。吸収体17bは、吸引されたインクを吸収する機能を有する。また、吸収体17bは保湿されており、キャップ17aがヘッドHDをキャップしているときに(キャリッジ13aがホームポジションにあるときに)、ノズルプレート21の乾燥を防ぎ、不良ノズルの発生を防止する。
【0029】
なお、本実施形態では、キャップ17aの内部の吸収体17bの上部に、金属ワイヤで蜘蛛の巣状に形成された検出用電極22が設けられている。検出用電極22については、後で詳述する。
【0030】
コントローラ18は、装置全体の制御を行うためのものである。コントローラ18は、CPU18aとメモリ18bとを有する。メモリ18bには制御用プログラムが格納されており、CPU18aは、この制御用プログラムに従って、装置内の各構成要素の制御を実行する。印刷時には、コントローラは、キャリッジを移動させて移動中のヘッドから用紙へインクを吐出する吐出動作と、搬送機構により用紙を搬送する搬送動作とを交互に繰り返させる。
【0031】
<ノズル検査回路16aの構成>
図5は、ノズル検査回路の説明図である。ノズル検査回路は、検出用電極22と、高圧電源ユニット23と、第1制限抵抗24と、第2制限抵抗25と、検出用コンデンサ26と、増幅器27と、検出制御部28と、平滑コンデンサ29と、電圧検出部30とを有する。なお、ヘッドHDのノズルプレート21は、グランドに接続されてグランド電位になっており、ノズル検査回路の一部として機能する。ここでは、ノズルプレート21は、ノズルから吐出されるインクをグランド電位にする第1電極としての機能を果たす。
【0032】
検出用電極22は、金属ワイヤで蜘蛛の巣状に形成されている。この検出用電極22は、キャップ17aの内部の吸収体17bの上部に設けられている。吸収体17bに吸収されている保湿剤やインクは導電性を有する液体(例えば水)なので、検出用電極22を高電位にすると、吸収体17bの表面の同じ電位になる。この結果、検出用電極22を高電位にすると、蜘蛛の巣状の金属ワイヤの領域だけでなく、広い範囲で高電位になる。検出用電極22は、ノズルと対向する位置に設けられた第2電極としての機能を果たす。
高圧電源ユニット23は、検出用電極22を所定電位にする電源である。本実施形態の高圧電源ユニットは、600V〜1000V程度の直流電源によって構成される。
【0033】
第1制限抵抗24及び第2制限抵抗25は、高圧電源ユニット23と検出用電極22との間に配置され、高圧電源ユニット23と検出用電極22との間に流れる電流を制御する。本実施形態の第1制限抵抗24及び第2制限抵抗25は、ともに1.6MΩの抵抗値である。
検出用コンデンサ26は、検出用電極22の電位変化成分を抽出するための素子である。検出用コンデンサ26の一端は検出用電極22に接続され、他端は増幅器27に接続されている。検出用コンデンサ26により、検出用電極22のバイアス成分(直流成分)を除去している。本実施形態の検出用コンデンサ26は、4700pFの容量である。
増幅器27は、検出用コンデンサ26の他端側の信号を増幅する。本実施形態の増幅器27は、4000倍の増幅率である。これにより、増幅器27から3V程度で電位が変化する検出信号を取得できる。
【0034】
検出制御部28は、ノズル検査回路を制御する。例えば、検出制御部28は、高圧電源ユニット23の動作を制御する。また、検出制御部28は、増幅器27からの検出信号に基づいて、検査対象のノズルが不良ノズルか否かを判定する。不良ノズルの判定方法については、後述する。
平滑コンデンサ29は、電位の急激な変化を抑制する。平滑コンデンサ29の一端は第1制限抵抗24及び第2制限抵抗25に接続され、他端はグランドに接続されている。本実施形態の平滑コンデンサ29は、0.1μFの容量である。
【0035】
電圧検出部30は、検出用電極22が所定の電圧になっているか否かを検出する。電圧検出部30は、分圧回路を構成する第1抵抗30a及び第2抵抗30bを有する。第1抵抗30aと第2抵抗30bは直列に接続されており、第1抵抗30aの一端は検出用電極22と同じ電位になっており、第2抵抗30bはグランドに接続されている。第1抵抗30aと第2抵抗30bとの間の電位(電圧検出信号)をコントローラ18が検出することによって、検出用電極22が所定の電圧になっているか否かを検出できる。本実施形態の第1抵抗30aは6MΩの抵抗値であり、第2抵抗30bは33kΩの抵抗値である。
【0036】
<ノズル検査回路の動作>
ノズルプレート21に形成されたノズルからインクが吐出されると、検出用電極22の電位が変化し、この電位変化を検出用コンデンサ26及び増幅器27が検出し、検出信号が検出制御部28に出力される。不良ノズルからインクを吐出させようとしても、インクが吐出されないため(若しくは正常な量のインクが吐出されないため)、検出用電極22の電位は変化せず、検出信号に電圧変化は現れないことになる。
【0037】
この原理は正確には解明されていないが、次にように考えられている。一般的に、コンデンサを構成する2個の導体の間隔dが変化すると、コンデンサに蓄えられる電荷Qが変化することが知られている。グランド電位のノズルプレート21から高電位の検出用電極22に向かってインクが吐出されると、グランド電位のインク滴と検出用電極22との間隔dが変化し、コンデンサの2個の導体の間隔dが変化したときのように、検出用電極22に蓄えられる電荷Qが変化する。この結果、検出用電極22に電荷が移動し、このときに流れる電流を検出用コンデンサ26及び増幅器27が検出し、検出信号が検出制御部28に出力されると考えられる。
【0038】
本実施形態では、このような現象を利用することによって、検査対象のノズルからインクを吐出させる制御をした時に(検査対象のノズルのピエゾ素子に駆動信号COMを印加した時に)、検出信号に所定の電圧変化が発生するか否かを検出制御部28が検出し、検査対象のノズルが不良ノズルか否かを判定する。
【0039】
<ノズル検査時の動作>
図6Aは、駆動信号COMの説明図である。コントローラ18は、駆動信号生成回路14に、図に示すような駆動信号COMを1kHzの周期で繰り返し出力させる。駆動信号生成回路14は、このような駆動信号COMをヘッドユニット15に出力する。コントローラ18は、ヘッド制御部HCを制御し、検査対象となるノズルのピエゾ素子に駆動信号COMを印加させる。
図中の繰り返し期間は、ある1個のノズルの検査に要する期間である。この期間の前半部分の駆動信号COMには、50kHz相当の間隔で20〜30個のインク吐出用のパルスが含まれている。また、後半部分の駆動信号COMは、一定電位(中間電位)になっている。
このような駆動信号COMがピエゾ素子に印加されると、そのピエゾ素子に対応するノズルから50kHz相当の間隔で20〜30個のインク滴が吐出される。
【0040】
図6Bは、インク滴が吐出されたときの検出信号の説明図である。図6Aの繰り返し期間の間にノズルから50kHz相当の間隔で20〜30個のインク滴が吐出されると、図6Bのような検出信号が増幅器27から出力される。
検出制御部28は、ある繰り返し期間中に増幅器27から出力された検出信号の振幅Va(検出信号の最高電位VHと最低電位VLとの差)を検出し、検出された振幅と予め定められた閾値Vth(例えば3V)とを比較し、検出された振幅Vaが閾値Vthよりも大きければ、検査対象のノズルが不良ノズルではないと判定する(検査対象のノズルから正常にインクが吐出されていると判定する)。逆に、検出された振幅Vaが閾値Vthよりも小さければ、検査対象のノズルが不良ノズルであると判定する(検査対象のノズルからインクが吐出されていないと判定する)。
【0041】
図7は、検出信号の説明図である。コントローラ18は、繰り返し期間ごとに、駆動信号COMを印加するピエゾ素子を切り替えて、検査対象となるノズルを切り替える。図中の上図に示すように、ノズル♯1〜ノズル♯15の15個のノズルから順にインクが吐出されると、各ノズルに対応した検出信号が繰り返し期間ごとに出力される。検出制御部28は、繰り返し期間ごとに検出信号の振幅Vaと閾値Vth(図中の上図の横点線に相当)とを比較することによって、各ノズルの検査を行う。このような15個単位のノズルの検査が12回行われることによって、1ノズル列分の検査が行われる(図中の中央)。また、1ノズル列分の検査が6回行われることによって、6色分のノズル列の検査が行われる(図中の下図)。
【0042】
図8は、検出信号にノイズがあるときの説明図である。インク滴が吐出されたときの検出用電極22の電位変化は微小であり、この微小な電位変化を検出するため、本実施形態では増幅器27で4000倍に増幅している。増幅器27の増幅率が大きいため、増幅器27から出力される検出信号のノイズも大きくなるおそれがある。この結果、ノイズのために検出信号の振幅が閾値を超えてしまい、不良ノズルが存在するにも関わらず、不良ノズルを検出できないおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、15個単位のノズルの検査の間に、どのノズルからもインクを吐出させない期間が設けられている。例えば、ノズル♯15の検査の後、ノズル♯16の検査の前に、どのノズルからもインクを吐出させない期間(図中の上の「非吐出ダミー」)が設けられている。言い換えると、コントローラ18は、ノズル♯15に対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加した後、ノズル♯16に対応するピエゾ素子に駆動信号COMを印加する前に、いずれのピエゾ素子にも駆動信号COMを印加しないように、ヘッド制御部HCを制御している。なお、いずれのノズルからもインクを吐出させない期間(「非吐出ダミー」の期間)は、前述の繰り返し期間と同じである。
【0044】
検出制御部28は、繰り返し期間ごとに、各期間中の検出信号の振幅Vaと閾値Vthとを比較し、検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えていれば「1」をレジスタに記憶し、超えていなければ「0」をレジスタに記憶する。非吐出ダミーの期間も同様に、その期間中の検出信号の振幅Vaと閾値Vthとを比較し、比較結果をレジスタに記憶する。レジスタに16個の比較結果(15個分のノズルの比較結果と、非吐出ダミー期間の比較結果)が記憶されたタイミングで、コントローラ18は、検出制御部28のレジスタの16ビットデータを読み出す。
【0045】
16ビットデータのうち、15個分のノズルの比較結果が「1」であり、且つ、非吐出ダミーに相当するデータが「0」であれば、コントローラ18は、15個のノズルから正常にインク滴が吐出されていると判定する。例えば、16ビットデータが「1111111111111110」であれば、コントローラ18は、15個のノズルから正常にインク滴が吐出されていると判定する。
【0046】
一方、16ビットデータのうち、非吐出ダミーに相当するデータが「1」であれば、検出信号に含まれているノイズが大きいと考えられるため、直前の15個分のノズルの比較結果に誤りがあるおそれがある(不良ノズルの誤検出があるおそれがある)。このため、コントローラ18は、16ビットデータのうち、非吐出ダミーに相当するデータが「1」であれば、直前の15個分のノズルを再検査する。例えば、ノズル♯1〜ノズル♯15の検査の際の16ビットデータが「1111111111111111」であれば、コントローラ18は、ノズル♯1〜ノズル♯15を再検査する。なお、所定回数(例えば6回)の再検査を行っても、非吐出ダミーに相当するデータが「1」であり続ければ、コントローラ18は、ノズル検査の動作に異常があると判定し、その旨を報知する。
【0047】
なお、16ビットデータのうち、15個分のノズルのいずれかの比較結果が「0」であり、且つ、非吐出ダミーに相当するデータが「0」であれば、コントローラ18は、比較結果が「0」となったノズルを特定し、そのノズルが不良ノズルだと判定する。例えば、ノズル♯1〜ノズル♯15の検査の際の16ビットデータが「1101111111111110」であれば、コントローラ18は、ノズル♯3が不良ノズルだと判定する。
【0048】
<ノズル検査の開始タイミング>
前述の図2の設定画面上で「自動ノズル検査機能」がONに設定された場合、コントローラ18は、所定のタイミングでノズル検査を行う。例えば、タイマによって時間を計測し、前回のノズル検査から所定時間経過したときにノズル検査をいっても良い。また、プリンタ1が複数の用紙に印刷する際に、1枚印刷するたびにノズル検査をいっても良い。若しくは、プリンタ1が印刷を行う直前に、ノズル検査を行っても良い。
設定画面上で「自動ノズル検査機能」がOFFに設定された場合、コントローラ18は、自動ノズル検査を行うべきタイミングになっても、ノズル検査を行わない。これにより、インクの消費を抑えたり、印刷速度を速くしたりすることができる。
但し、「自動ノズル検査機能」がOFFに設定された場合であっても、設定画面上で「今すぐノズル検査を行う」と表示されたボタンが押されると、コントローラ18は、ノズル検査を直ちに行う。これにより、ユーザの希望するタイミングで、ノズル検査を行うことができる。
【0049】
<サブ基板>
図9は、サブ基板とコントローラとの関係の説明図である。サブ基板41には、ノズル検査回路16a(図5)のうちの検出用電極22以外の構成要素が設けられている。このサブ基板は、コントローラ18を搭載するメイン基板とは別に設けられている。
【0050】
サブ基板41とコントローラ18(メイン基板)との間では、各種の信号が入出力されている。
例えば、コントローラ18は、サブ基板41の高圧電源ユニット23に、42Vの供給電圧を出力している。高圧電源ユニット23は、この供給電圧(42V)を用いて、600V〜1000V程度の電圧を生成する。
【0051】
また、コントローラ18は、サブ基板41の検出制御部28に、3.3Vの供給電圧を出力している。この供給電圧(3.3V)は、検出制御部28を駆動するための直流電源となる。
【0052】
また、コントローラ18とサブ基板41の検出制御部28との間では、各種のデータを通信するためのデータ信号が入出力されている。例えば、コントローラ18は、検出制御部28を初期設定するためのパラメータを、データ信号として検出制御部28へ出力する。このときのパラメータとしては、例えば、前述の閾値Vthや、繰り返し期間の長さや、連続検出するノズル数(前述の場合、15)などが含まれる。各種パラメータが検出制御部28に設定されれば、検出制御部28は、設定完了報告をデータ信号としてコントローラ18へ出力する。また、検出制御部28は、前述の16ビットデータの比較結果などを、データ信号としてコントローラ18へ出力する。
【0053】
また、サブ基板41の電圧検出部30は、第1抵抗30aと第2抵抗30bとの間の電位を、電圧検出信号としてコントローラ18に出力する。コントローラ18は、この電圧検出信号が所定電位(例えば3.3V)か否かを検出することによって、検出用電極22が所定の電圧になっているか否かを検出する。
【0054】
<短絡検査と全体処理フロー>
検出用電極22の電位変化は微小であり、この微小な電位変化を検出するため、サブ基板41は、できる限り検出用電極22に近づけて設けられる。但し、検出用電極22に向かってヘッドからインク滴が吐出されるため、サブ基板41にはインクが付着しやすい。サブ基板41には、ノズル検査回路16a(図5)のうちの検出用電極22以外の構成要素が設けられており、サブ基板41にインクが付着すると、サブ基板に設けられた配線の間で短絡が生じるおそれがある。
【0055】
また、印刷時にノズルプレート21が紙と対向したときに、ノズルプレート21に紙粉が付着することがある。また、ノズルプレート21にインクの雫(しずく)が付着することもある。そして、ノズルプレート21に紙粉やインク雫が付着した状態でノズル検査を行うときに、紙粉やインクによってノズルプレート21と検出用電極22との間で短絡が生じるおそれもある。
【0056】
ところで、図2の設定画面上で「自動ノズル検査機能」をOFFに設定した場合であっても、この設定画面上で「今すぐノズル検査を行う」と表示されたボタンが押されると、ノズル検査を直ちに開始する必要がある。このため、通常の状態では、常にコントローラ18からサブ基板41へ供給電圧(42V、3.3V)が供給され続けている(もし仮に、サブ基板41への供給電圧の供給を停止した状態からノズル検査を行うと、ノズル検査の開始までに時間がかかってしまうため)。
しかし、サブ基板で短絡が生じている状態で、コントローラ18からサブ基板41へ供給電圧(42V、3.3V)を供給し続けると、装置の故障や発熱を招くおそれがある。例えば、ノズルプレート21と検出用電極22との間で短絡が生じると、高圧電源ユニット23から想定以上の電流が流れてしまい、高圧電源ユニット23が故障するおそれがある。
そこで、自動ノズル検査機能がOFFに設定された場合であっても、サブ基板41の短絡検査を行う。
【0057】
図10は、本実施形態の処理のフロー図である。プリンタ1のメモリ18bには、この処理をプリンタ1に実行させるためのプログラムが記憶されている。
コントローラ18は、自動ノズル検査を行うべきタイミングになれば(例えば、前回のノズル検査から所定時間経過したとき)、図中の処理を開始する。なお、この処理を開始する前から、コントローラ18からサブ基板41へ供給電圧(42V、3.3V)が供給され続けている。
【0058】
まず、コントローラ18は、サブ基板41の短絡検査を行う(S101)。本実施形態では、2種類の方法でサブ基板41の短絡検査を行う。
第1の方法では、コントローラ18は、電圧検出部30からの電圧検出信号を検出し、この電圧検出信号が所定電位よりも低ければ、短絡が生じていると判定する。短絡が生じていた場合、検出用電極22の電位が低下しているため、第1抵抗30aと第2抵抗30bとの間の電位が低下しているからである。
【0059】
第2の方法では、コントローラ18は、検出制御部28からの設定完了報告が無ければ、短絡が生じていると判定する。既に説明した通り、設定完了報告とは、コントローラ18が検出制御部28を初期設定するために各種パラメータを検出制御部28へ出力し、各種パラメータが正常に検出制御部28に設定されたときに、検出制御部28からコントローラ18へデータ信号として出力されるものである(図9の「データ信号」参照)。サブ基板41がインクで濡れてしまい検出制御部28が機能しなくなると、コントローラ18が各種パラメータを検出制御部28に出力しても、検出制御部28の初期設定が行われず、この結果、コントローラ18は検出制御部28から設定完了報告を受信できなくなる。言い換えると、コントローラ18が検出制御部28から設定完了報告を受信しない場合、サブ基板41がインクで濡れており、短絡が生じている可能性がある。第2の方法は、このことを利用したものである。
なお、第1の方法と第2の方法は、いずれか一方を行うだけでもよいし、両方いって両方の結果から短絡の有無を判断しても良い。
【0060】
短絡がある場合(S102でYES)、コントローラ18は、装置を緊急停止させる(S103)。これにより、サブ基板41への供給電圧(42V、3.3V)の供給が停止する。
【0061】
短絡がない場合(S102でNO)、コントローラ18は、自動ノズル検査機能がONに設定されているか否かを判定する。自動ノズル検査機能がOFFに設定されていれば(S104でNO)、処理を終了する(ノズル検査を行わずに、プリンタ1は印刷動作等の次の動作を行う)。自動ノズル検査機能がONに設定されていれば(S104でYES)、コントローラ18は、ノズル検査を行う(S105)。これにより、予め定められた所定のタイミングで、ノズル検査が行われる。
【0062】
ノズル検査(S105)では、既に説明したように、非吐出ダミーに相当するデータが「1」であれば、コントローラ18は、直前の15個のノズルを再検査させる。所定回数(例えば6回)の再検査を行っても、非吐出ダミーに相当するデータが「1」であり続ければ、コントローラ18は、ノズル検査動作に異常があると判定し(S106でYES)、その旨を報知する(S107)。なお、S106でYESと判定されても、ノイズの原因がなくなればプリンタ1は正常に動作すると考えられるので、S103のように装置は停止させない。
【0063】
ノズル検査が正常に行われれば(S106でNO)、コントローラ16は、検出結果から不良ノズルの有無を判定する(S108)。不良ノズルが無ければ、コントローラ18は、処理を終了する(プリンタ1は印刷動作等の次の動作を行う)。一方、不良ノズルがあれば、クリーニング処理(S109)を行った後で、処理を終了する(プリンタ1は印刷動作等の次の動作を行う)。なお、クリーニング処理(S109)を行った後、ノズル検査(S105)を再度行うようにしても良い。
【0064】
本実施形態によれば、自動ノズル検査機能がOFFに設定された場合にも、図10のフローが行われる。そして、サブ基板41で短絡が生じていれば、装置が緊急停止され、コントローラ18からサブ基板41への供給電圧(42V、3.3V)の供給が停止する。これにより、本実施形態では、装置の故障を防ぐことができる。なお、もし自動ノズル検査機能がOFFに設定されるのに伴ってサブ基板41の短絡検査が行われなくなると、サブ基板41で短絡があってもコントローラ18からサブ基板41へ供給電圧(42V、3.3V)が供給され続け、装置の故障を招くことになる。
【0065】
===第2実施形態===
前述の第1実施形態では、サブ基板41に電圧検出部30が設けられている。そして、第1実施形態では、コントローラ18は、電圧検出部30からの電圧検出信号に基づいて短絡を検出している。
これに対し、第2実施形態では、電圧検出部30を省略した構成でノズル検査回路16aを構成している。そして、増幅器27から出力される検出信号を用いて、検出用電極22の電位の低下を検出し、サブ基板41で短絡が生じていることを検出する。
【0066】
図11は、第2実施形態のノズル検査回路の説明図である。図5の構成と比較すると、電圧検出部30が省略されている。つまり、第2実施形態では、第1実施形態と比べて、ノズル検査回路16aの構成を簡略化できる。
図12は、第2実施形態の短絡検査のフロー図である。プリンタ1のメモリ18bには、この処理をプリンタ1に実行させるためのプログラムが記憶されている。
【0067】
コントローラ18は、自動ノズル検査を行うべきタイミングになれば(例えば、前回のノズル検査から所定時間経過したとき)、前述の図10の処理を開始する。そして、S101のサブ基板41の短絡検査として、図12の処理を行う。
【0068】
まず、コントローラ18は、検出制御部28に閾値Vthとして3Vを設定し、ノズル♯1〜ノズル♯15に対してノズル検査を行う(S201)。このときのノズル検査の動作は、前述のS105のノズル検査の動作とほぼ同様である。但し、検査対象となるノズル数が15個であるため、S105のノズル検査時の検査対象ノズル数(180個×6色)よりもはるかに少ない。このため、S201のノズル検査は、簡易的なものであり、インクの消費は少なく、短時間で終了する。このため、ユーザが自動ノズル検査機能をOFFに設定していても(ユーザがS201のノズル検査を望まない状況下でも)、この動作は許容されると想定される。
【0069】
次に、コントローラ18は、ノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルか否かを判断する(S202)。少なくとも1個のノズルが正常にインクを吐出している場合(S202でNO)、コントローラ18は、短絡は生じていないと判断して、短絡検査を終了する。
【0070】
S202においてノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルだと判断された場合(S202でYES)、コントローラ18は、検出制御部28の閾値Vthを3Vから2.5Vに設定変更し、ノズル♯1〜ノズル♯15に対してノズル検査を行う(S203)。なお、このときのノズル検査の動作も、簡易的なものであり、インクの消費は少なく、短時間で終了する。このため、ユーザが自動ノズル検査機能をOFFに設定していても(ユーザがS201のノズル検査を望まない状況下でも)、この動作は許容されると想定される。
【0071】
次に、コントローラ18は、ノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルか否かを判断する(S204)。S202のときに全てのノズルが不良ノズルだと判断されたにも関わらず、S204において少なくとも1個のノズルが正常にインクを吐出していると判断された場合、増幅器27から出力された検出信号の振幅Vaが低下していたためにS202でYESと判断されたと考えられる。つまり、この場合、検出用電極22の電位が低下していると考えられる。そこで、S204において少なくとも1個のノズルが正常にインクを吐出していると判断された場合(S204でNO)、コントローラ18は、短絡が生じていると判断して(S205)、短絡検査を終了する。
【0072】
一方、S204においてノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルだと判断された場合(S204でYES)、本当にノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルの状態か、若しくは、増幅器27からの検出信号の振幅Vaが2.5Vにも達しないほど検出用電極22の電位が低下している状態と考えられる。前者の状態では短絡は生じていないが、後者の状態では短絡が生じていると考えられる。そこで、次のようにして、いずれの状態かを判別している。
【0073】
S204でYESの場合、コントローラ18は、クリーニング処理を行う(S206)。クリーニング処理の直後は、15個の全てのノズルが不良ノズルになっている可能性はきわめて低くなる。そこで、コントローラ18は、クリーニング処理の直後に、ノズル♯1〜ノズル♯15のノズル検査を再度行う(S207)。なお、このときのノズル検査も、簡易的なものであり、短時間で終了する。そして、コントローラ18は、ノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルか否かを判断する(S208)。
【0074】
S208において少なくとも1個のノズルが正常にインクを吐出していると判断された場合、S203及びS204の時点では本当にノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルの状態だったと考えられる。このため、S208において少なくとも1個のノズルがインクを吐出していると判断された場合(S208でNO)、コントローラ18は、短絡は生じていないと判断して、短絡検査を終了する。
【0075】
一方、S208においてノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルだと判断された場合、増幅器27からの検出信号の振幅が2.5Vにも達しないほど検出用電極22の電位が低下している状態と考えられる。このため、S208においてノズル♯1〜ノズル♯15の全てのノズルが不良ノズルだと判断された場合(S208でYES)、コントローラ18は、短絡が生じていると判断して(S205)、短絡検査を終了する。
【0076】
短絡検査が終了すると、コントローラ18は、次に図10のS102の判断を行う。その際に、S205で短絡が生じていると判断されていれば、コントローラ18は、S102でYESと判断し、装置を緊急停止させる(S103)。これにより、サブ基板41への供給電圧(42V、3.3V)の供給が停止する。
【0077】
以上説明した本実施形態によれば、増幅器27からの検出信号に基づいて検出用電極22の電位の低下を検出することによって、サブ基板41で短絡が生じていることを検出している。これにより、電圧検出部30を省略した構成にすることができる。
【0078】
===その他の実施の形態===
一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0079】
<プリンタについて>
前述の実施形態では、ノズル検査装置の一例としてプリンタが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0080】
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタの実施形態だったので、染料インク又は顔料インクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、成膜材料、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから吐出しても良い。
【0081】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0082】
<ノズル検査回路について1>
前述の実施形態のノズル検査回路16aでは、ノズルプレート21(第1電極に相当)をグランド電位にし、検出用電極22(第2電極に相当)を高電位にしている。しかし、これに限られるものではない。また、前述の実施形態のノズル検査回路16aでは、高電位となる電極の電位変化を検出しているが、これに限られるものではない。
【0083】
図13A〜図13Cは、ノズル検査回路の他の構成の説明図である。
図13Aでは、前述の実施形態と同様に、高電位となる電極の電位変化を検出している。但し、前述の実施形態とは異なり、ノズルプレートが高電位になっており、キャップ側の電極がグランド電位になっている。
図13Bでは、前述の実施形態と同様に、ノズルプレートをグランド電位にし、キャップ側の電極を高電位にしている。但し、前述の実施形態とは異なり、ノズルプレートの電位変化を検出している。
図13Cは、前述の実施形態と同様に、検出用電極22の電位変化を検出している。但し、前述の実施形態とは異なり、ノズルプレートが高電位になっており、キャップ側の電極がグランド電位になっている。
このようなノズル検査回路の構成であっても、前述の実施形態とほぼ同様なノズル検査を行うことが可能である。
【0084】
<ノズルプレートについて>
前述の実施形態では、ノズルプレートが電極となるように構成していた。但し、ノズルから吐出されるインクが所定電位(図5の構成の場合であればグランド電位)になる構成であれば良い。例えば、インク流路等に電極を設け、この電極を用いてインクを所定電位にさせても良い。
【0085】
<短絡検査について>
前述の第1実施形態では、電圧検出部30からの電圧検出信号に基づいて短絡検査が行われる。また、前述の第2実施形態では、増幅器27からの検出信号に基づいて短絡検査が行われる。いずれの実施形態とも、間接的に検出用電極22の電位の低下を検出することによって、短絡検査が行われる。但し、他の方法で短絡検査を行っても良い。
例えば、検出用電極22に所定以上の電流が流れたときにヒューズが切れるようにノズル検査回路16aを構成し、コントローラ18が、ヒューズが切れたか否かを検知し、ヒューズが切れていれば短絡が生じていると判断するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】印刷システムの構成を占めすブロック図である。
【図2】ノズル検査の設定画面の説明図である。
【図3】ノズルプレートの説明図である。
【図4】図4Aは、ポンピングクリーニングに用いられるキャップの説明図である。図4Bは、キャップを上から見た図である。
【図5】ノズル検査回路の説明図である。
【図6】図6Aは、駆動信号COMの説明図である。図6Bは、インク滴が吐出されたときの検出信号の説明図である。
【図7】検出信号の説明図である。
【図8】検出信号にノイズがあるときの説明図である。
【図9】サブ基板とコントローラとの関係の説明図である。
【図10】本実施形態の処理のフロー図である。
【図11】第2実施形態のノズル検査回路の説明図である。
【図12】第2実施形態の短絡検査のフロー図である。
【図13】図13A〜図13Cは、ノズル検査回路の他の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンタ、11 操作パネル、12 搬送機構、
13 キャリッジ機構、キャリッジ13a、
14 駆動信号生成回路、15 ヘッドユニット、
16 検出器群、16a ノズル検査回路、
17 クリーニング機構、17a キャップ、17b 吸収体、
18 コントローラ、18a CPU、18b メモリ
21 ノズルプレート、22 検出用電極、高圧電源ユニット23、
24 第1制限抵抗、25 第2制限抵抗、26 検出用コンデンサ、
27 増幅器、28 検出制御部、29 平滑コンデンサ、
30 電圧検出部、30a 第1抵抗、30b 第2抵抗、
41 サブ基板、PC コンピュータ、
HD ヘッド、HC ヘッド制御部、COM 駆動信号、
Va 検出信号の振幅、Vth 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからの液体の吐出を検査するためのノズル検査を行う検査回路と、
前記ノズル検査に必要な電圧を前記検査回路に供給するとともに、前記検査回路が所定タイミングで前記ノズル検査を行う自動検査機能をオンオフ設定できるコントローラと
を備え、
前記自動検査機能のオンオフ設定に関わらず、前記検査回路には前記ノズル検査に必要な電圧が供給されており、
前記コントローラは、
前記自動検査機能がオンに設定されている場合には、前記所定タイミングになったときに、前記検査回路に供給された前記電圧を用いて前記検査回路に前記ノズル検査を行わせ、
前記自動検査機能がオフに設定されている場合には、前記検査回路に前記ノズル検査を行わせる前に前記検査回路の異常検査を行い、前記検査回路に異常があれば前記検査回路への前記電圧の供給を停止する
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル検査装置であって、
前記検査回路は、
前記ノズルから吐出される前記液体を第1電位にする第1電極と、前記ノズルに対向する位置に設けられ、前記第1電位とは異なる第2電位の第2電極とを備え、
前記ノズルから前記液体が吐出されるときの前記第1電極及び前記第2電極のうちの少なくとも一方の電極の電位変化を検出することによって、前記ノズル検査を行う
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のノズル検査装置であって、
前記異常検査の際に、前記コントローラは、前記第1電極及び前記第2電極のうちの高電位の方の電極の電位を検出し、この電位が所定電位よりも低ければ、前記検査回路に異常があると判定する
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載のノズル検査装置であって、
前記異常検査の際に、前記コントローラは、前記ノズル検査の対象となるノズル数よりも少ない所定数のノズルから順に前記液体を吐出させ、そのときの前記電位変化に基づいて前記検査回路の異常を検査する
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のノズル検査装置であって、
あるノズルからの前記液体の吐出を検査した後、全てのノズルからの液体の吐出を行わない期間が設けられ、その期間の前記電位変化が所定の閾値を超えれば、前記あるノズルからの前記液体の吐出を再検査する
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のノズル検査装置であって、
前記コントローラは、前記検査回路に所定のパラメータを初期設定し、前記初期設定が正常に行われたことを示す信号が前記検査回路から無ければ、前記検査回路に異常があると判定する
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項7】
ノズルからの液体の吐出を検査するための検査回路を用いたノズル検査方法であって、
前記検査回路が前記ノズルからの前記液体の吐出を所定タイミングで検査する自動検査機能をオンオフ設定すること、
前記自動検査機能のオンオフ設定に関わらず、前記検査回路に必要な電圧を前記検査回路に供給すること、
前記自動検査機能がオンに設定されている場合には、前記所定タイミングになったときに、前記検査回路に供給された前記電圧を用いて前記検査回路が前記ノズルからの前記液体の吐出を検査すること、及び
前記自動検査機能がオフに設定されている場合には、前記ノズルからの前記液体の吐出を前記検査回路が検査する前に前記検査回路の異常検査を行い、前記検査回路に異常があれば前記検査回路への前記電圧の供給を停止すること
を有するノズル検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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