説明

ノズル洗浄装置

【課題】簡易な構成で吐出された洗浄液の跳ね返り高さを低く抑え、ホルダ上部への洗浄液の結晶析出を防止できるノズル洗浄装置を提供すること。
【解決手段】吐出ノズル3と吸引ノズル2とが隣接配置され、吐出ノズル3から洗浄槽4に洗浄液6を吐出し、吸引ノズル2が洗浄液6を吸引し、吸引ノズル2を洗浄するノズル洗浄装置1において、洗浄槽4の吸引ノズル2側に洗浄液6の排出部7を設け、洗浄液6の越流を排出部7に案内し、洗浄液6面で飛散した飛沫を排出部7に向かわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ノズルと吸引ノズルとが隣接配置され、前記吐出ノズルから洗浄槽に洗浄液を吐出し、前記吸引ノズルが前記洗浄液を吸引し、前記吸引ノズルを洗浄するノズル洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬を用いて検体の分析を行う自動分析装置は、これらの試薬あるいは検体をピペット吸引によって分注する分注ノズルを備える。この分注ノズルは、ディスポーザブル型(使い捨て)ノズルの他に、ノズルの内側および外側を洗浄して再利用が可能な洗浄型ノズルが知られ、この洗浄型ノズルを洗浄するノズル洗浄装置が知られている。
【0003】
ノズル洗浄装置においては、吐出ノズルと吸引ノズルとが隣接配置され、吐出ノズルから洗浄槽に洗浄液を吐出し、吸引ノズルによって洗浄液を吸引することによって、吸引ノズルの内側および外側を洗浄する。吐出ノズルから吐出される洗浄液は、高圧力を伴って吐出されるため、吐出ノズルから吐出された洗浄液が洗浄槽から外部に飛散することを防止する技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−285861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に吐出ノズルから吐出された高圧の洗浄液は、洗浄液面で飛散し跳ね返る。この跳ね返った洗浄液が吐出ノズルと吸引ノズルとを固定するホルダ下部に付着すると、毛細管現象によりホルダ上部に上昇し、ホルダ上部で結晶析出する。この結晶析出物は、外見を損い、装置を使用するユーザーに対し、悪印象を与えるという問題点があった。
【0006】
また、洗浄液面から跳ね返った洗浄液が吐出ノズルの先端に付着すると、この部分で洗浄液が結晶化して固化し、洗浄液の吐出方向を変化させ、洗浄槽に洗浄液を所定量貯めることができず、吸引ノズルを洗浄できないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で洗浄槽に吐出された洗浄液の跳ね返りをホルダおよび吐出ノズルに対して防止できるノズル洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1にかかるノズル洗浄装置は、吐出ノズルと吸引ノズルとが隣接配置され、前記吐出ノズルから洗浄槽に洗浄液を吐出し、前記吸引ノズルが前記洗浄液を吸引し、前記吸引ノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、前記洗浄槽の前記吸引ノズル側に前記洗浄液の排出部を設け、前記洗浄液の越流を前記排出部に案内し、前記洗浄液面で飛散した飛沫を前記排出部に向かわせることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかるノズル洗浄装置は、上記の発明において、前記排出部は、前記吸引ノズル側が低く形成された前記洗浄槽の端面に形成されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかるノズル洗浄装置は、上記の発明において、前記洗浄槽は、前記吐出ノズル側から前記吸引ノズル側へ向けて下降傾斜した端面を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかるノズル洗浄装置は、上記の発明において、前記洗浄槽は、前記吸引ノズル側の端面にスリットを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるノズル洗浄装置は、吐出された洗浄液の排出部を吸引ノズル側に設け、洗浄液の跳ね返りを排出部側に誘導することによって、ホルダおよび吐出ノズルに対する洗浄液の付着を防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるノズル洗浄装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は、この発明にかかるノズル洗浄装置1の概要構成を示す断面模式図である。図1に示すように、このノズル洗浄装置1は、洗浄液6を吐出する吐出ノズル3と、洗浄液6を吸引する吸引ノズル2と、洗浄液6を貯留する洗浄槽4と、吐出ノズル3と吸引ノズル2とを固定するホルダ5とを有する。
【0015】
洗浄槽4の上部は、32°に傾斜した端面が形成され、この傾斜は、吐出ノズル3側から吸引ノズル2側へ向かって低くなっている。この傾斜の最も低い位置が洗浄液6の排出部7となる。また、洗浄槽4は、この傾斜を有する上部が下部に比して大口径となっており、ノズルホルダ(図示せず)に容易に矜持されるようになっている。
【0016】
吸引ノズル2の先端は、吐出ノズル3の先端よりも長く、吐出ノズル3は、洗浄液6を吐出し洗浄槽4を洗浄液6によって満たし、吸引ノズル2の外側を洗浄する。吸引ノズル2は、洗浄槽4に満たされた洗浄液6を吸引し、吸引ノズル2の内側を洗浄する。吐出ノズル3の先端と洗浄槽4に満たされた洗浄液6の液面とは、ほぼ一致している。
【0017】
ところで、この洗浄槽4の上部に形成された傾斜によって、吸引ノズル2側に洗浄液6の排出部7が形成され、吐出ノズル4から吐出された洗浄液6は、排出部7に向かい排出される。吐出ノズル3から洗浄液6の液面に吐出されることにより、液面では、吐出ノズル3側から排出部7への流れが形成されている。そこで、吐出ノズル3から液面に吐出され飛散した飛沫は、液面で形成された流れに沿って跳ね返り、排出部7方向に向かう。
【0018】
図2は、このノズル洗浄装置1の概要構成を示す上面図である。黒色の矢印は、洗浄液6上部の流れの方向を示す。図2に示すように、吐出ノズル3から吐出された洗浄液6は、洗浄槽4の洗浄液6の流れに従い、吸引ノズル2を回り込むようにして排出部7に向かう。
【0019】
図3は、このノズル洗浄装置1の吐出ノズル3先端部を示した拡大断面図である。黒色の矢印は、吐出ノズル3から吐出される洗浄液6の方向と、洗浄液6表面の流れと、吐出された洗浄液6の飛散方向を示す。図3に示すように、吐出ノズル3から洗浄液6が垂直に吐出されるが、吐出された洗浄液6の表面には、排出部7に向う流れが形成されている。そのため、吐出ノズル3から吐出され、洗浄液6の液面で飛散する飛沫は、洗浄液6の流れに従って、排出部7の方向へ向かう。
【0020】
洗浄液6で飛散した飛沫が垂直に吐出ノズル3方向に向かわず、排出部7方向に向かう。このため、吐出ノズル3方向に跳ね返る飛沫の高さは低くなり、ホルダ5下部に達する洗浄液6の量が減少し、毛細管現象によりホルダ5上部に上昇する洗浄液6の量を低減できる、この結果、ホルダ5上部での洗浄液6の結晶化を防止できる。
【0021】
ここで、この発明にかかる洗浄槽4と従来の洗浄槽とによる洗浄液の跳ね返りの高さに関する実証実験を行った。図6は、従来の洗浄槽4Dの外観を示す斜視図であり、洗浄槽4Dは、全体の形状がテーパ状となっており、上部は、下部に比して大口径になっている。
【0022】
洗浄液6の液面とホルダ5の下端との距離を21mmとした場合、この発明にかかる洗浄槽4を用いた場合、跳ね返り高さは、最大9mmであり、洗浄槽4Dを用いた場合、跳ね返り高さは、最大18mmであった。つまり、洗浄槽4を用いた場合、洗浄液6の跳ね返り高さを従来の1/3に抑制でき、ホルダ5上部での洗浄液6の結晶析出を防止できる。
【0023】
この実施の形態では、洗浄槽4に洗浄液6を排出する排出部7を設けることによって、洗浄液6の跳ね返り高さを抑制し、ホルダ5上部での洗浄液6の結晶析出を確実に防止できる。
【0024】
(変形例1)
実施の形態では、洗浄槽4の上部を傾斜させた形状に形成し、下部をストレート管にしていたが、この変形例1では、ストレート管を斜めに切断し、洗浄槽を容易に製造できるようにしている。図4は、この変形例1にかかる洗浄槽4Aの外観を示す斜視図である。図4に示すように、洗浄槽4Aは、ストレート円管を斜めに切断して形成されたものであり、傾斜の下端が排出部7となっている。
【0025】
(変形例2)
実施の形態では、洗浄槽4の吸引ノズル側に低い端面を形成し排出部7を形成していたが、このようにして形成した排出部7は、吐出ノズル3の吐出量等によって部位が変動する。この変形例2では、洗浄槽にスリットを設け排出部を確定するようにしている。
【0026】
図5は、この変形例2にかかる洗浄槽4Bの外観を示す斜視図である。図5に示すように、この洗浄槽4Bは、全体が円管形状であり、上部に切り欠きが形成されている。この切りかきが洗浄液6の排出部7となる。この排出部7は、多少の洗浄液6の吐出条件が変動しても排出する位置が不動であり、跳ね返り高さが洗浄液6の吐出条件に左右されない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態にかかるノズル洗浄装置の概要構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態にかかるノズル洗浄装置の概要構成を示す上面図である。
【図3】この発明の実施の形態にかかる洗浄槽上部を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態の変形例1にかかる洗浄槽の外観を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態の変形例2にかかる洗浄槽の外観を示す斜視図である。
【図6】従来の洗浄槽の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ノズル洗浄装置
2 吸引ノズル
3 吐出ノズル
4,4A,4B,4C 洗浄槽
5 ホルダ
6 洗浄液
7 排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ノズルと吸引ノズルとが隣接配置され、前記吐出ノズルから洗浄槽に洗浄液を吐出し、前記吸引ノズルが前記洗浄液を吸引し、前記吸引ノズルを洗浄するノズル洗浄装置において、
前記洗浄槽の前記吸引ノズル側に前記洗浄液の排出部を設け、前記洗浄液の越流を前記排出部に案内し、前記洗浄液面で飛散した飛沫を前記排出部に向かわせることを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項2】
前記排出部は、前記吸引ノズル側が低く形成された前記洗浄槽の端面に形成されることを特徴とする請求項1に記載のノズル洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽は、前記吐出ノズル側から前記吸引ノズル側へ向けて下降傾斜した端面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のノズル洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽は、前記吸引ノズル側の端面にスリットを有することを特徴とする請求項1または2に記載のノズル洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−38170(P2007−38170A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227001(P2005−227001)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】