説明

ノズル装置

【課題】 廃棄物焼却設備に於ける湿式ガス洗浄装置の急冷ノズルとして用いられるノズル装置に於て、大きな挿入開口を開ける必要がないと共に、それでいてネジ部が低温腐食を起こさない様にする。
【解決手段】 ノズル本体2、ノズルアダプタ3、シール材4、被覆層5とで構成し、とりわけノズル本体2とノズルアダプタ3との間にシール材4を介設すると共に、ノズル本体2とノズルアダプタ3とノズル管11の酸性ガス接触面のうち少なくとも最外側のシール材4より外部の表面に被覆層5を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば廃棄物焼却設備に於ける湿式ガス洗浄装置の急冷ノズルとして用いられるノズル装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却施設で発生した塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)といった酸性ガスを除去する方法としては、大量の水を噴霧して酸性ガスを吸収させる湿式方式が知られている。この場合、耐食性に優れる煉瓦を内張りした急冷塔で急冷水に依り酸性ガスを飽和温度まで減温した後、吸収水を酸性ガスとの接触効率の良い充填層に噴霧し、酸性ガスを吸収するのが一般的である(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
湿式ガス洗浄装置に適用されて急冷水を噴霧するノズル装置に於ては、噴霧水と接触すると共に、酸性ガスが存在する雰囲気である為に、金属製のノズルを使用した場合には、腐食のトラブルが発生する。この為、テフロン(登録商標、以下同様)等の腐食に強い合成樹脂系のノズルが使われる事があったが、この様なものは、装置入口温度が高い場合やノズルの詰まり等で水噴霧されない場合には、ノズルの温度が上がって耐熱温度を越えてしまう可能性があった。
【0004】
【特許文献1】特許第2960448号公報
【特許文献2】実開平4−26015号公報
【特許文献3】実開平1−65638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、ステンレス鋼(SUS)等の金属を母体としてテフロン等をコーティングしたノズルが使用されている。
ところで、ノズル装置50に於て、ノズル本体51をノズル管52と接続する方法としては、ネジ止め(図3参照)やフランジ止め(図4参照)があるが、ノズル装置50を急冷塔60内に挿入するには、急冷塔60の側壁61を形成するレンガに開口62を開けて挿入する必要があった(図5参照)。
ところが、フランジ止めの場合は、フランジの大きさに合わせて非常に大きな開口を開ける必要があり、問題であった。
他方、ネジ止めの場合は、ネジ部にはテフロン等の被覆層53をコーティング(被覆)できない為、ノズル本体51とノズル管52との境目54から酸性ガスが侵入してネジ部が低温腐食を起こす問題があった。
【0006】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、大きな挿入開口を開ける必要がないと共に、それでいてネジ部が低温腐食を起こさない様にしたノズル装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノズル装置は、基本的には、雄ネジ部と無ネジ部とノズル孔とを備えたノズル本体と、ノズル管に連通すべく連結されてノズル本体の雄ネジに螺合する雌ネジとノズル本体の無ネジ部の外側に遊嵌される筒部とを備えたノズルアダプタと、ノズル本体の無ネジ部とノズルアダプタの筒部との間に介設された少なくとも一つのシール材と、ノズル本体とノズルアダプタとノズル管の酸性ガス接触面のうち少なくとも最外側のシール材より外部の表面に被覆された被覆層と、から構成した事に特徴が存する。
【0008】
ノズル本体が螺合されるノズルアダプタをノズル管に設けると共に、ノズル本体とノズルアダプタとの間にシール材を介設したので、ノズル管を流れる噴霧水が外部に漏洩する事がないと共に、酸性ガスがノズル本体とノズルアダプタのネジ部に侵入する事がない。
ノズル本体とノズルアダプタとノズル管の酸性ガス接触表面のうち少なくとも外側のシール材より外部の表面には、被覆層が被覆されているので、酸性ガスに依りこれら表面が腐食される事がない。
ノズル本体とノズルアダプタとの間にシール材を介設したので、酸性ガスに依りノズル本体とノズルアダプタのネジ部が腐食される事がない。
ノズル本体とノズルアダプタとの間にシール材を介設したので、ノズルアダプタに対するノズル本体の緩み止め効果を向上でき、延いてはノズル本体の脱落を防止できる。
【0009】
シール材を二つにすると共に、ノズル本体の無ネジ部にはシール材が嵌合される溝を形成した方が好ましい。この様にすれば、シール性能とノズル本体の緩み止め効果を倍化できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) ノズル本体、ノズルアダプタ、シール材、被覆層とで構成し、とりわけノズル本体とノズルアダプタとの間にシール材を介設すると共に、ノズル本体とノズルアダプタとノズル管の酸性ガス接触面のうち少なくとも最外側のシール材より外部の表面に被覆層を被覆したので、大きな挿入開口を開ける必要がないと共に、それでいてネジ部が低温腐食を起こす事がない。
(2) ノズル本体とノズルアダプタとの間にシール材を介設したので、ノズルアダプタに対するノズル本体の緩み止め効果を向上でき、延いてはノズル本体の脱落を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一例に係るノズル装置を示す縦断面図である。
【0012】
本発明のノズル装置1は、ノズル本体2、ノズルアダプタ3、シール材4、被覆層5とからその主要部が構成されている。
【0013】
ノズル本体2は、雄ネジ部6と無ネジ部7とノズル孔8とを備えたもので、この例では、後方のみが開放した筒状(有底筒状)を呈し、後側に形成された雄ネジ部6と、これより前側に形成された無ネジ部7と、前壁9に穿設されたノズル孔8と、無ネジ部7の中程に膨出して形成された廻止部10とを備えている。ノズル本体2は、急冷水となる噴霧水を円錐状に噴霧する標準的な一流体ノズルにしてあり、ノズル本体2の材質は、ステンレス鋼(SUS)にしてある。
【0014】
ノズルアダプタ3は、ノズル管11に連通すべく連結されてノズル本体2の雄ネジ部6に螺合する雌ネジ部12とノズル本体2の無ネジ部7の外側に遊嵌される筒部13とを備えたもので、この例では、筒状を呈し、後側に形成されてノズル管11の内面に連続する内面を有する接続部14と、これの前側に形成されてノズル本体2の雄ネジ部6に螺合する雌ネジ部12と、これの前側に形成されてノズル本体2の無ネジ部7より大径な内面を有する筒部13とを備えている。ノズルアダプタ3とノズル管11の材質は、ステンレス鋼(SUS)にしてあり、ノズルアダプタ3の接続部14がノズル管11に溶接されて連結されている。
【0015】
シール材4は、ノズル本体2の無ネジ部7とノズルアダプタ3の筒部13との間に介設された少なくとも一つのもので、この例では、内外二つのOリング4A,4Bにしてあり、ノズル本体2の無ネジ部7に形設された断面円弧状の内外二条の溝部15A,15Bに嵌合されている。シール材4の材質は、NBR(二トリルゴム)やフッ素ゴム(テフロン)等にしてある。
【0016】
被覆層5は、ノズル本体2とノズルアダプタ3とノズル管11の酸性ガス接触面のうち少なくとも最外側のシール材4より外側の表面に被覆されたもので、この例では、耐食性や耐熱性を考慮してテフロンにしてあり、ノズル本体2に被覆される被覆層5Aと、ノズルアダプタ3とノズル管11に被覆される被覆層5Bとを備えて居り、これら被覆層5A,5Bは、個別に形成される。
被覆層5Aは、ノズル本体2の雄ネジ部6とノズル孔8を除く外表面、つまり、ノズル本体2の無ネジ部7と溝部15と廻止部10と前壁9の各外表面に被覆されている。
被覆層5Bは、ノズルアダプタ3の雌ネジ部12を除く外表面、つまり、ノズルアダプタ3の筒部13の内周面及び端面を含むノズルアダプタ3とノズル管11の各外表面に被覆されている。
【0017】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
ノズル本体2が螺合されるノズルアダプタ3をノズル管11に設けると共に、ノズル本体2とノズルアダプタ3との間にシール材4を介設したので、ノズル管11を流れる噴霧水Aが外部に漏洩する事がないと共に、酸性ガスがノズル本体2とノズルアダプタ3のネジ部(雄ネジ部6と雌ネジ部12)に侵入する事がない。
ノズル本体2とノズルアダプタ3とノズル管11の酸性ガス接触表面のうち少なくとも外側のシール材4より外部の表面には、被覆層5が被覆されているので、酸性ガスに依りこれら表面が腐食される事がない。
ノズル本体2とノズルアダプタ3との間にシール材4を介設したので、酸性ガスに依りノズル本体2とノズルアダプタ3のネジ部が腐食される事がない。
ノズル本体2とノズルアダプタ3との間にシール材4を介設したので、ノズルアダプタ3に対するノズル本体2の緩み止め効果を向上でき、延いてはノズル本体2の脱落を防止できる。
【0018】
次に、本発明の第二例を、図2に基づいて説明する。
図2は、本発明の第二例に係るノズル装置を示す縦断面図である。
第二例は、被覆層5を第一例とは異ならせたものである。
つまり、被覆層5がノズル本体2とノズルアダプタ3とノズル管11の酸性ガス接触面のうち最外側のシール材4Aより外側の表面に被覆されていると共に、シール材4がノズル本体の溝部とノズルアダプタの筒部との間に収まる大きなものにされている。
被覆層5Aは、ノズル本体2の雄ネジ部6から外側の溝部15までの間とノズル孔8を除く外表面、つまり、ノズル本体2の無ネジ部7の一部と廻止部10と前壁9の各外表面に被覆されている。
被覆層5Bは、ノズルアダプタ3の雌ネジ部12と筒部13の内周面の一部を除く外表面、つまり、ノズルアダプタ3の筒部13の内周面の一部及び端面を含むノズルアダプタ3とノズル管11の各外表面に被覆されている。
この様なものは、第一例に比べて、被覆層5の一部を省略できるので、それだけ被覆層5の材料や工程を削減できると共に、被覆層5を介さずにシール材4を直接ノズル本体2の溝部15とノズルアダプタ3の筒部13とに当合できるので、シール効果を高める事ができる。
【0019】
尚、ノズル本体2は、先の例では、標準タイプであったが、これに限らず、例えばスパイラルタイプ等でも良い。スパイラルタイプにした場合は、ノズル本体2の雄ネジ部6とノズルアダプタ3の雌ネジ部12をスパイラルの回転方向と逆向きにし、流体の噴霧に依るノズル本体2に働く回転力がネジを締める方向に働くようにする。この様にすれば、ノズル本体2の緩みや脱落を防止する事ができる。
ノズル本体2は、先の例では、一流体ノズルにしたが、これに限らず、例えばアトマイジング空気を用いた二流体ノズル等でも良い。
ノズル本体2とノズルアダプタ3とノズル管11の材質は、先の例では、ステンレス鋼(SUS)であったが、これに限らず、例えば一般構造用圧延鋼材(SS)等でも良い。
シール材5は、先の例では、二つであったが、これに限らず、例えば一つや三つ以上でも良い。
シール材5は、先の例では、Oリングであったが、これに限らず、例えばVリング等でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一例に係るノズル装置を示す縦断面図。
【図2】本発明の第二例に係るノズル装置を示す縦断面図。
【図3】従来のネジ止めタイプのノズル装置を示す縦断面図。
【図4】従来のフランジ止めタイプのノズル装置を示す縦断面図。
【図5】急冷塔に挿入されるノズル装置を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0021】
1…ノズル装置、2…ノズル本体、3…ノズルアダプタ、4…シール材、5…被覆層、6…雄ネジ部、7…無ネジ部、8…ノズル孔、9…前壁、10…廻止部、11…ノズル管、12…雌ネジ部、13…筒部、14…接続部、15…溝部、50…ノズル装置、51…ノズル本体、52…ノズル管、53…被覆層、54…境目、60…急冷塔、61…側壁、62…開口、A…噴霧水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ネジ部と無ネジ部とノズル孔とを備えたノズル本体と、ノズル管に連通すべく連結されてノズル本体の雄ネジに螺合する雌ネジとノズル本体の無ネジ部の外側に遊嵌される筒部とを備えたノズルアダプタと、ノズル本体の無ネジ部とノズルアダプタの筒部との間に介設された少なくとも一つのシール材と、ノズル本体とノズルアダプタとノズル管の酸性ガス接触面のうち少なくとも最外側のシール材より外部の表面に被覆された被覆層と、から構成した事を特徴とするノズル装置。
【請求項2】
シール材を二つにすると共に、ノズル本体の無ネジ部にはシール材が嵌合される溝を形成した請求項1に記載のノズル装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−253891(P2008−253891A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96963(P2007−96963)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】