説明

ノック式シャープペンシル

【課題】チャック7に保持されなくなった短い芯8を次の芯8で押圧して筆記を行った場合でも、芯8が回転したりバウンドすることなく筆記が行えるノック式シャープペンシルに適用できる。
【解決手段】長手方向に摺動可能に軸筒2内に内蔵された芯タンク4に締具5を連結する。この締具5をリターンスプリング6により長手方向後方に付勢する。また、長手方向に一定距離移動可能でかつコイルスプリング13により長手方向後方に付勢されたチャック7を軸筒2で受け止める。このチャック7の頭部7Bに締具5を押圧することによりチャック7が閉じて芯8を保持する。更に、軸筒2に連結された先部材9の前部に芯8を適度の力で保持する芯ホルダー10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出される残芯の量を少なくしたノック式シャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口金の前部内側に芯を適度の力で保持する芯ホルダーを2色成形あるいはインサート成形により構成し、この芯ホルダーを軟質物質で構成するとともに、芯ホルダーの前部に前方に突出する芯保持部を円周方向略等間隔に形成し、その内面を断面V字形に構成したシャープペンシルが知られている。(特許文献1参照)
【0003】
上記シャープペンシルは、短くなった芯をチャックに保持された次の芯で押して筆記を行っても、短い芯が回転することなく筆記できる利点はあるが、芯を繰り出した後にチャックが閉じた時、チャックによって次の芯を後退させてしまい、短い芯と次の芯の間に隙間が生じて、筆記を開始した時に短い芯がバウンドしてしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4566717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、芯を繰り出した後に筆記を開始した時、短い芯がバウンドしてしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長手方向に摺動可能に軸筒内に内蔵された芯タンクに締具を連結し、この締具をリターンスプリングにより長手方向後方に付勢するとともに、長手方向に一定距離移動可能でかつコイルスプリングにより長手方向後方に付勢されたチャックを軸筒で受け止め、このチャックの頭部に締具を押圧することによりチャックが閉じて芯を保持し、更に、軸筒に連結された先部材の前部に芯を適度の力で保持する芯ホルダーを設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、チャックに保持されなくなった短い芯を次の芯で押圧して筆記を行った場合でも、芯が回転したりバウンドすることなく筆記が行えるとともに、コイルスプリングによりチャックが長手方向後方に付勢されているので、チャックが後退位置に停止した状態で閉じて芯を保持する利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例1のノック式シャープペンシルの筆記状態を示す断面図である。(実施例1)
【図2】図2は、実施例1の芯ガイド及び芯ホルダーを示す主要部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】図3は、実施例1のノック式シャープペンシルの芯繰出状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例1)
【図4】図4は、実施例1のノック式シャープペンシルのチャック拡開状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例1)
【図5】図5は、実施例1のノック式シャープペンシルの短い芯と次の芯が当接した状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例1)
【図6】図6は、本発明の実施例2のノック式シャープペンシルの筆記状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例2)
【図7】図7は、本発明の実施例3のノック式シャープペンシルの筆記状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例3)
【図8】図8は、図7のA−A線を示す拡大断面図である。(実施例3)
【図9】図9は、実施例3のノック式シャープペンシルにおける締具とコネクターの連結状態を示す主要部拡大部分断面図である。(実施例3)
【図10】図10は、本発明の実施例4のノック式シャープペンシルの筆記状態を示す主要部拡大断面図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0009】
チャックに保持されなくなった短い芯を次の芯で押圧して筆記を行った場合でも、芯が回転したりバウンドすることなく筆記が行え、残芯を非常に少なくできるノック式シャープペンシルを実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1、図2、図3、図4及び図5に基づいて本発明における実施例1のノック式シャープペンシルを説明する。また、図1の左側を前方とし、右側を後方とする。後部にクリップ1を形成した軸筒2の把持部2Aにゴム等の軟質材で構成されたグリップ3を取り付け、この軸筒2内に長手方向に摺動可能に芯タンク4を内蔵する。この芯タンク4の前部に締具5を圧入固着して連結し、軸筒2の内段2Bと締具5の外段5Aとの間にリターンスプリング6が取付時荷重500g程度で取り付けられて、締具5を長手方向後方に付勢する。
【0011】
チャック7は、前部から後方に伸びた筒部7Aの後部に頭部7Bが形成され、この頭部7Bには長手方向後方に向かって太径となるテーパー部7Cが構成される。この頭部7Bは、後方から前方に向かって複数の切溝が構成され、頭部7Bが複数に分割されている。更に、チャック7の前部から後方に伸びて外筒部7Dが構成され、この外筒部7Dの後端に外鍔7Eが形成される。前記チャック7の頭部7Bが締具5内に挿入され、チャック7のテーパー部7Cが前記締具5の内鍔5Bに押圧されて、締具5とともにチャック7が長手方向後方に付勢される。このチャック7は外鍔7Eが軸筒2の前端に当接され、締具5の内鍔5Bがチャック7のテーパー部7Cに強く押圧されて、チャック7の頭部7Bが閉じられ芯8を強く保持する。更に、軸筒2の前部に先部材9が着脱可能に螺合される。この先部材9には内段9Aが形成され、この内段9Aと軸筒2の前端との間をチャック7の外鍔7Eが長手方向に摺動可能に構成される。
【0012】
更に、ステンレス、リン青銅、ベリリウム銅あるいは黄銅等の金属製の板材を丸めて筒状の芯ホルダー10を形成し、この芯ホルダー10の合わせ溝10Aと相対する前部に切溝を形成し、芯ホルダー10の前部を合わせ溝10Aと切溝により2つの片10Bに分割する。前記2つの片10Bを内方に曲面状に折り曲げ、先端をラッパ状に形成する。また、ステンレス製のパイプ材からなる芯ガイド11は、先端が縮径されて形成される。この芯ガイド11の後端側から前記芯ホルダー10を挿入し、芯ホルダー10の先端を芯ガイド11の先端に近接させ、芯ガイド11の後部内面に芯ホルダー10の筒状の後部を圧入嵌合する。この芯ガイド11を中駒12の前部に圧入固着する。
【0013】
前記芯ガイド11及び中駒12を先部材9内に挿入し、中駒12の後端とチャック7の前端との間にコイルスプリング13を20g程度の取付時荷重で取り付け、ノック式シャープペンシルを構成する。
【0014】
以上説明したノック式シャープペンシルは、芯タンク4を前進させることにより締具5が前進し、締具5の内鍔5Bによって閉じられたチャック7が前進することにより芯8が繰り出される。そして、チャック7の外鍔7Eが先部材9の内段9Aに当接すると、チャック7の前進は停止し図3の状態となる。更に芯タンク4を前進させると、締具5の内鍔5Bがチャック7の頭部7Bから外れ、チャック7が拡開して芯8を解放する。すると、コイルスプリング13によりチャック7が後方に付勢されて瞬時にチャック7の外鍔7Eが軸筒2の前端に当接し図4の状態となる。更に、締具5及び芯タンク4が前進すると、芯タンク4に押されてチャック7の外鍔7Eが再び先部材9の内段9Aに当接しチャック7が停止する。したがって、チャック7が芯8を保持して前進した長さだけ芯8が繰り出される。そして、筆記を行うことによって筆記中の芯8が短くなった場合には、芯タンク4内の次の芯8が追従し、短くなった芯8を前進させる。この場合、チャック7により保持された芯8で短い芯8を繰り出した時、チャック7は外鍔7Eが先部材9の内段9Aに当接されて前進が停止されるが、締具5及び芯タンク4は更に前進して、チャック7の頭部7Bから締具5が外れる。すると、チャック7はコイルスプリング13によって瞬時に後退され、チャック7の外鍔7Eが軸筒2の前端に当接する。その後、芯タンク4の押圧を解除すると、締具5及び芯タンク4が後退し、締具5の内鍔5Bがチャック7のテーパー部7Cを押圧してチャック7が閉じられる。チャック7が閉じられる時に、チャック7は後方に移動しないので、チャック7に保持される芯8は後方には全く移動しない。したがって、短い芯8と次の芯8は常に当接した状態を保ち図5に示した状態となる。
【0015】
この状態で筆記を行った時、短い芯8は芯ホルダー10のみで保持されているが、芯ホルダー10の前部に形成された2つの片10Bで芯8を保持することによって芯ガイド11の先端近くで芯8を保持するとともに芯8の回転を防止するので、残芯として排出される芯8は極わずかとなり非常に経済的となる。
【実施例2】
【0016】
以下、図6に基づいて本発明における実施例2のノック式シャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。チャック107は、前部から後方に伸びた筒部107Aの後部に頭部107Bが形成され、この頭部107Bには長手方向後方に向かって太径となるテーパー部107Cが構成される。この頭部107Bは、後方から前方に向かって複数の切溝が構成され、頭部107Bが複数に分割されている。このチャック107の前部には外筒14の内鍔14Aが圧入固着される。このチャック107の頭部107Bが締具5内に挿入され、チャック107のテーパー部107Cが前記締具5の内鍔5Bに押圧されて、締具5とともにチャック107が長手方向後方に付勢される。このチャック107は外筒14の後端が軸筒2の前端に当接され、締具5の内鍔5Bがチャック107のテーパー部107Cに強く押圧されて、チャック107の頭部107Bが閉じられて芯8を強く保持する。締具5の後部にはコネクター15が圧入固着され、コネクター15の後部15Aが芯タンク104の前部に圧入固着してチャック107と芯タンク104が連結される。更に、軸筒2の前部に先部材109が着脱可能に螺合される。この先部材109に内蔵された中駒12の後端とチャック107の前端との間にコイルスプリング13を20g程度の取付時荷重で取り付けられる。尚、芯8の繰出手段は実施例1と同様に行われる。
【実施例3】
【0017】
以下、図7、図8及び図9に基づいて本発明における実施例3のノック式シャープペンシルを説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。後部にクリップを形成した後軸16の前部に前軸17を螺合して軸筒を構成する。この前軸17内に内軸18を長手方向に摺動可能に内蔵し、内軸18の後端と後軸16の前端との間に筆圧スプリング19が取付時荷重500g程度で取り付けられ、内軸18を長手方向前方に付勢する。
【0018】
チャック207は、後部から前方に伸びた筒部207Aの前部に頭部207Bが形成され、この頭部207Bには長手方向後方に向かって太径となるテーパー部207Cが構成される。この頭部207Bは、前方から後方に向かって複数の切溝が構成され、頭部207Bが複数に分割されている。更に、チャック207の後部には外筒114が圧入固着され、外筒114の相対位置に形成された外方突起114Bが前軸17の内段17Aと内軸18の前端との間に長手方向に適宜摺動可能に挿入される。従って、チャック207は外筒114、内軸18及び筆圧スプリング19を介して後軸16に受け止められる。締具105は後端から前方に伸びた溝105Cが相対位置に形成され、更に、溝105Cと円周方向に90度ずれた位置に係止窓105Dが相対して形成される。この締具105はチャック207の前方から被せられ、外筒114の外方突起114Bが締具105の溝105Cに挿入される。この締具105の後部にコネクター115の前部が挿入され、コネクター115の前部に相対して形成された隆起部115Bが締具105の溝105Cに挿入されるとともに、コネクター115の前部に隆起部115Bと円周方向に90度ずれた位置に相対して形成された突起115Cが締具105の係止窓105Dに係合して締具105とコネクター115が連結される。このコネクター115の隆起部115Bと内軸18の内鍔18Aとの間にリターンスプリング6が取付時荷重500g程度で取り付けられ、コネクター115及び締具105を長手方向後方に付勢する。すると、外筒114の外方突起114Bが内軸18の前端に当接し、締具105の内鍔105Bがチャック207のテーパー部207Cに強く押圧され、チャック207の頭部207Bが閉じられて芯8を強く保持する。更に、前記コネクター115の後部115Aに芯タンク104の前部が圧入固着されて締具105と芯タンク104が連結される。更に、前軸17の前部に先部材209が着脱可能に螺合される。この先部材209に内蔵された中駒12の後端とチャック207の前端との間にコイルスプリング113を20g程度の取付時荷重で取り付けられ、ノック式シャープペンシルが構成される。
【0019】
以上説明したノック式シャープペンシルは、芯タンク104を前進させることにより締具105が前進し、締具105の内鍔105Bによって閉じられたチャック207が前進することによって芯8が繰り出される。そして、外筒114の外方突起114Bが前軸17の内段17Aに当接すると、チャック207の前進は停止する。更に芯タンク104を前進させると、締具105の内鍔105Bがチャック207の頭部207Bから外れ、チャック207が拡開して芯8を解放する。
【0020】
また、筆記を行った時に、芯8に強い筆記圧が加わった場合には、外筒114の外方突起114Bが当接する内軸18がチャック207及び外筒114とともに後退し、筆圧スプリング19を圧縮するので、必要以上の強い筆記圧が芯8に加わった場合でも芯8の折損を防ぐことができる。
【0021】
以下、図10に基づいて本発明における実施例4のノック式シャープペンシルを説明する。内軸118に摺動窓118Bを相対位置に形成し、この内軸118に長手方向に摺動可能に締具205を内蔵する。更に、内軸118の内段118Cと締具205の外段205Aとの間にリターンスプリング6が取付時荷重500g程度で取り付けられて、締具205を長手方向後方に付勢する。
【0022】
チャック307の後部には外筒214が圧入固着され、外筒214の外方突起214Bが締具205の溝205Cを挿通して内軸118の摺動窓118Bに長手方向に適宜摺動可能に係合される。また、チャック307の頭部307Bが締具205内に挿入され、チャック307のテーパー部307Cが前記締具205の内鍔205Bに強く押圧され、チャック307の頭部307Bが閉じられて芯8を強く保持する。また、締具205の内段205Eと外筒214との間にはコイルスプリング213が20g程度の取付時荷重で取り付けられる。そして、コネクター215の突起が締具205の係止窓に係合して締具205とコネクター215が連結される。更に、コネクター215の後部215Aに芯タンク104が圧入固着されて連結される。また、前記内軸118が軸筒102内に挿入され、内軸118の前部に先部材309を着脱可能に螺合することにより、先部材309の後端と内軸118の外段118Dにより軸筒102の内鍔102Cを挾持する。また、先部材309内には芯ホルダー10を内蔵した芯ガイド11が圧入固着される。
【0023】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、軸筒、チャック、芯タンク、締具、外筒、先部材、中駒といった部材は、複数の部材を固着して一体化し構成することも可能である。また、チャックを軸筒で受け止める手段は、チャックを直接軸筒に当接する構成に限定されるものではなく、他の部材を介して軸筒で受け止める構成でも何ら問題はない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
チャックで保持されなくなった短い芯を次の芯で押圧して筆記を行った場合でも、芯が回転したりバウンドすることなく筆記でき、残芯を非常に少なくできるノック式シャープペンシルに適用できる。
【符号の説明】
【0025】
2 軸筒
4 芯タンク
5 締具
6 リターンスプリング
7 チャック
7B チャック7の頭部
8 芯
9 先部材
10 芯ホルダー
13 コイルスプリング
102 軸筒
104 芯タンク
105 締具
107 チャック
107B チャック107の頭部
109 先部材
113 コイルスプリング
205 締具
207 チャック
207B チャック207の頭部
209 先部材
213 コイルスプリング
307 チャック
307B チャック307の頭部
309 先部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に摺動可能に軸筒内に内蔵された芯タンクに締具を連結し、この締具をリターンスプリングにより長手方向後方に付勢するとともに、長手方向に一定距離移動可能でかつコイルスプリングにより長手方向後方に付勢されたチャックを軸筒で受け止め、このチャックの頭部に締具を押圧することによりチャックが閉じて芯を保持し、更に、軸筒に連結された先部材の前部に芯を適度の力で保持する芯ホルダーを設けたことを特徴とするノック式シャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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