説明

ノンフライ即席麺の製造方法

【課題】 ノンフライ即席麺において、かんすいの添加量を増やしても、その蒸煮工程において起る「かんすい焼け」を抑制し、従って、従来の即席麺にはなかった多量のかんすいを原料に添加することができ、それによって本格的な中華麺の風味を有するノンフライ即席麺を得ることを目的とする。
【解決手段】 ノンフライ即席麺の製造工程において、原料粉に対して1.2〜2.5重量%のかんすいを添加して製麺し、麺線を蒸煮する工程中において、麺線に水分を付与する水分供給処理を1回以上行なってα化させ、乾燥させる。なお、水分供給処理としては、蒸煮工程中に麺線を水に浸漬して付与する方法が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風乾燥等の乾燥方法で製造されるノンフライ即席麺の製造方法に関し、特にかんすいの添加量が多く、中華麺風味に優れたノンフライ即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華麺は、麺原料にアルカリ性のかんすいを添加することで、麺に独特の風味や色調、コシを与えている。しかし、かんすいは多量に添加すると、その製造工程中に負荷される熱によって、「かんすい焼け」あるいは「アルカリ焼け」と呼ばれる褐変現象が生じる。この「かんすい焼け」は、小麦粉内の物質と、添加されたかんすいが、負荷される熱によって反応して起るものであるため、かんすいの添加量が多く麺pHが高いほど起り易く、また、負荷される熱量が高いほど起り易い。かんすい焼けを起こすと、麺線が褐変して見た目が悪いだけでなく、焦げ臭のような臭いがして中華麺らしい風味が失われ、ひどい場合にはえぐみが発生する。
【0003】
なお、「かんすい」とは、食品衛生法上においては「炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩のカリウム塩、ナトリウム塩の1種もしくは2種以上を含むもの」と規定されているが、本発明では、炭酸ナトリウム及び又は炭酸カリウム、あるいはこれら両者に少量のリン酸塩等を含むもので、アルカリ性が強く、麺に対して中華麺的なコシと風味を与えるのに適した、当業者が通常「かんすい」と呼んでいるものを「かんすい」と称する。
【0004】
「かんすい焼け」は、即席麺の場合、油で揚げるフライ麺においては、特にフライ処理時の高温によって生じる。そのため、フライ麺の場合、原料粉に対して添加されるかんすい量は、通常0.1〜0.3重量%程度で非常に少ない。一方、熱風乾燥麺やマイクロ波乾燥麺、あるいは凍結乾燥麺等、油で揚げていない、いわゆるノンフライ即席麺の場合は、フライ工程を有さないために、フライ麺に比べればかんすいの添加量を多くできるが、それでも原料粉に対して通常0.8重量%以下、多くとも1.0重量%以下程度の添加に抑えられている。
【0005】
ノンフライ即席麺の場合、本発明者らの検討の結果、「かんすい焼け」が起る原因は、乾燥時よりも蒸煮時(蒸しによるα化時)に起り易く、かんすいの添加量を上記以上に増量すると蒸煮時に焼けが起こって来る。蒸煮直後に焼けが目立たない場合でも、かんすいの添加量が多い場合には、蒸煮時に既にかんすい焼けが起こっており、乾燥することでその色調が目立ってくる。また、特に蒸煮工程において、過熱蒸気を用いて蒸煮する場合には、熱量が多いために、よりかんすい焼けを起こしやすい(なお、本発明で「蒸煮」とは、蒸気で加熱することをいい、飽和蒸気での加熱及び過熱蒸気での加熱を含む)。
【0006】
一方、街のラーメン店等で出されるラーメンは、原料粉に対し1.0〜2.0重量%程度のかんすいが添加されているものが多く、蒸煮せずに茹で調理されているため、かんすい焼けせずに中華麺風味が高い。このように、ラーメン店で食べられるような本格的な中華麺に比べると、即席麺は原料に添加できるかんすいの量が少なく、そのため中華麺らしい風味が得られにくい。そこで、即席麺においても、かんすいの添加量を増量し、街のラーメン店で出されるような、風味に優れた本格的な中華麺を得るための技術が求められていた。
【0007】
即席麺において、かんすい焼けを起こさずに、それでいてより本格的な中華麺風味を付与することを目的とする技術としては、特許文献1〜3がある。このうち特許文献1は、小麦粉にアルカリ剤を加えて加熱変性させたものを中華麺風味付与剤として喫食時に加えるものである。また、特許文献2は、常法によって製造した即席麺塊に後からかんすいを含む溶液を吸着させ、これを蒸煮するものである。特許文献3は常法によって製造した即席麺塊を105℃以上の高温に加温しておいて、これにかんすいを含む溶液を吸着させるものである。しかし、いずれの技術も原料に添加するかんすいの量を増やせるものではないため、根本的な解決になっておらず、より本格的な中華麺的風味を得るには改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−30937号公報
【特許文献2】特開2006−166766号公報
【特許文献3】特開2006−271274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、即席麺とりわけノンフライ即席麺において、その蒸煮工程において起る「かんすい焼け」を抑制し、従来の即席麺にはなかった量のかんすいを原料に添加しても、かんすい焼けしておらず、かんすいの添加量が多いために、本格的な中華麺の風味を有するノンフライ即席麺を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、即席麺の蒸煮方法について、種々検討を重ねた結果、かんすいを原料粉に多量に加えても、蒸煮工程中に麺線に水分を多く付与することで(シャワーや浸漬で麺線に液体で水分を供給することで)蒸煮工程におけるかんすい焼けを抑えられることに気付き、本発明の完成に至った。特に、蒸煮工程に過熱蒸気を用いる場合、熱量が多いためにかんすい焼けし易いが、水分供給量や供給回数を多くすることで、過熱蒸気を用いて蒸煮してもかんすい焼けが防止できた。
【0011】
すなわち、本発明は、ノンフライ即席麺の製造方法であって、原料粉に対して1.2〜2.5重量%のかんすいを添加して製麺し、蒸煮工程中において、麺線に水分を付与する水分供給処理を少なくとも1回以上行なうノンフライ即席麺の製造方法。である。
【0012】
具体的工程で記載すると、以下の通りである。
原料粉にかんすいを添加し、練り水と共に混練して、麺生地を調製する生地調製工程、
前記麺生地を圧延後、切出して生麺線とする切出し工程、
得られた前記生麺線を蒸してα化処理する蒸煮工程、
前記α化処理した麺をフライ以外の方法を用いて乾燥する乾燥工程、
の各工程を含むノンフライ即席麺の製造方法において、
前記原料粉に添加されるかんすいが、原料粉に対して1.2〜2.5重量%であり、
前記蒸煮工程には、工程中に麺線に水分を吸着させる水分供給処理を1回以上含むノンフライ即席麺の製造方法。である。
【0013】
なお、麺線を三層構造の麺線とした三層ノンフライ麺の場合には、外層よりも内層の方が原料粉に対するかんすいの添加量を多くすることで、よりかんすい焼けを防止できる。具体的工程でいうと、前記の生地調製工程において、内層用麺生地に添加するかんすいの添加量(対原料粉比)を1.2〜2.5重量%の範囲で外層用麺生地よりも多くして、内層用麺生地と外層用麺生地を作成し、それぞれの生地を圧延して内層麺帯と外層麺帯を作成し、これを積層して、圧延、切出して生麺線とし、以降前記工程と同様に製造する。なお、この場合、麺線全体としてかんすいの添加量が対原料粉1.2〜2.5重量%となるようにすれば、高い中華麺風味を有しながらかんすい焼けもさらに防止でき、より好ましい。
【0014】
また、前記水分供給処理は、蒸煮工程中に蒸煮を一時中断して麺線を水溶液に浸漬する方法が麺線に水分を多く吸着させることができて最も好ましいが、蒸煮を中断して麺線に水溶液をシャワーして行なう処理、もしくは、蒸煮を連続して行いながら当該蒸煮中に断続的に麺線に水溶液をシャワーする処理も例示できる。
【0015】
また、前記水分供給処理において、麺線に付与する水分量としては、蒸煮工程中に行われる水分供給処理の1回毎に(複数回行う場合はその内の1回毎に)、その1回の処理の直前よりも、麺重量が好ましくは10%以上上昇するように、より好ましくは10〜60%上昇するように水分を吸着させるのがよい。また、特に好ましくは、蒸煮工程中に最初に行う(1回目)水分供給処理においては、該最初の処理によって20%以上麺重量が上昇するように行うのが良い。
【0016】
また、水分供給処理の頻度としては蒸煮開始から好ましくは50秒以内に、特に好ましくは30〜40秒程度に、2回目以降を行う場合は以降5秒〜50秒程度の間隔で行うのがよい。そして、蒸煮工程を終了した麺線の水分含量が40〜55重量%であることが好ましい。
これらの条件であれば、麺が触れる温度が125℃〜220℃といった非常に高い温度の過熱蒸気で蒸煮する場合であっても、かんすい焼けを抑制しつつ、蒸煮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ノンフライ即席麺において、その製造工程中において起る「かんすい焼け」を抑制し、従来の即席麺にはなかった量のかんすいを原料に添加しても、かんすい焼けしていないノンフライ即席麺を得ることができる。そして、かんすいの添加量を多くすることで、従来の即席麺では不足していた中華麺風味が非常に高い本格的な即席麺が得られる。
特に、蒸煮工程において過熱蒸気を用いる場合、高い熱量によってかんすい焼けを起こしやすいが、本発明によれば過熱蒸気を用いてもかんすい焼けを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を製造工程順に説明する。
本発明においては、原料粉にかんすいを添加するが、ノンフライ即席麺において従来添加されていた量より多い、対原料粉1.2〜2.5重量%、好ましくは1.5〜2.4重量%のかんすいを添加する。後の蒸煮工程における蒸煮時間や温度条件にもよるが、対原料粉1.2重量%の添加量は、飽和蒸気で蒸煮する場合には褐変が目立ち始める量、過熱蒸気によって蒸煮する場合には商品化が困難なレベルに褐変するかんすいの添加量であり、即席麺としては極めて高い、又は従来商品には無かった添加量である。
【0019】
「かんすい」は食品衛生法の規定では、前述した通り、炭酸塩の他リン酸塩が含まれるが、リン酸塩はpHが高くなく、中華麺風味付与の効果は低い。本発明においては、一般的に「かんすい」として市販されている、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム、あるいはこれらに少量のリン酸塩等を加えた「かんすい」を用いる。なお、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、もしくは両者を任意の割合で混合して調合したものを用いても良く、このように、製造者等において麺の製造前に調整したものも本発明の「かんすい」として扱う。
【0020】
原料粉としては、小麦粉、または必要に応じて小麦粉に澱粉、ソバ粉等穀粉を加えて用い、本発明では、このような原料粉に対して、かんすいを粉末で、又は練り水に溶かして添加する。なお、グルテン、卵白、食塩、増粘類、色素等の副原料も適宜添加することができる。
上記のように原料粉に練り水を加えた後、常法によって生麺線を得る。具体的には、ミキサーでよく混練後、複合、圧延、切り出しして製麺するが、混練後エクストルーダーを用いて押し出して麺線として製麺しても良い。
三層構造の麺線とする場合は、外層、内層、外層の麺帯をそれぞれ別途作成し、圧延時に重ね合わせて1枚の麺帯とした後、さらに薄く圧延した後切り出せば良い。この場合、内層の麺帯とする原料粉にかんすいを1.2〜2.5重量%の高含量で添加し、一方、外層の原料粉には外層を内層よりも少ない添加量に留めることで、よりかんすい焼けを防止できる。
【0021】
このようにして製造した麺線の太さは特に限定されないが、後の蒸煮工程において過熱蒸気を用いる場合には、麺厚2mmを超えるような、通常の麺よりも太い麺でも湯戻し可能とすることができるため、蒸煮工程に過熱蒸気を用いる場合は、麺厚を厚くすることができる。
【0022】
以上のようにして製造した生麺線は、蒸煮(蒸し)によってα化するが、かんすい焼けを防止し、優れた中華麺風味を付与するために、蒸煮工程中に麺線に液体で水分を付与して、吸着させる処理を行なう。温度、蒸気流量等の蒸煮条件にもよるが、1回の水分供給処理によって、麺重量がその処理の直前よりも好ましくは10〜60%程度増えるように水分を付与するのが良い。
【0023】
また、特に好ましくは、蒸煮工程中に最初に行う(1回目)水分供給処理においては、該処理によって20%以上麺重量が上昇するように行うのが良く、このように充分に水分を付与することで、かんすいの添加量を上限値に近くしても、商品化可能なレベルにかんすい焼けを抑制できる。なお、水分供給処理は蒸煮工程の時間が短いものであれば、途中に1回でも可能であるが、複数回行うことが好ましい。
また、この水分供給処理は、麺線に焼けが起こり始めるまでの頻度で行えば良いが、過熱蒸気を用いる場合であっても、1回目を蒸煮開始後50秒以内、その後概ね5〜50秒の間隔で、特に好ましくはいずれも30〜40秒程度の間隔で行なうのが良い。
【0024】
なお、上記の具体的な水分供給処理の条件は、いずれも好ましい方法を記載したのであって、例えば、水分供給処理を極めて頻繁に行う場合や、かんすい添加量が下限に近い場合等の場合には、1回の処理毎に麺線に付与する水の量を減らすことができ、そのような場合には、必ずしも1回の処理毎に麺重量を10%以上上昇させなくても、また1回目の処理で20%以上上昇させなくとも良い場合がある。しかしそのような場合においても、原料粉にかんすいを多く添加した場合、蒸煮工程中に水分含量が上昇するようにして麺線を蒸煮することが重要であり、蒸煮工程終了時の水分含量が概ね40重量%以上になるように、水分を付与しつつ蒸煮するのが良い。
【0025】
蒸煮の条件としては、飽和蒸気での蒸煮と、過熱蒸気での蒸煮が考えられるが、過熱蒸気の場合には熱量が多く、水分供給を長い時間行なわないと麺線の水分含量が低下し、蒸煮というよりは乾燥状態になってしまう。そのため、かんすい焼け防止の目的だけではなく、蒸煮による麺線のα化の目的のためにも、水分供給の処理を行なう。なお、過熱蒸気を用いる場合、高温過ぎると麺の乾燥スピードが速くなりすぎてしまうので、使用できる過熱蒸気の温度としては、220℃以下が好ましく、特に復元性がよく品質も良い麺を得るための最良の温度としては、麺線が触れる温度が125〜220℃の過熱蒸気を、麺線に吹き付けて用いることが好ましい。
【0026】
水分供給の方法としては、できるだけしっかりと麺線に水分を付与するため、蒸煮を中断して水槽に麺を浸漬するのが最も良く、1回の浸漬時間を5秒〜30秒程度、好ましくは10〜30秒程度充分に行なうのが良い。しかし、蒸煮を中断してシャワーを掛ける、あるいは蒸気庫内に水シャワーのノズルを設置し、蒸煮中の麺にシャワーして水分を供給する等の方法も可能である。供給する水は冷水でも可能だが、温度が低いと麺線の温度が低下し、α化が不充分となるので、好ましくは60℃以上の湯又は熱湯とするのが良い。また、吸収させる水としては、水に食塩や乳化剤等を溶解したものを用いることもできる。
具体的に本発明の蒸煮工程は、工程の途中に水分供給工程を1回以上含むもので、例えば、「蒸し(飽和蒸気及び又は過熱蒸気)→水分供給(浸漬及び又はシャワー)→蒸し」あるいは、「蒸し→水分供給→蒸し→水分供給→蒸し」のように行うのが良い。
【0027】
以上のようにして、水分を付与しつつ蒸煮した本発明の麺は、蒸煮終了後の麺線の水分含量としては約40〜55重量%、好ましくは45〜55%となるように蒸煮工程を終了させるのが良い。続いて、蒸煮した麺線は1食分にカットし(カットは切り出し後以降、他の工程でも可能である)、ノンフライ麺の各種方法によって乾燥させる。なお、乾燥前に、ほぐれ剤や着味液の付与、あるいは、蒸煮後に茹で工程を加える、もしくは機械的なほぐし工程を付加してもよい。
【0028】
乾燥方法としては、ノンフライ麺で最も一般的な熱風乾燥の他、マイクロ波を用いるマイクロ波乾燥、非常に高温の高速のエアーを吹き付けて乾燥する高温気流乾燥、低温で乾燥する方法や凍結乾燥法等いずれも可能で、熱風乾燥が好ましいが、これらを組合わせて用いることもできる。ただし、フライ乾燥においては、本発明のように原料粉に1.2重量%以上もかんすいが原料に添加されている状態では、フライ時の高温でかんすい焼けを起こすので、フライ乾燥は適用されない。
【0029】
このようにして概ね水分含量を12%以下に乾燥したノンフライ即席麺は、包装して、カップ麺又は袋麺として商品化される。いずれの場合でも、熱湯注加又は茹でて喫食する際に、かんすい焼けしておらず、中華麺風味が強い本格的なノンフライ即席麺となる。
【実施例】
【0030】
<実験1>
蒸煮工程の途中で行う水分供給処理の有無によって、かんすい焼けが起こるか否かをかんすいの添加量を変えて以下の通り実験した。
【0031】
実施例1(かんすい1.2%)
小麦粉900gに澱粉100gを混合して原料粉とした。これに12gのかんすい(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)と、食塩20g、リン酸塩2.5g、乳化油脂20gをメスアップして400mlの練り水としたものを加え、ミキサーで15分間よく混練し麺生地とした。この生地を複合圧延して麺帯とし、連続圧延して麺厚を1.7mmとし、切刃16番で切り出して、生麺線を得た。この生麺線500gを切断し、麺線の水分含量を測定した。
【0032】
この生麺線を、連続蒸し機で蒸気流量210kg/hで170℃(麺線が触れる温度)の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた。蒸気庫から出して直ぐに麺重量を測り、1l中に食塩10gとほぐれ剤4gを溶解した85℃の水溶液に20秒浸漬して水分供給処理を行ない、よく水切りして麺重量を測定した。続いて再び蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた。蒸気庫から出して直ぐに麺重量を測り、20秒間前記水溶液に再浸漬して2回目水分供給処理を行ない、よく液切りして、麺重量を測定した。さらに再び、蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けて蒸煮工程を完了し、麺重量を測定すると共に、実際の麺の水分含量を測定した。
【0033】
これを95℃の熱水に30秒浸漬し、1l中に食塩50g、ほぐれ剤10g、調味料6gを溶解した60℃の着味液に7秒間浸漬して着味して液切りし、1食分約180gにカットして上径約140mm、下径約110mm、高さ約40mmのリテーナに投入し、85〜90℃の熱風乾燥機で55分間乾燥した。乾燥後の麺重量は平均69gであった。このサンプルを実施例1とする。
【0034】
比較例1−1
上記実施例1における蒸煮工程において、蒸気庫から出して行なった水溶液への浸漬処理(水分供給処理)を行なわずに、その他は実施例1同様に製造したものを比較例1−1とした。すなわち、蒸煮工程として、蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた後、蒸気庫から出して水分供給せずに、30秒後再び同条件で過熱蒸気を30秒吹き付け、さらに蒸気庫から出して水分供給せずに、さらに再び30秒後同条件で過熱蒸気を30秒吹き付けて蒸煮工程とした。
【0035】
比較例1−2
上記比較例1−1では、過熱蒸気を吹き付けて30秒ごとに蒸気庫外に出して、再び過熱蒸気を吹き付ける工程を採ったが、蒸気庫外に出さずに連続して1分30秒間、蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線吹き付けて蒸煮工程としたものを比較例1−2とした。その他の工程については比較例1と同じ。
【0036】
実施例2(かんすい1.5%)
上記実施例1におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し15g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については実施例1と同様に行なったものを実施例2とした。
【0037】
比較例2−1
上記比較例1−1におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し15g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については比較例1−1と同様に行なったものを比較例2−1とした。
【0038】
比較2−2
上記比較例1−2におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し15g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については比較例2と同様に行なったものを比較例2−2とした。
【0039】
実施例3(かんすい2.1%)
上記実施例1におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し21g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については実施例1と同様に行なったものを実施例3とした。
【0040】
比較例3−1
上記比較例1−1におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し21g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については比較例1−1と同様に行なったものを比較例3−1とした。
【0041】
比較例3−2
上記比較例1−2におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し21g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については比較例1−2と同様に行なったものを比較例3−2とした。
【0042】
実施例4(かんすい2.4%)
上記実施例1におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し24g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については実施例1と同様に行なったものを実施例4とした。
【0043】
比較例4−1
上記比較例1−1におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し24g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については比較例1−1と同様に行なったものを比較例4−1とした。
【0044】
比較例4−2
上記比較例1−2におけるかんすいの量を原料粉1000gに対し24g(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)として、その他の工程については比較例1−2と同様に行なったものを比較例4−2とした。
【0045】
上記、実施例1〜4比較例1〜4の即席麺塊について、麺線の焼け具合を熟練した4名のパネラーでそれぞれ5点満点で評価した。
結果を表1に示す。なお、商品化を考え、4名の平均点が3点を越えるものを合格品とした。
評価点は次の通り、
1:非常に褐変していて焦げ臭がある。
2:商品化不可能な状態に褐変している。
3:従来品に比べ、明らかに褐変している。
4:ほとんど褐変は無い。
5:褐変は全く無い。
【0046】
また、上記各実施例において、蒸煮工程中の水分供給処理(水浸漬)によって麺線に保持される水の量を知るために測定した麺線の重量変化について表2に示す。なお、表2の重量変化は切り出し後500gの重量を100として記載している。また、実際の水分含量については、切り出し後の麺と3回目蒸煮後について測定しているので、表2に併せてその数値を記載した。表2の結果からわかるように、過熱蒸気での蒸煮時に、蒸煮によって麺重量はほとんど上昇しておらず、1回目の水分供給処理によって麺重量は20〜30%、2回目の水分供給によって麺重量は10〜20%上昇していた。
【0047】
表1の結果において、実施例4のかんすい添加量2.4重量%では、まだ若干余裕が見られたので、対原料粉2.5重量%の添加までは可能であると判断した。また、実施例1,2,3,4の各サンプルの麺について、それぞれ丼型のスチロール製の容器にいれ、熱湯400mlを注加し、蓋をして4分間放置して喫食した。その結果、いずれも従来の即席麺にない高い中華麺風味を有する好ましいものであり、特に実施例3,4の製品は強い中華麺風味を有していた。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
<実験2>(1回目の水分供給処理における水分付与量を変更した試験)
実験1において、1回目の水分供給処理(1回目蒸煮後の処理)によって、当該処理の前の麺重量に対して増加した重量は、それぞれ、実施例1が21重量%、実施例2が22重量%、実施例3が25重量%、実施例4が24重量%であった。また、2回目の処理では当該2回目の処理前の麺重量に対してそれぞれ、13、11、13、11(重量%)増加している。シンプルな系で考えるため、最もかんすい焼けが起り易いかんすい添加量2.4%の条件において、1回だけの水分供給処理として、かんすい焼けが抑制できるか否か、水分供給量を換えて実験を行った。
【0051】
具体的には、実験1の実施例4と同様の配合と製法で生麺線を得、この生麺線を270〜280gに切断した。この生麺線の水分含量は34.5重量%であった。蒸煮条件は実験1と同じく蒸気流量210kg/h、170℃の過熱蒸気を30秒吹き付け(1回目蒸煮)、蒸気庫から出して麺重量を測定した。続いて行う水分供給処理の方法を変えて、麺線に付与される水分量を換えた実験を行った。まず実施例4と同じ水溶液を軽く水シャワーすることで増加した麺重量が9%となったもの(サンプル1)、及び浸漬方法によって、該浸漬時間の長短で増加した麺重量がそれぞれ33%(サンプル2)、44%(サンプル3)となったものである。これを、再び蒸気流量210kg/h、170℃の過熱蒸気を30秒吹き付け(2回目蒸煮)、蒸煮工程を終了した。この麺重量を再び測定すると共に、実際の麺の水分含量を測定した。
【0052】
これら、3つのサンプルをそれぞれ、実験1と同様に着味、1食分カット、熱風乾燥して、乾燥後の麺線の状態を実験1同様に5点満点で評価した。結果を表3に示す。表中各サンプルの左側に数値は、切り出し後の麺重を100とした時の麺重の推移を示したものである。なお、サンプル1では評価が好くなかったが、かんすいの添加量が少ない場合や、水分供給処理を30秒ではなく頻繁に行う等に変更すれば、さらに良い評価のものが得られるものと考えられる。
【0053】
【表3】

【0054】
<実験3>
実施例5(飽和蒸気蒸煮)
実験1の実施例3と同様にかんすい添加量を対原料粉2.1重量%とした麺において、蒸煮工程に過熱蒸気の代わりに蒸気流量240kg/h、100℃の飽和蒸気を用いて蒸煮した。すなわち、上記実験1の実施例3同様に、かんすい量2.1重量%の麺を製造したが、蒸煮工程において過熱蒸気を飽和蒸気に変えて(飽和蒸気30秒蒸煮→浸漬20秒→飽和蒸気30秒→浸漬20秒→飽和蒸気30秒)、実施例5の麺を得た。
【0055】
比較例5−1
上記実施例5における蒸煮工程において、蒸気庫から出して行なった水溶液への浸漬処理(水分供給処理)を行なわずに、その他は実施例5同様に製造したものを比較例5−1とした。すなわち、蒸煮工程として、蒸気流量240kg/hで100℃の飽和蒸気で蒸煮後、蒸気庫から出して水分供給せずに、再び飽和蒸気で30秒蒸煮し、さらに蒸気庫から出して水分供給せずに、さらに再び飽和蒸気で30秒蒸煮して蒸煮工程とした。
【0056】
比較例5−2
上記比較例5−1では、飽和蒸気での蒸煮30秒ごとに蒸気庫外に出して、再び飽和蒸気で30秒蒸煮する方法を採ったが、蒸気庫外に出さずに連続して1分30秒間、蒸気流量240kg/hで100℃の飽和蒸気で蒸煮したものを比較例5−2とした。
【0057】
上記、実施例5比較例5−1、5−2の即席麺塊について、実験1同様に麺線の焼け具合を熟練した4名のパネラーでそれぞれ5点満点で評価した。
結果を表4に示す。
【0058】
また、実施例5における、蒸煮工程中の水浸漬による麺線の重量変化は、次の通りであった。
切り出し後麺線重量を100とする時、1回目蒸煮後106、1回目浸漬後133、2回目蒸煮後134、2回目浸漬後149、3回目蒸煮後151であった。水分含量の実測値は、切り出し後麺線で水分33.9%、3回目蒸煮後麺線で52.0%であった。
【0059】
この実施例5の麺と、比較例5−2の麺をそれぞれ丼型のスチロール製の容器にいれ、熱湯400mlを注加し、蓋をして4分間放置した。5分後4人のパネラーで喫食したところ、全てのパネラーが実施例5のサンプルの方が、中華麺風味が強く好ましいと判断した。
【0060】
【表4】

【0061】
実施例6(三層構造の麺)
小麦粉850gに澱粉150gを混合して内層用原料粉とした。これに15gのかんすい(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)と、食塩20g、リン酸塩2.5gをメスアップして400mlの練り水としたものを加え、ミキサーで15分間よく混練し内層用麺生地とした。この生地を圧延して内層麺帯とした。
小麦粉900gに澱粉100gを混合して外層用原料粉とした。これに9.5gのかんすい(炭酸ナトリウム1:炭酸カリウム1)と、食塩20g、リン酸塩2.5g、乳化油脂20gをメスアップして390mlの練り水としたものを加え、ミキサーで15分間よく混練し外層用麺生地とした。この生地を圧延して外層麺帯とした。
【0062】
次いで、外層:内層:外層の麺帯を麺厚比1:2:1で複合し、連続圧延して麺厚を1.7mmとし、切刃16番で切り出して、生麺線を得た。
この生麺線を、連続蒸し機で蒸気流量210kg/hで170℃(麺線が触れる温度)の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた。次いで、1l中に食塩10gとほぐれ剤4gを溶解した85℃の水溶液に5秒浸漬して水分供給処理を行ない、よく水切りした。続いて再び蒸気流量210kg/hで170℃の過熱蒸気を麺線に30秒吹き付けた。蒸気庫から出して5秒間前記水溶液に再浸漬して2回目水分供給処理を行ない、よく液切りした。次いで、今度は蒸気流量240kg/hで100℃の飽和蒸気で30秒蒸して蒸煮工程を完了した。
【0063】
これを90℃の熱水に30秒浸漬し、1l中に食塩50g、ほぐれ剤10g、調味料6gを溶解した60℃の着味液に5秒間浸漬して着味して液切りし、1食分176gをカットして上径約140mm、下径約110mm、高さ約40mmのリテーナに投入し、85〜90℃の熱風乾燥機で55分間乾燥した。乾燥後の麺重量は69gであった。このサンプルを実施例6とした。
【0064】
この実施例6の麺はかんすい焼けしておらず、好ましい色調のものであった。この麺を丼型のスチロール製の容器にいれ、熱湯400mlを注加し、蓋をして5分間放置した。5分後に喫食したところ、中華麺風味が強く好ましいものであった。
【0065】
<産業上の利用可能性>
本発明の製造方法によって製造されるノンフライ即席麺は中華麺風味に優れた麺となるので、本発明は即席麺の品質向上において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノンフライ即席麺の製造方法であって、
原料粉に対して1.2〜2.5重量%のかんすいを添加して製麺し、
蒸煮工程中において、麺線に水分を付与する水分供給処理を少なくとも1回以上行なうことを特徴とするノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項2】
前記ノンフライ即席麺が三層構造の麺線であり、
該三層構造の麺線において、外層よりも内層の方が原料粉に対するかんすいの添加量が多い、請求項1に記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項3】
前記水分供給処理が、蒸煮を中断して麺線を水に浸漬するか又は水をシャワーする処理、もしくは、蒸煮を連続して行いながら当該蒸煮の途中で麺線に水をシャワーする処理である請求項1又は2に記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項4】
前記水分供給処理は、1回の処理毎に当該各処理の直前よりも麺重量が10%以上上昇するように、麺線に水分を付与する処理である請求項1ないし3のいずれかに記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項5】
前記水分供給処理において、1回目に行われる水分供給処理は、当該1回目の水分供給処理の直前よりも麺重量が20%以上上昇するように、麺線に水分を付与する処理である請求項1ないし4のいずれかに記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項6】
前記1回目に行われる水分供給処理が、蒸煮開始後50秒以内に行われる請求項5に記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項7】
前記蒸煮工程後の麺線の水分含量が40〜55重量%である請求項1ないし6のいずれかに記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項8】
前記蒸煮工程が過熱蒸気を用いて蒸煮する工程である請求項1ないし7のいずれかに記載のノンフライ即席麺の製造方法。
【請求項9】
前記過熱蒸気が、麺線が触れる温度として125℃〜220℃である請求項8に記載のノンフライ即席麺の製造方法。