説明

ノートパソコン用化粧フィルム、その化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板及びその化粧金属板を用いたノートパソコンのトップカバー又はキーボード枠

【課題】静電気による埃付着等が少なく、帯電防止性に優れたノートパソコン用化粧フィルム、その化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板及びその化粧金属板を用いたノートパソコンのトップカバー又はキーボード枠を提供する。
【解決手段】下層から順次、顔料を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層4、顔料を含有したポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層3、表面抵抗率が1013Ω/□以下になるように耐電防止剤を含んだ透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層5とからなるノートパソコン用化粧フィルム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノートパソコン用化粧フィルム及びその化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板に関し、より詳しくは、特に意匠性を要求される用途に用いられる、帯電防止性あるいは抗菌性などの機能性に優れ、かつ耐汚染性に優れたノートパソコン用化粧フィルム、その化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板及びその化粧金属板を用いたノートパソコンのトップカバーやキーボード枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノートパソコン用に使用される化粧板としては、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性を向上した有機樹脂からなる基材が検討され、用いられてきた。 例えば、特許文献1では、芳香族ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのブレンド樹脂などが検討されている。
【0003】
しかしながら、今日資源の有効利用が叫ばれている中、上記のような有機樹脂のブレンド樹脂を基材として用いた場合、この基材を他の用途に転用することが困難であり、リサイクル率が低く、石油製品などの資源の有効利用が困難である。
【0004】
そこで、化粧金属板など他の材料を用いてリサイクル率が上げることが検討されている。しかし、他の材料を使ってリサイクル率を向上しただけでは、図4に示した高い意匠性が要求されるノートパソコンのトップカバーやキーボード枠などには適用できない。
また、有機樹脂を塗装した金属板を適用する場合、金属板のみを加工した後、有機樹脂を塗装し、乾燥するので、製造工程が多くなり、乾燥時、有機溶剤が飛散して、有機樹脂を焼き付けるので、作業環境が望ましくないという問題もある。
なお、ここで、ノートパソコンのトップカバーとは、液晶ディスプレイ取り付け側の開閉部の外側の天板をいう。また、キーボード枠とは、ノートパソコンの本体側に取り付けられているキーボード部の周囲に設けられたカバーをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−95046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のリサイクル性及び意匠性の問題を解決するだけでなく、製造工程が少なく、作業環境が優れることを目的として、かつその他に静電気発生の少ない帯電防止性、耐抗菌性などの機能性に優れ、かつ薄膜での製膜性あるいはエンボス加工性に優れたノートパソコン用化粧フィルムおよびその化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板、その化粧金属板を用いたノートパソコンを提供することを課題とする。特に、リサイクル性及び意匠性に優れたトップカバー及びキーボード枠を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のノートパソコン用化粧フィルムは、下層から順次、顔料を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層、顔料を含んだポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層、帯電防止剤を含み、かつ表面抵抗率が1013Ω/□以下である透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層とからなることを特徴とする(請求項1)。
また、本発明のノートパソコン用化粧フィルムは、下層から順次、顔料を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層、顔料を含んだポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層、透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層、さらに、帯電防止剤を含み、かつ表面抵抗率が1013Ω/□以下である有機樹脂からなる保護層を有することを特徴とする(請求項2)。
さらに、本発明のノートパソコン用化粧フィルム(請求項1)は、前記表面層の表面に、帯電防止剤を含み、かつ表面抵抗率が1013Ω/□以下である有機樹脂からなる保護層を有することを特徴とする(請求項3)。
前記化粧フィルム(請求項1〜3)は、表面層が滑剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤及び芳香剤の中から選ばれた少なくとも1種以上を含有することを特徴とする(請求項4)。
前記化粧フィルム(請求項2〜4)は、保護層が抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤及び芳香剤の中から選ばれた少なくとも1種以上を含有することを特徴とする(請求項5)。
前記化粧フィルム(請求項1〜5)は、ポリエステル樹脂フィルムからなる表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする(請求項6)。
前記化粧フィルム(請求項1〜6)は、ポリエステルポリウレタン樹脂が、イソシアネート変性ポリマーであることを特徴とする(請求項7)。
前記化粧フィルム(請求項1〜7)は、前記表面層にエンボス加工が施されてなることを特徴とする(請求項8)。
【0008】
ノートパソコン用化粧金属板は、前記化粧フィルム(請求項1〜8)の接着樹脂層の面を、接着剤を介して基板に積層してなることを特徴とする(請求項9)。
前記化粧金属板(請求項9)は、前記基板が金属板であることを特徴とする(請求項10)。
ノートパソコンのトップカバー又はキーボード枠は、前記化粧金属板(請求項10)を加工してなることを特徴とする(請求項11)。
【発明の効果】
【0009】
本発明のノートパソコン用化粧フィルムは、下層から順次、顔料を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層、顔料を含んだポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層、帯電防止剤を含み、表面抵抗率が1013Ω/□以下である透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層からなっているので、該化粧フィルムの表面が静電荷を帯びることない。また、表面層は、化粧フィルムの表面に比較的薄く形成されているので、高価な帯電防止剤をより少ない添加量で、効果的に帯電防止作用などの機能を発揮することができる。また、接着樹脂層及びその下層の基材樹脂層が顔料を含んでいるので、隠蔽性及び意匠性に優れた化粧フィルムとすることができる。接着樹脂層は表面層と基材樹脂層との中間にあるので、顔料をより多く含ませることが可能となり、耐衝撃性、耐薬品性及び耐汚れ性などの特性を維持するとともに、より薄い膜厚で隠蔽性を持たせることができる。
このように隠蔽性、意匠性などの特性に優れた化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板は、ほとんど帯電することがなく、経済的であり、ノートパソコンに適用できる。特に、意匠性が要求されるノートパソコンの部品であるトップカバー又はキーボード枠に適用できる。
また、表面層の上に、保護層を設けた場合、保護層に帯電防止剤を添加した方がより効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のノートパソコン用化粧フィルムの実施形態1を示す概略断面図である。
【図2】本発明のノートパソコン用化粧フィルムの実施形態2を示す概略断面図である。
【図3】実施形態1の化粧フィルムを接着剤を介して積層したノートパソコン用化粧金属板の例を示す断面図である。
【図4】ノートパソコンの概略図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、有機樹脂のみからなるノートパソコンの部品、例えばトップカバーあるいはキーボード枠の代替として、リサイクル率が高く、意匠性等の優れるノートパソコン用化粧金属板について鋭意検討した結果、下層から順次顔料を含んだポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層4、顔料を含んだポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層3、さらに帯電防止剤を含み、表面抵抗率が1013Ω/□以下である透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層5からなる化粧フィルムを、金属板からなる基板上に接着剤を介在させて、積層することにより得られることが判明した。なお、表面層5の表面には、保護層8が塗布されていても良い。
【0012】
以下に本発明についてその内容を説明する。図1〜図2はそれぞれ本発明のノートパソコン用化粧フィルムの実施形態1及び実施形態2を示す断面図、図3は実施形態1の化粧フィルムを接着剤を介して積層したノートパソコン用化粧金属板の例を示す断面図である。図1〜図3において、1はノートパソコン用化粧フィルム、2は基板、4は基材樹脂層、3は接着樹脂層、5は表面層、8は保護層、10はノートパソコン用化粧金属板をそれぞれ表している。
実施形態1のノートパソコン用化粧フィルム1は、図1に示すように、基材樹脂層4の上面に接着樹脂層3が積層されており、接着樹脂層3の上面に表面層5が積層されて形成されている。表面層5の表面には図示していないがエンボス加工が施されてもよい。
また、実施形態2のノートパソコン用化粧フィルム1は、図2に示すように、表面層5の上面に保護層8が積層されて形成されている。
【0013】
図3は、図1に示したノートパソコン用化粧フィルム1を基板2に積層した化粧金属板10の断面構成を示す。この場合、接着剤層7を基板2と基材樹脂層4の間に介して接着する。なお、図2に示したノートパソコン用化粧フィルム1を基板2に積層する場合、図示しないが、基材樹脂層4を基板2側に向け、接着剤層7を介して化粧フィルム1を積層して化粧金属板10を得る。
【0014】
本発明の基材樹脂層4に用いる樹脂フィルムとしては、0.7〜2.0dl/gの固有粘度(IV値)を有するポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましいが、固有粘度は製膜性の面から1.70dl/g以下、耐水経時性(耐水劣化性)の面から1.35dl/g以上であることがより好ましい。ポリブチレンテレフタレート以外にポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンテレフタレートあるいは共重合ポリブチレンテレフタレートを用いることができる。
【0015】
また、基材樹脂層4は、押出機を用いて製膜する際に、樹脂中に着色顔料を混練する。顔料として、公知の無機顔料または有機顔料を使用することができるが、製膜時、耐熱性が要求される場合は無機顔料が望ましい。無機顔料としては、例えば群青、紺青、酸化コバルト、二酸化チタン、チタニウム・イエロー、チタンブラック、コバルト青あるいは、モリブデン赤などが適用できる。また、有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、キナクリドン、ジオキサジンバイオレットあるいは、ペリノン・ペリレンなどが適用できる。
顔料は、40質量%以下含有することが望ましい。40質量%を越えると、製膜性、下層の接着樹脂層3との密着性の点で問題がある。
【0016】
基材樹脂層4の厚みは、薄くしても製膜性及びエンボス性の点で困難となる。すなわち薄すぎる場合、フィルムに成形しにくく、エンボス加工を施しても表面の凹凸のばらつきが大きく、顔料を添加しても顔料の色を忠実に示さない。また、顔料などの添加剤が樹脂の中に入っていると、オリゴマーが形成しやすく、製膜の点で問題となる。
発明者らが鋭意検討した結果、製膜性及びエンボス性を考慮すると、厚みは少なくとも40μm必要である。この厚み未満の場合、製膜性の点で問題がある。厚みの上限は、経済性を考慮しなければ厚くても構わない。経済性をあえて考慮すると、厚みの上限は200μmである。
【0017】
本発明の接着樹脂層3に用いる樹脂としては、ポリエステルポリウレタン樹脂を用いる。ポリエステルポリウレタン樹脂としては、イソシアネート変性ポリマーなどからなるポリエステルポリウレタン樹脂を用いることができる。例えば、ジイソシアネートと2官能以上のポリエステルとの反応形成物が適用できる。基材樹脂層4、接着樹脂層3と表面層5の3層からなる化粧フィルムの場合、接着樹脂層3の厚みは、基材樹脂層4と表面層5の接着性の点で、少なくとも3μm以上必要である。この場合、厚い方は経済性を損なわない限り厚くてもかまわない。あえて経済性を考慮すると、厚みの上限は30μmである。
【0018】
接着樹脂層3に含有させる顔料としては、公知の無機顔料または有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、例えば群青、紺青、酸化コバルト、二酸化チタン、チタニウム・イエロー、チタンブラック、コバルト青、モリブデン赤あるいは雲母などが適用できる。また、有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、キナクリドン、ジオキサジンバイオレットあるいは、ペリノン・ペリレンなどが適用できる。また、ポリエステル樹脂にアルミニウムを蒸着した光輝性を有するもの、あるいはアルミニウムなどの金属性の光輝性顔料などの光輝性を有する顔料を用いると、下層の顔料を含んだ基材樹脂層との組み合わせで、意匠性に優れたノートパソコン用化粧フィルムとなり、さらにその化粧フィルムを金属板に積層したノートパソコン用化粧金属板は意匠性に優れたものとなる。これらの光輝性を有する顔料は、意匠性あるいは接着性の点で、平均粒径が15〜45μmの範囲の板状のものが望ましい。15μm未満では、意匠性の点で好ましくなく、45μmを超えると、接着性の点で望ましくない。顔料は、乾燥後の接着樹脂中1〜10質量%含有することが望ましい。10質量%を越えると、接着性の点で問題がある。
【0019】
表面層5、接着樹脂層3、基材樹脂層4の3層のノートパソコン用化粧フィルム1を基板2に積層する場合にも、基材樹脂層4と基板2の間に接着剤層7を介して接着させる。
接着剤層7に用いる接着剤としては、一般的な接着剤、例えば、ポリエステル系、アクリル系、酢酸ビニル樹脂系、エチレン−ビニルアセテート樹脂系、尿素樹脂系、ウレタン樹脂系などのエマルジョン型接着剤が、火気に対して安全で、臭気もなく、価格的にも安価なため好ましく用いられる。
【0020】
表面層5としてはポリエチレンテレフタレートをはじめとするポリエステル樹脂のフィルム、ポリカーボネートフィルム、またはアクリル樹脂フィルムを用いることが好ましく、なかでもポリエステルフィルムを用いることがより好ましい。ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートや、ポリエチレンテレフタレートの多価酸成分、または多価アルコール成分の一部を他の成分で置き換えた結晶性の共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。特に、無延伸のポリブチレンテレフタレートを用いた場合、エンボス加工が施しやすい。基材樹脂層4を同じポリブチレンテレフタレートにすると、基材樹脂層4との接着性およびエンボス加工性等の点でより望ましい。このポリエステル樹脂フィルムは、可塑剤及びハロゲン属元素を含まないポリエステル樹脂からなることを特徴とする。さらに、表面層5の表面に選択的にエンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、3層のノートパソコン用化粧フィルム1を製膜した後、あるいは3層のノートパソコン用化粧フィルム1上に保護層8を塗布した後に、これらの化粧フィルムを基板上に積層した後に加熱して行う。
【0021】
また、機能を発現させるための添加剤として、滑剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤及び芳香剤の中から選ばれた少なくとも1種以上を0.1質量%以上含有させても良い。その場合、添加剤の含有率は最大25質量%とする。上記以外に、帯電防止剤を1〜25質量%添加しても良い。より好ましくは、10〜25質量%添加するとより効果的である。
【0022】
表面層5に添加する帯電防止剤については、表面層5の固形分に対してノニオン系、カチオン系、アニオン系の界面活性剤などの帯電防止剤を固形分として1〜25質量%以下含有させる。25質量%を超えて含有させても帯電防止効果の向上は認められず、また接着性が劣化して接着樹脂層3との好適な密着性が得られなくなるからである。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルあるいはソルビタン脂肪酸エステルなどが適用できる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルサルフェートあるいはアルキルホスフェートなどが適用できる。カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムサルフェートあるいは第4級アンモニウムナイトレートなどが適用できる。両性界面活性剤としては、アルキルペタイン型両性界面活性剤、アルキルイミダゾリン型両性界面活性剤あるいはアルキルアラニン型両性界面活性剤などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、上記以外の帯電防止剤として、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミドあるいはポリエーテルエステルアミドが適用できる。特に、ポリエーテルエステルアミドが望ましい。特定分子量のポリアミドと芳香環含有ポリエーテルから誘導される高粘度のポリエーテルエステルアミドが、耐熱性および帯電防止性に優れており、またこのポリエーテルエステルアミドと熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物が耐熱性、永久帯電防止性および機械的特性に優れる。
すなわち、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミドと数平均分子量500〜5,000の芳香環含有ポリエーテルから誘導されるポリエーテルエステルアミド、ならびに該ポリエーテルエステルアミドと熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を帯電防止剤として用いるとよい。
【0024】
ポリエーテルエステルアミドを構成する両末端にカルボキシル基を有するポリアミドは、(1)ラクタム開環重合体、(2)アミノカルボン酸の重縮合体もしくは(3)ジカルボン酸とジアミンの重縮合体である。上記(1)のラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカノラクタム等が挙げられる。上記(2)のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。上記(3)のジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、イソフタル等酸が挙げられ、またジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等が挙げられる。上記アミド形成性モノマーとして例示したものは二種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいものは、カプロラクタム、12−アミノドデカン酸およびアジピン酸−ヘキサメチレンジアミンであり、特に好ましいものはカプロラクタムである。
【0025】
両末端にカルボキシル基を有するポリアミドは、炭素数4〜20のジカルボン酸を分子量調整剤として使用し、これの存在下に上記アミド形成性モノマーを常法により開環重合あるいは重縮合させることによって得られる。炭素数を4〜20のジカルボン酸にすることにより、ポリアミドの分子量を容易に調整することができる。また、炭素数3以下であると、アミド形成ポリマーとの反応によりポリアミドを作製する際、酸性が比較的強く出て反応性の点で問題があり、炭素数21以上であると、アミド形成ポリマーとの反応によりポリアミドを作製する際、酸性が弱くなり反応性の点で問題がある。
炭素数4〜20のジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウム等の3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩;およびこれらの二種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩であり、特に好ましいものはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
【0026】
上記両末端にカルボキシル基を有するポリアミドの数平均分子量は、通常500〜5,000、好ましくは500〜3,000である。数平均分子量が500未満ではポリエーテルエステルアミド自体の耐熱性が低下し、5,000を超えると反応性が低下するためポリエーテルエステルアミド製造時に多大な時間を要する。
【0027】
上記ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミドあるいはポリエーテルエステルアミドからなる帯電防止剤の樹脂組成物に非イオン性、アニオン性、カチオン性もしくは両性の界面活性剤を含有させ、帯電防止性を一層向上させてもよい。
非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットおよびソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩類などが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいものはアニオン性界面活性剤であり、特に好ましいものはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類である。
【0028】
上記界面活性剤の使用量は、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミドあるいは、ポリエーテルエステルアミドからなる帯電防止剤の樹脂組成物の合計質量に対して通常0.1〜5質量%、好ましくは0.4〜3質量%である。界面活性剤の量が0.1質量%未満では効果が発現せず、5質量%を超えると樹脂表面に析出し樹脂の外観を損ねたり、樹脂物性が阻害されたりするので好ましくない。
界面活性剤を添加する方法についても特に限定はないが、組成物中へ効果的に分散させるためには、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミドあるいはポリエーテルエステルアミドからなる帯電防止剤の樹脂組成物中に予め分散させておくことが好ましい。
表面層5に帯電防止剤を含有させ、ノートパソコン用化粧金属板10の切断端面から静電気を逃がすことにより、表面層5の表面に埃などが付着することがほとんどなく、髪の毛や紙が吸い寄せられたりすることのなく、ノートパソコンに内蔵された電子回路を破壊することなく、優れた帯電防止効果が得られるようになる。効果的な帯電防止効果を得るためには、表面抵抗率σが1013Ω/□以下であることが必要である。この表面抵抗値を超えると、帯電防止作用にほとんど効果がない。この表面抵抗値を満たすためには、帯電防止剤の含有量が1質量以上含まれることが望ましい。帯電防止剤の含有量が1質量%未満の場合は十分な帯電防止効果が得られず、25質量%を超えて含有させても帯電防止効果の向上は認められず、また接着性が劣化して接着樹脂層3との好適な密着性が得られなくなる。より望ましくは、10〜25質量%添加するとより効果的である。
【0029】
耐電防止剤は高価なため、製造コストの面から添加量が少ない方が望ましいが、表面の単位面積当たりの添加量が少ないと帯電防止効果が小さい。このため、帯電防止剤の添加量をできるだけ少なくして、単位表面積当たりの帯電防止効果を大きくするには、表面層5をできる限り薄くする必要がある。しかし、帯電防止剤を含んだ表面層5だけの単独層では、均一な厚みで無延伸フィルムを連続で製膜するためには少なくとも厚みが50μm必要であり、帯電防止剤を含んだ表面層5を薄膜化することは困難である。
【0030】
表面層5に添加する滑剤としては、脂肪族炭化水素系、高級脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸のエステルあるいはアミド誘導体、たとえば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどの有機系滑剤、あるいは二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのシリカ系、ゼオライト、炭酸カルシウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウムなどの無機系滑剤などの一般的な市販の滑剤を用いることができる。
また、押出機を用いて樹脂中に滑剤を混練する際に、押出機内のフィルターの目詰まりを防止する観点からは不定形滑剤よりも真球滑剤の方が好ましいが、不定形滑剤の方が滑剤を用いた効果が顕著に現れる。
上記の滑剤としては平均粒径が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmの微細粉末を用いる。この微細粉末は化粧フィルムの接着樹脂層3、基材樹脂層4または/及び表面層5中に0.05〜5質量%含有させる。より好ましくは0.1〜0.5質量%含有させる。このような好適範囲の粒径を有する微細粉末を好適範囲の含有比率で樹脂中に含有させることにより、優れた意匠性を損なうことなく、フィルムの巻き取り形状を改善し、しわ発生の防止効果が得られる。
【0031】
表面層5に添加する抗菌剤としては、無機系として銀、銅、亜鉛を含有した化合物、有機系として合成抗菌剤、天然抗菌剤などがある。
【0032】
表面層5に添加する酸化防止剤としては、銅系酸化防止剤、銅塩系酸化防止剤、ハロゲン化銅系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、芳香族アミン、キレート化剤からなる金属不活性化剤等から選ばれるものが使用され、好ましくはフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤の組み合わせの使用が粘度保持率、気密性能保持の点から望ましい。
【0033】
フェノール系酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチルフェノール誘導体、2−メチル−6−t−ブチルフェノール誘導体、オクタデシル3(3,5−ジブチル−4−ビトロキシフェニル)プロピオネート、4,4−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ペンタエリスリチル・テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2{1−(2−ヒドロキシ−3,5―ジ−t−ペンチルフェニル)−エチル}−4,6ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートなどがある。
【0034】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトラビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、ドステアリルペンタンエリスリトールジホスファイト、リン酸2水素ナトリュウム、リン酸1水素2ナトリュウムなどが挙げられる。
【0035】
イオウ系酸化防止剤としては、3,3−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル、3,3−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス−(3−ラウリルプロピオネート)などが挙げられる。
【0036】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としてはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,3,4−テトラキス(2,2,6,6)テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブタン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシルエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合体、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(オクチロン−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどが挙げられる。これらは単独で使用されてもよいが、併用されても構わない。
【0037】
表面層5に添加する吸湿剤としては、シリカ、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、アルミナ、アパタイト、酸化チタン、炭、炭化物、窒化物、金属等の多孔物質がある。
表面層5に添加する吸臭剤としては、シリカ、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、アルミナ、アパタイト、酸化チタン、炭、炭化物、窒化物、金属等の多孔物質がある。
【0038】
表面層5に添加する光触媒としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化錫、酸化バナジウム、酸化ニオブ、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化インジウム、硫化鉛、硫化銅、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化アンチモン、硫化ビスマスなどがある。
【0039】
表面層5に添加する撥水剤としては、シリコン系あるいはフッ素系の撥水剤が適用できる。
表面層5に添加する親水剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、シリカあるいはアルミナなどが適用できる。
表面層5に添加する撥油剤としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物などがある。
表面層5に添加する芳香剤としては、2−メチルシクロペンタデカノン、α―ヨノン、β―フェニルエチルアルコール、ジヒドロジャスモン、9−ヘキサデセン酸、ジャスモン、3−メチル−2−ヘキセニルアセテート、3−メチル−2−ヘプテニルアセテート、3−メチル−2−ヘキセニルプロパノエート、1−エチル 2−(3−メチル−2−ヘキセニル)オキサレート、3−メチル−2−ヘキセニルベンゾエート及び3−メチル−2−ヘキセニルサリチレートなどがある。
【0040】
表面層5に添加する紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートあるいはp−オクチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−5−スルフォベンゾフェノンあるいはビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタンなどのベンゾフェノン系、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert―アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}あるいは2(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートあるいはエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系などが含まれる。
表面層5の厚みは、薄くしても製膜性の点で困難が伴うので、発明者らが鋭意検討した結果、厚みは7〜40μmの範囲が望ましいことが判明した。樹脂フィルムの替わりに、表面層5に塗料を用いた場合、表面層5の薄膜化は可能であるが、低温衝撃試験または高温衝撃試験による加工を行った場合、塗膜にクラックが入りやすく、また、塗膜剥離が起こり、品質上望ましくない。後述するように、本発明のノートパソコンのトップカバー用化粧フィルム1は樹脂フィルムで構成されているので、このような問題は起こらない。特に、化粧フィルムがポリエステル系樹脂フィルムで構成されている場合、低温衝撃試験または高温衝撃試験による加工しても、フィルムの剥離が認められない。
厚みが7μm未満では、製膜が困難であり製膜性の点で問題がある。逆に、厚みが40μmを超えると、耐電防止剤などの添加剤を最適濃度添加するには多量の添加量が必要となり、かつ表面層5の皮膜が厚いので製造コストが高くなる。
【0041】
表面がより硬質性あるいは加工性を要求される場合、図2に示すように、表面層5の上に、保護層8を設ける。この場合、保護層8には、上記したような帯電防止剤を含有する。保護層に帯電防止剤を含む場合、表面層5には、帯電防止剤を含ませなくても良い。効果的な帯電防止効果を得るためには、表面抵抗率σが1013Ω/□以下であることが必要である。この表面抵抗値を超えると、帯電防止作用にほとんど効果がない。この表面抵抗値を満たすためには、帯電防止剤の含有量が1質量以上含まれることが望ましい。帯電防止剤の含有量が1質量%未満の場合は十分な帯電防止効果が得られず、25質量%を超えて含有させても帯電防止効果の向上は認められず、また接着性が劣化して接着樹脂層3との好適な密着性が得られなくなる。より望ましくは、10〜25質量%添加するとより効果的である。帯電防止剤の種類及び含有量は、表面層5で記載した内容を適用できる。また、保護層8には、帯電防止剤以外に、滑剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤あるいは芳香剤を含有しても良い。表面層5がこれらの添加剤を含まない場合、保護層8に帯電防止剤、滑剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤及び芳香剤の中から選ばれた少なくとも1種以上を含有させる。これらの添加剤及びその添加量は、表面層5の項で説明した内容と同様である。保護層8へのこれらの添加剤の効果は、表面層5に添加する場合と同様の効果が得られる。保護層8の厚みとしては、5〜20μmが望ましい。保護層が5μm未満では耐疵付き性に対して効果がほとんどない。20μmを超えると、高価となり経済的でない。
表面層5を保護する保護層8としては、紫外線硬化型樹脂、自己修復型樹脂あるいはゴム系樹脂が望ましい。紫外線硬化型樹脂としては、エチレン系不飽和二重結合を有する変性ポリエステル樹脂含んだ不飽和ポリエステル系樹脂、グリシジル基含有シランカップリング剤を硬化剤として含んだアミノエポキシ結合を有する組成物あるいは、アクリレートモノマーまたはアリレートオリゴマーを含んだ組成物を紫外線により硬化させたアクリル系樹脂を用いることができる。
自己修復型樹脂としては、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂が適用できる。
ゴム系樹脂としては、アクリルゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムあるいはブチルゴムを含んだ樹脂が適用できる。
保護層8は表面層の上に、ロールコート法で塗布するのが望ましい。紫外線硬化型樹脂の場合、均一に塗布しやすいリバースロールコート法より、ドット状に塗布されるノーマルロールコート法が望ましい。硬化後の紫外線硬化型樹脂は、硬質なため均一であるとクラックが入りやすく望ましくない。これに比べてノーマルロールコート法はドット状に塗布されるため、硬化後クラックが入りにくく望ましい。
表面層5あるいは保護層8の表面には、艶調整層を設けても良い。艶調整層としては、無色透明であってもまたは着色透明であっても、さらに艶消しの透明であってもよく、ノートパソコン用化粧フィルムの表面の光沢度を調整するために設けるものであるが、表面を保護する層としての役割も兼ねる。艶消は、表面粗さが小さく、一定の面積当たりの凹凸を多くして行っても良い。艶調整層は適宜のビヒクルを用いた塗料を塗布することにより形成することができる。
ビヒクルとしてはフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂の1種または2種以上の混合樹脂を用いることが出来る。
艶調整層を形成する塗料には通常適量の艶消剤を分散させて所望の光沢度を付与しているが、艶消剤としてはマイカ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ砂、シラスバルーンなどが用いられる。
上記塗料の塗布方法としては、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコートなど、公知の塗布方式を用いることができる。
【0042】
以上述べたように、図1に示す実施形態1の化粧フィルム1は、次のようにして作製することができる。すなわち、基材樹脂層4をフィルム状に製膜し、その基材樹脂層4の片面に接着樹脂層3を積層し、さらに接着樹脂層3の表面に表面層5を積層して、3層からなるフィルムを形成する。基板2に積層する前に、エンボス加工を施す場合は、表面層5を積層後、表面層5の融点以上に加熱し表面層5の表面にエンボス加工したロールに当接して、ノートパソコン用化粧フィルム1表面にエンボス加工を施す。
また、3層フィルムに製膜した後、予め基板2と基材樹脂層4の間に接着剤を介在させ、3層フィルムの基材樹脂層4の面を基板2の表面に当接し、ラミネートロールを用いて基板2にラミネートする。基板2にフィルムを積層した後エンボス加工を施す場合、3層フィルムを積層した基板2を、表面層5と基材樹脂層4のうち高い融点を有する方の融点以上に加熱して、エンボス加工したロールを当接し、フィルムを積層した基板2の表面にエンボス加工を施し、さらに水冷等により急激に冷却する。
【0043】
図2に示す実施形態2の化粧フィルム1は、次のようにして作製することができる。すなわち、基材樹脂層4をフィルム状に製膜し、その基材樹脂層4の片面に接着樹脂層3を積層し、さらに接着樹脂層3の表面に表面層5を積層して、3層からなるフィルムを形成する。このフィルムを形成後、表面層5の片面に保護層8をロールコート等により塗布し、紫外線照射による方法などで乾燥して硬質の保護層8を形成する。ロールコート法で塗布する場合、リバース法ではなく、ナチュラル法で塗布するのが望ましい。リバース法では、保護層が均一に塗布されるので、硬質な紫外線硬化型樹脂ではクラックが形成しやすく、ナチュラル法では、保護層がドット状に塗布され、クラックがほとんど形成しない。基板2に積層する前に、エンボス加工を施す場合は、表面層5を積層後、表面層5の融点以上に加熱し表面層5の表面にエンボス加工したロールに当接して、ノートパソコンのトップカバー用化粧フィルム1表面にエンボス加工を施す。
次いで、上記フィルムを基板2に積層するには、予め接着剤をフィルムの基材樹脂層面または基板2の片面に塗布し、加熱した基板2にフィルムをラミネートロールを用いてラミネートする。エンボス加工を施す場合、フィルムを積層した基板2を、表面層5と接着樹脂層3のうち高い融点を有する方の融点以上に加熱して、エンボス加工したロールを当接し、フィルムを積層した基板2の表面にエンボス加工を施し、さらに水冷等によりフィルム積層基板を急激に冷却する。
【0044】
上記のようにして得られたノートパソコン用化粧フィルム1を、接着剤層7を介在させて基板2と貼合わせことによって、ノートパソコン用化粧金属板10が得られる。
上記に説明したように、基材樹脂層4、接着樹脂層3と表面層5との3層からなるノートパソコン用化粧フィルムは、厚みが52〜270μmであり、意匠性、抗菌性、製膜性、加工性などに優れたフィルムである。
上記ノートパソコン用化粧フィルム1は、基板2の片面または両面に積層する。基板2の片面に化粧フィルムを積層する場合、ノートパソコン用化粧フィルム1を積層しない面には、改めて処理する必要はないが、ウレタンン系、アクリル系あるいはポリエステル系などの塗料を塗布するか、または、単層のポリエステル樹脂フィルムを積層しても良い。
このようにして、基板に積層する面から順に、基材樹脂層4、接着樹脂層3、表面層5または、基材樹脂層4、接着樹脂層3、表面層5、保護層8からなるノートパソコン用化粧フィルム1を、基材樹脂層4が基板2に接するように基板2の表面に接着剤を介して積層してノートパソコン用化粧金属板10を作製する。
基板2としては、例えば、鋼板、ティンフリースチール、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛―コバルトーモリブデン複合めっき鋼板、亜鉛―ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛―鉄合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、銅めっき鋼板あるいはステンレス鋼板などの金属板が適用できる。これらの金属板の表面にクロメート処理、リン酸塩処理などの公知の化成処理を施したものも適用できる。アルミニウム板あるいはアルミニウム合金板を用いた場合、化成処理を施さなくても適用できる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例の作製条件は表1に示す。
(実施例1)
顔料(化合物名:酸化チタン)を30質量%含んだ無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(表1ではPBTと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:50μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:35μm、含有率:5%)、Al顔料(平均粒径:34μm、含有率:3%)及び雲母(平均粒径:19μm、含有率:2%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが13μmであり、イソシアネート変性ポリマーからなるポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に帯電防止剤(化合物名:ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、表1ではAと表す)10質量%を含んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(表1では、2軸PETと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:7μm)をラミネートした。
次に、厚さ0.6mm のAl板にクロメート処理(皮膜量;Crox量(Cr量として):15mg/m)を施し、片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、乾燥した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1を無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層)面が当接するようにして、接着剤を塗布した上記Al板に接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0046】
(実施例2)
顔料(化合物名:群青)を40質量%含んだポリエチレンテレフタレート樹脂(表1ではPETと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:75μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:44μm、含有率:1%)、Al顔料(平均粒径:39μm、含有率:4%)及び雲母(平均粒径:15μm、含有率:1%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが10μmであり、ポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に帯電防止剤(化合物名:第4級アンモニウムクロライド、表1ではBで表す)25質量%を含んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(表1では、2軸PETと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:10μm)をラミネートした。
次に、厚さ0.6mm のAl板の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、乾燥した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1をポリエチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層4)面が当接するようにして、接着剤を塗布した上記Al板に接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0047】
(実施例3)
顔料(化合物名:キナクリドン)を10質量%含んだ無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(表1ではPBTと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:100μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:20μm、含有率:5%)、Al顔料(平均粒径:24μm、含有率:2%)及び雲母(平均粒径:19μm、含有率:1%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが25μmとなるように、ポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に帯電防止剤(化合物名:ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー3質量%と第4級アンモニウムクロライド2質量%との混合物、表1ではCと表す)7質量%を含んだポリブチレンテレフタレート樹脂(表1では、PBTと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:7μm)をラミネートした。
次に、厚さ0.6mm のAl合金板に陽極酸化処理を施し、片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、乾燥した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1をポリブチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層)面が当接するようにして、接着剤を塗布した上記Al合金板に接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着した。圧着後、表面層5のPBT樹脂の融点以上に表面層5のPBTを加熱した後、凹状に加工したエンボス加工ロールで表面層5の表面を圧下してエンボス加工を施し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0048】
(実施例4)
顔料(化合物名:酸化チタン)を30質量%含んだポリエチレンテレフタレート樹脂(表1ではPETと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:130μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:25μm、含有率:2%)、Al顔料(平均粒径:29μm、含有率:1%)及び雲母(平均粒径:25μm、含有率:1%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが20μmとなるように、イソシアネート変性ポリマーからなるポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に帯電防止剤(化合物名:ポリエーテルエステル、表1ではDと表す)0質量%を含んだポリブチレンテレフタレート樹脂(表1では、PBTと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:15μm)をラミネートした。
次に、厚さ0.6mm のAl板に陽極酸化処理を施し、片面にポリエステル系の接着剤を塗布した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1を無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層)面が当接するようにして、接着剤を塗布した上記Al板に接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着した。圧着後、表面層5のPBT樹脂の融点以上に表面層5のPBTを加熱した後、凹状に加工したエンボス加工ロールで表面層5の表面を圧下してエンボス加工を施し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0049】
(実施例5)
顔料(化合物名:酸化チタン)を30質量%含んだポリエチレンテレフタレート樹脂(表1ではPETと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:40μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:35μm、含有率:1%)、Al顔料(平均粒径:34μm、含有率:1%)及び雲母(平均粒径:19μm、含有率:1%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが15μmとなるように、ポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に帯電防止剤(化合物名:ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、表1ではAと表す)20質量%を含んだポリエチレンテレフタレート樹脂(表1では、PETと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:2μm)をラミネートした。
次に、Zn−Co−Moめっき鋼板(めっき量:20g/m、クロメート処理:有(Cr量として40mg/m))に乾燥後の厚みが15μmなるようにポリエステル系接着剤を塗布し、基材樹脂層4の表面がZn−Co−Moめっき鋼板の接着剤塗布面に当接するようにして、板温240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0050】
(実施例6)
顔料(化合物名:酸化チタン)を30質量%含んだポリエチレンテレフタレート樹脂(表1ではPETと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:200μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:35μm、含有率:0.5%)、Al顔料(平均粒径:34μm、含有率:0.3%)及び雲母(平均粒径:19μm、含有率:0.2%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが25μmとなるように、ポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に帯電防止剤(化合物名:ポリオキシエチレンアルキルアミド、表1ではEと表す)15質量%を含んだ2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(表1では、2軸PETと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:20μm)をラミネートした。
次に、厚さ0.6mm のZn−Co−Moめっき鋼板(めっき量:20g/m、リン酸塩処理:有(P量として600mg/m))の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、乾燥した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1をポリエチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層)面が当接するようにして、接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0051】
(実施例7)
顔料(化合物名:酸化チタン)を30質量%含んだ無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(表1ではPBTと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:50μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:35μm、含有率:1%)、Al顔料(平均粒径:34μm、含有率:1%)及び雲母(平均粒径:19μm、含有率:1%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが25μmとなるように、ポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(表1では、2軸PETと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:7μm)をラミネートした。
次に、銀系抗菌剤0.5質量%と帯電防止剤(化合物名:ポリオキシエチレンアルキルアミド)15質量%とを含んだ紫外線硬化型樹脂を乾燥後の厚みが5μmとなるように、ノーマルコート法で2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂の表面に塗布した。
次に、厚さ0.6mm のAl板の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、乾燥した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1を無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層)面が当接するようにして、接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0052】
(比較例1)
顔料(化合物名:酸化チタン)を30質量%含んだ無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(表1ではPBTと示す、固有粘度:1.35dl/g)からなる基材樹脂層4(厚み:50μm)の表面に、Al蒸着したポリエチレンテレフタレート顔料(平均粒径:35μm、含有率:2%)、Al顔料(平均粒径:34μm、含有率:2%)及び雲母(平均粒径:19μm、含有率:2%)を含有し、かつ乾燥後の厚みが13μmとなるように、ポリエステルポリウレタン樹脂を塗布し、ポリエステルポリウレタン樹脂の表面に2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(表1では、2軸PETと示す)からなる表面層5(製膜後の厚み:5μm)をラミネートした。
次に、厚さ0.6mm のAl板の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、乾燥した。
前記のノートパソコン用化粧フィルム1を無延伸ポリブチレンテレフタレート樹脂(基材樹脂層)面が当接するようにして、接着剤層介して加熱温度:240℃、接着圧力:15kgf/cm、圧着時間:5秒の条件で加熱圧着し、ノートパソコン用化粧金属板10を得た。
【0053】
【表1】

【0054】
[特性評価]
実施例1〜7、比較例1で作製したノートパソコン用化粧金属板を、下記の特性について評価した。特性の評価結果は表2に示す。
【0055】
(帯電性)
絶縁抵抗測定器SMB8220(東亜電波工業(株)製)を用いて、化粧金属板の化粧フィルムにコロナ放電で生成した空気イオンを照射して電圧1000Vで10秒帯電させ、帯電停止後60秒後の表面抵抗率σ(単位:Ω/□)を測定した。表面抵抗率σの値が小さいほど帯電性が良好であることを示す。表面抵抗率σが1013Ω/□以下を良好とし、表2では○で表した。表面抵抗率σが1013Ω/□を越えると不良とし、表2では×で表した。
【0056】
(折曲げ加工性)
各化粧金属板から60×60mmの試験片を採取し、化粧フィルムの積層面が外側となるように試験片を90°折曲げ加工を行い、90°折曲げ加工部を密着性テープで強制剥離試験を実施し、密着性を評価した。化粧フィルムが剥離しなかった場合、○と評価し、化粧フィルムが剥離した場合を×とした。
【0057】
(耐薬品性)
各化粧金属板から60×60mmの試験片を10枚ずつ採取し、試験片を温度20℃の5体積%塩酸溶液中に浸漬し、化粧フィルム層の外観変化で評価した。表2中において○△×は下記の意味である。○:10枚の試験片の全てにおいて、化粧フィルム層間や金属板との接着界面における化粧フィルム層の剥離は認められず、外観変化もない。△:10枚の試験片のうち、1〜2枚の試験片で化粧フィルム層間や金属板との接着界面における化粧フィルム層の剥離が認められる。あるいは、外観変化が認められる。×:10枚の試験片のうち、3枚以上の試験片で化粧フィルム層間や金属板との接着界面における化粧フィルム層の剥離が認められる。あるいは、外観変化が著しく認められる。
【0058】
(汚れ性)
各化粧金属板から60×60mmの試験片を10枚ずつ採取し、試験片に口紅及びマジックインキ(赤、青、黒の3色、登録商標)を塗りつけ、2時間放置した。2時間放置後、中性洗剤及びエタノールを含んだガーゼで試験片の口紅及びマジックインキ(赤、青、黒の3色、登録商標)拭き取った。表2中において、マジックはマジックインキ(登録商標)のことであり、○△×は下記の意味である。○:試験片に口紅またはマジックインキ(登録商標)の跡が全く残らなかった。△:試験片に口紅またはマジックインキ(登録商標)の跡が一部残った。×:試験片に口紅またはマジックインキ(登録商標)の跡が著しく残った。
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示すように、本発明のノートパソコン用化粧フィルム1は耐帯電性に優れ帯電率が低く、また樹脂層間の密着性にも優れており、それを金属板に積層したノートパソコン用化粧金属板10を加工しても樹脂層間や樹脂層と金属板との接着界面で樹脂層が剥離することはない。さらに、本発明の化粧金属板をノートパソコンのトップカバーあるいはキーボード枠に加工しても、化粧フィルムは剥がれることがなく、トップカバーあるいはキーボード枠表面に静電気がほとんど蓄積しないのでトップカバーあるいはキーボード枠に埃、汚れが付着しにくく、電子回路への影響がほとんどない。このように、本発明の化粧金属板はノートパソコンのトップカバーやキーボード枠に適用できることが判明した。
【0061】
本発明のノートパソコン用化粧フィルム1は、下から順に基材樹脂層4として顔料を含有したポリエステル樹脂フィルム、顔料を含有したポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層3、さらに表面抵抗率が1013Ω/□以下になるように帯電防止剤を含んだ透明なポリエステル樹脂フィルムである表面層5からなっているので、該化粧フィルムの表面が静電荷を帯びることがないので、帯電防止作用に優れる。また、表面層5は、化粧フィルムの表面に薄く形成されているので、帯電防止剤以外に、抗菌剤、撥水剤、紫外線吸収剤あるいは芳香剤などを添加する場合、より少ない添加量で、効果的に抗菌作用、撥水作用、撥油作用、吸臭作用、酸化防止作用あるいは芳香作用などの機能を多岐に亘って発揮することができる。また、接着樹脂層3及び基材樹脂層4が顔料を含んでいるので、意匠性に優れる。
さらに、表面層5の表面に、有機樹脂からなる保護層8を有することによって、硬質な有機樹脂あるいはゴム系からなる保護層8の場合、耐疵付き性を付与することができる。保護層8がノーマルコート法により塗布された紫外線硬化型樹脂の場合、加工してもクラックが入りにくい。実施例7において、保護層の表面に大腸菌を含んだ水溶液を塗布し、37℃で24時間放置し、大腸菌の数の増減を調べることにより抗菌性を検討した。その結果、大腸菌の数が減少し、抗菌性を示すことが判明した。
【0062】
本発明のノートパソコン用化粧フィルム1を接着剤を介在させて金属板等の基板に積層したノートパソコン用化粧金属板10は、上記機能性の他に、密着性にも優れ、加工を施しても樹脂層間や樹脂層と基板の接着界面で剥離を生じることがない。
このため、ノートパソコン11の液晶ディスプレイ14取り付け側の開閉部の外側の天板に使われるトップカバー13に適用することができる(図4参照)。
また、ノートパソコン本体16側に取り付けられているキーボード部14の周囲に設けられたキーボード枠15に適用することができる。
このノートパソコン用化粧金属板10を使ったノートパソコンのトップカバー13やキーボード枠15は、例えばポリカーボネート樹脂と他の樹脂とのブレンド樹脂からなるものと比べて、リサイクルが困難な有機樹脂の使用量が少なく、その代わりにリサイクル率の高い金属板を用いているので、リサイクル性に優れる。
また、本発明の化粧金属板は、意匠性に優れ、かつ帯電防止作用に優れるので、液晶テレビまたはプラズマテレビなどの薄型テレビの画面の外周、あるいはDVDまたはブルーレイディスクの外枠カバーにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のノートパソコン用化粧フィルム、その化粧フィルムを積層したノートパソコン用化粧金属板及びその化粧金属板を用いたノートパソコンのトップカバー又はキーボード枠は、耐帯電性に優れ帯電率が低く、また樹脂層間の密着性にも優れ、それを金属板に積層したノートパソコン用化粧金属板を加工しても樹脂層間や樹脂層と金属板との接着界面で樹脂層が剥離することはなく、また、本発明の化粧金属板をノートパソコンのトップカバーあるいはキーボード枠に加工しても、化粧フィルムは剥がれることがなく、トップカバーあるいはキーボード枠表面に静電気がほとんど蓄積しないのでトップカバーあるいはキーボード枠に埃、汚れが付着しにくく、電子回路への影響がほとんどないので、
産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0064】
1 : ノートパソコン用化粧フィルム
2 : 基板
3 : 接着樹脂層
4 : 基材樹脂層
5 : 表面層
7 : 接着剤層
8 : 保護層
10 : ノートパソコン用化粧金属板
11 : ノートパソコン
12 : 液晶ディスプレイ
13 : トップカバー
14 : キーボード部
15 : キーボード枠
16: ノートパソコン本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層から順次、顔料を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層、顔料を含んだポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層、帯電防止剤を含み、かつ表面抵抗率が1013Ω/□以下である透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層とからなることを特徴とするノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項2】
下層から順次、顔料を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材樹脂層、顔料を含んだポリエステルポリウレタン樹脂からなる接着樹脂層、透明なポリエステル樹脂フィルムからなる表面層、さらに、帯電防止剤を含み、かつ表面抵抗率が1013Ω/□以下である有機樹脂からなる保護層を有することを特徴とするノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項3】
前記表面層の表面に、帯電防止剤を含み、かつ表面抵抗率が1013Ω/□以下である有機樹脂からなる保護層を有することを特徴とする請求項1記載のノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項4】
表面層が、滑剤、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤及び芳香剤の中から選ばれた少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項5】
保護層が、抗菌剤、酸化防止剤、吸湿剤、吸臭剤、光触媒、撥水剤、親水剤、撥油剤、紫外線吸収剤及び芳香剤の中から選ばれた少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載のノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項6】
ポリエステル樹脂フィルムからなる表面層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項7】
前記ポリエステルポリウレタン樹脂が、イソシアネート変性ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項8】
前記表面層に、エンボス加工が施されてなる請求項1乃至7の何れか1項に記載のノートパソコン用化粧フィルム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の化粧フィルムの基材樹脂層の面を、接着剤を介して基板に積層してなることを特徴とするノートパソコン用化粧金属板。
【請求項10】
前記基板が金属板であることを特徴とする請求項9記載のノートパソコン用化粧金属板。
【請求項11】
請求項10記載の化粧金属板を加工してなるノートパソコンのトップカバー又はキーボード枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30564(P2012−30564A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174182(P2010−174182)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】