説明

ノートブック型パソコンの冷却構造

【目的】 冷却能力に優れ、かつコンパクトなノートブック型パソコンの冷却構造を提供する。
【構成】 発熱源となる中央演算処理装置18に、ヒートパイプ機構17の一端部が熱授受可能に配設され、かつそのヒートパイプ機構20の他端部が、パソコン本体に設けられている金属製のノイズ遮蔽板14に熱授受可能に配設されている。ヒートパイプ17,20が中央演算処理装置18から発生する熱を、ノイズ遮蔽板14に輸送する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、中央演算処理装置(CPU)から発する熱をヒートパイプを利用して放出することにより、CPUを冷却するノートブック型パソコンの冷却構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は、ノートブック型パソコンの従来の冷却装置の一例を示す図である。図3の(A)において、パソコン本体1はプラスチックあるいはカーボンファイバー等によって形成された比較的厚みの薄い矩形容器からなり、日本工業規格でのいわゆるA4サイズ程度の大きさを成している。
【0003】パソコン本体1の上面には、キーボード部2およびディスプレイ部3が備えられており、これらは各々ヒンジによって回動可能に構成されている。すなわち、キーボード部2およびディスプレイ部3は、パソコン本体1側から上方に起き上がり、かつその状態からパソコン本体1側に倒れるように構成されている。また、キーボード部2およびディスプレイ部3の内部には、それぞれほぼ同等のサイズのアルミ薄板4がノイズの遮蔽板として取り付けられている。
【0004】前記パソコン本体1の内部の二分割された空間のうち前方側(図3の(A)においてキーボード部2側)には、着脱式のハードディスクドライブ5やフロッピーディスクドライブ、バッテリー(それぞれ図示せず)等が設置されている。他方の空間内の底部にはヒートパイプ6が設置されており、また、その上方には熱伝達を促進するコンパウンドを介して中央演算処理装置(以下、CPU)7が取り付けられている。さらに、そのCPU7の上方には複数枚のプリント基板8が設けられている。前記ヒートパイプ6は、コンテナが薄い板状を成すいわゆる平板型ヒートパイプであって、そのコンテナの一部分には矩形のフィン9が複数枚装着されている。
【0005】したがって、上記の冷却装置では、パソコンの使用に伴ってCPU7から発生する熱により、ヒートパイプ6内部の作動流体が蒸発し、その蒸気はコンテナのうち温度の低いフィン9側の部分に流動する。その作動流体蒸気は、フィン9により熱を奪われて凝縮する。すなわちCPU7の熱がヒートパイプ6の作動流体によって輸送され、フィン9から放出される。したがって、CPU7の温度が許容範囲内に抑えられる。なお、凝縮して液相に戻った作動流体は、重力およびウィックによって蒸発部側に還流し、そこで再度蒸発する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ノートブック型パソコンは、携帯性を主要目的とするものであるから、小型化および軽量化が強く望まれている。したがって、当然、パソコン本体1の内部空間において冷却装置が占有するスペースもできるだけ小さいことが好ましい。また、一方で、CPU7のパワー増大化が年々進められているから、冷却能力の向上も要望されている。
【0007】しかしながら、ヒートパイプ6を介したCPU7の冷却能力は、ヒートパイプ6の実質的な放熱面積によって制約を受けるのに対し、上記従来の冷却装置では、ヒートパイプ6の放熱部の面積をフィン9によって確保する構成であるから、CPU7の出力アップに伴ってヒートパイプ6に要求される放熱面積が増大して、フィン9の大型化が必要となり、また、このフィン9をパソコン本体1内に設けているから、冷却装置がパソコン本体1の内部空間において占有するスペースが必然的に大きいものとなり、ひいてはパソコン本体1の大型化を招来する不都合があった。
【0008】また、前述のようにフィン9がパソコン本体1の内部に設置されていることにより、ヒートパイプ6から放出された熱がその内部空間に籠りやすい問題もある。
【0009】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、コンパクトで、かつ冷却能力に優れたノートブック型パソコンの冷却構造を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は上記の目的を達成するために、発熱源となる中央演算処理装置に、ヒートパイプ機構の一端部が熱授受可能に配設され、かつそのヒートパイプ機構の他端部が、パソコン本体に設けられている金属製のノイズ遮蔽板に熱授受可能に配設されていることを特徴とするものである。
【0011】また、請求項2の発明は、パソコン本体に回動機構を介して開閉自在に取り付けられた開閉部材に金属製のノイズ遮蔽板が配設されるとともに、前記パソコン本体の内部に中央演算処理装置が設置され、さらにその中央演算処理装置に第一のヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第一のヒートパイプの他端部が前記回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設され、かつ前記ノイズ遮蔽板に第二のヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第二のヒートパイプの他端部が、前記回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設されかつ前記第一のヒートパイプと熱授受可能に連結されていること特徴とするものである。
【0012】また、この発明では、前記開閉部材をキーボードもしくはディスプレイのいずれか一方により形成することができる。
【0013】
【作用】この発明においても、パソコンの使用に伴って中央演算処理装置から熱が発生するが、この発明では、中央演算処理装置と熱伝達可能にヒートパイプ機構の一端部が配設されているから、中央演算処理装置から放出された熱によってヒートパイプ内に封入されている作動流体が加熱されて蒸発する。その作動流体蒸気は温度と内部圧力が共に低くなっている他端部、すなわちノイズ遮蔽板側に配設されている端部に向けて流動する。そして、その端部においてノイズ遮蔽に熱を奪われて凝縮する。すなわち、中央演算処理装置からの放熱がヒートパイプの作動流体によってノイズ遮蔽板まで運ばれ、そこから外に放散される。
【0014】このように、ノイズ遮蔽板はヒートパイプ機構の放熱面として作用するが、このノイズ遮蔽板は既設されているものであるから、当然、新たに設置スペースを必要とせず、すなわち構造全体がコンパクトになる。なお、放熱して液化した作動流体は、重力あるいはウィックによってヒートパイプ機構のうち中央演算処理装置側の端部に還流し、そこで再度加熱される。
【0015】請求項2に記載の発明においても、パソコン本体を使用するに伴って中央演算処理装置から発熱するが、その熱は第一のヒートパイプの一端部に伝達され、その内部の作動流体が蒸発する。その作動流体蒸気は温度と内部圧力が共に低くなっている他端部に向けて流動し、そこで第二のヒートパイプの一端部に熱を奪われて凝縮する。放熱して液化した作動流体は重力あるいはウィックによって中央演算処理装置側の端部に還流する。一方、第一のヒートパイプから伝達された熱に加熱されて第二のヒートパイプ内の作動流体が蒸発する。その蒸気はノイズ遮蔽板側に配設された端部に向けて流動し、そこで熱を奪われて凝縮する。すなわち中央演算処理装置から放出される熱が第一のヒートパイプを介して第二のヒートパイプからノイズ遮蔽板に運搬され、そこから外部に放散される。
【0016】また、この発明では、第一のヒートパイプと第二のヒートパイプとのそれぞれの一端部が回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設されているから、ノイズ遮蔽板に第二ヒートパイプを配設した状態であっても、キーボードあるいはディスプレイ等の開閉部材を何等支障なく回動(開閉)させることができる。
【0017】なお、前記回動機構による開閉部材を、キーボードあるいはディスプレイにより形成すれば、ヒートパイプによってノイズ遮蔽板に運ばれた中央演算処理装置の熱が、キーボードあるいはディスプレイのうち一方から放出される。
【0018】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1および図2は、この発明の冷却構造に係るノートブック型パソコンを示す概略図である。これらの図において、パソコン本体10は、プラスチックあるいはカーボンファイバー等によって形成された比較的厚みの薄い矩形容器からなり、JISでのA4サイズ程度の大きさを成している。
【0019】パソコン本体10の上面には、キーボード部11およびディスプレイ部12が備えられている。これらのキーボード部11とディスプレイ部12とは、それぞれパソコン本体10側に形成されている回動軸13を中心として所定の範囲内で自在に回動するよう構成され、いわゆる開閉部材となっている。すなわち、キーボード部11およびディスプレイ部12をパソコン本体10からそれぞれ上方に起き上がらせたり、あるいはその状態からパソコン本体10側に倒したりできる構成になっている。これらのキーボード部11およびディスプレイ部12には、各々とほぼ等しい寸法のアルミ薄板14が内部に装着されている。このアルミ薄板14は、ノイズを遮蔽するためのものであって、通常、ノートブック型のパソコンに標準装備されている。
【0020】前記パソコン本体10内の二分割された空間のうち前方側の空間(図2の(A)においてキーボード部11側)には、着脱式のハードディスクドライブ15、フロッピーディスクドライブ、バッテリー(共に図示せず)等が収納されている。ここで、前述したキーボード部11のパソコン本体10に対する起立・傾倒動作(開閉動作)は、ここに示したハードディスクドライブ15やバッテリー等を交換したり、あるいは取り外したりする際に行われる。
【0021】一方、パソコン本体10の後方側の空間の底部には、平板状のアルミブロック16に挿着された第一ヒートパイプ17の一端部が配設されており、その上部にはCPU18が取り付けられている。なお、アルミブロック16は、CPU18と第一ヒートパイプ17との接触性を向上させるためのものであって、必要に応じて設けられる。さらに、CPU18の上方には、複数枚のプリント基板19が設置されている。
【0022】前記第一ヒートパイプ17の他端部は、アルミブロック16側に配置された端部に対してほぼ直角に折り曲げられるとともに、前記キーボード部11側の回動軸13の中心軸線と同一軸線上に延ばされている。そして、その第一ヒートパイプ17の端部は、二重管構造の第二ヒートパイプ20の一端部に回動可能に嵌合している。すなわち、第一ヒートパイプ17と第二ヒートパイプ20との接続部21が回動軸13の中心軸線と同一軸線上に形成されている。なお、その接続部21には、二本のヒートパイプの接触抵抗を軽減し、かつ熱伝達を促進するための適当なサーマルジョイントが塗布されている。第二ヒートパイプ20の他端部は、キーボード部11に内接されているアルミ薄板14の裏面(図1において下側)に熱授受可能に密着した状態で配設されている。また、ここでは第一ヒートパイプ17および第二ヒートパイプ20は共に、円形断面の小径管がコンテナとして採用されている。さらに、図示しないがそれらのヒートパイプのうち他の部材と接しない箇所を断熱被膜で覆ってもよい。
【0023】ここで、ヒートパイプは、両端が閉じられた金属パイプ等の容器の内部に、真空脱気した状態で水やアルコールなどの凝縮性の流体を作動流体として封入したものであり、温度差が生じることにより動作し、高温部で蒸発した作動流体が低温部に流動して放熱・凝縮することにより、作動流体の潜熱として熱輸送を行う。そして、その見掛上の熱伝導率は、銅やアルミ等の金属と比較して数十倍ないし数百倍程度優れている。なお、必要に応じて作動流体の還流を促進するウィックがコンテナ内部に備えられる。
【0024】つぎに、上記のように構成されたこの発明の作用を説明する。この発明に係るノートブック型パソコンにおいても、使用されることによりCPU18から熱が生じる。その熱はアルミブロック16を介して第一ヒートパイプ17の一端部に伝達される。この時点で第一ヒートパイプ17の両端部で温度差が生じ、したがって、自動的に第一ヒートパイプ17の動作が開始される。すなわち、CPU18から放出された熱によってコンテナ内部に封入される作動流体が蒸発し、その蒸気は温度と内部圧力とが共に低くなっている他端部に向けて流動する。その他端部は、前述のように第二ヒートパイプ20の一端部によって外周を覆われているから、作動流体の保持する熱が第二ヒートパイプ20に奪われる。その場合、接続部21にはサーマルジョイントが塗布されているから、第一ヒートパイプ17から第二ヒートパイプ20に効率良く熱伝達される。なお、放熱して液化した第一ヒートパイプ17の作動流体は重力およびウィックによって蒸発部側に還流する。
【0025】一方、第二ヒートパイプ20内部の作動流体蒸気は、やはり低温・低圧の他端部、すなわちアルミ薄板14に配設された端部に向けて流動し、そこでアルミ薄板14に熱を奪われて凝縮する。このように、パソコン本体10の内部に設置されるCPU18の熱が第一ヒートパイプ17と第二ヒートパイプ20とによって、パソコン本体10外部に位置するアルミ薄板14まで輸送される。そして、その熱はアルミ薄板14から外部に放散される。
【0026】このように、既設されるアルミ薄板14を第二ヒートパイプ20の放熱面として利用するので、冷却構造としてパソコン本体10の内部に必要とする設置スペースを小さいものとなり、しかも重量がほとんど増加しない利点もある。また、前記アルミ薄板14は、パソコン本体10の外部に位置しており、さらにその表面積は、通常、従来一般の冷却構造においてフィン等によって確保される放熱部面積に対して数倍大きいので、第一ヒートパイプ17および第二ヒートパイプ20内の作動流体の循環が活発に行われるとともに、パソコン本体10内に熱が籠りにくく、ひいては冷却能力を向上させることができる。すなわち、冷却能力に優れ、かつコンパクトなノートブック型パソコンの冷却構造を得ることができる。
【0027】また、この発明に係るノートブック型パソコンにおいても、ハードディスクドライブ15やバッテリー等をパソコン本体10から着脱する際には、キーボード部11をパソコン本体10から起立させることにより行われる。その場合、前述のように第一ヒートパイプ17と第二ヒートパイプ20との接続部21がキーボード部11側の回動軸13の中心軸線と同一軸線上に形成されているから、何等支障なくキーボード部11を起こすことが可能となる。なお、この実施例において、第二ヒートパイプ20が配設されていないディスプレイ部12は、いうまでもなくパソコン本体10から自在に起き上がらせることができ、またパソコン本体10側に倒すことができる。
【0028】なお、アルミ薄板14が回動する部材に設けられている場合、ヒートパイプ機構は上記実施例で示した一対のヒートパイプで構成する替わりに、コルゲート管などの屈曲自在なヒートパイプで構成してもよい。
【0029】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、この発明によれば、熱源となる中央演算処理装置にヒートパイプ機構の一端部を熱授受可能に配設し、かつその他端部をノイズ遮蔽板に熱授受可能に配設したので、ノイズ遮蔽板がヒートパイプ機構の放熱面となる。このノイズ遮蔽板は、既設されるものであるから、冷却構造全体が必要とする設置スペースを小さいものとすることができる。換言すれば、コンパクトな冷却構造を得ることができる。
【0030】また、請求項2に記載した発明は、中央演算処理装置に一端部が熱授受可能に配設される第一のヒートパイプの他端部と、一端部がノイズ遮蔽板に配設される第二のヒートパイプの他端部とが、熱授受可能な状態で回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設されているから、第二のヒートパイプが配設された状態でも回動機構による開閉部材、特にキーボードあるいはディスプレイを支障なく開閉させることができる。また、パソコン本体の外部にノイズ遮蔽板が設けられているから、そこから放出された熱がパソコン本体の内部空間に籠ることがなく、したがつて、冷却能力に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す概略図である。
【図2】この発明に係るノートブック型パソコンを一部切り欠いた概略図である。
【図3】従来技術の一例を示す図である。
【符号の説明】
10…パソコン本体、 11…キーボード部、 12…ディスプレイ部、 13…回動軸、 14…アルミ薄板、 17…第一ヒートパイプ、 18…CPU、 20…第二ヒートパイプ、 21…接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発熱源となる中央演算処理装置に、ヒートパイプ機構の一端部が熱授受可能に配設され、かつそのヒートパイプ機構の他端部が、パソコン本体に設けられている金属製のノイズ遮蔽板に熱授受可能に配設されていることを特徴とするノートブック型パソコンの冷却構造。
【請求項2】 パソコン本体に回動機構を介して開閉自在に取り付けられた開閉部材に金属製のノイズ遮蔽板が配設されるとともに、前記パソコン本体の内部に中央演算処理装置が設置され、さらにその中央演算処理装置に第一のヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第一のヒートパイプの他端部が前記回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設され、かつ前記ノイズ遮蔽板に第二のヒートパイプの一端部が熱授受可能に配設されるとともに、その第二のヒートパイプの他端部が、前記回動機構の中心軸線と同一軸線上に配設されかつ前記第一のヒートパイプと熱授受可能に連結されていること特徴とするノートブック型パソコンの冷却構造。
【請求項3】 前記開閉部材がキーボードもしくはディスプレイのいずれか一方であることを特徴とする請求項2に記載のノートブック型パソコンの冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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