説明

ハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル生成物の色安定化

本発明は、両方の環がホスファイトの分子中にある同じ三級炭素原子に結合しているスピロホスファイト類のビス環式構造を含有しているホスファイト化合物類によるハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル類の色安定化に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本発明の分野
本発明はHQEEと呼ばれ、ポリウレタン工業において高性能ポリウレタン注型エラストマー類または熱可塑性エラストマー類を作成する際に鎖延長剤として広範囲に使用されているハイドロキノンジ−(2−ヒドロキシエチル)エーテルに関する。2モルの酸化エチレン(EO)と1モルのハイドロキノン(HQ)の純度の良い付加物は結晶性が高く、最も良い性質を得るには望ましいと考えられている。しかしながら、実用的な理由で2モルの酸化エチレン(EO)と1モルのハイドロキノン(HQ)の純度の良い付加物は工業的には入手できない。HQのEOによるエトキシル化において、機構的な理由から望ましい付加物に加えてモノ付加物、トリ付加物およびより大きな付加物が得られる。これに加えて、製法において使用する溶媒も不純物を与える。そこで、工業規模で手に入るHQEE等級品は望ましくない種を1〜10%と純付加物(2モルのEOと1モルのHQ)を99〜90%含む。当該不純物は最終面での性質を低下させ、HQEEを熱および/または酸素に暴露したときにHQEEの色不安定性を起こす。時間及び温度とともにHQEEの色は増加する。多くの工場で、HQEEは高温で加工され、そこでHQEEの色は増しながら部品に至り、部品は濃色である。当該色の増加は薄いまたは淡い色調の部品を作ろうとするときは非常に深刻である。そこで、HQEEの一般的に入手できる等級品の色を安定化する実際的な方法が望まれており、本発明が当該解決法を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
2.技術の簡単な説明
ハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル(HQEE)はポリウレタン類の製造に使用されることはよく知られている。工業用等級品のハイドロキノンのヒドロキシエチルエーテルはハイドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルを90%より多く含有している。生成物中に含有する不純物により、それらは特により高い温度で変色する傾向がある。ハイドロキノンのヒドロキシエチルエーテル類は室温で固体であり、利用する際には溶融状態に置かれる。より高い温度では変色が早くなり、色に敏感である応用面で使用するには色安定化が必要とされる。
【0003】
米国特許第3592858号にはホスファイト型色安定剤を用いたハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル類の色安定化が記載されている。当該開示によると、当該ホスファイト分子はアリールまたはシクロアルキル環に結合した1個または2個の環式ホスファイト基のどちらかで構成されている。特にハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル類の工業用等級品について、色安定化の結果は長く使用する際の変色に対する防止で十分ではなかった。
【0004】
(本発明の詳細な説明)
抗酸化剤は酸素や熱への暴露を伴う多くの製品および製法での色安定化剤として知られている。当該抗酸化剤がどのように作用するかについて多くの一般的機構が文献に提示されてきた。しかしながら、重合体の構造、重合体処理条件、(時間、温度、圧力)および抗酸化剤の構造のような種々の因子が、何れの抗酸化剤または抗酸化剤の組合せが一番良く作用するかを決定する。差し迫った現時点の問題に関してハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル生成物(HQEE)に対する安定剤として、フェノールに基づく−2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、2,2−オキサリジアミドビス[エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート;非環式ホスファイトに基づく−トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト;環式ホスファイトに基づく−2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイトおよびビス環式ホスファイトに基づく−ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール、ジイソステアリルペンタエリスリトールジホスファイトを含んだ幾つかの化学作用を評価した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、同じ三級炭素原子に結合しているビス環式ホスファイトの二重環構造を含有するホスファイト化合物がハイドロキノンヒドロキシエチルエーテル類およびいずれの現存不純物類の色安定化に非常に効果的であることが驚いたことに見出された。フェノールに基づく抗酸化剤は色安定性につき何の改善ももたらさないことが見出され、それらの製品の幾つかでは色を濃くするとの評価を受けた。先行技術では使用した色安定剤が1個の環式ホスファイトまたはアリール或いはシクロアルキル環にパラ位で結合した2個の官能基のいずれかを有する分子であるホスファイトであったのに反して、本発明に従って使用する色安定剤は当該2個の環が同じ三級炭素原子に結合するスピロ環構造を有する。先行技術(米国特許第3,592,858号)で使用されるホスファイトの色安定化効果では僅かな改善が見られたが、市販のHQEEで使用すると充分でなく、本発明者が驚くことにホスファイト分子中の同じ三級炭素原子に結合している二重環構造を含有するホスファイト化合物がハイドロキノンのヒドロキシアルキルエーテル類の色安定化に非常に効果的であることを見出した。好ましくは当該ハイドロキノンのヒドロキシアルキルエーテル類は2モルのEOと1モルのハイドロキノンの純粋付加物を80%より多く含有し、大層好ましくは2モルのEOと1モルのハイドロキノンの純粋付加物を90%より多く含有する。市販のヒドロキノンのヒドロキシアルキルエーテル類は一般的に2モルのEOと1モルのハイドロキノンの純粋付加物を90%より多く含有し、トリエーテル(3モルのEOと1モルのハイドロキノン)が主な種である他の種類を10%よりは少なく含有している。同じ三級炭素原子に結合している環式ホスファイトの二重環構造を含有している適切なホスファイト化合物は市販で入手可能なWeston 619FおよびDoverphos 1220のようなホスファイト類である。このタイプの抗酸化剤を評価して使用レベルを最適化すると0.2%から3%であり、相当好ましくは0.5%と1.0%であった。分子中の同じ三級炭素原子に結合した環式ホスファイト類の二重環構造を含有するホスファイト化合物類は最適な化学構造を有していると考えられている。これは同じ三級の炭素原子に結合した2個のホスファイト環が立体的に歪みのある状態にあるからである。
【0006】
本明細書で開示した色安定化剤はハイドロキノンのヒドロキシアルキルエーテル類を製造している間に加えることができ、後に加えることもできる。製造時に加えれば、初期の色がより薄い生成物を作るのに役立てることができる。同じように、色安定化HQEEから作られるポリウレタン商品は初期の色がより薄く、強化された色安定性を示す。
【化1】

【0007】
本発明を以下の実施例および比較例に更により詳細に説明する。明確に他に述べなければ全ての割合およびパーセンテージは重量で、全ての温度は摂氏である。
【実施例1】
【0008】
実験手順:以下の分析値を持つ市販のHQEEを使用して抗酸化剤の効果を評価した。当該分析値はハイドロキノンのジエチルエーテル(ハイドロキノン1モルにEO2モルを付加)を92%、ハイドロキノンのトリエーテル(ハイドロキノン1モルにEO3モルを付加)を7%、他を1%についてである。このHQEEの14グラムの試料へ当該混合物の重量に基づいて1%の量の抗酸化剤を加えて、表1の抗酸化剤についてまず比較した。当該混合物を窒素下で150℃に加熱し、4時間目に混合して当該混合物の色を比較した。4時間後の色は溶融したHQEE材料につきガードナー色の概数を用いて比較した。ガードナー色結果は下の表1に示す。
【表1−1】


【表1−2】


下の表2は結果を示す。表2で分かるように、最も効果ある薬剤はWeston 619F(試料2)とDoverphos 1220(試料10)であった。表で分かるように4時間時点の対照の読みは色がガードナーで1から16に上昇し、本発明の添加物についての当該色はガードナー1と2の範囲である。
【表2】

【0009】
本発明をその特定な実施形態を参照にして上で説明したが、当明細書で開示した発明の概念から外れることなく多くの変形、修正および変容をなすことは可能であることは明らかである。従って、本発明は添付請求項の精神および広い範囲の中に入る変形、修正および変容を包含するものとしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)各ヒドロキシアルキル基が1個から4個の炭素原子を持つハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテル、および(b)ビス環式ホスファイト化合物の変色防止効果量を含有していることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルが、少なくとも純度80重量%の工業用等級品であることを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項3】
当該工業用等級品が当該組成物の重量に基づき少なくとも90%の純度を有することを特徴とする、請求項2の組成物。
【請求項4】
組成物(b)は以下の構造式で表されることを特徴とする、請求項1の組成物。
【化1】

【請求項5】
R1およびR2は、ステアリル、イソデシルおよびそれらの組合せからなる群より選択した部分であることを特徴とする、請求項4の組成物。
【請求項6】
当該組成物の重量に基づき約0.1パーセントと約5パーセントの間の量の成分(b)が存在することを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項7】
当該組成物の重量に基づき約0.3パーセントと約2パーセントの間の量の成分(b)が存在することを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項8】
当該組成物の重量に基づき約0.5パーセントと約1パーセントの間の量の成分(b)が存在することを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項9】
ビス環式ホスファイト化合物の変色防止効果量を当該組成物に組み込むことを含むことが特徴であるハイドロキノンのジヒドロキシアルキルエーテル含有組成物の変色を安定化する方法。
【請求項10】
前記変色防止効果量が、ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルに当該ビス環式ホスファイトを加えた重量に基づき約0.1パーセントと約5パーセントの間であることを特徴とする、請求項9の方法。
【請求項11】
前記変色防止効果量が、ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルに当該ビス環式ホスファイトを加えた重量に基づき約0.3パーセントと約2パーセントの間であることを特徴とする、請求項9の方法。
【請求項12】
前記変色防止効果量が、ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルに当該ビス環式ホスファイトを加えた重量に基づき約0.5パーセントと約1パーセントであることを特徴とする、請求項9の方法。
【請求項13】
前記ビス環式ホスファイトが以下の構造式を有することを特徴とする、請求項9の方法。
【化2】

【請求項14】
R1およびR2がステアリル、イソデシルおよびそれらの組合せからなる群より選択した部分であることを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルを作るのに適している反応混合物にビス環式ホスファイト化合物の変色防止効果量添加を含むことを特徴とする製法である、ヒドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルを調製するための改良された製法。
【請求項16】
前記反応混合物の反応後に前記ビス環式ホスファイト化合物の前記効果量を加えて前記ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルを生成することを特徴とする、請求項15の改良された製法。
【請求項17】
ハイドロキノンのジ−ヒドロキシアルキルエーテルをビス環式ホスファイト化合物の変色防止効果量と共に含有することを特徴とする、ポリウレタン形成反応混合物。
【請求項18】
請求項17の反応混合物を反応することにより製造する注型エラストマーまたは熱可塑性エラストマー。

【公表番号】特表2007−521375(P2007−521375A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518771(P2006−518771)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021207
【国際公開番号】WO2005/004816
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500000175)アーチ ケミカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】