説明

ハイブリッド型ICカードおよびその製造方法

【課題】 想定される曲げ応力によっても内部の電気的な接続箇所が剥離することのない、耐久性の高いハイブリッド型ICカード、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 カード基材11の内部に巻回されるアンテナコイル12の2箇所の終端部に抵抗溶接により金属板13をそれぞれ接続する。金属板13の他端の表面には溝加工部13aをそれぞれ設け、ICモジュール16、小基板17を含むCOBのアンテナ接合端子18に対向させる。カード基材11の穿孔加工部15に前記COBを挿入して加圧加熱することにより、金属板13の溝加工部13aとアンテナ接合端子18をはんだ付け接合する。この構成では金属板13上のはんだ付け接合面積が広いことから、信頼性の高い電気的接続を行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触および非接触の両方の手段によって外部装置と情報信号の送受信を行うことのできる、ハイブリッド型ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
外部装置と情報信号の送受信を行うICカードの通信手段としては、ICカードの表面に金属箔による接触端子を設けて外部装置と有線にて通信を行う方法、および、ICカードの基材の内部にアンテナコイルを設置し、外部装置と無線により通信を行う方法の両方がある。ICカードの用途を拡大するには、様々な外部装置に対応したカードとすることが望ましい。そのため、1枚のICカードに金属箔の接触端子とカード内部のアンテナコイルの両方を設けることで、外部装置の方式によらず、接触式、非接触式の両方の外部装置と送受信を行うことのできる、ハイブリッド型ICカードが開発されている。
【0003】
ハイブリッド型ICカードの従来の構成例について図3および図4をもとに説明する。特許文献1にはハイブリッド型ICカードが内蔵するICモジュールの2箇所の端子に対し、アンテナコイルが備える2箇所の終端端子をそれぞれはんだ付け接合した構成が記載されている。図3は特許文献1におけるハイブリッド型ICカードの従来例の構成を示す図であり、図3(a)はその組立構造を示した上面図、図3(b)は図3(a)のA−Aにおける断面図である。図3(a)および図3(b)ではハイブリッド型ICカードにICモジュールを取り付ける前の状態を示していて、図3(b)では両者は分離した状態であり、また図3(a)ではICモジュールを記載していない。
【0004】
図3(a)および図3(b)に示すように、アンテナコイル32(図3(a)では上面からは直接見えないので点線にて表示)を内蔵するカード基材31の中央やや左には、ICモジュール36を搭載するための穿孔加工部35が設けられている。穿孔加工部35は深さの異なる2段の凹みから構成されており、そのうち浅い凹みの領域には、アンテナコイル32の終端端子33が2箇所で露出している。図3に示す従来例では、この終端端子33が渦巻き状に形成されていることが特徴である。穿孔加工部35のうち深い凹みの部分はICモジュール36が嵌め合いとなる空間であり、図3(b)では底部に接着剤34が注入されている。なお穿孔加工部35の形成には、樹脂により一度カード基材31を形成した後に、切削加工により形成する方法が好適である。また接着剤34は、ICモジュール36が挿入された後にはカード基材31との隙間に充填されることになり、カード基材31にICモジュール36を接着固定する。アンテナコイル32の2箇所の終端端子33はそれぞれ渦巻き状に形成されており、この形状はICモジュール36との電気的接続の際の信頼性向上のために一定の役割を果たしている。
【0005】
図3(b)におけるICモジュール36の上側には小基板37が接続固定されており、両者はCOB(Chip On Board:基板実装チップ)を構成している。小基板37の表面(図3(b)での上面)には、ハイブリッド型ICカードを接触型のICカードとして用いるための金属接点である外部端子40が形成されている。また小基板37のうちICモジュール36の周辺部の2箇所にはアンテナ接合端子38が設けられていて、その表面には予備はんだ39が形成されている。アンテナ接合端子38とアンテナコイル32の終端端子33とは、ICモジュール36を接合する際に、この予備はんだ39によってそれぞれ電気的に接続される。
【0006】
図3(b)において、カード基材31の穿孔加工部35にICモジュール36を含むCOBを挿入して固定する際には、図3(b)の矢印の向きにまず穿孔加工部35に前記COBを挿入し、次いで接触箇所の近傍を加圧加熱することで予備はんだ39を溶融させて、アンテナコイル32の終端端子33とアンテナ接合端子38とを電気的に接続させる。この際に接着剤34としてホットメルトや熱硬化性樹脂などを用いるならば、一度の加圧加熱により、両接点間のはんだ付けと樹脂によるCOBのカード基材31への接着固定が同時に実施可能であり、カード基材31内へのCOBの接続方法として優れた方法である。なおカード基材31は複数の樹脂の層からなる積層構造としても構わない。
【0007】
一方、特許文献2には、ICモジュールをハイブリッド型ICカードに内蔵させるための、特許文献1とは異なる構成が記載されている。図4は特許文献2におけるハイブリッド型ICカードの従来例の構成を示す図であり、図4(a)はその組立構造を示した上面図、図4(b)は図4(a)のA−Aにおける断面図である。図4では図3と異なり、ハイブリッド型ICカードの組立完成後の状態を示していて、図4(a)、図4(b)ではともにICモジュールはカード基材に固定されている。
【0008】
図4(a)に示すように、カード基材41の中にはアンテナコイル45(図4(a)では上面からは直接見えないので点線にて表示)が埋め込まれており、アンテナコイル45の2箇所の終端端子46はICモジュール47に接続されている。ただし図4(a)ではハイブリッド型ICカードの上面に露出している外部端子51のみが見えており、その下に隠れたICモジュール47は図示されていない。一方、図4(b)に示すように、カード基材41は表面層42、アンテナシート43および裏面層44の3層の樹脂層からなる積層構造であり、このうちアンテナシート43の内部上方には、ハイブリッド型ICカード内に埋め込まれたアンテナコイル45の断面が図示されている。図4(b)の左側上方にはICモジュール47が設けられており、その上部には外部装置への接点である金属端子の外部端子51が設けられていて、表面層42から露出している。
【0009】
ICモジュール47は、その下側に設置されたソケット48の凹みに本体部分が嵌り込むように配置されている。ソケット48には2箇所の貫通孔49が設けられていて、その内部をそれぞれ接続部材50が貫通し、アンテナコイル45の2箇所の終端端子46とICモジュール47とを電気的に接続している。ICモジュール47に設けられた2箇所の電気接点と接続部材50の間、および接続部材50と2箇所の終端端子46の間はそれぞれ抵抗溶接によって強固に接続されている。ICモジュール47はその周辺部のみがソケット48の縁の部分に接着されて支えられており、ソケット48の凹みに嵌り込んだ本体部分はソケット48に固定されていない。ソケット48はカード基材41と同種の樹脂によって形成されており、その底面全面に接着剤が塗布されてアンテナシート43に固定されている。接続部材50は可撓性に富む針金状の金属棒であり、ハイブリッド型ICカードに外力が加えられて撓みが生じた場合などには、自身がわずかに変形することにより、ICモジュール47や終端端子46との接続部の破壊を防ぐことができる。
【0010】
【特許文献1】特開2004−62635号公報
【特許文献2】特開2003−132322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上記した特許文献1に記載のハイブリッド型ICカードは、ハイブリッド型ICカードにおいてアンテナコイルの終端端子を渦巻き状に加工することによって、はんだ付け接合を行った場合であっても、接続箇所が外力による曲げ応力に抗して充分な接続強度を保ち続けるように構成したものである。この構成は、カード基材としてPETG(ポリエチレンテレフタレート共重合体)やPVC(ポリ塩化ビニル)を使用した、従来の一般的なキャッシュカード、クレジットカードなどの寸法規格(85.6mm×54.0mm×0.76mm)のカードに適用する場合には、通常用途において想定される外力による曲げ応力に対して充分な信頼性を備えている。しかし、今後の規格として検討されている薄型のカードに適用する場合や、とくに耐久性が要求される用途に用いる場合などは、ICモジュールとアンテナコイルの終端端子との接続箇所に、より厳しい信頼性が必要となる場合がある。
【0012】
特許文献2に記載のハイブリッド型ICカードは、前記の要求のうち、信頼性の強化について解決を図ったものである。ICモジュールとアンテナコイルの終端端子との接続を抵抗溶接のみで行うことにより、外力による曲げ応力に対する信頼性の向上を図っている。しかし、この構成のハイブリッド型ICカードは以下に記す2つの課題を有している。
【0013】
第1の課題は、ICモジュールが設置された領域におけるカードの厚さの増加である。図4に記載されているように、特許文献2に記載のハイブリッド型ICカードでは、ICモジュールの本体部分をその直下に配置したソケットの凹みに嵌め合わせる構成であり、このソケットの厚さだけカード全体の厚さの下限がどうしても大きくなってしまう。従来の一般的なカードの寸法規格ではこの厚さは0.76mmであるため、この規格内にカードの厚さを収めることは可能であるが、これよりも薄型のカードに特許文献2に記載の構成を適用することは、ソケットを用いる限りは寸法上不可能である。現在ではハイブリッド型ICカードの用途によっては厚さを0.4mm〜0.5mm程度まで薄くしてほしいという要求があり、その場合にも使用可能なカードが求められている。
【0014】
第2の課題は、ICモジュールの電気接点に溶接された接続部材とアンテナコイルの終端端子との間の抵抗溶接の実施により、その周囲に生じるダメージの問題である。ICモジュールの電気接点と接続部材との間の抵抗溶接は、ICモジュールをソケットに装着する前に実施されるためにとくに問題はない。しかしソケットの貫通孔に挿入された接続部材のもう一端とアンテナコイルの終端端子との間の接続の際には、アンテナシートの内部に埋め込まれ、その表面のみがアンテナシートから露出しているアンテナコイルの終端端子に、直接高熱を加えて抵抗溶接を行う必要がある。
【0015】
この場合、両者の接続部の周囲のアンテナシート、および場合によってはさらにその下の裏面層の上部も含めて熱による影響を受けることとなり、カード基材を形成する樹脂の変質や変形、組織の硬化などが生じる可能性がある。この両者の接続を超音波接合とした場合には熱による影響は小さくなるが、代わりに治具による局部的な大きな加圧が必要となるので、やはり組織に対する影響の懸念は残る。またはんだ付け接合や導電性接着剤による電気的接続では、両者の接続面積が構造上かなり小さいために、充分な強度を保った接続を行うことが困難である。
【0016】
従って、本発明の課題は、カード基材内にICモジュールおよびアンテナコイルを備えたハイブリッド型ICカードであって、ICモジュールの電気接点とアンテナコイルの終端端子との間の電気的な接続における課題の解決である。即ち、カードがとくに耐久性を要求される用途に用いられる場合であっても、この接続箇所が剥離に対して充分な信頼性を持つような接続方法を提案することである。またこのハイブリッド型ICカードは、ICモジュールに対してカードの表面に垂直な向きにソケットを設けるなどの構造により、カード厚さの下限を大きくすることのない構成であることが条件である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ICモジュールの電気接点とアンテナコイルの終端端子は、従来より抵抗溶接、超音波接合、はんだ付け、導電性接着剤による電気的な接続が行われてきた。このうち抵抗溶接や超音波接合は狭い接合面積でも強固な接合を行うことが可能であるが、接合時に接続箇所の近傍が高温となったり、接続時に治具を圧接する必要があるなどの理由により、接続箇所の構造によっては実施できない場合がある。一方、はんだ付けや導電性接着剤による接続ではそのような制約は少ないが、接続箇所が充分な接続強度を得るには、接続領域としてある程度の面積が必要であるという課題がある。
【0018】
特許文献1ではアンテナコイルの終端端子とICモジュールの電気接点とを直接接続していて、接続手段としてはんだ付けを採用している。一方、特許文献2では両者の間に金属線からなる接続部材を介在させ、抵抗溶接による接続としている。本発明は特許文献1に記載の方法をさらに改良したものであり、はんだ付け接続を採用する点は特許文献1の場合と同様である。しかし、アンテナコイルの終端端子とICモジュールの電気接点とを直接接続せず、その間に接続部材を介在させることにより、はんだ付けに関わる接続箇所の面積を広げ、前記課題を解決可能なハイブリッド型ICカードを実現するものである。
【0019】
上記課題の解決のために、本発明では、少なくとも一端の表面に複数の溝を形成した金属板を2枚設け、ICモジュールが備える2箇所の電気接点と、前記2枚の金属板の溝を形成した面とをはんだ付けにより接合する。溝が形成された金属板の表面積は、特許文献1における渦巻き状のアンテナコイルの終端端子よりも広く、ICモジュールの電気接点とのはんだ付け接合では充分な接合強度を得ることができる。金属板の表面の溝は、その形成方法が容易なことから格子状の溝とすることが好ましい。この溝の効果は、溝を設けない場合に比べて金属板のはんだ付け領域の表面積をさらに増加させることであり、はんだ付け接合強度の向上に貢献している。金属板の材質は、はんだ付け特性や後記の溶接容易性などの面から銅板が適しており、またその表面にはんだ濡れ性に優れた金属によるめっきが施されていても構わない。
【0020】
溝が形成された金属板のうち、ICモジュールの電気接点とのはんだ付けに関与しない側の端部には、アンテナコイルの終端端子が抵抗溶接によりそれぞれ接続されている。この抵抗溶接による接続は、ハイブリッドICカードを構成するカード基材にアンテナコイルを埋め込む前に実施するものであり、そのため溶接箇所の周囲のカード基材にこの抵抗溶接がダメージを与えることはない。アンテナコイルとしてはポリウレタン被覆銅線などが適しているが、この被覆銅線によるアンテナコイルの溶接の場合は、抵抗溶接による加熱によってポリウレタン被覆が分解して除去されるために、溶接前にポリウレタン被覆を剥離する工程を省くことができる。
【0021】
アンテナコイルの終端端子は2箇所存在するので、表面の一部に溝を設けた金属板も2枚設置する必要がある。この2枚の金属板の相対位置は任意であり、ICモジュールを挟んで両側からICモジュールを支えるように設けてもいいし、あるいはICモジュールの1つの側面の近傍に2枚の金属板を並べて設けてもよい。なお本発明によるハイブリッドICカードの構成や製造方法の中で、金属板の導入と、ICモジュールの電極端子と金属板とのはんだ付け接続の実施、およびアンテナコイルの終端端子と金属板との抵抗溶接の実施に関する部分以外については、前記特許文献1の場合とほぼ同一である。
【0022】
以上記した、表面の少なくとも一部に複数の溝を設けた金属板を用いるハイブリッドICカードの製造方法は、例えば以下のようなものである。まずポリウレタン被覆銅線などによってアンテナコイルを作製し、その2箇所の終端端子に、表面の一部に溝を設けた金属板をそれぞれ抵抗溶接により接続する。このとき抵抗溶接を行わない領域に、溝を設けた表面が残るようにする必要がある。この金属板には銅板などが適している。次いでカード基材として、樹脂などの材料を用いて出来上がりのカードよりも薄い板をまず形成する。この薄い板の表面に前記の終端端子に金属板を溶接したアンテナコイルを搭載して、さらに前記の薄い板と同種の材料によってその上を覆い、アンテナコイルを内蔵したカード基材を作製する。
【0023】
次いで前記カード基材を切削加工し、前記2枚の金属板の溝を設けた表面を露出させるとともに、カード基材にCOBを内蔵するための凹部を形成する。この凹部の底に有機接着剤などを充填したのち、2箇所の電気接点に予備はんだを施したCOBをこの凹部に挿入し、加圧加熱して2枚の金属板とのはんだ付け接合を実施する。同時にICモジュールの加圧によって凹部の底の接着剤をICモジュールの周囲に充填させ、カード内部にICモジュールを固定する。このときCOBは、小基板の片方の面に接触式ICカードとして用いるための金属端子を設け、前記小基板の反対側の面の中央にICモジュールを固定して、その周辺に前記金属板にはんだ付け接続を行うための2箇所の電気接点を設けた形状とすることが好適である。カード基材の凹部にCOBが固定された後のハイブリッドICカードは、一方の面に前記金属端子が露出しているのみで他には外側からは何も見えない、表面が平坦な樹脂製カードである。
【0024】
即ち、本発明は、アンテナコイルおよび外部接触端子の両方を備え、前記アンテナコイルにより外部装置とデータを非接触にて送受信する機能と、前記外部接触端子を介して外部装置とデータを送受信する機能とをともに有し、ICモジュールを備えるハイブリッド型ICカードであって、前記ハイブリッド型ICカードは内部に2枚の金属板を備え、前記ICモジュールは2つの電気接点を備え、前記アンテナコイルは2つの終端端子を備え、前記2つの終端端子が前記2枚の金属板にそれぞれ電気的に接続され、前記2枚の金属板はその表面の少なくとも一部領域にそれぞれ複数の溝を備え、前記ICモジュールが備える2つの電気接点が、前記2枚の金属板の表面の複数の溝を備える一部領域に、それぞれ電気的に接続されていることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0025】
また、本発明は、前記2枚の金属板の一部領域が備える複数の溝が、格子状に形成された溝であることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0026】
さらに、本発明は、前記2枚の金属板が、前記ICモジュールを挟み対向する位置にそれぞれ設置されていることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0027】
さらに、本発明は、前記2枚の金属板が、前記ICモジュールの1つの側面の近傍に、それぞれ並列して設置されていることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0028】
さらに、本発明は、前記アンテナコイルが備える前記終端端子と前記金属板とが、それぞれ溶接によって電気的に接続されていることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0029】
さらに、本発明は、前記終端端子と前記金属板との間の溶接が抵抗溶接であることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0030】
さらに、本発明は、前記アンテナコイルが備える前記終端端子と前記金属板とが、それぞれ超音波接合によって電気的に接続されていることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0031】
さらに、本発明は、前記金属板の表面の複数の溝を備える一部領域と、前記ICモジュールが備える電気接点とが、それぞれはんだ付け接合によって電気的に接続されていることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0032】
さらに、本発明は、前記アンテナコイルがポリウレタン被覆銅線からなることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0033】
さらに、本発明は、前記金属板が銅板であることを特徴とするハイブリッド型ICカードである。
【0034】
さらに、本発明は、2つの終端端子を備えたアンテナコイルのそれぞれの終端端子に、表面の少なくとも一部領域に複数の溝が形成された2枚の金属板を、それぞれ1枚ずつ抵抗溶接によって接続し、前記アンテナコイルおよび前記金属板を内部に内蔵したカードを形成し、前記カードを切削して凹部を設けるとともに、前記2枚の金属板の表面の複数の溝が形成された一部領域を前記凹部内に露出させ、周辺部に2箇所の電気接点を有するICモジュールを前記凹部内に設置し、前記ICモジュールの前記2箇所の電気接点を、前記凹部内に露出した、前記2枚の金属板の表面の複数の溝が形成された一部領域に、それぞれはんだ付けによって接合することを特徴とするハイブリッド型ICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、カードの使用上想定される外力による曲げ応力などによって、内部の電気的な接続箇所が剥離することのないハイブリッド型ICカード、およびその製造方法を提供することができる。この外力による曲げ応力に対する耐久性は、従来の一般的な厚さのハイブリッド型ICカードの場合だけではなく、より薄型としたカードの場合や、とくに耐久性が要求される用途に用いられるカードの場合であっても、同様に充分な信頼性をもって得られるものである。この構成は、ハイブリッド型ICカードに内蔵するアンテナコイルの終端端子をICモジュールに接続する場合に、本発明にて提案された、金属板を介在させる方法により実現されたものである。
【0036】
即ち、少なくとも一端の表面に複数の溝を形成した金属板を2枚導入し、ICモジュールの電気接点と金属板のこの溝付きの表面とをはんだ付けにより接合する。この金属板の表面の溝は、形成方法が容易なことから格子状の溝とすることが好ましい。接続箇所の金属板の表面は、電気接点をアンテナコイルの終端端子に直接接続する場合よりも元々面積が広く、またその表面に溝が設けられたことにより、その表面積はさらに広くなっている。この広い表面積のためにはんだ付け接合によっても充分な接着強度を得ることができる。一方、アンテナコイルの終端端子と前記金属板との接続は抵抗溶接により行うが、この工程をカード基材へのアンテナコイルの埋め込み前に実施しているため、溶接箇所の周囲のカード基材にダメージを与えることはない。また両者は抵抗溶接により充分な強度をもって接続される。以上の構成により、外力に抗して要求される充分な耐久性を備えたハイブリッド型ICカードの構成、およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態によるハイブリッド型ICカードについて、図1および図2を参照しながら説明する。このうち図1は本発明におけるハイブリッド型ICカードの第1の実施の形態の例について示す図であり、図1(a)はハイブリッド型ICカードの上面図、図1(b)は図1(a)のA−Aにおける断面図である。図1(a)および図1(b)はCOBを装着する前の状態を示していて、図1(b)では両者がまだ分離しており、また図1(a)ではCOBを記載していない。
【0038】
図1(a)および図1(b)に示すように、アンテナコイル12(図1(a)では上面からは直接見えないので点線にて表示)を内蔵するカード基材11の中央やや左には、ICモジュール16や小基板17からなるCOBを搭載するための穿孔加工部15が設けられている。カード基材11は複数の樹脂層が積層されてなる複合構成であり、アンテナコイル12も内部の樹脂層の層間に設置されている。穿孔加工部15はカード基材11の積層後に表面を切削して形成したものであり、その方法としてはメカニカルミリング法などが適している。穿孔加工部15は深さが2段階に設定されていて、このうち浅い棚状に切削した領域の底面には、後記の金属板13の溝加工部13aが露出している。また深い凹み状の領域の底部には、ホットメルトや熱硬化性樹脂などの接着剤14が層状に注入されていて、後記のICモジュール16を含むCOBとの接続固定のために用いられる。第1の実施の形態の場合は図1(a)に記すように、穿孔加工部15の深い凹み状の領域は浅い棚状に切削した領域の中央部に、ほぼ左右対称となるように設けられている。
【0039】
ここでアンテナコイル12の2箇所の終端端子は、2枚の金属板13のそれぞれ一方の端部に抵抗溶接により接合されている。金属板13のそれぞれもう一方の端部の表面には溝加工部13aが存在している。図1(a)に示すように、第1の実施の形態の場合は金属板13は穿孔加工部15の浅い棚状の左右の領域にそれぞれ1つずつ配置されていて、深い凹み状の領域を両側から挟んでいる。溝加工部13aは、金属板13の一端に複数の溝を形成したものであり、形成容易性の面から縦横の格子状の溝とすることが好適である。図1(b)におけるICモジュール16の上側には、特許文献1に記載の従来例と同様に小基板17が接続固定されており、ICモジュール16と小基板17はCOBを構成している。小基板17の表面(図1(b)での上面)には金属接点である外部端子20が形成されているが、ハイブリッド型ICカードを接触型のICカードとして用いる際の外部装置との電気接点であって、一般には金接点である。小基板17のうちICモジュール16の周辺部の2箇所にはアンテナ接合端子18が設けられていて、その表面には予備はんだ19が施されている。
【0040】
図1(b)に示すように、2箇所のアンテナ接合端子18は2枚の金属板13の溝加工部13aとそれぞれ互いに対向しており、ハイブリッド型ICカードを作製する際に、COBの接合のための加圧加熱によって、予備はんだ19が溶融してはんだ付け接合されることとなる。金属板13のうちでこのはんだ付け接合に関与する領域の面積は、例えば特許文献1に記載の従来例におけるアンテナコイル12の終端部よりも構造的に充分に大きくすることができる。加えてその表面に設けられた溝加工部13aは、その表面積をさらに増大させる役割を有しており、また溝形成によりもたらされる表面の凹凸は、はんだ付け強度のさらなる向上や接続箇所における剥離防止のために有効である。
【0041】
ここで穿孔加工部15のうち深い凹み状の領域は、ICモジュール16が嵌め合いとなる空間である。カード基材11の穿孔加工部15に、ICモジュール16を含むCOBを挿入して固定する際には、まず前記COBを図1(b)の矢印の向きに挿入して加圧し、次いで加圧したままこの領域の近傍を加熱することで予備はんだ19を溶融させて、アンテナコイル12の終端端子とアンテナ接合端子18とを電気的に接続させる。
【0042】
一方、穿孔加工部15の底には前記材質の接着剤14の層が設けられているが、この層はこのときの一連の加圧加熱とその後の冷却によって固着することとなるので、前記はんだ付けと同一の工程により接合させることが可能である。この層が熱硬化性樹脂の場合は最初の加圧によって、ホットメルトの場合は次の加熱によって、接着剤14が挿入されたICモジュール16の周囲に回り込み、カード基材11との空隙に流入する。これにより穿孔加工部15はICモジュール16と接着剤14によって隙間なく充填され、互いに接着されることとなる。つまりはんだ付けとCOBの接着固定とを同時に実施可能な方法であり、カード基材11内へのCOBの接続方法として優れた方法である。なお接着剤14は、ハイブリッド型ICカードに加えられる外力による曲げ応力に抵抗してICモジュール16を保護し、かつカード基材11の破損も防ぐ必要があるので、ある程度の可撓性を持っていることが望ましい。
【0043】
また図2は本発明におけるハイブリッド型ICカードの第2の実施の形態の例について示す図であり、図2(a)はハイブリッド型ICカードの上面図、図2(b)は図2(a)のA−Aにおける断面図である。図2(a)および図2(b)は図1の場合と同様にCOBを装着する前の状態を示していて、図2(b)では両者がまだ分離しており、また図2(a)ではCOBを記載していない。
【0044】
図2に示す第2の実施の形態では、前記第1の実施の形態の場合と各要素の材質は同一であり、また構成もほとんど類似している。前記第1の実施の形態の場合との構成上の相違は、穿孔加工部25の形状と金属板23の配置である。図2(a)において、アンテナコイル22[図2(a)では上面から直接見えないので点線にて表示]を内蔵するカード基材21の中央やや左にはICモジュール26を搭載するための穿孔加工部25が設けられているが、2段階に設定された深さの領域のうち、深い凹み状の領域は、浅い棚状に切削した領域の中央ではなく、図の右側に偏って設けられている。また2枚の金属板23は、浅い棚状の領域のうち図の左側の広い領域に2枚並べて配置されており、図の右側の狭い領域には設置されていない。2枚の金属板23の表面にそれぞれ設けられた溝加工部23aは、いずれも穿孔加工部25の図の左側の広い領域に露出している。なおこのアンテナ接合端子28には予備はんだ29が施されている。
【0045】
図2(b)において、ICモジュール26はCOB内で小基板27に対してやはり図の右側に偏って設けられている。アンテナ接合端子28はICモジュール26の左側にしか設けられておらず、その設置位置は、それぞれ2枚の金属板23の溝加工部23aに対向する位置となっている。穿孔加工部25の深い凹み状の領域にはホットメルトや熱硬化性樹脂などの接着剤24の層が設けられている。COBの小基板27の図の上側の表面には金接点である外部端子30が形成されており、これは接触型のICカードとして用いる際の外部装置との電気接点である。
【0046】
ICモジュール26を含むCOBを穿孔加工部25に挿入して固定する際には、まず前記COBを図2(b)の矢印の向きに挿入して加圧加熱することにより、アンテナ接合端子28に施された予備はんだを溶融させ、対向する位置に設けられた2枚の金属板23の溝加工部23aに、それぞれはんだ付け接合する。同時に接着剤24をICモジュール26の周囲に回り込ませてカード基材21との隙間を充填する。COBと金属板23との電気接点は図2(b)の左側にしかないので、COBはカード基材21に対して片持ち梁のような構成となる。しかし両者の隙間は接着剤24によって充填され、これにより両者は充分な強度で接合されることとなるので、ハイブリッド型ICカードの組立後に外力による曲げ応力が加えられても、COBのカード基材21の穿孔加工部25からの剥離を防止することが可能である。
【実施例】
【0047】
本発明の第1および第2の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードを作製し、信頼性試験を行ってカードの曲げ応力に対する耐久性を検証した。
【0048】
(実施例1)
本発明の第1の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードとして、図1に記載の形状のカードを作製して外力に対する耐久性を検証した。作製したカードは一般的なクレジットカードと同じ、85.6mm×54.0mm×0.76mmの寸法の樹脂製カード(以下、普通カード)である。カード基材はPETGであり、カードの中央部の穿孔加工部に埋め込まれたCOBの寸法は、ICモジュールが10mm角で厚さが300μm、小基板が18mm×12mmで厚さが200μm、カード表面に露出する金接点が10mm×10mmである。
【0049】
カード基材の内部のアンテナコイルは直径160μm、3ターンのポリウレタン被覆銅線であり、その両端が抵抗溶接された2枚の金属板は銅板で、縦5mm×横2mm×厚さ100μmである。金属めっきは設けられていない。抵抗溶接がなされた領域とは異なる端から2mm×2mmの領域の表面には格子状の溝が刻まれており、この溝はおおよそ間隔200μm、幅20μm、深さ10μmである。この領域は、COB内のICモジュールの左右に設けられた2箇所のアンテナ接合端子にそれぞれはんだ付けにより接合されている。また穿孔加工部は室温でも若干の可撓性を有するホットメルト接着剤により充填されており、COBがこの接着剤によって接合されている。なお実施例1では外部装置との非接触による通信の周波数帯域として16MHz帯を用いているが、非接触カードの使用において一般的な13MHz帯を用いる場合にも同様に適用することが可能である。
【0050】
この構成の普通カードを以下の方法によって作製した。まずPETGからなるシートを複数枚積層し、カード基材を形成した。このとき、3ターン巻回したポリウレタン被覆銅線の2箇所の終端部に、それぞれ銅製の金属板を抵抗溶接により接合したアンテナコイルを用意して、金属板とともにカード基材の積層途中でその内部に設置した。次いでこのカード基材をメカニカルミリング法によって切削加工し、カード基材内に穿孔加工部を形成した。この穿孔加工部は2段階の深さを持つ凹部であり、中央部に深い凹み状の領域を有している。またその周辺の浅い棚状に切削した領域には、前記2枚の金属板の、格子状の溝が設けられた領域の表面が露出するように穿孔加工部を形成している。次いで穿孔加工部の中央部の深い凹み状の領域に、加熱により流動性を得て、穿孔加工部内の隙間を充填することができる接着剤の層を設けた。この接着剤はホットメルトであるが、代わりに熱硬化性樹脂などを用いてもよい。
【0051】
一方、小基板にICモジュールを搭載し、ICモジュールの電気接点を、この小基板のICモジュールの周囲の表面に引き出してアンテナ接合端子としたCOBを作製した。この小基板内にはビアホールを設けておき、小基板の反対面にはこのビアホールを経由して外部装置に電気的に接続するための、金接点による外部端子を設けた。一方、アンテナ接合端子には鉛フリーはんだによる予備はんだを施してある。このCOBをカード基材の穿孔加工部内に挿入して加圧し、さらにはんだ溶融温度以上の一定温度に昇温して接続固定を行った。この加圧加熱によって、それぞれ予備はんだが施された2箇所のアンテナ接合端子と、2枚の金属板の溝加工部とが互いにはんだ付け接合され、また穿孔加工部内の接着剤によってCOBがカード基材内に接続固定された。この方法により前記寸法の普通カードを合計300枚作製した。初期状態ではどのカードも外観、寸法形状、ICカードとしての電気的特性のいずれも問題はなかった。
【0052】
このようにして作製したハイブリッド型ICカードに対し、日本工業規格のJISX6305−1「識別カードの試験方法−第1部:一般的特性の試験」に記載の方法に準拠した試験方法によってカードの曲げ試験を実施した。即ち、室温にて作製した普通カードの長辺の1辺を固定し、対向する反対側の長辺を掴み、カードの表面に垂直な向きに曲げ応力を加えてカードに反りを生じさせた。このとき普通カードの反りの量が10mmとなるようにした。この片側への曲げ応力の印加を1分当たり30回の割合で行い、合計250回連続して実施した。
【0053】
次いでカードの同じ長辺に対して今度は逆向きに曲げ応力を加え、カードを先程とは反対側に同じ頻度で10mmの反りを生じさせた。それが終了したら、今度は普通カードの短辺の1辺を固定し、対向する反対側の短辺を掴んでカードの表面に垂直な向きにやはり1分当たり30回の割合で曲げ応力を加え、今度はカードに20mmの反りを生じさせた。その後は同様に、カードを逆向きに同じ頻度で20mmの反りを生じさせた。100枚の普通カードに対し、この一連の曲げ応力の印加をそれぞれ順番に250回ずつ、合計1000回ずつ実施した。試験終了後に各カードの外観検査を行い、また外部装置との接触通信、非接触通信における電気的特性の応力試験前後での変化を評価した。以下ではこの一連の曲げ試験を通常試験と記述する。
【0054】
前記JISX6305−1に記載の方法による試験に引き続いて、より過酷な条件による2種類の方法によるカードの曲げ試験を実施した。第1の方法は、新規の普通カード100枚に対して、通常試験での4種類の各条件での試験回数を、それぞれ250回ずつから1000回ずつに増やしたものである。実際には通常試験のそれぞれ250回ずつ4条件の曲げ試験を行った後に、同じ一連の試験をさらに3回連続して実施して、各カードの外観検査、および電気的特性の応力試験前後での変化の評価を行った。以下ではこれを過酷試験1と記述する。
【0055】
第2の方法は、同様に新規の普通カード100枚に対して、通常試験での4種類の曲げ試験においてカードに与える反りの量をそれぞれ増やしたものである。この試験では、カードの長辺を固定した場合の反りの量を15mmに、カードの短辺を固定した場合の反りの量を30mmにそれぞれ増加させている。曲げ試験の実施回数は各条件とも250回、合計1000回で通常試験と変わらず、また曲げ応力を加える頻度も1分当たり30回の割合で通常試験と同じである。これらの一連の曲げ試験の終了後に、各カードの外観検査、および電気的特性の測定を行って応力試験前後での変化の評価を行った。以下ではこれを過酷試験2と記述する。
【0056】
(実施例2)
実施例1の場合と同様に、本発明の第1の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードとして、普通カードより厚さが薄いカード(以下、薄型カード)を作製し、外力に対する耐久性を検証した。作製したカードの内部構成や厚さ以外の形状寸法、製造方法などの各条件は全て普通カードと同じであり、また非接触通信の際に使用する周波数帯域も16MHzであって、普通カードの場合と同一としている。薄型カードの寸法は85.6mm×54.0mmと普通カードと同じであるが、厚さは0.50mmであり、この厚さを実現するために、普通カードの場合よりも薄い、厚さが200μmのICモジュールおよび厚さが150μm小基板を用いている。この薄型カードを実施例1の普通カードと同一の方法によって300枚作製し、実施例1の場合と同じ通常試験、過酷試験1、過酷試験2の3種類の試験を各100枚ずつ実施して、それぞれ外観検査、応力試験前後での電気的特性の変化の評価を行った。
【0057】
(実施例3)
さらに、本発明の第2の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードを作製し、外力に対する耐久性を検証した。作製したカードは図2に記載の形状であり、実施例1におけるカードと全く同じ外形寸法であって、やはり普通カードである。その内部構成や形状寸法、製造方法は実施例1の場合の普通カードに類似しているが、COBや対応するカード基材の穿孔加工部の形状寸法、および銅製の2枚の金属板の設置位置のみが異なっている。COB内のICモジュールは10mm角で厚さが300μm、小基板は15mm×12mmで厚さが200μmであり、カード基材に設けられた穿孔加工部は図2の場合のように左右対称ではなく、このうち深い凹み状の領域が図の右側に偏った形状である。また浅い棚状に切削した領域のうち、図の左側の領域には2枚の金属板を並べて配置している。なおそれ以外に用いたカードの構成要素は全て実施例1における普通カードと同一である。このカードを実施例1の場合と同様の方法によって300枚作製し、実施例1の場合と同じ通常試験、過酷試験1、過酷試験2の3種類の試験を各100枚ずつ実施して、それぞれ外観検査、応力試験前後での電気的特性の変化の評価を行った。
【0058】
(実施例4)
実施例3の場合と同様に、本発明の第2の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードとして、普通カードより厚さが薄い薄型カードを作製し、外力に対する耐久性を検証した。作製したカードの内部構成や厚さ以外の形状寸法、製造方法や使用周波数帯域などの各条件は全て実施例3に記載の普通カードの場合と同じである。ただしその厚さは0.50mmと、実施例2の場合と同じである。またこの厚さを実現するために、実施例2の場合と同じく、厚さが200μmのICモジュール、および厚さが150μm小基板を用いている。この薄型カードを実施例3の普通カードと同一の方法によって300枚作製し、実施例1の場合と同じ通常試験、過酷試験1、過酷試験2の3種類の試験を各100枚ずつ実施して、それぞれ外観検査、応力試験前後での電気的特性の変化の評価を行った。
【0059】
以上、実施例1ないし4において実施したハイブリッド型ICカードの信頼性試験の結果を表1に記載する。信頼性試験は通常試験、過酷試験1、過酷試験2の3種類であり、各試験を実施した後に、各100枚ずつのハイブリッド型ICカードに対してそれぞれ外観評価、電気的特性の変化の評価を行った。このうち外観評価は目視でひび、割れ、盛り上がりの発生などの異常が見られないかどうかを検査するものであり、また電気的特性の評価は外部装置と接触および非接触の両方の通信を行い、ICカードとしての一連のデータの送受信が問題なく実施可能であったかを評価して、各々の信頼性試験を実施する前の評価結果と比較したものである。なお表1において、評価結果が「○」の項目は100枚のカードの全数に問題がなかった(合格である)ことを示しており、数字は100枚中で合格とならなかったカードの枚数を示している。
【0060】
【表1】

【0061】
表1によると、実施例1および実施例3の普通カードでは、通常試験だけではなく、過酷試験1、過酷試験2のいずれの試験においても試験を実施した全数が合格となった。このことから、従来の用途に比較してとくに耐久性が要求される用途に用いられる場合であっても、本発明の第1および第2の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードは充分な信頼性を有していることが分かる。また、実施例2および実施例4の薄型カードでは、一部の過酷試験の場合に若干の不合格のカードが生じたものの、通常試験においては全数が合格となった。従って、本発明の第1および第2の実施の形態に基づいて作製したハイブリッド型ICカードは、より薄型とした場合であっても、一般的な用途においてはやはり充分な信頼性を有していることが分かる。
【0062】
以上示したように、本発明の実施の形態に基づくハイブリッド型ICカードによれば、カードの使用上想定される外力によって内部の電気的な接続箇所が剥離することのない、信頼性の高いハイブリッド型ICカード、およびその製造方法を提供することができる。この外力に対する耐久性は、従来の一般的な厚さのハイブリッド型ICカードの場合だけではなく、より薄型としたカードの場合や、またとくに耐久性が要求される用途に用いられるカードの場合であっても、充分な信頼性をもって得られるものである。また、上記実施例の説明は、本発明の実施の形態に係る場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のハイブリッド型ICカードの第1の実施の形態の例について示す図。図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のA−Aにおける断面図。
【図2】本発明のハイブリッド型ICカードの第2の実施の形態の例について示す図。図2(a)は上面図、図2(b)は図2(a)のA−Aにおける断面図。
【図3】ハイブリッド型ICカードの従来例の構成を示す図。図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のA−Aにおける断面図。
【図4】ハイブリッド型ICカードの従来例の構成を示す図。図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のA−Aにおける断面図。
【符号の説明】
【0064】
11,21,31,41 カード基材
42 表面層
43 アンテナシート
44 裏面層
12,22,32,45 アンテナコイル
33,46 終端端子
13,23 金属板
13a,23a 溝加工部
14,24,34 接着剤
15,25,35 穿孔加工部
16,26,36,47 ICモジュール
17,27,37 小基板
18,28,38 アンテナ接合端子
19,29,39 予備はんだ
20,30,40,51 外部端子
48 ソケット
49 貫通孔
50 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルおよび外部接触端子の両方を備え、前記アンテナコイルにより外部装置とデータを非接触にて送受信する機能と、前記外部接触端子を介して外部装置とデータを送受信する機能とをともに有し、ICモジュールを備えるハイブリッド型ICカードであって、
前記ハイブリッド型ICカードは内部に2枚の金属板を備え、
前記ICモジュールは2つの電気接点を備え、
前記アンテナコイルは2つの終端端子を備え、前記2つの終端端子が前記2枚の金属板にそれぞれ電気的に接続され、
前記2枚の金属板はその表面の少なくとも一部領域にそれぞれ複数の溝を備え、
前記ICモジュールが備える2つの電気接点が、前記2枚の金属板の表面の複数の溝を備える一部領域に、それぞれ電気的に接続されていることを特徴とするハイブリッド型ICカード。
【請求項2】
前記2枚の金属板の一部領域が備える複数の溝が、格子状に形成された溝であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項3】
前記2枚の金属板が、前記ICモジュールを挟み対向する位置にそれぞれ設置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項4】
前記2枚の金属板が、前記ICモジュールの1つの側面の近傍に、それぞれ並列して設置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項5】
前記アンテナコイルが備える前記終端端子と前記金属板とが、それぞれ溶接によって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項6】
前記終端端子と前記金属板との間の溶接が抵抗溶接であることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項7】
前記アンテナコイルが備える前記終端端子と前記金属板とが、それぞれ超音波接合によって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項8】
前記金属板の表面の複数の溝を備える一部領域と、前記ICモジュールが備える電気接点とが、それぞれはんだ付け接合によって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項9】
前記アンテナコイルがポリウレタン被覆銅線からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項10】
前記金属板が銅板であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のハイブリッド型ICカード。
【請求項11】
2つの終端端子を備えたアンテナコイルのそれぞれの終端端子に、表面の少なくとも一部領域に複数の溝が形成された2枚の金属板を、それぞれ1枚ずつ抵抗溶接によって接続し、
前記アンテナコイルおよび前記金属板を内部に内蔵したカードを形成し、
前記カードを切削して凹部を設けるとともに、前記2枚の金属板の表面の複数の溝が形成された一部領域を前記凹部内に露出させ、
周辺部に2箇所の電気接点を有するICモジュールを前記凹部内に配置し、
前記ICモジュールの前記2箇所の電気接点を、前記凹部内に露出した、前記2枚の金属板の表面の複数の溝が形成された一部領域に、それぞれはんだ付けによって接合することを特徴とするハイブリッド型ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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