説明

ハイブリッド式給湯装置

【課題】放熱装置への放熱時にヒートポンプ装置の運転状態及び停止状態の頻度を低減することができるハイブリッド式給湯装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド式給湯装置によれば、第1の制御装置100は、放熱用熱交換器4の熱媒体目標出口温度と放熱用熱交換器4の熱媒体出口温度との差が、第1の所定時間以上継続して5℃以上である場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力をより上段の能力値に上げる。第1の制御装置100は、熱媒体目標出口温度と熱媒体出口温度との差が、第2の所定時間以上継続して、1℃未満である場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力をより下段の能力値に下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に貯められた蓄熱用流体によって放熱装置に供給する放熱用熱媒体を加熱するとともに、補助熱源装置によって放熱用熱媒体を再加熱可能とするハイブリッド式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に記載の給湯機が知られている。当該給湯機は、ヒートポンプ装置によって加熱したタンク内の温水と、放熱手段の熱媒体とを放熱手段用熱交換器で熱交換して当該熱媒体を加熱し、放熱手段で必要とする暖房等の熱量を確保する。そして、当該給湯機は、放熱手段で熱媒体から放熱する間、つまり暖房中にタンクの残湯量が所定の残湯量以下となった場合には、放熱手段用熱交換器の水側入口水温と水側出口水温との差に放熱用熱交換器を流れる水側流量を積算した値よりも、給湯用熱交換器の水側出口水温と放熱用熱交換器の水側出口水温との差に給湯用熱交換器を流れる水側流量を積算した値の方が大きくなるように、ヒートポンプ装置の圧縮機の回転数を制御する。この制御により、特許文献1の給湯機は、長時間の暖房が継続した場合でもタンク内の湯切れの発生を少なくすることができるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3724482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の給湯機では、放熱手段用熱交換器で放熱手段の熱媒体に与えられる供給熱量の方が放熱手段で放熱するために必要な放熱熱量よりも大きくなった場合には、いずれタンクの蓄熱量は満タンになる。このため、ヒートポンプ装置は運転状態及び停止状態を繰り返すようになる(以下、これを「ヒートポンプ装置の発停」ともいう)。このヒートポンプ装置の発停が顕著になるほど、ヒートポンプ装置の効率が低下し、さらに過度の発停により、ヒートポンプ装置の耐久性低下を引き起こすという問題が生じる。特に、加熱手段であるヒートポンプ装置に加えて補助熱源装置を備えるハイブリッド式給湯装置の場合にはタンク容量が比較的小さいことから、この問題は顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な制御を必要としないで、放熱装置への放熱時にヒートポンプ装置の運転状態及び停止状態の頻度を低減することができるハイブリッド式給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載のハイブリッド式給湯装置に係る発明は、給湯用及び放熱装置(5)での放熱用に使用される蓄熱用流体を蓄えるタンク(3)と、タンク内の蓄熱用流体を加熱する加熱能力が複数段のレベルに調整されるヒートポンプ装置(1)と、放熱装置に供給される熱媒体とタンク内の蓄熱用流体とを熱交換して熱媒体を加熱する放熱用熱交換器(4)と、放熱用熱交換器で加熱された後の熱媒体の熱媒体出口温度を検出する熱媒体出口検出手段(32)と、放熱用熱交換器を流出した後、放熱装置に流入する前の熱媒体を加熱する補助熱源装置(6)と、ヒートポンプ装置の加熱能力を制御するとともに、放熱用熱交換器での熱交換による加熱運転を制御する制御装置(100)と、を備える。
【0007】
当該制御装置は、放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と検出された放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、第1の所定時間以上継続して第1の所定温度以上である場合には、ヒートポンプ装置の加熱能力をより上段の能力値に上げ、放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と検出された放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、第2の所定時間以上継続して、第1の所定温度よりも小さい値に設定された第2の所定温度未満である場合には、ヒートポンプ装置の加熱能力をより下段の能力値に下げることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、熱媒体出口温度の検出値が熱媒体目標温度に対して、ある程度低く放熱熱量が不足している場合には、ヒートポンプ装置の加熱能力をより上段の能力値に上げて、放熱装置に与えるべき必要熱量を早く確保し、熱媒体出口温度の検出値と熱媒体目標温度の差が第2の所定温度未満になった場合には、ヒートポンプ装置の加熱能力をより下段の能力値に下げて、ヒートポンプ装置による放熱装置への供給装置が放熱装置の当該必要熱量に対して同等または若干下回るように制御する。これにより、放熱装置への放熱時に、タンクの蓄熱量がすぐに満タンとなることを低減できるため、例えば、流量計側等を用いた複雑な制御を必要としないで、ヒートポンプ装置の運転及び停止間の頻繁な切り替わりを回避することができる。したがって、ヒートポンプ装置の効率低下を抑制でき、さらには耐久性低下を抑制することもできる。
【0009】
請求項2は、請求項1に記載の発明において、制御装置(100,200)は、放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と検出された放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、予め定めた第1の所定時間以上継続して予め定めた第1の所定温度以上である場合には、さらに補助熱源装置による熱媒体の加熱を実施し、放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と検出された放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、第2の所定時間以上継続して、第1の所定温度よりも小さい値に設定された第2の所定温度未満である場合には、補助熱源装置による熱媒体の加熱を停止することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、熱媒体出口温度の検出値が熱媒体目標温度に対して、ある程度低く放熱熱量が不足している場合には、ヒートポンプ装置の加熱能力の増加に加え、補助熱源装置の加熱によって供給熱量を補完するため、放熱装置に与えるべき必要熱量を迅速に提供することができる。また、熱媒体出口温度の検出値が熱媒体目標温度に対して、第2の所定温度以内に近づいた場合には、ヒートポンプ装置の加熱能力の低減に加え、補助熱源装置の加熱を停止するため、放熱装置に与える熱量を急激に低下させて、放熱装置の当該必要熱量に対する不足熱量を抑制できる制御を実施することができる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用する第1実施形態に係るハイブリッド式給湯装置の構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態のハイブリッド式給湯装置の制御に係る構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のハイブリッド式給湯装置における暖房要求時の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態を以下に説明する。図1は、第1実施形態に係るハイブリッド式給湯装置の構成を示す模式図である。図2は、ハイブリッド式給湯装置の制御に係る構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、ハイブリッド式給湯装置は、熱量を供給できる加熱装置として、ヒートポンプユニット1と補助熱源装置6を組み合わせた給湯装置である。ハイブリッド式給湯装置は、例えば一般家庭用として使用されるものであり、タンク内に蓄えられた蓄熱用流体としての温水を台所、洗面所、浴室等への給湯端末(例えば手洗い栓、カラン、風呂等)に供給するとともに、タンク3内の温水と暖房機器5の熱媒体とを放熱用熱交換器4によって熱交換する機能を有している。また、所定の条件を満たすときには補助熱源装置6により熱媒体や、給湯端末に供給する温水をさらに加熱して温度調節することができる。
【0015】
ハイブリッド式給湯装置は、給湯用及び暖房機器5での放熱用に使用される水を蓄えるタンク3と、タンク内の水を加熱するヒートポンプユニット1と、暖房機器5に供給される熱媒体とタンク3内の水とを熱交換して熱媒体を加熱する放熱用熱交換器4と、放熱用熱交換器4を流出した後、暖房機器5に流入する前の熱媒体を加熱する補助熱源装置6と、各部の作動を制御する第1の制御装置100と、を少なくとも備えている。タンクユニット2は、タンク3、蓄熱用循環回路10、放熱用熱交換器4、一次側循環回路40、二次側循環回路50の一部、各種配管、及び各種弁を含んでいる。タンクユニット2とヒートポンプユニット1は、設置現場において一体化または離間して設置されている。第1の制御装置100は、ヒートポンプユニット1の加熱能力を制御するとともに、放熱用熱交換器4での熱交換による加熱運転を制御し、例えばタンクユニット制御装置によって構成することができる。
【0016】
ヒートポンプユニット1の加熱能力は、2段階以上のレベルに設定されている。3段階の加熱能力の場合は、レベル1、レベル2、レベル3の順に能力値が大きくなるとすると、加熱能力をより上段に上げる処理を実施するときには、レベル1からレベル2またはレベル3に引き上げたり、レベル2からレベル3に引き上げたりする能力制御が実施され、加熱能力をより下段に下げる処理を実施するときには、レベル2からレベル1に低減したり、レベル3からレベル2またはレベル1に低減したりする能力制御が実施されることになる。また、2段階の加熱能力の場合は、レベル1、レベル2の順に能力値が大きくなるとすると、加熱能力をより上段に上げる処理を実施するときには、レベル1からレベル2に引き上げる能力制御が実施され、加熱能力をより下段に下げる処理を実施するときには、レベル2からレベル1に低減する能力制御が実施されることになる。
【0017】
ヒートポンプユニット1は、ヒートポンプ装置であり、少なくとも圧縮機、蓄熱用の水・冷媒熱交換器、膨張弁、蒸発器及びアキュムレータ等の冷凍サイクル機能部品が環状に接続されて構成されている。ヒートポンプユニット1は、例えば、冷媒として臨界温度の低い二酸化炭素を使用することにより、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧以上になる超臨界ヒートポンプサイクルを構成する。
【0018】
ヒートポンプサイクルを超臨界ヒートポンプで構成した場合、一般的なヒートポンプサイクルよりも高温、例えば、85℃〜90℃程度の湯をタンク3内に蓄えることができる。ヒートポンプサイクルは、例えば、料金設定の安価な深夜時間帯の深夜電力を利用してタンク3内の湯を沸き上げる沸き上げ運転を行う。この沸き上げ運転は、過去の使用熱量の実績に基づいた熱量がタンク3内に貯湯できるように行われる。
【0019】
蓄熱用循環回路10には、図示していないが、ヒートポンプユニット1内の水・冷媒熱交換器に供給される水の温度を検出する入水温度サーミスタと、水−冷媒熱交換器出口での沸き上げ温度を検出する沸上げ温度サーミスタと、電動ポンプと、が設けられている。そして、各サーミスタの検出温度信号は第1の制御装置100に出力されて、沸き上げ運転の制御に用いられる。
【0020】
タンク3は、給湯用及び放熱用の温水を蓄える縦長形状の容器であり、耐食性に優れた金属製、例えば、ステンレス製からなり、その外周部に断熱材が設けられ、高温水を長時間に渡って保温することができる。蓄熱用循環回路10の電動ポンプが作動することにより、タンク3内の温水が循環する。これにより、水・冷媒熱交換器で加熱されたタンク3内の温水は、蓄熱用循環回路10を通ってタンク3内の上部に送り込まれるので、タンク3内の上部側から下部側へ向かって複数の温度層を形成するように順次蓄熱されていく。
【0021】
タンク3の外壁面には、貯湯量、貯湯温度を検出するための水温センサである複数個のタンク水温サーミスタ30が設けられており、本実施形態では縦方向にほぼ等間隔で最上部から順にTH1,TH2,TH3,TH4,TH5という5個のサーミスタが配設されている。これら5個のサーミスタの検出温度信号は、それぞれ第1の制御装置100の入力回路に入力されるようになっており、各水位レベルでの蓄熱用流体の温度や湯量を検出可能である。例えば、あるタンク水温サーミスタ30の検出温度が貯湯熱量として使用できる所定温度を超えていた場合は、タンク3内の最上部からそのタンク水温サーミスタ30の位置までは給湯に使用できる湯が貯まっていることになる。また、複数個のタンク水温サーミスタ30のうち、最上部に位置するTH1の検出値によれば、給湯用配管11に取り出す出湯温度を検出することができる。
【0022】
放熱用熱交換器4は、互いの内部を流れる流体同士が熱交換するように設けられた一次側通路4aおよび二次側通路4bを備えている。一次側通路4aはタンク3内部に連通し、タンク3内の温水が流れる流路である。一次側通路4aおよび二次側通路4bは、各通路を流れる流体間で熱交換が行われる形態であればよい。例えば、一方の通路が内側管内に形成され、他方の通路が内側管の外側を覆う外側管内に形成される二重管構造で構成してもよい。また、放熱用熱交換器4は、一次側通路4aおよび二次側通路4bのそれぞれを流れる流体の流れ方向が対向する対向式熱交換器であることが好ましい。
【0023】
タンク3は、放熱用熱交換器4の一次側通路4aとの間で循環流路である一次側循環回路40を形成するように一次側通路4aに接続されている。この一次側循環回路40は、タンク3の最上部に設けられた導出口に接続されている。さらに一次側循環回路40は、タンク3の最下部に設けられた導入口に接続されており、この導入口と一次側通路4aとをつなぐ流路に、蓄熱用流体を一次側循環回路40に強制的に循環させる一次側ポンプ41を備えている。
【0024】
放熱手段の一例である暖房機器5は、放熱用熱交換器4の二次側通路4bとの間で循環流路である二次側循環回路50を形成するように二次側通路4bに接続されている。二次側循環回路50には、暖房機器5と二次側通路4bとをつなぐ流路に熱媒体を二次側循環回路50に強制的に循環させる二次側ポンプ51が設けられている。二次側循環回路50には、熱媒体が放熱用熱交換器4を流出した出口に熱媒体出口温度を検出する二次側熱交換器出口温度サーミスタ32が設けられている。二次側熱交換器出口温度サーミスタ32により検出される温度信号は、第1の制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。
【0025】
なお、熱媒体は、例えば主成分が水であり、防腐剤、凍結防止剤、LLC等を含んでいてもよい。また、熱媒体は、交比熱を有する蓄熱材料をマイクロカプセル等の方法により封入し、これを水に分散させて混合してもよいし、スリラー状にして混合させてもよい。
【0026】
二次側循環回路50には、放熱用熱交換器4の出口に設けられる二次側熱交換器出口温度サーミスタ32と暖房機器5とをつなぐ流路に、放熱用熱交換器4で加熱された後の熱媒体を再加熱する補助熱源装置6の加熱部62が設けられている。補助熱源装置6は、通過する熱媒体を加熱可能な機器であれば特に限定するものではないが、例えば、ガス、灯油等の燃料による燃焼炎を用いて内部を通過する給湯用水を加熱する小型湯沸かし器、電気式ヒータ等を採用することができる。
【0027】
給水用配管7の上流は、水道配管に接続されており、市水(水道水)がタンク3の最下部の導入口及び給湯用配管11に導入されるようになっている。給水用配管7のタンク3に至る途中には、タンク3内に導入する給水量を調整可能な流調弁8が設けられている。第1の制御装置100は、流調弁8の開度を調節することでタンク3内に導入する給水量を調節して、タンク3内の上部から給湯用配管11に出湯する流量を調整することができる。
【0028】
給水用配管7の給湯用配管11に至る途中には、タンク3内の上部から出湯と混合する給水量を調整可能な流調弁9が設けられている。第1の制御装置100は、流調弁9の開度を調節することで給湯用配管11内に導入する給水量を調節して、タンク3内の上部からの高温水と水との流量割合を調節し、給湯用水の温調を行うことができる。給水用配管7には、給水温度サーミスタ31が設けられている。給水温度サーミスタ31は市水の温度を検出し、検出された温度信号は、第1の制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。
【0029】
給湯用配管11は、タンク3の上部と台所、洗面所、浴室などへの給湯端末とを接続する配管である。給湯用配管11の途中であって、給水用配管7との接続部よりも下流側には、給湯用配管11の通路を開閉する電磁弁12が設けられている。電磁弁12の上流側と下流側は、補助加熱流路13によって電磁弁12をバイパスするように接続されている。この補助加熱流路13の途中には、補助熱源装置6に含まれる加熱部61によって加熱される流路部が設けられている。第1の制御装置100は、電磁弁12を開状態に制御することにより、タンク3内の上部の高温水を給湯用配管11のみを通して給湯端末に出湯することができる。また、第1の制御装置100は、電磁弁12を閉状態に制御し、加熱部61で補助加熱するように制御することによって、タンク3内の上部の高温水を電磁弁12をバイパスして補助加熱流路13に流し、加熱部61で加熱して熱量を加えた後、給湯端末に出湯することができる。
【0030】
給湯用配管11の下流側には、給湯温度を検出する給湯温度サーミスタ33と、流量カウンタ(図示せず)とが設けられている。給湯温度サーミスタ33及び流量カウンタによって検出された給湯温度信号および流量信号は、第1の制御装置100の入力回路に入力されるようになっている。
【0031】
流調弁8、流調弁9及び電磁弁12は、給湯端末側に出湯する湯温を調節する温度調節弁の機能を果たし、第1の制御装置100または第2の制御装置200が、タンク3内上部の高温水と給水との流量比、及び補助熱源装置6による再加熱実施の有無を制御することにより、給湯端末への出湯温度を設定温度に調節するように制御される。第1の制御装置100または第2の制御装置200は、リモートコントローラ110等により設定される設定温度と、給水温度サーミスタ31、タンク水温サーミスタ30及び給湯温度サーミスタ33によって検出される温度情報とに基づいて、流調弁8,9、電磁弁12、補助熱源装置6の作動を制御する。
【0032】
図2に示すように、第1の制御装置100は、リモートコントローラ110上の各種スイッチからの信号、各種サーミスタ30〜33からの通信信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいてヒートポンプユニット1、補助熱源装置6、ポンプ41,51、流調弁8,9、電磁弁12等の作動を制御する通信信号を出力する出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、記憶手段としてROMまたはRAMを内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有している。
【0033】
第2の制御装置200は、第1の制御装置100と同様の構成であるが、主に補助熱源装置6の作動を制御する機能を持っている。第2の制御装置200は、ユーザーの遠隔操作により、暖房機器5の運転指令が入力されると、所定の条件を満たす場合は、補助熱源装置6の加熱部61,62の作動を制御する通信信号を出力する。第1の制御装置100と第2の制御装置200は、通信することにより、互いの管理、制御する機器の情報を共有することができる。
【0034】
また、第1の制御装置100と第2の制御装置200は、統合された単一の制御装置によって構成してもよい。したがって、統合した制御装置によって、補助熱源装置6の加熱部61,62の作動を制御することができる。また、リモートコントローラ110には、自動運転スイッチ、給湯設定温度スイッチ等の給湯に関わる操作部が設けられているが、暖房機器5を運転する暖房スイッチが設けられていてもよい。
【0035】
次に、暖房機器5の運転要求があった場合のハイブリッド式給湯装置の作動について、図3を参照して説明する。図3は、ハイブリッド式給湯装置における暖房要求時の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0036】
第1の制御装置100は、暖房機器5の運転要求の指令を受け、かつヒートポンプユニット1による加熱運転が開始すると、まずステップ10で、二次側循環回路50を循環する熱媒体について、放熱用熱交換器4を流出した出口における熱媒体目標出口温度を決定する。この熱媒体目標出口温度は、二次側熱交換器出口温度サーミスタ32によって検出される熱媒体出口温度の目標温度である。熱媒体目標出口温度は、例えば、ユーザーによって設定される暖房機器5の設定温度に基づいて決定する。この場合、熱媒体目標出口温度は、例えば、当該暖房機器5の設定温度に対して所定温度高くした温度に決定される。熱媒体目標出口温度は、後述するステップ30及びステップ40の判定においても使用される重要なパラメータである。ここではヒートポンプユニット1の加熱能力は、暖房能力の立ち上がりを早めることを考慮して、高い能力レベルから開始するものとする。ここでは、一例として、ヒートポンプユニット1が有する加熱能力を4.5kW、6kwの2段階のレベルとする場合には、運転開始時のヒートポンプユニット1の加熱能力を高い方の6kWに設定して運転する。また、加熱能力は、複数段有する能力レベルのうち、特定のレベルに限定するものではないが、ヒートポンプユニット1が複数段階有する能力レベルのうち、最も低い能力、または中間の加熱能力レベルとしてもよい。
【0037】
さらにステップ20で、一次側ポンプ41と二次側ポンプ51を起動し、一次側循環回路40でタンク3内の高温水を循環させるとともに、二次側循環回路50で熱媒体を循環させる。
【0038】
このようにステップ20では、ヒートポンプユニット1の加熱能力によって、タンク3内の上部に沸き上げた高温水の熱量を、放熱用熱交換器4で、一次側循環回路40を循環する高温水から熱媒体に与える。これにより、二次側熱交換器出口温度サーミスタ32が検出する熱媒体出口温度は、温度上昇するようになる。そして、熱媒体に供給された高温水の熱量は、二次側循環回路50を循環する熱媒体によって暖房機器5に放熱されて、暖房機器5の暖房能力が向上する。
【0039】
このようにヒートポンプユニット1による熱媒体への熱量供給が実施されると、ステップ40で、熱媒体目標出口温度と二次側熱交換器出口温度サーミスタ32が検出する熱媒体出口温度との差であるΔTが予め定められた第1の所定温度の一例である5℃以上である状態が、予め定められた第1の所定時間以上継続しているか否かを判定する。ステップ30で、YESと判定した場合は、熱媒体目標出口温度と熱媒体出口温度との間に開きがあり、暖房機器5が早く必要な暖房能力に達するように熱量供給を強化する必要がある。このため、第1の制御装置100は、ステップ32でヒートポンプユニット1の加熱能力をより上段レベルに上げて出力増加させる。例えば、ステップ32では、4.5kWであったヒートポンプユニット1の加熱能力を6kWに増加させる。
【0040】
暖房開始及びヒートポンプユニット1の運転開始後、あまり時間が経過していない状況では、ヒートポンプユニット1の加熱能力が高いレベルにあり、ステップ32で、能力レベルを増加させることができないことがある。この場合にはステップ32で加熱能力レベルを維持する処理を実施する。そして、後述するステップ42で加熱能力を低減する処理を実施した後、暖房等の状況変化がない場合は加熱能力を増加させることはないが、当該状況変化があった場合は、ステップ50からステップ30に戻ってYESの判定がなされ、ステップ32で加熱能力を増加させることがある。この状況変化とは、ヒートポンプユニット1の運転開始後、暖房機器の系統増加(機器数の増加)や暖房設定温度が高く設定されたこと等によって暖房機器5での放熱量が増加した場合、または外気温度が低下した場合である。このような状況では、ステップ30でYESの判定がなされ、ステップ32の処理が実施されることになる。
【0041】
さらにステップ34で、補助熱源装置6を運転し、放熱用熱交換器4で加熱された熱媒体を加熱部62で再加熱する。例えば、補助熱源装置6の運転は、第1の制御装置100から指令を受けた第2の制御装置200によって実行される。この補助熱源装置6による熱媒体の再加熱によって、暖房機器5への熱量供給がさらに強化され、暖房機器5がより迅速に暖房能力に達することができる。そして、ステップ50で、暖房機器5の運転停止要求があるか否かが判定され、運転停止要求があると判定すると本フローチャートを終了し、運転停止要求がない場合はステップ30に戻り、再度ΔTの状態を判定する。
【0042】
ステップ30で、NOと判定した場合は、次にステップ40で、ΔTが予め定められた第2の所定温度の一例である1℃未満である状態が、予め定められた第2の所定時間以上継続しているか否かを判定する。ステップ40で、YESと判定した場合は、熱媒体目標出口温度と熱媒体出口温度との温度差が小さく、このままの加熱能力を維持すると、熱媒体温度が熱媒体目標温度を短時間で超える可能性が高い。そこで、第1の制御装置100は、ステップ42でヒートポンプユニット1の加熱能力をより下段レベルに下げて出力低減させる。例えば、ステップ42では、ヒートポンプユニット1の加熱能力を6kWから4.5kWに低減させる。この処理により、熱媒体出口温度を熱媒体目標出口温度に徐々に近づけることができ、ヒートポンプユニット1による供給熱量を暖房機器で必要とする熱量以下に抑えることができる。したがって、課題であるヒートポンプ装置の発停現象を抑制する暖房機器5の熱量不足が発生した場合でも、この不足熱量を小さく抑制することができるのである。
【0043】
さらにステップ44で、補助熱源装置6の運転を停止し、暖房機器5に与える熱量をより小さくする。この補助熱源装置6の運転停止によって、暖房機器5への熱量供給の抑制効果をさらに強化できる。そして、ステップ50で、暖房機器5の運転停止要求があるか否かが判定され、運転停止要求があると判定すると本フローチャートを終了し、運転停止要求がない場合はステップ50に戻り、再度ΔTの状態を判定する。
【0044】
ステップ40で、NOと判定した場合は、熱媒体目標出口温度と熱媒体出口温度との温度差が1℃以上で5℃未満であり、ヒートポンプユニット1の加熱能力を低減するには時期尚早であると判断し、ステップ50に進む。ステップ50では暖房機器5の運転停止要求があるか否かが判定され、運転停止要求があると判定すると本フローチャートを終了し、運転停止要求がない場合はステップ30に戻り、再度ΔTの状態を判定する。
【0045】
以下に、第1実施形態のハイブリッド式給湯装置がもたらす作用効果について説明する。ハイブリッド式給湯装置によれば、第1の制御装置100は、放熱用熱交換器4の熱媒体目標出口温度と放熱用熱交換器4の熱媒体出口温度との差が、第1の所定時間以上継続して第1の所定温度の一例である5℃以上である場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力をより上段の能力値に上げる(ステップ32)。第1の制御装置100は、熱媒体目標出口温度と熱媒体出口温度との差が、第2の所定時間以上継続して、第1の所定温度よりも小さい値に設定された第2の所定温度の一例である1℃未満である場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力をより下段の能力値に下げる(ステップ42)。
【0046】
この制御によれば、検出された熱媒体出口温度が熱媒体目標温度に対して、ある程度低く、暖房機器5への熱媒体の放熱熱量が不足している場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力をより上段の能力値に上げて(例えば、4.5kW→6kW)、暖房機器5に与えるべき必要熱量を早く確保する。また、検出された熱媒体出口温度が熱媒体目標温度に対して、第2の所定温度(例えば1℃)未満の範囲に近づいた場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力をより下段の能力値に下げて(例えば、6kW→4.5kW)、ヒートポンプユニット1による暖房機器5への供給熱量が暖房機器5の当該必要熱量に対して同等または若干下回るように制御する。
【0047】
これにより、暖房機器5への放熱時に、タンク3の蓄熱量がすぐに満タンとなることを低減できるため、例えば、熱交換器の入口温度、出口温度、流量計側等を用いた複雑な制御や、センサ類等の計測装置を必要としないで、ヒートポンプユニット1の運転及び停止間の頻繁な切り替わり(前述のヒートポンプ装置の発停)を回避することができる。したがって、本実施形態のハイブリッド式給湯装置によれば、少ない温度検出と制御の工夫とにより、ヒートポンプサイクルの成績係数(COP)の低下を抑制できるとともに、さらにはヒートポンプユニット1の寿命や耐久性の低下を抑制することもできる。
【0048】
特に、加熱手段として、ヒートポンプ装置に加えて補助熱源装置を備えるハイブリッド式給湯装置の場合には、タンクの容量が比較的小さいことから、ヒートポンプ装置の発停の問題は一層顕著となる。したがって、本実施形態のハイブリッド式給湯装置がもたらす上記の効果は多大なものになる。
【0049】
例えば、上記従来の特許文献1に記載の制御では、熱交換器を流れる水量を測定が必要となるため、流量センサ等の計測装置、またはポンプ回転数からの流量推定が必要となる。流量センサ等は装置のコストアップを伴い、流量推定についても配管の圧力損失を考慮して算出する必要があり、流量推定の精度を必ずしも担保できるとは限らない。そこで、本実施形態のハイブリッド式給湯装置によれば、このような課題を解消できるとともに、ヒートポンプ装置の発停を回避することができるのである。
【0050】
さらに、第1の制御装置100または第2の制御装置200は、熱媒体目標出口温度と検出された放熱用熱交換器4の熱媒体出口温度との差ΔTが、第1の所定時間以上継続して第1の所定温度(例えば5℃)以上である場合には、さらに補助熱源装置6による熱媒体の加熱を実施する(ステップ44)。また、熱媒体目標出口温度と検出された放熱用熱交換器4の熱媒体出口温度との差ΔTが、第2の所定時間以上継続して、第1の所定温度よりも小さい値に設定された第2の所定温度(例えば1℃)未満である場合には、補助熱源装置6による熱媒体の加熱を停止する(ステップ54)。
【0051】
この制御によれば、検出された熱媒体出口温度が熱媒体目標温度に対して、ある程度低く暖房機器5への熱媒体の放熱熱量が不足している場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力の増加(例えば、4.5kW→6kW)に加え、補助熱源装置6の加熱によって供給熱量を補完するため、暖房機器5に与えるべき必要熱量を迅速に提供することができる。また、検出された熱媒体出口温度が熱媒体目標温度に対して、第2の所定温度(例えば1℃)未満の範囲に近づいた場合には、ヒートポンプユニット1の加熱能力の低減(例えば、6kW→4.5kW)に加え、補助熱源装置6の加熱を停止するため、暖房機器5に与える熱量を急激に低下させることができ、暖房機器5の当該必要熱量に対する不足熱量を抑制できる制御を実施することができる。
【0052】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0053】
また、上記の実施形態においてハイブリッド式給湯装置は、深夜時間帯の深夜電力を利用した沸き上げ運転において、過去の使用熱量の実績に基づいた運転を行う場合、第1の制御装置100に記憶される所定期間(例えば1週間)の運転実績は、装置の工場出荷時において所定の運転情報(モデル運転情報)をあらかじめ記憶しておき、この初期値を給湯装置の使用実績が加わる毎に更新していくことにより、ユーザーの使用実態に適合させていくものであってもよい。
【0054】
また、ヒートポンプユニット1のヒートポンプサイクルを流れる作動冷媒は、二酸化炭素に限定されるものではなく、フロン等の他の冷媒であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ヒートポンプユニット(ヒートポンプ装置)
3…タンク
4…放熱用熱交換器
5…暖房機器(放熱装置)
6…補助熱源装置
32…二次側熱交換器出口温度サーミスタ(熱媒体出口温度検出手段)
100…第1の制御装置(制御装置)
200…第2の制御装置(制御装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯用及び放熱装置(5)での放熱用に使用される蓄熱用流体を蓄えるタンク(3)と、
前記タンク内の蓄熱用流体を加熱する加熱能力が複数段のレベルに調整されるヒートポンプ装置(1)と、
前記放熱装置に供給される熱媒体と前記タンク内の蓄熱用流体とを熱交換して前記熱媒体を加熱する放熱用熱交換器(4)と、
前記放熱用熱交換器で加熱された後の熱媒体の熱媒体出口温度を検出する熱媒体出口検出手段(32)と、
前記放熱用熱交換器を流出した後、前記放熱装置に流入する前の熱媒体を加熱する補助熱源装置(6)と、
前記ヒートポンプ装置の前記加熱能力を制御するとともに、前記放熱用熱交換器での熱交換による加熱運転を制御する制御装置(100)と、
を備え、
前記制御装置は、
前記放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と前記検出された前記放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、予め定めた第1の所定時間以上継続して予め定めた第1の所定温度以上である場合には、前記ヒートポンプ装置の加熱能力をより上段の能力値に上げ、
前記放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と前記検出された前記放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、予め定めた第2の所定時間以上継続して、前記第1の所定温度よりも小さい値に設定された第2の所定温度未満である場合には、前記ヒートポンプ装置の加熱能力をより下段の能力値に下げることを特徴とするハイブリッド式給湯装置。
【請求項2】
前記制御装置(100,200)は、
前記放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と前記検出された前記放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、予め定めた第1の所定時間以上継続して予め定めた第1の所定温度以上である場合には、前記補助熱源装置による前記熱媒体の加熱を実施し、
前記放熱用熱交換器の熱媒体目標出口温度と前記検出された前記放熱用熱交換器の熱媒体出口温度との差が、予め定めた第2の所定時間以上継続して、前記第1の所定温度よりも小さい値に設定された第2の所定温度未満である場合には、前記補助熱源装置による前記熱媒体の加熱を停止することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225587(P2012−225587A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94354(P2011−94354)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】