説明

ハイブリッド車のための車室内温度制御システム

【課題】 本発明は、ハイブリッド車の車室内温度を制御するためのシステムを提供すること。
【解決手段】 本発明は、ハイブリッド車の車室内温度を制御するためのシステムを提供する。このシステムは、熱電モジュール、熱交換器、ポンプ、及びバルブを含む。熱電モジュールは、電気エネルギーによって作動し、供給される電気エネルギーの極性に基づいて熱エネルギーを放出又は吸収する熱電素子を含む。冷却水を収容する管は、熱電素子の近傍を通っている。熱エネルギーの伝達を助けるために、熱電素子及び管を横切る空気流を発生させるための送風機が設けられている。冷却水は、熱電モジュールから熱交換器に供給され、車室内に供給される空気流を加熱又は冷却する。ポンプは、管及び冷却水ラインを通る冷却水を加圧し、更に、バルブは、冷房モードにおいて、車のエンジン冷却システムを選択的に迂回するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にはハイブリッド車のための車室内温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関及び電動機の両方により駆動されるハイブリッド車は、よく知られるようになってきている。ハイブリッド車が商業的に更に利用されるためには、既存の従来型の車両と同じ機能及び快適性を提供する必要がある。最大限の効率を実現する目的で、ハイブリッド車は、始動/停止方式、即ち、通常のアイドリング状態でエネルギーを節約するために、車両の内燃機関を停止する方式を採用している。アイドリング期間であっても車室内の快適性を維持することが重要である。低温時に車室内の快適性を保つために、一般に冷却水をヒータコアを通して循環させ、車室内に熱を供給するようになっている。しかしながら、暑い環境で車室内を涼しく維持する唯一の方法は、内燃機関を作動させることによって空調システムのコンプレッサを駆動することである。今日、このような始動/停止方式を用いた車両では、消費者は、車室内を快適に維持するために、アイドリング状態で停車している間にもエンジンを作動状態にさせることになる。残念ながら、車のアイドリング時にエンジンを作動させると、アイドリング時にエンジンを停止させることで可能になる燃費節約ができなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のように、ハイブリッド車のための改良された車室内温度制御システムに対するニーズがあることが明らかである。
【0004】
前述のニーズを満たすと共に前述の関連技術の欠点及びその他の制約をなくすために、本発明は、ハイブリッド車の車室内温度を制御するためのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
システムは、熱電モジュール、熱交換器、ポンプ、及びバルブを含む。熱電モジュールは、電気エネルギーによって作動し、供給される電気エネルギーの極性に基づいて熱エネルギーを放出又は吸収する熱電素子を含む。冷却水が入っている管は熱電素子の近傍を通る。熱エネルギーの伝達を助けるために、熱電素子及び管を横切る空気流を発生させるための送風機が設けられている。冷却水は、熱電モジュールから熱交換器に供給され、車室内に供給される空気流を加熱又は冷却する。ポンプは、管及び冷却水ラインを通る冷却水を加圧し、更に、バルブは、冷房モードにおいて、車両のエンジン冷却システムを選択的に迂回するように構成されている。
【0006】
本発明の別の態様において、システムは、熱交換器と流体連通するヒータコア及び蒸発器を含む。客室への空気流は、ヒータコアによって補助的に加熱されるか又は蒸発器によって補助的に冷却されることができる。
【0007】
本発明の別の態様において、システムは、熱電モジュールと電気的に通信する制御装置を含む。制御装置は、冷却水を二者択一的に加熱又は冷却するために、熱電モジュールに供給される電気エネルギーの極性を切り換えるよう構成されている。更に、制御装置は、回生ブレーキシステムから発生した電気エネルギーを、車室内温度制御に用いる熱電モジュールに供給するように構成されている。
【0008】
本発明の別の目的、特徴、及び利点は、当業者であれば添付図面及び本明細書の一部を構成する請求項を参照して以下の説明を読むことにより容易に理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最初に図1を参照すると、本発明の原理を具体化するシステムは符号10で示されている。システム10は、主要構成部品として、熱電モジュール12、熱交換器14、蒸発器16、ヒータコア18、バルブ22、冷却水ポンプ26、及び制御装置27を含む。以下に詳細に説明するように、熱電モジュール12は、熱交換器14と共に、システム10が内燃機関の停止状態において暖房又は冷房を行うこと、もしくは内燃機関の作動状態において補助的な暖房又は冷房を行うことができる。
【0010】
次に図2を参照すると、熱電モジュール12の断面図が示されている。熱電モジュール12は、電気エネルギーから温度変化を引き起こす一連の熱電素子48を含む。電気エネルギーが一方の極性で供給されると、熱電素子48は、熱エネルギーを発生して熱電素子48の周辺温度を上昇させることができる。逆に、電気エネルギーが逆の極性で熱電素子48に供給されると、熱電素子48は、熱エネルギーを吸収して熱電素子48の周辺温度を低下させることができる。熱電素子48から温熱又は冷熱を伝達するために、熱伝達媒体、即ち冷却水は、熱電素子48の近傍に配置された冷却水管42を通って流れる。冷却水に対するこの熱伝達を助けるために、1つ又はそれ以上の送風機40は、熱電素子48及び冷却水管42を横切って流れる空気流を発生させる。更に、熱電モジュール12に空気を出入りさせるための空気取入口50を設けることができる。熱電素子48に供給される冷却水は、入口接続部44を通ってシステムの残りの部分を循環して出口接続部46を通るので、熱電素子48が引き起こした温度変化を伝達することができる。
【0011】
再び図1を参照すると、熱電モジュール12は、冷却水によって、ライン30に沿って熱交換器14と流体連通する。送風機15は、熱交換器14を流れる空気流20を作り出し、空気流20は、熱電モジュール12によって供給される冷却水から温熱又は冷熱を抽出するので空気流20の温度が変わる。暖房モードにおいて、熱電モジュール12は、加熱された冷却水を供給して結果的に空気流20を加熱する。逆に、冷房モードにおいて、熱電モジュール12は、冷却された冷却水を供給して結果的に空気流20を冷却する。空気流20は、熱交換器14から蒸発器16及びヒータコア18の熱伝達面上に流れる。
【0012】
冷却水は、ライン32に沿って熱交換器14から流出してバルブ22に供給され、このバルブ22は、選択的に、冷却水がライン38に沿ってエンジン冷却システム24に流入するか、又は冷却水ポンプ26に戻ることを可能にする。一般的には、エンジン冷却システム24は、冷却水を加熱して、冷却水の一部をライン36に沿ってヒータコア18及びバルブ22へ戻すことになるが、バルブ22は、冷却水の一部を冷却水ポンプ26へ戻す。もしくは、バルブ22は、エンジン冷却システム24を迂回して、冷却水を単にライン32から直接ライン34へ導くことができる。この後者の流路は、システム10が冷房モードにある場合に特に有用である。
【0013】
制御装置27は、システムが複数の暖房及び冷房モードで作動することを可能にする。例えば、制御装置27は、熱電モジュールに供給される電気エネルギーの極性を切り換えて、一方の極性では冷却水を加熱し、逆の極性では冷却水を冷却することができる。更に、制御装置27は、冷房モードにおいて、エンジン冷却システム24を迂回させるようにバルブ22を操作して、結果的にエンジン冷却システム24においてエンジンが発生する熱から冷却水を隔てることができる。
【0014】
また、制御装置27は、回生ブレーキシステム29に接続されている。回生ブレーキシステム29は、車両の減速時に車両の運動エネルギーから電気エネルギーを発生させる。制御装置27は、回生ブレーキシステム29からのエネルギーをエネルギー蓄積デバイス、即ちバッテリ(図示せず)へ、又は直接熱電モジュール12へ導いて、車室内温度を調節するための十分な動力源をもたらすことができる。熱電モジュール12へ直接供給される場合、制御装置27は、回生ブレーキシステム29から供給される電気エネルギーの極性を変えることができ、熱電モジュール12は、暖房モード及び冷房モードの両方においてエネルギーを使用することができる。
【0015】
次に図3を参照すると、システム10は、エンジン作動時の補助的な冷房モードで示されている。「エンジン作動時」の補助的な冷房時において、熱電モジュール12は、車室内を冷房するための蒸発器16と共に使用される。熱電モジュール12及び蒸発器16を組み合わせて使用することにより迅速な快適性がもたらされる。図3に示すように、一点鎖線で表したラインは、熱交換器14から加熱された冷却水を運ぶが、二点鎖線で表したラインは、冷却された冷却水を熱交換器14へ運ぶ。
【0016】
「エンジン作動時」の補助的な冷房時において、冷却水は、熱電モジュール12を通って流れ、そこでは冷却水から熱が奪われ、その後ライン30に沿って熱交換器14へ流れる。熱交換器14は空気流20を冷却し、次に、空気流20は蒸発器16に供給されて、車室内へ流入する前に更に冷却される。冷却水は、熱交換器14からライン32に沿ってバルブ22へ流れ、バルブ22は、冷却水がエンジン冷却システム24を迂回し、結果的にエンジンが発生する熱から隔てられるように制御装置27によって操作される。冷却水は、バルブ22からライン34に沿って冷却水ポンプ26へ流れ、そこでは冷却水流は加圧され、次に、ライン28に沿って熱電モジュール12へ戻される。この作動モードにおいて、熱電モジュール12は、空気流20の温度を急速に低下させるために最初の数分間作動する。熱交換器14に流入する空気の温度が熱電モジュール12に流入する空気の温度よりも低い場合、熱電モジュール12及びポンプ26は作動しないので、車両のエネルギーを節約することができる。
【0017】
図4は、「エンジン作動時」の補助的な暖房モードにおけるシステム10を示す。「エンジン作動時」の補助的な暖房モードにおいて、熱電モジュール12は、ヒータコア18と共に使用される。ヒータコア18と組み合わせて熱電モジュール12を使用することにより迅速な快適性がもたらされる。エンジンからの暖かい冷却水は、熱電モジュール12を通って給送されるが、熱電モジュール12では熱が追加される。冷却水は、熱電モジュール12からライン30に沿ってヒータコア18上流の熱交換器14へ流れる。熱交換器14は、最初にヒータコア18が受け入れられる空気流20を加熱する。ヒータコア18は、車室内に供給される前の空気流20を更に加熱するために、エンジン冷却システム24からの熱を放出する。
【0018】
冷却水は、熱交換器14からライン32に沿ってバルブ22へ流れ、バルブ22は、「エンジン作動時」の補助的な暖房モードにおいて、冷却水がライン38に沿ってエンジン冷却システム24へ戻ることを可能にする。エンジン冷却システム24は、エンジンからの熱を冷却水に与え、次に、冷却水の一部は、ヒータコア18へ流れると共に、ライン36に沿ってバルブ22へ流れる。冷却水は、バルブ22からライン34に沿って冷却水ポンプ26を通って流れ、ライン28を通って熱電モジュール12へ戻る。エンジン冷却システム24がシステムを通る冷却水を給送するための十分な手段をもたらす場合、このモードにおいて冷却水ポンプ26は作動しない。熱電モジュール12は、加熱のために最初の数分間作動し、エンジン単体からの冷却水温度が適切な車室内暖房をもたらす所望の温度に達した場合に作動を停止するのが好ましい。
【0019】
次に図5を参照すると、「エンジン停止時」の冷房モードが示されている。「エンジン停止時」の冷房モードは、エンジンのアイドリング停止時の限られた時間の間、車室内を快適に維持するために使用される。このモードにおいて、蒸発器はエンジンが停止しているので不作動である。冷却水及び熱電モジュール12の熱慣性によってもたらされる冷房は、エンジンを停止して燃料を節約すると同時に車室内の冷房を行うこと可能にする。
【0020】
冷却水は、熱電モジュール12内を流れ、熱電モジュール12では冷却水から熱が奪われる。冷却水は、熱電モジュール12からライン30に沿って熱交換器14へ流れる。熱交換器14において、熱は冷却水によって空気流20から吸収される。冷却水は、熱交換器14からライン32に沿ってバルブ22へ流れる。バルブ22は、冷却水がエンジン冷却システム24を迂回するように制御装置27によって操作されるので、冷却水はエンジンの熱から隔てられる。冷却水は、バルブ22からライン34に沿って冷却水ポンプ26へ戻り、冷却水ポンプ26は、ライン内の冷却水を加圧することによって冷却水流を発生させる。次に、冷却水は、ライン28に沿って熱電モジュール12へ戻され、熱は再び冷却水から吸収される。
【0021】
制御装置27は、停止が目前に迫っているか否かを予測するために、車両の速度及び制動をモニタする。停止が予測された場合、熱電モジュール12は、冷却水を冷却するために回生ブレーキシステム29からの回生制動エネルギーを使用する。停止時、熱電モジュール12は、車室内から熱が加えられる時に冷たい冷却水温度を維持するために作動し続ける。
【0022】
次に図6を参照すると、「エンジン停止時」の暖房モードが示されている。この「エンジン停止時」の暖房モードは、エンジンのアイドリング停止時の限られた時間の間、快適な車室内温度を維持するために使用される。熱電モジュール12によってもたらされる熱、冷却水の熱慣性、及びエンジンブロックの熱慣性は、システム10が車室内を暖房すると同時にエンジンを停止して燃料を節約することを可能にする。
【0023】
この作動モードにおいて、エンジンからの暖かい冷却水は、冷却水ポンプ26によって熱電モジュール12を通って給送され、熱電モジュール12から熱が加えられる。冷却水は、熱電モジュール12からライン30に沿って熱交換器14へ流れる。熱交換器14において、熱は冷却水から空気流20によって吸収される。加熱された空気流20は、次にヒータコア18に供給され、空気流20が車室内に供給される前に、エンジン冷却システム24から供給される冷却水から更に熱が吸収される。冷却された冷却水は、次に熱交換器14からライン32に沿ってバルブ22へ流れるが、バルブ22は、エンジン冷却システム24に冷却水を供給するために開いている。エンジン冷却システム24は、エンジンブロックからの熱を冷却水に加え、冷却水は、ヒータコア18へ戻されると共に、ライン36に沿ってバルブ22及び冷却水ポンプ26へ戻される。エンジン冷却システム24がシステム10を通る十分な冷却水圧力をもたらすポンプを有する場合、冷却水ポンプ26は作動しない。冷却水は、ポンプ26からライン28に沿って熱電モジュール12へ戻り、熱電モジュール12では熱が追加される。更に、制御装置27は、停止が予測された場合、熱電モジュール12は、冷却水を加熱するために回生ブレーキシステム29からの回生制動エネルギーを使用する。停止時、熱電モジュール12は、車室内から熱が奪われる時に暖かい冷却水温度を維持するために作動し続ける。
【0024】
当業者であれば、前記の説明は本発明の原理の実施形態を例示するにすぎないことを容易に理解できるであろう。前記の説明は、本発明の範囲又は用途を限定することは意図されておらず、本発明は、請求項で定義するような本発明の精神から逸脱することなく変更又は変形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の原理を具体化する、車室内温度制御システムのブロック図である。
【図2】本発明の原理を具体化する、熱電モジュールの正面から見た断面図である。
【図3】本発明の原理を具体化する、補助的な冷房モードにおける車室内温度制御システムのブロック図である。
【図4】本発明の原理を具体化する、補助的な暖房モードにおける車室内温度制御システムのブロック図である。
【図5】本発明の原理を具体化する、「エンジン停止時」の冷房モードにおける車室内温度制御システムのブロック図である。
【図6】本発明の原理を具体化する、「エンジン停止時」の暖房モードにおける車室内温度制御システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
10 車室内温度制御システム
12 熱電モジュール
14 熱交換器
15 送風機
16 蒸発器
18 ヒータコア
20 空気流
22 バルブ
24 エンジン冷却システム
26 冷却水ポンプ
27 制御装置
28 ライン
29 回生ブレーキシステム
30 ライン
32 ライン
34 ライン
36 ライン
38 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン冷却システムを有する車室内温度を調節するためのシステムであって、
電気エネルギーを第1の極性で印加すると温熱を生成し、第2の極性で印加すると冷熱を生成する少なくとも1つの熱電素子を含む熱電モジュールと、
前記エンジン冷却システムに接続され、前記少なくとも1つの熱電素子の近傍に配置されると共に前記少なくとも1つの熱電素子と熱伝導状態にある所定部分を有する冷却水導管と、
前記冷却水導管に接続されると共に前記冷却水導管と熱伝導状態にあり、前記少なくとも1つの熱電モジュールの下流に配置されると共に前記少なくとも1つの熱電素子と熱伝導状態にある熱交換器と、
前記冷却水導管に接続されると共に前記冷却水導管を流れる冷却水流を発生させるように構成された冷却水ポンプと、
前記冷却水導管に接続され、前記冷却水導管を前記エンジン冷却システムに接続する第1の位置と、前記冷却水導管を前記エンジン冷却システムから隔てる第2の位置との間で選択的に作動可能なバルブと、を備えるている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記熱電モジュールと電気的に接続する制御装置を更に備え、前記制御装置は、暖房モードにおいて、前記第1の空気流を加熱するために電気エネルギーを前記第1の極性で印加し、冷房モードにおいて、前記第1の空気流を冷却するために電気エネルギーを前記第2の極性で印加するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
回生ブレーキシステムと制御装置とを更に備え、前記制御装置は、前記少なくとも1つの熱電素子の温度変化を引き起こすために、前記回生ブレーキシステムで発生した電気エネルギーを前記熱電モジュールへ導くように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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