説明

ハウジング型スキージ装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子回路基板上に電子部品が装着される前に、所定位置に半田ペースト等を印刷媒体を介して載着させる印刷装置に用いられるスキージ装置に関するものである。
【0002】電子回路基板上への印刷材料としての半田ペーストを載置させる印刷装置に用いられるスキージ装置には、大別して以下の二つのものがある。一つは、十分以前から知られているものでポリウレタン系樹脂等の硬質プラスチック材からなる薄板状直方体のスキージブレードを用い、印刷版としての印刷媒体主表上面に載置され該ブレードの直前にある印刷材料を、前記印刷版上面を摺動しつゝ該印刷版の開口部を介して、被印刷物としてのプリント基板(以下、P−板と略称)上に刷り込んで行くものである。尚、上記印刷終了後、上記版上に載置された上記材料を回収しつゝ、復路印刷するため上記ブレードとほゞ同一構造のものが印刷方向に沿って前後に設けられた構造の装置もある。但し、印刷方向に沿って前後に設けられた上記2組のブレードはあくまで各々独立にかつ単一の機能即ち、自らの直前にある印刷材料を押し出しつゝ、P−板上に刷り込んで行く働きをなす。一方、二番目のものは、前者の装置で用いられるブレードの厚みが数mm以上あるのに対し、該厚みが0.1mmから高々0.2mm程度の極めて薄い鋼板製の短冊状ブレードが、印刷方向に沿って前後に各1枚計2枚1組として、ハウジング構造を有するスキージ装置の最下部に設けられスキージブレード部と呼ばれるものを形成する。そして印刷の開始と共に、チャンバーと呼ばれる印刷材料の収納部から該スキージブレード部迄送給された該材料を、それ迄前記2枚1組のブレードが協力して印刷媒体主表上面への出口を閉鎖・収納していた状態から該上面に向かって開口して送り出す。印刷の終了と共に、前記1組のブレードが再び相協力して、上記余剰の材料を回収し上記収納部へ返戻するものである。
【0003】尚、前項で述べたスキージ装置の従来例の内、前者を非ハウジング型と名付けその構造は文献(特公平1−19275)のものが一般的である。後者におけるチャンバーやハウジング構造及び該構造を有するスキージ装置の概念・意味・構造は文献(特願平5−39222)に詳しい。例えば、本発明で言うチャンバーとは前項の後半にも述べたように、印刷材料を収納できる部屋の意味であり、該部屋の印刷方向に沿って前方・後方にある壁は同時にスキージ装置全体の前方・後方のブロックの内壁に各々相当する。上記チャンバーの下方即ち印刷媒体主表上面に向かっての印刷材料の供給は前記後壁の一部である可動壁に取り付けられた上記後ブレードが後方に動き、前記前壁に固定されている前ブレードとの間に形成される開口部を通してなされる。当然、上記印刷材料が、徒に、上記チャンバーから逸出しない為に上記前方・後方の各ブロックを連結する側壁及び上記スキージブレードの長さ方向即ち印刷方向と直交し印刷媒体の巾方向(以下、巾方向と略称)に平行な方向のスキージブレード部の両端部にも補助側壁が設けられる。その結果、印刷材料や該材料特性調整用の不活性ガスや溶剤等のスキージ装置内ないしはチャンバー内への送給口を除けば、上記各壁と天井と併せて、外気とは直接に触れない内部構造即ちハウジング構造を有すると言う意味で、後者の装置がハウジング型と名付けられたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前項に説明したハウジング型スキージ装置は、一種の閉じたシステムとして、印刷材料特性の安定と高効率使用という特徴を生かし、近年の導体線路の高精細化に対応しうるものとして期待されつゝある。本発明は、該ハウジング型スキージ装置の一層の有用化を図る為に、印刷材料の特性を保持しうる該材料の混練機能を高めた該材料の格納ユニットを組み込んだものや前記材料のより効率的な回収を可能にする機構をもつスキージブレード部を具えた該装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に基づくスキージ装置は、従来のハウジング型該装置における印刷材料の混練手段や送給手段を含むチャンバーを印刷媒体の巾方向に筒長方向を持つ円筒形状の格納ユニットに変改する。
【0006】そして、本発明に基づくスキージ装置では、従来のチャンバーに代わる上記円筒状の印刷材料の格納ユニット中に、円筒の断面としての円の中心に回転軸を有し該軸の回転棒に様々な形状・形態の上記材料用攪拌棒が取り付けられると共に、該回転棒の回転手段としてのモーターが備えられる。
【0007】次いで、本発明に基づく印刷装置では、印刷方向に沿って前後に動いていた、該方向に対して後方に位置する後ブレードに代わり、前ブレードを上記方向に沿って前後に動かしたり巾方向に回動させるよう、各動作手段とその駆動力伝達手段をスキージブレード部に設けたりする。
【0008】更に、本発明に基づく印刷装置は、前記迄の各手段を併せ持つ構成を取つたりもする。
【0009】
【作用】本発明に基づくスキージ装置では、印刷材料の送給機能と混練機能とを兼ね具えた該材料の格納ユニットがスキージブレード部に十分近い所に設けられるので、該材料の特性が印刷直前迄保持されることになる。
【0010】そして、上記印刷材料の格納ユニットの内部に設けられた回転棒が回転することにより該回転棒に取り付けられた攪拌棒と併せて該材料の攪拌体となりうると共に送給手段ともなりうる。
【0011】次いで、スキージブレード部で前ブレードのみが動くことにより、特に、印刷終了後該ブレードの先端が該ブレードの内面と密接して回動することにより、印刷材料の回収と上記格納ユニットヘの返戻が効率よく行なわれる。
【0012】更に、印刷材料の格納ユニットとスキージブレード部の新構造とを併せ持つ構成をとることにより、印刷材料特性の保持と該材料の回収が従来にも増して、効率よく行なわれる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の要旨について、実施例に基づき図面を参照しながら説明する。図1は本発明に基づくスキージ装置の実施例の要部構成を示すもので、印刷方向(P)に垂直な巾方向から眺めた横断面図を表す。同図に於いて、符号Hが従来のハウジング型スキージ装置のハウジング構造体に相当する。符号Wは、本発明の要旨と直接関係しない上部の図示の省略を意味する。1が本発明に基づく印刷材料(M)格納ユニットを意味し、上部に開閉可能な該材料Mの受給孔(2)と印刷版としての印刷媒体主表上面(S)に直接する上記材料を送給しうるスキージブレード部に向かって2と同様開閉可能なMの送給用開口部(3)を下部に、それぞれ有するもので、全体は、図2の斜視図に示すような円筒形状をなしている。尚、図2の各符号は勿論、図1のそれと同一の意味である。1の中心部には巾方向に一様に材料Mの送給手段を兼ねた混練手段として、従来のもの(例えば、文献:特願平5−39222参照)とは全く異なる形状・形態のものが設けられている。
【0014】図3及び図4がいずれも、上記送給手段を兼ねた混練手段の具体的な構成例で、各図に共通に図(a)がPに垂直な巾方向から見た横断面図に、図(b)が巾方向に垂直なPの方向から見た縦断面図にそれぞれ相当する。各図に共通な6は、円筒状の印刷材料格納ユニット1の断面としての円の中心に回転軸中心を持ち、軸長00′の回転棒を意味する。図3の7は、長さが上記円の半径に十分近い長さを持ち、6の軸長00′に直角にかつ上記円内では、相異なる角度で取り付けられた複数本の攪拌棒で、図では8本の場合が示されている。これらの攪拌棒が、6を介してモーター等の駆動力により回転し、1の内部にある上記材料を攪拌しうる攪拌体となると共に送給手段ともなりうる。図4の8は、上記攪拌棒の別の例で、7と異なり平板状で相隣れる2本が00′方向に大きさが同じで符号の異なる角度で一対となるよう、4対計8本から構成されていることを示す。印刷材料に対する混練作用の度合いは、両例に於いてほゞ同様である。
【0015】図5は、従来のスキージブレード部と異なる構造を持つハウジング構造体ないしスキージブレード部に近い下方の部分を意味する。P,Wについても図1の場合と同様である。4′,5′は、図1における4,5と材質・形状は同様な、剛性・薄刃のスキージブレードであるが、印刷動作における相互の動きを説明するために便宜上付けたもので、短冊状各ブレードの長さ方向と直交する巾の両端を意味する。同図(a)〜(c)は、本発明の要旨の説明から便宜的に書かれた一種のコンセプト図面で、前ブレード4′(AD)のD端部を囲う点線部9は、Pに沿っての移動はエアーシリンダーで、D点を中心とする回動はモーターによってそれぞれなされるための各駆動力の伝達手段ないし機構を意味する。図(a)では、印刷の終了と共に前ブレード4′が後ブレードに向かって矢印の如く、エアーシリンダーの駆動力を借りて近接することを表す。図(b)では、上記の運動で前後のブレードが相互に密接した後、前ブレードの先端Aは回動を始めようとし、該回動に同期して4′の別の端Dが矢印の方向に動き始めることを表している。図(c)は上記(b)の動きが完了した状態を表す。即ち、前ブレードのA端が後ブレードの巾BCの内面に密接しながら、BからCへとせり上がり、余剰の印刷材料をほゞ完全に回収する。A端が後ブレードのC端と会合した時点で、前ブレードの別端Dの、エアーシリンダーによる、P方向に沿ってのリニアーな動きは停止する。印刷の開始時には、上記(a)から(c)への動きが逆となり、図(c)のAの矢印が逆向きとなって反時計廻りに回動し始めるのと同期して、D端は前記A端がBCに沿って後ブレードの内面と密接する動きを助けるように図(b)のDの矢印の逆向きに動く。図(b)の状態から、前ブレードはD端を中心に回動することなく、各ブレードが面対しながら、図(a)の矢印と逆向きに動いて、図(a)の点線ABで示されるスリット状の開口面を形成する。かくして、実際の印刷工程では、上記の(c)から(a)へ、(a)から(c)へのプロセスが繰り返されることになる。
【0016】更に、図3または図4ないしこれらに類似の構造の攪拌体を内蔵した印刷材料格納ユニットを具えたハウジング構造体のスキージブレード部が図5で説明した構成・機能を有するスキージ装置も、無論、本発明の要旨の範囲内である。
【0017】尚、上記実施例の他にも、本発明の要旨から逸脱しない限りに於いて、様々な構成・構造が許されるもので、特に上記実施例の図面等に限定されるものではない。例えば、1の受給孔(2)の形状・位置、同じく攪拌棒(6,8)の個数・形状等、印刷材料の受給及び送給・攪拌という各機能がそれぞれ果たされるものでさえあれば良いものである。更に、本発明における各運動体の駆動装置についても、公知の手段でよく、相互の同期回路を含めて、本発明のスピリットに直接係わるものでない故に、その図示が略されているものである。
【0018】
【発明の効果】本発明は、以上の説明から推察されるように、ギャップ式であれ、コンタクト式であれ、スクリーン印刷に於いて最も顕著な効果を発揮しうるものであるが、印刷媒体としてマスクプレートを用いる、いわゆるマスク印刷に於いてもほゞ同様に下記のような効果を有するものである。
【0019】ハウジング型スキージ装置におけるスキージブレード部に十分近い所で、印刷材料の送給と混練を可能にする該材料の格納ユニットが設けられるので、該材料特性の保持が万全となり、結果として良好な印刷製版が得られる。尚、送給・混練の両手段を含んで材料の収納部がユニット化されるので、副次的に、該スキージ装置の保守・点検が容易となる。
【0020】ハウジング型スキージ装置におけるスキージブレード部の機構を従来と全く変えた結果、印刷材料の回収・収納を一層確実・高効率化できる。
【0021】更に、材料格納ユニットと新ブレード部とを併せ持つハウジング型スキージ装置にすると、印刷媒体を通してP−板上に載置された印刷材の特性が優れたものとなるので、従来より高速・連続印刷を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】スキージ装置の実施例を示す要部構成横断面図である。
【図2】印刷材料格納ユニットの要部構成斜視図である。
【図3】印刷材料攪拌体の実施例を示す要部構成断面図である。
【図4】印刷材料攪拌体の実施例を示す要部構成断面図である。
【図5】スキージブレード部の実施例を示す要部構成横断面図である。
【符号の説明】
1 格納ユニット
2 受給孔
3 開口部
4 前ブレード
5 後ブレード
6 回転棒
7,8 攪拌棒
9 駆動伝達手段
H ハウジング構造体
M 印刷材料
P 印刷方向
S 印刷媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒の断面としての円の上部に印刷材料の受給可能な受給孔と下部に該材料をスキージブレード部に送給するための開閉可能なスリット状の開口部と中心部に上記材料の送給手段を兼ねた混練手段とをそれぞれ有し、全体が密閉構造となり得る円筒状の印刷材料格納ユニットを具備して成るハウジング型スキージ装置おいて、前記印刷材料の送給手段を兼ねた混練手段が、円筒の円の断面としての中心に回転中心を有し印刷方向に垂直で印刷媒体の巾方向に平行な回転軸を有する回転棒に上記円の半径に十分近い長さの複数本の撹拌棒が互いに相異なる角度で取り付けられて成る印刷材料の撹拌体と該撹拌体を上記回転軸の廻りに回転させる回転手段としてのモーターとからなるハウジング型スキージ装置。
【請求項2】 撹拌棒が平板状で、相隣れる2枚が回転面内では同一角度でかつ回転軸方向に対しては大きさが同じで逆向きに取り付けられて成る請求項1記載のハウジング型スキージ装置。
【請求項3】 スキージブレードが印刷方向に沿って前後に各1枚計2枚1組からなり、その内の1枚が印刷の終了と共に後方に移動し該ブレードの印刷媒体方向の先端が後方ブレードの内面と接触しつつ上方に回動して、上記ブレード部の残余の印刷材料を該ブレード部より上方へ返戻し、印刷の開始に際しては上記と全く逆の動きを取るよう、上記前方ブレードの平行移動手段と回動手段を具備し該各手段からの駆動力を上記前方ブレードに伝達し得る伝達手段を具えたことを特徴とする請求項1記載のハウジング型スキージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【特許番号】第2892942号
【登録日】平成11年(1999)2月26日
【発行日】平成11年(1999)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−180392
【出願日】平成6年(1994)6月27日
【公開番号】特開平8−11289
【公開日】平成8年(1996)1月16日
【審査請求日】平成8年(1996)11月26日
【出願人】(000209474)谷電機工業株式会社 (25)
【参考文献】
【文献】特開 平5−200976(JP,A)
【文献】特開 平5−57870(JP,A)
【文献】特開 平4−199779(JP,A)
【文献】特開 平4−347638(JP,A)
【文献】実開 平5−438(JP,U)
【文献】特公 昭43−14660(JP,B1)