説明

ハウジング形管継手

【課題】可撓性を抑えて内圧負荷時に蛇行しない、また2つの配管を芯ずれや傾きなく容易に芯合わせ状態に接合できて作業性の向上を図れるハウジング形管継手を提供する。
【解決手段】接合する配管26,27の管端部26a,27aの円周溝28,29どうし間の外周に、パッキン24を介して被せる一対のハウジング20,20を被せ、ハウジング20,20の互いに対向するフランジ20d,20dどうしをボルト21・ナット22で締め付けるようにしたハウジング形管継手において、一方の配管26の管端部26aの内周面と、他方の配管27の管端部27aの内周面とにわたって接続用環状体25を嵌め込んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水、消火、冷却水、冷温水、排水等の各種配管に適用され、相対向状に接合する2つの配管のグルービング加工された両管端部にパッキンを嵌め、その上からハウジングを被せ、ボルト・ナット等による締付け手段で締め付けて流体を密封するハウジング形管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハウジング形管継手として、たとえば、図6、図7に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そのハウジング形管継手は、互いに管端部1a,2aどうしを相対向状に接合する配管1,2の両管端部1a,2aの円周溝(グルーブ)3,4どうし間の外周に、パッキン5を介して一対の円弧状でかつ断面溝形状のハウジング6,6を被せ、一方のハウジング6のフランジ6dと他方のハウジング6のフランジ6dとをボルト8・ナット9からなる締付け手段で締め付けて配管1,2内の流体を密封し、配管1,2のハウジング6,6からの離脱防止をするものである。
上記ハウジング6は円弧状の中央腹壁6aと、この中央腹壁6aの両側端から半径方向内方に張出した一対の側壁6b、6cとにより2つの配管1,2の管端部1a,2a及びパッキン5を収容する凹溝10を形成し、かつ中央腹壁部6aの周方向両端にフランジ6d、6dを形成するとともに、一方の側壁6bの内周端から半径方向内方に延びて一方の配管1の円周溝3に嵌合する第1嵌合突壁11と、他方の側壁6cの内周端から半径方向内方に延びて他方の配管2の円周溝4に嵌合する第2嵌合突壁12とを形成している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−42360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ハウジング形管継手は、ボルト8・ナット9を締め付けるに伴って、ハウジング6の第1,2嵌合突壁11,12を配管1,2の円周溝3,4に係合させることで配管1,2のハウジング6,6からの抜出しを防止している。
しかしながら、上記ハウジング形管継手では配管1,2の両管端部1a,2aとハウジング6,6とのクリアランス、および両管端部1a,2aどうし間の隙間により伸縮性、可撓性を有するため、内圧負荷時に配管が伸びたり、蛇行したりし、伸びにより配管1,2を吊持した吊り金具に破損を加え、蛇行により見映えを悪くする。
また、上記ハウジング形管継手で配管1,2を相対向状に接合する際、吊り金具等を用いて配管1,2同士は芯ずれ、傾きがないように、軸芯を合わせるが、この軸芯合わせ作業は容易でなかった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、上記のようなハウジング形管継手において、可撓性を抑えて内圧負荷時に配管が蛇行しない、また2つの配管を芯ずれや傾きなく容易に軸芯合わせ状態に対向接合できて作業性の向上を図れるハウジング形管継手を提供することにある。
本発明の他の目的は、内圧負荷時に配管が伸縮するのを抑止でき、配管の吊り金具の破損を防止できるハウジング形管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、発明の内容を理解し易くするために図1〜図3に付した符号を参照して説明すると、外周に円周溝28,29を形成した管端部26a,27aどうしを相対向状に接合する2つの配管26,27の各管端部26a,27aの外周に、パッキン24を介して被せる一対の円弧状でかつ断面溝形のハウジング20,20を備え、このハウジング20は円弧状の中央腹壁20aと、この中央腹壁20aの両側端から半径方向内方に張出した一対の側壁20b、20cとにより両管端部26a,27a及びパッキン24を収容する凹溝30を形成し、かつ中央腹壁部20aの周方向両端にフランジ20d,20dを形成するとともに、一方の側壁20bの内周端から半径方向内方に延びて一方の配管26の円周溝28に嵌合する第1嵌合突壁31と、他方の側壁20cの内周端から半径方向内方に延びて他方の配管27の円周溝29に嵌合する第2嵌合突壁32とを形成し、一対のハウジング20,20の互いに対向するフランジ20d,20dどうしをボルト21・ナット22等からなる締付け手段23で締め付けるようにしたハウジング形管継手において、2つの配管26,27のうち一方の配管26の管端部26aの内周面に接続用環状体25の一端部を、他方の配管27の管端部27aの内周面に接続用環状体25の他端部をそれぞれ嵌め込んでいることに特徴を有するものである。
このような構成によれば、接続用環状体25により配管26,27が真直ぐに継がれた状態が保持されるので、配管26,27の可撓性が抑えられて内圧負荷時に配管26,27が蛇行しない。
また、2つの配管26,27の接合に際し、一方の配管26の管端部26aの内周面に接続用環状体25の一端部を嵌め込み、次いで他方の配管27の管端部27aを接続用環状体25の他端部を嵌め込むことにより配管26,27どうしは芯ずれや傾きがなく容易に軸心合わせ作業が行える。
【0007】
請求項1記載のハウジング形管継手は、請求項2に記載のように、第1嵌合突壁31の突出端面31aと内側面31bの出会う所の出角部31cは一方の配管26の円周溝28内の管端面26bに近い側の入角部28aもしくは該入角部28a近傍に、第2嵌合突壁32の突出端面32aと内側面32bの出会う所の出角部32cは他方の配管27の円周溝29内の管端面27bに近い側の入角部29aもしくは該入角部29a近傍にそれぞれ係合させる一方、接続用環状体25の両端は、両管端部26a,27aの各内周面の、円周溝28,29の各内径側に相当する部位にそれぞれ形成された膨出部33,34の管端面側端部33a,34aに突き合わせる構成を採用することができる。
この構成によると、配管26,27内の水圧の上昇時には、第1,2嵌合突起31,32の出角部31c,32cと円周溝28,29の入角部28a,29aとの係合作用により配管26,27が伸びるのを抑えることができる。また配管26,27内の減圧時には、接続用環状体25の両端が両管端部26a,27a内の膨出部33,34の管端面側端部33a,34aに突き合わされている作用により配管26,27が縮むのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可撓性を抑えて内圧負荷時に配管が蛇行しないハウジング形管継手を提供できる。また、2つの配管を芯ずれや傾きなく容易に軸心合わせ状態に対向接合できて作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例のハウジング形管継手の半欠截断面図、図2は同ハウジング形管継手の側面図、図3は図1における要部の拡大図、図4(a)〜(c)は接続用環状体およびパッキンのセット過程を示す半欠截断面図である。
【0010】
図1〜図3において、ハウジング形管継手は、一対の円弧状のハウジング20,20と、ハウジング20,20の端部どうしを締め付けるボルト21及びナット22からなる締付け手段23と、ハウジング20内に収容されるパッキン24、および接続用環状体25とを備える。
【0011】
この管継手で接合される配管26,27はステンレス鋼管や鋼管等からなり、この配管26,27の管端部26a,27aには円周溝(グルーブ)28,29を各管端面26b,27bから所定距離を置いた箇所にロール転造等により形成している。パッキン24は断面リップ溝形状のリング状に形成されたセルフシール形のもので、合成ゴムなどからなる。
【0012】
ハウジング20は円弧状の中央腹壁20aと、この中央腹壁20aの両側端から半径方向内方に張出した一対の側壁20b、20cとにより2つの配管26,27の管端部26a,27a及びパッキン24を収容する凹溝30を形成し、かつ中央腹壁部20aの周方向両端にフランジ20d、20dを形成するとともに、一方の側壁20bの内周端から半径方向内方に延びて一方の配管26の円周溝28に嵌合する第1嵌合突壁31と、他方の側壁20cの内周端から半径方向内方に延びて他方の配管27の円周溝29に嵌合する第2嵌合突壁32とを形成している。
【0013】
接続用環状体25はステンレス鋼管や鋼管等からなって断面円形もしくは図5に示すごとき断面C形の環形状に形成され、配管26,27の各管端部26a,27aの内周面に殆ど隙間無く嵌め込み可能な外径寸法を有する。
接続用環状体25はこれの一端部が一方の配管26の管端部26aの内周面の、円周溝28の内径側に相当する部位に円周溝28の形成と同時に半径方向内方へ膨出状に形成された膨出部33の管端面側端部33aに突き当たるまで嵌め込まれる。そして、その管端部26aから突出する接続用環状体25には他方の配管27の管端部27aが、該管端部27aの内周面の、円周溝29の内径側に相当する部位に円周溝29の形成と同時に半径方向内方へ膨出状に形成された膨出部34の管端面側端部34aに接続用環状体25の他端部が突き当たるまで嵌め込まれて、管端部26a,27aどうしが隙間gをおいて相対向すべく軸芯合わせ状態に対向される。すなわち、接続用環状体25の長さLは、隙間gをおいて相対向する配管26,27の両管端部26a,27aの各内周面の膨出部33,34の管端側端部33a,34aどうし間の間隔Bと略等しく設定される。
【0014】
上記ハウジング20において、図3に示すように、一方の側壁20bにおける第1嵌合突壁31の突出端面31aと内側面31bの出会う所の出角部31cは一方の配管26の円周溝28の管端面26bに近い側の入角部28aもしくは該入角部28a近傍に、他方の側壁20cにおける第2嵌合突壁32の突出端面32aと内側面32bの出会う所の出角部32cは他方の配管27の円周溝29の管端面27bに近い側の入角部29aもしくは該入角部29a近傍にそれぞれ係合させるように構成している。
【0015】
次に、上記構成のハウジング形管継手の使用態様を説明する。
【0016】
先ず、図4(a)のように、2つの配管26,27のうち一方の配管26の管端部26aの内周面に、接続用環状体25をこれの一端部が管端部26aの内周面の膨出部33の管端面側端部33aに突き当たるまで嵌め込む。
【0017】
次いで、図4(b)のように、他方の配管27の管端部27aを、前記配管26の管端部26aから突出する接続用環状体25に、該管端部27aの内周面の膨出部34の管端面側端部34aに接続用環状体25の他端部が突き当たるまで嵌め込む。これにより管端部26a,27aどうしが隙間gをおいて相対向すべく軸芯合わせ状態に突き合わされる。このように、2つの配管26,27の接合に際し、一方の管端部26aの内周面に接続用環状体25の一端部を嵌め込み、次いで他方の管端部27aを接続用環状体25の他端部を嵌め込むことにより配管26,27は芯ずれや傾きなく容易に軸心合わせ状態に対向接合できて芯合わせ作業が容易に行える。
【0018】
次いで、一方の管端部26aに予めセットされたパッキン24を、図4(c)のように、他方の管端部27aに向けて移動させて両方の管端部26a,27aに均等に跨るように正しくセットする。
【0019】
次いで、図1に示すように、パッキン24の上からハウジング20,20を被せて凹溝30,30内で両管端部26a,27a及びパッキン24を収容し、かつ一方の側壁20bの第1嵌合突壁31を一方の配管26の円周溝28に、他方の側壁20cの第2嵌合突壁32を他方の配管27の円周溝29にそれぞれ嵌合させる。
【0020】
最後に、図2に示すように、ハウジング20,20の互いに対向するフランジ20d,20dどうしをボルト21及びナット22からなる締付け手段23で締め付ける。このボルト21及びナット22の締め付けにより配管26,27の管端部26a,27aから流体が漏れるのを防止する密封状態が得られるとともに、図3に示すように、第1嵌合突壁31の出角部31cが一方の配管26の円周溝28の入角部28a近傍に、第2嵌合突壁32の出角部32cが他方の配管27の円周溝29の入角部29a近傍にそれぞれ強く係合する状態が得られる。同時に、接続用環状体25の一端部が一方の管端部26a内の膨出部33の管端面側端部33aに、接続用環状体25の他端部が他方の管端部27a内の膨出部34の管端面側端部34aにそれぞれ強く当接係合する状態が得られる。したがって、配管26,27内の水圧の上昇や減圧時には配管26,27が伸びたり、縮んだりするのをよく抑えることができ、配管26,27を吊持する吊り金具35(図4(a)参照)に破損が加えられるのを防止できる。
【0021】
配管26,27どうしは接続用環状体25により真直ぐに継がれた状態を保持されるので、配管26,27の可撓性が抑えられて内圧負荷時に配管26,27が蛇行しない見映えの良好な納まり状態を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例のハウジング形管継手の半欠截断面図である。
【図2】同ハウジング形管継手の側面図である。
【図3】図1における要部の拡大図である。
【図4】(a)〜(c)は接続用環状体およびパッキンのセット過程を示す半欠截断面図である。
【図5】他の実施例の接続用環状体を示す斜視図である。
【図6】従来例のハウジング形管継手の半欠截断面図である。
【図7】図6のハウジング形管継手の側面図である。
【符号の説明】
【0023】
20 ハウジング
20a 中央腹壁
20b,20c 側壁
20d フランジ
21 ボルト
22 ナット
23 締付け手段
24 パッキン
25 接続用環状体
26,27 配管
26a,27a 管端部
26b,27b 管端面
28,29 円周溝
28a,29a 入角部
30 凹溝
31 第1嵌合突起
32 第2嵌合突壁
31c,32c 出角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に円周溝を形成した管端部どうしを相対向状に接合する2つの配管の各管端部の外周に、パッキンを介して被せる一対の円弧状でかつ断面溝形のハウジングを備え、このハウジングは円弧状の中央腹壁と、この中央腹壁の両側端から半径方向内方に張出した一対の側壁とにより前記2つの配管の両管端部及び前記パッキンを収容する凹溝を形成し、かつ前記中央腹壁部の周方向両端にフランジを形成するとともに、一方の側壁の内周端から半径方向内方に延びて一方の配管の円周溝に嵌合する第1嵌合突壁と、他方の側壁の内周端から半径方向内方に延びて他方の配管の円周溝に嵌合する第2嵌合突壁とを形成し、前記一対のハウジングの互いに対向するフランジどうしをボルト・ナット等からなる締付け手段で締め付けるようにしたハウジング形管継手において、
前記2つの配管のうち一方の配管の管端部の内周面に接続用環状体の一端部を、他方の配管の管端部の内周面に前記接続用環状体の他端部をそれぞれ嵌め込んでいることを特徴とする、ハウジング形管継手。
【請求項2】
前記第1嵌合突壁の突出端面と内側面の出会う所の出角部は一方の配管の円周溝内の管端面に近い側の入角部もしくは該入角部近傍に、前記第2嵌合突壁の突出端面と内側面の出会う所の出角部は他方の配管の円周溝内の管端面に近い側の入角部もしくは該入角部近傍にそれぞれ係合させる一方、前記接続用環状体の両端は、前記両管端部の各内周面の、前記円周溝の内径側に相当する部位にそれぞれ形成された膨出部の管端面側端部に突き合わせている、請求項1記載のハウジング形管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228853(P2009−228853A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77373(P2008−77373)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】