説明

ハウスの冷暖房装置又は冷暖房方法。

【課題】ハウスにおける換気システム(暖気及び/又は冷気の調整)は、資源の高騰と、環境維持等の面から、省エネ等の達成と、コストの削減化、作業環境維持、作業者の健康管理等の面からも、その要求が急務になりつつある。
【解決手段】ヒートポンプの室内機2bの吐出口の近傍に、循環扇4を設置し、循環扇4で送る暖気又は冷気を、循環扇4と、長手方向1aに設けた他の循環扇40,41に送り、循環扇4と他の循環扇40,41とで、ハウス1の長手1a方向に略水平方向の暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜類、根菜類、その他の野菜類を栽培するハウス(ビニールハウス、ガラスハウス等のハウス)の冷暖房装置又は冷暖房方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウスにおける冬季栽培や夏季栽培等の通年栽培において、そのハウス内の温度管理は、絶対条件であり、健全な生育環境の育成と、収穫の拡充、品質の向上等には、各人が所望する物の効率的かつ簡易な栽培等にとって最低限必要となる条件である。
【0003】
そして、特に要望されていることは、ハウス内の送風(空気の流れ)における、このハウス内の全域に、例えば、その長手方向に略水平方向の空気の流れと、広域的な空気の流れを確保する構成とすることで、例えば、送風領域の拡充と、効率的な送風を確保し、送風量の低量化と、ファンの低容量化等による経済的な効果及び/又は省資源化の達成と、ランニングコストの低廉化等の省エネを促進する。
【0004】
以上の状況から、その改良と、要望に応え得る研究と、これらに関する文献も種々散見される。以下、これらに関する文献を先行技術として列挙する。
【0005】
最初に、文献(1)は、特開平5−45021の「気化潜熱型冷房装置」で、この構造は、明細書の段落番号〔0013〕に記載されているが、温室内に多数の細孔を略均等に穿設する通気性シートからなるダクトを設け、このダクトの先端を閉塞し、そして、基端に、送風機から室内外の空気を選択的に取り入れて圧送するが、除湿機等により湿気を除いた乾燥空気、又はヒートポンプ等により、除湿且つ乾燥空気を取り入れて、前記ダクト内に圧送することもあり、このダクト内に圧送された空気が、ダクトを通過する間に、気化し、その気化潜熱により、ダクト内の空気を冷却し、その冷却空気が、ダクトの多数細孔から温室内に放出され、効率的な冷房効果を図る。
【0006】
また、文献(2)は、特開2008−116178の「冷暖房方法及び装置と除湿方法及び装置」であり、この構造は、ヒートポンプ式冷暖房器を使用し、冷房運転時に、屋外に設置した室外機により上昇した暖気を、ダクトファンにより、建屋内に導入しつつ、室内機より発生する冷気を建屋のルーフとルーフの間隙に放出し、また、暖房運転時に、室外機により、発生する暖気をルーフと天井との間隙に放出し、暖房性能又は冷房性能の向上と、設定温度に対して、連続除湿を可能とする目的を図る。
【0007】
【特許文献1】特開平5−45021
【特許文献2】特開2008−116178
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
文献(1)は、ダクト全長に穿設した細孔を介して、乾燥空気の気化を行う構成であるが、この気化された空気は、ハウス内の冷房効果に寄与するものであり、ハウスの環境維持を行うに留まり、ハウスの長手方向に略水平方向の空気の流れと、広域的な空気の流れを確保するには、充分でないこと、またハウス内の植物の生育環境等を確保することは困難視される。また、ダクトの老朽化に伴い、ダクトが劣化し、また、新しくダクトを取替える必要性等が生じ、コスト面においても、問題があると考えられる。
【0009】
次に、文献(2)は、ハウス内の暖気又は冷気の循環を図り、ダクトファンにより、建屋内に導入しつつ、室内機より発生する暖気又は冷気を建屋のルーフとルーフの間隙に放出し、暖房性能又冷房性能の向上を意図するが、建屋のルーフとルーフの間隙に放出するだけに留まるため、ハウス全体の暖房性能又は冷房性能の向上にあまり期待できないこと、また、ハウス内の植物の生育環境等を確保することが充分ではないこと等が考えられる。
【0010】
(イ)ヒートポンプの室内機に吐出口より排出する冷気又は暖気を、吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、ハウスの長手方向において、略均一な略水平方向の空気の流れと、略均一な広域的な空気の流れを確保し、ハウス内の保温効果又は保冷効果を高め、成績係数COPを上昇させ、冷暖房性能の向上を図る。
(ロ)冬季において、暖房運転を行う際に、ヒートポンプの室内機から発生する暖気をハウス全体に飛散させることができるため、暖気の充分な活用と、また、送風機よりハウス内全域へと瞬時に飛散することから、暖気の熱の損失を最小限に抑えることができ、短時間で暖房効果を向上させることができる。
(ハ)夏季の運転において、温度が高い場合には、ハウス内の作物の体感温度が下がり、作物の生育環境が向上し、各人の所望する良質な作物が生産されることになる。
(ニ)また、冬季等の温度が非常に低い時には、暖房機の運転を併用することで、ハウスの加湿割合が上昇し、暖房費の運転費用の削減につながる。
(ホ)ハウス内の全域に対して、均等に送風が行えることから、暖気又は冷気が充分に拡散され、場所により、温度のムラがなくなり、各人が所望する温度への温度調整が極めて容易となる。
(ヘ) ベト病、灰カビ病、ススカビ病等の多湿条件で出やすい疫病を防止することができ、農薬の使用回数、使用量を減少させることができる。また、高温に弱い作物の栽培も可能となり、重宝する。
(ト) 作物への直接送風及び過乾燥を回避し、葉面呼吸の確保を図ること、さらに温湿度管理の適正化及び/又は空気の置換を図り、作物の生育環境の確保と、収穫量の拡充を図る。さらに、ハウス全体へ、万遍なく、送風を行うことにより、作物の葉面境界層が薄くなり、作物の炭酸ガスの吸収率が向上するため、光合成速度を高めることができ、作物の生長効率が上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、上記(イ)〜(ト)の目的を達成することを意図する。
【0012】
この請求項1は、温室、ビニールハウス等のハウス内に、ヒートポンプの室内機を設置し、
前記ハウス外に、ヒートポンプの室外機を設置したハウスの冷暖房装置において、
このヒートポンプの室内機の吐出口の近傍に、循環扇を設置し、この循環扇で送る暖気又は冷気を、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房装置である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するのに最適なダクトを提供することを意図する。
【0014】
請求項2は、請求項1に記載のハウスの冷暖房装置であって、
前記ヒートポンプの室内機の吐出口に、ダクトを設け、前記ダクトの近傍に、循環扇を設置し、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房装置である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するのに最適な循環扇の位置関係を提供することを意図する。
【0016】
請求項3は、請求項1に記載のハウスの冷暖房装置において、
この循環扇を、前記ヒートポンプの室内機の吐出口の長手方向、又は垂直方向に設置し、前記吐出口から、排出された暖気又は冷気と、前記吐出口の近傍に滞留する内気の吸込が行える場所、距離に設け、その作物に対応した温度等の諸条件に応じて、変更することを特徴としたハウスの冷暖房装置である。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するのに最適な吊架手段及び調整手段の構造を提供することを意図する。
【0018】
請求項4は、請求項1に記載のハウスの冷暖房装置において、
前記循環扇及び他の循環扇は、吊架手段により、ハウスの天井面より吊架し、この吊架手段には、長さ、高さ、角度の調整を行う調整手段を設けることを特徴としたハウスの冷暖房装置である。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するのに最適な冷暖房方法を提供することを意図する。
【0020】
請求項5は、温室、ビニールハウス等のハウス内に、ヒートポンプの室内機を設置し、
前記ハウス外に、ヒートポンプの室外機を設置したハウスの冷暖房装置において、
このヒートポンプの室内機の吐出口の近傍に、循環扇を設置し、この循環扇で送る暖気又は冷気を、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房方法である。
【発明の効果】
【0021】
この請求項1の発明は、温室、ビニールハウス等のハウス内に、ヒートポンプの室内機を設置し、
ハウス外に、ヒートポンプの室外機を設置したハウスの冷暖房装置において、
ヒートポンプの室内機の吐出口の近傍に、循環扇を設置し、循環扇で送る暖気又は冷気を、循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、循環扇と他の循環扇とで、吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房装置である。
【0022】
従って、請求項1は、下記の効果を達成できること等の特徴を有する。
【0023】
(イ)ヒートポンプの室内機より発生する冷気又は暖気を、ハウス内の全域へとおくりこみ、ハウスの長手方向において、略均一な略水平方向の空気の流れと、略均一な広域的な空気の流れを確保し、ハウス内の保温効果又は保冷効果を高め、成績係数COPを上昇させ、冷暖房性能の向上を図る。
(ロ)冬季において、暖房運転を行う際に、ヒートポンプの室内機から発生する暖気をハウス全体に飛散させることができるため、暖気の充分な活用と、また、送風機よりハウス内全域へと瞬時に飛散することから、暖気の熱の損失を最小限に抑えることができ、短時間で暖房効果を向上させることができる。
(ハ)夏季の運転において、温度が高い場合には、ハウス内の作物の体感温度が下がり、作物の生育環境が向上し、各人の所望する良質な作物を生産することをできる。
(ニ)また、冬季等の温度が非常に低い時には、暖房機の運転を併用することで、ハウスの加湿割合が上昇し、暖房費の運転費用の削減につながる。
(ホ)ハウス内の全域に対して、均等に送風が行えることから、暖気又は冷気が充分に拡散され、場所により、温度のムラがなくなり、各人が所望する温度への温度調整が極めて容易となる。
(ヘ)ベト病、灰カビ病、ススカビ病等の多湿条件で出やすい疫病を防止することができ、農薬の使用回数、使用量を減少させることができる。また、高温に弱い作物の栽培も可能となり、重宝する。
(ト)作物への直接送風及び過乾燥を回避し、葉面呼吸の確保を図ること、さらに温湿度管理の適正化及び/又は空気の置換を図り、作物の生育環境の確保と、収穫量の拡充を図る。さらに、ハウス全体へ、万遍なく、送風を行うことにより、作物の葉面境界層が薄くなり、作物の炭酸ガスの吸収率が向上するため、光合成速度を高めることができ、作物の生長効率が上昇する。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載のハウスの冷暖房装置であって、
前記ヒートポンプの室内機の吐出口に、ダクトを設け、前記ダクトの近傍に、循環扇を設置し、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房装置である。
【0025】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するのに最適なダクトを提供できること等の特徴を有する。
【0026】
請求項3の発明は、請求項1に記載のハウスの冷暖房装置において、
この循環扇を、前記ヒートポンプの室内機の吐出口の長手方向、又は垂直方向に設置し、前記吐出口から、排出された暖気又は冷気と、前記吐出口の近傍に滞留する内気の吸込が行える場所、距離に設け、その作物に対応した温度等の諸条件に応じて、変更することを特徴としたハウスの冷暖房装置である。
【0027】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するのに最適な循環扇の位置関係を提供できること等の特徴を有する。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1に記載のハウスの冷暖房装置において、
循環扇及び他の循環扇は、吊架手段により、ハウスの天井面より吊架し、吊架手段には、長さ、高さ、角度の調整を行う調整手段を設けることを特徴としたハウスの冷暖房装置である。
【0029】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するのに最適な吊架手段及び調整手段の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0030】
請求項5の発明は、温室、ビニールハウス等のハウス内に、ヒートポンプの室内機を設置し、
前記ハウス外に、ヒートポンプの室外機を設置したハウスの冷暖房装置において、
ヒートポンプの室内機の吐出口の近傍に、循環扇を設置し、循環扇で送る暖気又は冷気を、循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、循環扇と他の循環扇とで、吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房方法である。
【0031】
従って、請求項5は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するのに最適な冷暖房方法を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の一例を説明する。
【0033】
図1は第1の実施例を示したハウス全体の俯瞰図、図2は図1に示した一部省略のハウス全体の側面図、図3−1は第2の実施例を示したハウス全体の俯瞰図、図3−2は第3の実施例を示したハウス全体の俯瞰図、図4は第3の実施例を示したハウス全体の俯瞰図、図5−1はヒートポンプの室内機の第1の従来例を示した斜視図、図5−2はヒートポンプの室内機の第2の従来例を示した斜視図、図5−3はヒートポンプの室内機の第3の従来例を示した斜視図、図5−4はヒートポンプの室内機の第4の従来例を示した斜視図、図6−1は循環扇の第1の例を示した正面斜視図、図6−2は図6−1の例を示した背面斜視図、図7は循環扇の第2の例を示した正面斜視図、図8−1は循環扇に吊架手段を設けた縮小状態を示した正面斜視図、図8−2は循環扇の吊架手段を設けた伸縮状態を示した正面斜視図である。
【0034】
図1において、単棟、連棟等の温室、ビニールハウス等のハウス1の長手方向1aの一方の妻面100aの外側にヒートポンプの室外機2aを設置する。そして、このヒートポンプの室外機2aに冷媒を通過させる冷媒配管3を介して、前記ハウス1の内側に設けたヒートポンプの室内機2bを設置する。このヒートポンプの室内機2bの暖気又は冷気を吐出する吐出口20の近傍に、ハウス1の長手方向1aと略水平方向に、つまり、一方の妻面100aから他方の妻面100bに向けて、ヒートポンプの室内機2bよりも、他方の妻面100b側に、循環扇4を設ける。この循環扇4は、長手方向1aと略水平方向に、暖気又は冷気を送るため、この長手方向1aと略水平方向に、他の循環扇(40、41・・・以下、40とする)を設ける。そして、この循環扇4と他の循環扇40とで、長手方向1aに略水平方向の暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス1全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充する。
【0035】
図3−1、図3−2に示すように、前記循環扇4は、ヒートポンプの室内機2bの吐出口20の大きさ・形状等によって、循環扇4を複数設置することも可能であり、より広域的な略水平方向の暖気又は冷気の流れを生成することが可能となる。そして、この吐出口20の側面に、吸込口20aを設けることにより(ヒートポンプの室内機2bよりも、突出させることにより)、この吸込口20aから、ハウス1内に滞留する内気とミキシングし、ハウス1内の空気の循環の有効利用が図れる。また、この吸込口20aを設けることにより、ヒートポンプの室内機2b内部に設けられた機器のヒートアップを防止することができ、前記機器を負担なく、稼動させることができる。
【0036】
次に、ヒートポンプの室外機2aとヒートポンプの室内機2bについて、詳細に説明すると、このヒートポンプの室外機2aは、その内部に、圧縮機5と熱交換器6を収納してあり、ヒートポンプの室内機2bは、膨張弁7と熱交換器8を収納する構造である。そして、この圧縮機5、熱交換器6、膨張弁7、熱交換器8を介して、暖気又は冷気を生成する。
【0037】
詳細に説明すると、外気の温度が低い場合において、暖房運転を行う際、ヒートポンプの室外機2aは、熱交換器6が凝縮器として、作用する。逆に、外気の温度が高い場合において、冷房運転を行う際、熱交換器6が蒸発器として、作用する。なお、このヒートポンプの室外機2aは、外気から取り込まれた熱源を、その冷媒として利用する場合において、気体、液体等のどのような媒体も可能であり、熱伝導率等を考慮する。そして、前記熱源は、土壌に蓄積する熱を利用する方法以外にも、地中に滞留(蓄積する)地下水熱(地下水源)を利用する方法があり、この方法を採用する場合は、地下水熱(地下水源)をポンプ等(図示しない)で汲み上げ、ヒートポンプの室外機2aに取り入れることにより、その熱の損失を抑え、有効利用を図る。
【0038】
ヒートポンプの室内機2bは、前記の如く、暖房運転を行う際、熱交換器6が蒸発器として、作用する。逆に、冷房運転を行う際、熱交換器8が凝縮器として、作用する。そして、このヒートポンプの室内機2bと、前記冷媒配管3を介して、冷媒を通過させて、ヒートポンプの室外機2aを循環させる。そして、このヒートポンプの室外機2aからヒートポンプの室内機2bへと送り込まれた冷媒は、前記熱交換器8により、熱交換を行い、ヒートポンプの室内機2bに設けた吐出口20より、暖気又は冷気を排出する。
【0039】
そして、この吐出口20には、ダクト21を添設することも可能である。このダクト21の形状は、変更することができ、吐出口20から排出される暖気又は冷気が、ダクト21により、所定の箇所に排出することができ、ハウス1内の温度調整を容易に行うことができる。また、ダクトの素材は、アルミ、樹脂等の様々なダクトを使用するが、高温高圧にも耐えるような部材であれば、その材質は不問とする。そして、前記のように、ダクト21に、吸込口(図示しない)を設けることにより、この吸込口から吸気されるハウス1内を滞留する内気を包括的に循環扇4へと取り入れることができ、内気の有効利用を図ることができる。
【0040】
次に、吐出口20の近傍に、前記循環扇4が設ける。この循環扇4について、詳細に説明すると、循環扇4は、筒形のケーシング4aと、このケーシング4aの内部に設けた吸込側に設けたファン4bと、このファン4bを稼動するファン用のモータ4cと、このファン用のモータ4cを支持し、電気的な機材を収容する基盤部4dと、吐出側の端部に設けた整流板4fと、で構成されている。前記ケーシング4aは、前記ファン4bと同様に、基盤部4dを支持する、ファン4bに向かって侵入する虞がある障害物を遮断する為の保護ガード4eが設けられている。この保護ガード4eを設けることで、基盤部4d及び/又はファン用のモータ4cと、ファン4bを、ケーシング4aで、確実に支持し、強度の確保と、他の部材への固止の容易化等を図る。そして、この保護ガード4eは、ケーシング4aに向って、ブラケット4gが、略均等に四股に伸張している。
【0041】
また、循環扇4の他の一例として、ケーシング4aに間隙Sを設けて、この間隙Sから外気の導入を促し、吸い込み側より吸い込まれた暖気又は冷気を、ミキシングしながら、吐出側へと送り込まれ、前記整流板4fにより、そのミキシングされた外気が、整流され、ファン4bを介して、圧送される。つまり、ケーシング4aに、間隙Sを設けることにより、ケーシング4aの周辺に滞留(浮遊)する外気が吸い込まれるため、送風量が増加し、従来よりも、安定した暖気又は冷気の流れの生成と、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充に寄与することができる。なお、この間隙Sは、ケーシング4aの長さに応じて、設けるが、その部材の強度を確保し、他の部材への固止を容易化にすることも考慮しなければならない。
【0042】
次に、吊架手段9と調整手段9aについて説明すると、吊架手段9は、前記循環扇4の保護ガード4eに設けたブラケット4gと、ハウス1の天井面1cの短手方向1bと平行に設置した梁10とを確実に、安定した状態で、循環扇4を支持する。そして、この吊架手段9は、ハウス1の面積に応じて、循環扇4の設置数、設置箇所を変更し、移動できるように、着脱容易に設ける。なお、吊架手段9は、例えば、ケーシング4aにネジ等の固定手段を介して、支持杆90を設ける以外にも、ローラチェーンや、スプロケット等を使用する方法も考えられ、確実に循環扇4が支持できれば、その構造は、不問である。なお、前記梁10は、ハウス1の梁を使用することにより、その梁10を代替することができ、部品点数の減少、着脱作業の容易化を図る。
【0043】
次に、調整手段9aについて、説明すると、この調整手段9aは、前記支持杆90を例にすると、その支持杆90を伸縮する部材、伸縮杆91を内設する。そして、この伸縮杆91の伸縮を行う際は、前記支持杆90を抱持し、この支持杆90を回転する。この回転により、伸縮杆91が伸張されるので、所望の長さで、この支持杆90を逆方向に回転する。この逆回転により、支持杆90と伸縮杆91が圧接され、確実に伸縮杆91がズレを生じることなく、所定の位置で、停止(固止)することが可能となる。
【0044】
次に、循環扇4とは、別に設けた、他の循環扇40について、説明すると、その構造は、循環扇4と同じであり、吊架手段7及び調整手段8を設ける。そして、循環扇4と、そのハウス1の長手方向1aと水平方向に設ける。従って、複数の循環扇4を吐出口20の近傍に設けた場合、この長手方向に、同数の他の循環扇40を設置する。
【0045】
そして、上記の構成に加えて、例えば、ハウス1の一方の妻面100aに、外気の導入を行う導入ファン101を設け、ハウスの全体から略均等に外気の導入を促進する。また、このハウス1の他方の妻面100bに、外気の排出を促す換気扇102を設ける構造も可能である。なお、この導入ファン101及び換気扇102を前記ヒートポンプの室外機2a及びヒートポンプの室内機2bと併用することで、ハウス1内の温度調整の容易化、ランニングコストの節約等の効果が期待できる。
【0046】
尚、図示しないが、ハウス1の天井面1c、空間部1dに、前記導入ファン101を設置し、広域的な暖気又は冷気の流れを確保により、暖気又は冷気の加速及び/又は増大することも可能であり、この例では、相乗的な特性が考えられる。これによって、外気導入式の強制換気システムが構築できること、又は温度調整を提案できること等の実用性がある。
【0047】
次に、この構造に基づくハウス1の暖気又は冷気の流れ(冷暖房方法)を下記に説明する。
【0048】
まず、降雪時、夜間時等の外気温が低い場合等を例に説明すると、ハウス1の近傍に滞留している外気(土穣熱源又は水冷熱源等の熱源も含む。)は、ハウスの室外機2aより、ハウスの室外機2a内へと取り込まれる。この取り込まれた外気は、熱交換器6が蒸発器の役割を果たすことにより、蒸発する。この蒸発された外気は、ガス化し、冷媒となる。そして、この冷媒は、圧縮機5により、圧縮され、高温高圧の冷媒となる。この高温高圧の冷媒が、冷媒配管3を通過して、ヒートポンプの室内機2bへと送り込まれ、このヒートポンプの室内機2bの吐出口20から、暖気として、ハウス1内へと排出される。そして、この暖気は、循環扇4から他の循環扇40へと送り、ハウス1内の長手方向と略水平方向に、暖気の流れを生成するため、循環扇4を稼動する。この循環扇4の稼動を行うには、基盤部4dを介して、ファン用のモータ4cが作動し、この作動により、回転軸(図示しない)が回転し、この回転軸に軸支されたファン4bが回転する。そして、このファン4bの回転により、暖気が吸込側より吸い込まれ、ケーシング4a内部を通過して、吐出側から排出される構造となる。また、この暖気には、その吐出口20から排出される暖気に加えて、ハウス1内に滞留する内気も、ミキシングしながら(一緒に巻き込みながら)排出する。そして、この吐出側から排出される暖気は、他の循環扇40へと送り込まれる。そして、他の循環扇40も、循環扇4と同様に、同じ構造であり、同様な働き(稼動又は停止)を行うため、ヒートポンプの室内機2bより出た暖気が、循環扇4と他の循環扇40とで、ハウス1と同じ長手方向と、同様に、略水平方向の暖気又は冷気の流れを生成し、ハウス1内で生育している作物にとって、望ましい温度環境を生成すること、ハウス1全体に飛散させることができるため、暖気の充分な活用と、また、送風機よりハウス1内全域へと瞬時に飛散することから、暖気の熱の損失を最小限に抑えることができ、短時間で暖房効果を向上させる。なお、図2の矢印は、暖気又は冷気の流れを示す。
【0049】
以上は、降雪時、夜間時等の外気温が低い場合等を例に説明を行ったが、逆に、夏季時、日中等の外気温が高い場合等は、ヒートポンプの室内機2bの吐出口20から冷気が排出される。この冷気を、前記と同様にハウス1内の内気をミキシングして、循環扇4と他の循環扇40とを介して、ハウス1内の長手方向と略水平方向の冷気の流れと、広域的な冷気の流れを確保し、ハウス1全体へ均等に冷気が拡充し、前記と同様な効果を生じさせることが可能となる。
【0050】
暖房運転、又は、冷房運転のヒートポンプの運転を行う際における切り替え、又、循環扇4、他の循環扇40等の各機器の運転は、タイマー等の制御機能や、温湿度を検知する温室度センサー等の制御盤11をハウス1内外の適所に設け、長手方向1aに略水平方向の暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス1全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充する効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は第1の実施例を示したハウス全体の俯瞰図
【図2】図2は図1に示した一部省略のハウス全体の側面図
【図3−1】図3−1は第2の実施例を示したハウス全体の俯瞰図
【図3−2】図3−2は第3の実施例を示したハウス全体の俯瞰図
【図4】図4は第3の実施例を示したハウス全体の俯瞰図
【図5−1】図5−1はヒートポンプの室内機の第1の従来例を示した斜視図
【図5−2】図5−2はヒートポンプの室内機の第2の従来例を示した斜視図
【図5−3】図5−3はヒートポンプの室内機の第3の従来例を示した斜視図
【図5−4】図5−4はヒートポンプの室内機の第4の従来例を示した斜視図
【図6−1】図6−1は循環扇の第1の例を示した正面斜視図
【図6−2】図6−2は図6−1の例を示した背面斜視図
【図7】図7は循環扇の第2の例を示した正面斜視図
【図8−1】図8−1は循環扇に吊架手段を設けた縮小状態を示した正面斜視図
【図8−2】図8−2は循環扇の吊架手段を設けた伸縮状態を示した正面斜視図
【符号の説明】
【0052】
1 ハウス
1a 長手方向
1b 短手方向
1c 天井面
10 梁
100a 一方の妻面
100b 他方の妻面
101 導入ファン
102 換気扇
2a ヒートポンプの室外機
2b ヒートポンプの室内機
20 吐出口
20a 吸込口
21 ダクト
3 冷媒配管
4 循環扇
4a ケーシング
4b ファン
4c モータ
4d 基盤部
4e 保護ガード
4f 整流板
4g ブラケット
40 他の循環扇
41 他の循環扇
5 圧縮機
6 熱交換器
7 膨張弁
8 熱交換器
9 吊架手段
9a 調整手段
90 支持杆
91 伸縮杆
11 制御盤
S 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室、ビニールハウス等のハウス内に、ヒートポンプの室内機を設置し、
前記ハウス外に、ヒートポンプの室外機を設置したハウスの冷暖房装置において、
このヒートポンプの室内機の吐出口の近傍に、循環扇を設置し、この循環扇で送る暖気又は冷気を、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハウスの冷暖房装置であって、
前記ヒートポンプの室内機の吐出口に、ダクトを設け、前記ダクトの近傍に、循環扇を設置し、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房装置。
【請求項3】
請求項1に記載のハウスの冷暖房装置において、
この循環扇を、前記ヒートポンプの室内機の吐出口の長手方向、又は垂直方向に設置し、前記吐出口から、排出された暖気又は冷気と、前記吐出口の近傍に滞留する内気の吸込が行える場所、距離に設け、その作物に対応した温度等の諸条件に応じて、変更することを特徴としたハウスの冷暖房装置。
【請求項4】
請求項1に記載のハウスの冷暖房装置において、
前記循環扇及び他の循環扇は、吊架手段により、ハウスの天井面より吊架し、この吊架手段には、長さ、高さ、角度の調整を行う調整手段を設けることを特徴としたハウスの冷暖房装置。
【請求項5】
温室、ビニールハウス等のハウス内に、ヒートポンプの室内機を設置し、
前記ハウス外に、ヒートポンプの室外機を設置したハウスの冷暖房装置において、
このヒートポンプの室内機の吐出口の近傍に、循環扇を設置し、この循環扇で送る暖気又は冷気を、前記循環扇と、長手方向に設けた他の循環扇に送り、この循環扇と他の循環扇とで、前記吐出口から排出される暖気又は冷気と、吐出口の近傍に滞留する内気をミキシングしながら、前記ハウスの長手方向と略水平方向に暖気又は冷気の流れと、広域的な暖気又は冷気の流れを確保し、ハウス全体へ均等に前記暖気又は冷気が拡充することを目的としたハウスの冷暖房方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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