説明

ハウスラップ材

【課題】従来の建築物の外壁用防水シートは、遮熱にはほとんど寄与しておらず、アルミニウム箔等の赤外線反射作用を利用するために透湿防水シートとアルミニウム箔を一体化しようとすると透湿防水シートとしての役割を果たさなくなり、コストの増大、加工性の悪化、重量の増加による施工性の悪化を招く。
【解決手段】透湿防水性フィルムの一方の面に金属蒸着層、保護層を順に積層し、該フィルムの他方の面に布帛を積層してなるハウスラップ材であって、保護層側の赤外線反射率が波長10μmにおいて30%以上であって、透湿性が0.06〜0.19m・s・Pa/μgであるハウスラップ材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウスラップ材に関するものであり、特に赤外線反射性(遮熱性)を有し、且つ、透湿防水性を有する、壁下地材や屋根下地材に使用できるハウスラップ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁下地や屋根下地に用いられているシートは、主に家屋外部から雨水等が内部へ浸入するのを防ぎ、木材の腐食を防ぐために使用されており、具体的にはアスファルト系やゴムアスファルト系の防水シート、もしくはポリオレフィンの不織布やポリウレタンなどのフィルムからなる透湿防水性シート等が用いられている。
【0003】
また、近年の住宅は、省エネルギーの観点から、魔法瓶のように気密性を高める工法を採用するものが増えてきており、前述のアスファルト系やゴムアスファルト系の防水シートでは透湿性がほとんどないために、人体から発生する汗、調理の際発生する水蒸気、石油ストーブなどの使用の際に発生する水蒸気などの建物内で発生した水蒸気が建物外へ放出されにくく、そのため、壁体内や小屋裏、屋根野地板表面などの各部位で結露が発生し、カビの発生や構造体の腐食の原因となりやすい。
【0004】
これらの問題点を解消するものとして、ポリオレフィンの不織布やポリウレタンフィルムからなる透湿防水シートが開発され、現在、広く普及しているが、これらのシートは表面に金属蒸着層や金属印刷層等の赤外線反射層が設けられて無いため、遮熱性が十分ではなく、最近の高気密高断熱性省エネ住宅に十分対応できるものではなかった。そのため、従来の透湿防水シートに遮熱性を付与したハウスラップ材が開発されてきた。
【0005】
例えば、特許文献1および2には、透湿防水性基材、多数の貫通孔を設けたアルミ蒸着フィルムあるいはアルミニウム箔と、プラスティックフィルムとを積層した赤外線反射性をもたせた透湿防水性を有する建築用シートが開示されている。しかし、これらは建築用シートの貫通孔部分のみが透湿性を有するものであり、透湿性が十分であるとはいえない。透湿性を向上させるために貫通孔部分の面積を増やすと、遮熱性能が低下するおそれがあり、透湿性と遮熱性の高いレベルでの両立は極めて困難である。
更に、特許文献3には、基材となるシート表面に、金属微粉末分散液を混入してなる熱可塑性重合体、共重合体配合液を塗布してなる保温・透湿・防水性を有する建築用シート材料が開示されている。しかし、この方法では金属微粉末が塗布後も微粉末状態のままシート表面に残り、表面が凹凸になることから赤外線が乱反射を起こしたり、微粉末金属粒子間でお互いに赤外線を反射するため、シートの裏側へ熱が伝わったり、遮熱性が損なわれる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-193390号公報
【特許文献2】特開2005−59506号公報
【特許文献3】特開昭63−122850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決しようとするものであり、遮熱性と透湿防水性を両立したハウスラップ材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため次のような構成を有するものである。
すなわち、本発明は、(1)透湿防水性フィルムの一方の面に金属蒸着層、保護層を順に積層し、該フィルムの他方の面に布帛を積層してなるハウスラップ材であって、保護層側の赤外線反射率が波長10μmにおいて30%以上であって、透湿性が0.06〜0.19m・s・Pa/μgであるハウスラップ材である。
また、(2)フィルムが延伸ポリオレフィン系樹脂よりなることを特徴とする(1)に記載のハウスラップ材である。
また、(3)布帛がポリエステル系、ポリアミド系またはポリオレフィン系の合成繊維フィラメント繊維からなることを特徴とする(1)または(2)記載のハウスラップ材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハウスラップ材は、透湿防水性フィルムの表面に金属蒸着層が形成され、該フィルムの裏面に布帛が積層されてなるので、遮熱性、透湿防水性を有し、壁下地や屋根下地用等の建築用材料として好適に使用できるハウスラップ材である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のハウスラップ材の概略断面図である。
【図2】本発明の遮熱性評価の為の試験機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図面に基づきさらに詳しく説明する。
図1は本発明のハウスラップ材の概略断面図であり、1はハウスラップ材、2は保護層、3は金属蒸着層、4は透湿防水性フィルム、5は布帛を示している。
【0012】
本発明に用いる透湿防水性フィルムとしては、透湿性、防水性が得られれば、微多孔質フィルム、無孔質フィルムのどちらも使用することができ、その素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系合成樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系合成樹脂、ポリスチレン系合成樹脂、ポリアミド系合成樹脂、ポリ塩化ビニル系合成樹脂、ポリカーボネート系合成樹脂、ポリアクリル系合成樹脂、ポリイミド系合成樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系合成樹脂等が挙げられるが、中でも経済的、透湿性の点で延伸ポリオレフィン系樹脂からなる微多孔質フィルムが好ましく用いられる。
微多孔性のフィルムは、ポリオレフィン系樹脂に炭酸カルシウムや酸化チタン等の無機フィラーを溶融混練した樹脂組成物を延伸する方法や、熱可塑性樹脂と、結晶核剤と、前記熱可塑性樹脂と混和性があり、前記熱可塑性樹脂の溶融温度においては溶解するが、前記熱可塑性樹脂の結晶化温度以下の温度に冷却すると相分離を起こす配合剤とからなる組成物を延伸する方法等、従来公知の方法により作成できる。
また、透湿防水性フィルムの透湿性(透湿抵抗)は、0.03〜0.13m・s・Pa/μgであることが好ましい。0.03未満であると防水性が不十分になるおそれがあり、0.13m・s・Pa/μgより大きいと透湿性が不十分になるおそれがある。
透湿防水性フィルムの防水性は、5〜200kPaであることが好ましい。5kPa未満であると、防水性が不十分になるおそれがあり、200kPaより大きいと、透湿性が大きく損なわれるおそれがある。
また、透湿防水性フィルムの厚みは、5〜100μmが好ましい。5μm未満では強度が不十分になるおそれがあり、また、100μmより厚くなると硬くなり、施工性が損なわれるおそれがある。
また、透湿防水性フィルムの引張強度は、タテ方向10N以上、ヨコ方向3N以上であることが好ましい。これより小さいと、ラミネート加工時等において破損等のおそれがあり、加工性悪化の原因になり、好ましくない。
また、透湿防水性フィルムの引張伸度は、タテ方向、ヨコ方向ともに10%以上であることが好ましい。これより小さいと加工性が悪くなるおそれがある。
また、10%伸長回復率が20%以上であることが好ましい。これは、施工時にタッカーや釘にて固定する際にフィルムが伸びるが、伸長回復率が20%未満であるとフィルムが伸びたままの状態になり、タッカー等とフィルムの密着性が十分でなくなり、雨水侵入等のおそれがある。20%以上であれば、タッカー等の施工時に一度伸びたフィルムは、再び元に戻ろうとする力によりタッカー等と密着する。この作用により止水効果を発揮する。
フィルムのタテ方向及びヨコ方向とは、フィルム作成時の、長さ方向をタテ方向、幅方向をヨコ方向とする。
【0013】
金属蒸着層を形成する上記のフィルム基材表面に、予め、金属蒸着層の密着性を向上する目的で、プライマー処理を行ったり、フィルムの表面改質処理を行うことが好ましい。
プライマー処理は、例えば、溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等の、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系、ポリオレフィン系、エポキシ系などの合成樹脂等を主成分とした樹脂組成物を、コンマコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等のコーティング法や、フレキソ印刷等を用いて付与する方法が好ましく用いられるが、この他、パディング(ディップ/ニップ)、キスコーター、スクリーンプリント、ロータリープリント、インクジェット、スプレー、Tダイ等を用いて付与することもできる。
また、表面改質法としては、コロナ放電処理、オゾン処理、アルゴンガス、酸素ガス、もしくは窒素ガス等を用いたプラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等が挙げられる。この様な処理を行うことにより、金属蒸着層の密着性と表面平滑性を向上させることができ、脱落防止性を向上させることができる。
【0014】
本発明において用いられる金属蒸着層としては、赤外線反射金属であるアルミニウム、ニッケル、ステンレス、銀、クロムなどが用いられるが、中でも赤外線反射性と経済性で最も優れるアルミニウムを主成分とする蒸着層が好ましい。金属蒸着層の厚さが100〜1000Åであって、かつ、JIS K 7105 に準拠する全光線透過率が10%以下、また、金属蒸着面の赤外線反射率は波長10μmにおいて50%以上であることが好ましい。金属膜の厚みが100Å未満では赤外線反射による遮熱効果が不十分であり、金属膜の厚みが1000Åを超えるものは、柔軟性が損なわれ、加工しにくくなるおそれがあり、また、経済的にも好ましくない。

【0015】
金属蒸着層を形成する方法としては、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式とすることが好ましく、薄膜と基材の密着成及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。
【0016】
また更に、金属蒸着層の劣化による剥がれや脱落を防止するために、金属蒸着層を、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、アクリル系、エポキシ系などの合成樹脂からなる保護層で被覆し、さらにフッ素系やシリコーン系、パラフィン系などの撥水剤を付与することが好ましい。
保護層を構成する合成樹脂量は固形分で0.05〜5g/mであることが好ましく、更に0.1〜1g/mであることが好ましい。0.05g/m未満では保護層としての強度が不十分になるおそれあり、5g/mより多いと透湿性が損なわれるおそれがある。また、保護層の耐久性を高めるために、腐食防止剤(界面活性剤等)や酸化防止剤(フェノール系、アミン系の一次酸化防止剤、リン系、硫黄系の二次酸化防止剤等)を使用することが好ましい。また、紫外線吸収剤(メトキシケイヒ酸オクチルやオキシベンゾン等)、光安定剤(ヒンダードアミン系等)、架橋剤(イソシアネート系、エポキシ系)を併用するとより好ましい。
保護層の付与方法は、薄膜が形成できて均質に被覆が可能であれば、特に限定されないが、コンマコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等のコーティング法や、フレキソ印刷等を用いた方法が好ましい。この他、パディング(ディップ/ニップ)、スクリーンプリント、ロータリープリント、インクジェット、スプレー、Tダイ等を用いた方法も挙げられる。
保護層で被覆された金属蒸着面の赤外線反射率は波長10μmにおいて30%以上であることが好ましい。また、保護層単独の膜厚5μmにおける赤外分透過率は波長10μmにおいて30%以上であることが好ましく、更に50%以上であることが好ましい。30%未満であると、保護層部分が赤外線を吸収しやすくなり遮熱性が損なわれるおそれがある。
【0017】
本発明に使用される布帛は、織物、編物や不織布など公知のものを用いることができる。また、素材としては、ハウスラップ材の強度を確保するため、ポリエステル系、ポリアミド系、または、ポリオレフィン系のフィラメント繊維から構成されることが好ましく、中でも強度と耐久性の面からポリエステル系繊維やポリオレフィン系繊維が好ましく用いられる。
また、布帛を構成する繊維の繊度は1〜1000デシテックスが好ましい。1デシテックス未満であると強度が不十分であるおそれがあり、1000デシテックスより大きいと素材の屈曲性が悪くなり、ハウスラップ材に用いた場合、施工性が損なわれるおそれがある。
また、布帛の重量は30〜150g/mが好ましい。30g/m未満では、引張、引裂き等の強度が十分得られないであるおそれがあり、150g/mを越えると強度は向上するが、硬く、重くなって施工性が損なわれたり、高価格になるため使用しにくくなる。
布帛の強度としては、引張強度がタテ方向、ヨコ方向共50N/5cm以上であることが好ましい。これらより小さいとハウスラップ材に用いた場合、強度が十分に得られないおそれがあり、施工時の破損等が懸念される。
布帛が不織布の場合、その製法は特に限定されず、ケミカルボンド、サ−マルボンド、ニ−ドルパンチ、ステッチボンド、スパンレ−ス、スパンボンド、メルトブロ−法など、公知の製造法で製造されるものが使用される。
布帛のタテ方向及びヨコ方向とは、布帛を製造する時の長さ方向をタテ方向、幅方向をヨコ方向とする。
【0018】
布帛と透湿防水性フィルムの積層の際の接着面積は、全接着面積の10〜70%であることが好ましい。10%未満であると十分な接着性が得られないおそれがあり、70%より大きくなると透湿性が損なわれるおそれがある。積層方法としては、ドライラミネート、ウェットラミネート、熱ラミネート等の方法を用いることができる。用いられる接着剤は水系、溶剤系、ホットメルトタイプのものを用いることができ、これら接着剤をグラビアコーターやフレキソ印刷、スプレー塗工、コンマコーター、ナイフコーター等を用いて、適宜の接着面積割合で付与することができる。
【0019】
本発明のハウスラップ材は、耐水圧が8〜300KPaであることが好ましい。8KPa未満であると十分な耐水性が得られないおそれがあり、300KPaより大きいと透湿性を損なうおそれがある。
また、透湿性(透湿抵抗)が0.06〜0.19m・s・Pa/μgである。0.06m・s・Pa/μg未満であると防水性が不十分になるおそれがあり、0.19m・s・Pa/μgより大きいと通気性が損なわれ、結露発生による木材腐食等のおそれがある。
また、その厚みは0.05〜2mmであることが好ましい。0.05mm未満であると建築用として強度が不十分になるおそれがあり、2mmより大きいと硬くなり、施工性が損なわれるおそれがある。
また、引張強度(JIS A6111)はタテ方向100N/5cm以上、ヨコ方向100N/5cm以上であることが好ましい。これらより小さいと施工時に破損等のおそれがある。
また、引張伸度(JIS A6111)は、タテ方向、ヨコ方向共に200%以下であることが好ましい。200%より大きいと、施工しにくく、伸長した部分が強度不足になり破損するおそれがある。
また、つづり針保持強さ(JIS A6930)はタテ方向、ヨコ方向共27N以上であることが好ましい。27N未満であると施工後に強風等によりタッカー止め部から破損のおそれがある。
更に、10年耐久性試験後の引張強度はタテ・ヨコ方向共に残存率(保持率)50%以上であることが好ましい。50%未満であると建材物の歪みや通気層の風等により破損のおそれがある。
また、本発明のハウスラップ材表面の赤外線反射率も波長10μmにおいて30%以上である。これにより、従来のハウスラップ材等に対して、優れた遮熱効果が発揮できる。
ハウスラップ材のタテ方向及びヨコ方向とは、ハウスラップ材を製造する時の長さ方向をタテ方向、幅方向をヨコ方向とする。
【実施例】
【0020】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもその実施例に限定されるものではない。なお、各物性は次の方法により測定した。
遮熱性
図2に示す様な試験機を作成し、試験環境20℃×40%RHにて、外壁(ニチハ株式会社製 窯業系サイディングボード モエンエクセラード16 ロマーノ16シリーズ 15mm厚、オールドブリック調3、色番EY101221)より200mmの距離にレフランプ投光器300ワット型(日幸電子工業株式会社製)を設置し、また試料(ハウスラップ材)の背面にはポリスチレンフォーム断熱ボード(ダウ化工株式会社製 保温板1種b 50mm厚)を積層し、50分照射後の試料シート背面の温度を測定した。その際の外壁表面温度は60℃であった。
防水性
JIS A6111 防水性試験方法(静水圧法)に基づき、試料の防水性を測定した。
透湿性(透湿抵抗)
JIS A6111 透湿性試験方法に基づき、試料の透湿性測定した。
(4)引張強度
JIS A6111 引張強さ試験方法に準じ、試料の幅50mmにて測定した。
伸長回復率
引張強度試験機を用い、巾50mmの試料を用いて、つかみ間隔200mm、引張り速度200mm/minで2cm伸長させ、1分間放置後200mm/minで弛緩させ、応力が0になった時点での残留のび(a mm)を測定し下式によって求める。
伸長回復率(%)={1−(a/20)}×100
(6)10年耐久性(強度保持率)
JIS A6111の10年相当耐久性処理条件を利用し、処理後の試料をJIS A6111引張強さ試験方法に基づきを測定し、初期値からの残存率(保持率)を求めた。
(7)金属蒸着層密着耐久性
JIS A6111の10年相当耐久性処理条件を利用し、処理後の試料の金属膜の脱落、変色などを目視確認し、下記のように評価した。
○:金属の脱落や変色など認められない。
△:金属の脱落や変色など一部もしくは、ごくわずか認められる
×:全面に著しい金属の脱落や変色がある
(8)赤外分光反射率
フーリエ変換赤外分光分析装置(日本分光株式会社製 FT/IR−6200+IMV4000)の試料室に金コーティング積分球を装着し、金コーティング表面鏡の分光反射率を100%とし、試料の金属蒸着面の波長10μmにおける赤外分光反射率を測定した。
(9)保護層の摩耗強度
JIS L0849−II型 学振形法により乾・湿共に50回往復処理により、試料の保護層およびアルミ蒸着面の摩耗状態を評価した。
○:赤外分光反射率が初期の80%以上、且つ摩耗面に破れ・シワ・毛羽の発生及び摩耗痕なし。
△:赤外分光反射率が初期の80%以上、且つ摩耗面に破れ・シワなし。多少の毛羽・薄い摩耗痕あり。
×:赤外分光反射率が初期の80%以下、または摩耗面に破れ・シワ・毛羽・強い摩耗痕あり。

〔実施例1〕
【0021】
30μm厚のポリエチレン透湿防水フィルム(株式会社トクヤマ製、透湿性0.10m・s・Pa/μg、防水性10kPa、引張強度タテ方向30N/5cm(破断伸度110%)、ヨコ方向7N/5cm(破断伸度350%)、10%伸長回復率30%)の一方の面に、処方1のプライマー処理用溶液を乾燥固形分で1g/mとなるようにグラビアコーティング法により付与し、80℃で30秒熱処理した。次にフィルムの処理面に550±50Åの膜厚となるようアルミニウム蒸着加工を行った(赤外分光反射率90%)。さらに、この蒸着面に下記処方2の水溶液を乾燥固形分で1.0g/mとなるようにナイフコーティング法により付与し、80℃で30秒熱処理して、膜厚1.0μmの保護層を形成した。

〔処方1〕
パーマリンUA−99 10重量部
(エーテル系ポリウレタン樹脂 固形分20% 三洋化成工業株式会社製)
水 100重量部

〔処方2〕
ハイドランHW−201 100重量部
(エーテル系ポリウレタン樹脂 固形分35% DIC株式会社製)
コロミンW 1重量部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル 固形分10% 花王株式会社製)
シャインガードF−70 1重量部
(脂肪族アミン誘導体 固形分10% センカ株式会社製)
ドライポン600E 2重量部
(シリコーン活性剤 固形分54% 日華化学株式会社製)
IPA 30重量部
水 100重量部

更に、上記フィルムの非蒸着面と、目付け39g/mのポリエステルスパンボンド不織布(ユニチカ株式会社製 20397WAA、引張強度タテ方向240N/5cm(破断伸度35%)、ヨコ方向110N/5cm(破断伸度35%))を、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂をスプレー法にて不織布の接着面に塗布し、115℃で3kgfの圧力でドライラミネート法により接着してハウスラップ材を得た。なお、ポリエチレン透湿防水性フィルムと不織布の接着面積率は30%であった。評価結果を表1に示す。

〔実施例2〕
【0022】
15μm厚のポリエチレン透湿防水フィルム(株式会社トクヤマ製、透湿性0.60m・s・Pa/μg、防水性8kPa、引張強度タテ方向25N/5cm(破断伸度100%)、ヨコ方向6N/5cm(破断伸度330%)、10%伸長回復率20%)の一方の面に、処方1のプライマー処理用溶液を乾燥固形分で1g/mとなるようにグラビアコーティング法により付与し、80℃で30秒熱処理した。次にフィルムの処理面に300±50Åの膜厚となるようアルミニウム蒸着加工を行った(赤外分光反射率85%)。さらに、この蒸着面に処方2の水溶液を乾燥固形分で0.3g/mとなるようにグラビアコーティング法により付与し、80℃で30秒熱処理して、膜厚約0.3μmの保護層を形成した。
更に、上記フィルムの非蒸着面と、目付け35g/mのポリエステルスパンボンド不織布(ユニチカ株式会社製 20357WAA、引張強度タテ方向220N/5cm(破断伸度30%)、ヨコ方向100N/5cm(破断伸度30%))を、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂をスプレー法にて不織布の接着面に塗布し、115℃で3kgfの圧力でドライラミネート法により接着してハウスラップ材を得た。なお、ポリエチレン透湿防水性フィルムと不織布の接着面積率は30%であった。評価結果を表1に示す。


〔実施例3〕
【0023】
20μm厚のポリエチレン透湿防水フィルム(株式会社トクヤマ製、透湿性0.70m・s・Pa/μg、防水性8kPa、引張強度タテ方向25N/5cm(破断伸度100%)、ヨコ方向7N/5cm(破断伸度340%)、10%伸長回復率20%)の一方の面に、処方1のプライマー処理用溶液を乾燥固形分で1g/mとなるようにグラビアコーティング法により付与し、80℃で30秒熱処理した。次にフィルムの処理面に150±50Åの膜厚となるようアルミニウム蒸着加工を行った(赤外分光反射率85%)。さらに、この蒸着面に処方2の水溶液を乾燥固形分で0.7g/mとなるようにグラビアコーティング法により付与し、80℃で30秒熱処理して、膜厚約0.7μmの保護層を形成した。
更に、上記フィルムの非蒸着面と、目付け35g/mのポリエステルスパンボンド不織布(ユニチカ株式会社製 20357WAA、引張強度タテ方向220N/5cm(破断伸度30%)、ヨコ方向100N/5cm(破断伸度30%))を、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂をスプレー法にて不織布の接着面に塗布し、117℃で3kgfの圧力でドライラミネート法により接着してハウスラップ材を得た。なお、ポリエチレン透湿防水性フィルムと不織布の接着面積率は30%であった。評価結果を表1に示す。


〔比較例1〕
【0024】
実施例1のアルミ蒸着加工の工程を除いた以外は実施例1と同様にして、ハウスラップ材を得た。評価結果を表1に示す。

〔比較例2〕
【0025】
実施例1のアルミ蒸着面に対する保護層を形成しない以外は実施例1と同様にして、ハウスラップ材を得た。評価結果を表1に示す。

〔比較例3〕
【0026】
実施例1のアルミ蒸着加工の代わりに、下記処方3のアルミ微粉末分散液をコーティングにより付与した。

〔処方3〕
ハイムレンT−21−1 100重量部
(エーテル系ポリウレタン樹脂、固形分25%、大日精化工業株式会社製)
イソプロピルアルコール 15重量部
トルエン 15重量部
アルミペースト7130 10重量部
(アルミ微粉末分散液、金属含有量47%、平均粒子径9μm、大日本インキ工業株式会社製)
この配合液を実施例1のポリエチレン透湿防水フィルムにナイフコーターを用いて、乾燥固形分10g/mとなるように塗布し、100℃1分間熱処理した。
以降、実施例1と同様にして、フィルムのコーティング面と反対の面にポリエステルスパンボンド不織布を接着し、ハウスラップ材を得た。評価結果を表1に示す。

〔比較例4〕
【0027】
目付55g/mのポリエステル扁平糸使いスパンボンド不織布(単糸フィラメント断面の平均扁平率0.30、ユニチカ株式会社製 20557FLO、引張強度タテ方向280N/5cm(破断伸度30%)、ヨコ方向120N/5cm(破断伸度30%))の一方の面に、ポリビニルアルコール樹脂水溶液を乾燥固形分で5g/mとなるようにコーティングにより付与した。次に、上記不織布の処理面に、450±50Åの膜厚となるようアルミ蒸着加工を行った。更に不織布のアルミニウム蒸着面の反対側に、40μm厚のポリエチレンの透湿防水性フィルム(株式会社トクヤマ製、透湿性0.10m・s・Pa/μg、防水性10kPa、引張強度タテ方向30N/5cm(破断伸度110%)、ヨコ方向7N/5cm(破断伸度350%)、10%伸長回復率30%))をドライラミネート法により接着しハウスラップ材を得た。接着面積は実施例1に同じ。評価結果を表1に示す。

〔比較例5〕
【0028】
50μm厚のポリエチレン透湿防水フィルム(株式会社トクヤマ製、透湿性0.15m・s・Pa/μg、防水性20kPa、引張強度タテ方向35N/5cm(破断伸度100%)、ヨコ方向10N/5cm(破断伸度300%)、10%伸長回復率35%)に50±10Åの膜厚となるようアルミ蒸着を行った。蒸着面の保護層形成、および接着方法は実施例1と同様の条件で行い、該フィルムと接着する基材は目付35g/mのポリエステルスパンボンド不織布(ユニチカ株式会社製 20357FLO、引張強度タテ210N/5cm(破断伸度30%)、ヨコ80N/5cm(破断伸度30%))を用いた。評価結果を表1に示す。

〔比較例6〕
【0029】
実施例1のフィルムに200±50Åの膜厚となるようアルミ蒸着を行った。蒸着面の保護層には処方2の水溶液を乾燥固形分で6.0g/mとなるようにナイフコートにより付与し、実施例1と同様に処理し、膜厚6μmの保護層を形成した。これに接着する基材および接着法は実施例1と同様に行いハウスラップ材を得た。評価結果を表1に示す。

〔比較例7〕
【0030】
4μm厚のポリエチレン透湿フィルム(株式会社トクヤマ製、透湿性0.01m・s・Pa/μg、防水性1kPa、引張強度タテ方向5N/5cm(破断伸度80%)、ヨコ方向3N/5cm(破断伸度220%)、10%伸長回復率1%)に実施例1と同様にプライマー処理を行い、400±50Åの膜厚となるようアルミ蒸着を行った。その後、実施例1と同様に、保護層を形成後、フィルムの非蒸着面に不織布を積層しハウスラップ材を得た。評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【符号の説明】
【0032】
1 ハウスラップ材
2 保護層
3 金属蒸着層
4 透湿防水性フィルム
5 布帛
6 レフランプ投光機
7 窯業系サイディング外壁
8 ポリスチレンファーム断熱ボード
9 温度センサー
10 試料(ハウスラップ材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿防水性フィルムの一方の面に金属蒸着層、保護層を順に積層し、該フィルムの他方の面に布帛を積層してなるハウスラップ材であって、保護層側の赤外線反射率が波長10μmにおいて30%以上であって、透湿性が0.06〜0.19m・s・Pa/μgであるハウスラップ材。
【請求項2】
フィルムが延伸ポリオレフィン系樹脂よりなることを特徴とする請求項1に記載のハウスラップ材。
【請求項3】
布帛がポリエステル系、ポリアミド系またはポリオレフィン系の合成繊維フィラメント繊維からなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のハウスラップ材。

【図1】
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【図2】
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