説明

ハニカムフィルタ及びその製造方法

【課題】初期圧力損失と粒子状物質堆積時における圧力損失の増加を抑制することができるハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部と、少なくとも残余のセル内の隔壁母材の表面に配設された多孔質の捕集層とを備え、捕集層は、複数の粒子が互いに結合、又は絡み合って構成されてなるものであるとともに、捕集層は、複数の粒子として繊維状の繊維粒子を含み、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなり、捕集層の表面の開口率が、20%以上であるハニカムフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタ及びその製造方法に関する。更に詳しくは、初期圧力損失の増加を抑制することができ、かつ、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇も抑制することが可能なハニカムフィルタ、及びこのようなハニカムフィルタを製造することができるハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスには、煤(soot)を主体とする粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が、多量に含まれている。このPMがそのまま大気中に放出されると、環境汚染を引き起こすため、排出ガスの排気系には、PMを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)が搭載されている。
【0003】
このようなDPFとしては、例えば、「流体(排ガス、浄化ガス)の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを備え、流体(排ガス)の流入側の端面における所定のセルの開口部と、流体(浄化ガス)の流出側の端面における残余のセルの開口部に目封止部を有する」ハニカム構造体が用いられている。
【0004】
このようなハニカム構造体を用いて排ガス中のPMを捕集する場合、PMが多孔質の隔壁の内部に侵入して、隔壁の細孔を閉塞させ、圧力損失(以下、「圧損」ともいう)が急激に増加することがあるという問題があった。
【0005】
このような圧損の増加を抑制するため、隔壁の表面に、PMを捕集するための捕集層を設け、その捕集層によって、隔壁内部へのPMの侵入を防ぎ、圧損の上昇を抑制しようとするフィルタが提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0006】
従来、自動車の排ガス規制においては、PMの質量による規制が行われていたが、近年、PMの個数規制の導入が検討されている。その場合、粒子径の小さいPMを確実に捕集することが必要となる。粒子径の小さいPMは主に拡散によってフィルタ内に存在する細孔表面に捕集されることが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0007】
従来、捕集層を有するハニカム構造体を作製する際には、捕集層形成用スラリー(捕集層形成原料)中にハニカム構造体を浸漬したり、捕集層形成用スラリーをハニカム構造体のセル中に流し込んだりすることにより、多孔質の隔壁(隔壁母材)に捕集層形成用スラリーを塗布する湿式塗布や、原料粉末を空気とともに吸引することにより、多孔質の隔壁(隔壁母材)に粒子を塗布する乾式塗布を行い、それを焼成することにより捕集層を形成していた。そして、隔壁の表面に、この多孔質の隔壁よりも細孔径が小さくかつ厚みが薄い多孔質膜を形成する場合には、多孔質膜を構成するセラミックス粒子の粒子径を隔壁の細孔径よりも小さくする必要があった。しかし、この方法では、捕集層形成用スラリーや原料粉末がハニカム構造体の隔壁(隔壁母材)の細孔内に侵入し、得られたハニカム構造体に排ガスを流通させる際の初期圧力損失(初期圧損)が高くなるという問題があった。
【0008】
例えば、このようなハニカム構造体の製造方法としては、ハニカム成形体に、ハニカム成形体と同一の材料に造孔材及び水を更に添加して作製した捕集層形成用スラリーを、噴霧することにより、ハニカム成形体の隔壁に捕集層形成用スラリーを堆積させ、その後、乾燥及び焼成することによって、ハニカム成形体に捕集層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0009】
更に、多孔質の隔壁の細孔径よりも長い無機繊維状材料とシリカ又はアルミナを主成分とする接着材料からなるスラリーを、隔壁の表面に堆積させ、その後、乾燥及び焼成することによって、隔壁の表層に多孔質膜(捕集層)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0010】
また、ハニカム焼成体の一方の開口端部より、隔壁を構成する粒子の平均粒子径よりも小さい平均粒子径で構成される粒子を固気二相流によって供給し、隔壁の表層部分において、隔壁を構成する粒子によって形成された開細孔及び/又は粒子同士の隙間に、粒子を堆積させてコンポジット領域(捕集層)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/136232号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/110010号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】SAEテクニカルペーパー、2008−01−0618、米国自動車技術者協会、2008年発行(SAE Technical Paper 2008−01−0618、Society of Automotive Engineers(2008))
【非特許文献2】SAEテクニカルペーパー、2007−01−0921、米国自動車技術者協会、2007年発行(SAE Technical Paper 2007−01−0921、Society of Automotive Engineers(2007))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載の製造方法では、隔壁の細孔径よりも長い無機繊維状材料を含む捕集層形成用スラリーを用い、例えば、スプレー塗布やディップコート等の湿式法により捕集層を形成しているため、捕集層を構成する無機繊維状材料同士、或いは、無機繊維状材料と隔壁(隔壁母材)とが配向してしまい、捕集層にガス等が侵入するための流路が減少してしまう。これにより、得られるハニカム構造体の初期状態の圧力損失が増大してしまうという問題があった。また、このようなハニカム構造体は、PMが堆積した際(特に、PMが堆積し始めた堆積初期)の圧力損失の上昇も大きくなってしまうという問題もあった。
【0014】
また、上記特許文献2に記載の製造方法では、隔壁の細孔内に粒子が堆積しているため、コンポジット領域(捕集層)にガスが侵入するための流路が少なくなってしまう。これにより、得られるハニカム構造体の初期状態の圧力損失が増大してしまうという問題があった。また、このようなハニカム構造体は、PMが堆積した際(特に、PMが堆積し始めた堆積初期)の圧力損失の上昇も大きくなってしまうという問題もあった。
【0015】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、初期圧力損失の増加を抑制することができ、かつ、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇も抑制することが可能なハニカムフィルタ、及びこのようなハニカムフィルタを製造することができるハニカムフィルタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタ及びその製造方法が提供される。
【0017】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部と、少なくとも前記残余のセル内の隔壁母材の表面に配設された多孔質の捕集層とを備え、前記捕集層は、複数の粒子が互いに結合、又は絡み合って構成されてなるものであるとともに、前記捕集層は、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなるものあり、前記捕集層の表面の開口率が、20%以上であるハニカムフィルタ。
【0018】
[2] 前記複数の粒子が、繊維径が0.1〜15μmで且つアスペクト比が3以上の特定繊維粒子を、前記捕集層を構成する前記粒子の全個数中に70%以上含む前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0019】
[3] 前記捕集層の気孔率が、70%以上である前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0020】
[4] 前記捕集層の厚さが、前記隔壁母材と前記隔壁母材に配設された前記捕集層とを有する隔壁の厚さの5〜50%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0021】
[5] 前記捕集層の平均細孔径が、0.5〜5μmである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0022】
[6] 前記ハニカム基材は、前記隔壁母材の平均細孔径が10〜60μmで、且つ前記隔壁母材の気孔率が40〜70%のものである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0023】
[7] 前記複数の粒子が、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、カルシア、炭化珪素、アルミノシリケート、マグネシアシリケート、マグネシアカルシアシリケート、ワラストナイト、アタパルジャイト、ムライト、チタン酸カリウム、ゾノトライト及びコージェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分とする粒子である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0024】
[8] 前記複数の粒子に含まれる繊維粒子が、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、及び有機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維に、セラミックの粒子又はゾルをコーティングした複合繊維粒子を含む前記[1]〜[7]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0025】
[9] 前記捕集層が、前記所定のセル内の隔壁母材の表面にも配設されている前記[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0026】
[10] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体の、前記残余のセルの前記流入側の端面から、繊維状の粒子を含む粉末を空気とともに吸引し、前記残余のセル内の前記隔壁母材の表面に前記粉末を付着させ、付着させた前記粉末を焼成して捕集層を形成する捕集層形成工程を備え、前記粉末として、平均繊維径が0.1〜15μmで、且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなる粉末であるとともに、前記粉末を構成する前記粒子の全個数中の、前記粒子の前記平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子の比率が、10%未満の粉末を用いるハニカムフィルタの製造方法。
【0027】
[11] 前記粉末として、前記粉末を構成する粒子の全個数中の、繊維径が0.1〜15μmで、且つアスペクト比が3以上の繊維状の粒子の比率が、70%以上の粉末を用いる前記[10]に記載のハニカムフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のハニカムフィルタは、少なくとも残余のセル内の隔壁母材の表面に多孔質の捕集層が配設されたものである。そして、前記捕集層は、複数の粒子が互いに結合、又は絡み合って構成されてなるものであるとともに、前記捕集層は、複数の粒子として繊維状の繊維粒子を含み、前記捕集層は、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなるものであり、前記捕集層の表面の開口率が、20%以上であることから、ハニカムフィルタの初期圧力損失の増加を抑制することができ、且つ、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇も抑制することができる。特に、本発明のハニカムフィルタの捕集層は、上述した繊維粒子が、隔壁母材の表面に沿って、過剰に配向しない状態で、相互に結合又は絡み合って構成されたものであることから、上述した高い開口率が実現されている。
【0029】
また、本発明のハニカムフィルタの製造方法によれば、「目封止ハニカム構造体の、前記残余のセルの前記流入側の端面から、繊維状の粒子を含む粉末を空気とともに吸引し、前記残余のセル内の前記隔壁母材の表面に前記粉末を付着させる捕集層形成工程を備え、前記粉末として、平均繊維径が0.1〜15μmで、且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなる粉末であるとともに、前記粉末を構成する前記粒子の全個数中の、前記粒子の前記平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子の比率が、10%未満の粉末を用いる」ことにより、上記繊維粒子を、隔壁母材の表面に過剰に配向させずに捕集層を形成することができることから、初期圧力損失が低く、且つ、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇も抑制することが可能なハニカムフィルタを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のハニカムフィルタの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカムフィルタの一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図3】本発明のハニカムフィルタの一実施形態の、隔壁の断面を拡大して示す模式図である。
【図4】本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の成形工程において作製されるハニカム成形体を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の成形工程において作製されるハニカム成形体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図6】本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の目封止工程において作製される目封止ハニカム成形体を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の目封止工程において作製される目封止ハニカム成形体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図8】本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態に用いられる目封止ハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図9】本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の捕集層形成工程において作製される未焼成捕集層付目封止ハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図10】ハニカムフィルタの捕集層を形成する粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0032】
(1)ハニカムフィルタ:
図1〜図3に示すように、本発明のハニカムフィルタの一実施形態(ハニカムフィルタ100)は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁母材1を有するハニカム基材4と、流体の流入側の端面11における所定のセル2(流出セル2b)の開口部及び流体の流出側の端面12における残余のセル2(流入セル2a)の開口部に配設された目封止部5と、残余のセル2(流入セル2a)内の隔壁母材1の表面に配設された多孔質の捕集層13とを備えたハニカムフィルタ100である。
【0033】
そして、この本実施形態のハニカムフィルタ100の捕集層13は、複数の粒子14が互いに結合、又は絡み合って構成されてなるものであるとともに、捕集層13は、複数の粒子として繊維状の繊維粒子(以下、「繊維粒子」ということがある)を含み、この捕集層13は、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上の粒子14からなるものである。更に、この捕集層13の表面15の開口率が、20%以上である。
【0034】
このように構成することによって、本実施形態のハニカムフィルタ100は、初期圧力損失の増加を抑制することができ、且つ、捕集層13の表面15に粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇も抑制することができる。特に、捕集層13は、繊維粒子14aが、隔壁母材1の表面に沿って、過剰に配向しない状態で、相互に結合又は絡み合って構成されたものであることから、高い開口率(即ち、開口率が20%以上)が実現されている。
【0035】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、捕集層13が、流出セル2b内の隔壁母材1の表面にも配設されていてもよい。また、ハニカム基材の「端面」というときは、セルが開口する面のことを意味する。また、隔壁23は、隔壁母材1に捕集層13が配設されたものである。つまり、隔壁母材1と捕集層13とを合わせたものが隔壁23である。図1は、本発明のハニカムフィルタの一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカムフィルタの一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。図3は、本発明のハニカムフィルタの一実施形態の、隔壁の断面を拡大して示す模式図である。
【0036】
繊維粒子とは、一方向に長く、細い糸状或いは棒状に形成された粒子のことをいう。即ち、繊維粒子は、一方向に長い長径と、他の方向に短い短径とを有している。上記「長径」は、「繊維粒子の長さ」或いは「繊維長」ということがある。また、上記「短径」は、「繊維粒子の直径」或いは「繊維径」ということがある。また、捕集層を構成する粒子(例えば、繊維粒子)は、粒子同士が、その接点において結合している場合もあるが、このように粒子同士が結合している場合にも、接合した粒子をそれぞれ別の粒子(即ち、接合する前の個々の粒子を別々の粒子)と考える。
【0037】
本実施形態のハニカムフィルタの捕集層は、捕集層を構成する粒子として、繊維粒子を含んでいる。そして、この捕集層を構成する粒子は、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上のものである。即ち、捕集層を構成する粒子は、上記平均繊維径及び平均アスペクト比を満足するものであれは、全ての粒子が、上記繊維粒子であってもよいし、繊維粒子と繊維状でない球状や板状の粒子とが混在したものであってもよい。
【0038】
捕集層を構成する粒子の平均繊維径が、0.1μm未満であると、捕集層の細孔径が縮小する傾向にあり、初期圧力損失が高くなってしまう。また、平均繊維径が、15μmを超えると、捕集層の細孔径が増大する傾向にあり、捕集層に粒子状物質が堆積した際に、圧力損失の上昇が大きくなる。捕集層を構成する粒子の平均繊維径は、0.1〜15μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることが更に好ましく、0.1〜5μmであることが特に好ましい。平均繊維径を上記範囲とすることにより、初期圧力損失及び粒子状物質捕集時における圧損の上昇を良好に抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態のハニカムフィルタにおいては、捕集層を構成する複数の粒子が、繊維径が0.1〜15μmで且つアスペクト比が3以上の特定繊維粒子を、捕集層を構成する粒子の全個数中に70%以上含むことが好ましい。このような特定繊維粒子を含むことにより、初期圧力損失及び粒子状物質捕集時における圧損の上昇を更に良好に抑制することができる。
【0040】
本実施形態のハニカムフィルタにおいて、捕集層を構成する粒子の平均繊維径は、捕集層の表面から剥離された粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)画像により測定することができる。具体的には、まず、捕集層表面からセロハンテープで捕集層を構成する粒子を剥離し、それらの粒子を観察面と平行に寝かせた状態の画像を得る。得られた画像中の各粒子の最も短い(小さい)部分の長さ(短径)を測定し、その長さを、「各粒子の繊維径」とし、その平均値(メジアン)を「平均繊維径」とする。上記測定においては、100個以上の粒子の繊維径を測定し、その平均を算出する。視野(画像)の広さ、視野数は粒子のサイズによって可変とする。上記捕集層を構成する粒子の平均繊維径の測定については、捕集層を構成する全ての粒子、即ち、繊維状の粒子、及び繊維状ではない球状の粒子や板状の粒子の短径を無作為に測定し、その平均値を求めることとする。
【0041】
また、上述した特定繊維粒子の繊維径は、SEM画像から得られる「各粒子の繊維径」から求めることができる。
【0042】
また、本実施形態のハニカムフィルタにおいては、捕集層を構成する粒子の平均アスペクト比が3以上である。「平均アスペクト比」とは、各繊維粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)の平均値(メジアン)のことをいう。平均アスペクト比が、3未満であると、捕集層の開口率及び気孔率が減少する傾向にあり、初期圧力損失が高くなってしまう。なお、捕集層の開口率が低いと粒子状物質を捕集する際における圧損の上昇も高くなってしまう。
【0043】
平均アスペクト比は、3〜50であることが好ましく、5〜30であることが更に好ましく、10〜30であることが特に好ましい。平均アスペクト比を上記範囲にすることにより、繊維粒子が相互に絡み合い、良好に捕集層を形成することができ、開口率及び気孔率の高い捕集層を形成することができる。繊維粒子の長径及び短径(即ち、繊維径)は、上述した粒子の繊維径の測定方法と同様の方法によって測定することができる。
【0044】
捕集層には、捕集層を構成する粒子の全個数中に、繊維径が0.1〜15μmで且つアスペクト比が3以上の特定繊維粒子を70%以上含んでいることが好ましい。特定繊維粒子が70%未満であると、比較的長径の長い繊維粒子の数が少なくなり、開口率及び気孔率が低下することがある。これにより、初期圧力損失が高くなることがある。
【0045】
粒子の全個数中の特定繊維粒子の比率(以下、単に「特定繊維粒子の比率」ということがある)は、捕集層の表面から剥離された粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)画像により、全粒子の個数と、特定繊維粒子の個数を計測して算出することができる。具体的には、まず、捕集層表面からセロハンテープで捕集層を構成する粒子を剥離し、それらの粒子を観察面と平行に寝かせた状態の画像を得る。得られた画像中の粒子が、特定繊維粒子に該当するものであるか否かを判別し、特定繊維粒子の個数と、特定繊維粒子を含む全粒子の個数を計測する。その後、全粒子の個数に対する特定繊維粒子の個数の百分率(特定繊維粒子の個数/全粒子の個数×100)を求め、この値を「特定繊維粒子の比率(%)」とする。
【0046】
特定繊維粒子の比率は、70〜100%であることがより好ましく、80〜100%であることが更に好ましく、90〜100%であることが特に好ましい。このように構成することによって、より開口率及び気孔率の高い捕集層を形成することができる。
【0047】
本実施形態のハニカムフィルタにおいては、捕集層の表面の開口率が、20%以上である。捕集層の表面の開口率を20%以上とすることにより、排ガス中に含まれる粒子状物質の流れを分散させることができ、捕集層の細孔が粒子状物質によって閉塞されるのを有効に抑制することができる。これにより、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0048】
「捕集層の表面の開口率」とは、捕集層の表面(平面)において、捕集層の実体部分が存在せず、細孔が実際に開口している部分の面積の、上記表面(平面)に対する比率のことを意味する。具体的には、「捕集層の表面の開口率」は以下の方法で求めることができる。まず、捕集層の表面を、レーザー顕微鏡(例えば、OLYMPUS社製の「LEXT OLS4000(商品名)」)を用いて撮像し、当該表面の表面凹凸画像を取得する。次に、ハイパスフィルタ(λ=25μm)処理にて、上記表面凹凸画像の表面うねりを除去した後、「(高さの最頻値)−2μm」を閾値として二値化処理を行う。二値化処理後、上記閾値より高い領域を隔壁材料(即ち、捕集層の実体部分)とし、低い領域を捕集層の細孔部分とする。捕集層の実体部分と、捕集層の細孔部分との面積をそれぞれ算出する。得られた面積より、全体の面積に対する細孔の面積の比率(細孔の面積/全体の面積×100)を、「捕集層の表面の開口率(%)」とする。
【0049】
捕集層の表面の開口率は、20〜70%であることが好ましく、25〜60%であることが更に好ましく、30〜50%であることが特に好ましい。捕集層の表面の開口率を上記範囲にすることにより、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇をより良好に抑制することができる。捕集層の表面の開口率が70%を超えると、捕集層による粒子状物質の捕集効率が低下し、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇が大きくなることがある。
【0050】
捕集層の気孔率は、70%以上であることが好ましく、75〜95%であることが更に好ましく、80〜90%であることが特に好ましい。気孔率を上記範囲とすることにより、初期圧力損失を良好に抑制することができる。気孔率の上限については特に制限はなく、より大きいことが望ましいが、例えば、製造上の実現可能性の観点により95%程度が上限となる。
【0051】
捕集層の気孔率を測定する方法は、以下の通りである。ハニカムフィルタを樹脂(エポキシ樹脂)に埋設することによりハニカムフィルタの隔壁の細孔を樹脂で埋める。樹脂で埋めたハニカムフィルタの、セル長手方向と垂直な方向の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を取得する。得られたSEM画像における隔壁を、画像上において(画像解析によって)、隔壁中央部(厚さ方向における中央部)から表層にかけて5μm幅で分割し、各「分割部分(分割領域)」毎に、以下の処理を行う。画像解析ソフト(Media Cybernetics社製の「Image−Pro Plus 6.2J(商品名)」)を用いて、各分割部分の隔壁の面積を測定する。ここで、「全体の面積」から「隔壁の面積」を減算した値が、「気孔(細孔)の面積」となる。最も表面に近い分割部分の画像における、「全体の面積」に対する「気孔(細孔)の面積」の百分率(即ち、{1−「隔壁の面積」/「全体の面積」}×100)を、「捕集層の気孔率(%)」とする。
【0052】
捕集層の厚さは、隔壁(即ち、隔壁母材と隔壁母材に配設された捕集層とを有する隔壁)の厚さの5〜50%であることが好ましい。捕集層の厚さが、隔壁の厚さの5%未満であると、捕集層を配設したことによる効果が発現し難く、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇を良好に抑制することができないことがある。即ち、排ガス中の粒子状物質を捕集する際に、粒子状物質が多孔質の隔壁の内部に侵入し、隔壁の細孔を閉塞させて、圧力損失(圧損)が増加することがある。また、捕集層の厚さが、隔壁の厚さの50%を超えると、捕集層が厚くなり過ぎて、初期圧力損失が高くなることがある。
【0053】
上述した隔壁の厚さに対する捕集層の厚さの比率は、捕集層の開口率や気孔率等によって異なるが、例えば、9〜40%であることが更に好ましく、9〜20%であることが特に好ましい。このように構成することによって、初期圧力損失と粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇をバランスよく抑制することができる。
【0054】
捕集層の厚さは、上記捕集層の気孔率を測定する方法において、5μm幅で分割した各画像における気孔率を元に算出することができる。具体的には、「隔壁中央部における気孔率」と「隔壁の最も表面に近い分割部分(捕集層)における気孔率」との平均値を算出し、算出した平均値と気孔率が等しくなる画像が撮像された部分から、隔壁の表面までの距離を、捕集層の厚さ(例えば、図3に示す捕集層の厚さL1)として求めることができる。また、隔壁の厚さは、隔壁母材と隔壁母材に配設された捕集層とを有する全隔壁の厚さ(例えば、図3に示す隔壁の厚さL2)として求めることができる。隔壁の厚さ(L2)は、隔壁断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像により求めることができる。
【0055】
なお、捕集層の厚さは、上記のように規定することができるが、図3に示すように、本実施形態のハニカムフィルタ100における実際の捕集層13は、隔壁母材1の表面より外側に位置する表層21と、隔壁母材1の表面より内側(細孔内)に位置する深層22とから構成されている。即ち、隔壁23は、隔壁母材1と捕集層13とから構成されており、隔壁母材1と捕集層13とは、その配置される領域が一部重なっていることがある。換言すれば、隔壁母材1の細孔内まで捕集層13の一部が入り込み、その領域を共有していることがある。特に、本実施形態のハニカムフィルタにおいては、捕集層を構成する繊維粒子が、隔壁母材の表面に沿って過剰に配向しない状態(即ち、繊維粒子が、隔壁母材の表面に平行に配列しない状態)で、相互に結合又は絡み合っている。このため、繊維粒子の一部が隔壁母材1の細孔内まで入り込むことがある。隔壁母材1の細孔内まで入り込んだ深層22も捕集層の一部であるが、捕集層の厚さの測定時においては、上述した方法に従って捕集層の厚さを測定する。また、上述した「捕集層の気孔率を測定する方法」によって測定される気孔率は、実質的に表層21の気孔率を測定していることとなる。
【0056】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、捕集層の平均細孔径(具体的には、表層の平均細孔径)が、0.5〜5μmであることが好ましく、2〜4.5μmであることが更に好ましく、3〜4μmであることが特に好ましい。捕集層の平均細孔径が0.5μm未満であると、初期圧力損失が高くなることがある。捕集層の平均細孔径が5μmを超えると、捕集層を配設したことによる効果が発現し難く、粒子状物質が堆積した際の圧力損失の上昇を良好に抑制することができないことがある。
【0057】
捕集層の平均細孔径は、バブルポイント/ハーフドライ法(ASTM E1294−89)によって測定した値である。具体的には、まず、ハニカムフィルタに用いられるハニカム基材(捕集層が配設されていないもの)の隔壁部分(板の部分)を、その表面が30mm×30mmとなるように切り出す。次に、切り出した板の片側表面に、ハニカムフィルタの捕集層を構成する材料と同じ材料を用いて、10〜30μmの厚さの捕集層の前駆体を形成する。次に、切り出した板とともに捕集層の前駆体を焼成して、平均細孔径測定用の評価試料を作製する。この評価試料を、パームポロメータ(PMI社製の「Capillary Flow Porometer(商品名)」)を用いて、バブルポイント/ハーフドライ法によって平均細孔径を測定する。
【0058】
本実施形態のハニカムフィルタ100においては、捕集層13における、隔壁母材1の細孔内に侵入している部分(深層22(図3を参照))の厚さが、隔壁23の厚さの6%以下であり、3%以下であることが好ましく、1%以下であることが更に好ましい。このように、深層22(図3を参照)の厚さが、隔壁23の厚さの6%以下であることにより、初期圧力損失の増加を抑制することができる。深層22(図3を参照)の厚さは薄いほど好ましいが、0.1%程度が下限値となる。隔壁23の厚さは、隔壁断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像により測定した値である。
【0059】
捕集層の深層の厚さは、上記捕集層の気孔率を測定する方法において、5μm幅で分割した各画像における気孔率を元に算出することができる。具体的には、「隔壁中央部における気孔率」と「隔壁の最も表面に近い分割部分(捕集層)における気孔率」との平均値を算出し、算出した平均値と気孔率が等しくなる画像が撮像された部分から、「隔壁と捕集層とが混在する最も表面から遠い分割部分(即ち、深層22と隔壁母材1とが混在する領域の最深部分)」までの距離を、深層の厚さ(例えば、図3に示す深層の厚さL3)として求めることができる。
【0060】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、隔壁母材1は、平均細孔径が10〜60μmで、且つ気孔率が40〜70%であることが好ましく、平均細孔径が20〜50μmで、且つ気孔率が50〜65%であることが更に好ましく、平均細孔径が20〜30μmで、且つ気孔率が55〜65%であることが特に好ましい。平均細孔径が10μmより小さいか、又は気孔率が40%より小さいと、初期圧力損失が高くなることがある。また、平均細孔径が60μmより大きいか、又は気孔率が70%より大きいと、ハニカムフィルタの強度が低くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0061】
隔壁母材1の厚さは、100〜500μmであることが好ましく、200〜400μmであることが更に好ましく、300〜350μmであることが特に好ましい。100μmより薄いと、ハニカムフィルタの強度が低くなることがある。500μmより厚いと、初期圧力損失が高くなることがある。
【0062】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、ハニカム基材4の形状は、特に制限はない。例えば、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。図1及び図2に示すハニカムフィルタ100においては、円筒形状である。また、図1及び図2に示すハニカムフィルタ100は、外周壁3を有しているが、外周壁3を有さなくてもよい。外周壁3は、ハニカムフィルタ(換言すれば、ハニカム構造体)を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁母材とともに形成されることが好ましい。また、外周壁3は、セラミック材料をハニカム構造体の外周に塗工して形成したものであってもよい。
【0063】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、ハニカム基材4の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0064】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、ハニカム基材4のセル形状(ハニカムフィルタの中心軸方向(セルが延びる方向)に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、或いはこれらの組合せを挙げることができる。四角形のなかでも、正方形、長方形が好ましい。
【0065】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、ハニカム基材4のセル密度は、特に制限されないが、16〜96セル/cmであることが好ましく、32〜64セル/cmであることが更に好ましい。セル密度が、16セル/cmより小さいと、粒子状物質を捕集する隔壁の面積が小さくなり、排ガスを流通させたときに、短時間で圧力損失が大きくなることがある。セル密度が、96セル/cmより大きいと、セルの断面積(セルの延びる方向に直交する断面の面積)が小さくなるため、圧力損失が大きくなることがある。
【0066】
本実施形態のハニカムフィルタ100において、捕集層13の材質として、セラミックや金属等を挙げることができる。より具体的には、捕集層を構成する粒子が、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、カルシア、炭化珪素、アルミノシリケート、マグネシアシリケート、マグネシアカルシアシリケート、ワラストナイト、アタパルジャイト、ムライト、チタン酸カリウム、ゾノトライト及びコージェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分とする粒子であることが好ましい。例えば、捕集層を構成する粒子が、繊維粒子と、繊維粒子ではない球状粒子や板状粒子とを含むものである場合には、これらの粒子が、上記群より選ばれる少なくとも一種を主成分とする粒子であることが更に好ましい。
【0067】
また、捕集層を構成する粒子に含まれる繊維粒子は、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、及び有機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維に、セラミックの粒子又はゾルをコーティングした複合繊維粒子を含むものであってもよい。例えば、有機繊維にセラミックの粒子又はゾルをコーティングした複合粒子を用いることにより、繊維粒子の形状を良好に制御することができる。また、セラミック繊維にコーティングすることにより、耐酸性を向上させることができる。このように、所望の繊維に上述したコーティングを施した複合繊維粒子を用いることにより、単独の繊維粒子では発現困難な、種々の特性を捕集層に付与することができる。特に、このように構成された繊維粒子は、上述した特定繊維粒子として好適に用いることができる。
【0068】
また、捕集層を構成する粒子として、上記セラミックの粒子又はゾルをコーティングした複合繊維粒子を用いる場合には、コーティングする粒子又はゾルには触媒成分が含まれていてもよい。例えば、セラミック繊維に触媒成分を含むゾルをコーティングすることにより、繊維粒子表面での粒子状物質(PM)の酸化速度を向上させることができる。また、捕集層のみに触媒を塗布できるため触媒の使用量を低減することができる。更に、本実施形態のハニカムフィルタの捕集層は、繊維粒子同士が過剰に配向しないように形成されたものであるため、PMと繊維粒子が接触しやすくなり、PM酸化速度の向上効果が大きい。
【0069】
また、本実施形態のハニカムフィルタ100においては、隔壁母材1の材質がコージェライトであり、捕集層13の材質がアルミナ、ワラスナイト、マグネシアシリケート及び上記複合繊維粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含む材料であることが好ましい。
【0070】
従来の、捕集層が備えられていないハニカム構造体をフィルタとして用いて、粒子状物質を含む排ガスを処理すると、隔壁の細孔内に粒子状物質が侵入して細孔を閉塞させるため、圧力損失が急速に上昇するという問題があった。これに対し、本実施形態のハニカムフィルタは、流入セル内の隔壁の表面に捕集層が形成されたものであるため、粒子状物質が捕集層で捕集されて、隔壁の細孔内に侵入することを防止することができ、圧力損失の急速な上昇を抑制することができる。
【0071】
また、図1及び図2においては、捕集層13が、流入セル2a内の隔壁母材1の表面にのみ配設されたハニカムフィルタ100の例を示しているが、捕集層13が、流出セル2b内の隔壁母材1の表面に更に配設されていてもよい。流出セル2b内の隔壁母材1の表面に更に捕集層13を配設することにより、粒子状物質の捕集効率を向上させることができる。一方、流入セル2a内の隔壁母材1の表面にのみ捕集層13を配設することにより、初期圧力損失の過度の上昇を抑制することができる。
【0072】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体の、残余のセルの流入側の端面から、繊維状の粒子を含む粉末を空気とともに吸引し、残余のセル内の隔壁母材の表面に上記粉末を付着させ、付着させた粉末を焼成して捕集層を形成する捕集層形成工程を備え、上記粉末として、平均繊維径が0.1〜15μmで、且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなる粉末であるとともに、この粉末を構成する粒子の全個数中の、「全粒子の平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子」の比率が、10%未満の粉末を用いるハニカムフィルタの製造方法である。
【0073】
本実施形態のハニカムフィルタの製造方法では、捕集層形成工程において、「全粒子の平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子」を、捕集層を形成するための全粒子(全粒子の個数)に対して、10%未満とすることで、相対的に繊維状の粒子(繊維粒子)の比率を多くし、更に、上述のように、「空気とともに吸引する」乾式による塗工方法(乾式による粒子を堆積させる方法)を採用することによって、「捕集層が、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなり、この捕集層の表面の開口率が20%以上のハニカムフィルタ」(上記、本発明のハニカムフィルタ)を、簡便且つ安価に得ることができる。
【0074】
従来のハニカムフィルタの製造方法においても、繊維粒子を用いて捕集層を形成することは行われていたが、スプレー塗布やディップコート等の湿式法により捕集層を形成していた。このため、繊維粒子同士、或いは、繊維粒子と隔壁母材とが配向(換言すれば、繊維粒子が、隔壁母材の表面に沿って平行に配列)してしまい、捕集層にガス等が侵入するための流路(即ち、捕集層の表面の開口率)が減少してしまっていた。
【0075】
本実施形態のハニカムフィルタの製造方法においては、非繊維状の粒子の比率が10%未満の粒子を用いて乾式法(乾燥した粒子を空気とともに搬送する方法)により粒子を堆積させるため、繊維状の粒子が配向し難く、隔壁母材の表面に堆積する粒子間の隙間を多くすることができる。その結果、上記湿式法と比較して、捕集層の表面の開口率を大幅に増大させることが可能となる。非繊維状の粒子の比率が10%を超えると、小さな球状の粒子が相対的に多くなり、この球状の粒子が隔壁母材の細孔内に侵入し、細孔を閉塞させる。この結果、得られるハニカムフィルタの初期圧力損失が増大してしまう。即ち、単に、粉末として、「平均繊維径が0.1〜15μmで、且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなる粉末」を用いたのみでは、開口率が20%以上の捕集層を形成することは極めて困難であり、非繊維状の粒子の比率が10%未満の粉末を用いることと、上記乾式法による捕集層の形成とが重要となる。
【0076】
以下、本実施形態のハニカムフィルタの製造方法について、工程毎に説明する。
【0077】
(2−1)ハニカム基材の作製(成形工程):
まず、成形工程において、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、図4及び図5に示すような、流体の流路となる複数のセル52を区画形成する未焼成隔壁母材51を備えるハニカム成形体(ハニカム構造の成形体)50を形成する。図4は、本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の成形工程において作製されるハニカム成形体50を模式的に示す斜視図である。図4及び図5に示されるハニカム成形体50は、外周壁53を有している。図5は、本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の成形工程において作製されるハニカム成形体50の、セル52の延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0078】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0079】
また、このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0080】
作製されるハニカムフィルタの隔壁母材の細孔表面積、平均細孔径及び気孔率を調整するために、各原料を以下のように調整することが更に好ましい。
【0081】
セラミック原料として、タルク、カオリン、アルミナ、シリカを用いることが好ましい。タルクの平均粒子径は、10〜30μmとすることが好ましい。カオリンの平均粒子径は、1〜10μmとすることが好ましい。アルミナの平均粒子径は、1〜20μmとすることが好ましい。シリカの平均粒子径は、1〜60μmとすることが好ましい。また、造孔材としては、でんぷん、カーボン、発泡樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、吸水性樹脂、又はこれらを組み合わせたものを使用することが好ましい。また、造孔材の平均粒子径は、10〜100μmとすることが好ましい。また、造孔材の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましい。また、有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0082】
セラミック成形原料を成形する際には、まずセラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0083】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、図4に示すような円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。
【0084】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0085】
(2−2)目封止工程:
成形工程の後に、目封止工程において、図6及び図7に示すように、ハニカム成形体50の、流体の流入側の端面61における所定のセル52(流出セル52b)の開口部、及び流体の流出側の端面62における残余のセル52(流入セル52a)の開口部に、目封止部55を配設する。ハニカム成形体50に目封止部55を配設して目封止ハニカム成形体60を形成する。図6は、本発明のハニカムのフィルタ製造方法の一実施形態の目封止工程において作製される目封止ハニカム成形体60を模式的に示す斜視図である。図7は、本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の目封止工程において作製される目封止ハニカム成形体60の、セル52の延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0086】
ハニカム成形体に目封止材料を充填する際には、流体の流入側の端面側と流体の流出側の端面側とで交互に目封止材料を充填する。目封止材料を充填する方法としては、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、「ハニカム成形体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する圧入工程と、を有する方法を挙げることができる。目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0087】
目封止材料は、上記セラミック成形原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。目封止材料に含有されるセラミック原料としては、隔壁母材の原料として用いるセラミック原料と同じであることが好ましい。
【0088】
図6及び図7に示されるように目封止ハニカム成形体60は、流入セル52aと流出セル52bとが交互に並び、目封止部が形成された端面(例えば、流入側の端面61)において、目封止部55とセル52の開口部とにより市松模様が形成されていることが好ましい。
【0089】
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させることが好ましい。
【0090】
(2−3)目封止ハニカム構造体の作製(焼成工程1):
次に、図8に示すように、目封止材料を充填した目封止ハニカム成形体60を焼成して目封止ハニカム構造体70を作製する。目封止ハニカム構造体70は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材71を有するハニカム基材74と、流体の流入側の端面61における所定のセル72(流出セル72b)の開口部及び流体の流出側の端面62における残余のセル72(流入セル72a)の開口部に配設された目封止部75とを備えた目封止ハニカム構造体70である。図8は、本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態に用いられる目封止ハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。また、図8に示される目封止ハニカム構造体70は、外周壁73を有している。
【0091】
目封止ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、その目封止ハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、目封止ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0092】
目封止ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0093】
(2−4)捕集層形成工程1(未焼成捕集層の作製):
次に、図9に示すように、得られた目封止ハニカム構造体70の、残余のセル72の流入側の端面62から、繊維状の粒子を含む粉末84を空気とともに吸引し、残余のセル72内の隔壁母材71の表面に粉末84を付着させて、未焼成捕集層付目封止ハニカム構造体80を作製する。上記粉末84中の粒子は、隔壁母材71の表面に堆積して、未焼成の捕集層(未焼成捕集層83)を形成している。図9は、本発明のハニカムフィルタの製造方法の一実施形態の捕集層形成工程において作製される未焼成捕集層付目封止ハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。捕集層形成工程においては、空気とともに粒子を吸引する乾式法によって捕集層を形成するため、隔壁母材71の表面に付着する粉末84が、一方向に配向し難い。
【0094】
本実施形態のハニカムフィルタの製造方法においては、上記粉末84として、粉末84を構成する粒子の全個数中の、前記粒子の平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子の比率が、10%未満の粉末を用いる。また、この粉末の平均繊維径が0.1〜15μmであり、且つこの粉末の平均アスペクト比が3以上である。
【0095】
捕集層の原料となる粉末の粒子の平均繊維径は、原料粉末のSEM画像における各粒子の「短径」の平均値(メジアン)である。
【0096】
また、各粒子の長径は、原料粉末のSEM画像から測定した値である。
【0097】
粉末中の各粒子のアスペクト比は、原料粉末のSEM画像から得られた短径に対する長径の比(長径/短径)である。
【0098】
上記非繊維状の粒子の割合は、「アスペクト比が2未満の粒子で、且つ、上記平均繊維径と各粒子の長径とを比較した際に、その粒子の長径が短い粒子」の個数を、全粒子の個数で除法した値に100を乗じた百分率である。
【0099】
非繊維状の粒子の割合は、10%未満であればよいが、例えば、0〜9%であることが好ましく、0〜7%であることが更に好ましく、0〜5%であることが特に好ましい。本実施形態のハニカムフィルタの製造方法においては、上記非繊維状の粒子が、原料となる粉末中に実質的に含有されていないこと(即ち、非繊維状の粒子の割合が0%であること)が最も好ましい。
【0100】
また、捕集層の原料となる粉末は、少なくとも繊維状の粒子を含み、この粉末が、平均繊維径が0.1〜15μmで、且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなる粉末であるとともに、上記非繊維状の粒子の比率が10%未満であれば、それ以外の粒子については、特に制限はない。但し、粉末として、この粉末を構成する粒子の全個数中の、繊維径が0.1〜15μmで、且つアスペクト比が3以上の繊維状の粒子の比率が、70%以上の粉末を用いることが好ましい。このように構成することによって、本発明のハニカムフィルタを良好に製造することができる。
【0101】
捕集層の原料となる粉末の粒子は、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、カルシア、炭化珪素、アルミノシリケート、マグネシアシリケート、マグネシアカルシアシリケート、ワラストナイト、アタパルジャイト、ムライト、チタン酸カリウム、ゾノトライト及びコージェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分とする粒子であることが好ましい。
【0102】
また、上記粒子は、非繊維状の粒子以外の粒子として、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、及び有機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維に、セラミックの粒子又はゾルをコーティングした複合繊維粒子を含むことが好ましい。
【0103】
繊維状の粒子を含む粉末を空気とともに吸引して未焼成捕集層を形成する条件については特に制限はなく、形成する捕集層の厚さ等を考慮して、粉末の量と空気の量を調整することができる。例えば、粉末を空気とともに吸引する具体的な条件としては、空気中の粉末の密度が1〜10mg/ccであることが好ましい。空気の吸引速度は0.1〜5m/sであることが好ましい。また、粒子の詰まり具合によって、得られる捕集層の気孔率を制御することもできる。
【0104】
(2−5)捕集層形成工程2(ハニカムフィルタの製造(焼成工程2)):
次に、得られた目封止ハニカム構造体70を焼成してハニカムフィルタ100(図1及び図2を参照)を作製する(焼成工程2)。この焼成工程2においては、未焼成捕集層83(即ち、隔壁母材の表面に付着させた粉末)が焼成されて、複数の粒子84が互いに結合、又は絡み合って構成された捕集層13(図2を参照)が形成される。
【0105】
焼成工程2における焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、捕集層の原料粒子の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、隔壁母材の材料にコージェライト、捕集層材料にワラストナイトを使用している場合には、焼成温度は、1000〜1200℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、0〜2時間が好ましい。焼成を行う装置は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。本実施形態のハニカムフィルタの製造方法においては、捕集層の形成を乾式法によって行うため、乾燥した状態の粒子が隔壁母材の表面に付着している。このため、焼成工程2の前に、捕集層を形成する粒子を乾燥する工程が不要であり、乾燥時に膜クラック等が発生するという懸念がないという利点もある。例えば、捕集層を形成する粒子をスラリー状の状態で塗布した場合(即ち、湿式法の場合)には、乾燥工程は必須の工程となり、製造工程が煩雑になるとともに、上記膜クラック等の発生の問題も生じる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明のハニカム構造体及びその製造方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
セラミック原料として、コージェライト化原料(タルク、カオリン及びアルミナ)を用いた。タルク、カオリン及びアルミナの質量比は、焼成後、コージェライトが得られる質量比とした。セラミック原料100質量部に対して、バインダ(メチルセルロース)4質量部、水35質量部を混合してセラミック成形原料を得た。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体は、隔壁厚さが304.8μmであり、セル密度が46.5セル/cmであり、全体形状が円筒形(端面の直径が127mm、セルの延びる方向における長さが152.4mm)であった。セル形状は、セルの延びる方向に直交する形状が正方形であった。得られたハニカム成形体を、マイクロ波及び熱風で乾燥させた。
【0108】
次に、ハニカム成形体の端面(流入側及び流出側の端面)における複数のセル開口部の中の一部に、マスクを施した。このとき、マスクを施したセルとマスクを施さないセルとが交互に並ぶようにした。そして、マスクを施した側の端部を、コージェライト化原料を含有する目封止スラリーに浸漬して、マスクが施されていないセルの開口部に目封止スラリーを充填した。これにより、流入側の端面における所定のセルの開口部及び流出側の端面における残余のセルの開口部に目封止部が配設された目封止ハニカム成形体を得た。
【0109】
次に、目封止ハニカム成形体について、450℃で5時間加熱することにより脱脂を行い、更に、1425℃で7時間加熱することにより焼成を行い、目封止ハニカム構造体を得た。
【0110】
捕集層を形成するための原料(捕集層原料粉末)として、ワラストナイトの粒子を、目封止ハニカム構造体の一方の端面から空気とともに吸引し、目封止ハニカム構造体のセル内(流入セル内)の隔壁母材の表面に付着させた。
【0111】
ワラストナイトの粒子を吸引する条件としては、空気中の粉末の密度を5mg/cc、空気の吸引速度を1m/sとした。
【0112】
上記ワラストナイトの粒子としては、全粒子の平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子の比率が、5%の粒子を用いた。即ち、95%の粒子は、全粒子の平均繊維径よりも長径の長さが同等以上、又はそのアスペクト比が2以上の粒子であった。
【0113】
ワラストナイトの粒子(原料粉末)の平均繊維径、及び各粒子の繊維径は、以下の方法によって測定した。以下の方法は、原料粉末の状態における平均繊維径及び繊維径の測定方法である。
【0114】
(原料の平均繊維径)
原料粉末のSEM画像を撮像し、この画像中の各粒子の「短径」を測定する。測定した「短径」の値の平均値(メジアン)を、「平均繊維径」とする。
【0115】
(各粒子の繊維径)
原料粉末のSEM画像を撮像し、この画像中の各粒子の「短径」を測定する。測定した各「短径」の値を、それぞれの粒子の「繊維径」とする。
【0116】
また、ワラストナイト粒子(原料粉末)の平均アスペクト比は、以下の方法によって測定した。
【0117】
(原料の平均アスペクト比)
原料粉末のSEM画像を撮像し、この画像中の各粒子の「短径」と「長径」を測定する。測定した短径に対する長径の比(長径/短径)を、「アスペクト比」とし、その平均値(メジアン)を「平均アスペクト比」とする。
【0118】
次に、ワラストナイトの粒子を付着させた目封止ハニカム構造体(未焼成捕集層付目封止ハニカム構造体)を、1000〜1200℃で2時間加熱することにより焼成を行い、ハニカムフィルタを得た。得られたハニカムフィルタは、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部と、残余のセル内の隔壁母材の表面に配設された多孔質の捕集層とを備えたものであった。
【0119】
得られたハニカムフィルタについて、以下に示す方法で、「捕集層を構成する粒子の平均繊維径(表1においては、「平均繊維径」と記す)」、「捕集層を構成する粒子の平均アスペクト比(表1においては、「平均アスペクト比」と記す)」、「特定繊維粒子の比率(%)」、「捕集層の表面の開口率(%)」、「捕集層の気孔率(%)」、「捕集層の厚さ/隔壁の厚さ(%)」、「捕集層の平均細孔径(μm)」、「ハニカム基材の気孔率(%)」、「ハニカム基材の平均細孔径(μm)」、「初期圧損(kPa)」及び「PM堆積圧損上昇(%)」を評価した。結果を表1に示す。ハニカムフィルタの捕集層を形成する粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の写真を図10に示す。
【0120】
(平均繊維径、及び平均アスペクト比)
捕集層の「平均繊維径」及び「平均アスペクト比」は、以下の方法で求める。まず、捕集層表面からセロハンテープで捕集層を構成する粒子を剥離し、それらの粒子を観察面と平行に寝かせた状態のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を取得する(例えば、図10参照)。SEM画像は、1280×960ピクセルの画像とする。なお、SEM画像の倍率は繊維の形状に合わせて任意の倍率に設定することができる。得られたSEM画像中の各粒子の短径(即ち、繊維の直径:例えば、図10におけるX)の長さを「繊維径」とし、各粒子の長径(即ち、繊維の長さ:例えば、図10におけるY)の長さを「繊維長」とした。得られた「繊維径」及び「繊維長」から、繊維径の平均値(メジアン)を「平均繊維径」とし、各粒子のアスペクト比(繊維長/繊維径)の平均値(メジアン)を「平均アスペクト比」とした。
【0121】
(特定繊維粒子の比率)
上記「平均繊維径」の測定に用いた捕集層のSEM画像から、SEM画像中の全粒子の個数と、特定繊維粒子の個数を求め、全粒子の個数に対する特定繊維粒子の個数の比率(繊維粒子の個数/全粒子の個数×100)を、「繊維粒子の比率(%)」とした。特定繊維粒子は、繊維径が0.1〜15μmで且つアスペクト比が3以上の粒子である。
【0122】
(捕集層の表面の開口率)
「捕集層の表面の開口率」は、以下の方法で求める。まず、捕集層の表面を、レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製の「LEXT OLS4000(商品名)」)を用いて撮像し、当該表面の表面凹凸画像を取得する。次に、ハイパスフィルタ(λ=25μm)処理にて、上記表面凹凸画像の表面うねりを除去した後、「(高さの最頻値)−2μm」を閾値として二値化処理を行う。二値化処理後、上記閾値より高い領域を隔壁材料(即ち、捕集層の実体部分)とし、低い領域を捕集層の細孔部分とする。捕集層の実体部分と、捕集層の細孔部分との面積をそれぞれ算出する。得られた面積より、全体の面積に対する細孔の面積の比率(細孔の面積/全体の面積×100)を、「捕集層の表面の開口率(%)」とした。
【0123】
(捕集層の気孔率)
「捕集層の気孔率」は、以下の方法で求める。まず、ハニカムフィルタを樹脂(エポキシ樹脂)に埋設することによりハニカムフィルタの隔壁の細孔を樹脂で埋め、セル長手方向と垂直な方向の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を取得する。得られたSEM画像における隔壁を、画像上において(画像解析によって)、隔壁中央部(厚さ方向における中央部)から表層にかけて5μm幅で分割し、各「分割部分(分割領域)」毎に、以下の処理を行う。画像解析ソフト(Media Cybernetics社製の「Image−Pro Plus 6.2J(商品名)」)を用いて、各分割部分の隔壁の面積を測定する。ここで、「全体の面積」から「隔壁の面積」を減算した値が、「気孔(細孔)の面積」となる。最も表面に近い分割部分における、「全体の面積」に対する「気孔(細孔)の面積」の百分率(即ち、{1−「隔壁の面積」/「全体の面積」}×100)を、「捕集層の気孔率(%)」とした。
【0124】
(捕集層の厚さ/隔壁の厚さ)
「捕集層の厚さ/隔壁の厚さ」は、以下の方法で求める。まず、捕集層の厚さは、上記捕集層の気孔率を測定する方法において、5μm幅で分割した各画像における気孔率を元に算出した。具体的には、「隔壁中央部における気孔率」と「隔壁の最も表面に近い分割部分(捕集層)における気孔率」との平均値を算出し、算出した平均値と気孔率が等しくなる画像が撮像された部分から、隔壁の表面までの距離を、捕集層の厚さ(L1)として求めた。隔壁の厚さ(L2)は、隔壁断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像により求めた。得られた「隔壁の厚さ(L2)」に対する「捕集層の厚さ(L1)」の比率(L1/L2×100)を、「捕集層の厚さ/隔壁の厚さ(%)」とした。
【0125】
(捕集層の平均細孔径)
「捕集層の平均細孔径」は、以下の方法で求める。ハニカムフィルタに用いられるハニカム基材(捕集層が配設されていないもの)の隔壁部分(板の部分)を、その表面が30mm×30mmとなるように切り出し、切り出した板の片側表面に、ハニカムフィルタの捕集層を構成する材料と同じ材料を用いて、10〜30μmの厚さの捕集層の前駆体を形成し、切り出した板とともに捕集層の前駆体を焼成して、平均細孔径測定用の評価試料を作製する。この評価試料を、パームポロメータ(PMI社製の「Capillary Flow Porometer(商品名)」)を用いて、バブルポイント/ハーフドライ法によって平均細孔径(μm)を測定する。得られた平均細孔径を、「捕集層の平均細孔径(μm)」とした。
【0126】
(ハニカム基材の気孔率)
ハニカム構造体の隔壁から捕集層を除去し、島津製作所社製、商品名:オートポアIV9520を用いて、水銀圧入法により気孔率(%)を測定する。
【0127】
(ハニカム基材の平均細孔径)
ハニカム構造体の隔壁から捕集層を除去し、島津製作所社製、商品名:オートポアIV9520を用いて、水銀圧入法により平均細孔径(μm)を測定する。
【0128】
(初期圧損)
各実施例、比較例と同条件で作製した「目封止ハニカム構造体」から、1枚の隔壁を10mm×10mm以上、50mm×50mm以下の評価領域が確保できるように切り出す。そして、各実施例、比較例と同条件で作製した捕集層形成の原料を、切り出した隔壁の一方の面に付着させて、捕集層の前駆体を形成する。その後、実施例1と同じ条件で、焼成することにより、評価用試料を得る。得られた評価用試料を、捕集層(表層)の表面が「ガスの流入側の面」になるように、「PM捕集効率測定装置」に装着する。
【0129】
PM捕集効率測定装置は、評価試料が装着される本体を備え、本体の上流側にPM発生装置を配設し、このPM発生装置で発生させたPMを、本体に供給するように構成されている。評価試料は、本体の内部を上流側と下流側に仕切る(区画)するように装着される。また、上記本体には、評価試料の上流側及び下流側に計測孔が穿設されている。この計測孔により、評価試料の上流側と下流側の圧力をそれぞれ計測することができる。
【0130】
初期圧損(kPa)を測定する際には、PMを発生させない状態で、空気を本体に供給する。具体的には、PMを含有しない空気を、本体に供給し、評価試料を通過させる。このとき、PMを含有しない空気が評価試料を透過するときの流速(透過流速)は、30cm/秒以上、2m/秒以下の任意の点に調整する。そして、上流側の計測孔で測定した圧力と、下流側の計測孔で測定した圧力との差を、初期圧損(kPa)とする。
【0131】
(PM堆積圧損上昇)
上記「初期圧損」の測定と同様にして、「PM捕集効率測定装置」を用いて、評価試料に、PMを含有する空気を透過させる。そして、評価試料の1平方センチメートル当たりに、PMが0.03mg堆積した時点での、上流側の計測孔で測定した圧力と、下流側の計測孔で測定した圧力との差の値から初期圧損を差分した値を、PM堆積圧損上昇(kPa)とする。
【0132】
(実施例2〜12)
実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製し、表1及び表2に示す捕集層を形成するための原料(捕集層原料粉末)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。なお、実施例2,5〜8,10,12においては、捕集層原料粉末として、ワラストナイトの粉末を用い、実施例3においては、捕集層原料粉末としてマグネシアシリケート(ユニフラックス社製、商品名:イソフラックス)を用い、実施例4,9,11においては、捕集層原料粉末として、ベーマイトの粉末を用いた。ベーマイトの粉末は、焼成することによって、アルミナからなる捕集層を形成する。実施例1の場合と同様の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
(実施例13)
セラミック成形原料に、更に平均粒子径60μmのPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を添加し、捕集層原料粉末としてベーマイトを用いた以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。ベーマイトの粉末は、焼成することによって、アルミナからなる捕集層を形成する。なお、セラミック成形原料中のPMMAの含有量は、10質量%であった。実施例1の場合と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0136】
(実施例14)
粉体コート装置を用いて、繊維径(直径)4μm、長さ40μmのアルミナファイバーに、CeOの含有量が15質量%のセリアゾル60gと、Alの含有量が20質量%のアルミナゾル20gと、Ptの含有量が10質量%の塩化白金水溶液4gとを混合したスラリーをコーティングした複合繊維粒子を、捕集層を形成するための原料(捕集層原料粉末)として用いた以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。なお、粉体コート装置として、フロイント産業製、商品名:スパイラフローを用いた。そのコーティング量は、アルミナファイバーに対して白金含有割合が0.5質量%となるようコートした。実施例1の場合と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0137】
(比較例1、3〜5)
実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製し、表3に示す捕集層を形成するための原料(捕集層原料粉末)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でハニカムフィルタを作製した。なお、比較例1,3,5においては、捕集層原料粉末として、ワラストナイトの粉末を用い、比較例4においては、捕集層原料粉末として、ベーマイトの粉末を用いた。ベーマイトの粉末は、焼成することによって、アルミナからなる捕集層を形成する。実施例1の場合と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0138】
(比較例2)
実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を作製した。捕集層を形成する原料として、平均繊維径10μm、且つ平均アスペクト比5.8のワラストナイト290gに、水を900g加え、得られた混合液をホモジナイザーで混合して、捕集層形成用のスラリーを調製した。得られた捕集層形成用のスラリーを、目封止ハニカム構造体のセル内(流入セル内)の隔壁母材の表面にディップコート(即ち、湿式によって塗工)して、捕集層の前駆体を形成した。捕集層の前駆体を形成した目封止ハニカム構造体を、120℃で乾燥した後、1000〜1200℃で2時間加熱することにより焼成を行い、ハニカムフィルタを得た。実施例1の場合と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0139】
【表3】

【0140】
表1〜表3に示すように、実施例1〜14のハニカムフィルタは、初期圧損が低く、PM堆積圧損上昇も抑制されたものであった。捕集層を構成する繊維粒子の平均繊維径が0.1μm未満(具体的には、平均繊維径が0.05μm)の比較例4は、初期圧損が増大している。一方、繊維粒子の平均繊維径が15μmを超える(具体的には、平均繊維径が18μm)の比較例5は、実施例1、実施例2、及び実施例4と比較して、PM堆積圧損上昇が大きくなっている。また、捕集層を構成する繊維粒子の平均アスペクト比が3未満(具体的には、平均アスペクト比が2)の比較例1は、他の実施例と比較して、初期圧損が増大している。
【0141】
比較例2においては、湿式(即ち、スラリーを用いたディップコート)によって捕集層を形成したため、捕集層の表面の開口率が20%未満(具体的には、10%)となり、PM堆積圧損上昇が大きくなっている。また、比較例3においては、製造時において、非繊維状の粒子の比率が10%を超える(具体的には、前記比率が12%の)原料粉末を用いているため、小さな略球状の非繊維状の粒子が、隔壁母材の細孔内に侵入して細孔を閉塞させてしまい、初期圧損が増大している。
【0142】
また、実施例1〜14のハニカムフィルタのうち、「特定板状粒子の比率」が高いほど、初期圧損が抑制される傾向が確認された(例えば、実施例1、実施例2、実施例3、実施例5)。また、「捕集層の気孔率」が増大するほど、初期圧損が抑制される傾向が確認された(例えば、実施例5、実施例3、及び実施例1)。また、「捕集層の厚さ/隔壁の厚さ」が小さいほど、捕集層の効果が得られ難く、PM堆積圧損上昇が大きくなる傾向があり(例えば、実施例6、実施例7)、「捕集層の厚さ/隔壁の厚さ」が大きいほど、初期圧損が増大する傾向がある(例えば、実施例1、実施例8)。また、「捕集層の平均細孔径」が小さいほど、初期圧損が増大する傾向があり(例えば、実施例9、実施例11)、「捕集層の平均細孔径」が大きいほど、PM堆積圧損上昇が大きくなる傾向がある(例えば、実施例10、実施例12)。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のハニカムフィルタは、ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。また、本発明のハニカムフィルタの製造方法は、このようなハニカムフィルタの製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1:隔壁母材、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周壁、4:ハニカム基材、5:目封止部、11:流入側の端面、12:流出側の端面、13:捕集層、14:粒子、14a:繊維粒子、15:表面(捕集層の表面)、21:表層、22:深層、23:隔壁、50:ハニカム成形体、51:未焼成隔壁母材、52:セル、52a:流入セル、52b:流出セル、53:外周壁、55:目封止部、60:目封止ハニカム成形体、61:流入側の端面、62:流出側の端面、70:目封止ハニカム構造体、71:隔壁母材、72:セル、72a:流入セル、72b:流出セル、73:外周壁、74:ハニカム基材、75:目封止部、80:未焼成捕集層付目封止ハニカム構造体、83:未焼成捕集層、84:粉末、L1:捕集層の厚さ、L2:隔壁の厚さ、L3深層の厚さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部と、少なくとも前記残余のセル内の隔壁母材の表面に配設された多孔質の捕集層とを備え、
前記捕集層は、複数の粒子が互いに結合、又は絡み合って構成されてなるものであるとともに、
前記捕集層は、平均繊維径が0.1〜15μmで且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなるものであり、
前記捕集層の表面の開口率が、20%以上であるハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記複数の粒子が、繊維径が0.1〜15μmで且つアスペクト比が3以上の特定繊維粒子を、前記捕集層を構成する前記粒子の全個数中に70%以上含む請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記捕集層の気孔率が、70%以上である請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記捕集層の厚さが、前記隔壁母材と前記隔壁母材に配設された前記捕集層とを有する隔壁の厚さの5〜50%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記捕集層の平均細孔径が、0.5〜5μmである請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記ハニカム基材は、前記隔壁母材の平均細孔径が10〜60μmで、且つ前記隔壁母材の気孔率が40〜70%のものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記複数の粒子が、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、セリア、カルシア、炭化珪素、アルミノシリケート、マグネシアシリケート、マグネシアカルシアシリケート、ワラストナイト、アタパルジャイト、ムライト、チタン酸カリウム、ゾノトライト及びコージェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分とする粒子である請求項1〜6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記複数の粒子に含まれる繊維粒子が、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、及び有機繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維に、セラミックの粒子又はゾルをコーティングした複合繊維粒子を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項9】
前記捕集層が、前記所定のセル内の隔壁母材の表面にも配設されている請求項1〜8のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項10】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁母材を有するハニカム基材と、流体の流入側の端面における所定のセルの開口部及び流体の流出側の端面における残余のセルの開口部に配設された目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体の、前記残余のセルの前記流入側の端面から、繊維状の粒子を含む粉末を空気とともに吸引し、前記残余のセル内の前記隔壁母材の表面に前記粉末を付着させ、付着させた前記粉末を焼成して捕集層を形成する捕集層形成工程を備え、
前記粉末として、平均繊維径が0.1〜15μmで、且つ平均アスペクト比が3以上の粒子からなる粉末であるとともに、前記粉末を構成する前記粒子の全個数中の、前記粒子の前記平均繊維径よりも長径の長さが短く、且つそのアスペクト比が2未満の非繊維状の粒子の比率が10%未満の粉末を用いるハニカムフィルタの製造方法。
【請求項11】
前記粉末として、前記粉末を構成する粒子の全個数中の、繊維径が0.1〜15μmで、且つアスペクト比が3以上の繊維状の粒子の比率が70%以上の粉末を用いる請求項10に記載のハニカムフィルタの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−200670(P2012−200670A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67414(P2011−67414)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】