説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】 封口すべきハニカム成形体の外径変化に柔軟に対応でき、封口不良を生じることなく、所望の貫通孔が封口されたハニカム構造体を容易に製造できるハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】 複数の貫通孔71を有する円柱状のハニカム成形体70の端面に、複数の開口171を有するマスク170を、複数の開口171がそれぞれハニカム成形体70の複数の貫通孔71と対向するように配置し、マスク170のハニカム成形体70側とは反対側の面に、ハニカム成形体70の外径と略同一の内径を有するリング270を、ハニカム成形体70の外周より外側に位置するマスク170の開口171を覆うように配置する工程と、リング270の内側に封口材を供給し、マスク170の開口171を介してハニカム成形体70の貫通孔71に封口材を充填する工程と、を有するハニカム構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム成形体の一端面から一部の貫通孔を封口材で封じると共に、ハニカム成形体の他端面から残りの貫通孔を封口材で封じることにより製造される。
【0003】
ハニカム成形体の端面の所望の貫通孔のみを封口材により封じる際に、封口すべき貫通孔に対応する箇所に開口が設けられたマスクを使用する。下記特許文献1,2には、マスクを用いてハニカム成形体を封口する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290766号公報
【特許文献2】特開2008−132749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にハニカム成形体は押出成形により形成されるが、得られるハニカム成形体の外径は必ずしも一定ではない。また、ハニカム成形体の外径は、押出不良の発生、押出条件の変化、構成材料の変化等によって、容易に変動する。封口すべきハニカム成形体の外径が変化すると、封口時に、封口材のはみ出しやハニカム成形体の外壁への封口材の付着、或いは、封口材の注入ムラや封口すべき貫通孔が封口されないといった封口不良が生じる。
【0006】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、封口すべきハニカム成形体の外径変化に柔軟に対応でき、封口不良を生じることなく、所望の貫通孔が封口されたハニカム構造体を容易に製造することができるハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の貫通孔を有する円柱状のハニカム成形体の端面に、複数の開口を有するマスクを、上記複数の開口がそれぞれ上記ハニカム成形体の複数の貫通孔と対向するように配置し、上記マスクの上記ハニカム成形体側とは反対側の面に、上記ハニカム成形体の外径と略同一の内径を有するリングを、上記ハニカム成形体の外周より外側に位置する上記マスクの開口を覆うように配置する工程と、上記リングの内側に封口材を供給し、上記マスクの開口を介して上記ハニカム成形体の上記複数の貫通孔に上記封口材を充填する工程と、を有するハニカム構造体の製造方法を提供する。
【0008】
上記方法によれば、封口すべきハニカム成形体の外径と略同一の内径を有するリングをマスクと組み合わせて用いることにより、使用するリングの形状の選択によりハニカム成形体の外径変化に対応することが可能となる。そのため、ハニカム成形体の外径変化に応じてマスクを変更する必要はない。上記方法では、使用するリングの内径を調整することによって、封口時の封口材のはみ出しやハニカム成形体の外壁への封口材の付着、或いは、封口材の注入ムラの発生や封口すべき貫通孔が封口されないといった封口不良を抑制することができ、所望の貫通孔が封口されたハニカム構造体を容易に製造することができる。
【0009】
また、多数の開口を有するマスクに比べ、簡易な構造であるリングは製造コストが極めて低いため、ハニカム成形体の外径変化に応じてマスク自体を変える場合と比較して、ハニカム構造体の製造コストを低くすることができる。さらに、リングは容易に且つ低コストで作製できるため、内径の異なる多数のリングを用意しておくことが可能であり、ハニカム成形体の外径変化に柔軟に対応することができる。
【0010】
また、マスク上にリングを配置すると、リングの厚み分の段差ができる。この段差により、リングの内側に供給された封口材の漏れ(拡散)が抑制されて封口材の無駄がなくなり、充填効率が高まるという効果が得られる。さらに、マスク強度がリングで補強されることで向上するため、マスク本体を薄く軽量化できる。このため、樹脂板や樹脂フィルムをマスク本体に用いることができる。また、リングの配置によりマスクの表裏判別が容易となる。
【0011】
また、本発明の製造方法において、上記マスクの周縁部には、上記ハニカム成形体の貫通孔と同じ配列で開口が設けられており、上記マスクを、その上記周縁部が上記ハニカム成形体の周縁部と対向するように配置することが好ましい。
【0012】
ハニカム成形体が有する多数の貫通孔の内、ハニカム成形体の周縁部における側壁の近傍の貫通孔の形状は、ハニカム成形体の側壁の影響を受ける。したがって、ハニカム成形体の側壁の近傍の貫通孔は、ハニカム成形体の中央部に形成される貫通孔よりも開口の断面積が小さくなる場合がある。このような不完全な形状の貫通孔及びこれに隣接する貫通孔を完全に封口するのに、上記のように周縁部の開口がハニカム成形体の貫通孔と同じ配列で設けられたマスクを用いることが好ましい。すなわち、マスクの周縁部の開口の位置と、ハニカム成形体の周縁部の貫通孔の位置とが全て一致していることで、ハニカム成形体の周縁部の不完全な形状の貫通孔及びこれに隣接する貫通孔を全て封口することができる。
【0013】
また、上述した配列の開口を周縁部に有するマスクは、上述したリングと併用されることで、その効果が有効に発現する。すなわち、封口時にマスクの周縁部の開口は部分的にリングで覆われることになるが、リングの内径がハニカム成形体の外径と略同一であるため、マスクの周縁部の露出している開口の形状が、ハニカム成形体の周縁部の不完全な貫通孔の形状と略同一となる。そのため、ハニカム成形体の周縁部の不完全な形状の貫通孔及びこれに隣接する貫通孔を封口しやすくなる。さらに、マスクの周縁部の開口の形状を、予めハニカム成形体の不完全な貫通孔の形状に合うよう加工しておく必要がなく、また、ハニカム成形体の外径が変動しても、リングの選択によって上記効果を常に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、封口すべきハニカム成形体の外径変化に柔軟に対応でき、封口不良を生じることなく、所望の貫通孔が封口されたハニカム構造体を容易に製造することができるハニカム構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1の(a)は、本発明の一実施形態にかかる製造方法において封口するハニカム成形体の斜視図、図1の(b)は、図1の(a)の端面のAの部分の拡大図である。
【図2】図2の(a)は、本発明の一実施形態にかかる製造方法において使用するマスクの斜視図、図2の(b)は、図2の(a)の端面のBの部分の拡大図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にかかる製造方法において使用するリングの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかる製造方法におけるハニカム成形体、マスク及びリングの配置関係を示す斜視図である。
【図5】図5の(a)は、本発明の一実施形態にかかる製造方法において、ハニカム成形体の端面にマスク及びリングを配置した状態を示す斜視図、図5の(b)は、図5の(a)の端面のCの部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0017】
図1の(a)に示すように、封口すべきハニカム成形体70は、Z方向に伸びる多数の貫通孔71が略平行に配置された円柱体である。ハニカム成形体70は、側面を形成する側壁70cの形状が円筒状であり、図1の(b)に示すように、径方向中央部には断面形状が正方形の多数の(例えば、100個以上の)標準形状貫通孔71aと、径方向最外周部に、断面形状が正方形ではなく不完全な形状である複数の特殊形状貫通孔71bとを有する。
【0018】
標準形状貫通孔71aは、ハニカム成形体70において、Z軸方向の端面70eから見て、正方形配置、すなわち、標準形状貫通孔71aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置しかつ隣接する辺同士が平行となるようにハニカム成形体70の端面70eにおける中央部にマトリクス状に多数配置されている。標準形状貫通孔71aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができるが、本実施形態では、標準形状貫通孔71aの正方形のサイズ及び断面積は互いに略同一とされている。
【0019】
特殊形状貫通孔71bは、ハニカム成形体70の側壁70cに沿って複数配置されており、多数の標準形状貫通孔71aを取り囲むように配置されている。特殊形状貫通孔71bは、その一部が側壁70cにより形成されているため、その断面形状は、正方形でないことに加え、側壁70cの形状や位置に依存して互いに一定ではなく、場所によって異なっている。しかしながら、通常は、いずれの特殊形状貫通孔71bも、その断面積は標準形状貫通孔71aよりも小さい。
【0020】
標準形状貫通孔71a間、特殊形状貫通孔71b間、及び、標準形状貫通孔71aと特殊形状貫通孔71bとの間の隔壁70wの厚みは、例えば、0.05〜0.5mmとすることができる。また、側壁70cの厚みは、隔壁70wの厚みよりも厚いことが好ましく、例えば、0.1〜3.0mmとすることができる。
【0021】
図1の(a)において、ハニカム成形体70の貫通孔71が延びるZ方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。
【0022】
ハニカム成形体70の外径d1は特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。ハニカム成形体70の外径d1は、その製造時の様々な要因により変動する。例えば、外径d1が160mmのハニカム成形体を量産しようとした場合であっても、154〜166mm(目標値に対して±3.8%)程度の範囲で外径d1がばらつく。また、押出条件を変えたり、構成材料を変えたりした場合にも、外径d1は変動する。
【0023】
ハニカム成形体70の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このようなハニカム成形体70は通常多孔質である。
【0024】
また、ハニカム成形体70は、後で焼成することにより上述のようなセラミック材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)であってもよい。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0025】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0026】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0027】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0028】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0029】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0031】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0032】
ハニカム成形体70は、上述した材料を混合した原料混合物を押出成形することにより作製することができる。押出成形は、原料混合物を隔壁70wの断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、必要に応じて乾燥をし、所望の長さに切ることにより得ることができる。
【0033】
図2の(a)及び(b)に示すマスク170は、図1に示すハニカム成形体70の所望の貫通孔71を封口するのに使用されるものである。マスク170は、円形の板状部材であり、厚さ方向に貫通する開口171を複数有する。なお、マスク170の材料は特に限定されず、例えば、金属や樹脂が挙げられる。マスクの厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜3.0mmが好ましい。
【0034】
開口171の形状は、ハニカム成形体70の標準形状貫通孔71aに対応する正方形である。開口171は、マスク170の中央部領域R1では千鳥配置されており、マスク170がハニカム成形体70の端面上に位置決めして配置された状態で、正方形配置された複数の貫通孔71のうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数の貫通孔71のみに対向して配置される。開口171は、マスク170の周縁部領域R2ではハニカム成形体70の貫通孔71と同じ配列で細密配置されており、マスク170がハニカム成形体70の端面上に位置決めして配置された状態で、正方形配置された複数の貫通孔71のそれぞれに対向して配置される。なお、開口171の形状は、正方形に限定されるものではないが、ペースト状の封口材の充填性の観点から、標準形状貫通孔71aの形状と相似でかつ、これよりも小さい形状であることが好ましい。
【0035】
マスク170において、開口171が千鳥配置される中央部領域R1の直径d3は、ハニカム成形体70の外径d1よりも小さくする。これは、開口171が細密配置される周縁部領域R2の少なくとも一部をハニカム成形体70の周縁部と対向させ、ハニカム成形体70の特殊形状貫通孔71bの全てを封口し易くするためである。また、マスク170において、開口171が細密配置される周縁部領域R2も含む開口171が形成されている全領域の直径d4は、ハニカム成形体70の外径d1以上である。周縁部領域R2に配置された開口171の内、ハニカム成形体70の外周より外側に位置する開口171は、封口材が入り込まないように、封口時にはリングで覆われる。
【0036】
開口171は、開口面積が0.2mm以上であり且つ開口171によって封口すべき標準形状貫通孔71aの開口面積の90%未満であることが好ましい。開口171の開口面積が0.2mm未満であると、封口材が開口171を通過しにくくなり、所定量の封口材を貫通孔71内に供給できない場合がある。開口171の開口面積は、0.2mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。
【0037】
他方、開口171の開口面積が標準形状貫通孔71aの開口面積の90%以上であると、開口171の位置と貫通孔71の開口の位置が少しずれただけで、封口材を所定の貫通孔71内に供給できず、封口すべきでない近傍の貫通孔71に供給する場合がある。開口171の開口面積は、標準形状貫通孔71aの開口面積の80%未満であることが好ましく、60%未満であることがより好ましい。
【0038】
なお、開口171の開口径がマスク170の厚さ方向に変化する場合、例えば、開口径がハニカム成形体70の端面に近づくほど徐々に小さくなるテーパ形状の場合等には、ここでいう開口面積とはハニカム成形体70の端面と当接する側のマスク170の表面における開口171の開口面積を意味する。
【0039】
開口171の輪郭のアスペクト比は1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることが好ましい。輪郭のアスペクト比とは、開口の輪郭を、外接する最小面積の長方形(正方形含む)で囲んだ場合の、長辺長さ/短辺長さで定義される。
【0040】
図3に示すリング270は、封口時にハニカム成形体70の外周より外側に位置するマスク170の開口171を覆うようにマスク170上に配置される。リング270は、円環形の板状部材である。リング270の材料は特に限定されず、例えば、金属や樹脂が挙げられる。リング270の厚みは特に限定されないが、例えば、0.05〜5.0mmが好ましい。
【0041】
リング270は、マスク170の表面に密着するように固定することが好ましい。リング270の固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤や粘着剤による粘接着で固定する方法、粘着テープを用いて固定する方法、治具を用いて固定する方法等を用いることができる。
【0042】
リング270の内径d5は、封口すべきハニカム成形体70の外径d1と略同一とする。ここで、略同一とは、封口時に封口材がハニカム成形体70の外周よりも外側にはみ出さず、且つ、ハニカム成形体70bの側壁近傍の封口すべき貫通孔71に封口材を供給できる程度に、リング270の内径d5とハニカム成形体70の外径d1とが一致していることを意味する。例えば、リング270の内径d5とハニカム成形体70の外径d1との差が1.5mm以内〜2.5mm以内であれば、封口時に封口材がハニカム成形体70の外周よりも外側にはみ出さず、且つ、ハニカム成形体70bの側壁近傍の封口すべき貫通孔71に封口材を供給できる。リング270は、内径d5が異なるリングを複数用意しておき、封口すべきハニカム成形体70の外径d1に応じて適切なリングを選択して使用すればよい。
【0043】
リング270の外径d6は特に限定されないが、マスク170の開口171が形成されている全領域の直径d4以上であることが好ましく、マスク170の外径d2以下であることが好ましい。
【0044】
図4は、ハニカム成形体70、マスク170及びリング270の配置関係を示す斜視図である。また、図5の(a)は、図4に示した配置関係により、ハニカム成形体70の端面にマスク170及びリング270を配置した状態を示す斜視図である。ハニカム成形体70の端面にマスク170を配置する際に、ハニカム成形体70に対するマスク170の位置決め方法は特に限定されず、例えば、マスク170の開口から目視等によりハニカム成形体70の隔壁、貫通孔、側壁等を見ながら行えばよい。また、リング270は、その内周とハニカム成形体70の外周とが一致するように配置すればよい。なお、リング270をマスク170に固定してから、それらをハニカム成形体70の端面に配置してもよい。
【0045】
図5の(b)は、図5の(a)の端面のCの部分の拡大図である。マスク170の中央部領域R1の直径d3を、ハニカム成形体70の外径d1、すなわちリング270の内径d5よりも小さくすることで、図5の(b)に示すように、マスク170の開口171が細密配置される周縁部領域R2の少なくとも一部が、リング270に覆われずに露出する。この露出した周縁部領域R2がハニカム成形体70の周縁部と対向するため、ハニカム成形体70の特殊形状貫通孔71bが封口し易くなる。
【0046】
上記のようにハニカム成形体70、マスク170及びリング270を配置した状態で、リング270の内側に封口材を供給し、マスク170の開口171を介してハニカム成形体70の貫通孔71に封口材を充填する。封口材を貫通孔71に充填する方法は特に限定されず、例えば、マスク170上に供給した封口材を、スキージを用いて開口171を介して貫通孔71内に押し込んでもよいし、ピストンにより押し込んでもよい。
【0047】
封口材は、ハニカム成形体70の貫通孔71の端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。例えば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、潤滑剤と、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
【0048】
セラミクス材料としては、上述のハニカム成形体の構成材料や、その原料が挙げられる。
【0049】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。バインダの使用量は、封口材を100質量%とした時、例えば、0.1〜10質量%とすることができる。
【0050】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤の添加量は、封口材の100質量%に対して、通常、0〜10質量%であり、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0051】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、封口材を100質量%とした時、例えば、15〜40質量%とすることができる。
【0052】
上記の方法でハニカム成形体70の一方の端面(第一端面)の封口を行った後、反対側の端面(第二端面)に対しても同様の方法で封口を行う。このとき、第二端面の封口に使用するマスクは、第一端面の封口に使用したマスク170と同一パターンのマスクを用いればよい。第二端面においてマスクは、中央部領域R1の第一端面側で封口されていない貫通孔71に対向する部分にマスクの開口171がくるように配置される。これにより、第一端面側で封口された貫通孔71が第二端面側で開いており、第二端面側で封口された貫通孔71が第一端面側で開いた構造を有するハニカム成形体が得られる。このハニカム成形体の周縁部の特殊形状貫通孔71b及び場合によってその近傍の通常形状貫通孔71aは、第一及び第二端面の両方で封口される。
【0053】
そして、このようにして貫通孔71の端部が封口されたハニカム成形体70を乾燥、焼成等することにより、ハニカム構造体(ハニカムフィルタ構造体)を製造することが出来る。得られたハニカム構造体は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、さまざまな変形態様が可能である。例えば、ハニカム成形体70の標準形状貫通孔71aの配置は、正方形配置でなくてもよく、例えば、3角配置、千鳥配置等でも構わない。この場合、標準形状貫通孔71a、及び、これを取り囲む特殊形状貫通孔71bの配置に合わせて、マスク170の開口171の数や位置も変更することができる。
【0055】
また、ハニカム成形体70の標準形状貫通孔71aの断面形状は、正方形でなくてもよく、例えば、長方形、三角形、多角形、円形等でもよい。また、これらが混在していても構わない。例えば、ハニカム成形体70の貫通孔71aが円形であり、これらが正三角形配列されている、すなわち、貫通孔71aの中心が仮想的な正三角形の頂点にそれぞれ配置されていてもよい。また、貫通孔71aに、面積が異なるものが混在していてもよい。
【0056】
また、マスク170の外形形状は、円に限定されず、任意の形状が可能である。例えば、楕円や、矩形、三角形、六角形等の多角形を取ることができる。特に、正方形、正三角形、正六角形等の正多角形も好ましい。
【0057】
同様に、リング270の外形形状も円に限定されず、マスク170と同様の任意の形状が可能である。但し、リング270の内周の形状は、ハニカム成形体70の外形形状と一致させる必要がある。
【0058】
また、マスク170の周縁部領域R2の開口171は、必ずしも細密配置にする必要はなく、中央部領域R1と同様に千鳥配置としてもよい。
【0059】
本発明の製造方法により製造されたハニカム構造体は、たとえば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルターなどに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
70…ハニカム成形体、71…貫通孔、71a…標準形状貫通孔、71b…特殊形状貫通孔、70c…側壁、70w…隔壁、170…マスク、171…開口、270…リング。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する円柱状のハニカム成形体の端面に、複数の開口を有するマスクを、前記複数の開口がそれぞれ前記ハニカム成形体の複数の貫通孔と対向するように配置し、前記マスクの前記ハニカム成形体側とは反対側の面に、前記ハニカム成形体の外径と略同一の内径を有するリングを、前記ハニカム成形体の外周より外側に位置する前記マスクの開口を覆うように配置する工程と、
前記リングの内側に封口材を供給し、前記マスクの開口を介して前記ハニカム成形体の貫通孔に前記封口材を充填する工程と、
を有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記マスクの周縁部には、前記ハニカム成形体の貫通孔と同じ配列で開口が設けられており、前記マスクを、その前記周縁部が前記ハニカム成形体の周縁部と対向するように配置する、請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106167(P2012−106167A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256019(P2010−256019)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】