説明

ハニカム構造体成形用金型及びこれを用いたハニカム構造体の製造方法

【課題】ハニカム構造体の成形時において、外周スキンの厚さを十分に薄くでき且つ外周スキンの欠陥発生も十分に抑制できる金型を提供すること。
【解決手段】本発明の金型20は、多数の貫通孔が略平行に配置され且つ端面側から見て当該複数の貫通孔が正方形配置されたセル構造を有するとともに側面が外周スキンで覆われたハニカム構造体を押出成形するためのものである。金型20に装着されたスペーサー24の開口24aは、カバーリング22の内径よりも長い半径r1の円弧24bと、中心角が0°、90°、180°及び270°の位置にそれぞれ設けられた開口拡張部24cとによって画成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造技術に関するものであり、より詳細にはハニカム構造体成形用金型及びこれを用いたハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。特許文献1には、ハニカム構造体の製造に使用される金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−166386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の金型を用いて図1に示すハニカム構造体70を押出成形した場合、側面を覆う外周スキン70aが均一に形成されずに内部の貫通孔70bが露出した欠陥品が生じることが多かった。欠陥のない外周スキン70aを形成するには、外周スキン70aを必要以上に厚くせざるを得ないという問題があった。なお、図1に示すハニカム構造体70は、多数の貫通孔70bが略平行に配置された円柱体からなり、ハニカム構造体70の端面側から見て、複数の貫通孔70bが正方形配置、すなわち、貫通孔70bの中心軸が正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、図1に示す態様のハニカム構造体の成形時において、外周スキンの厚さを十分に薄くでき且つ外周スキンの欠陥発生も十分に抑制できる金型を提供することを目的とする。また本発明は、当該金型を用いたハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハニカム構造体成形用金型は、多数の貫通孔が略平行に配置され且つ端面側から見て当該複数の貫通孔が正方形配置されたセル構造を有するとともに側面が外周スキンで覆われたハニカム構造体を押出成形するためのものであり、ペースト状の原料組成物が供給される供給穴及び当該供給穴に連通しておりセル構造を形成するための格子状のスリット溝を有する金型本体と、金型本体のスリット溝が形成されている側の面の周縁部を覆うように配置され、ハニカム構造体の外径に対応する内径の開口を有するカバーリングと、金型本体とカバーリングとの間に配置され、カバーリングの開口よりも大きい開口を有するスペーサーと、金型本体に対してカバーリング及びスペーサーを固定するホルダーとを備え、スペーサーの開口はカバーリングの内径よりも長い半径r1の円弧と、当該円弧の中心を原点とし格子状のスリット溝の延びる方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする円座標系を設定したとき、中心角が0°、90°、180°及び270°の位置にそれぞれ設けられた開口拡張部とによって画成されていることを特徴とする。
【0007】
円柱状のハニカム構造体を押出成形する場合、従来、外周スキンを形成するため、円形の開口を有するスペーサーが使用されている(図5参照)。スペーサーは厚さ0.3〜1.0mm程度のシート状の材料からなり、カバーリングの開口よりも一回り大きい開口を有する。かかる構成のスペーサーを金型本体とカバーリングの間に配置することで、金型本体とカバーリングの間を通過した原料組成物が外周スキンとなる。
【0008】
本発明者らは、従来の金型を用いて図1のハニカム構造体70を製造した場合、図5に示すように、スペーサーの開口の中心を原点Oとし金型本体の格子状のスリット溝(破線)の延びる方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする円座標系を設定したとき、中心角θが0°、90°、180°及び270°の位置において外周スキンに欠陥が生じやすいことを見出し、上記発明をなすに至った。正方形配置のセル構造にあっては原点Oから外周への方向によって原料組成物の使用量が異なる。かかる非対称性が上記位置に欠陥を生じさせる主因と推察される。すなわち、ハニカム構造体70にあっては、例えば、中心角が0°の方向と45°の方向を比較すると、0°の方向の方がセル構造を構成する隔壁が多く存在するため、外周スキンを形成するための原料組成物が不足し、外周スキンに欠陥が生じやすいと考えられる。
【0009】
本発明によれば、スペーサーの特定の箇所に開口拡張部を設けたことで、当該箇所において外周スキン用の原料組成物の押出量を増大させることができる。このため、単に円形の開口を有するスペーサーが装着された従来の金型を使用する場合と比較し、外周スキンの欠陥発生を十分に抑制できる。また、欠陥が生じやすい箇所にあわせて外周スキン全体を必要以上に厚くしなくてもよいため、十分に薄い外周スキンが形成できるように金型の調整(スペーサーの開口サイズ、厚さ等の調整)を行うことができる。
【0010】
本発明の効果をより一層高度且つ安定的に得る観点から、本発明の金型は以下の条件の一方又は両方を満たすことが好ましい。(1)開口拡張部は半径r2の円弧によって画成されており、比率r1/r2は1〜10である。(2)開口拡張部の拡張幅は1〜5mmである。
【0011】
本発明は上記金型を用いたハニカム構造体の製造方法を提供する。すなわち、本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、上記金型を押出成形装置に装着する工程と、押出成形装置にペースト状の原料組成物を供給し、金型から押し出されるハニカム構造体を得る工程とを備える。この方法によれば、金型の作用により、薄い外周スキンを有するハニカム構造体を十分に高い歩留まりで製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、図1に示す態様のハニカム構造体の成形時において、外周スキンの厚さを十分に薄くでき且つ外周スキンの欠陥発生も十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)はハニカム構造体の一例を示す斜視図、(b)はハニカム構造体の部分拡大図である。
【図2】金型の周縁部の構成を示す部分端面図である。
【図3】本発明に係る金型が備えるスペーサーの一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る金型が備えるスペーサーの他の例を示す平面図である。
【図5】金型本体及び従来の金型に装着されるスペーサーを示す平面図である。
【図6】本発明に係る金型が装着された押出成形装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】押出成形装置が備える整流板の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係る金型の説明に先立ち、焼成前のハニカム構造体(グリーン成形体)について説明する。
【0015】
<ハニカム構造体>
図1に示すハニカム構造体70は、原料組成物を押出成形することによって得られたものである。図1の(a)に示すように、ハニカム構造体70は側面をなす外周スキン70aを有し、多数の貫通孔70bが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70bの断面形状は、図1の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70bは、ハニカム構造体70において、端面側から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70bの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70bの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。
【0016】
ハニカム構造体70の貫通孔70bが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。
【0017】
ハニカム構造体70をなす原料組成物は特に限定されないが、DPF用のハニカム構造体を製造する場合にあっては、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。ハニカム構造体の高温耐性の観点から、好適なセラミクス材料として、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、更に、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0018】
例えば、チタン酸アルミニウムのハニカム構造体を製造する場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、更に、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0019】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0020】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤及び可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0021】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。
【0022】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アルミニウムなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)などが挙げられる。
【0023】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0024】
溶媒としては、アルコール類及び水などを用いることができる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどの1価アルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどの2価アルコール類;などが挙げられる。
【0025】
<金型>
図2に示す金型20は、図1に示す態様のハニカム構造体を成形するためのものである。金型20は、原料供給穴21a及びスリット溝21bを有する金型本体21と、カバーリング22と、スペーサー24と、ホルダー28とを備える。
【0026】
金型本体21は、押出成形装置に装着された際、上流側に配置される面S1と下流側に配置される面S2を有する。面S1には複数の原料供給穴21aが形成されており、面S2には原料供給穴21aに連通した格子状のスリット溝21bが形成されている。金型本体21の面S1側から供給される原料組成物は、原料供給穴21a及びスリット溝21bを通じて面S2側に至り、正方形配置されたセル構造となって押し出される。金型本体21の材質としては、炭素鋼;ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼等が挙げられる。
【0027】
カバーリング22は、金型本体21の面S2の周縁部を覆うように配置されている。カバーリング22は、成形すべきハニカム構造体の外径に対応する内径の開口を有する。言い換えれば、金型本体21の外形に関わらず、所定の内径を有するカバーリング22を使用することによって所望の外径のハニカム構造体を得ることができる。なお、カバーリング22の材質としては、炭素鋼;ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼等が挙げられる。
【0028】
スペーサー24は、金型本体21とカバーリング22との間に配置されている。スペーサー24は厚さ0.3〜1.0mm程度のシート状の材料からなる。スペーサー24の材質の具体例としては、銅などの金属、紙、樹脂などが挙げられる。スペーサー24は、カバーリング22の開口よりも一回り大きい開口24aを有する。カバーリング22の開口よりも一回り大きい開口を有するスペーサー24を金型本体21とカバーリング22の間に配置することで、両者の間に隙間が設けられる。この隙間を通過した原料組成物が外周スキンとなる。
【0029】
スペーサー24の開口24aは、図3に示すとおり、カバーリング22の開口の半径よりも長い半径r1の円弧24bと、4つの開口拡張部24cとによって画成されている。4つの開口拡張部24cは、円弧24bの中心を原点とし金型本体21のスリット溝21bの延びる方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする円座標系を設定したとき(図5参照)、中心角が0°、90°、180°及び270°の位置にそれぞれ設けられている。なお、スペーサー24は、開口24aが所定のサイズ及び形状を有していることが重要であって、金型本体21とカバーリング22の間に適切に配置可能である限り、全体の大きさ及び形状は制限されない。
【0030】
図3に示すスペーサー24は、内径145mmのカバーリングを使用する場合に用いるものであり、開口24aは半径r1が75mmの円弧24bと、半径r2が13mmの円弧からなる4つの開口拡張部24cによって画成されている。r2の中心とr1の中心との距離は64mmである。
【0031】
図4(a)に示すスペーサー25は、内径145mmのカバーリングを使用する場合に用いるものであり、開口25aは半径r1が75mmの円弧25bと、半径r2が31mmの円弧からなる4つの開口拡張部25cによって画成されている。r2の中心とr1の中心との距離は46mmである。
【0032】
図4(b)に示すスペーサー26は、内径145mmのカバーリングを使用する場合に用いるものであり、開口26aは半径r1が75mmの円弧26bと、半径r2が15mmの円弧からなる4つの開口拡張部26cによって画成されている。r2の中心とr1の中心との距離は64mmである。
【0033】
原料組成物の粘度や成形すべきハニカム構造体のサイズなどにもよるが、スペーサーの開口の大部分をなす円弧の半径r1と開口拡張部の半径r2の比率r1/r2は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは5〜8である。この比率が1未満であるとハニカム構造体の外周スキンが必要以上に厚くなりやすく、他方、10を超えると外周スキンの欠陥を抑制する効果が不十分となりやすい。
【0034】
外径が100〜320mm程度のハニカム構造体を成形する場合にあっては、開口拡張部の拡張幅(図3,4に示す幅W)は、好ましくは1〜5mmであり、より好ましくは2〜3mmである。拡張幅が1mm未満であると外周スキンの欠陥を抑制する効果が不十分となりやすく、他方、5mmを超えるとハニカム構造体の外周スキンが必要以上に厚くなりやすい。
【0035】
図2に示すように、ホルダー28は金型本体21に対してカバーリング22及びスペーサーを固定するためのものである。ホルダー28の材質としては、炭素鋼;ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼等が挙げられる。
【0036】
図3,4に示すような態様のスペーサーを備えた金型20によれば、開口拡張部が設けられた箇所において外周スキン用の原料組成物の押出量を増大させることができる。このため、図5に示す従来のスペーサー27を使用する場合と比較し、外周スキンの欠陥発生を十分に抑制できる。また、欠陥が生じやすい箇所にあわせて外周スキン全体を必要以上に厚くしなくてもよいため、十分に薄い外周スキンが形成できるように金型の調整(スペーサーの開口サイズ、厚さ等の調整)を行うことができる。
【0037】
<押出成形装置>
図6に示す押出成形装置10は、上述の金型20が装着されており、粉末状又はペースト状の原料組成物からハニカム構造体70を製造するためのものである。
【0038】
押出成形装置10は、ハウジング1内の上段に設けられたスクリュー2A及び下段に設けられたスクリュー2Bを備える。スクリュー2A,2Bは、入口1aから供給された原料組成物を混錬すると共に流路1bを通じて下流側へと移送するためのものである。スクリュー2A,2Bの間には、真空室3が設けられており、真空室3内を減圧することによって原料組成物を脱気処理できるようになっている。真空室3内の原料組成物はローラ3aによって下段のスクリュー2Bに導入される。
【0039】
押出成形装置10は、スクリュー2Bの下流側に設けられた整流板5と、原料組成物からなる成形体70Aが押し出される金型20と、流路1bと金型20を連通する抵抗管9とを更に備える。抵抗管9は、内部の流路がテーパ状になっており、上流側から下流側に向けて流路断面積が徐々に小さくなっている。なお、スクリュー2Bの径よりも径が大きい成形体70Aを製造する場合などになっては、抵抗管9は上流から下流に向けて流路断面が大きくなる拡大部を有してもよい。金型20から押し出された成形体70Aが変形しないように、押出成形装置10の隣には成形体70Aを支持するための支持台15が設置されている。整流板5は、金型20に原料組成物を導入するに先立ち、その流速分布の均一化を図るためのものである。
【0040】
整流板5は、ハウジング1に対して着脱自在に設けられており、スクリュー2Bと金型20の間に配置されている。整流板5は厚さ方向に貫通する複数の開口5aを有する。整流板5は、流量調整の効果を高めるために網状の抵抗体(図示せず)を有していてもよい。図7の(a)は整流板5の正面図であり、図7の(b)は整流板5の断面図である。
【0041】
整流板5は、上流側から圧力を受けてもほとんど歪みを起こさない構造体であることが好ましい。かかる観点から、整流板5の材質としては、例えば、炭素鋼等が好ましい。炭素鋼以外の好適な材質として、ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼を例示できる。整流板5の厚さは、十分の強度を確保する観点から、10〜100mmであることが好ましい。
【0042】
整流板5は、厚さ方向に貫通する直径1〜10mmの開口5aを複数有する。整流板5の開口率は30〜80%であることが好ましい。開口率が30%未満の整流板5を使用した場合、上流側の圧力を過度に高くしないと、単位時間当たり十分な量の原料組成物を通過させることができず、圧力が装置の許容圧力以上となりやすい。他方、開口率が80%を超える整流板5は強度が不十分となりやすい。整流板5の開口率は40〜80%であることが好ましく、50〜80%であることがより好ましい。
【0043】
ここでいう「開口率」とは、整流板5の一方面における開口の面積の合計を当該一方面の面積(ハウジングによって覆われる周縁部を除く)で除すことによって算出される値を意味する。なお、開口の流路断面積が一定ではない整流板の場合、開口率は原料組成物の流れ方向に垂直な、すべての整流板の断面において最小の値をいう。
【0044】
<ハニカム構造体の製造方法>
次に、押出成形装置10を用いてハニカム構造体70を製造する方法について説明する。まず、金型20を押出成形装置10に装着する。押出成形装置10の準備が完了したら、原料組成物を入口1aから流路1b内に導入する。スクリュー2A,2B及びローラ3aを作動させることによって原料組成物を混練すると共に下流側に移送する。混練物を整流板5の開口5aを通過させて流速分布を均一化させた後、抵抗管9を通じて金型20に導入する。金型20の下流側における原料組成物の線速度は10〜150cm/分程度であることが好ましい。
【0045】
流速分布の均一化が図られた原料組成物を金型20から押し出し、支持台15上に成形体70Aを回収する。成形体70Aを所定の長さに切断することによってハニカム構造体70を得る。この方法によれば、金型20の作用により、薄い外周スキンを有するハニカム構造体を十分に高い歩留まりで製造できる。
【符号の説明】
【0046】
20…金型、21…金型本体、21a…原料供給穴、21b…スリット溝、22…カバーリング、24,25,26…スペーサー、24a,25a,26a…開口、24b,25b,26b…円弧、24c,25c,26c…開口拡張部、27…従来のスペーサー、28…ホルダー、70…ハニカム構造体、70a…外周スキン、70b…貫通孔、S1…金型本体の上流側の面、S2…金型本体の下流側の面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔が略平行に配置され且つ端面側から見て当該複数の貫通孔が正方形配置されたセル構造を有するとともに側面が外周スキンで覆われたハニカム構造体を押出成形するための金型であって、
ペースト状の原料組成物が供給される供給穴及び当該供給穴に連通しており前記セル構造を形成するための格子状のスリット溝を有する金型本体と、
前記金型本体の前記スリット溝が形成されている側の面の周縁部を覆うように配置され、前記ハニカム構造体の外径に対応する内径の開口を有するカバーリングと、
前記金型本体と前記カバーリングとの間に配置され、前記カバーリングの開口よりも大きい開口を有するスペーサーと、
前記金型本体に対して前記カバーリング及び前記スペーサーを固定するホルダーと、を備え、
前記スペーサーの開口は、前記カバーリングの半径よりも長い半径r1の円弧と、当該円弧の中心を原点とし前記格子状のスリット溝の延びる方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向とする円座標系を設定したとき、中心角が0°、90°、180°及び270°の位置にそれぞれ設けられた開口拡張部とによって画成されている金型。
【請求項2】
前記開口拡張部は半径r2の円弧によって画成されており、比率r1/r2は1〜10である、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記開口拡張部の拡張幅は1〜5mmである、請求項1又は2に記載の金型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の金型を押出成形装置に装着する工程と、
前記押出成形装置にペースト状の原料組成物を供給し、前記金型から押し出されるハニカム構造体を得る工程と、を備えるハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14134(P2013−14134A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129856(P2012−129856)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】