説明

ハバネロ含有練り製品及びその製造方法

【課題】ハバネロの物凄い辛味を押さえて円やかな辛味の魚肉練り製品の提供。
【解決手段】魚肉すり身2に、生或いは冷凍物を解凍したハバネロ3をミキサーに掛けたもの或いはハバネロの粉末と、刻んだ或いはミキサーに掛けた玉葱4とを混合して成型し、油で揚げるか焼くか蒸してハバネロ含有練り製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハバネロを練りこんだ練り製品に関わり、玉葱と混用することによりハバネロの辛味をまろやかに保持させつつ刺激を低減させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ハバネロは、猛烈な辛味で知られており、辛さの単位であるスコヴィルで30万〜58万程度とされている。スコヴィルとは、カプサイシン単独を1600万とする辛味の単位であり、現在ではブート・ジョロキアと言う100万スコヴィルもあるものも知られているが、ハバネロは猛烈な辛さだけでなく、柑橘系のフルーティーな香りもあり、一部に熱烈な支持者が存在している。
【0003】
本発明者は、この辛味とフルーティーな香りを魚肉練り製品の一種であるさつま揚げに加えようとして種々研究したが、その辛味と刺激はなかなか押さえられなかった。即ち、添加する量が少なければ、辛味が余り感じられず、多ければ辛味の刺激が強すぎて、とても食すことなどできはしない。
【0004】
そこで、ハバネロを加える量の調整とともに、何か添加物を加えることを思い立ち、種々な実験をくりかえしたが、あるとき、玉葱のみじん切りを加えてみたところ、刺激が大幅に低減されて円やかな辛味になることを見いだして、本発明を完成させたものである。
【0005】
ただ、ハバネロを始めとするカプサイシン由来の辛味を押さえるものとしては、特定量のグルタミン酸を加える飲料(特許文献1)やスクラロースを加える液状食品(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−112227号公報
【特許文献2】特開2006−320265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、アミノ酸をカプサイシンの600〜22万倍も加えねばならず、特許文献2ではスクラロースを加えるるとともにpH4.6以下にして加熱する必要がある。
【0008】
本発明では、魚肉すり身にハバネロと同程度の玉葱を加えて成型し加熱するだけで刺激を押さえマイルドな辛味とフルーティな味をつけることに成功したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の練り製品は、魚肉すり身に、生或いは冷凍物を解凍したハバネロをミキサーに掛けたもの或いはハバネロの粉末と、刻んだ或いはミキサーに掛けた玉葱とを混合して成型し、油で揚げたり焼いたり蒸したりして製造するものである。
【0010】
次に、油で揚げたさつま揚げについて、説明する。まず、通常のさつま揚げ同様に、解凍した魚肉すり身に、タンパク質やデンプン質、調味料を加えて攪拌し、これに、生或いは冷凍物を解凍したハバネロをミキサーに掛けたものと、みじん切りにカットした玉葱を混合して一口大に成型し、油で揚げて製造する。
【0011】
魚肉すり身やタンパク質やデンプン質の種類や品位には特に限定はない。ハバネロは赤く熟したもので、生のものがフルーティな味の点で最も好ましいが、腐敗し易いので冷凍ものを主として使用する。冷凍ものでも、そう遜色はない。ハバネロは、ミキサーにかけて使用する。
【0012】
玉葱は、1〜5mm角程度にみじん切りにする。ミキサーに掛けたものを用いてもよいが、油で揚げたときに揚げすぎると色が黒くなるので、できればみじん切りの方が好ましい。また、みじん切りしたものの方が食したときに歯ごたえがあり、好ましい。ハバネロの刺激味を押さえる効果は両方とも余り変わらない。
【0013】
魚肉すり身(タンパク質やデンプン質等を加えたもの)に対するハバネロや玉葱の使用割合は、魚肉すり身1Kgに対して、ハバネロ10〜150g、玉葱20〜500g程度である。
【0014】
ハバネロが10g以下だと殆ど辛味が感じられず、150gを越えると辛くて食されたものではない。好ましくは、30〜100g程度、より好ましくは50〜80gである。尚、生或いは冷凍もの以外に乾燥して粉末状にしたハバネロも使用できる。この場合は同じく魚肉すり身1Kg当たり10〜60g程度である。尤も、粉末状のハバネロは生をミキサーに掛けたものに比べればフルーティさに劣り、只辛味が感じられるだけである。それでも、本発明では単に粉末状のハバネロのみを加えたものに比べれば、味がマイルドになる。
【0015】
玉葱は、20g以下だとハバネロの刺激ある辛味を十分に押さえることはできず、500gを越えると玉葱の味が勝ってハバネロのまろやかな辛味が感じられにくくなる。好ましくは玉葱50〜150g程度である。
【0016】
また、以上の割合のものに、青葱を5〜20mm程度に裁断したもの20〜200gを加えると見た目の彩りがよくなる上、味がよりマイルドなものになる。
【0017】
さつま揚げは、10〜100g程度に成型したものを油で揚げて製造するが、本発明のさつま揚げは辛いので10〜20g程度の小型のものとし、少量ずつ食するのに向いている。尚、上記範囲でハバネロを混合したさつま揚げは、食した瞬間は余り辛味は感じられないがその後でじわりと口内全体に穏やかな辛味が広がってくる。
【0018】
尚、ハバネロ以外の唐がらし(カプサイシンを含有するもの)も同様に玉葱で辛味を押さえることができる。ハバネロ等の唐がらしの粉末或いは生をミキサーに掛けたものと玉葱を刻んだもの或いはミキサーに掛けたものを混合し、これを加熱する、或いは加熱した玉葱とハバネロ等を混合すると穏やかな辛味になる。ハバネロと玉葱をミキサーにかけたもの10〜30gを、鍋一杯のカレーに入れると、辛みが出ておいしいものとなる。
【0019】
本発明の練り製品は、さつま揚げ以外に、かまぼこやはんぺん、竹輪なども製造することができる。その場合のハバネロや玉葱、また青葱の使用割合は同じである。また、魚肉ソーセージも同様に製造できる。
【0020】
余談であるが、特許文献1ではカプサイシンの濃度が飲料の1.0×10-5〜2.5×10-3、特許文献2ではカプサイシンの含有量が製品全体に対して1.0×10-5〜5.0×10-2とされている。本発明でさつま揚げ中のカプサイシン濃度を計算したところ、10の−3乗〜−4乗オーダーである。即ち、ハバネロが含有するカプサイシンの割合は、30〜58万/1600万、本発明での使用割合がハバネロの粉末10〜60g/魚肉すり身等1Kgで、これから計算するとカプサイシン濃度は約2×10-4〜2×10-3となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、魚肉すり身に、生或いは冷凍物を解凍したハバネロをミキサーに掛けたもの或いはハバネロの粉末と、刻んだ或いはミキサーに掛けた玉葱とを混合して成型し、油で揚げるか、焼いたり蒸したりした練り製品である。
【0022】
尚、玉葱は加熱すると甘くなることは広く知られている。しかし、この甘味がカプサイシンの辛味を円やかにすることは全く知られていない。本発明は、ここに大きな特徴がある。
【0023】
従って、魚肉の旨味と玉葱の甘味がいい具合に調和されて、ハバネロの強烈な辛味を円やかにする効果がある。そして、食した瞬間は余り辛味を感じないが、次第に口中にマイルドな辛味が広がってきて、辛味好きな人にはたまらないものである。尚、魚肉すり身に加えるハバネロや玉葱の量を調節することにより、刺激が少なくて辛味の強いものから弱いものまで、任意に製造できる効果があり、魚肉練り製品の消費拡大に資するものである。
【0024】
しかも、本発明の練り製品は、ハバネロをミキサーに掛けるか粉末を使用し、且つ玉葱をみじん切りにして魚肉すり身に加えるだけであるから、従来の製造装置がそのまま使用できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一例を示すさつま揚げの斜視図である。
【図2】本発明の一例を示す蒲鉾の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1、図2に基づいて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1は、油で揚げたさつま揚げの一例を示す斜視図である。このさつま揚げ1は、魚肉すり身(タンパク質やデンプン質を加えたもの)2の1Kgに対して、ミキサーに掛けた冷凍物を解凍したハバネロ3を100g、100gの玉葱を1〜5mm角程度に刻んだもの4、それに青葱を10mm程度の長さに裁断したもの5の50gを混合練り合わせ、約10〜20gに小分けして油で揚げたものである。
【0028】
魚肉すり身は、すり身原料70Kgに対し、小麦粉をボール(約2リットル)4杯、バレイショデンプンをボールに1杯(ボールに2〜3杯の水に溶かす)、塩1.9Kg、味の素小さじに4杯、甘味料小さじに7杯を混合し、石臼で攪拌すりおろしを行って製造する。
【0029】
そして、さつま揚げが冷えてから10個程度を1つの袋に収納して商品とする。食する場合は、このまま開封して食べてもよいが、レンジ等で加熱してから食べると、ハバネロの辛味がより良く味わえる。
【実施例2】
【0030】
図2は、他の魚肉練り製品であるかまぼこを示す。このかまぼこ6は、すり身原料に卵白などを加えた魚肉すり身2、ハバネロ3、玉葱4を練り上げてかまぼこ板上に成型し、蒸して仕上げるものである。蒸し方は定法通りである。
【0031】
魚肉すり身(たんぱく質やでんぷん質を加えたもの)に、ハバネロをミキサーに掛けたものと玉葱のみじん切りを加えて油で揚げたり焼いたり蒸したりするだけで、魚肉の旨味とバハバネロの円やかな辛味とが渾然一体となった魚肉練り製品を、従来来通りの装置で簡単に製造できる。
【符号の説明】
【0032】
1 さつま揚げ
2 魚肉すり身
3 ハバネロ
4 玉葱
5 青葱
6 かまぼこ
7 かまぼこ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉すり身に、生或いは冷凍物を解凍したハバネロをミキサーに掛けたもの或いはハバネロの粉末と、刻んだ或いはミキサーに掛けた玉葱とを混合して成型し、油で揚げたり焼いたり蒸すことを特徴とするハバネロ含有練り製品。
【請求項2】
魚肉すり身にタンパク質やデンプン質を加えたもの1Kgに対して、ミキサーに掛けたハバネロを10〜150g、より好ましくは50〜100g、或いはハバネロの粉末10〜60gと、玉葱20〜500g、より好ましくは50〜150gを刻むかミキサーにかけたものとを混合練り合わせ、小分けして油で揚げるか或いは成型して焼くか蒸すことを特徴とするハバネロ含有練り製品の製造方法。
【請求項3】
50〜200gの青葱を裁断したものを加えるものである、請求項2記載のハバネロ含有練り製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−135814(P2011−135814A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297697(P2009−297697)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(510003346)
【Fターム(参考)】