説明

ハロゲンランプ加熱装置

【課題】 低温封止のハロゲンランプを真空環境下でも支障なく使用可能とする。
【解決手段】 ハロゲンランプ加熱装置において、ハロゲンランプ1の発光部1aと電極部1bとの間を横切る位置に端部反射板7が配設されている。端部反射板7には切欠き8が形成されてその切欠き8内に電極部1bが、端部反射板7とは非接触に挿通されている。端部反射板7は、多重板構造でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として真空環境下においてハロゲンランプにより加熱対象物を加熱するハロゲンランプ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンランプは、フィラメントをタングステンとし、封入ガスに不活性ガスおよび微量のハロゲン物質を添加した赤外線電球であり、封入されたハロゲンと加熱蒸発するタングステンとの循環再生反応(ハロゲンサイクル)の効果により、管壁の黒化が防止され、フィラメントの消耗も防止されるので、長寿命である。
【0003】
このハロゲンランプによる加熱装置は、加熱対象物にも、その加熱対象物を支持する基盤にも接することなく、簡単に短時間で対象物を加熱できるため、広く普及している。
【0004】
ハロゲンランプでは、電極部に、フィラメントに接続する形でモリブデンの箔が設けられ、このモリブデン箔に外部リードに接続されて、比較的低温の処理で管壁のガラス間に封止されているのが普通である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−108504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ハロゲンランプの電極部には、モリブデンが設けられているが、このモリブデンは、350℃程度の高温になると、非常に酸化しやすい性質がある。
【0007】
上記電極部が300℃を越える高温になると、モリブデンは、封止ガラスと外部リードとの間の微細な隙間を通して入り込む空気に触れて酸化し、体積が増える。モリブデンの体積が増すことで、電極部のガラス封止が破損したり、断線が生じたりする。そのため、ハロゲンランプを長寿命化するには、電極部の昇温を抑制する必要がある。
【0008】
一方で、従来のハロゲンランプを用いた加熱装置では、ハロゲンランプの本体部である発光部から照射されるランプ光の一部は、端部の電極部にも照射され、その照射により加熱される。
【0009】
この場合、上記加熱装置が空気もしくはその他のガスが存在する雰囲気中で使用されるものであれば、加熱された電極部の熱は、周囲の空気もしくはガスを介して放熱されるが、真空環境下では、周辺に熱を伝える充分な気体が存在しないため、電極部は放熱量が少なく、高温化する。
【0010】
この点、真空専用のハロゲンランプは、上記の事情に対応した構造となっており、真空環境下でも電極部が過熱し損傷することはないが、上記したような、低温で電極部を封止した一般のハロゲンランプに比べ、高価であり、種類も少ない。
【0011】
したがって、真空環境下で使用されるハロゲンランプ加熱装置は、真空専用のハロゲンランプを採用することで、高価とならざるを得ないが、低温で電極部を封止した一般のハロゲンランプが採用できれば、そのハロゲンランプが安価で、種類も多いことから、容易にかつ安価に製作しうるようになる。
【0012】
本発明は、低温封止のハロゲンランプを真空環境下でも支障なく使用できるようにして、ハロゲンランプを用いた加熱装置を簡単な構造で安価に製造できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ハロゲンランプの発光部と電極部との間を横切る位置に端部反射板が配設され、該端部反射板には切欠きが形成されてその切欠き内に上記電極部が上記端部反射板とは非接触に挿通されているハロゲンランプ加熱装置を構成した。
【0014】
上記本発明の構成では、ハロゲンランプの発光部から照射されるランプ光の一部は、電極部の側へも照射されるが、そのランプ光は端部反射板に反射されて、ほとんど電極部には照射されず、電極部の昇温が抑制される。
【0015】
したがって、ハロゲンランプの電極部の過熱が防止され、周辺に熱を伝える充分な気体が存在せず、気体を通じての放熱がなされない真空環境下でも、低温で封止した電極部を有するハロゲンランプを使用できる。
【0016】
なお、端部反射板のハロゲンランプ発光部側の面には、金メッキを施しておいてもよい。この金メッキ膜により、赤外線の透過が抑制され、端部反射板自体が高温化することを防ぐことができる。
【0017】
上記構成のハロゲンランプ加熱装置において、上記端部反射板は、層状の空隙を介して複数枚が重なる多重板構造であることが望ましい。
【0018】
端部反射板が二重板等の多重板構造であると、電極部側への照射光は、前段の端部反射板で反射されて阻止され、前段の端部反射板が照射光で加熱されて赤外線を放射するようになっても、その赤外線は次段の端部反射板に阻止されることになり、電極部への輻射熱の伝達は確実に阻止される。
【0019】
また、上記構成のハロゲンランプ加熱装置において、上記ハロゲンランプの発光部に対応して主反射板が配設され、この主反射板に上記端部反射板が結合されていることが望ましい。
【0020】
この構成では、従来のハロゲンランプ加熱装置では通常有する主反射板に、端部反射板が支持されることになり、端部反射板専用の支持部材を別に設ける必要がなく、構造が簡略化する。
【0021】
また、端部反射板と主反射板が結合することで、ハロゲンランプの発光部の周囲が反射面で囲まれることになり、加熱対象物に照射する光量が増大する。
【0022】
なお、端部反射板が多重板構造である場合、主反射板も同数の多重板構造であり、各段の端部反射板が、それぞれ対応する段の主反射板と結合されていることが望ましい。この構成では、ハロゲンランプの発光部を囲む反射面が複数段にわたって重なり、不要方向への輻射熱の伝播を大幅に少なくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ハロゲンランプの発光部から電極部側へ放射されるランプ光は、端部反射板で遮断されて、電極部には照射されなくなり、電極部の温度上昇が抑制され、電極部の劣化、破損が防止される。したがって、真空環境下の加熱作業であっても、真空専用の高価なハロゲンランプを用いずに、低温で封止した電極部を有する、比較的安価なハロゲンランプを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハロゲンランプ加熱装置の外観社斜視図。
【図2】上記ハロゲンランプ加熱装置の要部の平面図。
【図3】図2の(1)−(1)線に沿った断面図。
【図4】図3の(2)−(2)線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態を、図を参照して説明すると、図1において、符号1はハロゲンランプである。ハロゲンランプ1は、この実施形態では直管型で、中央にタングステンのフィラメントを内蔵する発光部1aがあり、両端に電極部1bがある。電極部1bでは、フィラメントに接続する形でモリブデンの箔が設けられ、このモリブデン箔に外部リード2に接続されて、比較的低温の処理で管壁のガラス間に封止されている。なお、図2,3における符号3は、モリブデン箔を示している。
【0026】
ハロゲンランプ1の電極部1bからは外部リード2が突出しており、この外部リード2をL字形のホルダ4に貫通させることで、ハロゲンランプ1の全体が2つのホルダ4,4の間に支持されている。2つのホルダ4,4は、石英板である絶縁板5を介して基台6に取り付けられている。
【0027】
ハロゲンランプ1の両端において、発光部1aと電極部1bとの間、より正確には、電極部1bの発光部1a側の部分を横切る位置に、研磨薄板からなる端部反射板7が設けられている。図示の実施形態では、端部反射板7は、ほぼ同形の前面板71と背面板72とが層状の空隙7aを介して重なる二重板構造である。
【0028】
端部反射板7の前面板71の表面のうち、少なくともハロゲンランプ1の発光部1a側の面には、金メッキ膜を形成しておいてもよい。
【0029】
端部反射板7、すなわち、前面板71および背面板72には、スリット状の切欠き8が形成されて、この切欠き8内に電極部1bが挿通されている。この場合、切欠き8の内幅は、電極部1bの断面幅より大きく設定されていて、切欠き8の内縁と電極部1bとの間には隙間があって、電極部1bは端部反射板7に対して非接触となっている。
【0030】
また、2つの端部反射板7,7の間には、発光部1aに対応する主反射板9が設けられている。この主反射板9は、発光部1aを断面コ字形に囲むもので、上記した端部反射板7と同様に、前面板91と背面板92とが層状の空隙9aを介して重なる二重板構造となっている。
【0031】
そして、この主反射板9は、発光部1aの長さ方向両端において、端部反射板7に結合されていて、2つの端部反射板7,7と主反射板9とは、一面が開放された箱型に成形されている。より詳しく言えば、主反射板9の前面板91は、端部反射板7の前面板71に直角に突き合わせた形で結合されており、主反射板9の背面板92は、端部反射板7の背面板72に直角に突き合わせた形で結合されており、主反射板9の空隙9aと、端部反射板7の空隙7aとは、仕切られることなく互いに連通している。
【0032】
主反射板9の底部には、ボルト状の固定具10が設けられて、この固定具10により、主反射板9および端部反射板7の全体が基台6上に支持固定されている。
【0033】
上記構成において、加熱作業を行う場合は、ハロゲンランプ1に通電して発光部1aを発光させ、そのランプ光を、所定位置に配置した加熱対象物(実施形態では、ハロゲンランプ1の上方に配置した加熱対象物)に照射するのであるが、発光部1aからのランプ光の一部は、電極部1bの側へも照射される。
【0034】
この場合、発光部1aと電極部1bとの間には端部反射板7があって、この端部反射板7がランプ光をほぼ全面的に反射するから、電極部1bにはランプ光がほとんど照射されず、電極部1bの温度上昇が抑制される。
【0035】
また、端部反射板7の前面板71が、ランプ光を受けて高温になっても、この前面板71からの輻射熱は、次段の背面板72で遮断されるから、この点でも、電極部1bの温度上昇が抑制される。
【0036】
なお、前面板71のハロゲンランプ発光部1a側の面に、金メッキ膜が形成されていると、該金メッキ膜により、赤外線の透過が抑制され、前面板71自体の高温化が防止される。
【0037】
このように、電極部1bの温度上昇が抑制されるから、電極部1bが低温封止で、耐熱性に劣る部分であっても、過熱して破損するようなことがない。
【0038】
上記実施形態では、端部反射板7を二重板構造としたが、他の実施形態として、端部反射板7を一枚板としてもよいし、また、3枚もしくはそれ以上の板からなる多重板構造としてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、端部反射板7をハロゲンランプ1の長さ方向と直交する姿勢で設けたが、加熱対象物に向くよう、ハロゲンランプ1の長さ方向に対して斜めに設けてもよい。
【0040】
上記実施形態では、端部反射板7に形成する切欠き8を、端部反射板7の外縁から切れ込むスリット状としたが、電極部1bの断面形状に対応した孔としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ハロゲンランプ
1a 発光部
1b 電極部
7 端部反射板
71 前面板
72 背面板
8 切欠き
9 主反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンランプの発光部と電極部との間を横切る位置に端部反射板が配設され、該端部反射板には切欠きが形成されてその切欠き内に上記電極部が上記端部反射板とは非接触に挿通されていることを特徴とするハロゲンランプ加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハロゲンランプ加熱装置において、
上記端部反射板は、層状の空隙を介して複数枚が重なる多重板構造であることを特徴とするハロゲンランプ加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハロゲンランプ加熱装置において、
上記ハロゲンランプの発光部に対応して主反射板が配設され、この主反射板に上記端部反射板が結合されていることを特徴とするハロゲンランプ加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−129295(P2011−129295A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284952(P2009−284952)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】