説明

ハロゲン化されていない重金属の存在しない絶縁性車両ケーブル

【課題】コスト効果があり、かつ、ハロゲン及び重金属が存在絶縁性車両ケーブルを提供する。
【解決手段】ハロゲン化されていない、重金属の存在しない絶縁性の車両ケーブル10は、少なくとも約0.1mmの断面積を有する銅ベースの金属ワイヤの内側コア14と、該内側コアの所定長さを覆い、ハロゲンも該ハロゲンに添加された重金属も持たない熱可塑性ポリフェニレンエーテル成分から構成された外側の絶縁部12と、を備え、テスト標準ISO6722に合致することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化されていない重金属の存在しない絶縁体を利用する車両ケーブルに関する。特に、本発明は、ハロゲン化されていない組成の自動車用ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
環境上の規制は、車両産業において選択される材料が、特に車両ケーブルに対して、ハロゲンが無く且つ重金属の存在しない組成を持つことを要請している。典型的には、塩化ポリビニル(PVC)が、競合する原材料コスト及び所望の特性のその組み合わせの故に、利用されている。これらの特性には、加工性、頑健性、化学的耐性、及び、自動車環境における多数の用途にとって典型的である温度に耐える能力が含まれている。
【0003】
残念ながら、PVCの塩素含有量は、車両の寿命が尽きた際にPVCを廃棄することを制限する。また、PVCの副産物及びPVC可塑剤によって、健康及び環境への影響に関する懸念が存在している。従って、PVCの代用物が、競合するコスト効果を持つ代用品を見つけるという意図を持って、長い間、求められてきている。更には、高温耐性、頑健さ、加工性、及び、重量軽減を始めとする性能も考慮に入れられなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上により、コスト効果があり、それでもなお、ハロゲン及び重金属が存在しないこと、適切な伝導度、温度体制、スクラップ磨耗耐性、熱老化耐性、自動車流体に対する耐性、炎への耐性、特に、標準ISO(国際標準化機構)6722に合致することができるという望ましい特徴を達成しつつ、これらの全ての特性を重量軽減した状態で提供する、材料を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも約0.1mmの断面積を有する銅ベースの金属ワイヤの内側コアと、該内側コアの所定長さを覆い、ハロゲンも該ハロゲンに添加された重金属も持たない熱可塑性ポリフェニレンエーテル成分から構成された外側の絶縁部と、を備え、テスト標準ISO6722に合致することができる、ハロゲン化されていない、重金属の存在しない絶縁性の車両ケーブルが開示される。
【0006】
本発明の更なる目的及び利点は、明細書の一部を形成する添付図面を参照しつつ、次の説明及び添付された請求の範囲から明らかとなる。図面において、同様の参照番号は、幾つかの図面を通して対応する構成要素を指し示している。
【実施例】
【0007】
自動車の電子構成要素が増大するにつれて、物理的な害への耐性を提供し、炎や自動車流体への耐性を提供し、とりわけ、例えばISO6722等の自動車産業に合致するための要求事項を提供するケーブルのサイズを小型化する必要性が増してきた。少なくとも約0.1mmの断面積を有する銅ベースの金属ワイヤの内側コアと、該内側コアの所定長さを覆い、ハロゲンも該ハロゲンに添加された重金属も持たない熱可塑性ポリフェニレンエーテル成分から構成された外側の絶縁部と、を備えた、ハロゲン化されていない重金属の存在しない絶縁性車両ケーブルを利用することが特に望ましいことが発見された。
(定義)
「ハロゲン化されていない」とは、利用されるポリマー材料が、構成要素の望ましい成分として該構成要素に添加されるハロゲン材料を持たないことを意味している。
【0008】
「重金属が存在しない」とは、例えば、水銀、六価クロム、カドミウム、鉛等の重金属が構成要素の望ましい成分として金属コアに添加されないことを意味している。
「銅ベースの金属」とは、当該産業で周知されているように、銅若しくは他の金属構成要素と合金化された銅である金属が50重量%より多くを占め、適切な電気伝導度を維持する金属ワイヤを意味している。例えばHPC−80EF、商標名フェルプスドッジ等の周知された銅ベースの合金を使用することができる。
【0009】
「ポリフェニレンエーテル」とは、市販され、一般に一水酸基アロマ材料のポリマーである熱可塑性ポリマー材料を意味している。他の容易に利用可能な材料は、2,6−キシレノール、又は、2,3,6−トリメチルフェニル及びそれらのポリマーである。ポリフェニレンエーテル(PPE)は、酸化ポリフェニレン(PPO)としても知られており、文献に記載されている。米国特許番号3,306,874号、3,306,875号、3,257,357号及び3,257,358号を参照せよ。これらの内容は、参照により本願に組み込まれる。
【0010】
しばしば、ポリフェニレンエーテル材料は、例えばポレオレフィン材料、スチレン若しくはスチレンブタジエン若しくはポリアクリアミド等の、他の熱可塑性若しくは架橋されたエチレン化不飽和材料の混合物である。これらの材料は、例えば、ノリル、ルラニル、ウルトラニル又はベストブレンド等、GEの商標で市販されている。利用することができる材料の中には、ノリルWCV072、WCV072L−111及びGEの類似物とが含まれている。
【0011】
超薄ケーブルと、0.1mmの小さい断面積でさえ、この場合に利用されるケーブル壁とは、ISO−6722で要求されるような磨耗サイクリングテストで非常の満足のいく結果を与えることが発見された。
【0012】
銅ワイヤの断面積は、例えば26AWGないし12AWG等の、約0.1ないし約3mmの範囲、代替として0.13ないし1.5mm等の範囲に及び得る。
本発明の絶縁ケーブルは、通常の周知の市販設備を利用して準備される。該設備では、所望のポリフェニレンエーテルポリマーが、成形機械に供給され、鋳造される粘性ポリマーが、図3ないし図4に示されるように、絶縁PPEが金属コンダクターワイヤの直線部分の回りに包まれるように、ダイを通して通過される。利用することができる処理温度は、当該産業で周知されているように変動し得る。しかし、供給源から得られる樹脂材料を次の通りに加熱することが望ましいことが発見された。即ち、熱可塑性のポリフェニレンエーテル材料は、少なくとも2時間に亘って355K(180°F)で乾燥され、次に、成形機械の第1の段階を通して通過される。供給温度は、約319K(約115°F)である。成形装置のバレル内の圧縮温度及び計量温度は、変化し得る。圧縮温度は、約519K(約475°F)から約528K(約490°F)に及び得る。計量温度は、約533K(約500°F)から約555(約540°F)である。交差ヘッド又はダイの温度は、約555K(約540°F)から約566K(約560°F)である。ワイヤが絶縁材料で成形された後、該ワイヤは、冷却水槽と、室温に維持されたミストとを通過し、次に、引き続く取り扱いのためバレル内でケーブルとして包まれる。
【0013】
ここで図面の説明を参照すると、図1には、銅ベースの金属コア14の周りに成形され又は包まれたPPEの絶縁材料12を有する本発明の絶縁性車両ケーブル10が示されている。図1及び図2に示されるように、本実施例では、内側銅コアが、数本のワイヤ14A〜14Gから構成され、中央ワイヤが14Aである。中央ワイヤ14Aは、外側ワイヤ14Bから14Gにより取り囲まれている。金属コア14内には、7、19又は37本のストランドが存在することができ、幾つかの例では、それらは圧縮され、他の例では、それらは束ねられている。
【0014】
絶縁性車両ケーブル10の成形プロセスの間、銅ベースのコアは、ダイ20の中央部を通して供給され、ダイの後方端部22に入り、24でダイから出て行く。ダイは、中央部分26を有し、該中央部分を通って、銅ベースのワイヤ14が通過する。高温粘性PPEは、ダイ20の入口端部22で空間28内へと通過され、銅ワイヤを覆うように進行する。ダイは、30の位置で狭くなり始め、銅ベースのワイヤが30からダイの出口24を通過した状態でPPEが押し出し成形される。ダイの出口24において、本発明の絶縁性車両ケーブル10が得られる。上述されたような冷却プロセス及びケーブルのパッケージングは、以下に続く。
【0015】
本発明の絶縁性車両ケーブル10の直径は、実質的に変り得る。有用であることが見出されたケーブル直径は、0.13mmのケーブルの場合で、0.85から0.92mmの範囲である。他の寸法の絶縁性車両ケーブルは、その断面積として約13mmのワイヤを有するものであるが、図1に示された実施例、即ち、中央ワイヤの周りに6本の周囲ワイヤを備えたものを形成するため使用される。この場合には、コンダクターの直径は、約0.465mmとなり、約0.88mmのケーブル直径10で、0.198mmの最小絶縁壁厚さとなる。
【0016】
上記に示したように、、BMD60−24D又はノキアマイレファー等として同定される成形装置等の幅広い範囲の市販の押し出し成形設備を利用することができる。
本発明で利用されるダイは、例えばD2硬化ツール鋼等の幅広い範囲の市販の材料から製造することができる。
【0017】
ISO−6722で特徴付けられる処置に続いて、7(N)の負荷及び0.45mmのニードルを使用したスクラップ磨耗耐性テストが3組のケーブルに関して使用された。第1の組ケーブルISOは、CHFUSと称される、圧縮されたハロゲンの無い極薄壁ケーブルであり、第2のISOは、HFSSと称される、薄壁ケーブルであり、第3のISOは、HFと称される厚壁ケーブルである。テスト結果は、以下の表1及び表2で同定される。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
ISO−6722で特徴付けられる処置に続いて、多数のテストが実行された。これらのテストでは、銅ワイヤの断面積が様々に変えられ、絶縁ポリフェニレンエーテルの直径が様々に変えられており、それらの結果が表3〜表6に示されている。
【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
【表5】

【0024】
【表6】

【0025】
本明細書で開示された本発明の形態は現在のところ好ましい実施例であり続けているが、多数の他の変更が可能となる。本明細書は、本発明の可能となる等価な形態又は派生形態の必ずしも全てに言及しているわけではない。本明細書で使用される用語は、該用語に本発明を限定するものではなく、単なる説明のためだけに使用されており、本発明の精神又は範囲から逸脱すること無く、様々な変更をなし得ることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の車両ケーブルの斜視図である。
【図2】図2は、ライン2−2に沿って取られた図1の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係る絶縁性車両ケーブルを製造するため使用されるダイである。
【図4】図4は、ライン4−4に沿って取られた図3の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化されていない、重金属の存在しない絶縁性の車両ケーブルであって、
少なくとも約0.1mmの断面積を有する銅ベースの金属ワイヤの内側コアと、
前記内側コアの所定長さを覆い、ハロゲンも該ハロゲンに添加される重金属も持たない熱可塑性ポリフェニレンエーテル成分から構成された外側の絶縁部と、を備え、
テスト標準ISO6722に合致することができる、車両ケーブル。
【請求項2】
自動車のワイヤハーネスの形態にある、請求項1に記載の絶縁性車両ケーブル。
【請求項3】
前記銅コアは、約0.13mmから1.5mmの断面積を有する、請求項1に記載の絶縁性車両ケーブル。
【請求項4】
前記銅コアは、前記コアの断面積において約3mm以内の厚さ領域を有する、請求項1に記載の絶縁性車両ケーブル。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテルは、エチレン不飽和材料から形成されたポリマーから更に構成されている、請求項1に記載の絶縁性車両ケーブル。
【請求項6】
前記不飽和材料はオレフィン不飽和材料から構成されている、請求項5に記載の絶縁性車両ケーブル。
【請求項7】
前記エチレン不飽和材料は、スチレンブタジエン材料から構成されている、請求項5に記載の絶縁性車両ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−60069(P2008−60069A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−164833(P2007−164833)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】