説明

ハンディタイプ保温庫

【課題】
加熱部に軽量で、常に一定の温度を保つことができるシート状発熱体を用い、電源には小型軽量な単3二次電池を利用することで軽くて均一な温度の持続時間の長いハンディタイプの保温庫の提供を目的とする。
【解決手段】
保温庫内を一定の温度に維持するため、庫内の底面にシート状発熱体7からなるヒータ(以下シート状発熱体という。)を配置しこのシート状発熱体の電源に二次電池を接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温対象物を一定温度下で保温するハンディタイプの保温庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から種々のハンディタイプ保温庫が提供されているが、庫内の温度を一定に維持するために多くの場合には電熱ヒータが広範に使用されている。この種のハンディタイプ保温庫に使用される電気ヒータは、保温庫内の温度の変化によっても抵抗値がほとんど変わらないシーズヒータが多用されており、保温庫内の温度を一定温に保つには温度制御を行わなければならず、また、シーズヒータは周囲温度に関係なく発熱するために、温度ヒューズの接続やヒータ周囲に耐熱性に優れた素材を使用する必要があるためコストアップとなっている。また、消費電力量が大きいため、重量の大きい電池を使用しなければならずハンディタイプには不適である。
また、蓄熱材(いわゆるホッカイロ)を用いたものもあるが庫内の温度維持に難がある。
一方でプレートヒータを庫内に設置し、庫内の温度を一定に維持する保温庫もあるが、重量増等を招き、いれもハンディタイプには不適である。(例えば参考文献1参照)
【特許文献1】特開2000−091059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
すなわち、従来から提供されるハンディタイプ保温庫は、いずれも重く、あるいは、軽量の電池を使用する場合には、保温の持続時間が短いとの欠点があった。
なお、持続時間の保持のため、自動車のシガレットライターや車載の蓄電池から給電がされるものもあるが、電車などの移動では無理があった。
本発明は、加熱部に軽量で、常に一定の温度を保つことができるシート状発熱体を用い、電源には小型軽量な単3二次電池を利用することで軽くて均一な温度の持続時間の長いハンディタイプの保温庫の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、ハンディタイプ保温庫において、上部に開閉自在の上部蓋カバーと保温対象を収容する収納室を有するボックス状をなし、前記収容室2の前記上部蓋カバーを含む内部の六面を嵌め込み式の取り外し自由の構造を有する断熱材で覆い、前記断熱材のうちの収容室の底部に配置される下部断熱材表面(上面)に、(a)二種類の塩化物、即ち、四塩化錫と、三塩化アンチモン、塩化鉛、塩化亜鉛、および塩化インジウムからなるグループから選ばれた一種の塩化物と、エチルアルコール、メチルアルコールおよびアセトンのうちの一つの有機溶剤に溶解し、(b)弗化アンモニウム、弗化水素酸および酒石酸の水溶液からなるグループから選ばれた一つの水溶液を還元剤として用い、(c)耐高温性絶縁材料を洗滌脱水し、然る後、350〜550℃の温度に加熱し、(d)上記二種類の塩化物を溶解した有機溶液と上記還元剤として用いる水溶液と、上記の耐高温性絶縁材料を入れた容器の中に入れ、上記二種類の塩化物の金属に該当する金属の高原子価の金属酸化物、低原子価化の金属酸化物、および金属単体、およびこれに加え、これらの物質をシート状の耐高温性絶縁材料の上に沈積してシート状に膜形成し、これらのシート膜状のそれぞれに通電手段を配設し、これらの二つのシート膜状を接合させた構造を有するシート状発熱体からなるヒータ(以下「シート状発熱体」という。)を配置し、このシート状発熱体の電源に二次電池を接続されることを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載のハンディタイプ保温庫において、前記下部断熱材は一体として着脱自在な嵌め込み式とし、かつ、前記下部断熱材の裏面に切込が設けられて前記電源用二次電池が収納されることを特徴とする。
また、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1又は2に記載のハンディタイプ保温庫において、前記シート状発熱体は、35℃±2℃又は22℃±2℃の長時間恒温発熱が可能とした細胞輸送用シート状発熱体を使用したことを特徴とする。
また、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1又は2に記載のハンディタイプ保温庫において、前記シート状発熱体は、60℃近傍の長時間恒温発熱が可能とした宅配飲食物輸送用シート状発熱体を使用したことを特徴とする。
さらに、本願請求項5に係る発明は、前記請求項1又は2に記載のハンディタイプ保温庫において、前記シート状発熱体は、40℃近傍の長時間恒温発熱が可能とした哺乳瓶用シート状発熱体を使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明により均一に保温された対象物を遠隔な場所に移動する用途や均一な温度の維持が長時間必要な対象物の移動手段(自動車・電車・航空機等)を問わずに行うことができる。
また、軽量のため移動が簡便にでき、シート状発熱体7のため発火などの恐れがなく安全であり、設定した発熱上限温度を自己制御するため温度調節器を用いないことから故障が少ない。なお、GPS発信機を内臓することで現在場所の確認ができる。
また、この発明により35度±2度の保温を必要とする医療用検体や60度±2度の宅配ピザ、宅配弁当及び惣菜などに利用できるとともに、冬季などでの贈答用草花の宅配ボックスにも利用できる。
また、本発明のハンディタイプ保温庫は弁当箱の下部を二重にし、その中にシート状発熱体と二次電池を収容する保温機能付弁当箱に応用できる。
さらに、ほ乳瓶を常時長時間保温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
【実施例1】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態に係る一実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫の概略を示す断面図、図2は、同平面図、図3は、同A−A断面図、図4は、同B−B断面図である。これら図1ないし図4において、使用する符号1は、保温庫本体、2は、収納室、3は、上部蓋カバー、4は、側面断熱材、5は、下部断熱材、6は、上部断熱材、7は、シート状発熱体、8は、電池パック、9は、電源用リード線、10は、各所に設けられる面ファスナー、11は、前記保温庫本体1の表面に設けられる保温庫表面化粧材、12は、前記側面断熱材4の表面に設けられる断熱材表面化粧材、13及び14は、ラミネート接着剤及びラミネートであり、15は、前記電池パック8の電池パック蓋、16は、電池パック8で使用される二次電池である。
【0008】
図1ないし図4に示されるように、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1は、前記収納室2を有するボックス状をなし、上部に開閉自在の上部蓋カバー3を具備する。また、本実施例1に係る前記ハンディタイプ保温庫1は、前記収容室2の前記上部蓋カバー3を含む内部の六面を側面断熱材4で覆い放熱を防ぐ構造としている。前記側面断熱材4及び下部断熱材5は嵌め込み式とし、取り外し自由の構造とし、前記下部断熱材5は中仕切り断熱材(図示外)で押える構造とする。
【0009】
なお、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1に使用する生地は、保冷庫として使用する場合をも想定して、太陽光の90%以上を反射するポリエチレンアルミ蒸着フィルムを使用する。したがって、保温が中心の場合はこれに拘る必要はなく、通常の生地、ナイロン、ポリエステル等を使用しても構わない。また、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1に使用する断熱材としては、折りたためるBOX形式のものでは、通常、無架橋発泡ポリエチレン3m/m程度を使用し、折りたためない形式のものは30m/m〜50m/mの厚さの、従来のPE断熱材に比し、4〜6倍の性能を持つ断熱材にはウレタン系真空断熱材(VIP)15m/mを使用しても良い。
【0010】
また、前記下部断熱材5は、断熱材表面にシート状のシート状発熱体7を前記ラミネート接着剤13あるいはラミネート14で貼付け、その上を布状のシート(図示外)で覆うように構成される。そして、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1は、上記下部断熱材5にシート状発熱体7を貼着することで熱源として使用する。また、シート状発熱体7は側面断熱材4に貼着することもできる。
さらに、前記下部断熱材5は、図3及び図4に示されるように、前記シート状発熱体7及び前記電池パック8が内在配置され、該シート状発熱体7と前記電池パック8との間を前記電源用リード線9で接続される。なお、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1においては、前記布状のシート(図示外)は、表面を覆う丈夫なものであれば良く、例えば、アルミ箔、不織布等を使用しても良い。
【0011】
また、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1に使用される前記下部断熱材5は、保温対象物の保温状態に応じて、必要とする保温庫内の設定(要求)温度毎に用意し、保温庫の下部断熱材5を入れ替えることで要求された均一な設定温度を保持することができるようにしても良い。
なお、設定温度を維持するためのシート状発熱体7は、シート状発熱体の数、面積あるいは電源電圧は後述するように適宜変えることで可能となるし、また、後述するように、その組成成分を適宜の組合せとすることにより、発熱温度を適したものとすることができる。さらに、電源は単3の二次電池16を電池パック8に収納し、給電する。また、電池パック8として、一定の保温庫内の温度を均一に定められた(要求された)時間を維持するために単3電池の本数をパックにして纏め、これを替えることで上記温度を確保することができる。すなわち、前記単3電池の本数を替えるときは電池パック8毎に増減する。尚、本実施例1においては、上記電源は単3の2次電池としたが、上記の電池以外の12V蓄電池(鉛・ニッケル・アルカリ・リチウムイオン)であっても良い。
【0012】
また、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1内に収容される下部断熱材5は、それ自体着脱可能であり、さらに、その下部断熱材5自体が、保温庫1内の必要とされる設定温度毎に用意され、必要な保温温度に対して、下部断熱材5自体を専用の温度設定がされたものと入れ替えることで達成される。
本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1に使用される二次電池16(例えば、ニッケル水素、アルカリ、リチウムイオン)は、直流電源の自立型であり、その二次電池16は、前記下部断熱材5に切込みを入れた部分の電池パックに収納する。また、当該二次電池16の充電には商用電源または太陽電池からの充電を併設させても良い。
また、前記下部断熱材5には、重要な品物の保温経過時間の確認あるいは移動時間または現在場所の確認のためのGPS発信器や保温状態を上記記録する監視ロガー装置を下部断熱材5の切込みを入れた部分に収納するようにしても良い。
【0013】
次に、本実施例1に使用するシート状発熱体7と前記電池パック8について説明する。
本実施例1に使用するシート状発熱体7は、特許第2628519号公報に示される発熱体であって、例えば、(a)二種類の塩化物、即ち、四塩化錫と、三塩化アンチモン、塩化鉛、塩化亜鉛、および塩化インジウムからなるグループから選ばれた一種の塩化物と、エチルアルコール、メチルアルコールおよびアセトンのうちの一つの有機溶剤に溶解し、(b)弗化アンモニウム、弗化水素酸および酒石酸の水溶液からなるグループから選ばれた一つの水溶液を還元剤として用い、(c)耐高温性絶縁材料を洗滌脱水し、然る後、350〜550℃の温度に加熱し、(d)上記二種類の塩化物を溶解した有機溶液と上記還元剤として用いる水溶液と、上記の耐高温性絶縁材料を入れた容器の中に入れ、上記二種類の塩化物の金属に該当する金属の高原子価の金属酸化物、低原子価化の金属酸化物、および金属単体、およびこれに加え、これらの物質をシート状の耐高温性絶縁材料の上に沈積してシート状に膜形成し、これらのシート状膜のそれぞれに通電手段を配設し、これらの二つのシート状膜を接合させた構造のものである。
【0014】
保温庫内の設定温度はシート状発熱体7の成分調整により設定する。また、発熱温度設定は電源電圧や半導体面積でできる。シート状発熱体の発熱上限温度は自己制御することができる。
このシート状発熱体7は、図5に示されるように、消費電力が小さいばかりでなく、耐用寿命も長く短時間で昇温が可能であり、しかもフィルムなどに貼着して所定形状に成形することにより熱交換率が極めて高く利用範囲や自由度も高い特性を有するものである。
【0015】
図5は、上記の本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1に使用されるシート状発熱体7の温度特性を示す実測グラフ図であり、同シート状発熱体7をシート形状に適宜加工して、リチウムイオンバッテリー(DC3.7V)を使用して、電流が0.8Aの際の温度上昇傾向を測定した実測グラフ図である。測定に際しては、周囲温度の影響を受けないように断熱ボックス内環境で測定したものである。図5に示すように、周囲温度21℃程度の環境から、15時23分23秒時の通電後およそ3分後に急激な温度上昇が始まり、15分後のには、約40℃近辺まで一気に上昇し、その後、17時41分23秒までの間はほぼ40℃の状態に保たれている状態を知りうる。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明に係るハンディタイプ保温庫1の実施例2として、図6(a)(b)に示されるように、内部容積が幅31cm、奥行き25cm、高さ18cmの上記実施例1と同じ断熱構造の保温ボックスを準備し、中にアルミ缶500mlを配置し、その周囲に前記シート状発熱体50×180mm、4.5V、350mAを配置し、外部からACアダプターDC4.5Vで給電できるようにして、内部の温度を計測した。図6(a)は、計測状況が分かるように概略を示す図であり、同図(b)は、その測定概略断面図である。また、計測センサとしては、デジタルサーモ測定器を用い、6秒間ロガー測定を実施した。すなわち、上記センサのうちの一つT1を前記シート状発熱体7上に、またセンサT2を前記アルミ缶内に、そして、センサT3を保温庫1の床面に配置し、日本ゲルマヒータ株式会社(東京都台東区台東4丁目20−6)内で、室温22.5℃、平成20年3月9日午前10時30分00秒から午後22時30分00秒の間の温度を測定した。
【0017】
その測定結果を図7に示す。図7から知りうるように、本実施例2に係る保温庫においては、シート状発熱体は、通電後速やかに70℃近辺まで上昇し、測定期間中約14時間ほど簿一定の温度で推移し、それに伴って、アルミ缶容器内の温度も当初の29.7℃近辺を維持し、測定終了間際の27.8℃を維持できることが分かる。また、同様に、保温庫内底面温度も23℃近辺を維持した。
【0018】
また、長時間恒温特性を検証するために、上記の本実施例2に係るハンディタイプ保温ボックス内に後述のほ乳瓶ケース21を載置し、当該ほ乳瓶ケース21内には320mlの水を入れたペットボトルに12.6Ωの前記シート状発熱体7を巻き付け、このシート状発熱体7にDC3V、240mAを電圧・電流を印加したとき(第一条件)の長時間恒温特性を計測した。図8は、24時間にわたって計測した際の長時間恒温特性の実測グラフ図であり、途中、12時間経過後に印加する電圧・電流を変化させて、電圧4.5V、電流360mAを流して(第二条件)、続けて12時間、合計24時間の長時間にわたり、その恒温特性を見たものである。図8中、点線は液体温度、実線は、ヒータ(シート状発熱体7)温度、一点鎖線は、ボックス内温度、幅広点線は室温を示すものである。
【0019】
図8から知りうるように、DC3V、240mAの電圧・電流を印加したときの第一条件では、液体温度は、スタート後直ちに31.2℃に達し、その後、32℃(6時間後)、31.3℃(12時間後)と、公差0.5℃の範囲で恒温に推移し、電圧・電流を上昇後も、42℃付近までなだらかに温度上昇をするが、40℃近辺で恒温を維持することが知りうる。
【実施例3】
【0020】
次に、本発明に係るハンディタイプ保温庫1の実施例3として、図9、図10に示されるように、前記シート状発熱体を内面に配置した底面5.5cmφ、高さ19.5cmの蓋付きほ乳瓶ケースを例に説明する。図9は、本実施例3に係るほ乳瓶ケースの概略断面図、同図10は、使用説明図である。図9,図10において、符号20は、保温対象であるほ乳瓶、21は、本実施例3に係るほ乳瓶ケース本体、22は、蓋、23は、シート状発熱体、24は、内保護材、25は、電池パック、26は、緩衝材、27は、リード線、28は、ほ乳瓶投入ファスナー、29は、電池パックファスナー、30は、つり下げフックである。
【0021】
これまでは、乳児を抱えた母親は外出時には暖かい授乳ができにくいため、乳児と共に粉ミルク等を持参し、出先でお湯を貰って、その都度ミルクを作り乳児に与えていた。しかしながら、必ずしもお湯を貰える環境とは限らず、また、仮にお湯が貰えたとしても、その温度が熱かったりして温度調整に難をきたしていた。
本実施例3に係るほ乳瓶ケースによれば、十数時間の所定の温度の保持が可能であるので、いつでもどこでも授乳が可能となる。
【実施例4】
【0022】
次に、血液や細胞を恒温で輸送することを想定して、実施例4として、前記実施例2に係るハンディタイプ保温ボックス内で使用する試験管保管庫31について検証した。図11は、実施例4に係る 試験管保管庫31の概略を示す図であり、図11(A)は、その断面図を、同図(B)は平面図、同図(C)は、試験管壁と前記試験管保管庫31の断熱材との間にシート状発熱体7を介挿する状態の概略図、同(D)は、当該試験管に巻き付けるシート状発熱体7の配置を示す状態図である。図11において、符号31は、試験管保管庫、32は、試験管、33は、前記試験管保管31を構成する断熱材であり、7は、シート状発熱体、34は、コネクタ、35はリード線である。
【0023】
前記試験管保管庫31は、方形の断熱材33に上部から直径12mmφ長さ75mmまたは90mmの試験管32を挿入できるように、前記方形断熱材33を試験管形状にくり抜き、ここに上部から前記シート状発熱体7を巻き付けた試験管32を挿通して使用される。また、シート状発熱体7は、試験管32内で内容物が対流を起こさないように、すなわち、温度が均等に分布されるように、図11(D)に示されるように、所定寸法のシート状発熱体7が階段状に配置される。シート状発熱体7、7、7が階段状に巻き付けられて配置されるので、これが試験管32に巻き付けられたときには、縦方向または横方向に直線上に加熱されることはなく、試験管32内で内容物が温度差による対流を起こさず、均一に加熱される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
上記の温度特性からすれば、本発明に係るハンディタイプ保温庫1は、ES細胞やips細胞など、現在政府の重要政策となっている再生医療の現場で、血液、細胞:22℃±2(血小板)、培養細胞:35℃±2で運ぶことが求められている「細胞輸送用ボックス」としての使用に好適である。さらには、病院内での一時保管及び部局内移動(病院)、車での病院廻りや、緊急時東京から九州までの新幹線でハンド輸送(薬品会社)、薬品検体等の一時保管等の2℃〜8℃の温度帯での真冬の−0℃以下の輸送に使用される「薬品の輸送用ボックス」としての使用に好適である。
【0025】
なお、本発明に係るハンディタイプ保温庫1は、上記の温度特性を有するので、保温して保温対象を輸送等するのに最適であるが、例えば、機内食生産工場から飛行機内キャビンまでの食材、氷や、果物、精肉、アイスクリーム等の全国輸送、海外からの冷凍品検査回収ボックスや工場・店舗で発生した0−157などの食品回収ボックスや、チルド:0℃〜5℃、冷凍:−18℃〜−20℃での輸送する「食品の輸送用ボックス」や、LED(発行ダイオード)に使用される化合物Ga(ガリウム)は29.8℃で融解するので、低温で輸送が必要であり、飛行機の機体、車、ゴルフシャフトなどで使用される炭素繊維は、大気中150℃以上で酸化、蓄熱し火災の原因となり、また、粉塵やフライが人体や目に入るという危険であるため、冷凍輸送が必要とされ、これらのLEDを0℃〜5℃での輸送や炭素繊維を−18℃での輸送に使用される「マテリアルの輸送用ボックス」等に、上記シート状発熱体及び電池パックを付け加えるだけで、保温・冷凍兼用のハンディボックスとしての応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本実施例1に係るハンディタイプ保温庫の概略を示す断面図、
【図2】図2は、同平面図、
【図3】図3は、同A−A断面図、
【図4】図4は、同B−B断面図
【図5】図5は、上記の本実施例1に係るハンディタイプ保温庫1に使用されるシート状発熱体7の温度特性を示す実測グラフ図
【図6】図6(a)は、計測状況が分かるように概略を示す図、同図(b)は、その概略断面図
【図7】図7は、計測結果を示すグラフ図
【図8】図8は、24時間にわたって計測した際の長時間恒温特性の実測グラフ図
【図9】図9は、本実施例3に係るほ乳瓶ケースの概略断面図
【図10】図10は、同使用説明図
【図11】図11は、実施例4に係る試験管保管庫31の概略図であり、図11(A)は、その断面図を、同図(B)は平面図、同図(C)は、試験管壁と前記試験管保管庫31の断熱材との間にシート状発熱体7を介挿する状態の概略図、同(D)は、当該試験管に巻き付けるシート状発熱体7の配置を示す状態図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ハンディタイプ保温庫
2 収容室
3 上部蓋カバー
4 側面断熱材
5 下部断熱材
6 上部断熱材
7 シート状発熱体
8 電池パック
9 電源用リード線
10 面ファスナー
11 保温庫表面化粧材
12 断熱材表面化粧材
13 ラミネート接着剤
14 ラミネート
15 電池パック蓋
16 二次電池
20 ほ乳瓶
21 ほ乳瓶ケース本体
22 蓋
23 シート状発熱体
24 内保護材
25 電池パック
26 緩衝材
27 リード線
28 ほ乳瓶投入ファスナー
29 電池パックファスナー
30 つり下げフック
31 試験管保管庫
32 試験管
33 断熱材
34 コネクタ
35 リード線
T1 センサ
T2 センサ
T3 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開閉自在の上部蓋カバーと保温対象を収容する収納室を有するボックス状をなし、前記収容室2の前記上部蓋カバーを含む内部の六面を嵌め込み式の取り外し自由の構造を有する断熱材で覆い、前記断熱材のうちの収容室の底部に配置される下部断熱材表面(上面)に、(a)二種類の塩化物、即ち、四塩化錫と、三塩化アンチモン、塩化鉛、塩化亜鉛、および塩化インジウムからなるグループから選ばれた一種の塩化物と、エチルアルコール、メチルアルコールおよびアセトンのうちの一つの有機溶剤に溶解し、(b)弗化アンモニウム、弗化水素酸および酒石酸の水溶液からなるグループから選ばれた一つの水溶液を還元剤として用い、(c)耐高温性絶縁材料を洗滌脱水し、然る後、350〜550℃の温度に加熱し、(d)上記二種類の塩化物を溶解した有機溶液と上記還元剤として用いる水溶液と、上記の耐高温性絶縁材料を入れた容器の中に入れ、上記二種類の塩化物の金属に該当する金属の高原子価の金属酸化物、低原子価化の金属酸化物、および金属単体、およびこれに加え、これらの物質をシート状の耐高温性絶縁材料の上に沈積してシート状に膜形成し、これらのシート膜状のそれぞれに通電手段を配設し、これらの二つのシート膜状を接合させた構造を有するシート状発熱体からなるヒータ(以下「シート状発熱体」という。)を配置し、このシート状発熱体の電源に二次電池を接続されることを特徴とするハンディタイプ保温庫。
【請求項2】
前記下部断熱材は一体として着脱自在な嵌め込み式とし、かつ、前記下部断熱材の裏面に切込が設けられて前記電源用二次電池が収納されることを特徴とする請求項1に記載のハンディタイプ保温庫。
【請求項3】
前記シート状発熱体は、35℃±2℃又は22℃±2℃の長時間恒温発熱が可能とした細胞輸送用シート状発熱体を使用したことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンディタイプ保温庫。
【請求項4】
前記シート状発熱体は、60℃近傍の長時間恒温発熱が可能とした宅配飲食物輸送用シート状発熱体を使用したことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンディタイプ保温庫。
【請求項5】
前記シート状発熱体は、40℃近傍の長時間恒温発熱が可能とした哺乳瓶用シート状発熱体を使用したことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンディタイプ保温庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−285130(P2009−285130A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140732(P2008−140732)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505287689)株式会社HILLS (3)
【出願人】(508160749)
【出願人】(506269297)日本ゲルマヒーター株式会社 (2)
【出願人】(508160772)Princess Square株式会社 (1)
【Fターム(参考)】