説明

ハンドピース用ブラシパーツ及びその製造方法。

【課題】ハンドピース用ブラシパーツ製造において、ブラシ内部中央にスリーブを無くすだけでなく、従来の製造方法を変更、工程数を削減することにより製造コスト低下及び品質の安定向上を図る。又、接着剤を使用しない構造とし、引張り強度向上と数値のバラツキを最少に抑え資源有効活用からブラシ部取り換え方式を考える。
【解決手段】糸材群の一方端面を熔解、金型4に設けた金型成形小孔4aに引き込み熔着と同時に成形する。次に、本体軸筒状円孔に棒状ブラシ素子1を挿入後有底部外面を加熱、熱伝導を利用し棒状ブラシ素子1底部をヒンジ形状に再成型することにより棒状ブラシ素子1と本体軸2を固定しハンドピース用ブラシパーツを製造する。もう一つの固定方法は、本体軸筒状円孔の外側面に止め小孔を設け、棒状ブラシ素子1を挿入後、側面を固定部品で押え固定、取り替え方式とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドピース型電動工具に取り付け使用するハンドピース用熔着ブラシパーツ及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が以前特許出願文献1に記載したように、従来のハンドピース用ブラシパーツの製造方法は、本体軸先端にある筒状円孔内にU字に曲げられた糸材群を挿入後中央部に金属性止め板を打ち込み仮止め状態とする。次に筒状円孔先端部をカシメ加工することで糸材群の脱落を防止する。その後最終工程として、ブラシ丈を適正寸法にカットして商品とする。上記方法を、一般に植え込み式と言う。
【0003】
他にも、歯科専用としてハンドピースに取り付け歯面の清掃、洗浄に使用されるブラシパーツもある。この場合上記した植え込み構造のブラシパーツと歯面の清掃、洗浄効果向上の目的からブラシ部中央付近に貫通小孔を設け、ハンドピース本体内の注水機能を介し液体及び液体を謀体とするエネルギー注水構造のハンドピース用ブラシパーツもある。
【0004】
又、歯科技工師及び貴金属加工業者が使用するセラミック材、金属材の表面を研磨仕上げする特殊糸材成分のハンドピース用ブラシパーツや、研磨力向上の目的から太い糸材使用の商品も一部見られる。
【特許出願文献1】
特許出願番号 2008−292777
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のハンドピース用ブラシパーツにおいて、次に示すような課題があった。
【0006】
植え込み式で製造されたブラシパーツにおいては、糸束の一部が抜け落ちることにより空間ができ次々と糸束脱落の現因となる。又、最終工程で行われる筒状円孔先端部のカシメ工程によって糸束全体が扇状に開き、歯科用においては歯垢除去効率の低下、歯科技工師等その他の作業においては研磨効率低下の現因となった。
【0007】
又、研磨効率を向上させる目的から研磨砥粒入りの太い糸を使用してハンドピース用ブラシパーツを製造する場合、植え込み式ではU字に糸束を曲げ打ち込む工程が糸束の弾性問題上難しく製造不可能とされてきた。
【0008】
歯科用ハンドピース用ブラシパーツにおいてブラシ部中央付近に貫通小孔を有するタイプは、従来の植え込み式では構造上製造不可能である。この要因から上記ブラシパーツ製造方法は、挿入可能量の糸束先端部に粘性が高く浸透性の弱いエポキシ系接着剤を塗布、本体軸筒状円孔内に挿入後カットし、完全に接着剤が乾燥固定するまで放置する。乾燥固定完了後、ブラシ中央付近をドリル等を使用し貫通小孔を設ける方法が一般的である。しかしながらこの方法では、ドリル接触部やハンドピース使用中の振動等の理由により接着剤と糸束の剥離脱落が発生し問題となった。又、上記方法において筒状円孔先端部をカシメ加工しても剥離部が特定できないため現因解決には一切ならない。
【0009】
本発明者が特許出願文献1で以前提案したように、糸束端面を揃え熔着固定した棒状ブラシ素子を適正ブラシ丈にカット後成形面に接着剤を塗布、本体軸筒状円孔に挿入固定する方法においても塗布量のバラツキにより引張り強度に差が生じることがあった。
【0010】
他にも接着剤塗布の難しいことも問題となった。本体軸筒状円孔部からの接着剤の流出を避ける目的から、接着剤塗布部は棒状ブラシ素子熔着端部のみとなる。つまり接着面積限定とブラシ引張り方向に対し垂直面だけの接着のため引張り強度に不安が残る。又、上記したように塗布量が多量になると本体軸筒状円孔端より流出不良品となった。それに加え乾燥するまでに時間を要することも量産できない理由と言える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のハンドピース用ブラシパーツは、できる限り接着剤を使用せず製造する手段を実行した。
【0012】
棒状ブラシ素子製造においては、量産を課題とし生産コストを抑える目的から、従来使用されるハンク(1メートル位に切断)糸束から、適量がまとめられボビン(糸巻き)に予め巻き取られた形状の糸束を使用した。この糸束先端部分を熔着成形しブラシ丈寸法にカット棒状ブラシ素子が完成する。
【0013】
次に、先端部に筒状円孔を有する本体軸有底部付近の円孔直径を拡大加工した本体軸筒状円孔に棒状ブラシ素子を挿入後、本体軸有底部外面を加熱し熱伝導をもって棒状ブラシ素子底部端面を熔解又は軟化し、円孔直径拡大加工部に流入冷却成形することでハンドピース用ブラシパーツを製造する。
【0014】
もう一つの方法は、上記方法で製造した棒状ブラシ素子を、先端部に筒状円孔を有しその外面に貫通小孔又は、貫通ネジ付き小孔を設けた本体軸筒状円孔内に挿入する。次に、棒状ブラシ素子側面を上記小孔を通してボルト又は、熱可塑性樹脂棒等により押さえつけることで固定して製造するハンドピース用ブラシパーツである。この場合、上記貫通小孔からホットメルト樹脂又は、粘度の高いエポキシ系接着剤を投入、接着と同時に棒状ブラシ素子挿入内面に凸部を設け止める方法もある。
【0015】
ハンドピース用ブラシパーツにおいて、引張り強度等あまり必要でない使用に関しては熔着部端面のみの接着だけでも有効と考えられる。又、棒状ブラシ素子熔着直径と本体軸筒状円孔内径寸法をハメ合い交差とし精密挿入することにより上記使用には問題の無いことも分かった。
【発明の効果】
【0016】
発明の効果として次のことが考えられる。糸束端面を熔着成形して棒状ブラシ素子を製造することから抜け毛によるトラブルが減少した。又、接着剤を使用しないことから接着剤費用と接着剤塗布工程の削減により価格低下と量産が可能となった。引張り強度においても接着剤を使用しない構造により強度のバラツキが減少、安定した商品の供給が現実のものとなった。
【0017】
歯科用で使用されるハンドピース用ブラシパーツ(中央付近に液体流出用の貫通小孔を有する形状)においても、口腔内使用目的商品における接着剤不使用には大きな意味があり前進と考えられる。又、塗布工程削減によるコストダウンと棒状ブラシ素子成形構造を利用して患者ごとに取り換え使用することも考えられる。これが実現すれば従来のブラシパーツ1組において数人使用でなくなり衛生的にも前進と考えられる。
【0018】
その他にも、棒状ブラシ素子熔着成形側面にネジ部を設け、本体軸筒状円孔内面にも同ピッチのネジ部を機械加工し、ネジ構造により結合する方法も考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図2で示す棒状ブラシ素子1の一方端面には熱をもって固定した熔着成形面1aが設けられる。この製造方法は以前、本発明者が提案した特許出願文献1内の図1乃至4において説明しており今回は簡易とし、棒状ブラシ素子1と本体軸2の結合までの代表工程を図5で示した。
【0020】
上記、棒状ブラシ素子1を本体軸2に挿入固定し、図1で示すハンドピース用ブラシパーツが完成する。図3で示す中央付近に貫通小孔1bを有するハンドピース用ブラシパーツ製造方法は下記の通りである。
【0021】
本体軸2の先端部に設けられた本体軸筒状円孔2b内面有底部2d付近の円孔直径を0.4ミリメートル〜6ミリメートル位広げ拡大加工部2cとする。この本体軸筒状円孔2bに棒状ブラシ素子1を有底部2dに接触するまで挿入、図5で示す工程順に結合固定する。
【0022】
棒状ブラシ素子1を本体軸2に挿入後、ネジ部2aの方向から予熱を利用し結合固定と同時に貫通小孔1bを設ける。その方法は、予熱機本体7の凹部中央に針穴7aを設けその穴に熱針8を固定し熔解ヒーター6により予熱機先端部分を180℃〜280℃位に加熱する。加熱終了後、本体軸2後部端ネジ部2a中央貫通小孔1bより熱針8を差し込み棒状ブラシ素子1の熔着成形面1aの中央部に貫通小孔1bを設ける。同時に、予熱機本体7先端の熱を本体軸2の有底部2b及びネジ部2aに伝え、熱伝導により棒状ブラシ素子1先端部に設けた熔着成形面を熔解又は、軟化させ拡大加工部2cに流出後冷却成形により固定する方法である。
因みに、棒状ブラシ素子1に使用されるナイロン樹脂の軟化温度は145℃付近からで、融点は210℃付近である。又、冷却に必要な時間は条件によって異なるが常温では上記の場合5秒前後と短い。
【0023】
もう一つの固定方法は図4で示すものである。本体軸2の先端部に設けた本体軸筒状円孔2b外側面に止め小孔3aを開ける。次に棒状ブラシ素子1を本体軸筒状円孔2b内面に挿入し固定部品3を止め小孔3aに差し込み固定するものである。この際、固定部品3をボルトとし、止め小孔3aにネジ山加工をすれば取り替えタイプのハンドピース用ブラシパーツとなる。その他にも、熱可塑性樹脂棒を差し込み熱膨張を利用しての固定や、ホットメルト、エポキシ系接着剤使用による固定方法もある。
【0024】
又、図5の中に一連の作業工程として棒状ブラシ素子1の製造工程を示した。その内容は、金型4に設けた金型成形小孔4aにより糸材群を引き出し熔着成形後カット機5によりカットする工程図である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明実施の形態におけるハンドピース用ブラシパーツ拡大外観図。
【図2】 本発明実施の形態におけるハンドピース用棒状ブラシ素子拡大外観図。
【図3】 本発明実施の形態におけるハンドピース用棒状ブラシ素子を本体軸筒状円孔に挿入、熱伝導による加熱軟化成形により棒状ブラシ素子と本体軸を固定したハンドピース用ブラシパーツ断面拡大図。
【図4】 本発明実施の形態におけるハンドピース用棒状ブラシ素子を外側面に止め小孔を設けた本体軸筒状円孔に挿入、請求項4乃至7の方法で棒状ブラシ素子と本体軸を固定したハンドピース用ブラシパーツ断面拡大図。
【図5】 図3で示すハンドピース用棒状ブラシ素子と本体軸を固定と同時に貫通小孔を設ける工程を詳細説明した断面図。
【符号の説明】
【0026】
1. 棒状ブラシ素子
1a. 熔着成形面
1b. 貫通小孔
2. 本体軸
2a. ネジ部
2b. 本体軸筒状円孔
2c. 拡大加工部
2d. 有底部
2e. 貫通小孔
3. 固定部品
3a. 止め小孔
4. 金型
4a. 金型成形小孔
5. カット機
6. 熔解ヒーター
7. 予熱機本体
7a. 予熱機中央小孔針穴
8. 熱針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に設けた金型成形小孔に挿入された糸材群先端部を熔着成形し適正寸法にカットした棒状ブラシ素子を、先端部に筒状円孔を有する本体軸に挿入結合したハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項2】
請求項1のハンドピース用ブラシパーツであって、棒状ブラシ素子を、先端部に筒状円孔を有する本体軸に接着剤をもって固定することを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項3】
請求項1のハンドピース用ブラシパーツであって、先端部に筒状円孔を有する本体軸有底部付近の円孔直径を拡大加工し、棒状ブラシ素子挿入後有底部外面を加熱、熱伝導をもって棒状ブラシ素子底部付近を熔解又は軟化し、円孔直径拡大加工部に流出冷却成形することにより棒状ブラシ素子と本体軸を固定することを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項4】
請求項1のハンドピース用ブラシパーツであって、先端部に筒状円孔を有する本体軸筒状円孔外面に貫通ネジ付き小孔を設け、棒状ブラシ素子挿入後ボルトによって取り替え自由に固定することを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項5】
請求項4のハンドピース用ブラシパーツであって、棒状ブラシ素子挿入後熱可塑性樹脂棒挿入加熱により熔解又は、軟化成形により固定することを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項6】
請求項4のハンドピース用ブラシパーツであって、棒状ブラシ素子挿入後接着剤を挿入、浸透乾燥により固定することを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項7】
請求項4のハンドピース用ブラシパーツであって、棒状ブラシ素子挿入後熱可塑性接着剤(ホットメルト)を挿入、浸透冷却により固定することを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか1項記載のハンドピース用ブラシパーツであって、先端部に筒状円孔を有する本体軸筒状円孔外面に貫通小孔を設けることを特徴とするハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載のハンドピース用ブラシパーツであって、棒状ブラシ素子中央付近に液体及び液体を媒体とするエネルギー注水用の貫通小孔を有するハンドピース用ブラシパーツ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項記載のハンドピース用ブラシパーツの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか1項記載のハンドピース用ブラシパーツの製造装置。
【請求項12】
棒状ブラシ素子熔着成形側面にネジ部を設け、本体軸筒状円孔内面にも同ピッチネジ部を設け、ネジ構造により取り換え自由に結合することを特徴とするハンドピース用パーツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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