説明

ハンドル装置、光学機器

【課題】小型化を達成したハンドル装置と、これを有する光学機器を提供すること。
【解決手段】粗動中空軸33に設けられた粗動ハンドル19と、微動軸35に設けられた微動ハンドル21と、粗動ハンドル19の回転に合わせて回転する粗動中空軸33の回転を検出する第1回転検出手段と、微動ハンドル21の回転に合わせて回転する微動軸35の回転を粗動中空軸33の外部に伝達する回転伝達手段と、回転伝達手段によって伝達された微動軸35の回転を検出する第2回転検出手段と、粗動ハンドル19の操作に応答して可動部が比較的高速移動し、微動ハンドル21の操作に応答して可動部が比較的低速移動するように、可動部を移動するための駆動部を制御する制御回路へ、第1および第2回転検出手段で検出した検出値を出力する出力手段とを有するハンドル装置29。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル装置、光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学機器の可動部、例えば顕微鏡のステージを粗動及び微動するための電動式のハンドル装置として、例えば、粗動中空軸の両端に粗動ハンドルを設け、粗動中空軸の内部を延在する微動軸の両端に微動ハンドルを設け、全体として一軸構成とし、粗動中空軸の回転を検出する第1回転検出手段と、微動軸の回転を検出する第2回転検出手段とを設けたものがある(例えば特許文献1の図3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−166545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の電動式のハンドル装置は、微動軸の回転を検出する第2回転検出手段を粗動中空軸の内部に設けた構造であるため、ハンドル装置を小型化することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、小型化を達成したハンドル装置と、これを有する光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るハンドル装置は、可動部を粗動させるための粗動中空軸と、前記粗動中空軸の内部を延在し、前記可動部を微動させるための微動軸と、前記粗動中空軸に設けられた少なくとも1つの粗動ハンドルと、前記微動軸に設けられた少なくとも1つの微動ハンドルと、前記粗動中空軸の外周に設けられ、前記粗動ハンドルの回転に合わせて回転する前記粗動中空軸の回転を検出する第1回転検出手段と、前記微動ハンドルの回転に合わせて回転する前記微動軸の回転を前記粗動中空軸の外部に伝達する回転伝達手段と、前記粗動中空軸の外周に設けられ、前記回転伝達手段によって伝達された前記微動軸の回転を検出する第2回転検出手段と、前記粗動ハンドルの操作に応答して前記可動部が比較的高速移動し、前記微動ハンドルの操作に応答して前記可動部が比較的低速移動するように、前記可動部を移動するための駆動部を制御する制御回路へ、前記第1および第2回転検出手段で検出した検出値を出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る光学機器は、前記ハンドル装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化を達成したハンドル装置と、これを有する光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るハンドル装置を備えた顕微鏡の一例を示す側面図である。
【図2】実施形態に係るハンドル装置を示す断面図である。
【図3】図2に示されるハンドル装置のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の一実施形態に係るハンドル装置と、これを備えた顕微鏡について図面を参照して説明する。
【0011】
まず、本実施形態に係る電動式のハンドル装置29(図2参照)を備えた顕微鏡1について、図1を参照して説明する。なお、図1に示す顕微鏡1は一例であり、この形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態のハンドル装置29を倒立顕微鏡に適用することも可能である。さらに顕微鏡に限らず、例えばセオドライト等の測量器械に適用することも可能である。
【0012】
図1に示すように、顕微鏡1は、ベース3、支柱5、アーム7、サブステージ9、接眼レンズ11等を備える。サブステージ9にはステージ13が取り付けられている。アーム7にはレボルバ15が取り付けられ、レボルバ15には複数の対物レンズ17が装着されている。
【0013】
顕微鏡1のベース3には、後述する実施形態のハンドル装置29が設けられ、粗動ハンドル19及び微動ハンドル21がベース3の外部に出ている。検鏡者は、粗動ハンドル19及び微動ハンドル21を回転操作することによって、モータ駆動によりサブステージ9及びステージ13(可動部)を上下方向(観察光路中に配置された対物レンズ17の光軸方向)に粗動及び微動することができる。
【0014】
また、例えばベース3には、ステージ13上に載置された図示しない標本を照明するための図示しない照明装置が設けられている。照明装置の光源からの照明光は、顕微鏡1の後方から前方へ向かい、ハンドル装置29の下側を通過してからハンドル装置29の前側を通過して上方へ向かい、ステージ13上の標本に照射される。もちろん、アーム7の後方に落射照明装置を設けてもよい。検鏡者は、対物レンズ17から接眼レンズ11までの光学系を通して標本を観察することができる。また、アーム7の上部に取り付けられた鏡筒25に設けられたポート27に図示しないカメラヘッドを装着して、標本を撮影して画像を得ることもできる。
【0015】
次に、実施形態に係るハンドル装置29について図1から図3を参照して説明する。
【0016】
図2に示すように、ハンドル装置29は、ベース3の内部に設けられた支持部31に回転可能に支持された粗動中空軸33と、粗動中空軸33の内部を延在し、粗動中空軸33に回転可能に保持された微動軸35とを有する。粗動中空軸33の両端に粗動ハンドル19がハンドル用固定螺子37により固定されている。微動軸35の両端に微動ハンドル21が設けられている。
【0017】
図2はハンドル装置29を検鏡者側から見た図であり、粗動中空軸33と微動軸35とが検鏡者側から見てベース3を左右に貫通している。そしてベース3の外部に出ている粗動ハンドル19と微動ハンドル21とは、互いに回転可能に嵌合している。本実施形態のハンドル装置29は、粗動中空軸33と微動軸35が同軸であり、全体として一軸構成である。
【0018】
図2において粗動中空軸33の右側には円筒部39が外嵌しており、当該円筒部39は粗動中空軸33に円筒部用固定螺子41により固定されている。また、円筒部39には第1エンコーダホイール43が外嵌して固定されている。検鏡者が粗動ハンドル19を回転させると、それに合わせて粗動中空軸33、円筒部39、第1エンコーダホイール43が回転する。
【0019】
支持部31の下側には、第1エンコーダホイール43を挟むように第1フォトインタラプタ45が設けられている。第1フォトインタラプタ45は、出力手段である第1ケーブル47により図示しない制御回路に接続されており、粗動ハンドル19の回転量(検出値)、つまり粗動中空軸33の回転量に比例したパルス数のパルス信号を制御回路に出力する。第1エンコーダホイール43、第1フォトインタラプタ45等から、粗動中空軸33の回転を検出する第1回転検出手段が構成される。
【0020】
図2において微動軸35の左側には、左端の小径部49につながる軸側テーパー51が形成されている。微動軸35の小径部49には円筒状の駒53と圧縮ばね55が外嵌している。図2において駒53の右端には、軸側テーパー51に対向する駒側テーパー57が形成されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、粗動中空軸33の周部には、微動軸35の軸側テーパー51の外周位置に、円周に沿って等間隔(120度間隔)で3つの穴59が形成されている。これら3つの穴59には3つの鋼球(球状部材)61が回転可能に嵌っている。また、図2において粗動中空軸33の左側には、3つの穴59の外周位置に、円筒環(環状部)63が回転可能に外嵌している。円筒環63には第2エンコーダホイール65が外嵌して固定されている。
【0022】
図2において微動軸35の小径部49の左端には雄螺子67が形成され、左側の微動ハンドル21の中央から右方向へ突出する突出部69には雌螺子71が形成されており、両者が螺合している。組立ての際は、小径部49に駒53と圧縮ばね55を外嵌した後、上記雄螺子67と雌螺子71を螺合かつ接着固定して、左側の微動ハンドル21と小径部49から右側の微動ハンドル21までの部分を一体化する。
【0023】
駒53は、突出部69の先端に接する圧縮ばね55によって図2で右方向に押されており、駒側テーパー57で3つの鋼球61を押圧している。3つの鋼球61は、駒53に押圧されて微動軸35の軸側テーパー51及び円筒環63の内周面に当接、押し付けられている。駒53、圧縮ばね55等から、3つの鋼球61を押圧して微動軸35と円筒環63とに当接させるための押圧部が構成される。
【0024】
検鏡者が微動ハンドル21を回転させると、それに合わせて微動軸35が回転し、同時に3つの鋼球61が回転して円筒環63及び第2エンコーダホイール65を回転させる。ここで、例えば図2において支持部31の左右の端面と左右の粗動ハンドル19の内側の端面との間に図示しないウェーブワッシャーを介在させることにより、検鏡者が粗動ハンドル19を回転させる際に受ける抵抗力を、微動ハンドル21を回転させる際に受ける抵抗力より大きくすることが望ましい。さらに、粗動ハンドル19等が傷付くことを防ぐために、および回転を滑らかにするために、ウェーブワッシャーを樹脂で挟むことがさらに望ましい。粗動ハンドル19を微動ハンドル21よりも重くすることにより、微動ハンドル21を回した時に粗動ハンドル19が回転してしまうことを防ぐことができると共に、通常の手動式のハンドル装置と操作感を同じにすることができる。上述の駒53、圧縮ばね55、3つの鋼球61、円筒環63等から、粗動中空軸33の内側にある微動軸35の回転を粗動中空軸33の外部に伝達する回転伝達手段が構成される。
【0025】
支持部31の下側には、第2エンコーダホイール65を挟むように第2フォトインタラプタ73が設けられている。第2フォトインタラプタ73は、出力手段である第2ケーブル75により図示しない制御回路に接続されており、微動ハンドル21の回転量(検出値)、つまり微動軸35の回転量に比例したパルス数のパルス信号を制御回路に出力する。第2エンコーダホイール65、第2フォトインタラプタ73等から、上述の回転伝達手段によって伝達された微動軸35の回転を検出する第2回転検出手段が構成される。
【0026】
なお、顕微鏡1のベース3に設けられたハンドル装置29の中央付近は照明装置の光束が通るため、上述の第1回転検出手段、回転伝達手段及び第2回転検出手段は、ハンドル装置29の左側や右側に寄せて設けることが望ましい。もちろん、第1回転検出手段と、回転伝達手段及び第2回転検出手段との配置が、本実施形態と左右逆の構成としてもよい。
【0027】
ハンドル装置29は以上のように構成されており、上述の図示しない制御回路は、粗動ハンドル19の操作に応答して顕微鏡1のサブステージ9及びステージ13が粗動、即ち微動と比較して高速で移動し、また微動ハンドル21の操作に応答してサブステージ9及びステージ13が微動、即ち粗動と比較して低速で移動するように、サブステージ9及びステージ13を移動するための図示しない駆動部を制御する。
【0028】
より具体的には、制御回路は、検鏡者が粗動ハンドル19を回転操作した時、第1フォトインタラプタ45から入力されたパルス信号の周波数に比例した回転速度で不図示の駆動部のモータを回転させることにより、サブステージ9及びステージ13を上下方向に粗動させる。また制御回路は、検鏡者が微動ハンドル21を回転操作した時、第2フォトインタラプタ73から入力されたパルス信号の周波数に比例した回転速度で不図示の駆動部のモータを回転させることにより、サブステージ9及びステージ13を上下方向に微動させる。
【0029】
ここで、粗動ハンドル19を操作した時の回転量と微動ハンドル21を操作した時の回転量とが同じであっても、サブステージ9及びステージ13の粗動、微動をそれぞれ実現するために、以下の2通りの方法を用いる。即ち、第1エンコーダホイール43と第2エンコーダホイール65の分解能を変える(前者の分解能を後者の分解能より高くする)、又は、制御回路により、入力されたパルス信号の1パルスあたりのモータ回転量を粗動の場合と微動の場合とで変える(第1フォトインタラプタ45からパルス信号が入力された場合の1パルスあたりのモータ回転量を第2フォトインタラプタ73からパルス信号が入力された場合の1パルスあたりのモータ回転量よりも大きくする)。
【0030】
また、上述のようにウェーブワッシャー等を設けて粗動ハンドル19の回転を微動ハンドル21の回転よりも重くしておけば、微動ハンドル21を回した時に粗動ハンドル19を止めておくことができるため、この時に第1フォトインタラプタ45から粗動のためのパルス信号が制御回路に入力されることはなく、正確な微動動作が可能となる。
【0031】
また、粗動ハンドル19を回した時に微動ハンドル21が回転したとしても、粗動動作への影響は小さいが、より正確な粗動動作を実現するため、粗動ハンドル19を回した時に制御回路は第1フォトインタラプタ45から入力される粗動のためのパルス信号のみでモータを回転させることがより好ましい。
【0032】
なお、本実施形態のハンドル装置29によって移動させる可動部が正立顕微鏡1のサブステージ9及びステージ13である場合を説明したが、これに限らず、例えば倒立顕微鏡であれば対物レンズを移動させてもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、従来技術に比べハンドル装置の小型化を達成することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、スイッチにより電気的に粗動モードと微動モードの切替えを行う必要もなく、通常の手動式のハンドル装置と同じように、粗動ハンドル19を回転操作して粗動動作を、微動ハンドル21を回転操作して微動動作を実現することができる。また簡単な構造であり、コストを抑えることもできる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、粗動中空軸33の内側にある微動軸35の回転を粗動中空軸33の外部に伝達するために、粗動中空軸33を途中で切って2つに分けるような構造とする必要もなく、左右の粗動ハンドル19の回転が別々になるという違和感を生ずるような問題もない。
【0036】
なお、上述の実施形態は例に過ぎず、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。例えば、回転伝達手段として、駒53、圧縮ばね55、3つの鋼球61、円筒環63等を用いる代わりに、複数のギアで回転伝達手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 顕微鏡
3 ベース
9 サブステージ
13 ステージ
17 対物レンズ
19 粗動ハンドル
21 微動ハンドル
29 ハンドル装置
33 粗動中空軸
35 微動軸
43 第1エンコーダホイール
45 第1フォトインタラプタ
53 駒
55 圧縮ばね
59 穴
61 鋼球
63 円筒環
65 第2エンコーダホイール
73 第2フォトインタラプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を粗動させるための粗動中空軸と、
前記粗動中空軸の内部を延在し、前記可動部を微動させるための微動軸と、
前記粗動中空軸に設けられた少なくとも1つの粗動ハンドルと、
前記微動軸に設けられた少なくとも1つの微動ハンドルと、
前記粗動中空軸の外周に設けられ、前記粗動ハンドルの回転に合わせて回転する前記粗動中空軸の回転を検出する第1回転検出手段と、
前記微動ハンドルの回転に合わせて回転する前記微動軸の回転を前記粗動中空軸の外部に伝達する回転伝達手段と、
前記粗動中空軸の外周に設けられ、前記回転伝達手段によって伝達された前記微動軸の回転を検出する第2回転検出手段と、
前記粗動ハンドルの操作に応答して前記可動部が比較的高速移動し、前記微動ハンドルの操作に応答して前記可動部が比較的低速移動するように、前記可動部を移動するための駆動部を制御する制御回路へ、前記第1および第2回転検出手段で検出した検出値を出力する出力手段とを有することを特徴とするハンドル装置。
【請求項2】
前記回転伝達手段は、前記粗動中空軸の周部に形成された少なくとも1つの穴に回転可能に嵌り、前記粗動中空軸に回転可能に外嵌した環状部と前記微動軸とに接触する少なくとも1つの球状部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のハンドル装置。
【請求項3】
前記回転伝達手段は、前記球状部材を押圧して前記微動軸と前記環状部とに当接させるための押圧部を含むことを特徴とする請求項2に記載のハンドル装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のハンドル装置を有することを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−128456(P2011−128456A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288148(P2009−288148)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】